放射線検出方法、装置、及び、陽電子放射断層撮像装置
本発明は、放射線検出方法、装置、及び、陽電子断層撮像装置に係わり、特に、シンチレータ(チェレンコフ放射体を含む)へ入射した放射線の情報(エネルギー、入射時刻、入射位置等)を高精度で得ることが可能な放射線検出方法、装置、及び、これを利用した陽電子断層撮像装置に関する。
陽電子放射断層撮像装置(ポジトロン・エミッション・トモグラフィ:PET)は、陽電子放出核種を利用した核医学イメージング装置で、癌の診断や分子イメージング等に広く応用されている。
陽電子放出核種とは、18Fのように原子核中の陽子数が中性子数に比べて過多であることにより不安定な同位元素であり、β+崩壊に伴って陽電子とニュートリノを放出する性質がある。放出された陽電子は電子の反物質であるため、電子と出会うと対消滅して、両者の質量が全てエネルギーに転換される。このエネルギーは、消滅放射線という高エネルギー電磁波の形で放射される。対消滅の前後で運動量保存則が成り立つため、消滅放射線は主に2本が同時刻にほぼ正反対の方向に放出される。厳密には1本のみの放出や、3本以上が放出される場合も存在するが、その割合は合わせて全体の1%未満であるためイメージングでは無視できる。2本を放出する場合、それぞれのエネルギーは(陽)電子1個の質量分に相当し、約511keVである。
イメージングの原理は消滅放射線の同時計数である。511keVの放射線が対向する2つの放射線検出器でほぼ同時刻に測定された場合、この2つの放射線検出器を結ぶ直線上で陽電子が対消滅した可能性が最も高い。この情報を、図1(A)に示す如く、被検体10の周囲に配置した多くの放射線検出器16を用いて収集し、X線CTと同様な数学的手法によって再構成することにより、被検体10中の陽電子放出核種12の分布を近似する断層映像が得られる。図において、18はベッドである。
従って、放射線検出器16に求められる性能は、消滅放射線14の入射位置、エネルギー、入射時刻を、なるべく正確に測定できることである。ここで、ほぼ同時刻とは概ね15ナノ秒(ナノは10の-9乗)以内の時間であり、放射線検出器の時刻決定の精度が高い場合には10ナノ秒以下、あるいは5ナノ秒以下とすることができる。二本の消滅放射線の入射を同時刻とみなして、一つの対消滅によって生じた一組の消滅放射線であると判定するための時間の枠(タイムウィンドウ)を短くすると、別々の対消滅に起因する複数の消滅放射線を誤って組み合わせる可能性が減少するため、測定精度を高めて信号対雑音比を向上させることができる。なお、このようにタイムウィンドウを決めて検出された消滅放射線の組み合わせを行うことを、コインシデンス計測もしくは同時計数という。
放射線検出器16からの電気信号を処理して消滅放射線14の入射時刻を決定する能力が概ね1.5ナノ秒以下である場合には、タイムウィンドウは正しい消滅放射線の組み合わせに計数漏れを生じない範囲のままで、消滅放射線の飛行時間差(タイム・オブ・フライト:TOF)を利用すると陽電子放射断層撮像(PET)装置の信号対雑音比が向上することが知られている。例えば、対消滅が対向する2つの放射線検出器の中心部で起きた場合、2本の消滅放射線は同時刻に放射線検出器に到達する。また、対消滅が、どちらかの放射線検出器に近い座標(空間座標)で起きた場合、消滅放射線は近い方の放射線検出器へ先に到達する。つまり、両放射線検出器への到達時刻の差を求めることで、対消滅が起きた空間座標から、それぞれの放射線検出器まで距離の差に換算することができる。図1(A)に示したような、従来の飛行時間差を利用しないPET装置では、一組の同時計数から得られる情報は、対消滅が起きたと考えられる空間座標を含む直線となるが、飛行時間差を用いると、図1(B)に示す飛行時間差型PET(TOF-PET)装置のように、その直線上のある範囲に絞り込むことができる。その絞り込みの精度は、装置の時間分解能によって定まり、決定精度が高くなるほど対消滅位置に関する情報量が増大して信号対雑音比が向上する(W.W.Moses,IEEE Trans. Nucl. Sci.,50巻5号 1325-1330頁,2003年参照)。従って、TOF-PETに搭載する放射線検出器は、より高い時刻決定精度を有することが好ましい。
なお、消滅放射線の入射時刻を決定する能力が装置全体にわたって概ね100ピコ秒(ピコは10の-12乗)以下である場合には、信号対雑音比のみならず断層画像の空間解像度も向上すると期待されており、放射線検出器の時間分解能を高めるための技術が強く求められている。
