本発明の第1実施形態の中空筒型リアクトル装置について、図1〜図5を参考にして説明する。図1は、第1実施形態の中空筒型リアクトル装置1を模式的に示した中心軸線AXを含む縦断面図である。また、図2は、第1実施形態の中空筒型リアクトル装置1のコイル3の構成を説明する斜視図である。さらに、図3は、図1のY1−Y1矢視を示す横断面図であり、図4は、図1のY2−Y2矢視を示す横断面図である。中空筒型リアクトル装置1は、インダクタンス素子2を電気回路の往路に備え、リターン導体6を電気回路の復路に備えて構成されている。中空筒型リアクトル装置1は、中心軸線AXの周りに概ね回転対称な形状であり、同軸内周側にインダクタンス素子2が配置され、同軸外周側にリターン導体6が配置されている。
図1に示されるように、インダクタンス素子2は、中心軸線AXが中空の筒状であり、コイル3、コア4、および内側接続端子51、52などで構成されている。コイル3は、直列接続された第1単位コイル31および第2単位コイル32からなる。第1単位コイル31および第2単位コイル32は、絶縁被覆された薄板状の導体が半径方向に複数層巻回されて形成されており、図3および図4に示されるように、横断面が渦巻形状になっている。薄板状の導体の材質には高い導電率を有する銅を用いることができ、これに限定されず、アルミニウムなどの他の金属材料を用いてもよい。また、導体の占積率を大きくするために、面取りされた矩形断面を有する平角導体を用いることが好ましい。絶縁被覆の材質には、公知の各種絶縁材料を用いることができ、例えば、絶縁性の樹脂材料を用いる。
ここで、図2〜図4に示されるように、第1単位コイル31と第2単位コイル32とでは巻回方向が逆になっている。すなわち、第1単位コイル31では、図2および図3に示されるように、内周の巻き始め31Sから左巻き(反時計回り)に巻き始め、半径方向外側に順次積層してゆき、外周の巻き終わり31Eで巻き終わる。これに対して、第2単位コイル32では、図2および図4に示されるように、内周の巻き始め32Sから右巻き(時計回り)に巻き始め、半径方向外側に順次積層してゆき、外周の巻き終わり32Eで巻き終わる。
第1単位コイル31と第2単位コイル32とは、中心軸線AXの軸長方向にわずかな間隔を設けて配置される。そして、外周側で第1単位コイル31の巻き終わり31Eと、第2単位コイル32の巻き終わり32Eとが接合されて直列接続される。また、第1単位コイル31の巻き始め31Sおよび第2単位コイル32の巻き始め32Sはそれぞれ、内向きに引き出されて、内側接続端子51、52に接合される。
コア4は、図略の絶縁体を介して、コイル3を取り囲むように配置されている。コア4は、軸長方向において2分割されて互いに対称な単位コア41、42からなる。単位コア41、42は、公知の磁性材料を適宜用いて形成でき、薄板状の磁性板材を積み重ねた積層コアでも、粉体状の磁性材料を焼結成型した焼結コアでもよい。第1単位コア41は、コイル3の内周側に配置される内周レッグ411と、コイル3の外周側に配置される外周ヨーク412と、コイル3の軸線方向端面側に配置されるエンドヨーク413とが一体となって形成されている。同様に、第2単位コア41は、内周レッグ421と外周ヨーク422とエンドヨーク423とが一体となって形成されている。
図3および図4に示されるように、第1単位コア41の内周レッグ411および第2単位コア42の内周レッグ421の周方向の一部に、中心軸線AXの軸長方向に延在するスリット414、424が刻設されている。このスリット414、424を通って、第1単位コイル31の巻き始め31Sおよび第2単位コイル32の巻き始め32Sが絶縁を維持して引き出されている。コイル3を挟み込むように第1単位コア41および第2単位コア42を軸長方向の両側から向い合せに当接させると、コイル3に鎖交する磁路が形成される。
ここで、内周レッグ411、421の軸長方向の長さは、外周ヨーク412、422の軸長方向の長さよりもわずかに短い。したがって、外周ヨーク412、422同士が当接したときに、内周レッグ411、412の間にはギャップ長Gの磁路ギャップ部43が生じる。ギャップ長Gを適宜設けて磁路を遮断することによりコア4の非線形な磁気抵抗を調整して、中空筒型リアクトル装置1の特性を適正化できる。ただし、磁路ギャップ部43は、必須の構成要件ではないので無くすこともでき、あるいは後述の磁路狭窄部44に代えることもできる。
内側接続端子51、52は、コア4の内周側に配置されており、図略の絶縁体を用いて、コア4から絶縁支持されている。第1内側接続端子51は、第1単位コイル31の巻き始め31Sに導通している。図1に示されるように、第1内側接続端子51は、コア4の内周側に配置された環状の基体部511と、基体部511からコア4の軸長方向外側へ延出した接触部512とからなる。接触部512は、周方向に複数に分割され、かつ、延出した先端に向かって徐々に縮径されたテーパ形状になっている。第2内側接続端子52は、第2単位コイル32の巻き始め32Sに導通している。図1に示されるように、第2内側接続端子52は、コア4の内周側に配置された環状の基体部521と、基体部521から内周側に鋭角状に折り返された接触部522とからなる。接触部522は、周方向に複数に分割され、かつ、折り返された先端に向かって徐々に縮径されたテーパ形状になっている。2つの接触部512、522は、板ばね状の弾性を有している。
