以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における液体塗布装置の構成図であって、以下の実施の形態の説明では、有機ELの発光層塗布工程を例にして説明する。
図1は本液体塗布装置を塗布液吐出口側から見た図である。
ここで、図1では、一例として3本のストライプ状塗布を行う場合のノズル構成を示した。このノズルでは、ノズル先端部に3つの塗布液吐出口3が設けてあり、それぞれの塗布液吐出口3の上流側には、塗布液吐出口3よりも広い巾の気体吸引口2が設けられている(塗布液吐出口数=気体吸引口数)。
その結果、塗布液吐出口の上流側の範囲13に気体吸引口2が設けられると共に、塗布液の吐出口間の上流側の範囲12にも気体吸引口が設けられていることになる。本実施の形態において、図23〜32に示す従来法のノズルの構成と異なるのは、気体吸引口2が、塗布液吐出口の上流側の範囲13に加えて、塗布液の吐出口間の上流側の範囲12にも気体吸引口が設けられている点である。
次に、このノズルにより、気体吸引口2から気体を吸引しながら塗布液吐出口3から塗布液を吐出し、ストライプ状塗布を実施している場合の、塗布液吐出口側からノズルを見た図を図2に示す。合わせて、図2のノズルに3つ設けてある塗布液吐出口のうちの1つを拡大した図を図3に示す。また、図4には、図2のノズルにより塗布している状態を図2におけるA側から見た図を示す。
このように、本発明のノズルにより、気体吸引口2から気体を吸引しながら塗布液吐出口3から塗布液を吐出して塗布する場合、気体吸引口2から気体を吸引することにより、図2〜4に示すようなノズル−被塗布材間の気体の流れ6が生じる。その際、気体吸引口2を中心とした「液溜りの無い(塗布液吐出口への向きを除く)向き」の領域は、流動抵抗が少なく、外部から気体が流入しやすいため減圧され難いが、「液溜りのある向き(塗布液吐出口3と気体吸引口2の間の領域)」では、液溜りの抵抗があるため外部からの気体流入が困難となり、その他の領域に比べて強く減圧される領域9となる。その結果、液溜りを上流側へ保持する力を得て、ストライプ状塗布膜の途切れ抑制の効果を得ることが可能になる。
更に、本発明のノズルでは、塗布液吐出口3よりも広い巾の気体吸引口2が設けられているため、塗布液の吐出口間の上流側の範囲12に設けられた気体吸引口2から気体を吸引することにより、塗布液吐出口3の下流側から気体吸引口2に向けて、液溜りの両側を通過する気体の流れを積極的に生じさせることが可能になる。この塗布液吐出口3の下流側から液溜りの両側を通過してくる気体の流れは、図3に示すように、下流側から液溜りに衝突した後、液溜りの側面に沿って液溜りを通過し、液溜り通過後は、特に塗布液吐出口3と気体吸引口2の間の領域が強く減圧される領域9となっていることもあり、液溜りの中心方向に巻き込まれるような流れになる。その結果、液溜りの下流側では、液溜りを上流側へ押し込む力11が働き、途切れ抑制効果が得られる。
また、液溜りの上流側では、気体の流れが液溜りをその中心方向に巻き込むことで、液溜りの塗布巾方向への濡れ広がりを抑制する力10が働き、塗布膜が巾方向に太くなることを抑制する効果が得られる。これらのことから、本発明のノズルでは、液溜りを上流側へ保持する途切れ抑制効果と、液溜りの塗布巾方向への濡れ広がりを抑制する効果が両立できるようになるため、広い塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)で微細なストライプ状塗布膜を高速に安定して形成することが可能になる。
本発明の塗布装置における塗布方法について説明する。
液体であるインクをポンプ(図示せず)等によって塗布液供給口(図示せず)からノズル1に供給し、ノズル1内の塗布液用マニホールド(図示せず)により塗布巾方向に分配した後、塗布液吐出口3から吐出させる。同時に、真空ポンプ(図示せず)等によって気体吸引口2から気体を吸引する。
吐出されたインクはノズル−被塗布材間で液溜り7を形成する(図5(1),(2))。そして、駆動機構(図示せず)によるノズル1に対する被塗布材8の相対的な走行により液溜り7はせん断力を加えられ(図5(3))、被塗布材8の相対的な走行方向に伸びるが、気体吸引口2から吸引することにより生じる気体の流れ6により、液溜りの下流側では、液溜りを上流側へ押す力11が働き、途切れ抑制効果が得られる(図5(4))。
また、液溜りの上流側では、気体の流れが液溜りをその中心方向に巻き込むことで、液溜りの塗布巾方向への濡れ広がりを抑制する力10が働き、塗布膜が巾方向に太くなることを抑制する効果が得られる(図5(4))。その結果、従来は液溜り4を維持する力が弱く、せん断力により液溜り7が壊れ易かった少量吐出や塗工速度が速い塗布においても液溜り7を維持できるようになり、図6(図5(4)の状態をノズル上面から見た図)に示すように、微細で薄いストライプ状塗布を安定して実現できるようになる。
特に、有機EL素子の作成においては、500cps以下の粘度の低いインクを使用され、液溜り4を維持する力が弱いため、本発明の大きな効果を得ることができる。
