JP5310642B2 - 放射線断層撮影装置 - Google Patents

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Description

本発明は、被検体から放射される消滅放射線を検出して、被検体内の放射性薬剤分布をイメージングする放射線断層撮影装置に係り、特に、消滅放射線対の検出の時間差を利用して消滅放射線対の発生位置を特定することができる放射線断層撮影装置に関する。
医療機関には、放射線薬剤の分布をイメージングする放射線断層撮影装置が配備されている。このような放射線断層撮影装置の具体的な構成について説明する。従来の放射線断層撮影装置は、放射線を検出する放射線検出器が円環状に並んで構成される検出器リングが備えられている。この検出器リングは、被検体内の放射性薬剤から互いに反対方向に発する一対の放射線(消滅放射線対)を検出する。この様な放射線断層撮影装置をPET(positron emission tomography)装置と呼ぶ(特許文献1参照)。
PET装置には、消滅放射線対の検出の時間差を利用して消滅放射線対の発生位置を特定することができるTOF(timing of flight)−PET装置と呼ばれる物がある。図16における点pで消滅放射線対が発生したとすると、点pから紙面右側に飛び去った放射線gと紙面左側に飛び去った放射線hとはいずれも検出器リングを構成する放射線検出器51に検出される。しかしながら、放射線gの方が、放射線hよりも、点pから放射線検出器51までの飛程が短く、より早いタイミングで放射線検出器51に到達する。
ということは、消滅放射線対の発生位置である点pは、放射線g,放射線hを検出した2つの放射線検出器51を結ぶ線分上にあり、かつ、より早いタイミングで検出された放射線gを検出した放射線検出器51側にあることになる。これを利用して、例えば、消滅放射線対が全く同時に2つの放射線検出器51に検出された場合は、消滅放射線対の発生位置は上述の線分の中点に位置していることが分かる。また、消滅放射線対の検出された経時的なズレを基に、消滅放射線対の発生位置が上述の線分のどこに存していたかを割り出すことができる。
TOF−PET装置は、このような消滅放射線対の発生位置の特定を次々と行い、これをイメージングすることにより被検体における放射性薬剤の分布を示す断層画像を取得する構成となっている。
放射線検出器51の構成について説明する。放射線検出器51は、図17に示すように、シンチレータ結晶Cが3次元的に配列されて構成されたシンチレータ52を有している。放射線検出器51は、このシンチレータ結晶Cのうちのどれが放射線由来の蛍光を発したかを割り出すことで放射線検出器51における放射線の正確な入射位置を取得できるようになっている。
このような放射線検出器51において、シンチレータ結晶Cの各々によって蛍光の検出のされ具合が異なっている。すなわち、あるシンチレータ結晶Cに放射線が入射し、そこで蛍光が発生したとしても、この蛍光の発生のし具合が個々のシンチレータ結晶Cで異なっている。この様な差違は、シンチレータ結晶Cの蛍光の発し方の違いや、シンチレータにおけるシンチレータ結晶Cの位置、放射線検出器が蛍光を検出するときの特性の違いによって生じる。従って、消滅放射線対が全く同時に2つの放射線検出器51に入射したとしても、2つの放射線検出器によっては、消滅放射線対は時間差を持って検出される可能性がある。
従来の放射線撮影装置においては、このような装置に依存した見かけの時間差の影響を消去する目的で、放射線検出器51が出力した検出の時刻情報を補正するようにしている。このとき使用される補正値は、被検体の撮影の前にファントムを用いて予め求められたものである。
補正値の取得方法は、次のようなものである。まず、放射性薬剤を含んだファントムが検出器リングの内部に挿入される。そして、放射性薬剤より発生した消滅放射線対を検出リングで検出する。ある2つの放射線検出器が消滅放射線対を検出した場合に時間差があるとすれば、この時間差は装置に依存した見かけ上の時間差なのでありこの時間差が消去されるように補正値を決定する。
ある2つの放射線検出器において、見かけ上の検出の時間差を測定するには、この2つの放射線検出器に消滅放射線対を繰り返し検出させ、検出の頻度と時間差とが関連したタイミングヒストグラムを生成することにより時間差の分布を取得させる必要がある。このタイミングヒストグラムを生成するには、相当数の消滅放射線対の検出が必要となる。
特開2008−51701号公報
しかしながら、従来の放射線断層撮影装置には次のような問題点がある。すなわち、従来の放射線断層撮影装置では、放射線検出器単位での補正値を取得するのに止まり、補正値が不正確であるという問題点がある。
すなわち、本来は、シンチレータ結晶単位で放射線の検出時刻のズレ方が異なるので、本来はシンチレータ結晶毎に補正値を取得するようにした方がよい。しかしながら、シンチレータ結晶毎に補正値を求めようとすれば、消滅放射線対の検出に時間がかかりすぎてしまい、現実的でない。そこで、従来の構成では、シンチレータ結晶単位での補正値の取得を諦めて、放射線検出器単位での補正値を取得するようにしているのである。
従来方法によりシンチレータ結晶単位で補正値を取得しようとする場合、やはり、タイミングヒストグラムを2つのシンチレータ結晶について生成し、補正値を取得するようにしなければならない。タイミングヒストグラムを生成するには、相当数の消滅放射線対の検出が必要となる。従って、シンチレータが縦10個、横6個のシンチレータ結晶から構成された2つの放射線検出器の間でシンチレータ結晶単位での補正値を求めようとすると、両放射線検出器のうち一方の放射線検出器の中から1つのシンチレータ結晶を選び、もう一方の放射線検出器の中から1つのシンチレータ結晶を選ぶときの組み合わせは60×60通りあるのであるから、シンチレータ結晶単位で補正値を求めようとする場合、放射線検出器単位で補正値を求めようとするときの3,600倍の時間がかかる。
さらに、図17に示すように、シンチレータに4層のシンチレータ結晶が並んでいるとすると、入射する放射線から見て一番深い側にあるシンチレータ結晶には、浅い側のシンチレータ結晶に阻まれて、ほとんど放射線が入射しない。つまり、一番深い側の層に存するシンチレータ結晶について補正値を求めようとする場合、タイミングヒストグラムを生成するのに十分な消滅放射線対の検出数を得るには、浅い側の層に存するシンチレータ結晶と比べてより多くの時間がかかる。