図1の矢印X1に示されるように、第1内側接続端子51の接触部512の外面に向かい、内周テーパ形状の接続導体55を軸長方向に差し込んで接続することができる。また、矢印X2に示されるように、第2内側接続端子52の接触部522の内面に向かい、外周テーパ形状の接続導体56を軸長方向に差し込んで接続することができる。中空筒型リアクトル装置1は、接続導体55および接続導体56を介して他の回路要素に接続される。あるいは、他の回路要素が接続導体55や接続導体56の形状に相当する端子を有していれば、中空筒型リアクトル装置1を直接的に接続できる。この接続方法によると、接触部512、522の板ばね状の弾性の効果で所定の接触圧が確保されるので、ねじなどの締結部材を用いた接続作業が不要になる。
リターン導体6は、銅やアルミニウムなどの金属材料を用いて、中心軸線AXを共通とする筒状に形成されている。リターン導体6は、コア4の外周側に配置されており、図略の絶縁体を用いて、コア4から絶縁支持されている。リターン導体6の筒状の両縁は、インダクタンス素子2のコア4の両端よりも少し突出している。
リターン導体6は、軸長方向の一端(図1の左端)に第1外側接続端子61を有し、軸長方向の他端(図1の左端)に第2外側接続端子62を有している。第1外側接続端子61は、軸長方向の縁に進むにつれて徐々に縮径されたテーパ形状部となっている。第2外側接続端子62は、軸長方向の縁に進むにつれて徐々に拡径されたテーパ形状部と、テーパ形状部に連なって縁に達する大径のガイド形状部63とからなっている。第1外側接続端子61および第2外側接続端子62は、接続導体を介して、または直接的に他の回路要素に接続される。
第1実施形態の中空筒型リアクトル装置1は、第1内側接続端子51および第1外側接続端子61を第1の回路要素に接続し、第2内側接続端子52および第2外側接続端子62を第2の回路要素に接続して用いる。このとき、第1内側接続端子51および第2内側接続端子52が高圧側となるように接続する。高圧側の往路電流は、第1の回路要素からインダクタンス素子2を経由して第2の回路要素へ流れる。また、低圧側の復路電流は、第2の回路要素からリターン導体6を経由して第1の回路要素へ流れる。往路電流と復路電流とは、大きさが同じで、流れる向きが逆方向になる。
なお、リターン導体6は、フレームグラウンドに接地しないでノイズの発生を抑制することが好ましいが、接地して用いることもできる。接地しない場合には、筒状のフレームグラウンドをリターン導体6の外周に配置して、リターン導体6を覆うようにすると一層好ましい。フレームグラウンドFGの具体例は、後述の第6実施形態の中空筒型コンバータ装置10で説明する。
第1実施形態の中空筒型リアクトル装置1は、絶縁被覆された導体を巻回したコイル3を中心軸線AXの周りに有するインダクタンス素子2を往路に備え、リターン導体6を復路に備えたリアクトル装置であって、インダクタンス素子2は、中心軸線AXが中空の筒状または環状であり、リターン導体6は、中心軸線AXを共通とする筒状であってインダクタンス素子2の同軸外周側に配置されている。
これによれば、中空筒型リアクトル装置1を概ね回転対称形状かつ同軸内外配置に構成できるので、電気回路の平衡性が良好になる。したがって、往復路とフレームグラウンドとの間の漏れインダクタンスが削減または相殺されてコモンモードノイズが抑制され、同様に、往復路とフレームグラウンドとの間の浮遊容量も相殺されて漏れ電流が抑制される。この効果として、中空筒型リアクトル装置の近傍に配置された電子制御機器や各種センサなどへのコモンモードノイズおよび漏れ電流の影響が軽減される。
また、インダクタンス素子2は、コイル3の各端に導通する第1および第2内側接続端子51、52を筒状の内周に有して他の回路要素に接続できる。したがって、設置位置の自由度が大きくかつ使い勝手がよく、電源装置の小形軽量化に適している。また、他の回路要素と接続する配線長さを短くでき、ワイヤインダクタンスが小さくなって、サージ電圧が抑制される。このため、第1実施形態の中空筒型リアクトル装置1は、搭載スペースの限られた車載用途に好適である。さらには、筒状のリターン導体6を低圧側に使用し、その内側に高圧側のインダクタンス素子2を配置して電気的にシールドできるので、安全性が高い。
さらに、コイル3は、薄板状の導体を半径方向に複数層巻回して断面を渦巻形状とした単位コイル31、32を中心軸線AXの軸長方向に複数個配置して直列接続したものである。単位コイル31、32の巻回形成作業は、後述の第5実施形態のエッジワイズ巻きのコイル3Dと比較して著しく容易である。したがって、簡素な構造で製造の容易なコイル3を実現でき、コストの低廉な中空筒型リアクトル装置1を提供できる。
次に、複数の中空筒型リアクトル装置1を直列接続して所望するインダクタンス値を得る場合について説明する。図5は、2個の第1実施形態の中空筒型リアクトル装置1M、1Nを直列接続した場合を模式的に示した縦断面図である。図示されるように、2個の中空筒型リアクトル装置1M、1Nを軸長方向に並べ、コア4同士が接するように配置することができる。このとき、第1の中空筒型リアクトル装置1Mの第1内側接続端子51の接触部512が第2の中空筒型リアクトル装置1Nの第2内側接続端子52の接触部522の内側に差し込まれ、自動的に接続される。また、第1の中空筒型リアクトル装置1Mの第1外側接続端子61は、わずかに切り落として寸法調整することで第2の中空筒型リアクトル装置1Nのガイド形状部63の内側に入り込んで、第2外側接続端子62に自動的に接続される。
さらに、3個以上の中空筒型リアクトル装置1を軸長方向に隣接して配置し、直列接続することもできる。このように、第1実施形態の中空筒型リアクトル装置1では、リターン導体6は、第1および第2外側接続端子61、62を筒状の軸長方向の各端に有し、複数の中空筒型リアクトル装置1M、1Nを中心軸線AXの軸長方向に隣接して配置すると、インダクタンス素子2の第1および第2内側接続端子51、52が相互に接続され、かつリターン導体2の第1および第2外側接続端子61、62が相互に接続される。