消滅放射線の飛行時間差を利用したTOF-PET装置の概念は、1980年代には知られていた(T.Tomotani,IEEE Trans. Nucl. Sci.,28巻6号 4582-4589頁,1981年参照)が、当時の技術水準では、放射線検出素子として用いられるシンチレータや放射線検出器、および放射線検出器からの電気信号を処理する回路の性能等が不十分であったため、信号対雑音比が向上しなかった。現在では、LSO(ケイ酸ルテチウムに少量のセリウムを添加したもの)やLYSO(LSOとケイ酸イットリウムの混晶に少量のセリウムを添加したもの)のように応答速度に優れたシンチレータが開発されており、また、放射線との相互作用で生じたシンチレーション光を検出するための受光器として用いられる光電子増倍管(PMT)の時刻決定精度も改善している。更に、特定用途向けの集積回路技術も向上しているため、消滅放射線の飛行時間差を利用したTOF-PET装置が、従来のPET装置の性能を信号対雑音比で上回ることが確認されている。このため、より時間分解性能に優れた放射線検出器が強く求められている。信号対雑音比の向上により、陽電子放射断層撮像に要する時間の短縮や、被検者に投与する放射性薬剤量の低減を図ることができる。
検出時刻の誤差要因は、第一に、図2に示す如く、消滅放射線14と、シンチレーション光24のシンチレータ22中における伝達速度の差によって生じる。図において、20は、光電子増倍管等の受光器である。
消滅放射線14の飛行速度は、真空中でも媒質中でも真空中の光速度c(秒速約30万キロメートル)と同一である。これに対して、シンチレーション光24は、空気中の飛行速度は、ほぼcであるが、シンチレータ中ではc/nに減速する。ここでnはシンチレータの屈折率であり、一般的に1.0よりも大きな値である。
511keVの消滅放射線は透過力が大きいため、効率的に検出するには一般的に数cm程度の厚みのシンチレータ22が用いられる。
図2(A)の右側に示す如く、シンチレータ22の上端付近で消滅放射線14がシンチレータ22と相互作用した場合、シンチレーション光24は受光器20に届くまでシンチレータ22中を長く飛行しなければならない。これに対して、図2(A)の左側に示す如く、シンチレータ22の下端付近で相互作用した場合は、シンチレーション光24が受光器20に届くまでの飛行距離は短い。つまり、図2(B)に示すように、消滅放射線14が飛行速度cのままシンチレータ22中を長く飛行し、受光器20の直前で飛行速度がc/nのシンチレーション光24に変換された方が、見かけ上の検出時刻が早くなる。
ここで、一組の消滅放射線が二つの放射線検出器によってそれぞれ測定される際に、片方ではシンチレータの上端付近でシンチレーション光が発生し、他方ではシンチレータの下端付近でシンチレーション光が発生した場合、検出時刻の差によって予想される対消滅の空間座標が、実際よりも後者の放射線検出器の方へ近づいてしまう。従って、シンチレータ中における消滅放射線とシンチレーション光の伝達速度の違いによる検出時刻の誤差を修正すれば、飛行時間差の情報精度を高めることができる。なお、図2(A)では原理を簡略に示すために、1本の対消滅放射線当たりに1個のシンチレーション光子が代表として直下に放出される図となっているが、実際には数千個乃至数万個の光子が放出され、また放出方向も直下に限られない。又、一部の光子はシンチレータの界面や反射材等により吸収されるため、必ずしも全ての光子が受光器まで到達するとは限らない。
検出時刻の誤差要因の第二は、図3(A)に例示するような、シンチレーション光24がシンチレータ22中を伝達する経路の距離の違いによって生じる。一部のシンチレーション光24は受光器20に直接入射するが、概ね半数以上の光子は、一回以上シンチレータ22の上面や側面で反射してから受光器20に入射する。例えば、図3(A)の右側に示すように、シンチレータ22の上端付近で発生したシンチレーション光24のうち上方に放射されたものは、直ちにシンチレータ22の上端に達し、シンチレータ22の上面を覆う反射材等によって反射されて下方へ向かう。これに対して、図3(A)の左側に示すように、シンチレータ22の下端付近から上方に放射されたシンチレーション光24がシンチレータ22の上端で下方に反射されるまでには、シンチレータ22の長さだけ飛行する。また、側面方向に角度を持って放出される場合には、シンチレータ側面での反射によっても伝達経路が変化する。更に、シンチレータが前後左右上下に二・三次元的に配列されている場合には、シンチレータ間における反射や屈折によっても伝達経路が変化する。伝達経路が長くなるほど、シンチレーション光24が受光器20に到達するまでの時間も長くなり、消滅放射線を検出したと決定される時刻が遅くなる。
