以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。また、本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
図1は、実施形態におけるパワーコントロール装置の電気的な構成を示す回路図である。図2は、実施形態におけるパワーコントロール装置の構造的な概略構成を示す縦断面図である。図3は、実施形態におけるパワーコントロール装置の構造的な概略構成を示す横断面図である。図3(A)は、横断面図であり、図3(B)は、給電用のPバスバーおよびNバスバーの一部拡大斜視図であり、図3(C)は、インバータ部5の三相(U相、V相、W相)出力の取り出し方法を説明するための図である。図4は、実施形態におけるノイズ低減用巻線素子の概略構成を示す縦断面図である。図5は、実施形態におけるノイズ低減用巻線素子の概略構成を示す横断面図である。図6は、実施形態におけるノイズ低減用巻線素子の製造方法を説明するための図である。
本実施形態におけるパワーコントロール装置PCは、負荷に供給する電力を制御する装置である。パワーコントロール装置PCは、例えば、電源から供給された電力の電圧および周波数等を制御することによって負荷に供給する電力を制御するものである。このようなパワーコントロール装置PCは、例えば、図1ないし図3に示すように、コンバータ部4と、インバータ部5と、これらコンバータ部4およびインバータ部5を収納する筐体2とを備え、本実施形態では、高周波ノイズを除去または低減するために、ノイズ低減用巻線素子1、3をさらに備えている。
コンバータ部4は、電源Vdから供給された電力の電圧を昇圧または降圧する装置である。コンバータ部4は、例えば、チョークコイルL4と、平滑コンデンサC4と、ダイオードD41と、スイッチング素子Tr4と、還流ダイオード(フリーホイールダイオード)D42とを備える、いわゆるチョッパ式のDC−DCコンバータ回路である。スイッチング素子Tr4は、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT,Insulated Gate bipolar transistor)素子やパワーMOSFET素子等の電力用のトランジスタ素子である。ここでは、大電力用のIGBT素子がスイッチング素子Tr4として用いられている。IGBT素子Tr4のコレクタ端子は、ダイオードD41のアノード端子が接続され、そのエミッタ端子は、接地ライン(Nライン)に接続され、ゲート端子は、IGBT素子Tr4にオンオフのタイミングを制御する図略のコンバータ制御回路に接続される。そして、IGBT素子Tr4のコレクタ端子とエミッタ端子との間には、還流ダイオードD42が並列に接続される。すなわち、IGBT素子Tr4のコレクタ端子には、還流ダイオードD42のカソード端子が接続され、IGBT素子Tr4のエミッタ端子には、還流ダイオードD42のアノード端子が接続されている。このように還流ダイオードD42は、その向きがIGBT素子Tr4の入出力方向とは逆に接続されている。そして、このダイオードD41とスイッチング素子Tr4との直列接続回路が平滑コンデンサC4の両端に並列で接続されている。また、電源ライン(Pライン)には、チョークコイルL4が介挿されている。すなわち、チョークコイルL4の一方端子は、ノイズ低減用巻線素子1における電源ライン側の出力端子に接続されることになり、また、チョークコイルL4の他方端子は、IGBT素子Tr4のコレクタ端子とダイオードD41のアノード端子との接続点に接続される。
このようなコンバータ部4では、スイッチング素子Tr4がオンすると、電源VdからのエネルギーがチョークコイルL4に蓄積され、スイッチング素子Tr4がオフすると、チョークコイルL4に蓄積されたエネルギーが放出される。これにより電源Vdの電圧にチョークコイルL4の電圧が加算されて電圧レベルが変換され、ダイオードD41を介して平滑コンデンサC4で平滑されつつ出力される。平滑コンデンサC4の両端がコンバータ部4の出力端子となっている。
インバータ部5は、直流電力を交流電力へ変換する装置である。インバータ部5は、コンバータ部4の出力端子、すなわち、平滑コンデンサC4の両端に接続される。インバータ部5は、例えば、複数のスイッチング素子Tr5と、これら複数のスイッチング素子Tr5のそれぞれに接続される複数の還流ダイオードD5とを備えている。本実施形態では、例えば負荷が3相誘導電動機Mであるので、直流電力から、U相、V相およびW相の3相の交流電力を生成するために、6(=3×2)の整数倍の個数のスイッチング素子Tr5と、スイッチング素子Tr5と同数の還流ダイオードD5とを備えている。より具体的には、電流量を稼ぐために(大容量化のために)、図2および図3に示すように、このような3相に対応する6個のスイッチング素子Tr5および6個の還流ダイオードD5が周方向に3組あって、さらにこれが積層方向に3層用意されているため、インバータ部5は、6個×3組×3層=54個のスイッチング素子Tr5と、54個の還流ダイオードD5とを備えている。図1には、説明の簡略化のため、1組分の6個のスイッチング素子Tr5と、6個の還流ダイオードD5とが示されており、以下、図1に示す例に沿ってインバータ部5の電気的な構成を説明する。スイッチング素子Tr5(Tr51〜Tr56)は、スイッチング素子Tr4と同様に、例えばIGBT素子やパワーMOSFET素子等の電力用のトランジスタ素子であり、ここでは、大電力用のIGBT素子がスイッチング素子Tr5として用いられている。
IGBT素子Tr51とIGBT素子Tr54とは、IGBT素子Tr51のエミッタ端子がIGBT素子Tr54のコレクタ端子に接続されることによって、直列に接続されており、1対のスイッチング部(例えばU相のためのスイッチング部)を構成している。同様に、IGBT素子Tr52とIGBT素子Tr55とは、IGBT素子Tr52のエミッタ端子がIGBT素子Tr55のコレクタ端子に接続されることによって、直列に接続されており、1対のスイッチング部(例えばV相のためのスイッチング部)を構成し、そして、IGBT素子Tr53とIGBT素子Tr56とは、IGBT素子Tr53のエミッタ端子がIGBT素子Tr56のコレクタ端子に接続されることによって、直列に接続されており、1対のスイッチング部(例えばW相のためのスイッチング部)を構成している。これらIGBT素子Tr51〜Tr56の各ゲート端子は、IGBT素子Tr51〜Tr6にオンオフのタイミングを制御する図略のインバータ制御回路に接続される。また、還流ダイオードD51〜D56は、それぞれ、そのアノード端子がエミッタ端子に接続されるともにそのカソード端子がコレクタ端子に接続されることによって、IGBT素子Tr51〜Tr56のそれぞれに並列に接続される。すなわち、これら還流ダイオードD51〜D56は、それぞれ、その向きがIGBT素子Tr51〜Tr56の入出力方向とは逆に接続されている。
これらIGBT素子Tr51およびIGBT素子Tr54の直列接続回路と、IGBT素子Tr52およびIGBT素子Tr55の直列接続回路と、IGBT素子Tr53およびIGBT素子Tr56の直列接続回路とは、互いに並列に接続され、さらに、コンバータ部4の出力端子、すなわち、平滑コンデンサC4の両端に接続される。言い換えれば、平滑コンデンサC4の一方端には、IGBT素子Tr51、IGBT素子Tr52およびIGBT素子Tr53の各コレクタ端子が接続され、平滑コンデンサC4の他方端には、IGBT素子Tr54、IGBT素子Tr55およびIGBT素子Tr56の各エミッタ端子が接続されている。
このような構成のインバータ部5は、図略の前記インバータ制御回路の制御によって、これらIGBT素子Tr51〜Tr56を適宜なタイミングでオンオフすることによって、直流電力から3相交流電力へ変換する。そして、各直列接続回路の各接続点から、すなわち、IGBT素子Tr51とIGBT素子Tr54との接続点、IGBT素子Tr52とIGBT素子Tr55との接続点、および、IGBT素子Tr53とIGBT素子Tr56との接続点の各接続点から、インバータ部5のU相、V相およびW相の電力が出力される。