これによれば、所望するインダクタンス値を複数のリアクトルの直列接続によって実現するときに、中空筒型リアクトル装置1M、1N同士を接して配置できるので小形化が可能になる。また、中空筒型リアクトル装置1M、1N同士を相互に接続する手間が軽減される。
また、上述のように中空筒型リアクトル装置1の全体をユニット化するのでなく、インダクタンス素子2のみをユニット化するようにしてもよい。図6は、ユニット化したインダクタンス素子2を複数直列接続した第2実施形態の中空筒型リアクトル装置1Aを模式的に示した縦断面図である。図示されるように、第2実施形態では、2個のインダクタンス素子2は軸長方向に隣接して配置され、第1内側接続端子51と第2内側接続端子52との接触によって直列接続されている。一方、リターン導体6Aは1個だけ用いられ、その軸長方向の長さは第1実施形態の略2倍とされている。リターン導体6Aは、2個のインダクタンス素子2の同軸外周側に延在している。
さらに、3個以上のインダクタンス素子2を軸長方向に隣接して配置する場合には、リターン導体6Aの軸長方向の長さを適宜長くする。このように、第2実施形態の中空筒型リアクトル装置1Aでは、複数のインダクタンス素子2を中心軸線AXの軸長方向に隣接して配置するとともに直列接続し、リターン導体6Aを複数のインダクタンス素子2の同軸外周側に延在させた。
これによれば、所望するインダクタンス値を実現するときに、複数のインダクタンス素子2同士を接して配置すればよいので、小形化が可能になる。また、インダクタンス素子2の相互の接続は容易であり、延在するリターン導体6Aでは接続の手間は不要である。
次に、第1実施形態の磁路ギャップ部43を磁路狭窄部44に代えた第3実施形態の中空筒型リアクトル装置1Bについて、第1実施形態と異なる点を主に説明する。図7は、第3実施形態の中空筒型リアクトル装置1Bのコア4Bの磁路狭窄部44を説明する横断面図である。第3実施形態において、コア4Bを構成する2個の単位コア42Bの形状のみが第1実施形態と異なり、その他の部材は第1実施形態と同じである。図7には、軸長方向から見た単位コア42Bの互いに当接する端面が示されている。
図7に示されるように、単位コア42Bの内周レッグ421Bは、端面に段差があり、相対的に高い磁路形成部441と、相対的に低い磁路遮断部442とを有している。図7では、便宜的に磁路形成部441にハッチングを施して示している。磁路形成部441および磁路遮断部442は、周方向に交互に等角度間隔で4箇所ずつ設けられている。磁路形成部441の断面積は、磁路遮断部442の断面積よりも小さい。内周レッグ421Bの軸長方向の長さは、磁路形成部441では外周ヨーク422Bの軸長方向の長さに一致し、磁路遮断部442では外周ヨーク422Bの軸長方向の長さよりもわずかに短くなっている。したがって、2個の単位コア42Bを向い合せに当接させると、外周ヨーク422B同士の当接に加え、内周レッグ421Bの磁路形成部441同士も当接して磁路が連続する。また、内周レッグ421Bの磁路遮断部442同士は、ギャップ長を有して離隔対向し、磁路を遮断する。
磁路形成部441と磁路遮断部442とが並列に配置されることで磁路狭窄部44が形成されている。磁路狭窄部44の磁路断面積は、磁路形成部441の分だけとなり、コア4Bの他の部分よりも小さい。このため、コイル3に流れる電流が増加するにつれて、磁路狭窄部44で最初に磁気飽和が発生する。したがって、磁路形成部441と磁路遮断部442との断面積の比率やギャップ長を変更することにより、コア4Bの磁気特性を調整することができる。
このように、第3実施形態の中空筒型リアクトル装置1Bでは、インダクタンス素子2は、中心軸線AXの周りに導体を巻回した筒状または環状のコイル3と、コイル3に鎖交する磁路をもつコア4Bとを有し、コア4Bは、コイル3の内周側の位置に磁路の断面積を部分的に狭めた磁路狭窄部44を有する。これによれば、コア4Bに磁路狭窄部44を設けて磁気特性を自在に調整することができる。また、漏洩磁束の影響がコイル3の内周側の付近に限定されるので、外部への影響が抑制される。
次に、インダクタンス素子2がボビン7を有する第4実施形態の中空筒型リアクトル装置1Cについて、第1実施形態と異なる点を主に説明する。図8は、第4実施形態の中空筒型リアクトル装置1Cを模式的に示した中心軸線AXを含む縦断面図である。第4実施形態において、ボビン7を有する点が第1実施形態と異なり、その他の部材は第1実施形態に類似している。ボビン7は、例えば、絶縁性樹脂を成形型に注入成形して作製することができる。
図8に示されるように、ボビン7は、コイル保持部71、ギャップ保持部72、および端子保持部73が一体となって構成されている。コイル保持部71は、コイル3を取り囲んで形成されており、かつコア4の内部に収容されている。コイル保持部71は、コイル3を保持する機能、コア4とコイル3との間の絶縁機能、およびコア4とコイル3との間の位置決め機能を有している。ギャップ保持部72は、コア4の磁路ギャップ部43に入り込んで鍔状に形成されている。ギャップ保持部72は、磁路ギャップ部43を安定化する機能を有している。端子保持部73は、コア4と第1および第2内側端子51、52との間に入り込んで筒状に形成されている。端子保持部73は、第1および第2内側端子51、52を保持する機能を有している。