入射する放射線から見て一番浅い側のシンチレータ結晶と比べて、一番深い側のシンチレータ結晶の検出する放射線の検出数が1/10だとする。図18の斜線に示すように、両放射線検出器における一番深い位置に存する2つのシンチレータ結晶のペアについて補正値を求めようとすると、消滅放射線対の2つともがこの斜線のシンチレータ結晶のペアで検出されなければならないので、一番浅い側のシンチレータ結晶のペアの補正値を求める場合と比べて100倍の時間がかかる。
したがって、縦10×横6×4層のシンチレータ結晶の全てについて補正値を求めようとすると、放射線検出器単位で補正値を求めようとするときの360,000倍の時間がかかる。従来における実際の放射線検出器単位で補正値の取得を例にとると、この時間は、250日程度の時間となってしまい、現実的に取得できるものではない。
この発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、放射線検出時刻の補正値をシンチレータ結晶単位で取得することのできる放射線断層撮影装置を提供することにある。
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る放射線断層撮影装置は、シンチレータを有する放射線検出器が円環状に配列されることにより構成される消滅放射線対を検出する検出器リングと、所定の時間単位を示すクロック数に基づいて時刻を示すデータを取得するクロックと、検出器リングを覆うガントリと、放射線検出器がクロックに基づいて出力する放射線の検出時刻を示す時刻情報を補正値に基づいて補正する補正手段と、補正後の時刻情報を基に消滅放射線対が検出された時間差を求め、この時間差から消滅放射線対の発生位置を取得する位置特定手段と、位置特定手段によって特定された消滅放射線対の発生位置を画像としてイメージングする画像生成手段と、補正値を記憶する記憶手段と、補正値を取得する補正値取得手段とを備え、補正値取得手段は、検出器リングが出力する消滅放射線対の検出データを用いてシンチレータにおける区画単位の補正値を求めることを特徴とするものである。
[作用・効果]本発明によれば、放射線検出器から出力される時刻情報を補正する補正手段を備えている。これにより、放射線検出器の放射線検出のバラツキにより不正確となっている時刻情報を正しく補正することができる。この補正手段が補正に用いる補正値は、シンチレータにおける区画単位の補正値を求めることにより得られたものである。この様にすることにより、検出器単位で補正値を求めるよりも、より正確な補正値を求めることができる。区画を十分に大きくすれば、単位時間当たりに区画に入射する消滅放射線対が多くなるので、補正値の取得に必要な消滅放射線対の検出が短時間で終了する。
また、上述の放射線断層撮影装置において、放射線検出器のシンチレータは、シンチレータ結晶を2次元的に配列して構成されるシンチレータ結晶層が放射線の入射方向に積層することによりシンチレータ結晶が3次元的に配列したシンチレータを構成し、補正値取得手段は、区画単位の補正値を基にシンチレータ結晶個別の補正値を求め、補正手段は、シンチレータ結晶個別の補正値を基に時刻情報を補正すればより望ましい。
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。すなわち、放射線検出器のシンチレータはシンチレータ結晶が3次元的に配列されて構成され、補正値取得手段は、区画単位の補正値を用いてシンチレータ結晶個別の補正値を求めるようにしている。これにより、シンチレータ結晶の各々で時間的な放射線検出の特性が異なっていても、個々のシンチレータ結晶に応じて補正値を変更しながら時刻情報の補正を行うことができる。
また、上述の放射線断層撮影装置において、補正値取得手段は、放射線検出器単位で補正値を求め、補正値取得手段は、シンチレータ結晶が放射線の入射方向に1列に配列した柱状の区画単位で補正値を求め、補正値取得手段は、シンチレータ結晶層単位で補正値を求め、補正値取得手段は、これらにより求められた補正値を基にシンチレータ結晶個別の補正値を求めればより望ましい。
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。すなわち、補正値取得手段は、柱状の区画単位で補正値を求め、シンチレータ結晶層単位で補正値を求めて、最後にシンチレータ結晶個別の補正値を求めるような構成となっている。このように、補正値を求める区画単位をシンチレータ結晶の配列に基づいて決定すると、シンチレータ結晶の時間的な放射線検出の特性がシンチレータ結晶がシンチレータのどの場所を占めるかによって変動することを考慮して補正値を取得することができる。
また、一度柱状の区画単位、およびシンチレータ結晶層単位で補正値を求めておけば、この補正値は、経年的にほとんど変化がない。したがって、放射線検出器が経年的に変化して放射線検出器の時間的な放射線検出の特性が変化した場合は、放射線検出器単位で補正値を求めるだけで、この経年変化に対応することができる。放射線検出器単位での補正値を求めるときに必要な消滅放射線対の検出数は上述の各単位の補正値を求めるときと比較して少ないので、速やかに放射線検出器単位の補正値を求めることができる。
また、上述の放射線断層撮影装置において、補正手段がガントリ内に設けられていればより望ましい。
また、上述の放射線断層撮影装置において、補正手段がガントリ外にコンソールとして設けられていればより望ましい。
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。本発明の補正手段は、ガントリ内部に設けられていてもよいし、外部に設けられていてもよい。補正手段が、ガントリ内部に設けられている場合は、装置構成が簡単となるし、ガントリ外部に設けられている場合は、より複雑な演算を行って時刻情報の正確な補正ができるようになる。
また、上述の放射線断層撮影装置において、補正手段がガントリ内とガントリ外に分散されて設けられており、ガントリ内の補正手段は、時刻情報をクロックの時間単位以上の時間だけ経時的にずらすように補正し、ガントリ外の補正手段は、ガントリ内で補正された時刻情報を更にクロックの時間単位未満の時間だけ経時的にずらすように補正して、時刻情報を補正すればより望ましい。
