JP5309795B2 - 管状火炎バーナ - Google Patents

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本発明は、炉や燃焼器などに備えられる管状火炎バーナに関する。
炉や燃焼器などに備えられるバーナとして、管状体の一端を閉塞して形成された燃焼室に燃料ガスと酸素含有ガスまたは両者の混合ガスを燃焼室の接線方向に向けて吹込み、燃焼室に吹き込まれたガスを燃焼室の周方向に旋回させながら燃焼せしめる管状火炎バーナが知られている(例えば特許文献1参照)。
この管状火炎バーナによると、燃焼室に吹き込まれたガスが高速で旋回しながら燃焼するため、燃焼室の内部に管状火炎を発生させることができ、これにより、燃焼設備の小型化を図ることができると共に、NOxなどの有害物質、炭化水素などの未燃焼分、煤煙といった環境汚染源を低減することができるという利点を有している。
特許第3358527号公報
ところで、一般に、図7に示すような段差Aにおける流体の流れを「バックステップ流れ」と呼び、段差入口で流体の流れは剥離を起こし、下面に再付着するまでの領域で逆流を生じることが知られている。燃焼を伴う流れの場合、この逆流域で保炎される。
ここで、上記のような管状火炎バーナにあっては、燃焼室にガスを吹き込むガス吹込みノズルと燃焼室との接続部に僅かでも段差があると、そこでバックステップ流れに準じた流れが生じ、その部分で保炎されてしまう。その結果、望ましい形状の管状火炎が不安定となり、火炎の温度分布が燃焼室の周方向に大きくばらつき、NOx値が上昇するという問題がある。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃焼室に発生する管状火炎の温度分布が燃焼室の周方向に大きくばらつくことを抑制し、低NOx化を達成することのできる管状火炎バーナを提供することである。
上記の課題を解決するために、本発明に係る管状火炎バーナは、管状体の一端を閉塞して形成された燃焼室に燃料ガスと酸素含有ガスまたは両者の混合ガスを燃焼室の接線方向に向けて吹込み、前記燃焼室に吹き込まれたガスを前記燃焼室の周方向に旋回させながら燃焼せしめる管状火炎バーナであって、前記燃焼室にガスを吹き込むガス吹込みノズルと前記燃焼室との接続部に発生する段差をδ(mm)、前記ガス吹込みノズルから前記燃焼室に吹込まれるガスの動粘性係数をν(m/s)、前記ガス吹込みノズルから前記燃焼室に吹込まれるガスの流速をU(m/s)としたとき、|δ|≦0.5×ν/Uを満たすように前記ガス吹込みノズルを前記燃焼室に接続したことを特徴とするものである。但し、|δ|≦0.5×ν/Uの導出は、流体力学の分野で一般に知られている、Y=100ν/u(Y(mm):壁面からの層流低層の厚さ、ν(m /s):流体の動粘性係数、u(m/s):流体の主流速度)の式から、管状火炎バーナの筒部分接線方向への流体吹込みにおける許容誤差δ(mm)をδ=C×100×ν/U(U:ノズル平均吐出速度(mm/s)、C:係数)として求め、この許容誤差δ(mm)表す式において係数Cを火炎の乱れが生じない0.005として算出する。
本発明によれば、ガス吹込みノズルから燃焼室に吹込まれたガスが燃焼室の周方向に層流となって流れるため、燃焼室に発生する管状火炎の温度分布が燃焼室の周方向に大きくばらつくことを抑制し、低NOx化を達成することができる。
図1は本発明の第1の実施形態に係る管状火炎バーナの軸方向断面図、図2は図1のII−II断面を示す図であり、本発明の第1の実施形態に係る管状火炎バーナ1は管状の燃焼室2を有している。この燃焼室2は管状体3の一端を端板4により閉塞して形成されており、端板4に近いほうの燃焼室2の周壁部には、ガス吹込み口5a,5b,5c,5dが燃焼室2の周方向にほぼ等間隔に形成されている。
ガス吹込み口5a〜5dは燃焼室2の管軸方向に沿って細長く形成されており、これらのガス吹込み口5a〜5dのうちガス吹込み口5a,5cには燃料ガス吹込みノズル6a,6bが燃焼室2の接線方向に接続され、ガス吹込み口5b,5dには酸素含有ガス吹込みノズル7a,7bが燃焼室2の接線方向に接続されている。
燃料ガス吹込みノズル6a,6bは燃焼室2に燃料ガスを燃焼室2の接線方向に向けて吹込むためのものであり、これらの燃料ガス吹込みノズル6a,6bは、燃焼室2との接続部に発生する段差をδ(mm)、燃料ガス吹込みノズル6a,6bから燃焼室2に吹込まれる燃料ガスの動粘性係数をν(m/s)、燃料ガス吹込みノズル6a,6bから燃焼室2に吹込まれる燃料ガスの流速をU(m/s)としたとき、段差δが下式(1)を満たすように、燃焼室2のガス吹込み口5a,5cに接続されている。
