インターロイキン−32(IL−32)は最初に、ナチュラルキラー細胞転写物4(NK4)と名付けられた、サイトカイン様分子として、Dahlらによって1992年に同定された。1992年におけるその最初の同定以来、NK4は広く研究されてはおらず、用語NK4(またはNK−4)は、他の関連しないタンパク質に対しても指定された[Kim,1989; Smart, 1989; Date, 1997]。
悪性メラノーマに対する高用量IL−2治療を受けている患者由来の末梢血単核細胞(PBMC)において、NK4の遺伝子発現の増加が報告されたが、その機能は決定されてこなかった[Panelli, 2002]。
組換えNK4でのRaw264.7マクロファージ細胞の刺激によって、それらの細胞中で大量のTNF−αの分泌が誘導されたことが、Kimら(2005)によって最近報告された。したがって、NK4は、前炎症性サイトカインとして認識され、IL−32と新たに命名された[Kim, 2005]。
IL−32をコードしている遺伝子は、ヒト染色体16p13.3に存在する。IL−32遺伝子は、8つのエキソンを含む。IL−32α、IL−32β、L−32δおよびIL−32γアイソフォームをコードする、4つのIL−32mRNAスプライス変異体が、ヒトナチュラルキラー(NK)細胞にて検出され、IL−32γアイソフォームが、NK4転写物として先に報告された転写物と同一であることが同定された[Kim, 2005]。エキソン3および4を含むIL−32γ転写物は、N末端にて46個の追加アミノ酸を含むタンパク質アイソフォームをコードしている。IL−32δ転写物では、第二のエキソンは存在せず、翻訳の開始は、第三のエキソンに存在するATGコドンにて起こる。他の変異体とは異なり、IL−32α転写物はエキソン7および8を欠き、そのC末端にて57個のアミノ酸残基を欠くタンパク質アイソフォームをコードしている。4つのIL−32転写物のうち、IL−32α転写物がもっとも豊富であり、したがってIL−32αがより広く特徴付けされている。IL−32αアイソフォームのアミノ酸配列の解析によって、3つの可能性あるN−ミリストイル化部位および1つのN−グルコシル化部位が明らかになった[Kim, 2005]。
IL−32αおよびβが、用量依存的様式にて、PMA−分化THP−1細胞から、およびマウスRaw細胞から、有意な量の腫瘍壊死因子−α(TNF−α)およびマクロファージ炎症性タンパク質−2(MIP−2)の分泌を誘導することが報告された。組換えIL−32αおよびβ(rIL−32−αおよびβ)が、非分化ヒト単球THP−1細胞においてIL−8産生を誘導することが報告された。rIL−32βに対するモノクローナル抗体のFab断片が、用量依存様式にて、70%まで、rIL−32αの生物学的活性を減少させることが発見された。転写レベルにて、1.2KB IL−32mRNAが種々の組織で検出されたが、非免疫組織においてよりも、免疫細胞にてより顕著であった(Kim, 2005)。
ほとんどT細胞を含む、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)が、ConAでの刺激(主にT細胞刺激を誘導する)の後に、IL−32を産生し、分泌した。IL−32の産出または分泌は、PBMCのリポ多糖刺激(主にマクロファージ刺激を誘導する)後検出されなかった。これらの結果によって、T細胞がIL−32の主な産生細胞であることが示唆される。それにもかかわらず、IFN−γによる上皮細胞株の刺激が、IL−32産生を誘導することが発見された。
IL−32の前炎症性活性は、NF−κBの活性化を導く、I−κBの分解を介して調節されるようである。しかしながら、IL−32αによるMAPキナーゼの活性化もまた報告されている[Kim, 2005]。
プロテアーゼ3(PR−3、ミエロブラスチン、好中球PR−3およびウェーグナー自己抗原としても知られている)は、好中球/単球によって産生される顆粒セリンプロテアーゼであり、多数の生物学的基質を処理可能である[Baggiolini, 1978; Kao, 1988]。PR−3は、エラスチン、フィブロネクチン、IV型コラーゲンおよびラミニンを含む、種々の細胞外マトリックスタンパク質を分解し、p65NF−κBを不活性化する[Preston, 2002]。PR−3は、アンジオテンシノーゲン、TGF−β1、IL−1β、IL−8および膜結合TNF−αを含む多くのプロ−ホルモンおよびサイトカインを、それらの活性型に切断する[Ramaha,2002; Csernok, 1996; Coeshott, 1999; Padrines, 1994; Robache-Gallea, 1995]。実際、高いタイターのPR−3自己抗体(以下を参照のこと)が、TNF−αの切断を完全にブロックすることが発見された。
可溶性型および細胞膜型両方でみられるPR−3は、ウェーグナー肉芽腫症(WG)における主要な自己抗原である。ウェーグナー肉芽腫症は、成人における全身性血管炎を壊死させるもっとも一般的な自己免疫であり、主に呼吸器官および腎臓にて顕著である[Lamprecht, 2004; Frosch, 2004]。
「抗好中球細胞質自己抗体」(ANCA)として知られるPR−3に対する自己抗体は、WGの診断ホールマークである[van Rossum, 2003; Jennette, 1997]。膜PR−3(mPR−3)−高表現型の頻度は、ANCA−関連血管炎の患者、およびリウマチ様関節の患者において、有意に高いことが発見された。したがって、膜PR−3発現は、血管炎およびリウマチ様関節炎に対するリスク因子である[Witko-Sarsat, 1999]。好中球細胞の膜におけるPR−3の発現は、PR−3−抗好中球細胞質自己抗体(ANCA)−関連血管炎における再発に関連する。小血管血管炎の患者は、その血漿中での循環PR−3タンパク質のレベルが増加している[Ohlsson, 2003]。好中球の膜上の高レベルのPR−3発現もまた、WGリスク因子であり、WG疾患の再発に関連する(Rarok AA, Stegeman CA, Limburg PC, Kallenberg CG, J.Am Soc Nephrol.2002 Sep;13(9):2232-8)。
明らかに、WGの病因は、好中球および単球の表面に存在するPR−3抗体へのANCAの結合によって誘導される。ANCAの好中球および単球への結合は、細胞活性化、呼吸バースト、ならびに毒性酸素ラジカルおよびタンパク質分解酵素の放出を引き起こす。細胞表面でのPR−3の暴露、およびPR−3自己抗体の好中球への結合は、自己免疫化、および好中球誘導血管炎症の増幅を促進することが明らかである。
腎臓で顕著なANCA疾患を患っている患者からの末梢成熟好中球および単球の遺伝子発現プロファイルが、通常は骨髄前駆細胞のみにて発現される遺伝子の一群の転写のレベルの増加を示した(「左シフト」)。PR−3転写物は、増加した遺伝子のこの群に含まれ、PR−3発現の増加が、疾患活性および糸球体腎炎と相関する[Muller Kobold, 1998; Yang, 2004; Yang, 2002]。
嚢胞性線維症(CF)患者では、肺疾患再熱の時点で、循環単球におけるPR−3mRNAが増加する[Just, 1999]。表面タンパク質D(SP−D)は、CFの影響を受けた患者の肺にて存在する重要な先天性宿主防御分子であり、CF−関連病因と相互作用する[von Bredow, 2003]。SP−Dは、PR−3とっての標的タンパク質である。したがって、CF患者において、宿主防御は、PR−3によるSP−Dのタンパク質分解によって弱められることが明らかであり、したがってこれらの患者における肺の感染の発生率が増加する。
炎症を起こした歯茎を有する患者において、機能的PR−3が、口上皮細胞中に発現することが発見され、ANCAが患者の血清で発見された。機能的PR−3を発現している前記上皮細胞が、歯肉炎および歯周炎を含む歯茎の炎症工程に関与することが明らかである[Uehara, 2004]。
細胞表面、および細胞外空間にて作用することに加えて、PR−3が内皮細胞に入り、そこでたとえば、NF−κBを切断し、維持されたJNK活性化を誘導することによって、カスパーゼを摸倣することができる。PR−3はまた、主要細胞周期阻害剤p21Waf1/Cip1/Sdi1を切断し、不活性化する。高レベルのPR−3およびp21切断産物が、クローン病患者から、および潰瘍性大腸炎からとった、炎症ヒト組織にて発見された[Pendergraft, 2004]。
ジペプチジルペプチダーゼI(DPPI)は、PR−3などの好中球由来セリンプロテアーゼの完全活性化に必要である。PR−3ノックアウトマウスは入手できないが、DPPI−欠損マウスは首尾良く産出された[Adkison, 2002]。DPPIノックアウトマウスは、抗コラーゲン抗体による関節炎誘導に対して耐性であることが発見され、それらの関節において好中球を蓄積しなかった。好中球エラスターゼ(−/−)×カセプシンG(−/−)などのセリンプロテアーゼを欠損しているノックアウトマウスがまた、抗コラーゲン抗体による関節炎の誘導に対しても耐性であることが示されたので、関節炎誘導に対する耐性が、好中球由来セリンプロテアーゼの不活性化に相関する。
触媒三つ組の欠損によって産出された酵素的に不活性なPR−3断片[Yang, 2001]は、