図9は、第4実施形態の中空筒型リアクトル装置1Cの製造方法を説明する分解断面図である。第4実施形態の中空筒型リアクトル装置1Cを製造するときに、まず、巻き型治具を使用してコイル3を巻回形成する。次に、コイル3に第1および第2内側端子51、52を接続して成形型にセットする。次に、ボビン7の原料となる溶融した樹脂を成形型に流し込み、樹脂を固化させた後に成形型を取り外す。これにより、図9の中央に示されるコイル3、ボビン7、ならびに第1および第2内側端子51、52の一体品が形成される。次に、矢印X3、X4に示されるように、ボビン7を挟み込むように第1単位コア41および第2単位コア42を軸長方向の両側から当接させて組み付ける。最後に、矢印X5に示されるように、軸長方向の一側からリターン導体6を組み付けると、中空筒型リアクトル装置1Cが完成する。
第4実施形態の中空筒型リアクトル装置1Cでは、インダクタンス素子2は、絶縁材料で形成されたボビン7を有し、ボビン7は、コイル3を保持する機能、コイル3の各端に導通する第1および第2内側接続端子51、52を保持する機能、コイル3に鎖交するコア4とコイル3との間の絶縁機能、コア4とコイル3との間の位置決め機能、コア4が有する磁路ギャップ部43を安定化する機能、ならびに導体を巻回する際の巻き型の機能のうち少なくとも一機能をもつ。これによれば、インダクタンス素子2がボビン7を有することで、絶縁性能の向上や、機械的強度の安定化、製造の容易化、品質の向上などの多様な効果が生じる。
なお、ボビン7の製造方法は、上述に限定されない。例えば、ボビン7を分割タイプとして予め作製しておき、コイル3を巻回形成するときの巻き型として機能させることができる。この場合には、コイル4を巻回形成した次にボビン7を組み立て、第1および第2内側端子51、52を接続する。そしてその後に、コア4を組み付け、リターン導体6を組み付ける。
次に、トロイダル構造の第5実施形態の中空筒型リアクトル装置1Dについて、第1〜第4実施形態と異なる点を主に説明する。図10は、第5実施形態の中空筒型リアクトル装置1Dを模式的に示した中心軸線AXを含む縦断面図である。また、図11は、図10のY3−Y3矢視を示す横断面図である。第5実施形態において、インダクタンス素子2Dを構成するコイル3Dおよびコア4Dの構造が第1実施形態と異なり、第1および第2内側端子51、52ならびにリターン導体6の構造は第1実施形態と同じである。
以下、第5実施形態の中空筒型リアクトル装置1Dについて、その構造とともに製造方法も併せて説明する。図10および図11に示されるように、第5実施形態のインダクタンス素子2Dは、中心軸線AXを周回する環状のコア4Dと、コア4Dに鎖交するように導体を巻回したトロイダル構造のコイル3Dと、を有している。インダクタンス素子2Dは、図11に示された分割面CAで上下に2分割された状態で予めサブアセンブリされ、最終的に一体化される。
コア4Dは、積層コアでも焼結コアでもよく、磁路の断面形状は、例えば図示される矩形とする。コア4Dは、予め2分割してカットコアとするので、それぞれのカットコアは概ね円弧状(半ドーナツ形状)となる。それぞれのカットコアの中心角を180°よりもわずかに小さくすることで、カットコアの端面同士が向かい合う位置に磁路ギャップ部43Dを形成することができる。ただし、磁路ギャップ部43Dは必須の構成要件でなく、完全な環状のコアや、第3実施形態に類似した磁路狭窄部を有するコアとしてもよい。
コア4Dを収容して保持し、かつコイル3Dを巻回形成する際の巻き型の機能を有する部材として、2個のボビン7Dを用いる。ボビン7Dは概ね円弧状(半ドーナツ形状)で、内部に矩形断面のコア収容孔を有している。ボビン7Dの外周面に絶縁被覆された平角導体をエッジワイズ巻きで巻回してコイル3Dを形成する。このとき、中心軸線AXに近い内側で平角導体を隙間なく巻回しても、中心軸線AXから遠い外側では、平角導体のターン間に隙間が生じる。したがって、放熱に寄与する平角導体の表面積が大きくなり、放熱性能が大いに優れる。コイル3Dを形成した後のボビン7Dのコア収容孔に、コア4Dを滑りこませて収容する。
次に、2つのボビン7Dを向い合せて一体化する。このとき、コア4Dの2箇所に形成される磁路ギャップ部43Dのギャップ長が等しくなるように周方向の位置を調整する。また、図11に示される一方のボビン7Dの平角導体の巻き終わり33Eと、他方のボビン7Dの平角導体の巻き始め34Sとを、外側で接続する。さらに、一方のボビン7Dの平角導体の巻き始め33Sを内側に引き出して、第1内側端子51に接続する。また、他方のボビン7Dの平角導体の巻き終わり34Eを内側に引き出して、第2内側端子52に接続する。これで、インダクタンス素子2Dが形成される。最後に、インダクタンス素子2Dの外周側にリターン導体6を組み付けて、中空筒型リアクトル装置1Dが完成する。
第5実施形態の中空筒型リアクトル装置1Dでは、インダクタンス素子2Dは、中心軸線AXを周回する環状のコア4Dと、コア4Dに鎖交するように導体を巻回したトロイダル構造のコイル3Dと、を有する。これによれば、コア4Dの外側をトロイダル構造のコイル3Dで取り囲むので、放熱性能が大いに優れる。特に、エッジワイズ巻きのコイル3Dを採用したことで、導体表面の放熱面積を顕著に大きくできるので熱的な制約が緩和され、小形軽量での大容量化が可能になる。
次に、本発明の第6実施形態の中空筒型コンバータ装置10について、図12〜図15を参考にして説明する。図12は、第6実施形態の中空筒型コンバータ装置10の電気回路図である。また、図13は、第6実施形態の中空筒型コンバータ装置10の構成を模式的に示した図である。中空筒型コンバータ装置10は、第1実施形態の中空筒型リアクトル装置1を組み込んで構成することができる。中空筒型コンバータ装置10は、一対の装置入力端子101、102を直流電源Batに接続し、一対の装置出力端子103、104を直流負荷DCLに接続して用いる。中空筒型コンバータ装置10は、直流電源Batの電源電圧を昇圧して直流負荷DCLに出力する。
