JP5310180B2 - 製紙方法 - Google Patents

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Description

本発明は、紙の製造工程から排出される廃水のCODを低減するための製紙方法及び装置に関する。
紙の製造工程には、古紙の塗工層由来の澱粉、段ボール古紙の糊由来の澱粉、紙力増強剤として使用されている澱粉、層間接着剤として使用されている澱粉など多量の澱粉が含まれている。これらの澱粉を栄養源として細菌等の微生物が増殖すると、配管やタンクの壁面、フィルター上などにスライムと呼ばれる生物膜が形成され、抄紙工程における生産性低下や紙質劣化などのスライム障害が引き起こされる。
スライム中の微生物は、澱粉分解酵素であるアミラーゼを産生する能力が高い細菌によって占有されている。アミラーゼは、スライムから製紙工程水に放出されて、パルプ繊維に吸着している澱粉や、水中に分散している不溶性の澱粉粒子をグルコースへと加水分解し、ギ酸、乳酸、酢酸、酪酸などの有機酸を生成する。
このようなスライム中の微生物のアミラーゼの働きは、製造工程からの廃水における澱粉及び澱粉に由来するグルコースや有機酸などのCOD成分の増加の原因となり、廃水処理コストを増大させる要因となっている。また、アミラーゼの働きによって、紙の強度や印刷適性等を向上させる機能を有する澱粉がパルプスラリー中から消失する結果、新たに澱粉を添加、噴霧、塗工する必要が生じ、製造コストの増大にもつながっている。
特許文献1には、「澱粉が紙原料中に添加される紙の製造方法において、前記製造工程の所定箇所においてアミラーゼ活性の測定を行い、その測定値に基づいてスライムコントロール剤の添加を行う紙の製造方法」が開示されている。この製造方法によれば、スライム障害による澱粉使用紙の品質劣化等を防止することができる。また、特許文献2〜5には、スライムコントロール剤が提案されている。
特開2008−169499号公報 特開平6−009307号公報 特開平10−120509号公報 特開2003−012413号公報 特表2004−537412号公報
近年、紙の強度や印刷適性を安価に維持するために、紙力増強剤や表面強度増強剤としての澱粉の使用が急増している。さらに、澱粉を多く含む古紙の利用率も高まっている。そのため、澱粉及び澱粉分解物に由来する廃水への負荷が高くなり、廃水処理コストの増大という問題が一層顕在化してきている。
また、一定の紙質を得るために、スライム中の微生物のアミラーゼの働きによってパルプスラリー中から消失した澱粉を増添することが行われており、廃水への負荷を一層高めるとともに、製造コストを増大させることとなっている。
そこで、本発明は、廃水への負荷を低減し、かつ一定の紙質が得られる製紙方法を提供することを主な目的とする。
上記課題解決のため、本発明は、澱粉を含有する製紙工程水にスライムコントロール剤を添加する工程と、前記製紙工程水にカチオン性官能基、アニオン性官能基又は水素結合能を持つ官能基を有する実質的に水不溶性の有機系微粒子を添加する工程と、有機系微粒子の添加後の製紙工程水に無機凝結剤、有機凝結剤及び有機高分子凝集剤から選択される1以上を添加する工程と、を含む製紙方法を提供する。
この製紙方法では、スライムコントロール剤によって澱粉の分解を抑制し、有機系微粒子によって澱粉を吸着し、澱粉を吸着した有機系微粒子を凝集させて澱粉を紙製品に定着させることで、廃水に持ち込まれる澱粉量を低減することができる。
併せて、本発明は、澱粉を含有する製紙工程水にスライムコントロール剤を添加する手段と、前記製紙工程水にカチオン性官能基、アニオン性官能基又は水素結合能を持つ官能基を有する実質的に水不溶性の有機系微粒子を添加する手段と、澱粉吸着工程後の製紙工程水に、無機凝結剤、有機凝結剤及び有機高分子凝集剤から選択される1以上を添加する手段と、を備える製紙装置を提供する。
本発明おいて、「澱粉」は、例えばカチオン化澱粉、両性澱粉、アルファ化澱粉、エステル化澱粉等の加工澱粉を包含し、狭く限定されないものとする。
本発明により、廃水への負荷を低減し、かつ一定の紙質が得られる製紙方法が提供される。
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
本発明に係る製紙方法は、澱粉を含有する製紙工程水にスライムコントロール剤を添加する工程(分解抑制工程)と、製紙工程水にカチオン性官能基、アニオン性官能基、又は水素結合能を持つ官能基を有する実質的に水不溶性の有機系微粒子を添加する工程(吸着工程)と、有機系微粒子の添加後の製紙工程水に無機凝結剤、有機凝結剤及び有機高分子凝集剤から選択される1以上を添加する工程(凝集工程)とを含む。分解抑制工程では、製紙工程水へのスライムコントロール剤の添加によって、スライム中の微生物のアミラーゼの働きによる澱粉の分解を抑制する。続く吸着工程では、製紙工程水へ添加した有機系微粒子に澱粉を吸着させる。そして、凝集工程において、澱粉を吸着した有機系微粒子を凝集させて、製紙工程水中の澱粉を紙製品に歩留まらせることで、廃水に持ち込まれる澱粉量を低減する。これにより、廃水中の澱粉及び澱粉分解物に由来する有機物成分の含有量を低減させ、廃水への負荷を軽減することができ、同時に得られる紙製品の強度や印刷適性等の品質を高めることができる。