筐体2は、これらコンバータ部4およびインバータ部5を収納する部材である。筐体2は、直流電力を交流電力へ変換するインバータ部5を含む回路を収納するための筐体の一例に対応する。より具体的には、図2および図3に示すように、筐体2は、有底有蓋の筒形状である略閉塞された筐体本体21と、筐体本体21内に配置される第1および第2バスバー22、23と、筐体本体21内に配置される1または複数の搭載用部材24aとを備えている。
第1および第2バスバー22、23は、給電用であって、筐体本体21(筐体2)の軸線と同軸で配置され、筐体本体21(筐体2)の前記軸線の方向に延びる、中実または中空の柱形状の部材であり、導電性を有する金属(合金を含む)によって形成されている。図2および図3に示す例では、第1および第2バスバー22、23は、互いに同軸で配置された中空の円柱形状、すなわち、筒形状の部材であり、第2バスバー23は、例えば隙間を設けることや絶縁層を設けること等によって第1バスバー22と電気的に絶縁された状態で、第1バスバー22内に、挿通されて配置されている。このように第1および第2バスバー22、23は、二重円筒型となっている。第1バスバー22は、例えば、電源ライン(Pライン)となるPバスバーであり、第2バスバー23は、接地ラインとなるNバスバーである。
搭載用部材24aは、コンバータ部4およびインバータ部5を構成する回路部品を搭載するための部材である。本実施形態では、筒形状の筐体本体21の周壁(周面)と第1および第2バスバー22、23との間に形成されたスペース(空間)に、前記回路部品を搭載するべく、搭載用部材24aは、例えば、中心に第1および第2バスバー22、23を挿通するための貫通孔(貫通開口)を形成した円板形状の部材である。搭載用部材24aは、前記回路部品を搭載するための一方主面(表面)および他方主面(裏面)が筐体本体21の軸線と直交するように配置される。
搭載用部材24aは、例えば多角形や円形等の所定形状の板状の部材であって、本実施形態では、図2に示すように、コンバータ部4の回路部品を搭載するための1枚の部材(第1搭載用部材24a)と、インバータ部5の回路部品を搭載するための3枚の部材(第2ないし第4搭載用部材24a)との4枚で構成されており、これら4枚の搭載用部材24aは、筐体本体21の一方端側から他方端側へこの順で、前記回路部品が載置可能な間隔を空けて、軸線方向(軸方向)に積層されている。前記第1搭載用部材24aの一方主面(表面)上には、コンバータ部4の回路部品である上述のチョークコイルL4、平滑コンデンサC4、ダイオードD41(図2には負図示)、IGBT素子Tr4およびこれに付随する還流ダイオードD42(図2には負図示)が配置されている。そして、前記第2ないし第4搭載用部材24aの一方主面(表面)上には、インバータ部5の回路部品である上述のIGBT素子Tr51〜Tr53とこれらに付随する還流ダイオードD51〜D53とが配置され、他方主面(裏面)上には、インバータ部5の回路部品である上述のIGBT素子Tr54〜Tr56とこれらに付随する還流ダイオードD54〜D56とが配置されている。より詳しくは、上述したように、前記第2ないし第4搭載用部材24aの表面上には、3組で9個のIGBT素子Tr51〜Tr53が配置され、前記第2ないし第4搭載用部材24aの裏面上には、3組で9個のIGBT素子Tr54〜Tr56が配置されている。図3(A)では、これらIGBT素子Tr54〜Tr56は、裏面上に配置されているため、破線で示されている。そして、前記第2ないし第4搭載用部材24aの各両面(表面および裏面)上の外周部には、これらIGBT素子Tr51〜Tr53;Tr54〜Tr56に、図略の前記インバータ制御回路からの制御信号を与えるための制御信号線CLが配置されている。この制御信号線CLは、本実施形態では、U相、V相およびW相に対応してU相用制御信号線、V相用制御信号線およびW相用制御信号線の3線で構成されている。
そして、これらコンバータ部4およびインバータ部5の前記回路部品で発生する熱を筐体2の外部へ放熱するために、搭載用部材24aの外周端部は、搭載用部材24aを熱伝導した熱を効率よく筐体本体21へ熱伝導するべく、筐体本体21の周壁に内周面で当接している。本実施形態では、筐体本体21の周壁の内周面に周方向に沿った嵌合凹部が形成されており、この嵌合凹部に搭載用部材24aの外周端部が嵌め込まれている。この嵌合凹部によって搭載用部材24aを熱伝導した熱をより効率よく筐体本体21へ熱伝導することができ、また、搭載用部材24aの位置決めおよび支持も可能となっている。この放熱性の観点から、搭載用部材24aは、好ましくは、例えば、純銅または純アルミニウムまたはそれらの低濃度合金等の熱伝導性を有する材料で形成されている。このような構成の筐体2およびパワーコントロール装置PCは、コンバータ部4およびインバータ部5によって生じた熱を搭載用部材24aによって効率よく抜熱および放熱することができる。
また、この金属円盤の多層構造は、内部で発生した電磁ノイズに励起される定在波モード(電磁場分布)を制限する。バスバーが存在する中央付近には、高周波磁束は、存在せず低インダクタンスを保証する。また、筐体壁近傍には、電界は、存在しないために、放熱板に沿って配線されたIGBTのゲート信号線(弱電線)CLにノイズが入らない。このような回路の安定かつ信頼性動作を保証する性質をもっている。
さらに、本実施形態では、液冷(液体冷却)するために、搭載用部材24aの内部に、流体を流通するための流路LPaが形成されている。この流路LPaは、例えば、周方向に沿って螺旋状に形成される。また例えば、この流路PLaは、所定の間隔を空けて同心円状に形成された複数の円形流路と、これら円形流路を繋ぐ径方向に形成された連結流路とを備えて形成される。また例えば、この流路LPaは、径方向に放射状に複数で形成される。
また、これらコンバータ部4およびインバータ部5の前記回路部品を第1および第2バスバー22、23に電気的に接続するために、第1および第2バスバー22、23には、それぞれ、周方向に複数の分岐部が設けられている。より具体的には、図3(B)に示すように、外側に第1バスバー22の周面に、前記分岐部として周方向に複数の突起部221(221U、221V、221W)が設けられるとともに、第2バスバー23から配線を引き出して前記分岐部とするために、外側に第1バスバー22の周面に、配線引き出し用の複数の貫通開口部222(222U、222V、222W)が設けられる。直列接続されるIGBT素子Tr51およびIGBT素子Tr54が搭載用部材24aの表面および裏面にそれぞれ配置されるために、直列接続されるIGBT素子Tr52およびIGBT素子Tr55が搭載用部材24aの表面および裏面にそれぞれ配置されるために、そして、直列接続されるIGBT素子Tr53およびIGBT素子Tr56が搭載用部材24aの表面および裏面にそれぞれ配置されるために、これら突起部221と貫通開口部222とは、軸方向で同一直線上となるように設けられる。なお、前記配線に代え、貫通開口部222を介して外部に臨む突起部が第2バスバー23に設けられてもよい。