(i)正常造血前駆細胞におけるDNA合成のダウン−モジュレーション、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)によって逆転可能である効果で、PR−3が、増殖のモジュレーターに対する拮抗勢力として機能できることを示唆する[Skold, 1999]、
(ii)転写および翻訳レベル両方での、インターロイキン−8の誘導[Berger, 1996]、および
(iii)ヒト臍帯血内皮細胞(HUVEC)中のアポトーシスの誘導[Yang, 2001]
を含む、種々の生物学的活性を維持している。
さきに言及したように、PR−3はセリンプロテアーゼであり、多くのよく特徴づけられた天然および合成セリンプロテアーゼ阻害剤が、可逆的または不可逆的にPR−3を不活性化可能である。種々のセリンプロテアーゼ阻害剤が、特異的にPR−3を阻害することが報告された。合成阻害剤7−アミノ−4−クロロ−3−(2−ブロモエトキシ)イソクマリンおよび3,4−ジクロロイソクマリン(DCI)が、それぞれ4700および2600M-1s-1のKI値を示した[Kam, 1992]。抗腫瘍薬物として最近使用されるヘキサスルホン化ナフチルウレアであるスラミンは、ヒト好中球エラスターゼ、カセプシンG、およびPR−3の強力な阻害剤である。PR−3に対するKiは、5・10-7Mである[Cadene, 1997]。1,2,5−チアジアゾリジン−3−オン1,1−ジオキシド骨格に基づく新しいクラスのペプチドミメティック薬剤が記述され、それらのスルホン誘導体が、ヒト白血球エラスターゼ、カセプシンG、およびPR−3の時間依存の、強力かつ高効果な不可逆的阻害剤であることが発見された[Groutas, 1997]。そのような化合物は、抗炎症薬剤として有用である(Groutas WC.,米国特許第5,550,139号、1996年8月27日)。
他のプロテアーゼ阻害剤は、種々の供給源のポリペプチドからなる。ヒト白血球エラスターゼを阻害するヒト皮膚由来ペプチドであるエラフィンは、9.5×10-9MのIC50を示す、強力なPR−3の阻害剤である。強度は、抗白血球プロテアーゼおよびエグリンCと比較して、100倍以上高いことが発見された[Wiedow, 1991; Zani, 2004]。MNEI(単球/好中球エラスターゼ阻害剤)は、42kDaセルピンスーパーファミリーメンバーであり、エラスターゼ−およびキモトリプシン−様特異性によりプロテアーゼを効果的に阻害する。MNEIは、>107M-1・s-1の速度にて、PR−3を急速に阻害する[Cooley, 2001]。生物工学処理セルピン(LEX032)が、PR−3の時間依存阻害剤であることが発見され、非常に安定な酵素−阻害剤複合体を形成する(Ki 12nM)[Groutas, 1997]。したがって、多くのセリンプロテアーゼ阻害剤が、PR−3を阻害することが特異的に示された。
本発明は、IL−32のPR−3への結合に基づいた、インターロイキン32(IL−32)のモジュレーターのスクリーニング方法に関し、候補モジュレーターの存在下におけるIL−32のPR−3への結合を測定すること、前記結合のレベルを、前記候補モジュレーターの非存在下におけるIL−32のPR−3への結合のレベルと比較すること、および前記結合を阻害または増強することが可能なモジュレーターを選択することを含む。
本発明の実施態様において、IL−32のPR−3への前記結合は、表面プラズモン共鳴によって測定される。
本発明の1つの実施態様において、前記モジュレーターがIL−32のPR−3への結合を阻害する。
本発明のさらなる実施態様において、モジュレーターは、IL−32の阻害剤、好ましくはIL−32の炎症活性の阻害剤である。
本発明の他の実施態様において、前記モジュレーターは、IL−32のPR−3への結合を増強し、IL−32の活性を増強する。
本発明のさらに他の実施態様において、モジュレーターは、PR−3の断片であり、IL−32に結合するが、しかしそれを切断できない。
本発明は、インターロイキン32(IL−32)におけるPR−3のタンパク質分解活性に基づくIL−32活性の阻害剤のスクリーニング方法を提供し、候補阻害剤の存在下におけるPR−3によるIL−32のタンパク質分解を決定すること、およびPR−3のタンパク質分解活性によって産出されるIL−32断片の発生または完全(intact)IL−32の消失を阻害することが可能な阻害剤を選択することを含む。
本発明の1つの実施態様において、前記阻害剤は、IL−32の炎症活性を阻害する。
本発明の他の実施態様において、前記IL−32断片は、約16kDaまたは約13kDaである。
さらに、本発明は、IL−32応答性細胞中のPR−3によるIL−32仲介サイトカイン分泌の増強に基づく、インターロイキン32(IL−32)活性の阻害剤のスクリーニング方法を提供し、IL−32およびPR−3を、候補阻害剤の存在下で、IL−32応答性細胞と接触させること、前記細胞の細胞培養液中のサイトカインの濃度を測定すること、前記候補阻害剤の非存在下における前記細胞の培養培地中の前記サイトカインの濃度と比較すること、および前記サイトカイン分泌を阻害できる阻害剤に関して選択することを含む。
本発明の1つの実施態様において、前記阻害剤はIL−32の炎症活性を阻害する。
本発明の他の実施態様において、IL−32応答性細胞はT細胞またはマクロファージ細胞である。
本発明のさらなる実施態様において、サイトカインは、TNF、IL−8およびMIP−2からなる群より選択される。
本発明はまた、インターロイキン32(IL−32)の活性またはその断片の活性のモジュレーターのスクリーニング方法を提供し、候補モジュレーターの存在下で、IL−32−応答性細胞をIL−32で、またはその断片で刺激すること、前記細胞の培養培地中に分泌されたサイトカインの濃度を測定すること、前記候補モジュレーターの非存在下における前記細胞の培養培地中に分泌された前記サイトカインの濃度と比較すること、および前記細胞からの前記サイトカインの分泌を阻害または増強できるモジュレーターを選択することを含む。
本発明の1つの実施態様において、IL−32断片は、PR−3のタンパク質分解活性によって産出される約16kDaの断片である。
本発明の他の実施態様において、IL−32断片は、PR−3のタンパク質分解活性によって産出される約13kDaの断片である。
本発明のさらなる実施態様において、IL−32応答性細胞はT細胞またはマクロファージ細胞である。
本発明のまたさらなる実施態様において、前記候補モジュレーターは、本発明の方法によって選択された阻害剤および増強剤からなる群より選択される。
本発明のまたさらなる実施態様において、モジュレーターはIL−32の炎症活性の阻害剤である。
本発明は、本発明のスクリーニング方法によって選択された、IL−32炎症活性の阻害剤などの、IL−32活性のモジュレーターを提供する。
1つの実施態様において、本発明は、本発明のスクリーニング方法によって選択されたIL−32活性の増強剤を提供する。
1つの態様において、本発明は、IL−32またはその断片の、その発現細胞からの上方調節された産生および/または分泌によって、ヒトを含む哺乳動物内で引き起こされる、または悪化する疾患の治療のための医薬品の製造におけるPR−3の阻害剤の利用を提供する。
本発明の1つの実施態様において、疾患は、IL−32の断片の産出および/または分泌によって引き起こされ、または悪化する。
本発明の他の実施態様において、IL−32断片は、約16kDaのものであり、かつPR−3のタンパク質分解活性によって産出される。
本発明のさらなる実施態様において、IL−32断片は、約13kDaのものであり、かつPR−3のタンパク質分解活性によって産出される。
本発明のまたさらなる実施態様において、IL−32またはその断片を発現する細胞は上皮細胞である。
本発明のまたさらなる実施態様において、PR−3の阻害剤は、イソクマリン、ジクロロイソクマリン、スラミン、ヘキサスルホン化ナフチルウレア、1,2,5−チアジゾリジン−3−オン1,1−ジオキシド骨格およびそれらのスルホン誘導体に基づくペプチドミメティック薬剤、プロテアーゼ阻害剤、エラフィン、抗ロイコプロテアーゼエグリンC、MNEI(単球/好中球エラスターゼ阻害剤)、生物工学処理セルピンLEX032、および中和抗−PR−3抗体からなる群より選択される。
他の態様において、本発明は、IL−32またはその断片の、その発現細胞からの制御されていない産生および/または分泌によって、ヒトを含む哺乳動物内で引き起こされる、または悪化する疾患の治療のための医薬品の製造における、本発明の方法にしたがって選択されたIL−32の増強剤または阻害剤の使用を教示する。
本発明の1つの実施態様において、疾患がIL−32の断片の制御されていない産出および/または分泌によって引き起こされ、または悪化する。
本発明の他の実施態様において、IL−32断片は、約16kDaのものであり、かつPR−3のタンパク質分解活性によって産出される。
本発明のさらなる実施態様において、IL−32断片は、約13kDaのものであり、かつPR−3のタンパク質分解活性によって産出される。
またさらなる実施態様において、モジュレーターは、本発明のスクリーニング方法によって選択された阻害剤である。