また、前記のように、気体吸引口2から吸引することにより生じる気体の流れ6により、液溜り7を被塗布材8の相対的な走行方向の上流側に押す力11と液溜りの塗布巾方向への濡れ広がりを抑制する力10が加えられることで、吐出された塗布液がノズル1表面に濡れ広がることを抑制しつつ被塗布材方向に液溜り4を成長させる効果が得られる。その結果、少ない吐出量においても、従来に比べ広い塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)での液溜り形成が可能となるため、従来よりも広い塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)での微細で薄いストライプ状塗布が実現できるようになる。
更に、本発明の構成によれば、複数の塗布液の吐出口のそれぞれに独立して吸引口を設けているので、吐出口の加工バラツキや乾燥バラツキや温度バラツキにあわせた調整が可能である。調整方法としては、各吸引口ごとに真空ポンプの排気量を調整する方法、各吸引口ごとに真空ポンプから吸引口までのコンダクタンスを調整する方法を使用できる。
各吸引口ごとに真空ポンプから吸引口までのコンダクタンスを調整する方法として、各吸引口の大きさを変える方法や、真空ポンプのまでの経路の配置を調整する方法が使用できる。
また、図7〜8に示すように、ノズル1の塗布液吐出口3を設けた面の塗布巾方向端部に凸部26を設けることで、気体吸引口2からの吸引によりノズル側方から気体が流入し、塗布巾方向両端部の液溜りが、塗布幅方向内側に流されることを防止できる。その結果、塗布巾方向両端部の塗布においても、その他の塗布巾方向内側の部分の液溜りと同様の被塗布材8の相対的な走行方向の上流側に押す力11と液溜りの塗布巾方向への濡れ広がりを抑制する力10を得ることができるようになり、塗布巾方向中央部から両端部まで均一な塗布を実現できる。
また、図9に示すように、特に塗布液吐出口の間隔が狭く、その間を流れるノズル−被塗布材間の気体の流れ6の流動抵抗が高い場合などは、塗布液吐出口間に比べて流動抵抗の小さい塗布巾方向両端部のノズル−被塗布材間の気体の流れ6が増加し、その流れは、塗布巾方向外側から塗布巾方向中心部へ巻き込むような流れとなる。その結果、塗布巾方向両端部の液溜りが、塗布巾方向内側に流されてしまい、その塗布膜の巾や隣接する塗布膜とのピッチが変化してしまう。
そこで、図10(1)に示すように、気体吸引口の巾について、塗布巾方向両端部の塗布液吐出口3の外側の気体吸引口2の巾(図10(1)におけるX1とX6)をその他の塗布液の吐出口間の上流側の範囲12に設けられた気体吸引口の巾(図10(1)におけるX2〜X5)よりも大きくすると良い。これにより、塗布巾方向両端部では、塗布液吐出口3の下流側から気体吸引口2に向けての直線的な流れを積極的に生じさせることが可能になる。
その結果、流動抵抗が小さいことで増加する塗布巾方向両端部のノズル−被塗布材間の気体の流れ6を塗布液吐出口3の下流側から気体吸引口2に向けての直線的な流れとすることができ、上記のような塗布巾方向両端部の液溜りが塗布巾方向内側に流され、その塗布膜の巾や隣接する塗布膜とのピッチが変化するということを防止できることで、塗布巾方向中央部から両端部まで均一な塗布を実現できる。
また、塗布巾方向両端部の塗布液吐出口3の外側の気体吸引口2の巾(図10(2)におけるX1とX6)をその他の塗布液の吐出口間の上流側の範囲12に設けられた気体吸引口の巾(図10(2)におけるX2〜X5)と同じにする。それと共に、塗布巾方向両端部の塗布液吐出口3の外側の気体吸引口2の断面積(図10(2)におけるX1とX6の範囲の断面積)をその他の塗布液の吐出口間の上流側の範囲12に設けられた気体吸引口の断面積(図10(2)におけるX2〜X5の範囲の断面積)よりも広くすることでも、流動抵抗が小さいことで増加する塗布巾方向両端部のノズル−被塗布材間の気体の流れ6を塗布液吐出口3の下流側から気体吸引口2に向けての直線的な流れとすることができる。
上記のような塗布巾方向両端部の液溜りが塗布巾方向内側に流され、その塗布膜の巾や隣接する塗布膜とのピッチが変化するということを防止できることで、塗布巾方向中央部から両端部まで均一な塗布を実現できる。
有機ELの発光層の塗布工程において、被塗布材8はガラス基板に駆動用のTFT(薄膜トランジスタ)などを形成したものであって、その設定条件例としては、塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)が30〜200μmであり、塗布液吐出口3の直径は20μmから150μmである。また、気体吸引口2の隙間(図1におけるW)は10μmから5000μmであり、気体吸引口の巾4は「塗布液吐出口の巾に10μm以上加算した寸法」である。また、塗布液吐出口3と気体吸引口2との距離(図1におけるY)は50μmから5000μmである。