このような構成によって、U相用のIGBT素子Tr51のコレクタ端子は、突起部221Uに接続されることによって第1バスバー22と電気的に接続され、U相用のIGBT素子Tr54のエミッタ端子は、貫通開口部222Uを介して第2バスバー23から引き出された配線に接続されることによって第2バスバー23と電気的に接続される。U相用のIGBT素子Tr51およびIGBT素子Tr54は、搭載用部材24aにおける表面上および裏面上に互いに対向する位置で配置された態様で、第1および第2バスバー22、23に接続可能となる。同様に、V相用のIGBT素子Tr52のコレクタ端子は、突起部221Vに接続されることによって第1バスバー22と電気的に接続され、V相用のIGBT素子Tr55のエミッタ端子は、貫通開口部222Vを介して第2バスバー23から引き出された配線に接続されることによって第2バスバー23と電気的に接続される。V相用のIGBT素子Tr52およびIGBT素子Tr55は、搭載用部材24aにおける表面上および裏面上に互いに対向する位置で配置された態様で、第1および第2バスバー22、23に接続可能となる。そして、W相用のIGBT素子Tr53のコレクタ端子は、突起部221Wに接続されることによって第1バスバー22と電気的に接続され、W相用のIGBT素子Tr56のエミッタ端子は、貫通開口部222Wを介して第2バスバー23から引き出された配線に接続されることによって第2バスバー23と電気的に接続される。W相用のIGBT素子Tr53およびIGBT素子Tr56は、搭載用部材24aにおける表面上および裏面上に互いに対向する位置で配置された態様で、第1および第2バスバー22、23に接続可能となる。このように、このような複数の分岐部を設けることによって、第1および第2バスバー22、23から、インバータ部5を構成する回路部品への給電路が最短距離で簡素に構成される。したがって、このような構成によって配線長が短くなり、配線インダクタンスが低減される。
このような2重円筒型の第1および第2バスバー22、23によって低インダクタンスを実現することができる理由は、インダクタンスは、電流が作る磁界が存在する体積積分と等価であることによる。平行導線、平行平板では、どうしても近傍空間に磁界が漏れ出すために、無視できない浮遊インダクタンスが生じてしまうが、同軸導体では、その隙間のわずかな空間に限られるからである。
そして、インバータ部5の三相(U相、V相、W相)出力を取り出すために、第1および第2バスバー22、23とインバータ部5との間には、第1および第2バスバー22、23の軸方向に沿って、出力用バスバー25が設けられている。より具体的には、出力用バスバー25は、長尺なロッド状(円柱形状)の部材であり、IGBT素子Tr5の端子に形成された貫通孔(図3(C)に示す例では周方向の一部に切り欠き部が設けられた貫通孔)に挿通可能な直径で、例えば純銅や純アルミニウムまたはそれらの低濃度合金等の導電性の金属(合金を含む)によって形成される。このロット状の出力用バスバー25は、本実施形態では、3相交流電力に対応してU相用、V相用およびW相用の3個であり、各相用の各出力用バスバー25U、25V、25Wのそれぞれは、第1バスバー22から絶縁のために径方向に所定の間隔を空けて、その長尺方向が第1バスバー22の軸方向に沿うように、配置される。そして、各相用の各出力用バスバー25U、25V、25Wは、第1バスバー22の周方向に所定の間隔を空けて配列される。また、U相用の出力用バスバー25Uには、IGBT素子Tr51のエミッタ端子とIGBT素子Tr54のコレクタ端子とが接続され、V相用の出力用バスバー25Vには、IGBT素子Tr52のエミッタ端子とIGBT素子Tr55のコレクタ端子とが接続され、W相用の出力用バスバー25Wには、IGBT素子Tr53のエミッタ端子とIGBT素子Tr56のコレクタ端子とが接続される。これらコレクタ端子およびエミッタ端子との間には、出力用バスバー25が挿通されて円筒形状の絶縁性のスペーサ26が介在されている。図3(C)には、V相の場合が示されている。このように各相用の各出力用バスバー25U、25V、25Wは、第1バスバー22の周りに立体的に配線されるので、いわゆる浮遊インダクタンスを低減することができる。前記搭載用部材24aを挟み、その片面に第1バスバー22(例えばアノード側)から給電されるスイッチング素子Tr51、Tr52、Tr53が、その裏面に第2バスバー23(カソード側)から給電されるスイッチング素子Tr54、Tr55、Tr56が、おなじ位置関係で装着されることで、それらの出力端子が上記2重円筒型の給電用の第1および第2バスバー22、23に近接する中央部において、軸方向に最短距離で接合される、ことが肝要である。このような実装形式によって低インダクタンスの(U相、V相、W相の)3本の出力用集電バスバー25が形成され、筐体の片端にある出力用ノイズ低減用巻線素子3を経由して外部に取り出されることになる。これにより、内部サージおよび外部伝播ノイズが同時に低減されることになる。
ノイズ低減用巻線素子1、3は、高周波ノイズを低減するための素子である。本実施形態のノイズ低減用巻線素子1、3は、図4および図5に示すように、コイル11と、コイル11によって生じた磁束を通すとともに、コイル11を収納するコア12とを備えている。
ノイズ低減用巻線素子1、3は、高周波ノイズを低減するための素子である。本実施形態のノイズ低減用巻線素子1、3は、図4および図5に示すように、コイル11と、コイル11によって生じた磁束を通すとともに、コイル11を収納するコア12とを備えている。
コイル11は、帯状の長尺な導体部材を、該導体部材の幅方向がコイル11の軸方向に沿うように絶縁材(図略)を挟んで巻回することによって構成される。このような帯状の長尺な導体部材は、シート形状、リボン形状あるいはテープ形状であり、幅(幅方向の長さ)Wに対する厚さ(厚み方向の長さ)tが1未満である(0<t/W<1)。このような構成によって、コイル11で生じる磁束方向に沿って帯状の導体部材が配置されることになるので、コイル11のいわゆる渦電流損を低減することができる。
コイル11は、単線に対して用いる場合には、1枚の導体部材を巻回すことによって構成することができるが、本実施形態では、パワーコントロール装置PCの入力側における電源ラインおよび接地ライン、ならびに、パワーコントロール装置PCの出力側におけるU相ライン、V相ラインおよびW相ラインの複数のラインに対して用いられるため、コイル11は、絶縁材(図略)を挟んで重ね合わせた帯状の複数の長尺な導体部材、図4および図5に示す例では、3枚の長尺な導体部材111、112、113を所定回数だけ巻回することによって構成されて成る複数のコイルで構成されている。そして、各導体部材111〜113の各両端部Tm11、Tm12;Tm21、Tm22;Tm31、Tm32は、接続端子としてコア12の外部へ引き出されている。
コイル11の前記絶縁材は、本実施形態ではコイル11自体に容量性を持たせるため、所定の容量となるように、適宜な誘電率を持った材料が選択される。PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)およびPEN(ポリエチレンナフタレート)の各誘電率は、1kHzで20℃である場合に、それぞれ、3.2、2.2、3.0、2.9である。また、フィラー入り樹脂は、前記フィラーの充填率(体積%)を変えることによって、5〜40程度の範囲で様々な値の誘電率とすることができる。
コア12は、コイル11を磁気結合するための部材であって、コイル11を内包する構造である。コア12は、例えば、図4および図5に示す例では、磁気的に(例えば透磁率が)等方性を有し、同一の構成を有する第1および第2コア部材121、122を備える。第1および第2コア部材121、122は、それぞれ、例えば円板形状を有する円板部121a、122aの板面に、該円板部121a、122aと同径の外周面を有する円筒部121b、122bが連続して成る。コア12は、このような構成を有する第1および第2コア部材121、122が互いに前記各円筒部121b、122bの端面同士で重ね合わせられることによりコイル11を内部に収容するための空間を備えたものである。すなわち、コア12は、いわゆるポット型となっている。
なお、図4および図5に示す例では、コア12は、第1および第2コア部材121、122で構成されたが、これに限定されるものではなく、例えば、コア12は、コイル11を内包し得る内径を有する中空の円柱形状(円筒形状)である第11コア部材と、その外径が第11コア部材の内径よりも大きい円板である1組の第12および13コア部材とを備え、第12コア部材は、略隙間が生じないように、第11コア部材の一方端部に連結され、第13コア部材は、略隙間が生じないように、第11コア部材の他方端部に連結されて構成されてもよい。