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示したものとなっている。すなわち、補正手段はガントリ内とガントリ外に分散されて設けられており、ガントリ内の補正手段は、単純な時刻情報の補正を行い、ガントリ外の補正手段は、複雑な時刻情報の補正を行う。この様に補正の計算を各補正手段に担当させるようにすれば、ガントリ内の補正手段の構成をより単純とし、ガントリ外の補正手段の計算の負担を軽くし、かつ、正確な時刻情報の補正を行うことができる放射線断層撮影装置が提供できる。
実施例1に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。 実施例1に係る消滅γ線の発生位置の取得方法を説明する模式図である。 実施例1に係る放射線検出器を説明する斜視図である。 実施例1に係る検出器リングの構成を説明する模式図である。 実施例1に係る検出器リングの構成を説明する模式図である。 実施例1に係る補正値取得手段の動作を説明するフローチャートである。 実施例1に係る補正値取得手段の動作を説明する斜視図である。 実施例1に係る補正値取得手段の動作を説明する模式図である。 実施例1に係る補正値取得手段の動作を説明する斜視図である。 実施例1に係る補正値取得手段の動作を説明する斜視図である。 実施例1に係る補正値取得手段の動作を説明する模式図である。 本発明の1変形例に係る構成を説明する斜視図である。 本発明の1変形例に係る構成を説明する斜視図である。 本発明の1変形例に係る構成を説明する斜視図である。 本発明の1変形例に係る構成を説明する模式図である。 従来構成の放射線断層撮影装置の構成を説明する模式図である。 従来構成の放射線断層撮影装置の構成を説明する斜視図である。 従来構成の放射線断層撮影装置の構成を説明する斜視図である。
<放射線断層撮影装置の構成>
以下、本発明に係る放射線断層撮影装置の各実施例を図面を参照しながら説明する。実施例1におけるγ線は、本発明の放射線の一例である。図1は、実施例1に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。実施例1に係る放射線断層撮影装置9は、被検体Mを載置する天板10と、天板10をその長手方向(z方向)から導入させる開口を有するガントリ11と、ガントリ11の内部に設けられた天板10をz方向に導入させるリング状の検出器リング12とを備えている。検出器リング12に設けられた開口は、z方向(天板10の長手方向、被検体Mの体軸方向)に伸びた円筒形となっている。したがって、検出器リング12自身もz方向に延伸している。
天板10は、ガントリ11(検出器リング12)の開口をz方向から貫通するように設けられているとともに、z方向に沿って進退自在となっている。この様な天板10の摺動は、天板移動機構15によって実現される。天板移動制御部16は、天板移動機構15を制御する天板移動制御手段である。天板10は、その全域が検出器リング12の外側に位置している位置から摺動して、検出器リング12の開口にその一方側から導入されるとともに、検出器リング12の内部を貫通して、検出器リング12の開口のもう一方側から突き出ることができる。
ガントリ11の内部には、被検体Mから放射される消滅γ線対を検出する検出器リング12が備えられている。この検出器リング12は、被検体Mの体軸方向に伸びた筒状であり、そのz方向の長さは、26cm程度である。クロック19は、検出器リング12にシリアルナンバーとなっている時刻データを送出する。検出器リング12から出力される検出データは、γ線をどの時点で検出されたかという時刻データが付与され、後述の同時計数部20に入力されることになる。この検出データに付与された時刻データをクロック19が順次出力する時刻データと区別して時刻情報と呼ぶことにする。クロック19は、例えば64ps刻みに時間の流れを認識する。クロック19には、所定のクロック数が設定されていて、このクロック数が示す時間単位(64ps)毎に時刻を示すシリアルナンバーを検出器リング12に出力する。
同時計数部20には、検出器リング12から出力された検出データが送られてきている。検出器リング12にほぼ同時に入射した2つのγ線は、被検体内の放射性薬剤に起因する消滅γ線対である。同時計数部20は、検出器リング12を構成するシンチレータ結晶のうちの2つの組み合わせ毎に消滅γ線対が検出された回数をカウントし、この結果を補正部21に送出する。なお、同時計数部20による検出データの同時性の判断は、クロック19によって検出データに付与された時刻情報が用いられる。補正部21は、本発明の補正手段に相当する。
補正部21は、検出データに付与されている時刻情報を補正する。γ線が検出器リング12のどこに入射するかによって検出データに付与される時刻データには経時的なバラツキが存在する。具体的には、検出データに付与される時刻データは、検出器リング12の各場所で定まった程度だけ実際の時刻からズレる。そこで、補正部21は、検出器リング12の位置と時刻の補正値とが関連したテーブルを参照して、検出データに付与されている時刻情報を補正して、上述のような検出器リング12の場所で異なる検出時刻のバラツキを消去する。例えば、あるγ線を検出したときの検出データを補正する場合は、補正部21は、そのγ線を検出した検出器リング12の場所に対応した補正値をテーブルより取得する。そして、補正部21は、検出データに付与されている時刻情報にその補正値を作用させることにより、時刻情報の補正を行う。
位置特定部22は、消滅γ線対の検出された時間を利用して、消滅γ線対の発生位置を特定する。図2に示すように、検出器リング12の点pと点qで消滅γ線対を検出したとする。消滅γ線対は、この点pと点qとを結ぶ線分上のいずれかで発し、各点p,qに到達したことになる。位置特定部22は、この線分上のどこで消滅γ線対が発生したのかを点p,qにおける検出データに付与されている補正後の時刻情報を用いて特定する。つまり、位置特定部22は、点p,qにおけるγ線検出の時間差から、消滅γ線対の発生点rが点p寄りにあるのかそれとも点q寄りにあるのかを特定する。仮に点p,qにγ線が全く同時に検出されたとすると、発生点rは線分の中点に存していたことになるし、点pのγ線の方が早く検出されたとすると早いだけ発生点rは点p側に位置していたことになる。このように位置特定部22は、消滅γ線の発生点を特定するのである。
画像生成部23は、位置特定部22の出力する位置情報を基に消滅γ線対の発生位置がマッピングされた断層画像を取得する。補正値取得部24は、設定値記憶部37が記憶する補正値と検出器リング12の位置とが関連したテーブルを生成する目的で設けられている。補正値取得部24は、本発明の補正値取得手段に相当し、設定値記憶部37は、本発明の記憶手段に相当する。