またさらなる実施態様において、発現細胞からのIL−32の、またはその断片の産出または分泌が上方調節される。
またさらなる実施態様において、IL−32またはその断片を発現する細胞は、上皮細胞である。
またさらなる実施態様において、疾患は炎症性疾患である。
さらなる態様において、本発明は、IL−32またはその断片の、その発現細胞からの上方調節された産生および/または分泌によって、ヒトを含む哺乳動物内で引き起こされる、または悪化する疾患の治療方法に関し、該方法は、そのような必要としている哺乳動物に、効果的な量のPR−3阻害剤を投与することを含む。
本発明の1つの実施態様において、疾患が、IL−32の断片の制御されていない産出および/または分泌によって引き起こされ、または悪化する。
本発明の他の実施態様において、IL−32の断片は、約16kDaのものであり、かつPR−3のタンパク質分解活性によって産出される。
本発明のまたさらなる実施態様において、IL−32断片は、約13kDaのものであり、かつPR−3のタンパク質分解活性によって産出される。
本発明のまたさらなる実施態様において、IL−32またはその断片を発現する細胞は上皮細胞である。
本発明のまたさらなる実施態様において、PR−3阻害剤は、イソクマリン、ジクロロイソクマリン、スラミン、ヘキサスルホン化ナフチルウレア、1,2,5−チアジゾリジン−3−オン1,1−ジオキシド骨格およびそれらのスルホン誘導体に基づくペプチドミメティック薬剤、プロテアーゼ阻害剤、エラフィン、抗ロイコプロテアーゼエグリンC、MNEI(単球/好中球エラスターゼ阻害剤)、生物工学処理セルピンLEX032、および中和抗−PR−3抗体からなる群より選択される。
またさらなる態様において、本発明は、IL−32またはその断片の、その発現細胞からの制御されていない産生および/または分泌によって、ヒトを含む哺乳動物内で引き起こされる、または悪化する疾患の治療方法に関し、該方法は、そのような必要としている哺乳動物に、効果的な量の本発明のスクリーニング方法のいずれか1つにしたがって選択されるモジュレーターを投与することを含む。
本発明の1つの実施態様において、疾患が、IL−32の断片の上方調節された産出および/または分泌によって引き起こされ、または悪化する。
本発明の他の実施態様において、IL−32を発現する細胞は上皮細胞である。
本発明のまたさらなる実施態様において、IL−32断片は、約16kDaまたは13kDaのものであり、かつPR−3のタンパク質分解活性によって産出される。
本発明はまた、約16kDaまたは約13kDaからなるIL−32断片、そのムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、円順列誘導体、または活性画分などの、PR−3によるIL−32のタンパク質分解によって得られるIL−32のポリペプチド断片も提供する。
さらに、本発明は、約16kDaからなるIL−32断片または約13kDaからなるIL−32断片からなるIL−32断片などの、PR−3によるIL−32のタンパク質分解によって得られるIL−32のポリペプチド断片、そのムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、円順列誘導体、または活性画分、および薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物を提供する。
また、一つの実施態様において、本発明は、配列番号:1のIL−32のポリペプチド断片、そのムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、円順列誘導体、または活性画分を提供する。
他の実施態様において、本発明は、配列番号:2のIL−32のポリペプチド断片、そのムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、円順列誘導体、または活性画分を提供する。
さらなる実施態様において、たとえば、病原薬物または癌に対する宿主免疫応答を増強するために、本発明は、配列番号:1のIL−32のポリペプチド断片、配列番号:2のIL−32のポリペプチド断片、そのムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、円順列誘導体、または活性画分と、薬学的に許容され得る担体とを含む、医薬組成物を提供する。
本発明は、PR−3がインターロイキン32(IL−32)に結合し、IL−32タンパク質分解を引き起こし、PR−3の活性によって産生されたタンパク質分解断片が活性を増強するという本発明者らの発見に基づく、IL−32活性のモジュレーターのスクリーニング(または同定または選択)方法に関する。
さらに、本発明は、前記スクリーニング方法によって同定されたIL−32活性のモジュレーター、およびIL−32の、またはその断片の制御されていない産生および/または分泌によって引き起こされる、または悪化する疾患における前記モジュレーターの使用に関する。
本発明はまた、IL−32に結合するが、切断は不可能であるPR−3の断片である、IL−32活性の阻害剤に関する。
サイトカインは通常、防御を増強することに役に立つ。しかしながら、過剰に作用した場合、これらは大きな障害を引き起こし得、それは病原体が引き起こし得るよりも小さくはない。実際、多くの疾患において、サイトカインの不当な効果が主要な病因を構成する。IL−32またはその断片の産生および/または分泌の上方調節が、炎症性疾患を引き起こし得、または炎症性疾患を悪化させ得る。IL−32活性の阻害剤は、IL−32産生および/分泌の上方調節によって引き起こされる、または悪化する炎症性疾患を阻害することが望ましい。IL−32またはその断片の産生および/または分泌の下方調節が宿主防御を弱め、それによって、感染および癌の発生率を増加させる。IL−32活性の増強剤は、IL−32産生および/または分泌の下方調節によって引き起こされる、または悪化する感染および癌を阻害することが望ましい。本発明は、PR−3が高い親和力でIL−32に結合し、IL−32を13および16kDa断片に分解し、完全IL−32の生物学的活性と比較して、増強した生物学的活性を示すという本発明者らの発見に基づいている。
以下の実施例の項にて例示するように、本発明者らは、PR−3がIL−32の活性化において重大な役割を果たすことを確立した。
簡単に記すと、本発明者らは、アガロースに結合したヒトIL−32からなるカラムにて未精製ヒト尿タンパク質を濃縮し、該カラムにのせた。本発明者らは、カラムpHを低下させることによって、カラム−結合タンパク質を溶出し、SDS−PAGE(10%アクリルアミド)によって溶出したタンパク質を解析した。(以下の実施例1で記述したような)好中球由来セリンプロテアーゼPR−3としてさらに同定された28〜32kDaのタンパク質バンドが、溶出画分の1つに特異的に濃縮された(図1溶出画分3)。
本発明者らは、PR−3が高い親和力でIL−32に結合することを発見した(尿PR−3で約2.65×10-8MのKd、市販PR−3で約1.20×10-8MのKd、実施例2を参照のこと)。PR−3のIL−32への結合親和力は、PR−3をフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)でプレインキュベーションした後に非常にわずかにしか減少せず、これは、IL−32のPR−3への結合が、後者の酵素的活性に依存しないことを示唆している。
本発明者らは、PR−3が(約20kDaの)IL−32を、約13kDa(配列番号:1)および16kDa(配列番号:2)の断片に切断することを見出した。
PR−3はIL−32をThr(57)とVal(58)との間で切断する。YLET(57)V(58)AAY。
13kDa配列は、IL−32のN−末端断片であると予想され:MCFPKVLSDDMKKLKARMHQAIERFYDKMQNAESGRGQVMSSLAELEDDFKEGYLET(配列番号:1)、16kDa配列はC−末端断片と予想される:VAAYYEEQHPELTPLLEKERDGLRCRGNRSPVPDVEDPATEEPGESFCDKSYGAPRGDKEELTPQKCSEPQSSK(配列番号:2)。
本発明者らは、(約20kDaの)IL−32タンパク質が、市販PR−3との1分間のインキュベーション後に消え、同時に13kDa(配列番号:1)および16kDa(配列番号:2)が産出されたことを示した。PMSFでのPR−3の前処理が、IL−32の切断を完全にブロックした。
本発明者らは、驚くべきことに、(実施例8にて示されたように)13kDa(配列番号:1)および16kDa(配列番号:2)の、IL−32のタンパク質分解断片が、完全IL−32タンパク質と比較して、増強された生物学的活性を有することを見出した。IL−32の切断、およびそれに続く生物学的活性の増強がPMSFの作用によって両方ブロックされた。
本記述の目的として、表現「IL−32の生物学的活性(biological activity of IL-32)」は、とりわけ、以下の生物学的特性、(i)MIP−2の誘導、(ii)TNFの誘導、および(iii)IL−8の誘導の少なくとも1つを意味する。