また、本発明に係る製紙装置は、澱粉を含有する製紙工程水にスライムコントロール剤を添加する手段と、製紙工程水にカチオン性官能基、アニオン性官能基又は水素結合能を持つ官能基を有する実質的に水不溶性の有機系微粒子を添加する手段と、澱粉吸着工程後の製紙工程水に無機凝結剤、有機凝結剤及び有機高分子凝集剤から選択される1以上を添加する手段とを備え、上記の製紙方法を実施可能な構成を有する。
以下、分解抑制工程、吸着工程及び凝集工程の各工程について詳細に説明する。
1.分解抑制工程
本工程は、スライム中の微生物のアミラーゼによって、パルプ繊維に吸着している澱粉、及び製紙工程水中に分散している澱粉が分解されることを抑制する工程である。本工程では、スライム中の微生物のアミラーゼによる澱粉の分解を抑制するため、製紙工程水中にスライムコントロール剤を添加する。スライムコントロール剤の添加により、製造工程全域でのスライム増殖を製造期間中において抑え、アミラーゼによる澱粉分解を抑制することができる。
スライムコントロール剤には、公知の化合物を用いることができるが、澱粉を分解しないスライムコントロール剤を選択することが必要である。具体的には、スライムコントロール剤には、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、N−ブロモアセトアミドなどのブロモアミド系化合物、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン、1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテンなどのブロモ酢酸エステル系化合物、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン又はその金属塩、4,5−ジクロロ−2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンなどのイソチアゾロン化合物、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールなどのブロモニトロアルコール化合物とそのエステル、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオラン−3−オン、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシドなどの環状イオウ化合物、メチレンビスチオシアネート、5−クロロ−2,4,6−トリフルオロイソフタロニトリル、オルトフタルアルデヒド、ジクロログリオキシム、5,5−ジメチルヒダントイン、N−クロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、1−ブロモ−3−クロロ−5,5−ジメチルヒダントインなどのヒダントイン系化合物、酸化剤とアンモニウムとを混合することによって得られる反応物殺菌剤などを採用できる。なお、酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、1−ブロモ−3−クロロ−5,5−ジメチルヒダントインなどを例示でき、アンモニウム塩としては、臭化アンモニウム、硫酸アンモニウムなどを例示できる。これらのスライムコントロール剤は単独で、又は複数を組み合わせて用いることができる。
スライムコントロール剤として最も好ましくは、酸化剤とアンモニウムとを混合することによって得られる反応物殺菌剤が使用される。かかる反応物殺菌剤によれば、製造工程全域のスライムを経済的にも安価にコントロールでき、直接澱粉を酸化分解することもない。
スライムコントロール剤添加の管理は、製造工程全域で採取した製紙工程水中のアミラーゼ活性を定期的に、好ましくは連続的に測定して監視し、測定値が予め定めた閾値を越えた時に添加量を増やすように行うことが好ましい。閾値としては、特に限定されないが、例えば0.002CU/gとすることができる。
また、スライムコントロール剤添加の管理は、製紙工程水のORP(酸化還元電位)を定期的に、好ましくは連続的に測定することによってスライム増殖を監視し、測定値が予め定めた閾値を下回った時に添加量を増やすようにしてもよい。さらに、製紙工程水のORP値をプラスの好気条件に維持するようにスライムコントロール剤を添加して、嫌気条件で促進される微生物の澱粉分解を抑制するようにすることもできる。製紙工程水のORPを連続的に測定する場合には、強酸化剤の流入による澱粉の酸化的分解を把握することもできる。ORP値は、特に限定されないが、一般的には0〜+500mVの範囲で維持することが好ましい。