検出器リング12を構成する放射線検出器1の構成について簡単に説明する。図3は、実施例1に係る放射線検出器の構成を説明する斜視図である。放射線検出器1は、図3に示すようにγ線を蛍光に変換するシンチレータ2と、蛍光を検出する光検出器3とを備えている。そして、シンチレータ2と光検出器3との介在する位置には、蛍光を授受するライトガイド4が備えられている。シンチレータ2,ライトガイド4,および光検出器3は、図3に示すz方向に積層されている。また、放射線検出器1においてシンチレータ結晶Cが縦横の2次元的に配列され、この配列がz方向(γ線の入射方向)に配列されていると見ることもできる。このときの2次元的なシンチレータ結晶Cの配列をシンチレータ結晶層と呼ぶことにする。図3においては、4層のシンチレータ結晶層がz方向に積層されてシンチレータ2を構成している。
シンチレータ2は、シンチレータ結晶Cが3次元的に配列されて構成されている。シンチレータ結晶Cは、Ceが拡散したLu2(1−X)2XSiO(以下、LYSOとよぶ)によって構成されている。そして、光検出器3は、どのシンチレータ結晶Cが蛍光を発したかという蛍光発生位置を特定することができるようになっているとともに、蛍光の強度や、蛍光の発生した時刻をも特定することができる。また、実施例1の構成のシンチレータ2は、採用しうる態様の例示にすぎない。したがって、本発明の構成は、これに限られるものではない。放射線検出器1は、自らが有するシンチレータ結晶Cのうちのどれが蛍光を発したかを特定できるようになっている。設定値記憶部37が記憶する補正値と検出器リング12の位置とが関連したテーブルは、このシンチレータ結晶Cの各々について補正値を有しており、補正部21は、γ線を検出したときの検出データに含まれるγ線が蛍光に変換されたシンチレータ結晶Cを特定する位置情報を基に、このシンチレータ結晶Cに対応する補正値をテーブルより取得して、時刻情報の補正処理を行う。
検出時刻のズレについて説明する。放射線検出器1においてシンチレータ2で蛍光が発した実際の時刻と放射線検出器1が検出データに付与する時刻情報とを比較すると、互いの時刻には若干の差がある。また、検出器リング12を構成する放射線検出器1同士でこの差を比較すると、放射線検出器1によって差の大きさはバラついている。このように、γ線の検出に関する時間的なズレの大きさは、放射線検出器1の間で異なるのである。
また、1つの放射線検出器1に設けられているシンチレータ結晶Cの間でも同様なことが言える。すなわち、蛍光が発した実際の時刻と放射線検出器1が検出データに付与する時刻情報とを単一のシンチレータ結晶Cで比較すると、互いの時刻に若干の差があり、1つの放射線検出器1に設けられている各シンチレータ結晶Cの間でこの差を比較すると、シンチレータ結晶Cによって差の大きさはバラついている。このように、γ線の検出に関する時間的なズレは、シンチレータ結晶Cの間で異なるのである。
このように、時刻情報がγ線を検出する検出器リング12の場所に応じて変動する要因はγ線を検出した放射線検出器1の違いによるものと、γ線を蛍光に変換したシンチレータ結晶Cの違いによるものがある。補正部21は、補正値を時刻情報に作用させることによりいずれの要因による時刻の変動も一度に消去される。
検出器リング12の構成について説明する。実施例1によれば、図4に示すように100個前後の放射線検出器1がz方向に垂直な平面上の仮想円に配列することで1つの単位リング12bが形成される。この単位リング12bが図5に示すように、z方向に配列されて検出器リング12が構成される。
なお、放射線断層撮影装置9は、各部を統括的に制御する主制御部41を備えている。この主制御部41は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより、各部16,19,20,21,22,23を実現している。なお、上述の各部はそれらを担当する制御装置に分割されて実現されてもよい。操作卓35は、術者の放射線断層撮影装置に関する種々の指示を入力させる目的で設けられている。表示部36は、画像生成部23が生成した断層画像を表示する目的で設けられている。設定記憶部37は、放射線断層撮影装置9の制御に関する検出器リング12の位置と補正値とが関連したテーブルなどのパラメータ等の一切を記憶する。
<補正取得部の動作>
次に、補正値取得部24の動作について説明する。この動作は、補正部21が参照する補正値の求め方の説明にもなっている。補正値を求めるには、図6に示すように、まず、放射性のファントムが検出器リング12の内部に導入され(ファントム導入ステップS1),消滅γ線対の検出が開始される(検出開始ステップS2)。そして、補正値取得部24は、まず放射線検出器単位での補正値である検出器単位補正値Tb1を求め(検出器単位補正値取得ステップS3),これを基に、柱状のシンチレータ結晶C区画単位での補正値である柱状単位補正値Tpを求める(柱状単位補正値取得ステップS4)。続いて、補正値取得部24は、これらを基にシンチレータ結晶C層単位での補正値である層単位補正値Tdを求め(層単位補正値取得ステップS5),取得された柱状単位補正値Tpおよび層単位補正値Tdを基にもう一度検出器単位補正値Tb2を求める(検出器単位補正値再取得ステップS6)。最後に、検出器単位補正値Tb2,取得された柱状単位補正値Tpおよび層単位補正値Tdを基に、シンチレータ結晶C個別の補正値(結晶個別補正値Tc)を求め(結晶個別補正値取得ステップS7),テーブルを作成する(テーブル作成ステップS8)。以下、各ステップの詳細について順を追って説明する。
<ファントム導入ステップS1,検出開始ステップS2>
まず、天板10に被検体の代わりに消滅γ線対を放射するファントムが載置され、ファントムが検出器リング12の内部に導入される。このファントムは、天板10の長手方向に伸びた円柱状となっている。術者が操作卓35を通じて消滅γ線対の検出開始を指示すると、γ線の検出が開始され、同時計数部20は、消滅γ線対を検出する。消滅γ線の検出数が下記の各ステップの動作に十分となった時点で次のステップに進む。
<検出器単位補正値取得ステップS3>