したがって、本発明者らの結果に基づいて、IL−32のPR−3への結合(またはIL−32−PR−3複合体の形成)の調節が、IL−32の活性を調節、すなわち増強または阻害する。本明細書で使用するところの、表現「IL−32の活性を阻害する(inhibiting the activity of IL-32)」は、ブロッキング、たとえば部分阻害などに加えて、任意のIL−32活性を阻害する阻害剤の能力を意味する。
本発明は、モジュレーター分子を同定する方法、PR−3のIL−32への結合(またはPR−3−IL−3複合体形成)を増強または阻害可能である分子を同定することを含む方法を提供し、当該分子がモジュレーターである。
1つの実施態様において、本発明は、候補モジュレーターの存在下におけるインターロイキン32(IL−32)のPR−3への結合を測定すること、前記候補モジュレーターの非存在下におけるIL−32のPR−3への結合と比較すること、および前記結合を阻害または増強可能なモジュレーターを選択(または同定)することを含む、IL−32のPR−3への結合に基づいた、IL−32活性のモジュレーターのスクリーニング方法に関する。
1つの実施態様において、候補モジュレーターはコンビナトリアルケミストリーによって設計され得る有機分子である。
本発明にしたがった用語「IL−32」には、IL−32α、IL−32β、IL−32γおよびIL−32δなどの、すべてのIL−32アイソフォームが含まれる。
用語「IL−32活性のモジュレーター(modulator of IL-32 activity)」は、IL−32活性の阻害剤または増強剤を意味する。
本明細書で使用されるところの、表現「IL−32への結合(binding to IL-32)」は、たとえば、実施例1においてアフィニティ精製されたとき、または実施例3においてBIAcoreにて試験されたときに、IL−32に結合しているPR−3によって証明されるように、PR−3のIL−32に結合する能力を意味する。
言及したように、サイトカインは通常防御を増強するために働く。しかしながら、過剰に働いた場合、これらは大きな障害を引き起こし得、それは病原体が引き起こし得るよりも小さくはない。実際、多くの疾患において、サイトカインの不当な効果が、主要な病因を構成する。過剰に働くIL−32は、TNFの過敏機能および炎症を引き起こし得る。本発明のさらなる実施態様において、モジュレーターはIL−32の炎症活性の阻害剤である。
IL−32の欠損は、宿主防御を弱め、それによって感染および癌の発生率を増加させる。本発明のさらなる実施態様において、モジュレーターがIL−32の活性の増強剤である。
本発明者らの結果に基づくと、(PMSFにて以下で例示するように)PR−3によるIL−32のタンパク質分解を阻害することが、IL−32の活性の阻害をもたらす。
本発明は、モジュレーター分子を同定する方法を提供し、該方法は、PR−3によるIL−32のタンパク質分解を増強するか、または阻害することが可能な分子を同定することを含み、当該分子はモジュレーターである。
1つの実施態様において、本発明は、IL−32上のPR−3のタンパク質分解活性に基づくIL−32活性の阻害剤のスクリーニング方法に関し、該方法は、候補阻害剤の存在下におけるPR−3によるIL−32のタンパク質分解を測定すること、およびPR−3のタンパク質分解活性によって産出されるIL−32断片の発生または完全IL−32の消失を阻害することが可能な阻害剤を選択することを含む。
さらなる実施態様において、IL−32のタンパク質分解を測定することは、実施例5〜7にて例示したように、約16および13kDaの分子量を有する、PR−3によって産出されるIL−32断片をモニターすることによって、および/または、約20kDaの分子量の完全IL−32の消失をモニターすることによって実施する。
本発明者らの結果に基づくと、(PMSFにて以下で例示したように)PR−3を阻害することが、IL−32の生物学的活性を阻害する。
本発明の他の実施態様にしたがって、任意の公知の方法によってPR−3を切断することで得られる、IL−32に結合するがIL−32を切断することはできないPR−3の断片を利用して、切断されたIL−32によって明示されるような、PR−3のIL−32の生物学的活性における増強機能を無効にし得る。
本発明にしたがって、PR−3を、CNBrまたはトリプシンによって切断し、PR−3の得られた断片を、BIACOREによってIL−32に対する親和性について確認し、完全PR−3の親和性と比較する。次いで、高い親和性を有する断片をさらに、IL−32の生物学的活性の阻害に関して試験した。
本発明は、モジュレーター分子を同定する方法を提供し、該方法は、PR−3によって増強されたIL−32の生物学的活性を増強する、または阻害することが可能な分子を同定することを含み、該方法において生物学的活性は、IL−32応答性細胞による、IL−8、TNFおよびMIP−4などのサイトカインの分泌によって現され、該分子がモジュレーターである。
1つの実施態様において、本発明は、インターロイキン32(IL−32)応答性細胞における、PR−3によるIL−32−仲介サイトカイン分泌の増強に基づいた、IL−32活性の阻害剤のスクリーニング方法に関し、該方法は候補阻害剤の存在下でIL−32応答性細胞とIL−32およびPR−3を接触させること、前記細胞の培養培地中のサイトカインの濃度を測定すること、前記候補阻害剤の非存在下での前記細胞の培養培地中の前記サイトカインの濃度と比較すること、および前記サイトカイン分泌を阻害できる阻害剤を選択することを含む。
本発明は、モジュレーター分子を同定する方法を提供し、該方法は、IL−32の活性を増強または阻害可能な分子、またはIL−32 13kDa(配列番号:1)および16kDa(配列番号:2)断片の活性または産出を増強または阻害可能な分子を同定することを含み、当該分子がモジュレーターである。
1つの実施態様において、本発明は、インターロイキン32(IL−32)の活性のモジュレーター、またはその断片の活性または産出を増強または阻害可能な分子のスクリーニング方法に関し、該方法は、候補モジュレーターの存在下でIL−32−応答性細胞をIL−32で、またはその断片で刺激すること、前記細胞の培養培地中に分泌されたサイトカインの濃度を測定すること、前記候補モジュレーターの非存在下で前記細胞の培養培地中に分泌された前記サイトカインの濃度と比較すること、および前記細胞からの前記サイトカインの分泌を阻害または増強できるモジュレーターを選択することを含む。
本明細書で使用するところの表現「PR−3によるIL−32仲介サイトカイン分泌の増強(enhancement of IL-32-mediated cytokine secretion by PR-3)」は、たとえば(実施例8にて例示したような)PR−3とともにインキュベートしたIL32によって刺激されるIL−8またはMIP−2の分泌の増強によって明らかなように、IL−32応答性細胞内での、IL−32仲介サイトカイン分泌を増強するPR−3の能力を意味する。
1つの実施態様において、本発明は、本発明の方法によって見出されたIL−32のモジュレーター、ならびにIL−32またはその断片の、その発現細胞からの制御されていない産生および/または分泌によって、ヒトを含む哺乳動物内で引き起こされる、もしくは悪化する疾患の治療のための医薬品の製造におけるそれらの使用に関する。
さらなる実施態様において、本発明は、IL−32またはその断片の、その発現細胞からの制御されていない産生および/または分泌によって、ヒトを含む哺乳動物内で引き起こされる、または悪化する疾患の治療のための医薬品の製造におけるPR−3のモジュレーターの使用に関する。
本発明者らの結果は、本発明のスクリーニング方法によって同定された、PR−3の阻害剤、PR−3のIL−32への結合の阻害剤、(PMSFによって以下で例示された)PR−3によるIL−32タンパク質分解の阻害剤、およびIL−32の生物学的活性の阻害剤などの、本発明の阻害剤が、たとえば、IL−32の内因性産出または外因性投与が疾患の原因であるか、または患者の状態を悪化させる疾患において、IL−32活性の阻害剤として使用し得ることがわかったことを示している。
本発明の1つの実施態様において、本発明のスクリーニング方法によって同定されたIL−32活性の阻害剤は、炎症などの、IL−32の産生および/または分泌の増加によって引き起こされるか、または悪化する疾患で使用される。
用語「炎症」、「炎症性疾患(inflammation diseases)」、「炎症状態(inflammation condition)」または「炎症過程(inflammation process)」は、炎症反応に伴う、生理学的または病理学的状態を意味する。そのような状態には、限定はしないが、敗血症、虚血再灌流傷害、クローン病、関節リウマチ、多発性硬化症、心筋症、結腸炎、感染性髄膜炎、脳炎、急性呼吸促迫症候群、ウェーグナー肉芽腫症、アテローム性動脈硬化症、(皮膚、腎臓、心臓、肺、肝臓、骨髄、角膜、膵臓、小腸などの)器官/組織移植拒絶、皮膚炎、脳卒中、外傷性脳傷害、乾癬および狼瘡が含まれる。
本発明は、ヒトを含む哺乳動物における、T細胞および内皮細胞などの、発現細胞中のIL−32またはその断片の制御されていない産生および/または分泌によって引き起こされる、または悪化する疾患の治療方法を提供し、該方法は効果的な量のPR−3阻害剤を、必要としているそのような哺乳動物に投与することを含む。