スライムコントロール剤の添加量及び添加回数は、特に限定されず、上述のアミラーゼ活性又はORPの測定による水質測定結果に基づいて適宜決定される。添加量及び添加回数は、例えば2〜50mg/L、1〜48回/日である。
スライムコントロール剤の添加場所は、特に限定されないが、古紙原料や、澱粉を添加したり塗工したりしたものの製品として出荷できなかった工程損紙などの澱粉を多く含む原料スラリーにスライムコントロール剤が含まれるように添加する必要がある。原料スラリーへの添加後の後工程までスライムコントロール効果を維持できない場合には、上記水質測定結果に基づいて適宜スライムコントロール剤を追加添加することができるが、この場合、添加場所は製造工程全域で澱粉分解が抑制されるように設定する。
2.吸着工程
本工程は、製紙工程水中に分散している澱粉を特異的に吸着して集める工程である。本工程では、製紙工程水中に分散している澱粉を吸着するため、製紙工程水に有機系微粒子を添加する。有機系微粒子の添加により、製紙工程水中に分散している澱粉が有機系微粒子に吸着され、集められる。
有機系微粒子には、カチオン性官能基、アニオン性官能基又は水素結合能を持つ官能基を有する有機系微粒子であって、実質的に水不溶性の微粒子を用いる。
カチオン性官能基としては、一級アミン、二級アミン、三級アミン及びこれらの酸塩や、四級アンモニウム基等の官能基を挙げることができる。また、アニオン性官能基としては、カルボキシル基、スルホン基、硫酸基、ホスホン酸基及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の官能基を挙げることができる。水素結合能を持つ官能基としては、カルボキシル基など上記のものの一部も含まれるが、水酸基、エステル基、アミド基、エーテル基などのノニオン基も挙げることができる。
有機系微粒子のイオン性は、製紙工程水中の澱粉のイオン性に応じて選択してもよい。なお、通常の澱粉はアニオン性もしくはノニオン性であり、このような場合にはカチオン性の官能基を有する有機系微粒子を適用することが望ましい。
有機系微粒子としては、架橋構造を有する電解質ポリマーが好適である。電解質ポリマーは、架橋構造構成モノマー単位として、アニオン系であれば、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸等、及びこれらのアルカリ金属塩等のアニオン性モノマーが挙げられる。また、ノニオン系であれば、ポリ(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、スチレン、メチルもしくはエチル(メタ)アクリレート等のノニオン性モノマーが挙げられる。カチオン系であれば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレ−トもしくはその四級アンモニウム塩やジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドもしくはその四級アンモニウム塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド等のカチオン性モノマーが挙げられる。電解質ポリマーは、これらのモノマーのホモポリマーあるいはコポリマーとされる。
有機系微粒子を実質的に水に溶解しないようにするため、上記モノマーに加えて、架橋剤として、メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼンなどのジビニルモノマーをエマルション重合させることが好ましい。この場合、ジビニルモノマー量は全モノマーに対して0.0001〜0.1モル%を加えればよい。この量を増減することによってポリマー微粒子の膨張度、つまり水中での粒子径を調整できる。
有機系微粒子は、炭化水素液体中に分散した状態で、又は希釈水に分散させて希釈された状態で、製紙工程水に添加する。有機系微粒子は、好ましくは逆相エマルションとして添加される。逆相エマルションとしては、有機系微粒子(P)と水(W)と、炭化水素液体(HC)と界面活性剤(S)とを含むものが好ましい。これら成分P、W、HC、Sの割合は、重量比(%)でP:W:HC:S=20〜50:20〜40:20〜40:2〜20であり、PとWの合計量が全体重量に対して40〜80重量%であることが好ましい。
炭化水素液体としては、脂肪族系の炭化水素液体が好適であり、具体的にはイソヘキサンなどのイソパラフィン、n−ヘキサン、ケロシン、鉱物油などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、界面活性剤としては、例えばHLB 7〜10の高級脂肪族(C10〜20)アルコールのポリオキシエチレンエーテル、もしくは高級脂肪酸(C10〜22)のポリオキシエチレンエステルが好適である。前者の例としては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどのポリオキシエチレン(EO付加モル数=3〜10)エーテルが挙げられる。後者の例としては、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などのポリオキシエチレン(EO付加モル数=3〜10)エステルが挙げられる。ただし、界面活性剤はこれらに限定されない。