同時計数部20が生成した消滅γ線対の検出データは、補正値取得部24に出力される。この検出データに付与されている時刻情報は補正前のものなので、γ線が実際に検出した時刻とは若干異なっている。しかも、その異なり具合は、γ線を検出した検出器リング12の位置(消滅γ線対を蛍光に変換したシンチレータ結晶Cのペア)に応じてバラついている。
補正値取得部24は、まず検出器単位補正値Tb1(以降、値Tb1と呼ぶ)を取得する。ある放射線検出器における値Tb1を求める場合、まず、図7に示すように2つの放射線検出器1のペアの間で消滅γ線検出の頻度と時間差とが関連したタイミングヒストグラムHを生成する(図8参照)。補正値取得部24は、図8中の矢印で示すように、この時間差の平均値が0となるような値を求めて、これを基に、放射線検出器1個別の値Tb1を求める。具体的には、補正値取得部24は、タイミングヒストグラムHを滑らかな関数にフィッテングして、この関数を基に値Tb1を求める。
なお、放射線検出器1には、多くのシンチレータ結晶Cを有するので、放射線検出器1のどの部分でγ線が蛍光に変換されたかが分かるようになっている。しかしながら、値Tb1を求める際にはどのシンチレータ結晶Cに放射線検出器が入射したかを区別せず、単に2つのシンチレータ2で消滅γ線対を観察したときの検出データを用いてタイミングヒストグラムHが求められる。従って、値Tb1を求める際に必要な消滅γ線対の検出数が速やかに終了し、値Tb1を求めるのに多くの時間を要しない。
<柱状単位補正値取得ステップS4>
次に、補正値取得部24は、柱状単位補正値Tp(以降、値Tpと呼ぶ)を取得する。値Tpとは、シンチレータ2における柱状区画P単位での補正値である。この柱状区画Pについて説明する。図9に示すように柱状区画Pとは、図9(および図2)に示すz方向(γ線の入射方向)に4つのシンチレータ結晶Cが1列に配列した領域をいう。シンチレータ結晶層2aが60個のシンチレータ結晶Cから構成されるとすれば、柱状区画Pも1つの放射線検出器1に60本あることになる。
値Tpを求める前に、補正部21は、同時計数部20が生成した消滅γ線対の検出データに検出器単位補正値Tb1を作用させておく。これにより、検出時間差のバラツキの原因の一部である放射線検出器1ごとに検出の時間的特性が異なることに起因する要素が検出データから削除される。
ある柱状区画Pにおける値Tpを求める場合、まず、図9に示すように柱状区画Pとその柱状区画Pを含まない別の放射線検出器1のペアの間で検出された消滅γ線検出の頻度と時間差とが関連したタイミングヒストグラムHを生成する。補正値取得部24は、この時間差の平均値が0となるように値Tpを求める。具体的には、補正値取得部24は、タイミングヒストグラムHを滑らかな関数にフィッテングして、この関数を基に値Tpを求める。
なお、柱状区画Pには、4つのシンチレータ結晶Cを有するので、実際には柱状区画Pのどの部分でγ線が蛍光に変換されたかが分かるようになっている。しかしながら、値Tpを求める際にはどのシンチレータ結晶Cに放射線検出器が入射したかを区別せず、単に柱状区画Pともう1つのシンチレータ2で消滅γ線対を観察したときの検出データを用いてタイミングヒストグラムHが求められる。従って、値Tpを求める際に必要な消滅γ線対の検出数を収集するには、値Tb1を求める時よりもより多くの時間がかかる。シンチレータ2が60本の柱状区画Pから構成されるとすれば、全ての柱状区画について値Tpを求るのに十分な検出数の消滅γ線を検出するには、値Tb1のときよりも60倍時間がかかる。とはいえ、この検出数は上述の検出開始ステップS2で既に取得済みである。
<層単位補正値取得ステップS5>
次に、補正値取得部24は、層単位補正値Td(以降、値Tdと呼ぶ)を取得する。値Tdとは、シンチレータ2を構成する各シンチレータ結晶層2a単位の補正値である。この柱状区画について説明する。図10に示すようにシンチレータ結晶層2aとは、図10(および図2)に示すz方向(γ線の入射方向)に直交する平面に複数のシンチレータ結晶Cが2次元的に配列した領域をいう。シンチレータ2には、4層のシンチレータ結晶層2aが設けられている。
値Tdを求める前に、補正部21は、同時計数部20が生成した消滅γ線対の検出データに検出器単位補正値Tb1および柱状単位補正値Tpを作用させておく。これにより、検出時間差のバラツキの原因の一部である放射線検出器1ごとに検出の時間的特性が異なることに起因する要素、および柱状区画ごとに検出の時間的特性が異なることに起因する要素が検出データから削除される。
あるシンチレータ結晶層2aにおける値Tdを求める場合、まず、図10に示すようにシンチレータ結晶層2aとそのシンチレータ結晶層2aを含まない別の放射線検出器1のペアの間で検出された消滅γ線検出の頻度と時間差とが関連したタイミングヒストグラムHを生成する。補正値取得部24は、この時間差の平均値が0となるように値Tdを求める。具体的には、補正値取得部24は、タイミングヒストグラムHを滑らかな関数にフィッテングして、この関数を基に値Tdを求める。
なお、シンチレータ結晶層2aには、60個のシンチレータ結晶Cを有するので、実際には、シンチレータ結晶層2aのどの部分でγ線が蛍光に変換されたかが分かるようになっている。しかしながら、値Tdを求める際にはどのシンチレータ結晶Cに放射線検出器が入射したかを区別せず、単にシンチレータ結晶層2aともう1つのシンチレータ2で消滅γ線対を観察したときの検出データを用いてタイミングヒストグラムHが求められる。従って、値Tdを求める際に必要な消滅γ線対の検出数を収集するには、値Tb1を求める時よりもより多くの時間がかかる。ライトガイド4に近い側のシンチレータ結晶層2aについて値Tdを求めようとする場合に、このシンチレータ結晶層2aに入射するγ線は他のシンチレータ結晶層2aに阻まれてより少ない。従って、値Tdを求めるには各シンチレータ結晶層2aの間で一番時間がかかり、例えば、値Tb1のときよりも10倍時間がかかる。とはいえ、この検出数は上述の検出開始ステップS2で既に取得済みである。
このように、補正値取得部24は、検出器単位補正値Tb1,柱状単位補正値Tp,層単位補正値Tdを、補正値を求める目的の区画と、別の放射線検出器1との2つにより蛍光に変換された消滅γ線対を検出することにより次々と求める構成となっている。このとき、目的の区画や別の放射線検出器1に複数のシンチレータ結晶Cが存していたとしても、シンチレータ結晶Cを区別しないで、単に区画と別の放射線検出器1との間で検出された消滅γ線対をカウントしてタイミングヒストグラムHを生成する。