用語「治療(treatment)」または「治療すること(treating)」は、制御されていないIL−32活性によって引き起こされるか、または悪化するものの予防法(prophylaxis)、改善、予防(prevention)または治癒を含み得る目的のために、対象への、本発明の化合物の投与を含むことが意図される。そのような治療は、炎症反応または特定の疾病に関連する他の反応を必ずしも完全に改善する必要はなない。さらに、そのような治療は、単独治療として、または当業者に公知な疾患、疾病または状態の有害な効果を減少させるための他の常套的な治療との組合せで使用し得る。
本発明の方法は、疾病の発現から、たとえば移植患者などのその同じ疾病に高リスクの患者を予防するために、たとえば炎症状態の検出前の「予防的(preventive)」治療として提供され得る。
用語「癌(cancer)」は、転移、腫瘍増殖および血管新生を含む種々の癌関連状態を意味する。
本発明にしたがって、イソクマリン、ジクロロイソクマリン、スラミン、ヘキサスルホン化ナフチルウレア、1,2,5−チアジゾリジン−3−オン1,1−ジオキシド骨格およびそれらのスルホン誘導体に基づくペプチドミメティック薬剤、プロテアーゼ阻害剤、エラフィン、抗ロイコプロテアーゼエグリンC、MNEI(単球/好中球エラスターゼ阻害剤)、生物工学処理セルピンLEX032、および中和抗−PR−3抗体から選択されるPR−3阻害剤などのPR−3の阻害剤が、IL−32活性化および放出の阻害剤として提供される。
本発明はまた、PR−3に対する、ならびにそれらのムテイン、融合タンパク質、塩、機能的誘導体および活性画分に対する中和抗体の使用を含む。用語「抗体(antibody)」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(MAbs)、キメラ抗体、抗イディオタイプ(抗−Id)抗体から可溶性型または結合型にて標識化可能な抗体、およびヒト化抗体、ならびに限定はしないが酵素的切断、ペプチド合成または組換え技術などの任意の公知の技術によって提供されるそれらの断片が含まれることを意味する。
言及したように、サイトカインは通常防御を増強するように働く。過剰にIL−32が作用することがTNFの過剰な機能を引き起こし得るが、許容濃度でのIL−32またはその活性画分は宿主防御を増強するように働き得る。
1つの側面において、本発明は、約16kDa(配列番号:2)のIL−32のポリペプチド断片、および約13kDa(配列番号:1)のIL−32のポリペプチド断片に関し、両方とも活性であり、PR−3のタンパク質分解活性によって得られる。
本発明はまた、IL−32 16kDa(配列番号:2)ポリペプチド、またはそのムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、円順列誘導体もしくは活性画分にも関する。
本発明はまた、IL−32 13kDa(配列番号:1)ポリペプチド、またはそのムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、円順列誘導体もしくは活性画分にも関する。
本明細書で使用するところの用語「ムテイン(muteins)」は、元のタンパク質と比較して、得られた産物の活性を相当に変更することなしに、天然に存在するタンパク質の成分の1つまたはそれ以上のアミノ酸残基が、異なるアミノ酸残基によって置換されるか、または欠損するか、または1つまたはそれ以上のアミノ酸残基がタンパク質の本来の配列に加えられる、タンパク質の類似体を意味する。これらのムテインは、したがって公知の合成によって、および/または部位特異的突然変異誘発技術によって、または好適な任意の他の公知の技術によって調製される。
本発明にしたがったムテインには、ストリンジェントな条件下で、本発明にしたがって、タンパク質をコードしている、DNAまたはRNAにハイブリダイズする、DNAまたはRNAなどの核酸によってコードされるタンパク質が含まれる。用語「ストリンジェントな条件(stringent conditions)」は、当業者が従来、「ストリンジェント」として意味した、ハイブリダイゼーションおよび続く洗浄条件である。Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、上記、Interscience, N.Y.,§§6.3および6.4(1987, 1992)、およびSambrookら(Sambrook, J.C., Fritsch, E.F., and Maniatis, T.(1989) Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY)を参照のこと。
制限されないが、ストリンジェントな条件の例には、たとえば2×SSCおよび0.5%SDSで5分間、2×SSCおよび0.1%SDSで15分間中、試験下のハイブリッドの計算されたTmより12〜20℃低い洗浄条件、0.1×SSCおよび0.5%SDS、37℃、30〜60分、ついで0.1×SSCおよび0.5%SDS、68℃、30〜60分間の洗浄条件が含まれる。当業者は、ストリンジェントな条件がまた、DNA配列、(10〜40残基などの)オリゴヌクレオチドプローブ、または混合オリゴヌクレオチドプローブの長さに依存することを理解する。混合プローブを使用する場合、SSCの代わりに塩化テトラメチルアンモニア(TMAC)を使用することが好ましい。Ausubelら(上記)を参照のこと。
任意のこのようなムテインは好ましくは、本発明のポリペプチドに対して実質的に同様の、またはさらにより高い活性を有するように、本発明のポリペプチドのものと十分に重複したアミノ酸の配列を有する。たとえば、IL−32の1つの特徴的活性は、応答性細胞中のTNFの分泌を誘導するその能力である。TNFの結合を測定するためのELISA型アッセイが本技術分野で記述されている。ムテインが本発明のポリペプチドの実質的な活性を有する限り、本発明のポリペプチドと本質的に同様の活性を有すると考えられる。したがって、任意の所与のムテインが、少なくとも本質的に本発明のポリペプチドと同一の活性を有するかどうか、そのようなムテインを、たとえばIL−32応答性細胞中の、TNF、IL−8またはMIP−2などのサイトカインの分泌を誘導するかしないかを決定するための単純なアッセイにかけることを含む、通常の実験によって決定することができる。
好ましい実施態様において、任意のそのようなムテインは、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列と、少なくとも40%の同一性または相同性を有する。より好ましくは、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または最も好ましくは少なくとも90%の同一性または相同性を有する。
同一性は、配列を比較することによって決定される、2つまたはそれ以上のポリペプチド配列、または2つまたはそれ以上のポリヌクレオチド配列間の関係を反映する。一般に、同一性は、比較する配列の長さにわたり、それぞれ、2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド配列の、実際のヌクレオチド対ヌクレオチド、またはアミノ酸対アミノ酸対応を意味する。
正確な相関がない配列に関して、「同一性率(percent identity)」が決定され得る。一般に、比較すべき2つの配列を配列間の最大相関が得られるように並べる。これには、アライメントの程度を増強するために、1つまたは両方の配列いずれかに「ギャップ(gaps)」を挿入することが含まれ得る。同一性率は、とりわけ同一の、または非常に同様の長さの配列のために好適である、比較されている配列のそれぞれの全長にわたって(グローバルアライメントと呼ばれる)、またはより短い配列、定義された配列のために好適であり、等しくない長さの配列に対して(ローカルアライメントと呼ばれる)決定され得る。
2つまたはそれ以上の配列の同一性および相同性を比較するための方法が、本技術分野でよく知られている。したがってたとえば、Wisconsin Sequence Analysis Package、バージョン9.1(Devereux Jら、1984, Nucleic Acids Res. 1984 Jan 11; 12(1 Pt 1): 387-95.)にて利用可能なプログラム、たとえばプログラムBESTFITおよびGAPを使用して、2つのポリペプチド間の%同一性および2つのポリペプチド配列間の%同一性および%相同性を決定し得る。BESTFITは、Smith および Waterman(J Theor Biol.1981 Jul 21; 91(2): 379-80およびJ Mol Biol.1981 Mar 25; 147(1): 195-7. 1981)の「ローカル相同性」アルゴリズムを使用し、2つの配列間の相同性の最適単一領域を見つける。配列間の同一性および/または類似性を決定するための他のプログラムがまた本技術分野で公知であり、たとえばBLASTプログラムファミリー(Altschul S Fら、1990, J Mol Biol.1990 Oct 5; 215(3): 403-10、Proc Natl Acad Sci USA.1990 Jul; 87(14): 5509-13、Altschul S Fら、Nucleic Acids Res.1997 Sep 1; 25(17): 3389-402、www.ncbi.nlm.nih.gov にてNCBIのホームページを介してアクセス可能)およびFASTA(Pearson W R,Methods Enzymol.1990; 183: 63-98. Pearson J Mol Biol. 1998 Feb 13; 276(1): 71-84)である。