塗布終端部付近での塗布動作については、ノズルが塗布終端位置に到達する前にポンプ(図示せず)等による塗布液供給を停止させると良い。これにより、ノズル内部の塗布液に加わる残圧の影響により余分に塗布液が吐出されることで、塗布終端部で塗布ムラ(例えば、膜厚増加、塗布巾増加など)が発生するということを防止できる。また、ノズルが塗布終端位置に到達する前に塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)を大きくすることで、上記ノズル内部の塗布液に加わる残圧や、塗布終端部でノズル先端部分と被塗布材間での液溜りが不必要に濡れ広がることによって発生する塗布ムラ(例えば膜厚増加、塗布巾増加など)を防止することができる。また、ポンプ(図示せず)等により塗布液供給を停止させると同時に気体吸引口からの気体の吸引を停止させても良いが、塗布液供給が停止した一定時間後に気体吸引を停止させても良い。
このように気体の吸引停止を遅らせることで、ノズルと被塗布材に存在する液溜りを速やかに切り離す効果が得られ、塗布終端位置の高精度な制御が可能となり、塗布巾方向での塗布終端位置バラツキを小さくできる効果が得られる。また、特に広い塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)で塗布する場合など、気体の吸引による「途切れ抑制効果」および「ノズル表面への濡れ広がり抑制効果」を十分に得ながら塗布している場合には、塗布液供給が停止する前に気体吸引を停止させても良い。
この場合には、気体吸引を停止した時点で、上記の吸引による効果が失われることで、ノズル−被塗布材間の液溜りが保持できなくなり、膜が途切れてしまう。この現象を利用することでも、塗布終端位置の高精度な制御が可能となり、塗布巾方向での塗布終端位置バラツキを小さくできる効果が得られる。
有機ELの発光層の塗布工程で使用されるインクにおいて、溶質としては、ポリフルオレン系、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニレン系、アルコキシベンゼン、アルキルベンゼンなどの高分子材料が挙げられ、溶媒としては、トルエン、キシレン、アセトン、アニソール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキシルベンゼン等の単独または混合溶媒が挙げられる。ノズル1と被塗布材8の相対的な走行速度は50〜500mm/sである。
(実施の形態2)
また、図11に示すように、それぞれの塗布液吐出口3の上流側に、塗布液吐出口3よりも広い巾の気体吸引口2を設けると共に、複数の塗布液吐出口3に対応する気体吸引口2を共通にした、塗布液吐出口数>気体吸引口数という構成としても良い。その結果、塗布液吐出口の上流側の範囲13に気体吸引口2が設けられると共に、塗布液の吐出口間の上流側の範囲12にも気体吸引口が設けられていることになる。
ここで、本実施の形態では、一例として、6つの塗布液吐出口3に対して、2つの気体吸引口2を設ける場合を示した。次に、このノズルにより、気体吸引口2から気体を吸引しながら塗布液吐出口3から塗布液を吐出し、ストライプ状塗布を実施している場合の、塗布液吐出口側からノズルを見た図を図12に示す。
このように、図11に示すノズルでは、全ての塗布液吐出口間の上流側の領域に気体吸引口2が設けられているため、塗布液の吐出口間における、塗布液吐出口3の下流側から気体吸引口2に向けての直線的な流れを積極的に生じさせることが可能になり、液溜りの下流側における液溜りを上流側へ押し込む力11と、液溜りの上流側における、液溜りの塗布巾方向への濡れ広がりを抑制する力10を安定して得られるようになる。その結果、本実施の形態3のノズルでは、液溜りを上流側へ保持する途切れ抑制効果と、液溜りの塗布巾方向への濡れ広がりを抑制する効果の両立を実現でき、広い塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)で微細なストライプ状塗布膜を高速に安定して形成することが可能になる。
また、複数の気体吸引口2のそれぞれの吸引力を調整することで、さらに高精度に且つ安定して、塗布液をストライプ状に塗布することができる。すなわち、例えば、被塗布材8の偏肉、塗布装置の動作バラツキ、ノズルの加工バラツキなどにより、部分的に塗工ギャップが広くなった場合などは、塗工ギャップの広い部分に対応する気体吸引口2の吸引力が強くなるよう調整すれば、さらに高精度に且つ安定して、塗布液をストライプ状に塗布することができる。
(実施の形態3)
また、図13に示すように、それぞれの塗布液吐出口3の上流側に、塗布液吐出口3よりも広い巾の気体吸引口2を設けると共に、別途、塗布液の吐出口間の上流側の範囲12にも気体吸引口を設けて、塗布液吐出口数<気体吸引口数という構成としても良い。その結果、塗布液吐出口の上流側の範囲13に気体吸引口2が設けられると共に、塗布液の吐出口間の上流側の範囲12にも気体吸引口が設けられていることになる。ここで、本実施の形態では、一例として、3つの塗布液吐出口3に対して、5つの気体吸引口2を設ける場合を示した。
次に、このノズルにより、気体吸引口2から気体を吸引しながら塗布液吐出口3から塗布液を吐出し、ストライプ状塗布を実施している場合の、塗布液吐出口側からノズルを見た図を図14に示す。