このように、ある区画について補正値を求める際に、個々のシンチレータ結晶Cについて個別に消滅γ線対の検出を続けるよりも、複数のシンチレータ結晶Cのうちのどれかに消滅γ線対を検出させるようにして消滅γ線対の検出を行った方が消滅γ線対の検出にかかる時間が大幅に短縮される。2つの放射線検出器1に入射する消滅γ線対のうち、ある特定のシンチレータ結晶Cで蛍光に変換された消滅γ線対は、非常に少ない。しかし、2つの放射線検出器1に入射する消滅γ線対のうち、ある特定の柱状区画Pで蛍光に変換された消滅γ線対は、単純に考えて総数の1/60程度はあるはずである。このように、実施例1の構成によれば、シンチレータ結晶Cよりも大きな区割りで各補正値を求めるので、消滅γ線対の測定に要する時間は従来と比べて短縮されるのである。
<検出器単位補正値再取得ステップS6>
次に、補正値取得部24は、同時計数部20が生成した検出データにおける補正前の時刻情報に対して柱状単位補正値Tp,層単位補正値Tdを作用させる。そして、補正後の検出データを基にタイミングヒストグラムHを生成する。補正値取得部24は、図11中中の矢印で示すように、この時間差の平均値が0となるような値を求めて、これを基に、放射線検出器個別の検出器単位補正値Tb2を求める。
この動作について説明する。シンチレータ結晶Cの個々で異なるγ線の検出の時間的な特性のバラツキを補正する補正値は、柱状単位補正値Tp,層単位補正値Tdおよび検出器補正値の和である。したがって、検出データにおける補正前の時刻情報に対して柱状単位補正値Tp,層単位補正値Tdを作用させた後に見られる時間差のバラツキは、検出器単位で異なる要因以外の要因は除去された状態である。したがって、検出データにおける補正前の時刻情報に対して柱状単位補正値Tp,層単位補正値Tdを作用させて生成されたタイミングヒストグラムHの時間差の食い違いを補正するように補正値を求めれば、検出器単位補正値が取得されるのである。
検出器単位補正値再取得ステップS6で求められた検出器単位補正値Tb2は、検出器単位補正値取得ステップS3で求められた検出器単位補正値Tb1よりも正確となっている。検出器単位補正値Tb1の基となったタイミングヒストグラムHは、図8に示すように時間差的にかなりの広がりを持っている。これに比べて、検出器単位補正値Tb2の基となるタイミングヒストグラムHは、柱状単位補正値Tp,層単位補正値Tdに関する時間差のバラツキの要因が消去された後に生成されたものであるので、図11に示すように、時間差的により狭い広がりを持った状態となっていて平均値の信頼性が高まる。このようなタイミングヒストグラムHを用いて検出器単位補正値を再び求めるようにすれば、より正確な検出器単位補正値が求められるのである。
また、放射線検出器1が経年変化することにより、放射線検出器1の時間的な放射線検出の特性が変化してくる場合がある。この場合は、補正値を新たに求めなければならない。ではあっても、上述のステップS1〜S6の全てを繰り返す必要は無い。シンチレータ2に関する柱状単位補正値Tp,層単位補正値Tdは変動しないので、この値を利用して検出器単位補正値Tb2を求めることができるからである。したがって、補正値を新たに求める場合は、ファントム導入ステップS1,検出開始ステップS2の後、以前に取得された柱状単位補正値Tp,層単位補正値Tdを用いて検出器単位補正値再取得ステップS6を行うだけでよい。この場合、検出開始ステップS2において、消滅γ線対の検出数は、検出器単位補正値Tb1を取得できる程度となっていればよいので、消滅γ線対の検出が速やかに終了する。つまり、柱状単位補正値取得ステップS4のように検出に値Tb1のときよりも60倍時間の時間をかける必要ない。
<結晶個別補正値取得ステップS7>
次に、補正値取得部24は、柱状単位補正値Tp,層単位補正値Td,検出器単位補正値Tb2を用いてシンチレータ結晶C個々の補正値である結晶個別補正値Tcを算出する。シンチレータ結晶Cは、検出器リング12に配列された放射線検出器1の内のいずれかに属しているとともに、いずれかの柱状区画Pに属し、また、いずれかのシンチレータ結晶層2aに属している。あるシンチレータ結晶Cにおける結晶個別補正値Tcを求める場合、補正値取得部24は、そのシンチレータ結晶Cが属する放射線検出器1,柱状区画P,シンチレータ結晶層2aにおける検出器単位補正値Tb2,柱状単位補正値Tp,層単位補正値Tdのそれぞれを足し合わせる。
補正値取得部24は、この結晶個別補正値Tcの算出を検出器リング12における全てのシンチレータ結晶Cについて行う。
<テーブル作成ステップS8>
最後に補正値取得部24は、結晶個別補正値Tcをそれぞれのシンチレータ結晶Cの位置と関連させて、検出器リング12の位置と補正値とが関連したテーブルを生成する。テーブルは、設定値記憶部37に記憶される。
<放射線断層撮影装置の動作>
次に、実施例1に係る放射線断層撮影装置の動作について説明する。まず、被検体Mに放射性薬剤が注射される。この時点から所定の時間が経過した時点で、被検体Mが天板10に載置され、被検体Mが検出器リング12の内穴に挿入される。術者が操作卓35を通じて、消滅γ線対に検出を指示すると、検出器リング12は、同時計数部20に検出データの送出を開始する。同時計数部20は、検出データの同時計数を行い、補正部21は、設定記憶部37に記憶されているテーブルに基づいて、検出データに付与されている時刻情報の補正を行う。位置特定部22は、補正された時刻情報を基に消滅γ線対の発生位置を決定する。画像生成部23がこの特定された消滅γ線対の発生位置をイメージングして断層画像を生成する。この断層画像が表示部36に表示されて実施例1に係る放射線断層撮影装置の動作は終了となる。
以上のように、実施例1の構成によれば、放射線検出器1から出力される時刻情報を補正する補正部21を備えている。これにより、放射線検出器1のγ線検出のバラツキにより不正確となっている時刻情報を正しく補正することができる。この補正部21が補正に用いる結晶個別補正値Tcは、シンチレータ2における柱状単位、層単位の補正値Tp,Tdをそれぞれ求めることにより得られたものである。この様にすることにより、検出器単位で補正値を求めるよりも、より正確な補正値を求めることができる。区画を十分に大きくすれば、単位時間当たりに区画に入射する消滅γ線対が多くなるので、補正値の取得に必要な消滅γ線対の検出が短時間で終了する。