このようなコア12は、例えば仕様等に応じた所定の磁気特性(透磁率)を有しており、上述のような所望の形状の成形容易性の観点から、軟磁性体粉末を形成したものであることが好ましい。このような構成のノイズ低減用巻線素子1、3は、容易にコア12を形成することができ、その鉄損も低減することができる。さらに、コア12は、軟磁性体粉末と非磁性体粉末との混合物を成形したものであってもよい。軟磁性体粉末と非磁性体粉末との混合率比を比較的容易に調整することができ、前記混合比率を適宜に調整することによって、コア12における前記所定の磁気特性をそれぞれ所望の磁気特性に容易に実現することが可能となる。
この軟磁性体粉末は、強磁性の金属粉末であり、より具体的には、例えば、純鉄粉、鉄基合金粉末(Fe−Al合金、Fe−Si合金、センダスト、パーマロイ等)およびアモルファス粉末、さらには、表面にリン酸系化成皮膜などの電気絶縁皮膜が形成された鉄粉等が挙げられる。これら軟磁性体粉末は、公知の手段、例えば、アトマイズ法等によって微粒子化する方法や、酸化鉄等を微粉砕した後にこれを還元する方法等によって製造することができる。また、一般に、透磁率が同一である場合に飽和磁束密度が大きいので、軟磁性粉末は、例えば上記純鉄粉、鉄基合金粉末およびアモルファス粉末等の金属系材料であることが特に好ましい。
このような軟磁性体粉末を形成した圧粉コアであるコア12は、例えば、圧粉形成等の公知の常套手段によって形成することができる。
このようないわゆる圧粉コアを用いたノイズ低減用巻線素子1、3は、渦電流損を低減することができる。特に、ノイズ低減用巻線素子1、3が高周波駆動回路に用いられる場合には、このような構成のノイズ低減用巻線素子1、3は、好適に渦電流損を低減することができる。
このような構成のノイズ低減用巻線素子1、3は、例えば、次の工程によって作製可能である。
まず、図6(A)に示すように、所定の厚みを有するリボン状の複数の導体部材111a、112a、113aが絶縁材(図略)を挟んで重ね合わされ、図6(B)に示すように、これらが中心(軸芯)から所定の径だけ離間した位置から所定回数だけ巻き回される。これにより、中心に所定の径を有する円柱状の空芯部S1を備えたパンケーキ構造の空芯のコイル11が形成される。
一方、図6(C)に示すように、圧粉形成等によって形成された第1および第2コア部材121、122が、コイル11を挟み込むように各円筒部121b、122bの端面同士で重ね合わされる。これにより、図6(D)に示すような例えば円盤状のノイズ低減用巻線素子1、3が作成される。
このように構成されたノイズ低減用巻線素子1は、電源Vdとパワーコントロール装置PCのコンバータ部4との間の配線に介挿され、ノイズ低減用巻線素子3は、パワーコントロール装置PCのインバータ部5と3相誘導電動機Mとの間の配線に介挿される。このように電源Vdとパワーコントロール装置PCのコンバータ部4との間の配線にノイズ低減用巻線素子1を介挿することによって、パワーコントロール装置PCから電源Vd側への高調波ノイズを低減または除去することができるとともに、電源Vd側からパワーコントロール装置PCへの電圧や電流のスパイクやサージを低減または除去することができる。また、パワーコントロール装置PCのインバータ部5と3相誘導電動機Mとの間の配線にノイズ低減用巻線素子3を介挿することによって、ノイズを低減または除去して電圧波形および電流波形を改善し、負荷のパフォーマンスを改善することができる。
より具体的には、まず、ノイズ低減用巻線素子1の場合について説明すると、ノイズ低減用巻線素子1の入力端が電源Vdに接続され、ノイズ低減用巻線素子1の出力端がパワーコントロール装置PCの入力端(コンバータ部4の入力端)に接続されることでノイズ低減用巻線素子1の入力端がパワーコントロール装置PCの入力端(コンバータ部4の入力端)の代替入力端とされ(第1態様、第1構成)、図1および図2に示すように、ノイズ低減用巻線素子1は、筐体本体21(筐体2)と一体化される。より詳しくは、ノイズ低減用巻線素子1のコイル11におけるコイル111の入力側の一方端部Tm11が電源Vdの電源ラインに接続され、ノイズ低減用巻線素子1のコイル11におけるコイル111の出力側の他方端部Tm12がパワーコントロール装置PCのコンバータ部4における入力端となるチョークコイルL4の一方端に接続される。ノイズ低減用巻線素子1のコイル11におけるコイル113の入力側の一方端部Tm31が電源Vdの接地ラインに接続され、ノイズ低減用巻線素子1のコイル11におけるコイル113の出力側の他方端部Tm32がパワーコントロール装置PCのコンバータ部4における入力端の接地ラインに接続される。そして、ノイズ低減用巻線素子1のコイル11におけるコイル112の入力側の一方端部Tm21および出力側の他方端部Tm22は、それぞれ、接地される。そして、図2に示すように、ノイズ低減用巻線素子1は、そのコイル11の出力端が引き出されるコア12の面を、パワーコントロール装置PCの筐体2における筐体本体21と当接することで、筐体本体21(筐体2)と一体化される。放射ノイズをより低減するために、コア12の前記面は、筐体本体21と隙間無く当接、すなわち、密着していることが好ましい。この観点から、コア12の第2コア部材は、筐体本体21と一体成形されることが好ましい。あるいは、筐体本体21にノイズ低減用巻線素子1が嵌り込む凹部が形成され、前記凹部にノイズ低減用巻線素子1が嵌り込むことで、ノイズ低減用巻線素子1は、筐体本体21(筐体2)と一体化されてもよい。さらに、図2に示すように、ノイズ低減用巻線素子1は、その軸線が筐体本体21(筐体2)の軸線と一致する位置で、筐体本体21と一体化されている。この結果、ノイズ低減用巻線素子1は、その軸線が第1および第2バスバー22、23の軸線とも一致することになる。
次に、ノイズ低減用巻線素子3の場合について説明すると、ノイズ低減用巻線素子3の入力端がパワーコントロール装置PCの出力端(インバータ部5の出力端)に接続されることでノイズ低減用巻線素子3の出力端がパワーコントロール装置PCの出力端(インバータ部5の出力端)の代替出力端とされ(第2態様、第2構成)、ノイズ低減用巻線素子3の出力端が3相誘導電動機Mの入力端に接続され、図1および図2に示すように、ノイズ低減用巻線素子3は、筐体本体21(筐体2)と一体化される。より詳しくは、ノイズ低減用巻線素子3のコイル11におけるコイル111の入力側の一方端部Tm11がU相用の出力用バスバー25Uに接続され、ノイズ低減用巻線素子3のコイル11におけるコイル111の出力側の他方端部Tm12が3相誘導電動機MのU相の入力端に接続される。ノイズ低減用巻線素子3のコイル11におけるコイル112の入力側の一方端部Tm21がV相用の出力用バスバー25Vに接続され、ノイズ低減用巻線素子3のコイル11におけるコイル112の出力側の他方端部Tm22が3相誘導電動機MのV相の入力端に接続される。そして、ノイズ低減用巻線素子3のコイル11におけるコイル113の入力側の一方端部Tm31がW相用の出力用バスバー25Wに接続され、ノイズ低減用巻線素子3のコイル11におけるコイル113の出力側の他方端部Tm32が3相誘導電動機MのW相の入力端に接続される。そして、ノイズ低減用巻線素子3は、上述したノイズ低減用巻線素子1と同様の種々の態様のうちのいずれかで、筐体本体21(筐体2)と一体化される。さらに、図2に示すように、ノイズ低減用巻線素子3は、その軸線が筐体本体21(筐体2)の軸線と一致する位置で、筐体本体21と一体化されている。この結果、ノイズ低減用巻線素子3は、その軸線が第1および第2バスバー22、23の軸線とも一致することになる。