図12に示されるように、中空筒型コンバータ装置10の電気回路は、インダクタL、2個のスイッチング部SW1、SW2、および2個のコンデンサC1、C2で構成されている。高圧側スイッチング部SW1は、パワー半導体モジュールとダイオードの並列接続で構成されている。パワー半導体モジュールにはIGBT素子を例示でき、これに限定されない。高圧側スイッチング部SW1の出力端子T1は、往路の装置出力端子103を介して直流負荷DCLの高圧側端子LHに接続される。
同様に、低圧側スイッチング部SW2も、パワー半導体モジュールとダイオードの並列接続で構成されている。低圧側スイッチング部SW2の出力端子T2は、復路の装置出力端子104を介して直流負荷DCLの低圧側端子LLに接続されるとともに、装置入力端子102を介して直流電源Batの負極端子BNに接続される。高圧側スイッチング部SW1および低圧側スイッチング部SW2に共通な入力端子TCは、インダクタLを経由し装置入力端子101を介して直流電源Batの正極端子BPに接続される。
また、一対の装置入力端子101、102の間に電源側コンデンサC1が接続され、一対の装置出力端子103、104の間に負荷側コンデンサC2が接続されている。さらに、装置入力端子102と装置出力端子104とを接続した復路に沿い、フレームグラウンドFGが設けられて接地されている。
図12の電気回路で、或る時間帯に低圧側スイッチング部SW2のパワー半導体モジュールを閉じると、直流電源BatからインダクタLに流れる電流が徐々に増加する。これにより、インダクタLは電磁エネルギを蓄積する。次の時間帯に、低圧側スイッチング部SW2のパワー半導体モジュールを開くと、インダクタLに流れる電流は、急激に変化できず高圧側スイッチング部SW1のダイオードから負荷側コンデンサC2に向かって流れる。負荷側コンデンサC2は、電磁エネルギを静電エネルギに変換して蓄積し、装置出力端子103、104の間の直流電圧が上昇する。これにより、昇圧された直流電圧が装置出力端子103、104から直流負荷DCLに出力される。これが昇圧の原理である。低圧側スイッチング部SW2を閉じている時間の比率(デューティ比)を変更することにより、昇圧後の直流電圧の大きさを可変に調整することができる。
なお、詳細な説明は省略するが、中空筒型コンバータ装置10は、低圧側スイッチング部SW2を常に開としておき高圧側スイッチング部SW1を開閉制御することで、逆方向に直流電圧を降圧して出力する機能も有している。すなわち、装置出力端子103、104の間に入力された高い直流電圧を降圧して、装置入力端子101、102から出力することもできる。
ここで、一般的なコンバータ装置では、図12に例示されるように、往復路の配線のワイヤインダクタンスL1や、往復路とフレームグラウンドFGとの間の漏れインダクタンスL2や、往復路とフレームグラウンドFGとの間の浮遊容量CFが寄生的に発生する。これらは仮想的な回路要素であるが、図12では破線の回路記号を用いて例示している。電気回路の構成が平衡していないと、これらの仮想的な回路要素(ワイヤインダクタンスL1、漏れインダクタンスL2、および浮遊容量CF)に起因するノイズが発生しやすく、かつノイズの影響が重大になりがちである。
そこで、第5実施形態の中空筒型コンバータ装置10では、インダクタLに第1実施形態の中空筒型リアクトル装置1を用いる。さらに、2個のスイッチング部SW1、SW2を含む中空筒型電力変換部81を用い、2個のコンデンサC1、C2に中空筒型コンデンサ83、84を用いる。図13に示されるように、中空筒型コンバータ装置10は、中空筒型リアクトル装置1、中空筒型電力変換部81、電源側中空筒型コンデンサ83、および負荷側中空筒型コンデンサ84を中心軸線AX上で組み合わせ、一体化して構成する。図13で、同軸内周側に高圧側の往路が並んで配置され、同軸外周側に低圧側の復路が並んで配置されている。さらに、復路の外周側に、同軸筒状のフレームグラウンドFGが配置されている。
電源側および負荷側中空筒型コンデンサ83、84については、本願出願人が出願した特願2012−65571号の中空筒型コンデンサを用いることができる。例えば、内周筒部および該内周筒部の一方の端部から外周側に延在する一側面部を有する一方極接続部と、前記内周筒部と中心軸線上に同軸に配置された外周筒部および該外周筒部の他方の端部から内周側に延在する他側面部を有する他方極接続部と、前記一方極接続部に接続される一方電極板、該一方電極板と対向し前記他方極接続部に接続される他方電極板、および前記一方電極板と前記他方電極板との間に介在される誘電体を有する静電容量部とを備え、前記内周筒部、前記一側面部、前記外周筒部、および前記他側面部の間に形成される環状空間内に前記静電容量部が高密度に収容されている中空筒型コンデンサを用いることができる。
中空筒型電力変換部81は、図13に示されるように、軸長方向の一面側に高圧側および低圧側スイッチング部SW1、SW2を有し、他面側に冷却ジャケット82を有している。図14は、第6実施形態の中空筒型コンバータ装置10に組み込んだ中空筒型電力変換部81の電気回路図である。また、図15は、図13の右方向から見た中空筒型電力変換部81の実態図である。図14に示されるように、高圧側スイッチング部SW1は並列接続された第1〜第3高圧側単位スイッチング部SW11〜SW13に3分割され、同様に、低圧側スイッチング部SW2は並列接続された第1〜第3低圧側単位スイッチング部SW21〜SW23に3分割されている。そして、図示されるように、高圧側と低圧側とが対になった単位回路構成が3並列されている。次に、図14の左側の第1の単位回路構成を代表とし、符号を付して詳述する。