また、放射線検出器1のシンチレータ2はシンチレータ結晶Cが3次元的に配列されて構成され、補正値取得部24は、区画単位の補正値を用いてシンチレータ結晶C個別の補正値を求めるようにしている。これにより、シンチレータ結晶Cの各々で時間的なγ線検出の特性が異なっていても、個々のシンチレータ結晶Cに応じて結晶個別補正値Tcを変更しながら時刻情報の補正を行うことができる。
上述の構成は、実施例1の構成のより具体的な構成を示したものとなっている。すなわち、補正値取得部24は、柱状単位(柱状の区画単位)で柱状単位補正値Tpを求め、シンチレータ結晶層2a単位で層単位補正値Tdを求めて、最後にシンチレータ結晶C個別の結晶個別補正値Tcを求めるような構成となっている。このように、補正値を求める区画単位をシンチレータ結晶Cの配列に基づいて決定すると、シンチレータ結晶Cの時間的なγ線検出の特性がシンチレータ結晶Cがシンチレータ2のどの場所を占めるかによって変動することを考慮して結晶個別補正値Tcを取得することができる。
また、一度柱状単位補正値Tp,および層単位補正値Tdで補正値を求めておけば、この補正値は、経年的にほとんど変化がない。したがって、放射線検出器1が経年的に変化して放射線検出器1の時間的なγ線検出の特性が変化した場合は、放射線検出器単位で補正値を求めるだけで、この経年変化に対応することができる。放射線検出器単位での補正値を求めるときに必要な消滅γ線対の検出数は上述の各単位の補正値を求めるときと比較して少ないので、速やかに放射線検出器単位の補正値を求めることができる。
本発明は、上述の構成に限られることなく、下記のように変形実施することもできる。
(1)上述の柱状単位補正値取得ステップS4において、柱状区画Pとシンチレータ2との間で消滅γ線対を検出し、柱状単位補正値Tpを求めるようにしていたが、これを、柱状区画P同士の間で消滅γ線対を検出し、柱状単位補正値Tpを求めるようにしてもよい。すなわち、本変形例において、補正値取得部24は、図12に示すように、1組のシンチレータ2のそれぞれに存する柱状区画P1と柱状区画P2の間で消滅γ線対を検出し、タイミングヒストグラムHを作成し、この1組の柱状区画P1と柱状区画P2についての検出時間のズレの大きさを取得する。補正値取得部24は、この時間のズレの大きさの取得を2つのシンチレータ2から柱状区画Pを1つずつ選んだときの全組み合わせについて、求める。2つのシンチレータ2にはそれぞれ60本の柱状区画Pがあることから求めるべき柱状区画Pの組み合わせは3,600通りあることになる。したがって、全ての柱状区画Pについて時間のズレの大きさを求るのに十分な検出数の消滅γ線を検出するには、検出器単位補正値Tb1のときよりも3,600倍の時間がかかる。
補正値取得部24は、各組み合わせにおける時間のズレの大きさを用いて、柱状区画Pの各々についての柱状単位補正値Tpを求める。このように柱状単位補正値Tpを求めれば、より正確な補正値を求めることができる。
(2)上述の層単位補正値取得ステップS5において、シンチレータ結晶層2aとシンチレータ2との間で消滅γ線対を検出し、層単位補正値Tdを求めるようにしていたが、これを、シンチレータ結晶層2a同士の間で消滅γ線対を検出し、層単位補正値Tdを求めるようにしてもよい。すなわち、本変形例において、補正値取得部24は、図13に示すように、1組のシンチレータ2のそれぞれに存するシンチレータ結晶層2a1とシンチレータ結晶層2a2の間で消滅γ線対を検出し、タイミングヒストグラムHを作成し、この1組のシンチレータ結晶層2a1とシンチレータ結晶層2a2についての検出時間のズレの大きさを取得する。補正値取得部24は、この時間のズレの大きさの取得を2つのシンチレータ2からシンチレータ結晶層2aを1つずつ選んだときの全組み合わせについて、求める。2つのシンチレータ2にはそれぞれ4層のシンチレータ結晶層2aがあることから求めるべきシンチレータ結晶層2aの組み合わせは16通りあることになる。
補正値取得部24は、各組み合わせにおける時間のズレの大きさを用いて、シンチレータ結晶層2aの各々についての層単位補正値Tdを求める。このように層単位補正値Tdを求めれば、より正確な補正値を求めることができる。
(3)結晶個別補正値取得ステップS7において、シンチレータ結晶Cにおける結晶個別補正値Tcを求めるように構成していたが、この代わりにシンチレータ結晶層2aに存する縦横に2個ずつ配列した4つのシンチレータ結晶Cから構成されるシンチレータ結晶群の各々について補正値を求めるようにしてもよい。この様にすると、結晶個別に補正値を求める必要がないので、補正値の取得が簡単となる。また、シンチレータ結晶群に属するシンチレータ結晶Cの個数も自由に変更できる。
(4)上述の構成によれば、シンチレータ2は、3次元的に配列されたシンチレータ結晶Cにより構成されていたが、本発明はこの様な構成に限られない。シンチレータ2を1つのシンチレータ結晶から構成したモノリシックシンチレータを採用した放射線断層撮影装置にも適用できる。この場合、図14に示すように、仮想上の区画Qごとに補正値を求め、シンチレータ2の各部分の補正値を求めるようにしてもよい。
(5)補正部21の具体的な構成として、補正部21がガントリ11内に設けられた情報処理装置によって実現されていてもよい。
(6)補正部21の具体的な構成として、補正部21がガントリ11外に設けられたコンソールにより実現されてもよい。
(7)補正部21の具体的な構成として、補正部21がガントリ11内に設けられた情報処理装置およびガントリ11外に設けられたコンソールにより分散されて実現されてもよい。この場合、検出データに付与された時刻データは、ガントリ11内で大まかな補正がかけられた後、ガントリ11外で詳細な補正がかけられることになる。
この補正について具体的に説明する。クロック19には、所定のクロック数が設定されていて、このクロック数が示す時間単位(64ps)毎に時刻を示すシリアルナンバーを検出器リング12に出力している。そして、検出器リング12は、64ps刻みに検出器リング12におけるγ線の入射時刻の違いを認識する。たとえば、2つのγ線がある時間差をもって検出器リング12に入射したとすると、検出器リング12は、このγ線の入射のタイミングが64psの倍数の時間だけズレていることを認識することができる。しかし、検出器リング12にとって、入射の時間差を64psよりも細かく検出できない。