このような構成のノイズ低減用巻線素子1、3では、コイル11が帯状の導体部材を、該導体部材の幅方向がコイル11の軸方向に沿うように絶縁材(図略)を挟んで巻回することによって構成されるので、各ターンの導体部材が絶縁材を介した1ターン内側の導体部材および絶縁材を介した1ターン外側の導体部材との間でコンデンサを形成するから、コイル11自体が容量性を備えることができる。なお、このコイル11に形成されるコンデンサは、図1では、符号C11、C12、C31、C32で示されている。このため、このような構成のノイズ低減用巻線素子1、3は、単独でL成分およびC成分を備えることができ、好適にLCフィルタを単独で構成することができる。したがって、このような構成のノイズ低減用巻線素子1、3は、コンデンサが別途に不要となり、部品点数を低減することが可能となる。そして、このような構成の筐体2およびパワーコントロール装置PC(インバータ部5)は、上述の構成のノイズ低減用巻線素子1、3を用いるので、インバータによって生じるノイズを低減することができ、部品点数の低減も可能となる。
ここで、このような帯状の導体部材を共巻きしたノイズ低減用巻線素子におけるノイズ低減効果の性能試験結果について説明する。図7は、ノイズ低減用巻線素子の性能試験を説明するための図である。図7(A)は、性能試験に用いたノイズ低減用巻線素子の斜視図であり、図7(B)は、性能試験に用いた回路構成を説明するための図である。図8は、ノイズ低減用巻線素子の性能試験の結果を示す図である。図8(A)は、性能試験の結果を示すグラフであり、図8(B)は、性能試験の結果をまとめた表である。
この性能試験には、図7(A)に示すように、3枚の帯状の導体部材を共巻きしたノイズ低減用巻線素子が用いられた。そして、この性能試験では、図7(B)に示すように、電源として6.6VのLi−Fe電池が用いられ、インバータとして16kHzのPWMインバータ(TAMIYA製DCブラシレスモータ用スピードコントローラ;ESC01)が用いられ、負荷のモータとしてDCブラシレスモータ(Keyence製;LUXON KG)が用いられ、測定器としてパワーアナライザ(横河電機製PZ4000)が用いられた。Li−Fe電池は、PWMインバータおよびノイズ低減用巻線素子を介してDCブラシレスモータに接続されて、その電力が供給され、DCブラシレスモータの出力軸には、負荷として所定の重さの円板部材が取り付けられた。そして、ノイズ低減用巻線素子の出力端とDCブラシレスモータの入力端との接続点でパワーアナライザによって諸量が測定された。
その結果は、図8(A)および図8(B)に示す通りである。図8(A)には、上述のノイズ低減用巻線素子が性能試験の構成に無い場合における電流および電圧の測定結果(紙面左側)と、上述のノイズ低減用巻線素子が性能試験の構成に有る場合における電流および電圧の測定結果(紙面右側)とが示されている。図8(A)において、横軸は、経過時間を示し、その縦軸は、レベルを示す。図8(A)の左右のグラフを較べてみると分かるように、ノイズ低減用巻線素子が性能試験の構成に有る場合の波形は、ノイズ低減用巻線素子が性能試験の構成に無い場合の波形に較べて、粗くなっており、ノイズが低減されていることがわかる。また、図8(B)には、上述のノイズ低減用巻線素子が性能試験の構成に無い場合における最大回転速度および力率の測定結果(上段)と、上述のノイズ低減用巻線素子が性能試験の構成に有る場合における最大回転速度および力率の測定結果(下段)とが示されている。図8(B)の上下段の数値を較べて見ると分かるように、ノイズ低減用巻線素子が性能試験の構成に有る場合の最大回転速度は、ノイズ低減用巻線素子が性能試験の構成に無い場合の最大回転速度に較べて、大きく(速く)なっており、そして、ノイズ低減用巻線素子が性能試験の構成に有る場合の力率は、ノイズ低減用巻線素子が性能試験の構成に無い場合の力率に較べて、大きくなっており、改善されている。
このようにノイズ低減用巻線素子を用いることによって、PWMインバータからDCブラシレスモータへ流れるノイズが低減され、DCブラシレスモータのパフォーマンスが改善される。
一方、インバータを含む回路は、従来技術で説明したように、伝導ノイズ、誘導ノイズおよび放射ノイズのインバータノイズが発生する。このインバータノイズを低減するために、様々な対策が採用されるが、入力端子や出力端子に通常のコネクタを用いると、インバータを含む回路を収納した筐体内を飛び回る放射ノイズは、入力端子や出力端子から漏れ出したり、あるいは、入力端子や出力端子を取り付けるために筐体に設けられた貫通孔に生じる入力端子や出力端子と筐体との間に生じる隙間から漏れ出したりしてしまう。
ここで、本実施形態では、ノイズ低減用巻線素子1、3は、上述の第1態様および第2態様とされ、しかも筐体本体21(筐体2)と一体化されているので、このような構成の筐体2およびパワーコントロール装置PCは、筐体2から通常漏れ出る放射ノイズを効果的に低減することができる。
そして、本実施形態における筐体2およびパワーコントロール装置PC(インバータ部5)は、上述したように、筐体本体21(筐体2)は、筒形状であり、該筐体本体21(筐体2)の軸線と同軸で配置され、該筐体本体21(筐体2)の前記軸線の方向に延びる、第1および第2バスバー22、23を備えている。
インバータ装置において、いわゆるバスバーの配線インダクタンスが大きいと、直流交流変換の際のスイッチング動作における電流変化によって発生するサージ電圧が前記配線インダクタンスに比例して大きくなるため、その対策が望まれる。例えば、特開2007−236044号公報には、バスバーの配線インダクタンスを低減させるインバータモジュールが提案されている。このインバータモジュールは、第1のバスバーと、前記第1のバスバーに近接して平行に並置されている第2のバスバーと、前記第1のバスバーと前記第2のバスバーのそれぞれに接続された少なくとも一対の電力半導体装置と、を備えたインバータブリッジモジュールであって、前記電力半導体装置は、第1ないし第3の3個の主端子を備え、これらのうちの第1および第2主端子が第1の側面から引き出されており、前記一対の電力半導体装置は、それぞれ前記第1のバスバー又は第2のバスバーに対してその前記第1の側面が対向するように配置されているものである。このような構成のインバータモジュールでは、容量を増やそうとすると、前記第1のバスバーおよび前記第2のバスバーを延長するか、または、このような構成のインバータモジュールを複数用意して各インバータモジュールの前記第1のバスバー同士を配線で連結するとともに前記第2のバスバー同士を配線で連結する必要があり、いずれの場合でも配線長が長くなって配線インダクタンスが増加してしまう。
一方、本実施形態における筐体2およびパワーコントロール装置PCでは、上述の構成によって、筒形状の筐体本体21(筐体2)の周壁と第1および第2バスバー22、23の間にコンバータ部4およびインバータ部5の回路部品を配置するスペース(空間)を確保することができ、上述のように配置可能であるから、このスペースにおいて、コンバータ部4およびインバータ部5の回路部品を第1および第2バスバー22、23の周方向に上述のように配置して接続することで、コンバータ部4およびインバータ部5を構成する各回路部品を第1および第2バスバー22、23によって最短距離で接続することができる。しかも、パワーコントロール装置PCの容量を増加する場合でも、第1および第2バスバー22、23の径を大きくすることで、この容量の増加に対応して増加した回路部品の配置スペースを確保することができ、第1および第2バスバー22、23の軸方向の長さを変える必要がなく、前記最短距離を略維持することができる。このため、このような構成の筐体2およびパワーコントロール装置PCは、コンバータ部4およびインバータ部5の回路部品を繋ぐ配線長をより短くすることができ、配線インダクタンスを低減することができる。
さらに、本実施形態では、ノイズ低減用巻線素子1、3と第1および第2バスバー22、23とは、それらの各軸線が筒形状の筐体本体21(筐体2)の軸線と一致するように配置されている。この結果、ノイズ低減用巻線素子1の軸線、第1および第2バスバー22、23の各軸線およびノイズ低減用巻線素子3の軸線は、互いに一致するようになる。このため、代替入力端となるノイズ低減用巻線素子1の入力端と、代替出力端となるノイズ低減用巻線素子3の出力端とは、略一直線上に配置されることなり、その間を上述の二重円筒型の第1および第2バスバー22、23によって橋渡す構造となる。したがって、このような構成の筐体2およびパワーコントロール装置PCでは、前記代替入力端と前記代替出力端との間が最短距離で結ばれ、これら間の配線インダクタンスも低減することができる。