第1高圧側単位スイッチング部SW11は、パワー半導体モジュールに相当するIGBT素子811(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ素子)、およびダイオード813の並列接続により構成されている。IGBT素子811のコレクタ電極CHは出力端子T1に接続され、エミッタ電極EHは入力端子TCに接続されている。IGBT素子811のゲート電極GHは、図略の制御部に接続されて制御信号が入力される。ダイオード813のアノードAHは入力端TCに接続されており、カソードKHは出力端子T1に接続されている。
第1低圧側単位スイッチング部SW21も、IGBT素子812およびダイオード814の並列接続により構成されている。IGBT素子812のコレクタ電極CLは、入力端子TCおよび高圧側のIGBT素子811のエミッタ電極EHに接続されている。IGBT素子812のエミッタ電極ELは、出力端子T2に接続されており、ゲート電極GLは、図略の制御部に接続されて制御信号が入力される。ダイオード814のアノードALは出力端子T2に接続されており、カソードKLは入力端子TCに接続されている。
ここで、図15に示されるように、中空筒型電力変換部81は、中心軸線AXが中空の環状に形成されている。合計6個の単位スイッチング部SW11〜SW13、SW21〜SW23は、中心軸線AXの周りに60°ピッチで配設されている。そして、図中の反時計回りに、第1高圧側単位スイッチング部SW11、第1低圧側単位スイッチング部SW21、第2高圧側単位スイッチング部SW12、第2低圧側単位スイッチング部SW22、第3高圧側単位スイッチング部SW13、および第3低圧側単位スイッチング部SW23の順番で配置されている。つまり、高圧側スイッチング部SW1と低圧側スイッチング部SW2とが周方向に交互に配置されている。また、高圧側スイッチング部SW1および低圧側スイッチング部SW2のそれぞれは、120°ピッチで回転対称に配置されている。
また、各単位スイッチング部のIGBT素子811、812は、正三角形のパワー半導体チップが6個用いられて正六角形状に形成されている。ダイオード813、814は、正三角形のパワー半導体チップを2個用いて形成され、当該の単位スイッチング部のIGBT素子811、812の正六角形の外周側に近い二辺に隣接配置されている。そして、各単位スイッチング部の外周側に、環状の出力端子T2が配置されている。一方、各単位スイッチング部の内周側のうち、図15の紙面手前側に環状の出力端子T1が配置され、紙面奥側に環状の入力端子TCが配置されている。
次に、第6実施形態の中空筒型コンバータ装置10の作用および効果について、参考形態と比較しながら説明する。図16は、参考形態の中空筒型電力変換部81Zの実態図である。参考形態においても、図14に示される電気回路図、ならびに環状の構成は変わらないが、高圧側スイッチング部および低圧側スイッチング部の配置が異なる。すなわち、参考形態では、3個の高圧側単位スイッチング部SW11〜SW13が180°の範囲に集中して配置され、残りの180°の範囲に3個の低圧側単位スイッチング部SW21〜SW23が集中して配置されている。
参考形態の中空筒型電力変換部81Zでは、3個の低圧側単位スイッチング部SW21〜SW23が閉じると、それぞれで内周側の入力端子TCから外周側の出力端子T2に向かう電流I4、I5、I6が流れる。これらの電流I4、I5、I6の大きさは相互に概ね等しく、中空筒型電力変換部81Zの180°の範囲に集中している。このため、電流の幾何学的な合成ベクトルは、図16の下方に向かっている。なお、ここで用いる合成ベクトルは、一般的な位相関係を考慮した電流ベクトルではなく、電流の流れる幾何学的な経路に基づいたものである。したがって、電流の幾何学的な合成ベクトルによって外部に漏洩磁束が誘起され、外部へ電磁的な影響を及ぼす。
これに対して、第6実施形態の中空筒型電力変換部81では、3個の低圧側単位スイッチング部SW21〜SW23が閉じると、入力端子TCから出力端子T2に向かい参考形態と同じ大きさの電流I1、I2、I3が流れる。ここで、3個の低圧側単位スイッチング部SW21〜SW23が中空筒型電力変換部81上で回転対称に配置されているので、図15に示されるように、これらの電流I1、I2、I3の幾何学的な合成ベクトルはキャンセルされて概ねゼロになる。したがって、電流I1、I2、I3によって外部に誘起される漏洩磁束が抑制され、近隣に配置された電子制御機器や各種センサなどへの電磁的な影響が低減される。
上述した電流の幾何学的な合成ベクトルがキャンセルされる効果は、低圧側単位スイッチング部SW21〜SW23が閉じたときだけでなく、これらが開いて電流が高圧側のダイオード813に流れるときも同様に発生する。さらに、電流の幾何学的な合成ベクトルがキャンセルされる効果は、高圧側単位スイッチング部SW11〜SW13を開閉制御して降圧するときにも同様に発生する。
第6実施形態の中空筒型コンバータ装置10では、第1実施形態の中空筒型リアクトル装置1と、通電位相を制御するパワー半導体モジュールをそれぞれ有する高圧側スイッチング部SW1および低圧側スイッチング部SW2を含んで、中心軸線AXの周りに環状に形成された中空筒型電力変換部81と、中心軸線AXの周りの環状空間内に静電容量部が高密度に収容されて形成された中空筒型コンデンサ83、84と、を中心軸線AX上で組み合わせて一体化し、直流電源Batの電源電圧を昇圧または降圧して直流負荷DCLに出力する。