図3(B)は、1.45mm×1.45mm×4.50mmのLSO結晶を32個×32個正方形に並べたものを1段とし、消滅放射線とシンチレータ結晶の相互作用位置の検出精度を高めるためにこれを4段重ねた結晶ブロックにおけるシンチレーション光の伝達経路とその伝達時間を計算した結果である。ここで、図中の第1層目は最も放射線源に近く、第4層目は最も遠い。原理を単純に示すため、各段の中心部の結晶を一つずつ選び、基準となる時刻に、それぞれの結晶の中心から、ランダムな方向に各10万個の光子が放出された場合に、受光器に到達する光子の数と経過時間の関係を表示している。発光したシンチレータ結晶内における発光座標と受光器の直線距離に応じて、最初の光子が到達する時刻が異なるのみならず、光子数が最も多くなる時刻や、結晶上面での反射に起因する二つめのピークが見られることが分かる。このようにして生じる、シンチレーション光の伝達経路の距離の違いによる検出時刻の誤差を修正すれば、飛行時間差の情報精度を高めることができる。
検出時刻の誤差要因の第三は、伝達経路の差違によって生じる受光器の出力波形の違いである。受光器に到達する光(入力)の時間分布を表わした図3(B)で明らかなように、各層から最初の光子が到達してから、到達する光子数が最も多くなる時刻までに要する時間は各層ごとに異なり、また光子数が時間の経過とともに増加する傾向の違いもグラフの形状より明らかである。最も単純に受光器の出力波形から時刻を決定するには、まずノイズを信号と混同しないために閾値を設定し、閾値を超えた出力を信号と見做して閾値を超えた時刻を検出時刻とする。全ての受光器で定義を共通にすれば、定義法による誤差は生じない。しかし、この方法では、図3(C)に示すように、比較的出力信号が大きい場合(例えば4層目)には最初の光子が到達してすぐに閾値を超えるが、比較的出力信号が小さい場合(例えば1層目)には出力が最大となる時刻付近でようやく閾値を超えるので、信号の大きさによって決定する時刻が前後してしまう。従って、実際にはコンスタント・フラクション法のように出力信号の大きさによって時刻が前後しない、より高度な決定法が広く用いられている(放射線ハンドブック第3版、753頁、2001年 日刊工業新聞社刊参照)。
ところが、出力信号の大きさの変化には対応できるコンスタント・フラクション法でも、出力信号の波形の変化には対応できないため、信号の立ち上がりが急峻であるか緩慢であるか等の違いによって決定する時刻が前後してしまう。従って、シンチレーション光の伝達経路の違いによる受光器の出力波形の違いが原因となって生じる検出時刻の誤差を修正すれば、飛行時間差の情報精度を高めることができる。これは、コンスタント・フラクション法に限らず、リーディング・エッジ法などの他の決定法にも有効である。誤差を修正する方法は、一例として、信号の立ち上がりの勾配あるいは更にその変化に基づいて行うことができる。
なお、三次元的な位置(発光位置)情報ではなくて、図4のような放射線検出器で深さ方向の発光位置情報のみを利用して、検出時刻を補正する技術は既に知られている(T.Tsuda他、IEEE Trans.Nucl.Sci.,53巻1号35-39頁、2006年参照)。図において、40は、出願人が特開2004-279057号公報で提案した、例えば256チャンネルの位置敏感型光電子増倍管(PS-PMT)21と、例えば6×6で4層積層されたシンチレータ結晶のブロック23でなる、深さ方向の相互作用位置(DOI)情報を得ることが可能な放射線検出器(DOI検出器と称する)である。
このようなDOI検出器によれば、深さ方向の相互作用位置情報を得ることが可能である。
しかしながら図4に示したような4層DOI検出器においては、放射線源側の第1層目は、入射放射線による発光のイベント数(頻度)が最も多いにも拘らず、PS-PMT21への距離が遠いため、TOF誤差(遅れ)が最も大きく、時間分解能が最も悪い。一方、受光器側の第4層目は、PS-PMT21に最も近いため、TOF誤差(遅れ)が最も小さく、時間分解能が最も良いにも拘らず、イベント数が最も少なく、有効に活用されていないという問題点を有していた。
図5に、TOF補正をしない従来のDOI検出器における4層それぞれの応答と、検出器全体の時間分解能を示す。この例では、放射線検出器全体の時間分解能(半値幅FWHM)は361.4psであった。
これに対して、各層毎にTOF補正をした場合には、図6に示す如く、放射線検出器全体の時間分解能が324.1psに改善される。しかしながら、未だ十分とは言えなかった。