このように、図13に示すノズルでは、別途設けた、塗布液の吐出口間の上流側の範囲12の気体吸引口2により、塗布液吐出口3の下流側から気体吸引口2に向けての直線的な流れを積極的に生じさせることが可能になり、液溜りの下流側における液溜りを上流側へ押し込む力11と、液溜りの上流側における、液溜りの塗布巾方向への濡れ広がりを抑制する力10を安定して得られるようになる。その結果、本実施の形態2のノズルでは、液溜りを上流側へ保持する途切れ抑制効果と、液溜りの塗布巾方向への濡れ広がりを抑制する効果の両立を実現でき、広い塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)で微細なストライプ状塗布膜を高速に安定して形成することが可能になる。
吐出口上流の吸引口と吐出口間上流の吸引口の吸引力を調整することで、さらに高精度に且つ安定して、塗布液をストライプ状に塗布することができる。すなわち、吐出口上流の吸引口への流れを乱さない範囲で、液溜りの両側を通過してくる気体の流れを速くするように吐出口間上流の吸引口の吸引力を調整すれば、更に高精度に且つ安定して、塗布液をストライプ状に塗布することができる。
(実施の形態4)
また、図15に示すように、それぞれの塗布液吐出口3の上流側に、塗布液吐出口3と同じ巾の気体吸引口2を設けると共に、別途、塗布液の吐出口間の上流側の範囲12にも気体吸引口を設けて、塗布液吐出口数<気体吸引口数という構成としても良い。その結果、塗布液吐出口の上流側の範囲13に気体吸引口2が設けられると共に、塗布液の吐出口間の上流側の範囲12にも気体吸引口が設けられていることになる。ここで、本実施の形態では、一例として、3つの塗布液吐出口3に対して、5つの気体吸引口2を設ける場合を示した。
次に、このノズルにより、気体吸引口2から気体を吸引しながら塗布液吐出口3から塗布液を吐出し、ストライプ状塗布を実施している場合の、塗布液吐出口側からノズルを見た図を図16に示す。
このように、図15に示すノズルでは、別途設けた、塗布液の吐出口間の上流側の範囲12の気体吸引口2により、塗布液吐出口3の下流側から気体吸引口2に向けての直線的な流れを積極的に生じさせることが可能になり、液溜りの下流側における液溜りを上流側へ押し込む力11と、液溜りの上流側における、液溜りの塗布巾方向への濡れ広がりを抑制する力10を安定して得られるようになる。
その結果、本実施の形態4のノズルでは、液溜りを上流側へ保持する途切れ抑制効果と、液溜りの塗布巾方向への濡れ広がりを抑制する効果の両立を実現でき、広い塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)で微細なストライプ状塗布膜を高速に安定して形成することが可能になる。
(実施の形態5)
また、図17に示すように、それぞれの塗布液吐出口3の上流側に、塗布液吐出口3よりも狭い巾の気体吸引口2を設けると共に、別途、塗布液の吐出口間の上流側の範囲12にも気体吸引口を設けて、塗布液吐出口数<気体吸引口数という構成としても良い。その結果、塗布液吐出口の上流側の範囲13に気体吸引口2が設けられると共に、塗布液の吐出口間の上流側の範囲12にも気体吸引口が設けられていることになる。
ここで、本実施の形態では、一例として、3つの塗布液吐出口3に対して、11個の気体吸引口2を設ける場合を示した。次に、このノズルにより、気体吸引口2から気体を吸引しながら塗布液吐出口3から塗布液を吐出し、ストライプ状塗布を実施している場合の、塗布液吐出口側からノズルを見た図を図18に示す。
このように、図17に示すノズルでは、別途設けた、塗布液の吐出口間の上流側の範囲12の気体吸引口2により、塗布液吐出口3の下流側から気体吸引口2に向けての直線的な流れを積極的に生じさせることが可能になり、液溜りの下流側における液溜りを上流側へ押し込む力11と、液溜りの上流側における、液溜りの塗布巾方向への濡れ広がりを抑制する力10を安定して得られるようになる。
その結果、本実施の形態5のノズルでは、液溜りを上流側へ保持する途切れ抑制効果と、液溜りの塗布巾方向への濡れ広がりを抑制する効果の両立を実現でき、広い塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)で微細なストライプ状塗布膜を高速に安定して形成することが可能になる。
(実施の形態6)
また、図21に示すように、ノズルの塗布液吐出口3と気体吸引口2の間の範囲に凹部27を設けた構成としても良い。
ここで、その一例として、実施の形態1のノズルの塗布液吐出口3と気体吸引口2の間の範囲に凹部27を設けた場合を示した。また、図22には、図21におけるC側から見たノズルの側方断面図を示す。このような構成とすることで、気体の吸引によって液溜り7に気体吸引口方向への引っ張り力が働く際に、凹部27によって液溜りを留める効果が得られ、液溜りが気体吸引口2に吸込まれて塗布できなくなるということを防止できる。
その結果、より高い吸引圧力で気体を吸引しても、液溜りを保持できるようになるため、広い塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)で微細なストライプ状塗布膜を高速に安定して形成することが可能になる。