これによれば、コンバータ装置10を構成する全ての回路要素を回転対称形状かつ同軸内外配置として協調した構成にできるので、電気回路の平衡性が極めて良好になる。また、回路要素の相互間を接続する配線長さを短くできる。したがって、漏れインダクタンスに起因するコモンモードノイズ、浮遊容量に起因する漏れ電流、およびワイヤインダクタンスに起因するサージ電圧が抑制される。また、全ての回路要素を中心軸線AXに沿って一列に配置できるので、小形軽量化が実現され、車載用途に好適である。
さらに、第6実施形態で、中空筒型電力変換部81は、高圧側スイッチング部SW1の出力端子T1が往路を介して直流負荷DCLに接続され、低圧側スイッチング部SW2の出力端子T2が復路を介して直流負荷DCLに接続され、さらに、高圧側スイッチング部SW1および低圧側スイッチング部SW2に共通な入力端子TCが中空筒型リアクトル装置1を介して直流電源Batに接続されており、中空筒型コンデンサは、中空筒型リアクトル装置1と直流電源Batとの間で往路と復路との間に接続された電源側中空筒型コンデンサ83と、中空筒型電力変換部81と直流負荷DCLとの間で往路と復路との間に接続された負荷側中空筒型コンデンサ84と、を含んでおり、電源電圧を昇圧する。これによれば、中空筒型リアクトル装置1、中空筒型電力変換部81、および2個の中空筒型コンデンサ83、84を組み合わせて、昇圧コンバータ装置10を構成できる。したがって、直流電源Batの電源電圧が変動しても、昇圧機能により安定して直流負荷DCLに給電できる。
さらに、第6実施形態で、高圧側スイッチング部SW1および低圧側スイッチング部SW2はそれぞれ、並列接続された3個のパワー半導体モジュールを含んで構成され、かつ、回転対称に配置されている。これによれば、高圧側スイッチング部SW1および低圧側スイッチング部SW2に流れる電流I1〜I3の幾何学的な方向が分散し、電流I1〜I3によって外部に誘起される漏洩磁束の少なくとも一部がキャンセルされる。したがって、近傍に配置された電子制御機器や各種センサなどへの電磁的な影響が軽減される。
次に、第7実施形態の中空筒型コンバータ装置について説明する。第7実施形態の中空筒型コンバータ装置は、第6実施形態と比較して、中空筒型電力変換部81Aの構成が異なり、その他の部材は同じである。図17は、第7実施形態の中空筒型コンバータ装置に組み込んだ中空筒型電力変換部81Aの電気回路図である。また、図18は、第7実施形態の中空筒型電力変換部81Aの実態図である。図17に示されるように、高圧側スイッチング部SW1は並列接続された第1〜第6高圧側単位スイッチング部SW14〜SW19に6分割され、同様に、低圧側スイッチング部SW2は並列接続された第1〜第6低圧側単位スイッチング部SW24〜SW29に6分割されている。そして、図示されるように、高圧側と低圧側とが対になった単位回路構成が6並列されている。それぞれの単位回路構成の構成要素および接続方法は、第6実施形態と同様であるので、説明は省略する。
ここで、図18に示されるように、中空筒型電力変換部81Aは、中心軸線AXが中空の環状に形成されている。高圧側と低圧側とが対になった6組の単位回路構成は、中心軸線AXの周りに60°ピッチで配設されている。そして、高圧側スイッチング部SW1および低圧側スイッチング部SW2はそれぞれ、60°ピッチで回転対称に配置されている。
また、高圧側および低圧側の各単位スイッチング部のIGBT素子815、816は、正三角形のパワー半導体チップが3個用いられて等脚台形状に形成されている。そして対になった高圧側および低圧側のIGBT素子815、816は、等脚台形の下底同士が接近するように配置され、両者815、816で正六角形状を形成している。高圧側および低圧側のダイオード817、818は、正三角形のパワー半導体チップを用いて形成され、当該のIGBT素子815、816の等脚台形の斜辺または上底に隣接配置されている。そして、単位スイッチング部の外周側に環状の出力端子T2が配置され、単位スイッチング部の内周側のうち図18の紙面手前側に環状の出力端子T1が配置され、紙面奥側に環状の入力端子TCが配置されている。
第7実施形態の中空筒型電力変換部81Aでは、6個の低圧側単位スイッチング部SW24〜SW29が閉じると、入力端子TCから出力端子T2に向かい相互に概ね等しい大きさの6個の電流I11〜I16流れる。また、この電流I11〜I16の大きさは、第6実施形態の電流I1、I2、I3の半分になる。ここで、6個の低圧側単位スイッチング部SW24〜SW29が中空筒型電力変換部81A上で回転対称に配置されているので、電流I11〜I16の幾何学的な合成ベクトルは、第6実施形態よりもさらに確実にキャンセルされて概ねゼロになる。
第7実施形態の中空筒型コンバータ装置では、高圧側スイッチング部SW1および低圧側スイッチング部SW2はそれぞれ、並列接続された6個のパワー半導体モジュールを含んで構成され、かつ、回転対称に配置されている。これによれば、高圧側スイッチング部SW1および低圧側スイッチング部SW2に流れる電流I11〜I16の幾何学的な方向が分散し、電流I11〜I16によって外部に誘起される漏洩磁束が第6実施形態よりもさらに確実にキャンセルされる。したがって、近傍に配置された電子制御機器や各種センサなどへの電磁的な影響が確実に低減される。
次に、本発明の第8実施形態の中空筒型電源装置10Dについて説明する。図19は、第8実施形態の中空筒型電源装置10Dの構成を模式的に示した縦断面図である。中空筒型電源装置10Dは、第1実施形態の中空筒型リアクトル装置1を組み込んだ第6実施形態の中空筒型コンバータ装置10と、中空筒型インバータ装置9とを中心軸線AX上で組み合わせ、一体化して構成することができる。中空筒型コンバータ装置10からみて、中空筒型インバータ装置9は直流負荷DCLに相当する。中空筒型インバータ装置9は、通電位相を制御するパワー半導体モジュールをそれぞれ含む三相の上アームおよび下アームを備え、中心軸線AXの周りに環状に形成されている。