また、本実施形態では、第1および第2バスバー22、23は、それぞれ、周方向に複数の分岐部を備えている。このため、このような構成の筐体2およびパワーコントロール装置PCは、第1および第2バスバー22、23から、コンバータ部4やインバータ部5を構成する回路部品への給電路を最短距離で簡素に構成することができ、したがって、これらの配線インダクタンスを低減することができる。
また、本実施形態では、搭載用部材24aには、流体を流すための流路LPaがその内部に形成されている。このため、このような構成の筐体2およびパワーコントロール装置PCは、例えば水冷等のいわゆる液体冷却を行うことができ、コンバータ部4およびインバータ部5を効果的に冷却することが可能となる。
また、本実施形態では、搭載用部材24aは、複数、図2に示す例では4枚であって、軸方向に積層されている。このため、このような構成の筐体2およびパワーコントロール装置PCは、搭載用部材24aが複数であるので、容量の増加に対応することができ、そして、搭載用部材24aが軸方向に積層されているので、コンパクト化が可能となる。
なお、上述のパワーコントロール装置PCでは、搭載用部材24aは、搭載用部材24aの熱を効率よく筐体本体21へ熱伝導するべく、第1態様として、その外周端部が筐体本体21の周壁に内周面で当接されたが、他の態様が用いられてもよい。
図9は、実施形態のパワーコントロール装置における搭載用部材の他の態様として、搭載用部材の第2態様を示す縦断面図である。図10は、実施形態のパワーコントロール装置における搭載用部材の他の態様として、搭載用部材の第3態様を示す縦断面図である。図11は、実施形態のパワーコントロール装置における搭載用部材の他の態様として、搭載用部材の第4態様を示す縦断面図である。
第2態様の搭載用部材24bは、図9に示すように、載置部241bと、外周壁部242bとを備えている。外周壁部242bは、比較的底高の円筒形状であり、筐体2の周面の一部となる。載置部241bは、搭載用部材24aと同様の、中心に第1および第2バスバー22、23を挿通するための貫通孔(貫通開口)を形成した円板形状であり、その外周端部が円筒形状の外周壁部242bの周壁に内周面で連結されており、外周壁部242bと一体化されている。このように載置部241bが外周壁部242bと一体化され、しかも外周壁部242bが筐体本体21の周面の一部を構成するため、このような構成の搭載用部材24bは、回路部品で生じた熱が載置部241bを介して外周壁部242bへ熱伝導し外周壁部242bから外部へ前記熱をより効率よく放熱することができる。そして、外周壁部242bの円筒形状の両端面は、それぞれ、同じ方向に傾いた、大略テーパ状となっており、より詳しくは、このテーパ状の両端部には、径方向と平行な平行面が形成されている。このため、複数の搭載用部材24bを軸方向に積層する場合に、位置ずれを生じることなく、複数の搭載用部材24bが軸方向に積層される。また、載置部241b内には、搭載用部材24aと同様な流路LPaが形成されており、液冷することもできる。
また、第3態様の搭載用部材24cは、図10に示すように、載置部241cと、外周壁部242cと、放熱フィン243cとを備えている。外周壁部242cは、比較的底高の円筒形状であり、筐体2の周面の一部となる。載置部241cは、搭載用部材24aと同様の、中心に第1および第2バスバー22、23を挿通するための貫通孔(貫通開口)を形成した円板形状であり、その外周端部が円筒形状の外周壁部242cの周壁に内周面で連結されており、外周壁部242cと一体化されている。そして、放熱フィン243cは、板状の環形状(ドーナツ形状)であり、その内周端部が円筒形状の外周壁部242cの周壁に外周面で連結されており、外周壁部242cと一体化されている。このように載置部241cが外周壁部242cと一体化され、しかも外周壁部242cが筐体2の周面の一部を構成し、さらに外周壁部242cの外周面に放熱フィン243cを備えるため、このような構成の搭載用部材24cは、回路部品で生じた熱が載置部241cを介して外周壁部242cへ熱伝導し外周壁部242cおよび放熱フィン243cから外部へ前記熱をより効率よく放熱することができる。そして、外周壁部242cの円筒形状の両端面は、それぞれ、同じ方向に傾いた、大略テーパ状となっており、より詳しくは、このテーパ状の両端部には、径方向と平行な平行面が形成されている。このため、複数の搭載用部材24cを軸方向に積層する場合に、位置ずれを生じることなく、複数の搭載用部材24cが軸方向に積層される。
また、第4態様の搭載用部材24dは、図11に示すように、載置部241dと、外周壁部242dと、放熱フィン243dと、熱伝導路部244dとを備えている。外周壁部242dは、比較的底高の円筒形状であり、筐体2の周面の一部となる。載置部241dは、搭載用部材24aと同様の、中心に第1および第2バスバー22、23を挿通するための貫通孔(貫通開口)を形成した円板形状であり、その外周端部が円筒形状の外周壁部242dの周壁に内周面で連結されており、外周壁部242dと一体化されている。そして、放熱フィン243dは、板状の環形状(ドーナツ形状)であり、その内周端部が円筒形状の外周壁部242dの周壁に外周面で連結されており、外周壁部242dと一体化されている。さらに、熱伝導路部244dは、載置部241d、外周壁部242dおよび放熱フィン243dを形成する各材料の熱伝導性より良好な熱伝導性を持った材料、例えば純銅や純アルミニウムまたはそれらの低濃度合金等の良熱伝導性の材料で形成されおり、載置部241d、外周壁部242dおよび放熱フィン243dの各内部を、載置部241dから外周壁部242dを介して放熱フィン243dまでに亘って配置されている。このような熱伝導路部244dは、中心に貫通開口を形成した円板形状であってもよく、また、径方向に延びる複数の線形状であってもよい。このように載置部241dが外周壁部242dと一体化され、しかも外周壁部242dが筐体2の周面の一部を構成し、さらに外周壁部242dの外周面に放熱フィン243dを備えるため、このような構成の搭載用部材24dは、回路部品で生じた熱が載置部241dを介して外周壁部242dへ熱伝導し外周壁部242dおよび放熱フィン243dから外部へ前記熱をより効率よく放熱することができる。そして、この搭載用部材24dは、これら載置部241d、外周壁部242dおよび放熱フィン243dの各内部を、載置部241dから外周壁部242dを介して放熱フィン243dに至る熱伝導路部244dをさらに有しているので、このような構成の搭載用部材24dは、搭載部241dの熱を効率よく外周壁部242dおよび放熱フィン243dへ熱伝導し、さらにより効率よく外部へ放熱することができる。そして、外周壁部242dの円筒形状の両端面は、それぞれ、同じ方向に傾いた、大略テーパ状となっており、より詳しくは、このテーパ状の両端部には、径方向と平行な平行面が形成されている。このため、複数の搭載用部材24dを軸方向に積層する場合に、位置ずれを生じることなく、複数の搭載用部材24dが軸方向に積層される。
また、上述の筐体2およびパワーコントロール装置PC(第1ないし第4態様の搭載用部材24a〜24dの場合を含む)において、前記筐体2は、外部から流体を内部へ導入する流体導入部と、前記内部から前記流体を前記外部へ導出する流体導出部とをさらに備えてもよい。このような構成のパワーコントロール装置PCは、前記流体導入部および前記流体導出部を備えるので筐体内に流体を流通させることができるから、前記流体によってインバータ用筐体およびインバータ装置を冷却することができる。
このような構成のパワーコントロール装置PCについて、より具体的に説明する。図12は、他の第1態様におけるパワーコントロール装置の構造的な概略構成を示す縦断面図である。図13は、他の第2態様におけるパワーコントロール装置の構造的な概略構成を示す縦断面図である。