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、シンチレータ(チェレンコフ放射体を含む)へ入射した放射線の情報(エネルギー、入射時刻、入射位置等)を高精度で得ることを課題とする。
発明者は、図7に示す如く、放射線検出器40を上下逆向きにして、PS-PMT21を放射線源側に設けて、PS-PMT21に最も近く、TOF誤差が小さく、時間分解能が最も良い層が第1層目となり、イベント数が最も多くなり、逆に、PS-PMT21から最も遠く、TOF誤差が最も大きく、時間分解能が最も悪い第4層目が、イベント数が最も少なくなるようにした。
図4と同様の測定条件において、図7に示す如く、放射線検出器40をひっくり返して、最も時間分解能が良い第1層目の検出率が最大となるようにした場合の実験結果を図8に示す。但し、図6と同様に各層毎のTOF補正も行った。この場合、TOF補正のみを行った場合よりも、ひっくり返したことにより更に時刻決定精度が改善され、放射線検出器全体の時間分解能は297.7psに向上することが確認できた。このように、受光器とシンチレータの位置関係を逆転し、かつTOF補正も行うことが効果的である。
ここで、放射線源側に設けた受光器や、その回路部分は、散乱体となるが、発明者の実験によれば、透過力が強い放射線の入射位置特定の障害になることは無かった。確認のため行なった実験の配置を図9(A)、(B)、(C)に、それらの実験結果を図10、図11、図12にそれぞれ示す。図9(A)は、従来と同様に、シンチレータ34の放射線源8と反対側にフラットパネル型の位置敏感型光電子増倍管(浜松ホトニクス社製H9500型)31を設けた例、図9(B)は、図9(A)と同じ配置で、シンチレータ34の上方にも散乱体としてPS-PMT31’を設けた例、図9(C)は、本発明によりシンチレータ34の放射線源8側にPS-PMT31を設けた例である。図において、32、32’は回路基板部である。
図12から明らかなように、図9(C)に示した本発明の配置により、エネルギー分解能ΔE/Eも、図9(A)の配置(図10中の実線、ΔE/E=10.0%)や図9(B)の配置(図11中の破線、ΔE/E=10.1%)に比べて9.2%(図12中の破線)に改善している。エネルギー分解能は、値が小さいほど、放射線検出器が入射した放射線のエネルギーを決定する精度に勝れていることを示しているが、図9(A)の配置(10.0%)と図9(B)の配置(10.1%)で値が同等であることは、挿入されたPS-PMT31’が散乱体としてエネルギー分解能に及ぼす影響が軽微であることを実証している。また、図9(C)の配置の値(9.2%)が図9(A)の配置の値(10.0%)よりも小さいのは、シンチレータの発する光信号から入射した放射線のエネルギー情報を取得する能力において優越していることを実証している。従って、本発明の適用対象は時間分解能を重視するTOF-PETには限定されず、より高いエネルギー分解能が好ましい従来のPETにも有効である。また、シンチレータの線源に近い部分(図の上部)は線源から遠い部分(図の下部)よりも、より高い頻度で放射線との相互作用するため、本実験の結果より、シンチレータが積層されていなくても、シンチレータの線源側に受光器を設置することで放射線検出器の性能が向上することが明らかとなった。
本発明は、このような知見に基づいてなされたもので、シンチレータ(チェレンコフ放射体を含む)の放射線源側に、入射時刻を検出するための受光器を設け、該受光器の出力により放射線の情報(エネルギー、入射時刻(タイミング情報)、入射位置等)を得るようにして、前記課題を解決したものである。
なお、本発明に一見類似するものとして、図13に例示する如く、シンチレータ32の放射線源側に位置情報やエネルギー情報を取得するためのアバランシュフォトダイオード(APD)36を設け、反対側に時刻情報等を取得するPMT21を設けることも考えられているが(W.W.Moses他、IEEE Trans.Nucl.Sci.,41巻4号1441-1445頁、1994年参照)、APDは応答が遅く、入射時刻の決定に関して主たる検出器ではない。
本発明は、又、シンチレータ(チェレンコフ放射体を含む)の放射線源側に設けられた、入射時刻を検出するための受光器と、該受光器の出力によりシンチレータに入射した放射線の情報を得る手段(例えば後段の処理回路)と、を備えたことを特徴とする放射線検出装置を提供するものである。
ここで、前記受光器を、シンチレータ放射線源側にのみ設けることができる。
あるいは、前記受光器を、シンチレータの放射線源側に設け、これを補助する受光器を、シンチレータの反対側や側面にも設けることができる。