本発明にしたがって使用可能な、本発明のポリペプチドのムテイン、またはそれをコードしている核酸には、本明細書で示した教義およびガイダンスに基づいて、不必要な実験なしに、当業者によって日常的に得ることができる置換ペプチドまたはポリヌクレオチドとして、有限の組の本質的に相当する配列が含まれる。
本発明にしたがったムテインの好ましい変化は、「保守的(conservative)」置換として知られているものである。本発明のポリペプチドの保守的アミノ酸置換には、グループのメンバー間の置換が、分子の生物学的機能を保存する、十分に類似の物理化学的特性を有するグループ内の同義アミノ酸が含まれ得る(Grantham Science.1974 Sep 6; 185(4154): 862-4)。アミノ酸の挿入および欠損がまた、それらの機能を変化させることなく以上で定義した配列内で実施可能であり、とりわけ挿入または欠損が、数個のアミノ酸のみ、たとえば30以下、好ましくは10以下のみに関わる場合、たとえばシステイン残基などの、機能的配座に重要なアミノ酸を除去または置換しないことが明らかである。そのような欠損および/または挿入によって産出されるタンパク質およびムテインが、本発明の範囲内に含まれる。
好ましくは、同義アミノ酸群は、表1で定義したようなものである。より好ましくは、同義アミノ酸群は、表2で定義したようなものであり、もっとも好ましくは、同義アミノ酸群は、表3で定義したようなものである。
本発明のポリペプチドのムテインを得るため、本発明での使用のために使用可能であるタンパク質内のアミノ酸置換の生産の例には、Markらに付与された米国特許第4,959,314号、第4,588,585号および第4,737,462号、Kothsらに付与された第5,116,943号、Namenらに付与された第4,965,195号、Chongらに付与された第4,879,111号、Leeらに付与された第5,017,691号、および米国特許第4,904,584号(Shawら)にて示されたリジン置換タンパク質などの任意の公知の方法の工程が含まれる。
本明細書で使用するところの「機能的誘導体(functional derivatives)」は、本技術分野で公知の方法によって、残基の側鎖で発生するか、N−またはC−末端基への添加である官能基より調製され得る、本発明のポリペプチドの誘導体およびそれらのムテインをカバーし、薬学的に許容可能である限り、すなわち、本質的に本発明のポリペプチドの活性と同様のタンパク質の活性を破壊せず、またそれを含む組成物上で毒性特性を発生させないかぎり、本発明に含まれる。
「機能的誘導体」はまた、変化が従来の方法によって本発明のポリペプチドを構成するアミノ酸の配列中に導入される、本発明のポリペプチドを構成するマルチマーも含む。これらの変化には、本発明のポリペプチドの伸長または切断、または本発明のポリペプチドを構成する1つまたはそれ以上のアミノ酸の欠損または置換が含まれ得る。上記変化のいずれもが、本発明のポリペプチドの特性に影響を与ええないことが理解される。
これらの誘導体には、たとえば、抗原性部位をマスクし、体液中での本発明のポリペプチドの残留を引き延ばし得るポリエチレングリコール側鎖が含まれる。他の誘導体には、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニアまたは一級または二級アミンとの反応によるカルボキシル基のアミド、アシル部位とともに形成されるアミノ酸残基の遊離アミノ基のN−アシル誘導体(たとえばアルカノイルまたはカルボン酸アロイル基)、またはアシル部位とともに形成される遊離ヒドロキシ基のO−アシル誘導体(たとえばセリル基またはスレオニル残基)が含まれる。
本発明にしたがった「活性画分(active fraction)」は、たとえば13kDaまたは16kDa断片の断片であり得る。用語画分は、任意の分子の一部を意味し、すなわち、たとえばIL−32応答性細胞によるTNF分泌を誘導する、というような所望の生物学的活性を残したより短いペプチドを意味する。画分は、本発明のポリペプチドのいずれかの末端からアミノ酸を除去し、その生物学的特性に関して得られた画分を試験することによって簡単に調製し得る。ポリペプチドのN−末端またはC−末端いずれかから、一度に1つのアミノ酸を除去するためのプロテアーゼが公知であり、そのため所望の生物学的活性を残した断片の決定には、日常の実験のみが関与する。
本発明のポリペプチドの活性画分、そのムテインおよび融合タンパク質として、本発明はさらに、前記画分が本発明のポリペプチドに対して本質的に同様の活性を有するという条件で、単独またはそれに結合した関連分子または残基、たとえば糖またはリン酸残基と一緒のタンパク質分子のポリペプチド鎖の任意の断片、またはそれらによるタンパク質分子または糖残基の凝集物をカバーする。
またさらなる実施態様において、本発明にしたがった物質には、免疫グロブリン融合が含まれ、すなわち、本発明にしたがった分子が、免疫グロブリンのすべてまたは一部に融合する。免疫グロブリン融合タンパク質を作製するための方法が、たとえば国際公開第01/03737号パンフレットにて記述されたもののように、本技術分野でよく知られている。当業者は、本発明の得られた融合タンパク質が、本発明のポリペプチドの生物学的活性を残していることを理解する。得られた融合タンパク質は、理想的には、体液中の残留時間(半減期)の延長、特異的活性の増加、発現レベルの増加、または融合タンパク質の精製の促進などの改善された特性を有する。
好ましくは、本発明にしたがった物質は、Ig分子の定常領域に融合する。たとえばヒトIgG1のCH2およびCH3ドメインのような、重鎖領域に融合し得る。Ig分子の他のアイソフォームが、たとえば、IgG2またはIgG4またはIgMまたはIgAのような他のIgクラスなどのものがまた、本発明にしたがった融合タンパク質の産出のために好適である。融合タンパク質は、一量体または多量体、ヘテロまたはホモ多量体であり得る。
本明細書で用語「塩(salts)」は、本発明のポリペプチドまたはその類似体のカルボキシル基の塩、およびアミノ基の酸添加塩の両方を意味する。カルボキシル基の塩は、本技術分野で公知の方法によって形成され得、たとえばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄または亜鉛塩などの無機塩、およびたとえばトリエタノールアミン、アルギニンまたはリシン、ピペリジン、プロカインなどのアミンとともに形成されるような有機塩基との塩が含まれる。酸添加塩にはたとえば、塩酸または硫酸などのミネラル酸との塩、およびたとえば酢酸またはオキサロ酸などの有機酸との塩が含まれる。もちろん、任意のそのような塩は、IL−32応答性細胞中で、TNF、IL−8またはMIP−2を誘導する能力などの、本発明のポリペプチドの生物学的活性を維持すべきである。
本明細書で使用するところの用語「円順列(circularly permuted)」は、直鎖分子において、末端を、直接またはリンカーを介して互いに結合して環状分子を形成し、ついでその環状分子を他の局所で切断し、本来の分子中の末端と異なる末端を有する新規の直鎖分子が産出されることを意味する。円順列には、その構造を環状化し、ついで切断した分子と同等である分子が含まれる。したがって、円順列分子は、直鎖分子としてデノボ合成され得、環状化および切断工程を通らない。分子の特定の円順列は、ペプチド結合が排除されたアミノ酸残基を含むブラケットによって設計される。DNA、RNAおよびタンパク質を含み得る円順列分子は、その正常の末端が、しばしばリンカーにて融合し、他の位置で新規の末端を有する一本鎖分子である。両方とも本明細書に参考文献によって組み込まれている、Goldenbergら、J.Mol.Biol.,165: 407-413(1983)およびPanら、Gene 125: 111-114(1993)を参照のこと。円順列は、直鎖分子をとり、末端を融合して環状分子を形成し、ついで異なる局所で前記環状分子を切断し、異なる末端を有する新規の直鎖分子を形成することと機能的に同等である。円順列はしたがって、異なる局所で新規の末端を形成する一方で、タンパク質のアミノ酸の配列および同一性を本質的に保存する効果を有する。
本発明は、約16kDaの、または約13kDaのIL−32のポリペプチド断片および薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物を提供する。
本発明はまた、約16kDaの、または約13kDaのIL−32のポリペプチド断片および薬学的に許容され得る担体を含む、病原体によって誘導された疾患の治療のための医薬組成物を提供する。