他の第1態様におけるパワーコントロール装置PCaは、図12に示すように、ノイズ低減用巻線素子1aと、筐体2eと、ノイズ低減用巻線素子3と、コンバータ部4と、インバータ部5とを備え、さらに、流体導入部6と流体導出部7とを備えている。このパワーコントロール装置PCaにおけるノイズ低減用巻線素子3、コンバータ部4およびインバータ部5は、それぞれ、図1ないし図3に示す上述のパワーコントロール装置PCにおけるノイズ低減用巻線素子3、コンバータ部4およびインバータ部5と同様であるので、その説明を省略する。
また、このパワーコントロール装置PCaにおけるノイズ低減用巻線素子1aは、図12に示すように、流体導入部6がそのコイル11の芯部およびコア12の中心部を軸方向に沿って挿通されている点を除き、図1ないし図3に示す上述のパワーコントロール装置PCにおけるノイズ低減用巻線素子1と同様であるので、その説明を省略する。
そして、これらノイズ低減用巻線素子1a、3は、筐体2に配置されるノイズ低減用巻線素子1、3と同様に、筐体2eに配置される。
流体導入部6は、中空の円柱部材(円筒部材)または中空の多角柱部材で形成され、筐体2eの外部から流体を筐体2eの内部へ導入するための部材である。流体導入部6は、本実施形態では、その一方端が外部に臨むとともにその他方端が筐体2eの内部に臨むように、ノイズ低減用巻線素子1に上述したように挿通されるとともに筐体2eの蓋体211を挿通するように、配設される。
筐体2eは、図1ないし図3に示す上述の筐体2と同様に、これらコンバータ部4およびインバータ部5を収納する部材である。より具体的には、図12に示すように、筐体2eは、有底有蓋の筒形状であり、蓋体(底体)211と、1または複数の第5態様の搭載用部材24eと、底体(蓋体)212と、筐体2e内に配置される第1および第2バスバー22a、23aとを備えている。
第5態様の搭載用部材24eは、図12に示すように、載置部241eと、外周壁部242eとを備えている。外周壁部242eは、比較的底高の円筒形状であり、筐体2eの周面の一部となる。載置部241eは、搭載用部材24aと同様の、中心に第1および第2バスバー22a、23aを挿通するための貫通孔(貫通開口)を形成した円板形状であり、その外周端部が円筒形状の外周壁部242eの周壁に内周面で連結されており、外周壁部242eと一体化されている。そして、この円板形状の載置部241eには、外周壁部242eに連結される近傍に、一方主面から他方主面へ流体を流すための第2流路LPbが形成されている。第2流路LPbは、1または複数形成される。例えば、本実施形態では、第2流路LPbは、周方向に沿って適宜な間隔で複数、形成されている。このように第2流路LPbが形成されているので、搭載用部材24eの一方主面から他方主面へ流体を流通させることができるから、より効果的に流体による冷却を行うことができる。また、外周壁部242eの円筒形状の両端面は、それぞれ、同じ方向に傾いた、大略テーパ状となっており、より詳しくは、このテーパ状の両端部には、径方向と平行な平行面(軸方向に垂直な面)が形成されている。すなわち、図12に示す第5態様の搭載用部材24eは、図9に示す第2態様の搭載用部材24bにおける流路LPaに代え、第2流路LPbを備える点を除き、第2態様の搭載用部材24bと同様である。
蓋体(底体)211は、1つの搭載用部材24eまたは軸方向に沿って積層された複数の搭載用部材24eから形成される筐体本体の一方端を閉塞する部材である。蓋体(底体)211は、例えば、本実施形態では、円板形状の蓋体(底体)本体と、前記蓋体(底体)本体の周縁に沿って立設され、搭載用部材24eと連結するための連結円筒体とを備えている。連結円筒体の端面は、搭載用部材24eと密着させて連結するために、搭載用部材24eと同様に、テーパ状に形成されている。
同様に、底体(蓋体)212は、1つの搭載用部材24eまたは軸方向に沿って積層された複数の搭載用部材24eから形成される筐体本体の他方端を閉塞する部材である。底体(蓋体)212は、例えば、本実施形態では、円板形状の底体(蓋体)本体と、前記底体(蓋体)本体の周縁に沿って立設され、搭載用部材24eと連結するための連結円筒体とを備えている。連結円筒体の端面は、搭載用部材24eと密着させて連結するために、搭載用部材24eと同様に、テーパ状に形成されている。そして、底体(蓋体)212の前記底体(蓋体)本体には、流体導出部7が軸方向に沿って挿通されている。
流体導出部7は、中空の円柱部材(円筒部材)または空中の多角柱部材で形成され、筐体2eの内部から流体を筐体2eの外部へ導出するための部材である。流体導出部7は、本実施形態では、その一方端が外部に臨むとともにその他方端が筐体2eの内部に臨むように、筐体2eの前記底体(蓋体)212を挿通するように、配設される。流体導出部7は、1または複数、筐体2eの前記底体(蓋体)212を挿通される。例えば、本実施形態では、流体導出部7は、前記底体(蓋体)本体の周辺領域に、周方向に沿って適宜な間隔で複数、筐体2eの前記底体(蓋体)212を挿通されている。
この筐体2eおよびパワーコントロール装置PCaにおける第1および第2バスバー22a、23aは、それぞれ、第3流路PLc、第4流路PLdを備える点を除き、図2および図3に示す筐体2およびパワーコントロール装置PCにおける第1および第2バスバー22、23と同様であるので、前記相違点のみを以下に説明し、同じ点の説明は、省略する。
第1バスバー22aの第3流路PLcは、径方向に沿って貫通され、第1バスバー22aの内部とその外部との間で流体を流通可能にするための貫通開口である。第1バスバー22aの第3流路PLcは、複数形成されている。第1バスバー22aの第3流路PLcは、周方向に沿って適宜な間隔を空けて複数形成されており、そして、このような周方向に複数形成された第3流路PLcは、各層に流体を分流するために、軸方向に沿って適宜な間隔を空けて複数段形成されている。
第2バスバー23aの第4流路PLdは、径方向に沿って貫通され、第2バスバー23aの内部とその外部との間で流体を流通可能にするための貫通開口である。第2バスバー23aの第4流路PLdは、複数形成されている。第2バスバー23aの第4流路PLdは、周方向に沿って適宜な間隔を空けて複数形成されており、そして、このような周方向に複数形成された第4流路PLdは、各層に流体を分流するために、軸方向に沿って適宜な間隔を空けて複数段形成されている。
そして、本実施形態では、流体が流れやすくなるように、第3流路PLcと第4流路PLdとは、径方向で互いに一致するように、形成されている。なお、第3流路PLcと第4流路PLdとは、径方向でずれて形成されてもよい。
図12に示す筐体2eおよびパワーコントロール装置PCaでは、例えば冷媒として機能する流体が流体導入部6によって外部から筐体2e内に導入される。この導入された流体は、筐体2e内を流通する。この際に、流体は、パワーコントロール装置PCaで発生した熱、主に回路部品で発生した熱を吸収する。そして、流体は、流体導出部7によって筐体2e内から外部へ導出される。
より具体的には、流体導入部6によって導入された流体は、1層目の搭載用部材24eの載置部241eに沿って、その中央から周縁へ流れ、第2流路LPbを介して次層の搭載用部材24eへ流れ、各層の第2流路LPbを介して流体導出部7へ流れる。そして、流体導入部6によって導入された前記流体は、第2バスバー23a内を流れ、その第4流路PLdおよび第1バスバー22aの第3流路PLcを介して、各層の搭載用部材24eの載置部241eに沿って、その中央から周縁へ流れ、第2流路LPbを介して次層の搭載用部材24eへ流れ、各層の第2流路LPbを介して流体導出部7へ流れる。本実施形態では、第2ないし第4流路PLb〜PLdを備えるので、流体導入部6によって内部に導入された流体は、筐体2e内全体を円滑に流れ、流体導出部7によって外部へ導出される。このため、このような構成の筐体2eおよびパワーコントロール装置PCaは、冷媒として機能する前記流体を実装空間に直接流通させることに適しており、前記流体によって全体を均一に効果的に直接冷却される。また、このような構成の筐体2eおよびパワーコントロール装置PCaは、密封性に優れているため、前記流体の漏洩を低減することができる。