有機系微粒子の平均粒子径は、200μm以下、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは1〜10μmである。粒径が小さいと比表面積が大きくなり、澱粉の吸着効率が向上する。なお、粒子径は、通常の散乱光方式、又は透過光方式等の粒度分布測定装置により測定される。
有機系微粒子の添加量は、製紙工程水中の澱粉濃度や性状に応じて変わるが、概ね固形分で0.1〜5g/L、特に0.5〜3g/L程度が好適である。
本発明に係る製紙方法において、分解抑制工程と吸着工程の前後は特に限定されず、どちらが先であってもよく、同一のタイミングで行われてもよい。
3.凝集工程
本工程は、製紙工程水中の澱粉をパルプ繊維に定着させて紙製品として歩留まらせて製紙工程水から除去する工程である。本工程では、澱粉を吸着した有機系微粒子を凝集させるため、製紙工程水に無機凝結剤、有機凝結剤又は有機高分子凝集剤を添加する。無機凝結剤等の添加により、有機系微粒子に吸着された澱粉をパルプ繊維に定着させ、廃水中に澱粉が持ち込まれることを防止し、得られる紙製品の強度や印刷適性等の品質を高めることができる。
無機凝結剤としては、特に限定されず、例えば硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第一鉄などから1以上を選定できる。無機凝結剤の添加量は、製紙工程水中の澱粉濃度とその性状に応じて変わるが、概ね固形分で500〜5000mg/L程度が好適である。
有機凝結剤としては、特に限定されず、例えばポリエチレンイミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、エチレンジアミンエピクロルヒドリン重縮合物、ポリアルキレンポリアミンなどのカチオン性有機系ポリマーから1以上を選定できる。有機凝結剤の添加量は、製紙工程水中の澱粉濃度とその性状に応じて変わるが、概ね固形分で1〜100mg/Lとすることができる。
有機高分子凝集剤としては、特に限定されず、例えば、アニオン系であれば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミドの共重合物、及びこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。ノニオン系であれば、ポリ(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン系であれば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドもしくはその四級アンモニウム塩やジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドもしくはその四級アンモニウム塩等のカチオン性モノマーからなるホモポリマー、あるいはこれらカチオン性モノマーと共重合可能なノニオン性モノマーとの共重合体が挙げられる。有機高分子凝集剤の添加量は、製紙工程水中の澱粉濃度とその性状に応じて変わるが、概ね固形分で1〜100mg/Lとすることができる。
無機凝結剤、有機凝結剤及び有機高分子凝集剤は、いずれか1種を添加すればよいが、凝結剤と凝集剤を組み合わせて使用するのが好適であり、添加順序は凝結剤を添加してよく反応させた後、凝集剤を添加することが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
(1)試験用パルプスラリーの調製
31g/kgで澱粉を含有する段ボール古紙330gを水道水15Lに分散させ、ビーターで離解、叩解を行い、固形分で2重量%のパルプスラリー(CSF=315ml)を調製した。この2重量%のパルプスラリー15Lに5重量%澱粉水溶液600mlを添加して試験用パルプスラリーとした。澱粉には、キシダ化学製試薬特級を使用した。コロイド当量測定によるアニオン化度は、−0.15meq/gで若干アニオン性を示した。澱粉は、ホットプレートスターラーにて加熱溶解し、5重量%澱粉水溶液として調製した。
(2)手抄紙の調製
試験用パルプスラリーから、JIS P 8029規定の方法に準拠して、坪量120g/m2の手抄紙を調製した。
(3)水中澱粉濃度・アミラーゼ活性・COD(Mn)の測定