又、前記シンチレータと受光器からなる放射線検出器をDOI検出器とすることができる。
又、前記シンチレータと検出器の組合せを積層することができる。
又、ペアとなる放射線検出器を放射線源を挟んで対向するように設けて、コインシデンス計測やタイムオブフライト計測を行なうことができる。
又、放射線検出器を放射線源を囲うようにリング状に配列し、各シンチレータと受光器の間に錐状のライトガイドを設けて、該ライトガイドへの入射光路径に対し出射光路径を絞ることができる。
本発明は、又、前記の放射線検出装置を備えたことを特徴とする陽電子断層撮像装置を提供するものである。
従来の(A)PET装置及び(B)TOF-PET装置の概略構成を示す断面図
従来の問題点の一つを説明するための(A)断面図及び(B)タイムチャート
従来の他の問題点を説明するための(A)断面図及び(B)(C)タイムチャート
従来の解決法の一つを説明するための斜視図
従来のTOF補正をしないDOI検出器の場合の各層の応答と検出器全体の時間分解能を示す図
各層毎にTOF補正をした場合の各層の応答と検出器全体の時間分解能を示す図
本発明の原理を説明するための斜視図
図7の例における各層の応答と検出器全体の時間分解能を示す図
確認のため行なった実験配置を示す図
従来の配置における実験結果を示す図
比較例の配置における実験結果を示す図
本発明の配置における実験結果を示す図
従来の他の例の構成を示す断面図
本発明の第1実施形態のPET装置の断面図
本発明の第2実施形態で用いるシンチレータと受光器部分を示す断面図
本発明の第3実施形態におけるシンチレータと受光器部分を示す断面図
本発明の第4実施形態のPET装置の構成を示す断面図
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明の第1実施形態は、図14に示す如く、陽電子放射断層撮像装置において、放射線源となる患者側にPMT31を並べ、その外側にライトガイド32を介してシンチレータ34を配設し、各PMT31に接続した後段の処理回路36により、放射線の入射位置、入射時刻、及び入射した放射線のエネルギーを特定するようにしたものである。
これにより、時間分解能やエネルギー分解能を向上することができる。
本実施形態においては、ライトガイド32を設け、そのシンチレータ34側の入射光路径に対して、PMT31側の出射光路径を絞るようにしているので、シンチレータ34及びPMT31を隙間無く配置することができる。
なお、放射線検出器の種類はDOI検出器に限定されず、図15に示す第2実施形態のように、シンチレータ34を4層ではなく、厚い1層や、2又は3層、あるいは5層以上としたり、ライトガイド32を省略して、シンチレータ34の放射線源側にPMT31を直接配設したりすることもできる。例えば、PMT31が十分に薄い場合や、放射線検出器を密に配置する必要がない場合には、ライトガイドは必要ではなく、また必要でない場合には省略することが好ましい。
又、シンチレータ34とPMT31の組合せは1段に限定されず、図16に示す第3実施形態のように、各段毎にシンチレータ34の構成を変えて多段に配設することもできる。ここで、シンチレータ34とPMT31の関係は、一対一でも良く、多対一でも良く、一対多でも良く、多対多でも良い。
又、図17に示す第4実施形態のように、受光器として、例えばシリコンフォトマル(Si-PM、即ちガイガー領域で作動するAPD)41を用いて、1層ないし2層以上配置することもできる。
なお前記実施形態においては、薄型のPMTやSi-PMが用いられていたが、受光器とは一般に光信号を電気信号に変換し出力するする機能を持った素子のことであり、本発明の実施において用いられる受光器の種類は、これらに限定されず、フォトダイオードやアバランシュフォトダイオードなどの同様の機能を有する他の種類の素子であっても良い。
また、シンチレータは必ずしも固体である必要はなく、気体であっても液体であっても良い。また、シンチレータが固体である場合には、必ずしも単結晶である必要はなく、例えば、ガラスであってもセラミックスであっても焼結体であっても良い。また、シンチレータの発光原理はチェレンコフ放射であっても良い。
又、適用対象はTOF-PETに限定されない。適用対象は、例えばTOFを利用しない通常のPET装置が考えられる。また、比較的高いエネルギーを利用するSPECT(例えば131I、364keV)も考えられる。
産業上の利用の可能性
陽電子放射断層撮像装置等に適用して、放射線の放射線検出器入射時刻、入射位置、およびエネルギーを高精度で特定することが可能になる。