本変形例によれば、まずガントリ11内において、64psの倍数の時間だけ経時的にずらすように検出データに付与された時刻データを補正する。ガントリ11内においては、時間単位の何個分だけ時刻データをずらせばいいかを考えて補正をするだけでよいので、補正にかかる演算はさほど大きなものとならない。
そして、ガントリ11外では、ガントリ11内で大まかな補正がされた時刻データが更に64ps未満の時間だけ経時的にずらされる。検出器リング12にとって、入射の時間差を64psよりも細かく検出できないはずなのに、結晶個別補正値Tcを64ps未満の細かさで求めることができる理由について説明する。図15は、補正値を求める際のタイミングヒストグラムHの平均値付近を示した図となっている。検出データに付与された補正前の時刻データは、64ps刻みのγ線入射時期を示しているので、消滅γ線対の検出の時間差は、64psの倍数となっている。従って、タイミングヒストグラムHは、64psのピッチで検出頻度が配列した棒グラフのように表すことができる。
補正値取得部24は、タイミングヒストグラムHを滑らかな関数にフィッテングして、この関数を基に値Tb1,Tb2,Tp,Tdを求め、最終的に結晶個別補正値Tcを求めるのであった。そこで、この時フィッティングに用いられる関数を図15においてSで示すことにする。図中、Dで示すのは、関数Sを基にして得られた時間差の平均値を意味している。この様に、この関数Sは、棒グラフで表すことができるタイミングヒストグラムHとは異なり、滑らかな関数となっているので、関数Sで求められる平均値Dは、64psの倍数になることがない。しかも、このとき得られた平均値は、十分な消滅γ線対の検出数を基に取得されたものであるので、信頼性が高い。
つまり、補正値取得部24は、タイミングヒストグラムHを滑らかな関数にフィッテングすることにより、本来は検出することができない64ps未満の細かさで値Tb1,Tb2,Tp,Tdを求めることができる。この様な事情があるので、結晶個別補正値Tcを64ps未満の細かさで求めることができる。結晶個別補正値Tcは64psの倍数に64ps未満の値を足した数で表すことができる。
本変形例によれば、結晶個別補正値Tcを64psの倍数の部分と64ps未満の部分とに分けて考える。そして、倍数の部分に関する補正をガントリ11内で行い、64ps未満の部分に関する補正をガントリ11外で行うようになっている。64ps未満の部分についての補正は、演算が複雑である。本変形例のように複雑な補正演算はガントリ11外で行う様にすれば、より補正の演算効率が向上される。
上述の構成は、補正部21はガントリ内とガントリ外に分散されて設けられており、ガントリ内の補正部21は、単純な時刻情報の補正を行い、ガントリ外の補正部21は、複雑な時刻情報の補正を行う。この様に補正の計算を各補正部21に担当させるようにすれば、ガントリ内の補正部21の構成をより単純とし、ガントリ外の補正部21の計算の負担を軽くし、かつ、正確な時刻情報の補正を行うことができる放射線断層撮影装置9が提供できる。
1 放射線検出器
2 シンチレータ
11 ガントリ
12 検出器リング
19 クロック
21 補正部(補正手段)
22 位置特定手段
23 画像生成手段
24 補正値取得部(補正値取得手段)
37 設定値記憶部(記憶手段)

Claims (6)

  1. シンチレータを有する放射線検出器が円環状に配列されることにより構成される消滅放射線対を検出する検出器リングと、
    所定の時間単位を示すクロック数に基づいて時刻を示すデータを取得するクロックと、
    前記検出器リングを覆うガントリと、
    前記放射線検出器が前記クロックに基づいて出力する放射線の検出時刻を示す時刻情報を補正値に基づいて補正する補正手段と、
    補正後の前記時刻情報を基に消滅放射線対が検出された時間差を求め、この時間差から消滅放射線対の発生位置を取得する位置特定手段と、
    前記位置特定手段によって特定された消滅放射線対の発生位置を画像としてイメージングする画像生成手段と、
    前記補正値を記憶する記憶手段と、
    前記補正値を取得する補正値取得手段とを備え、
    前記補正値取得手段は、前記検出器リングが出力する消滅放射線対の検出データを用いて前記シンチレータにおける区画単位の前記補正値を求めることを特徴とする放射線断層撮影装置。
  2. 請求項1に記載の放射線断層撮影装置において、
    前記放射線検出器の前記シンチレータは、シンチレータ結晶を2次元的に配列して構成されるシンチレータ結晶層が放射線の入射方向に積層することによりシンチレータ結晶が3次元的に配列した前記シンチレータを構成し、
    前記補正値取得手段は、区画単位の前記補正値を基にシンチレータ結晶個別の前記補正値を求め、
    前記補正手段は、シンチレータ結晶個別の前記補正値を基に前記時刻情報を補正することを特徴とする放射線断層撮影装置。
  3. 請求項2に記載の放射線断層撮影装置において、
    前記補正値取得手段は、前記放射線検出器単位で前記補正値を求め、
    前記補正値取得手段は、シンチレータ結晶が放射線の入射方向に1列に配列した柱状の区画単位で前記補正値を求め、
    前記補正値取得手段は、シンチレータ結晶層単位で前記補正値を求め、
    前記補正値取得手段は、これらにより求められた前記補正値を基にシンチレータ結晶個別の前記補正値を求めることを特徴とする放射線断層撮影装置。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
    前記補正手段がガントリ内に設けられていることを特徴とする放射線断層撮影装置。
  5. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
    前記補正手段がガントリ外にコンソールとして設けられていることを特徴とする放射線断層撮影装置。
  6. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
    前記補正手段がガントリ内とガントリ外に分散されて設けられており、
    ガントリ内の前記補正手段は、前記時刻情報を前記クロックの前記時間単位以上の時間だけ経時的にずらすように補正し、
    ガントリ外の前記補正手段は、ガントリ内で補正された前記時刻情報を更に前記クロックの時間単位未満の時間だけ経時的にずらすように補正して、前記時刻情報を補正することを特徴とする放射線断層撮影装置。
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