製紙工程水を5A濾紙で吸引濾過した濾液3.2mlに10倍希釈塩酸4 ml、0.002Nヨウ素溶液0.4 ml、純水0.4 mlを加えて、分光光度計を用いて580nmの吸光度を測定し、既知濃度の澱粉サンプルから作成した検量線から澱粉濃度を算出した。また、濾液について、市販のアミラーゼ測定キット(Megazyme International Ireland社製)を用いてアミラーゼ活性を測定した。COD(Mn)の測定は、製紙工程水の上澄み液を用いて、JIS K 0102に記載の100℃における測定法に準拠して行なった。
(4)紙中澱粉濃度と紙の強度の測定
手抄紙1.0gを純水50mlに浸し、これを90℃の温浴中で30分間静置して、紙中に含まれる澱粉を熱水抽出し、上記の測定法に従って紙中澱粉濃度を算出した。また、手抄紙を用いて、JIS P 8112規定の方法に準拠して破裂強さを測定した。
(5)スライムコントロール剤の調製
硫酸アンモニウムと次亜塩素酸ソーダとを1:1(モル比)で混合し、塩素換算濃度1000mg/Lのスライムコントロール剤を調製した。
(6)有機系微粒子の調製
有機系微粒子としてジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル四級化物/アクリルアミド=60/40(モル%)コポリマーの架橋ゲル微粒子(平均粒径15μm)を含むものを用いて、逆相エマルションを調製した。
架橋ゲル微粒子の製造は以下の手順で行った。攪拌器、ジムロート冷却管、窒素導入管、温度計を備えた1L 4つ口セパラブルフラスコを用意し、窒素雰囲気下、HLB=9.5の高級アルコールポリオキシエチレンエーテル48gを混合したケロシン123gをフラスコに入れる。窒素雰囲気下で強く攪拌しながら、ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル四級化物(65%)178gとアクリルアミド28gと、メチレンビスアクリルアミド0.01gと水82gの混合物をゆっくりフラスコに投入する。フラスコ内を50℃に保ち、そこに開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルのアセトン10%溶液0.65gを添加して、50℃のまま8時間窒素雰囲気下、攪拌しながら重合を行う。その反応物として、水に入れても溶解しない不溶性の微粒子ゲルを製造した。有機系微粒子ゲルの成分は、ポリマー50重量%、水50重量%である。有機系微粒子ゲル分散液の組成は、ポリマー31重量%、水31重量%、ケロシン27重量%、界面活性剤11重量%であった。
(7)有機高分子凝結剤の調製
カチオン性の高分子凝集剤としてジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの四級アンモニウム塩/アクリルアミドの60/40(モル%)の共重合物を使用した。
[実験例]
試験用パルプスラリーを30℃で3日間静置したサンプル、及び試験用パルプスラリーに1回/日の頻度でスライムコントロール剤を20mg/L添加して30℃で3日間静置したサンプルを調製した。それぞれのサンプルの分析結果を「表1」に示す。
Figure 0005310180
スライムコントロール剤処理を行わないと微生物が増殖し、ORP値の低下とアミラーゼ活性の上昇が見られる。
スライムコントロール剤処理の有無で3日間静置した「表1」のサンプルを用いて、有機系微粒子及び有機系高分子凝集剤の添加による効果を評価した。スライムコントロール剤処理を行なったサンプルを用いた分析結果を「表2」に、スライムコントロール剤処理を行なわなかったサンプルを用いた分析結果を「表3」に示す。
Figure 0005310180
Figure 0005310180
「表2」中、実施例1及び実施例2に示す通り、スライムコントロール剤処理を行って微生物由来のアミラーゼによる澱粉分解を抑制した上、澱粉を有機系微粒子により吸着し、手抄紙に定着させることで、水中の澱粉量及びCODを低減できた。また、得られる手抄紙中の澱粉量を増加させ、手抄紙の強度を向上させることができた。
本発明に係る製紙方法によれば、廃水に持ち込まれる澱粉量を低減して、廃水中の澱粉及び澱粉分解物に由来する有機物成分を減少させることで、廃水のCODを低減することができる。このため、本発明は、紙の製造工程における用水原価の削減や、加温された製紙工程水の系外流出防止による省エネルギーに寄与できる。
また、本発明に係る製紙方法によれば、製紙工程水中の澱粉を紙製品に歩留まらせることで、紙製品の強度を向上させ、新たに添加する澱粉や紙力増強剤の量を削減することもできる。

Claims (1)

  1. 澱粉を含有する製紙工程水に、スライムコントロール剤を添加する工程と、
    前記製紙工程水に、カチオン性官能基、アニオン性官能基又は水素結合能を持つ官能基を有する実質的に水不溶性の有機系微粒子を添加する工程と、
    有機系微粒子の添加後の製紙工程水に、無機凝結剤、有機凝結剤及び有機高分子凝集剤から選択される1以上を添加する工程と、を含む製紙方法。
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