|≦0.5×ν/U ……(1)
酸素含有ガス吹込みノズル7a,7bはガス吹込み口5b,5dから燃焼室2に酸素含有ガスを燃焼室2の接線方向に向けて吹込むためのものであり、これら酸素含有ガス吹込みノズル7a,7bは、燃焼室2との接続部に発生する段差をδ(mm)、酸素含有ガス吹込みノズル7a,7bから燃焼室2に吹込まれる酸素含有ガスの動粘性係数をν(m/s)、酸素含有ガス吹込みノズル7a,7bから燃焼室2に吹込まれる酸素含有ガスの流速をU(m/s)としたとき、段差δが下式(2)を満たすように、燃焼室2のガス吹込み口5b,5dに接続されている。
|≦0.5×ν/U ……(2)
なお、図2中符号8は燃焼室2内に発生する管状火炎を示している。
ここで、式(1)及び(2)の根拠は、下記の(a)及び(b)に基づくものである。
(a)流体力学の分野では、以下のことが知られている。
流体の流れに対して平行に置かれた平板の乱流境界層においても物体表面近くの極めて薄い圏内では層流が存在し、これを層流低層という。ここで、層流低層内の速度分布は
u/u=u・y/ν
但し、u・y/ν≦10
・Y/ν=10
u:流体の主流速度(m/s)
:層流低層内の速度(m/s)
y:壁面からの層流低層の距離(m)
ν:流体の動粘性係数(m/s)
で表される。
したがって、壁面からの層流低層の厚さY(m)は、次式を満たす。
u/u=u・Y/ν
・y/ν≦10
すなわち
Y=100ν/u
(b)管状火炎バーナの筒部分接線方向への流体吹込みにおいて、平板において算出される上記層流低層厚さに係数Cを乗じた値が概ね管状火炎バーナで不適切な火炎を形成しない許容誤差δ(mm)となり得る。
δ=C・100ν/U
但し、U:ノズル平均吐出速度(mm/s)
C:係数
ここで、係数CをC=0.005とすると、
δ=C・0.5ν/U
となる。
係数CをC=0.005とした理由は、図3または図4に示すような段差δを燃焼室2と酸素含有ガス吹込みノズル7a,7bとの接続部に発生させ、表1に示す条件で燃焼室2に生じた火炎の乱れ(燃焼室周方向の温度分布のバラツキ)の有無を調べた結果に基づくものである。なお、燃料ガスとしては、温度20℃の転炉ガス(低位発熱量2000kcal/Nm)を用いた。
ここで、係数CをC=0.005とすると、
δ=.5ν/U
となる。
係数CをC=0.005とした理由は、図3または図4に示すような段差δを燃焼室2と酸素含有ガス吹込みノズル7a,7bとの接続部に発生させ、表1に示す条件で燃焼室2に生じた火炎の乱れ(燃焼室周方向の温度分布のバラツキ)の有無を調べた結果に基づくものである。なお、燃料ガスとしては、温度20℃の転炉ガス(低位発熱量2000kcal/Nm)を用いた。
表1に示すように、酸素含有ガス吹込みノズル7a,7bから燃焼室2に吹き込まれる酸素含有ガス(空気)の動粘性係数がν=1.58E−3/s、酸素含有ガス吹込みノズル7a,7bから燃焼室2に吹き込まれる酸素含有ガス(空気)の流速がU=19m/sの場合は、燃焼室2と酸素含有ガス吹込みノズル7a,7bとの接続部に発生した段差δが0.042mmを超えると、燃焼室2の管状火炎に乱れが発生する。
また、上記と同じ動粘性係数で酸素含有ガス(空気)の流速がU=37m/sの場合は、燃焼室2と酸素含有ガス吹込みノズル7a,7bとの接続部に発生した段差δが0.021mmを超えると、燃焼室2の管状火炎に乱れが発生する。
酸素含有ガス吹込みノズル7a,7bから燃焼室2に吹き込まれる酸素含有ガス(空気)の動粘性係数がν=3.60E−3/s、酸素含有ガス吹込みノズル7a,7bから燃焼室2に吹き込まれる酸素含有ガス(空気)の流速がU=30m/sの場合は、燃焼室2と酸素含有ガス吹込みノズル7a,7bとの接続部に発生した段差がδが0.060mmを超えると、燃焼室2の管状火炎に乱れが発生する。
また、上記と同じ動粘性係数で酸素含有ガス(空気)の流速がU=60m/sの場合は、燃焼室2と酸素含有ガス吹込みノズル7a,7bとの接続部に発生した段差δが0.030mmを超えると、燃焼室2の管状火炎に乱れが発生する。
酸素含有ガス吹込みノズル7a,7bから燃焼室2に吹き込まれる酸素含有ガス(空気)の動粘性係数がν=8.45E−3/s、酸素含有ガス吹込みノズル7a,7bから燃焼室2に吹き込まれる酸素含有ガス(空気)の流速がU=43m/sの場合は、燃焼室2と酸素含有ガス吹込みノズル7a,7bとの接続部に発生した段差δが0.098mmを超えると、燃焼室2の管状火炎に乱れが発生する。