中空筒型インバータ装置9として、特許文献3に開示したインバータ装置、例えば、パワー半導体モジュールを正六角形状に配置して構成されたインバータ装置を用いることができる。また、中空筒型インバータ装置9として、本願出願人が出願した特願2012−65572号のインバータ装置を用いることができる。例えば、同心内外に配置された中心電極および環状の外周電極の一方であって直流電源の正極端子に接続された正電極、ならびに前記中心電極および前記外周電極の他方であって前記直流電源の負極端子に接続された負電極と、通電位相を制御するパワー半導体モジュールをそれぞれ含み前記正電極と前記負電極との間に直列接続され、かつ前記正電極と前記負電極との間に環状に配置された三相の上アームおよび下アームとを備え、前記直流電源から入力された直流電力を三相電力に変換して、前記三相の上アームと下アームとの間の各レッグから出力するインバータ装置であって、並列接続された複数の上アームおよび並列接続された複数の下アームで各相を構成したインバータ装置を用いることができる。
第8実施形態の中空筒型電源装置10Dは、電気自動車またはハイブリッド車両に搭載されて用いられる。中空筒型電源装置10Dは、直流電源Batとなる車載バッテリと、三相交流負荷となる走行駆動モータMtrとの間に配置されて電気接続される。走行駆動モータMtrには、三相同期電動発電機を用いることができる。走行駆動モータMtrは、中心軸線AXを共通とし、中空筒型インバータ装置9に隣接して配置されている。走行駆動モータMtrの中心軸線AX上の出力軸Sftは、図略の走行用パワートレーンに連結されている。
図19に示されるように、中空筒型コンバータ装置10の一対の装置入力端子101、102は、筒状に形成されて同軸内外に配置されている。さらに、装置入力端子101、102は、同軸内外に配置された一対のバスバー111、112を介して車載バッテリに接続されている。また、中空筒型コンバータ装置10の一対の装置出力端子103、104は、中空筒型コンデンサ84の一方極接続部および他方極接続部で兼用され、中空筒型インバータ装置9に直結されている。中空筒型インバータ装置9の三相の出力端子91は、隣接配置された走行駆動モータMtrにわずかな距離で接続されている。中空筒型コンバータ装置10から走行駆動モータMtrにかけての外周に、大きな筒状のフレームグラウンドFGが配置されて車体に接地されている。
第8実施形態において、中空筒型コンバータ装置10は、車載バッテリの充電電圧を昇圧して中空筒型インバータ装置9に出力する。ここで、車載バッテリの充電電圧が変動しても、中空筒型コンバータ装置10は昇圧機能を有して所望する直流電圧を得ることができる。中空筒型インバータ装置9は、直流電圧に電力変換を施して三相交流電圧を生成し、走行駆動モータMtrに出力する。ここで、三相交流電圧の周波数および電圧値の少なくとも一方を可変に調整することにより、所望する速度で車両を走行させることができる。
逆に、車両の制動時には、走行駆動モータMtrは発電機モードで作動して回生発電を行い、制動量に見合った交流電圧を中空筒型インバータ装置9に出力する。中空筒型インバータ装置9は整流装置として作動し、直流電力をコンバータ装置10に出力する。コンバータ装置10は、降圧を行って車載バッテリを充電する。このように、中空筒型電源装置10Dは、双方向の電力変換を行う。
第8実施形態の中空筒型電源装置10Dでは、第6実施形態の中空筒型コンバータ装置10と、通電位相を制御するパワー半導体モジュールをそれぞれ含む三相の上アームおよび下アームを備え、中心軸線AXの周りに環状に形成された中空筒型インバータ装置9と、を中心軸線AX上で組み合わせて一体化し、直流電源の電源電圧に電力変換を施して三相交流電圧を生成し、三相交流負荷の走行駆動モータMtに出力する。
これによれば、中空筒型コンバータ装置10および中空筒型インバータ装置9は、回転対称形状かつ同軸内外配置に構成できるので、電気回路の平衡性が極めて良好になる。また、中空筒型コンバータ装置10と中空筒型インバータ装置9とを接続する配線長さを短くできる。したがって、漏れインダクタンスに起因するコモンモードノイズ、浮遊容量に起因する漏れ電流、およびワイヤインダクタンスに起因するサージ電圧が抑制される。また、全ての回路要素を中心軸線AXに沿って一列に配置できるので、小形軽量化が実現され、車載用途に好適である。
さらに、第8実施形態の中空筒型電源装置10Dは、電気自動車またはハイブリッド車両に搭載され、直流電源は車載バッテリであり、三相交流負荷は走行駆動モータMtrである。これによれば、車載バッテリの充電電圧が変動しても、走行駆動モータMtrが安定的に駆動され、車両が安定走行する。さらに、中空筒型電源装置10Dに逆方向の電力変換を行わせることで、回生発電による燃費の向上も可能になる。
なお、第1実施形態の中空筒型リアクトル装置1において、コイル3およびコア4の構成は、所望する性能に合わせて適宜設計変更できる。例えば、軸長方向に4個の単位コイルを配置して直列接続し、4個の単位コイルに鎖交するようにコアを形成することができる。また、中空筒型コンバータ装置10や中空筒型電源装置10Dは、実施形態で説明した電気回路に限定されず、適宜変更することができる。例えば、電力変換を単一方向にして電気回路を簡素化できる。当然ながら、電気回路の変更に基づいて、中心軸線AX上における中空筒型リアクトル装置1などの回路要素の配置を変更する。本発明は、その他にも様々な応用や変形などが可能である。