なお、本実施の形態1〜6では、塗布液吐出口3を円形として述べたが、塗布液を安定して吐出できる形状であれば良く、これに限らない。また、気体吸引口2を長方形として述べたが、安定して気体を吸引できる形状であれば良く、これに限らない。また、本実施の形態1〜6では、塗布液の吐出と気体の吸引を同時に開始するとして述べたが、両者の開始のタイミングに差をつけても良い。
例えば、塗布始端部において液溜りを形成してからノズルと被塗布材8の相対的な走行を開始させて塗布する際に、低粘度液体の塗布においてノズル先端での濡れ広がりが速い場合、先に気体吸引を開始してから塗布液を吐出させることで、始端部の塗布巾が不必要に広くなることを防止できる。また、膜厚を薄く塗布する場合には、吐出量が少なくなるため、まだ液溜りが形成されていない状態(図5(1)の状態)で、吐出された塗布液が気体の吸引により不必要に塗布方向における上流側へ押し流されてしまい、所定の位置に塗布始端部を形成できなくなることがある。そこで、このような場合には、先に塗布液を吐出させて液溜りを形成してから気体吸引することで、塗布始端部の未塗布部発生などを防止できる。
また、液体の吐出と気体の吸引を同時に開始しつつ、気体吸引圧力を変動させながら塗布する(例えば、塗布始端部では定常塗布時よりも高い圧力で気体を吸引し、ノズルと被塗布材8の相対的な走行が始まると定常塗布時の所定の圧力に変化させる。若しくは、塗布始端部で液体の吐出開始から液溜りが形成されるまでは、定常塗布時よりも低い圧力で気体を吸引し、ノズルと被塗布材8の相対的な走行が始まると定常塗布時の所定の圧力に変化させる。)ことで、上記のような両者の開始タイミングに差をつける効果と同様の効果を得ることも可能である。
(実施例1)
実施の形態1を使用した実施例により、更に詳細に説明する。
図1に示したノズル1において、塗布液吐出口3は円形で、塗布液吐出口の巾5は20〜150μm、気体吸引口2の隙間(図1におけるW)は10μm〜5000μm、気体吸引口の巾4は、塗布液吐出口の巾+10μm〜5000μm、塗布巾方向両端部の塗布液吐出口3の外側の気体吸引口2の巾(図10(1)におけるX1とX6)をその他の塗布液の吐出口間の上流側の範囲12に設けられた気体吸引口の巾(図10(1)におけるX2〜X5)よりも、10μm〜4500μm大きくする。
また、塗布液吐出口3と気体吸引口2との距離(図1におけるY)は50μm〜5000μm、塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)が30〜200μm、塗布液吐出口3が1000個、気体吸引口2が1000個、気体吸引口2付近での気体吸引圧力は−5kPa〜−15kPaとした。ノズル1の吐出口を設けた面の塗布巾方向端部の凸部26の長さ(図8におけるZ)は20〜190μm、巾は2mm〜15mmとし、インクの溶質にポリフルオレン系、溶媒にシクロヘキシルベンゼンを使用し、インクの粘度は5cps〜500cps、温度20℃、吐出量0.2〜100nL/s、ノズルと被塗布材8の相対的走行速度50〜500mm/s、塗布始端部で塗布液の吐出を開始してから20msec後に気体の吸引を開始させた。
そして、塗布終端位置から13mm手前の位置でポンプによる塗布液供給を停止し、塗布終端位置から10mm手前の位置から塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)を200μm増加させるという条件で、高さ1〜100μm、巾10〜80μmのバンクを50〜200μmピッチで設けた被塗布材8上のバンク間に塗布するテストを実施した。
いずれの条件においても表1と同様の、途切れやはみ出しが発生することなく安定的にインクを塗布することができる最大の塗工ギャップ15が、140μmという結果が得られた。
(実施例2)
実施の形態2を使用した実施例により、更に詳細に説明する。
図11に示したノズル1において、塗布液吐出口3は円形で、塗布液吐出口の巾5は20〜150μm、気体吸引口2の隙間(図1におけるW)は10μm〜5000μm、気体吸引口の巾4は80μm〜204950μm、塗布巾方向両端部の塗布液吐出口3の外側の気体吸引口2の巾(図10(1)におけるX1とX6)をその他の塗布液の吐出口間の上流側の範囲12に設けられた気体吸引口の巾(図10(1)におけるX2〜X5。但し、塗布液の吐出口間の上流側の範囲12で気体吸引口が繋がっている場合は、その半分の長さを考える)よりも、10μm〜4500μm大きくした。
また、塗布液吐出口3と気体吸引口2との距離(図1におけるY)は50μm〜5000μm、塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)が30〜200μm、塗布液吐出口3が1000個、気体吸引口2が2〜999個、気体吸引口2付近での気体吸引圧力は−5kPa〜−15kPaとした。ノズル1の吐出口を設けた面の塗布巾方向端部の凸部26の長さ(図8におけるZ)は20〜190μm、巾は2mm〜15mmとし、インクの溶質にポリフルオレン系、溶媒にシクロヘキシルベンゼンを使用し、インクの粘度は5cps〜500cps、温度20℃、吐出量0.2〜100nL/s、ノズルと被塗布材8の相対的走行速度50〜500mm/s、塗布始端部で塗布液の吐出を開始してから20msec後に気体の吸引を開始させた。