「薬学的に許容され得る(pharmaceutically acceptable)」とは、活性成分の生物学的活性の効果を干渉せず、投与される宿主に対して毒性ではない、任意の担体を含むことを意味する。たとえば、非経口投与のために、活性タンパク質(類)を、生理食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミンおよびリンガー溶液などの賦形剤中での注射のために、単位投与形態で処方し得る。
本発明にしたがった医薬組成物の活性成分は、種々の方法にて個体に投与可能である。投与の経路には、皮内、経皮(たとえば遅延放出処方中)、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口、頭蓋内、硬膜外、局所および鼻腔内経路が含まれる。任意の他の治療的に効果的な投与経路を、たとえば、上皮または内皮組織を介した吸収、または活性薬剤をコードしているDNA分子を患者に投与し、活性薬物がインビボで発現および分泌され得る遺伝子治療によって使用可能である。さらに、本発明にしたがったタンパク質(類)を、薬学的に許容され得る界面活性剤、賦形剤、担体、希釈物およびビヒクルなどの生物学的に活性な薬剤の他の成分と一緒に投与可能である。
非経口(たとえば静脈内、皮下、筋肉内)投与のために、活性タンパク質(類)を、溶液、懸濁液、エマルジョンまたは凍結乾燥粉末として、薬学的に許容され得る非経口ビヒクル(たとえば水、生理食塩水、デキストロース溶液)、および等張性(たとえばマンニトール)または化学安定性(たとえば保存剤および緩衝液)を維持する添加物とともに処方可能である。処方は一般的に使用される技術によって滅菌される。
本発明にしたがった活性タンパク質(類)のバイオアベイラビリティーをまた、たとえばPCT特許出願、国際公開第92/13095号パンフレットにて記述されたような、分子をポリエチレングリコールに結合させることによって、ヒト体内での分子の半減期を増加させる結合手順を用いることによっても改善可能である。
本発明は、治療的に有効量の、前記IL−32の断片の投与を含む、必要としている患者、たとえば感染性疾患および癌を患っている患者における免疫を増強する方法に関する。
「治療的に有効量(therapeutically effective amount)」とは、投与したときに、前記IL−32の断片が、宿主防御の増強となるような量である。単一または複数回投与用量として、個体に投与した用量は、投与経路、患者の状態および特性(性別、年齢、体重、健康、背格好(サイズ))、症状の程度、平行治療、治療の頻度および所望の効果を含む種々の因子に非常に依存し得る。確立された用量の範囲の適合および操作は、よく当業者の技術の範囲内であり、ならびに前記IL−32断片の活性を決定するインビトロおよびインビボでの方法の範囲内である。
本発明は、その特定の実施態様に関連して記述されてきているが、さらなる改変が可能であることが理解されるであろう。本出願は、一般に本発明の原理にしたがった、ならびに本発明が属する技術分野内の公知または習慣的な実施内になるような、および付随する請求項の範囲内で以下のように説明された以上の必須の特徴に適用可能であり得るような本開示物からの離脱を含む、本発明の種々の変更、使用または適合をカバーすることが意図される。
雑誌記事または要約、発行されたまたは未発行の米国または外国特許出願、付与された米国または外国特許または任意の他の参考文献を含む、本明細書で引用されたすべての参考文献が、引用された参考文献中に表されたすべてのデータ、表、図およびテキストを含んで、すべてが本明細書で参照によって組み込まれている。さらに、本明細書で引用された参考文献内に引用された参考文献の全内容がまた、すべて参照によって組み込まれている。
いずれにしても、公知の方法の工程、従来の方法の工程、公知の方法または従来の方法に対する参照は、本発明の任意の態様、記述または実施態様を、関連技術分野において開示、指導または示唆することの承認ではない。
特定の実施態様の以下の記述は、本発明の一般的な性質を完全に明らかにし得るので、(本明細書で引用された参考文献の内容を含む)本技術分野内の知識を適用することによって、他人が、不必要な実験なしに、本発明の一般的なコンセプトから逸脱することなしに、種々の適用のために、そのような特定の実施態様を簡単に改変および/または適合することができる。したがって、そのような適応および改変は、本明細書にて示された教義およびガイダンスに基づいて、開示された実施態様の等価物の範囲を意味する中であることが意図される。本明細書での語句法または専門用語が、記述の目的であり、制限の目的ではなく、したがって、本明細書の語法または専門用語が、本明細書で示された教義およびガイダンスを考慮に入れて、普通の当業者の知識と組み合わせて、当業者によって翻訳されるべきであることが理解される。
本発明をここで、以下の非限定実施例および付随する図面にて、より詳細に記載する。
実施例1
ヒト尿タンパク質からのIL−32結合タンパク質の単離
ヒト組換えIL−32(hrIL−32)のアフィニティカラムを、ヒト尿からIL−32結合タンパク質を単離するために調製した。
大腸菌(E.coli)中に産生された組換えヒトIL−32α(3mg)を、取扱説明書にしたがって、Affigel−15(1ml、バイオラッド(BioRad)、リッチモンド、CA)に結合させ、カラム内にパックした。1000倍濃度のヒト粗尿タンパク質(500ml)を、0.25ml/分の流速でカラム上にのせた。カラムをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中0.5MのNaClを含む250mlの溶液で洗浄した。カラムに結合したタンパク質を、25mMクエン酸、pH2.2およびベンズアミジン(1mM)を含む溶液で溶出して、1ml画分を回収し、1MのNa2CO3(0〜70マイクロリットル、溶出3のために、70マイクロリットルの中和溶液を使用した)によって直ちに中和した。カラムから溶出した画分(および洗浄画分)のアリコートを、非還元条件下、SDS−PAGE(10%)にて分離し、タンパク質バンドを銀染色によって視覚化した。28〜32kDaの特定のIL−32結合タンパク質に相当する広いバンドが、主に溶出された画分3(図1中矢印)にて検出された。このバンドは、粗尿タンパク質を表す洗浄画分には見られなかった。
本結果は、28〜32kDaのIL−32結合タンパク質の濃縮した尿タンパク質の画分が、hrIL−32のカラムでのアフィニティクロマトグラフィーによって得られたことを示している。
実施例2
プロテアーゼ3としてのIL−32結合タンパク質の同定
以下の実験は、hrIL−32カラムでのアフィニティクロマトグラフィーによって濃縮された尿IL−32結合タンパク質(実施例1)を同定するために実施した。
28〜32kDaに相当する、実施例1からのSDS−PAGE由来のバンドをゲルから切り出し、タンパク質を電気溶出し、トリプシンで消化した。得られたトリプシン消化物を液体−クロマトグラフィーおよびタンデム質量分析器(LC−MS/MS)に供した。LFPDFFTR、VALYVDWIRおよびLVNVVLGAHNVRとして、3つのトリプシンペプチドの配列がはっきりと検出された。3つのトリプシンペプチドの配列と、米国国立衛生研究所、ベテスダ、メリーランド州におけるthe National Center for Biotechnology Information(NCBI)のタンパク質データベース中のトリプシンペプチド配列とのアライメントによって、アフィニティクロマトグラフィーによって単離されたIL−32結合タンパク質が、ヒトプロテアーゼ−3(PR−3、スイスプロット、アクセス番号P24158)であることが明らかになった。ヒト免疫グロブリン鎖に相当するさらなるタンパク質もまた、同様のタンパク質バンドから同定されたが、非特異的成分であると見られる。
IL−32結合タンパク質がPR−3であることは、N−末端タンパク質マイクロ配列解析によってさらに確認された。溶出画分3のSDS−PAGEの28〜32kDaタンパク質バンド(実施例1および図1)をゲルから切り出し、取扱説明書にしたがって、PVDF膜上に電気溶出し、Model Applied Biosystems機器上で、タンパク質マイクロシークエンシングにかけた。得られた電気溶出した28〜32kDaタンパク質のN−末端配列は、市販PR−3(アセンズ・リサーチ・アンド・テクノロジー(Athens Research and Technology))のもの、IVGGと同一であった。本配列は、プロPR−3の28〜31位に存在する。
結果は、アフィニティ精製によって単離された、28〜32kDaの尿IL−32−結合−タンパク質が、PR−3であることを示している。
実施例3
PR−3のIL−32への結合の親和力
(尿由来、または市販の)PR−3の、IL−32への結合親和力を、表面プラズモン共鳴(BIAcore)によって測定した。
