JP5308421B2 - 基板製造方法及び基板を用いた静電容量式タッチパネル - Google Patents

基板製造方法及び基板を用いた静電容量式タッチパネル Download PDF

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Description

本発明は、レーザパターニングにより透明電極回路を形成した基板を製造する方法、及びその方法により作製された静電容量式タッチパネルに関する。
パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ノートPC、OA機器、医療機器、現金自動預払機(ATM)、コンビニ等の端末、カーナビゲーションシステム等の電子機器においては、これらのディスプレイに入力手段(ポインティングデバイス)を兼ね備えるためのタッチパネルが広く用いられている。代表的なタッチパネルには、抵抗膜式、電磁誘導方式、静電容量式等が知られている。
一般的な静電容量式タッチパネルは、例えば所定の誘電特性を有する2枚の透明樹脂フィルムを有し、それぞれの片面にストライプ状にレーザパターニングされた透明導電膜(ライン電極)を備える。これらの透明樹脂フィルムを前記ストライプ状の透明導電膜が直交するように対向させつつ、その間に絶縁層を介して構成される。一方の透明樹脂フィルムの透明導電膜が配設されていない片面が入力面となり、外部に露出されるように配設される。
この静電容量式タッチパネルでは、駆動時には各透明導電膜に対し、外部から接続された駆動回路により一定期間ごとに交互に測定電圧が印加されている。この状態でユーザーが透明樹脂フィルム上の任意の位置を指で押圧すると、この押圧位置で、ユーザーの指(接地)、透明樹脂フィルム、各透明導電膜による複数の容量(コンデンサ)構造が形成される。この複数のコンデンサの電流変化をそれぞれ監視することで、その最大変化がある位置を入力位置として検出することができる。これにより、パネル上の前記接触部分の座標を認識し、適切なインターフェイス機能が図られるようになっている。
従来から、透明電極付樹脂フィルムのパターニングはエッチングによる方法で行われているが、このパターニングをレーザアブレーション(固体からの爆発的な粒子放出現象)により行うことで、湿式法における溶液・排液の管理が不要となりパターニングの工程が簡略化されるとともに、エッチング法に比べて微細な加工が可能となる。
特開2003-37314号(特許文献1)には、透明樹脂フィルム(PET)上に設けた導電膜(ITO膜)に、Nd:YAGレーザの第三高調波(355 nm)を用いたレーザパターニング技術が開示されており、波長355nmの紫外線レーザは透明樹脂フィルムでの吸収率が低く、かつ導電膜での吸収率が高いため、レーザパワーをそれほど上げなくても、導電膜のみを選択的にレーザパターニングできると記載されている。またこの方法は、短波長で集光性が良好のため、微細なパターニングが可能と記載されている。
現在、市場におけるLCD等のディスプレイの高精細化の動向に伴い、これらのディスプレイに装着されるタッチパネルについても同様に精密化・高精細化が要求されており、そのためには透明樹脂フィルム上にレーザパターニングされる透明電極を高精細で形成する必要がある。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、高精細な透明電極を透明樹脂フィルム上でレーザ加工する際、アブレーションによって飛散した導電物質が導電パターンの短絡を引き起こし、性能の劣化を起こす場合がある。従って、高精細な透明電極をレーザ加工するには更なる改良が望まれている。
特開2004-202498号(特許文献2)には、少なくともレーザ光に対して透明である第一材料層と、前記第一材料層に接触して配置された第二材料層と、前記第二材料層に接触して配置された第三材料層とから構成される構成体に対して、前記第一材料層の方向からレーザ光を照射し、前記第二材料層の高速な気化により前記第二材料層のみを任意の形状に形成することを特徴とするレーザ加工方式が開示されており、前記第一材料層としてPETフィルム、前記第二材料層としてAl薄膜、及び前記第三材料層としてアクリル系接着材層が例示されている。特許文献2には、前記第一材料層及び前記第三材料層を設けることにより、レーザ加工時に加工物が飛散し、汚れや形状悪化が起きるのを回避することが可能となるとともに、加工時のプラズマ抑制、熱拡散低減、第二材料層の変形低減を図ることができると記載されている。
前述のようにタッチパネルの精密化・高精細化を達成するためには、各透明樹脂フィルムの透明電極を互いに精度良くアライメントする必要がある。特に、静電容量式タッチパネルの二層の電極は、パターン形状が異なっているため、これらのアライメント工程はタッチパネルの製造効率の低下を招く。しかしながら、特許文献2に記載の方法では、このようなアライメント工程についての効率化は望めず、改善が望まれている。
特開2009-50868号(特許文献3)には、樹脂基材上に形成された導電膜に、レーザ加工装置を用いてレーザ光を照射し、前記基材上に回路パターンを形成する基板製造方法において、導電膜を有する樹脂基材を、接着材料層を用いて二層に貼り合せた後、二層の樹脂基材の両面からレーザ光を照射し、回路パターンを形成することを特徴とする基板製造方法が開示されており、この方法により、微細な透明電極構造を有しつつ、精度よくアライメントが可能な静電容量式タッチパネルを製造することができると記載されている。
しかしながら、特許文献3に記載の方法では、回路パターンを形成した後の工程としてタッチパネルの指で触る側の面にハードコート層を湿式法でさらに設ける必要があり、ハードコート材料の反対側の面への付着等が生じないような対策が必要であった。