このような冷媒として機能する前記流体は、筐体2eや回路部品を腐食させないことが好ましく、また導電性がないことが好ましく、また流動性がよいことが好ましく、また吸湿性がないことが好ましく、また変性し難いことが好ましく、また引火性が無いことが好ましい。このような冷媒として機能する前記流体は、例えば、フッ素化合物系の液体(例えばフロリナート(住友スリーエム(株)の登録商標)、ガルデン(ソルベイソレクシス(株)の登録商標)、フロン等)やシリコンオイル等の絶縁性オイル、窒素(N2)ガス、および、二酸化炭素(CO2)ガス等を挙げることができる。
また、他の第2態様におけるパワーコントロール装置PCcは、図13に示すように、ノイズ低減用巻線素子1aと、筐体2fと、ノイズ低減用巻線素子3と、コンバータ部4と、インバータ部5とを備え、さらに、流体導入部6と流体導出部7とを備えている。そして、筐体2fは、図13に示すように、有底有蓋の筒形状であり、蓋体(底体)211と、1または複数の第6態様の搭載用部材24fと、底体(蓋体)212と、筐体2f内に配置される第1および第2バスバー22a、23aとを備えている。
すなわち、第2態様におけるパワーコントロール装置PCcは、第1態様のパワーコントロール装置PCbにおける筐体2eに代え、筐体2fを用いる点を除き、第1態様のパワーコントロール装置PCbと同様であるので、その説明を省略する。そして、第2態様における筐体2fは、第1態様における第5態様の搭載用部材24eに代え、第6態様の搭載用部材24fを用いる点を除き、他の第1態様の筐体2eと同様であるので、その説明を省略する。
第6態様の搭載用部材24fは、図13に示すように、載置部241fと、外周壁部242fとを備えている。外周壁部242fは、比較的底高の円筒形状であり、筐体2fの周面の一部となる。載置部241fは、搭載用部材24aと同様の、中心に第1および第2バスバー22a、23aを挿通するための貫通孔(貫通開口)を形成した円板形状であり、その外周端部が円筒形状の外周壁部242fの周壁に内周面で連結されている。そして、この円板形状の載置部241fは、メッシュ(金網)部材で形成されている。このようにメッシュ(金網)部材で形成されることにより、載置部241fには、一方主面から他方主面へ流体を流すための第2流路が形成される。なお、載置部241fは、一方主面から他方主面へ連通する流路を持つ多孔質部材であってもよい。また、外周壁部242fの円筒形状の両端面は、それぞれ、同じ方向に傾いた、大略テーパ状となっており、より詳しくは、このテーパ状の両端部には、径方向と平行な平行面(軸方向に垂直な面)が形成されている。すなわち、図13に示す第6態様の搭載用部材24fは、図12に示す第5態様の搭載用部材24eにおける載置部241eに代え、メッシュ部材で形成された載置部241fを備える点を除き、第5態様の搭載用部材24eと同様である。
このような構成の第2態様の筐体2fおよびパワーコントロール装置PCcによっても、第1態様の筐体2eおよびパワーコントロール装置PCbと同様の作用効果を奏する。そして、このような構成の第2態様の筐体2fおよびパワーコントロール装置PCcは、載置部241fがメッシュ部材で形成されているので、載置部241fの熱膨張率と載置部241fに接着固定される回路部品の熱膨張率との差によって生じる熱応力をメッシュ部材で吸収することができる。
なお、上述では、図9に示す第2態様の搭載用部材24bに対し、第2流路LPbが設けられたり、メッシュ部材で形成された載置部241fが設けられたりしたが、図10に示す第3態様の搭載用部材24cおよび図11に示す第4態様の搭載用部材24dに対し、第2流路LPbが設けられたり、メッシュ部材で形成された載置部241fが設けられたりしてもよい。
また、上述において、より放熱性を向上させる観点から、放熱フィンが回路部品に配置されてもよい。このような放熱フィンは、流体の流れを阻害しないように、その長尺方向が流体の流れる方向に沿うように、配置されることが好ましい。
また、上述の第1ないし第5態様の搭載用部材24a〜24eには、該搭載用部材24a〜24eに温度分布が生じた場合に高温側から低温側へ伸びるスリット状の切り欠き部が形成されてもよい。このような構成の筐体2およびパワーコントロール装置PCは、搭載用部材24a〜24eにスリット状の切り欠き部が形成されているので、搭載用部材24a〜24eが熱膨張により膨張した場合でもその膨張分が前記切り欠き部で吸収されるから、搭載面に垂直な方向における搭載用部材24a〜24eの歪みを低減することができる。
このような構成の第7態様の搭載用部材24gについて、より具体的に説明する。図14は、実施形態のパワーコントロール装置における搭載用部材の他の態様として、搭載用部材の第7態様を示す横断面図である。図15は、熱膨張により搭載用部材に生じる歪みのシミュレーション結果を示す図である。
第7態様の搭載用部材24gは、コンバータ部4およびインバータ部5を構成する回路部品を搭載するための部材であり、図14に示すように、搭載用部材24aと同様の、中心に第1および第2バスバー22、22a;23、23aを挿通するための貫通孔(貫通開口)を形成した六角形状の板状体である。そして、搭載用部材24gには、第1および第2バスバー22、22a;23、23aで生じる抵抗加熱によるジュール熱や、搭載された回路部品の発熱によって、該搭載用部材24gに温度分布が生じた場合に、高温側から低温側へ伸びるスリット状の切り欠き部8が1または複数形成される。
より具体的には、図14に示すように、第1および第2バスバー22、22a;23、23aを挿通するための前記貫通孔は、軸方向から平面視した場合に三角形形状であり、前記スリット状の切り欠き部8は、前記貫通孔の前記三角形における各頂点から各辺方向に沿って、3個形成されている。これら3個の切り欠き部8は、切り欠き部8の起点において、貫通孔の中心点から伸びる径方向と所定の角度で交差するように形成されており、したがって、これら3個の切り欠き部8は、旋回するように放射状に形成されている。切り欠き部8の幅は、想定される温度における熱膨張よりも大きくなるように設定される。このような構造の搭載用部材24gでは、前記貫通孔を挿通する第1および第2バスバー22、22a;23、23aで生じる抵抗加熱によるジュール熱や、搭載された回路部品の発熱によって、搭載用部材24gは、加熱される。
このような切り欠き部8の効果を検証するために、切り欠き部8の有り無しでシミュレーション(数値実験)が行われた。このシミュレーションは、アルミニウムで形成された、厚さ10mmの、冷却用の水管の無い搭載用部材24g、24hに対し、第1および第2バスバー22、22a;23、23aとして発熱量500Wの熱源が前記貫通孔内に配置され、搭載用部材24g、24hの周縁の温度が0度に拘束される場合について、行われた。搭載用部材24hは、切り欠き部8が形成されていない比較例である。
発熱量500Wによって加熱されると、搭載用部材24hは、熱膨張し、図15(C)、(D)に示すように、搭載用部材24hには、搭載面に垂直な方向に歪みが生じる。搭載用部材24hの貫通孔付近では、上下方向(Z方向)に最大30μmの歪みが生じている。しかしながら、図14に示すような切り欠き部8が形成されている搭載用部材24gでは、前記加熱によって熱膨張が生じても、その熱膨張分が切り欠き部8で吸収されるから、図15(A)、(B)に示すように、搭載面に垂直な方向における搭載用部材24gの歪みを低減することができる。搭載用部材24gの貫通孔付近における、上下方向(Z方向)の歪みは、−16μmであり、低減している。
なお、スリット状の切り欠き部8は、高温側から低温側へ向かうに従ってその幅が徐々に狭くなるくさび形であってもよい。このようなくさび形の切り欠き部8は、等幅の場合に比較して、その剛性の低減を抑制することができる。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。