また、上記と同じ動粘性係数で酸素含有ガス(空気)の流速がU=85m/sの場合は、燃焼室2と酸素含有ガス吹込みノズル7a,7bとの接続部に発生した段差δが0.050mmを超えると、燃焼室2の管状火炎に乱れが発生する。
例えば、図5は管状火炎バーナの燃焼室とガス吹込みノズルとの接続部に発生する段差とNOx発生量との関係の一例を示す図である。ここで、酸素含有ガス:空気、酸素含有ガス温度:200℃、燃料ガス:転炉ガス(低位発熱量2000kcal/Nm)、燃料ガス温度:20℃、酸素含有ガスノズル吐出流速:60m/sの条件とし、この時に(2)式で計算される許容段差δは0.030mmである。
図5より、段差寸法が許容誤差である0.03mm以下では、NOx値が100ppm程度と低位であるが、段差寸法が許容誤差を超える0.04mm以上では、NOx値が上昇していることがわかる。
したがって、上述した第1の実施形態のように、ガス吹込みノズル6a,6b,7a,7bと燃焼室2との接続部に発生する段差をδ(mm)、ガス吹込みノズル6a,6b,7a,7bから燃焼室2に吹込まれるガスの動粘性係数をν(m/s)、ガス吹込みノズル6a,6b,7a,7bから燃焼室2に吹込まれるガスの流速をU(m/s)としたとき、±δ≦0.5×ν/Uを満たすようにガス吹込みノズル6a,6b,7a,7bを燃焼室2に接続すると、ガス吹込みノズル6a,6b,7a,7bから燃焼室2に吹込まれたガスが燃焼室2の周方向に層流となって流れるため、燃焼室2の管状火炎8に乱れが生じなくなり、これにより、燃焼室2に発生する管状火炎8の温度分布が燃焼室2の周方向に大きくばらつくことを抑制し、低NOx化を達成することができる。
上述した第1の実施形態では、燃料ガス吹込みノズル6a,6bおよび酸素含有ガス吹込みノズル7a,7bから燃焼室2に燃料ガスと酸素含有ガスを吹込む形式の管状火炎バーナに本発明を適用した場合を示したが、これに限定されるものではない。たとえば、図6に示す第2の実施形態のように、混合ガス吹込みノズル9a,9bから燃焼室2に燃料ガスと酸素含有ガスの予混合ガスを吹込む予混合形式の管状火炎バーナについても本発明を適用することが可能である。
また、第1及び第2の実施形態では、燃焼室2の閉塞側端部に複数のガス吸込み口を有する管状火炎バーナに本発明を適用した場合を示したが、ガス吸込み口の数が1つの管状火炎バーナについても本発明を適用することが可能である。
本発明の第1の実施形態に係る管状火炎バーナの軸方向断面図である。 図1のII−II断面を示す図である。 管状火炎バーナの燃焼室とガス吹込みノズルとの接続部に発生する段差の一例を示す図である。 管状火炎バーナの燃焼室とガス吹込みノズルとの接続部に発生する段差の他の例を示す図である。 管状火炎バーナの燃焼室とガス吹込みノズルとの接続部に発生する段差とNOx発生量との関係を示す図である。 本発明の第2の実施形態に係る管状火炎バーナの断面図である。 段差における流体の流れを模式的に示す図である。
符号の説明
1 管状火炎バーナ
2 燃焼室
3 管状体
4 端板
5a,5b,5c,5d ガス吹込み口
6a,6b 燃料ガス吹込みノズル
7a,7b 酸素含有ガス吹込みノズル
8 管状火炎
9a,9b 混合ガス吹込みノズル

Claims (1)

  1. 管状体の一端を閉塞して形成された燃焼室に燃料ガスと酸素含有ガスまたは両者の混合ガスを燃焼室の接線方向に向けて吹込み、前記燃焼室に吹き込まれたガスを前記燃焼室の周方向に旋回させながら燃焼せしめる管状火炎バーナであって、
    前記燃焼室にガスを吹き込むガス吹込みノズルと前記燃焼室との接続部に発生する段差をδ(mm)、前記ガス吹込みノズルから前記燃焼室に吹込まれるガスの動粘性係数をν(m/s)、前記ガス吹込みノズルから前記燃焼室に吹込まれるガスの流速をU(m/s)としたとき、|δ|≦0.5×ν/Uを満たすように前記ガス吹込みノズルを前記燃焼室に接続したことを特徴とする管状火炎バーナ。
    但し、|δ|≦0.5×ν/Uの導出は、流体力学の分野で一般に知られている、Y=100ν/u(Y(mm):壁面からの層流低層の厚さ、ν(m /s):流体の動粘性係数、u(m/s):流体の主流速度)の式から、管状火炎バーナの筒部分接線方向への流体吹込みにおける許容誤差δ(mm)をδ=C×100×ν/U(U:ノズル平均吐出速度(mm/s)、C:係数)として求め、この許容誤差δ(mm)表す式において係数Cを火炎の乱れが生じない0.005として算出する。
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