そして、塗布終端位置から13mm手前の位置でポンプによる塗布液供給を停止し、塗布終端位置から10mm手前の位置から塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)を200μm増加させるという条件で、高さ1〜100μm、巾10〜80μmのバンクを50〜200μmピッチで設けた被塗布材8上のバンク間に塗布するテストを実施した。
いずれの条件においても表2と同様の、途切れやはみ出しが発生することなく安定的にインクを塗布することができる最大の塗工ギャップ15が、140μmという結果が得られた。
(実施例3)
実施の形態3を使用した実施例により、更に詳細に説明する。
図13に示したノズル1において、塗布液吐出口3は円形で、塗布液吐出口の巾5は20〜150μm、気体吸引口2の隙間(図1におけるW)は10μm〜5000μm、気体吸引口の巾4は、塗布液吐出口の巾+10μm〜5000μm、塗布巾方向両端部の塗布液吐出口3の外側の気体吸引口2の巾(図10(1)におけるX1とX6)をその他の塗布液の吐出口間の上流側の範囲12に設けられた気体吸引口の巾(図10(1)におけるX2〜X5)よりも、10μm〜4500μm大きくする。
また、塗布液吐出口3と気体吸引口2との距離(図1におけるY)は50μm〜5000μm、塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)が30〜200μm、塗布液吐出口3が1000個、気体吸引口2が1999個、気体吸引口2付近での気体吸引圧力は−5kPa〜−15kPaとする。ノズル1の吐出口を設けた面の塗布巾方向端部の凸部26の長さ(図8におけるZ)は20〜190μm、巾は2mm〜15mmとし、インクの溶質にポリフルオレン系、溶媒にシクロヘキシルベンゼンを使用し、インクの粘度は5cps〜500cps、温度20℃、吐出量0.2〜100nL/s、ノズルと被塗布材8の相対的走行速度50〜500mm/s、塗布始端部で塗布液の吐出を開始してから20msec後に気体の吸引を開始させる。
そして、塗布終端位置から13mm手前の位置でポンプによる塗布液供給を停止し、塗布終端位置から10mm手前の位置から塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)を200μm増加させるという条件で、高さ1〜100μm、巾10〜80μmのバンクを50〜200μmピッチで設けた被塗布材8上のバンク間に塗布するテストを実施したところ、何れの条件においても、表3と同様の途切れやはみ出しが発生することなく安定的にインクを塗布することができる最大の塗工ギャップ15が、140μmという結果が得られた。
(実施例4)
実施の形態4を使用した実施例により、更に詳細に説明する。
図15に示したノズル1において、塗布液吐出口3は円形で、塗布液吐出口の巾5は20〜150μm、気体吸引口2の隙間(図1におけるW)は10μm〜5000μm、気体吸引口の巾4は、塗布液吐出口の巾5と同じである。また、塗布液吐出口3と気体吸引口2との距離(図1におけるY)は50μm〜5000μm、塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)が30〜200μm、塗布液吐出口3が1000個、気体吸引口2が1999個、気体吸引口2付近での気体吸引圧力は−5kPa〜−15kPaである。
ノズル1の吐出口を設けた面の塗布巾方向端部の凸部26の長さ(図8におけるZ)は20〜190μm、巾は2mm〜15mmとし、インクの溶質にポリフルオレン系、溶媒にシクロヘキシルベンゼンを使用し、インクの粘度は5cps〜500cps、温度20℃、吐出量0.2〜100nL/s、ノズルと被塗布材8の相対的走行速度50〜500mm/s、塗布始端部で塗布液の吐出を開始してから20msec後に気体の吸引を開始させる。
塗布終端位置から13mm手前の位置でポンプによる塗布液供給を停止し、塗布終端位置から10mm手前の位置から塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)を200μm増加させるという条件で、高さ1〜100μm、巾10〜80μmのバンクを50〜200μmピッチで設けた被塗布材8上のバンク間に塗布するテストを実施したところ、何れの条件においても表4と同様の、途切れやはみ出しが発生することなく安定的にインクを塗布することができる最大の塗工ギャップ15が、120μmという結果が得られた。
(実施例5)
実施の形態5を使用した実施例により、更に詳細に説明する。