酢酸緩衝液pH4.6中のIL−32(20μg/ml)を、製造業者(アマシャム・ファルマシア(Amersham Pharmacia)、ウプサラ(Uppsala)、スウェーデン)により推奨されるように、BIAcoreチップの単一チャネルに固定化した。尿PR3を含むIL−32アフィニティカラムからの溶出画分3のアリコートを、10、20、30、40および80nMの濃度にし、BIAcoreシステムによって解析した。結合データによって、2.65×10-8MのkDが得られた(図2A)。同様の解析を、PMSF(1mM)によって不活性化したPR−3で実施した。(図2B)。得られたkDは7.9×10-8Mであった。同様の解析を、市販ヒト好中球由来PR−3(アセンズ・リサーチ・アンド・テクノロジー、アセンズ、ジョージア州、20μlゼラチン溶液中0.5μg)で実施した(図3A)。得られたkDは、1.2×10-8Mであった。結合をPMSFによって不活性化した市販PR−3にて繰り返した(図3B)。得られたkDは、3.5×10-8Mであった。
チップは再利用不可能であり、これは、IL−32が、PR3によってチップから切断されることを示唆している。
得られた結果は、PMSFによってプレインキュベートしたPR−3が依然として高親和力でIL−32に結合しているので、IL−32のPR−3への結合は、後者の酵素活性に依存しないことを示している。
実施例4
IL−32の放射活性標識化
先行する実施例は、IL−32がPR−3に対する基質であることを示している。IL−32分解におけるPR−3の触媒活性を調査するために、放射活性標識化IL−32を以下のように調製した。
IL−32(60μlリン酸緩衝液pH7.4中15μg)を、クロラミンT法の改変法を用いてヨウ素化した。簡単に記すと、クロラミンT(50μl、H2O中1mg/ml)および1mCi[125I]−NaI(10μl)の混合液を、4℃にて20秒間インキュベートし、IL−32調製物に添加し、4℃にてさらに20秒間。反応を、メタ亜硫酸水素ナトリウム(5mg/mlのストックの50μl)とヨウ化カリウム(5mg/mlのストックの50μl)の添加によって停止した。放射活性標識化IL−32を、まず0.025%アジ化ナトリウムを含むPBS中の0.25%ゼラチン(すなわちゼラチン溶液)で平衡化したSephadex G25カラム(ファルマシア)で、遊離ヨウ素から分離した。6つの1ml画分を、ゼラチン溶液を用いて回収した。画分3および4が、125I−IL−32の標識のピークを含有した(特異的活性〜2×105cpm/ng)。
実施例5
尿PR−3による125I−IL−32の分解の速度論
以下の実験を、PR−3によるIL−32分解の速度論を探索するために実施した。
アフィニティ精製尿PR−3(実施例1由来の溶出画分3(図1)、50μl)を、125I−IL−32(10μlのゼラチン溶液中250,000cpm)に加え、0、1、5、15、30および60分間、37℃にてインキュベートした(図4)。分解を、SDS−PAGE試料緩衝液の添加によって、そして10分間の煮沸によって停止させた。種々の期間(0〜60分間)にてインキュベートした、125I−IL−32およびPR−3を含む試料を、還元条件下、12%SDS−PAGE上で分離した。ゲルを乾燥させ、オートラジオグラフィーした。図4に要約した結果は、完全IL−32を表している20kDaのバンドの減少(図4、レーン1)と、PR−3との1分間のインキュベーション後の16および13kDaIL−32切断産物のレベルの増加(図4、レーン2)とを示す。PR−3とのインキュベーション5分後に、20kDaバンドが完全に消失し、16および13kDaIL−32切断産物のレベルが増加したこと(レーン3)、および高いレベルの16および13kDaIL−32断片が、最大で60分間安定して残っていること(図4、レーン3、4、6および7)がわかった。
本発明者らは、4℃にて一晩の、PR−3とのIL−32のインキュベーションが、結果として完全な消化となり、10kDaマーカー(ゲルの限界)より大きな産物は観察されなかった(データは示していない)ことを見出した。
実施例6
尿および市販PR−3による125I−IL−32の切断の速度論
図5で示した実験は、尿または市販PR−3いずれかと、IL−32の最大で5分間のインキュベーションに制限したことを除いて、本質的に実施例5で記載したように実施した。
尿PR−3または市販PR−3(アセンズ・リサーチ・アンド・テクノロジー)を、0、1および5分間、125I−IL−32とともにインキュベートした。消化を、SDS−PAGE試料緩衝液を加えること、および10分間煮沸することによって停止した。試料を、還元条件下、SDS−PAGE上で分離した。ゲルを乾燥させ、オートラジオグラフィーした。図5に要約した結果は、市販PR−3が、尿PR−3よりも強力であり、1分間以内に20kDaIL−32バンドの完全な消失を引き起こした(レーン6をレーン2と比較)ことを示している。この差違はおそらく、尿対市販PR3の異なる特異的活性による。
実施例7
フッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)によるPR−3のタンパク質分解活性の阻害−一般的なセリンプロテアーゼ阻害剤
以下の実験は、PR−3とのインキュベーションの後の分解が、PR−3のタンパク質分解活性によるものであることを証明するために実施した。
図6で示した実験は、PR−3を、125I−IL−32とのインキュベーション前に、PMSFでプレインキュベート(1mMの最終濃度、10分間、37℃)したことを除いて、実施例5および6にて記載したように実施した。PMSFは、尿および市販PR−3のIL−32を処理する能力を完全に廃止した。活性PR−3(それぞれ、尿および市販PR−3に関して、レーン1、2および9、10)に対して、IL−32とインキュベートしたPMSFで前処理したPR−3では、切断産物は観察されなかった(図6、レーン3、4、7、8)。
実施例8
IL−32の活性におけるPR−3の効果
先行する実施例にて得られた結果は、PR−3が、高い親和力でIL−32に結合し、数分以内にIL−32を切断することを示す。以下の実験は、IL−32の生物学的活性におけるPR−3の効果を調査するために実施した。
マウスマクロファージRaw264.7細胞株(American Type Culture Collectioin、ATCC)を、10%FCSを含むRPMI−1640培地中で維持した。バイオアッセイは96ウェルプレート中で実施した。簡単に記すと、Raw細胞(5×105/ml、0.1ml/ウェル)を播き、細胞がプレートに接着するまで培養した。培養液を取り除き、ついで細胞を異なる濃度のIL−32、またはPR−3で前処理したIL−32を含む新鮮な培地(FCSなし)で、5μg/mlのLPSブロッカーポリミキシンB(ベッドフォード・ラボラトリーズ(Bedford Laboratories)、ベッドフォード、オハイオ州)の存在下、室温にて5分間刺激した。プレートを、5%CO2にて37℃で16〜20時間インキュベートし、ついで培養上清を回収して、細胞培養によって放出されたMIP−2を測定した。結果を図7に要約しており、PR−3−前処理IL−32が、非前処理IL−32と比較して、Raw264.7細胞におけるMIP−2の産生を増強することが示されている。
PR−3での前処理によるIL−32活性の同様の増強が、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)にて実施した実験で見られた。PBMCは、先に記載されたように調製し[Kim,2005 #36]、96ウェルプレート中に、5×105細胞/ウェルの濃度にて播いた。IL−32およびPR−3で前処理したIL−32での刺激の実験設定は、マウスRaw細胞に関して上述したのと同一であった。IL−32またはPR−3にて前処理したIL−32のいずれかでのヒトPBMC細胞の刺激後、培養上清を回収して、細胞によって放出されたヒトIL−8を測定した。結果を図8に要約しており、PR−3−前処理IL−32が、非前処理IL−32と比較して、ヒトPBMC細胞中のIL−8の産生を増強することを示している。
実施例9
PR−3断片調製および活性
PR3(シグマ(Sigma))を、CNBrによる切断の前に還元し、アルキル化した。還元およびアルキル化:DTT(18μl、50mM)をPR3試料(90μg、1mg/ml)に加え、56℃にて1時間インキュベートした。ヨードアセトアミド(60μl、100mM)を加え、混合物を暗中室温にて45分間インキュベートした。反応をDTT(33.6μl、50mM)によって停止した。試料を乾燥させ、70μlギ酸中で再構築した。固体臭化シアン(CNBr)を室温、暗中で48時間加えた。CNBr脱塩を、取扱説明書にしたがって、C18Zip−チップで実施した。ペプチド混合物を質量分析(Maldi)にかけ、2つのペプチドの形成が示された。
PR3の他の試料を還元、アルキル化およびCNBrにて切断した。得られたペプチドをRP−HPLC(シグマ・ディスカバリー(Sigma Discovery)BIO Wide Pore C8 HPLCカラム、5μm粒子サイズ、5cm×4mm)によって分離した。成熟PR−3が3つのメチオニンを有するので、最大で4つのペプチドが、CNBr切断によって形成されることが予想される。N−末端1678Kdaペプチド、549および11712Kdaペプチド、およびC−末端11187Kdaペプチド。
各ペプチドのIL−32に対する親和力を、完全な酵素学的に活性なPR3のIL32に対する親和力、および完全な酵素学的に不活性なPR3のIL32に対する親和力と比較して、BIACOREによって決定した。
ついでペプチドを、IL−32の生物学的活性の阻害に関して試験した。