図17に示したノズル1において、塗布液吐出口3は円形で、塗布液吐出口の巾5は20〜150μm、気体吸引口2の隙間(図1におけるW)は10μm〜5000μm、気体吸引口の巾4は、塗布液吐出口の巾は−10μm〜−130μmである。また、塗布液吐出口3と気体吸引口2との距離(図1におけるY)は50μm〜5000μm、塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)が30〜200μm、塗布液吐出口3が1000個、気体吸引口2が2001〜3999個、気体吸引口2付近での気体吸引圧力は−5kPa〜−15kPaである。
ノズル1の吐出口を設けた面の塗布巾方向端部の凸部26の長さ(図8におけるZ)は20〜190μm、巾は2mm〜15mmとし、インクの溶質にポリフルオレン系、溶媒にシクロヘキシルベンゼンを使用し、インクの粘度は5cps〜500cps、温度20℃、吐出量0.2〜100nL/s、ノズルと被塗布材8の相対的走行速度50〜500mm/s、塗布始端部で塗布液の吐出を開始してから20msec後に気体の吸引を開始させる。
塗布終端位置から13mm手前の位置でポンプによる塗布液供給を停止し、塗布終端位置から10mm手前の位置から塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)を200μm増加させるという条件で、高さ1〜100μm、巾10〜80μmのバンクを50〜200μmピッチで設けた被塗布材8上のバンク間に塗布するテストを実施したところ、何れの条件においても表5と同様の、途切れやはみ出しが発生することなく安定的にインクを塗布することができる最大の塗工ギャップ15が、100μmという結果が得られた。
(実施例6)
実施の形態6を使用した実施例により、更に詳細に説明する。
図25に示したノズル1において、塗布液吐出口3は円形で、塗布液吐出口の巾5は20〜150μm、気体吸引口2の隙間(図1におけるW)は10μm〜5000μm、気体吸引口の巾4は、塗布液吐出口の巾+10μm〜5000μm、塗布巾方向両端部の塗布液吐出口3の外側の気体吸引口2の巾(図10(1)におけるX1とX6)をその他の塗布液の吐出口間の上流側の範囲12に設けられた気体吸引口の巾(図10(1)におけるX2〜X5)よりも、10μm〜4500μm大きくした。
また、塗布液吐出口3と気体吸引口2との距離(図1におけるY)は50μm〜5000μm、凹部27の隙間(図22におけるA)は10μm〜500μm、凹部27の深さ(図22におけるB)は10μm〜500μm、凹部27と塗布液吐出口3との距離(図22におけるC)は20μm〜2000μm、塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)が30〜200μm、塗布液吐出口が1000個、気体吸引口2付近での気体吸引圧力は−5kPa〜−15kPaである。
ノズル1の吐出口を設けた面の塗布巾方向端部の凸部26の長さ(図8におけるZ)は20〜190μm、巾は2mm〜15mmとし、インクの溶質にポリフルオレン系、溶媒にシクロヘキシルベンゼンを使用し、インクの粘度は5cps〜500cps、温度20℃、吐出量0.2〜100nL/s、ノズルと被塗布材8の相対的走行速度50〜500mm/s、塗布始端部で塗布液の吐出を開始してから20msec後に気体の吸引を開始させる。そして、塗布終端位置から13mm手前の位置でポンプによる塗布液供給を停止し、塗布終端位置から10mm手前の位置から塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)を200μm増加させるという条件で、高さ1〜100μm、巾10〜80μmのバンクを50〜200μmピッチで設けた被塗布材8上のバンク間に塗布するテストを実施したところ、何れの条件においても表6と同様の、途切れやはみ出しが発生することなく安定的にインクを塗布することができる最大の塗工ギャップ15が、160μmという結果が得られた。
(比較例1)
比較例1として、従来法の1つである図30に示したノズルを使用して同様の塗布を行った。
図30に示したノズル1において、塗布液吐出口3は円形で、塗布液吐出口の巾5は20〜150μm、気体吸引口2の隙間(図1におけるW)は10μm〜5000μm、気体吸引口の巾4は、塗布液吐出口の巾5と同じである。また、塗布液吐出口3と気体吸引口2との距離(図1におけるY)は50μm〜5000μm、塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)が30〜200μm、塗布液吐出口3が1000個、気体吸引口2が1000個、気体吸引口2付近での気体吸引圧力は−5kPa〜−15kPaである。
ノズル1の吐出口を設けた面に塗布巾方向端部の凸部26は設けない、インクの溶質にポリフルオレン系、溶媒にシクロヘキシルベンゼンを使用し、インクの粘度は5cps〜500cps、温度20℃、吐出量0.2〜100nL/s、ノズルと被塗布材8の相対的走行速度50〜500mm/s、塗布始端部で塗布液の吐出を開始してから20msec後に気体の吸引を開始させた。
塗布終端位置から13mm手前の位置でポンプによる塗布液供給を停止し、塗布終端位置から10mm手前の位置から塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)を200μm増加させるという条件で、高さ1〜100μm、巾10〜80μmのバンクを50〜200μmピッチで設けた被塗布材8上のバンク間に塗布するテストを実施したところ、何れの条件においても表7と同様の、途切れやはみ出しが発生することなく安定的にインクを塗布することができる最大の塗工ギャップ15が、60μmという結果が得られた。
(比較例2)
比較例2として、図19に示したノズルを使用して同様の塗布を行った。
また、図19に示すように、それぞれの塗布液吐出口3の上流側に、塗布液吐出口3よりも狭い巾の気体吸引口2を設けて、塗布液吐出口数=気体吸引口数という構成とした。ここで、図19では、一例として3本のストライプ状塗布を行う場合のノズル構成を示した。
その結果、塗布液吐出口の上流側の範囲13のみに気体吸引口2が設けられ、塗布液の吐出口間の上流側の範囲12には気体吸引口が設けられないことになる。次に、このノズルにより、気体吸引口2から気体を吸引しながら塗布液吐出口3から塗布液を吐出し、ストライプ状塗布を実施している場合の、塗布液吐出口側からノズルを見た図を図20に示す。
このように、図19に示すノズルでは、気体吸引口2から気体を吸引することにより、図20に示すようなノズル−被塗布材間の気体の流れ6が生じる。その際、気体吸引口2を中心とした「液溜りの無い(塗布液吐出口への向きを除く)向き」の領域は、流動抵抗が少なく、気体が流入しやすいため減圧され難いが、「液溜りのある向き(塗布液吐出口3と気体吸引口2の間の領域)」では、液溜りの抵抗があるため外部からの気体流入が困難となり、その他の領域に比べて強く減圧される領域9となる。
その結果、液溜りを上流側へ保持する力を得て、ストライプ状塗布膜の途切れ抑制の効果を得ることが可能になる。しかし、このノズルでは、気体吸引口の巾4が小さいため、強く減圧される領域9も非常に小さい領域となり、液溜りを上流側へ保持する力も非常に小さなものとなる。更に、このノズルでは、塗布液の吐出口間の上流側の範囲12に気体吸引口2が設けられていないため、塗布液吐出口3の下流側から気体吸引口2に向けての流れを積極的に生じさせることができないため、液溜りの下流側における液溜りを上流側へ押し込む力11と、液溜りの上流側における、液溜りの塗布巾方向への濡れ広がりを抑制する力10を得ることができない。
その結果、広い塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)で微細なストライプ状塗布膜を高速に安定して形成することが困難になる。
比較例2について、更に詳細に述べる。
図19に示したノズル1において、塗布液吐出口3は円形で、塗布液吐出口の巾5は20〜150μm、気体吸引口2の隙間(図1におけるW)は10μm〜5000μm、気体吸引口の巾4は、塗布液吐出口の巾−10μm〜−130μmである。また、塗布液吐出口3と気体吸引口2との距離(図1におけるY)は50μm〜5000μm、塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)が30〜200μm、塗布液吐出口が1000個、気体吸引口2付近での気体吸引圧力は−5kPa〜−15kPaである。
ノズル1の吐出口を設けた面の塗布巾方向端部の凸部26の長さ(図8におけるZ)は20〜190μm、巾は2mm〜15mmとし、インクの溶質にポリフルオレン系、溶媒にシクロヘキシルベンゼンを使用し、インクの粘度は5cps〜500cps、温度20℃、吐出量0.2〜100nL/s、ノズルと被塗布材8の相対的走行速度50〜500mm/s、塗布始端部で塗布液の吐出を開始してから20msec後に気体の吸引を開始させる。
そして、塗布終端位置から13mm手前の位置でポンプによる塗布液供給を停止し、塗布終端位置から10mm手前の位置から塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)を200μm増加させるという条件で、高さ1〜100μm、巾10〜80μmのバンクを50〜200μmピッチで設けた被塗布材8上のバンク間に塗布するテストを実施したところ、いずれの条件においても表8と同様の、途切れやはみ出しが発生することなく安定的にインクを塗布することができる最大の塗工ギャップ15が、60μmという結果が得られた。
以上のように、本発明の塗布装置によれば、液溜りを上流側へ保持する途切れ抑制効果と、液溜りの塗布巾方向への濡れ広がりを抑制する効果が両立できるようになるため、広い塗工ギャップ15(ノズル−被塗布材間の距離)で微細なストライプ状塗布膜を高速に安定して形成することが可能になった。
また、本実施の形態および実施例は、有機ELの発光層塗布工程を例にして説明したが、その他、例えば、色変換層、カラーフィルター等の塗布工程などにも適用可能であり、これに限らない。また、同様に、プラズマディスプレイや液晶ディスプレイなど、他のデバイスにおける、塗布液をストライプ状に塗布する工程にも適用可能であり、これに限らない。