特開2003-37314号公報 特開2004-202498号公報 特開2009-50868号公報
従って、本発明の目的は、微細な透明電極構造を有しつつ、精度よくアライメントが可能な静電容量式タッチパネルを効率よく製造する方法、及びこの方法により作製した透明電極付樹脂フィルムを用いた静電容量式タッチパネルを提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、透明樹脂基材上に形成された透明導電膜に、レーザ加工装置を用いてレーザ光を照射し、前記透明樹脂基材上に回路パターンを形成する際に、あらかじめ前記透明樹脂基材の、前記透明導電膜を形成した側と反対側の面にダイヤモンド微粒子を含有するハードコート層を設けることにより、タッチパネル工程の製造効率を向上させることができることを見出し、本発明に想到した。
すなわち、透明樹脂基材上に形成された透明導電膜に、レーザ加工装置を用いてレーザ光を照射し、前記透明樹脂基材上に前記透明導電膜からなる回路パターンを形成する本発明の基板製造方法は、前記透明樹脂基材に前記透明導電膜を形成する工程、前記透明導電膜を形成した前記透明樹脂基材の、前記透明導電膜とは反対側の面にダイヤモンド微粒子を含有するハードコート層を形成する工程、及び前記ハードコート層を形成した面からレーザ光を照射し、前記透明導電膜に回路パターンを形成する工程を有することを特徴とする。
前記透明導電膜を形成する工程の後に、前記透明導電膜の上に、保護フィルムを形成する工程を有するのが好ましい。
前記ハードコート層を形成する工程の後に、前記透明導電膜及び前記ハードコート層を有する透明樹脂基材に、片面に透明導電膜を有するもう一つの透明樹脂基材を、透明導電膜同士が向かい合うように接着材料層を介して貼り合せる工程を有し、前記レーザ光の照射を、前記得られた積層基材の両側から行うことにより、前記2層の透明導電膜にそれぞれ異なる回路パターンを形成するのが好ましい。
透明樹脂基材はレーザ光に対して透明な材料からなるのが好ましい。
前記透明導電膜はITO(酸化インジウム錫)からなるのが好ましい。
前記透明樹脂基材はポリエチレンテレフタレート又はポリカーボネートであるのが好ましい。
前記接着材料層は前記レーザ光を吸収する層であるのが好ましい。
前記レーザ加工装置の光源は、YAGレーザ光源であり、前記レーザ光はYAG第三高調波であるのが好ましい。前記レーザ光のパルス幅は200 nsec以下であるのが好ましい。
本発明の静電容量式タッチパネルは、前記基板製造方法によって作製されたものである。
本発明の基板製造方法は、あらかじめダイヤモンド粒子を含むハードコート層を設けた透明樹脂基材を用いることにより、透明樹脂基材にマット性を付与し滑りが良くなるため、特に75μm以下の透明樹脂基材を用いた場合に生じるブロッキング等のトラブルを回避できるとともに、加工時に透明樹脂基材表面にキズがつきにくくなり、レーザ加工により回路パターンを形成する基板製造工程を簡略化することができる。そのため、良好な視認性及び入力性能を有するタッチパネルを安価に提供することが可能となる。
本発明の方法で用いる第一の基板を示す模式断面図である。 本発明の方法で用いる第二の基板を示す模式断面図である。 本発明の基板製造方法に使用するレーザ加工装置の一例を概略的に示す模式図である。 本発明の実施例1で行ったレーザ加工法を説明するための模式図である。
[1] 基板構成
本発明で製造する第一の基板は、図1(a)に示すように、透明樹脂基材2の一方の面に透明導電膜からなる回路パターン4が形成されており、もう一方の面にダイヤモンド微粒子10を含有するハードコート層3が形成されたものである。すなわち、ダイヤモンド微粒子10を含有するハードコート層3、透明樹脂基材2、及び透明導電膜からなる回路パターン4がこの順に積層されたものである。前記透明導電膜からなる回路パターン4は、レーザ加工装置を用いて前記ハードコート層3を形成した面からレーザ光を照射し形成される。
前記第一の基板100に、図1(b)に示すように、前記透明導電膜4の上に、保護フィルム5を設けるのが好ましい(基板101)。前記保護フィルム5は、接着材料を用いて前記透明導電膜の上に貼り付けるのが好ましい。接着材料としては感圧式の接着材、アクリル系接着剤等を使用できる。前記保護フィルムを設けることにより、基板の搬送時等に前記透明導電膜が物理的又は化学的に損傷するのを防止できるとともに、レーザ加工時に加工物が飛散し、汚れや形状悪化が起きるのを防止できる。
本発明で製造する第二の基板200は、図2に示すように、前記第一の基板100に、片面に透明導電膜からなる回路パターン4’が形成されたもう一つの透明樹脂基材2’を、透明導電膜4,4’同士が向かい合うように接着材料層6を介して貼り合せたものである。すなわち、ダイヤモンド微粒子10を含有するハードコート層3、第一の透明樹脂基材2、透明導電膜からなる第一の回路パターン4、接着材料層6、透明導電膜からなる第二の回路パターン4’、及び第二の透明樹脂基材2’がこの順に積層されたものである。前記透明導電膜からなる第一の回路パターン4は、レーザ加工装置を用いて前記ハードコート層3を形成した面からレーザ光を照射し形成され、第二の回路パターン4’は、第二の透明樹脂基材2’側から照射して形成される。
(1) ハードコート層
ハードコート層は、JIS K5600-5-4で示す鉛筆硬度試験で「4H」以上の硬度を示す高硬度の層であり、硬化材料(ハードコート剤)により形成されるもの、又は透明樹脂基材とハードコート層とを共押出しにより積層して形成されるものが好ましい。
ハードコート層中のダイヤモンド微粒子の含有量は、特に限定されないが、ハードコート層を形成する材料に対して、合計で0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.005〜5質量%であるのがより好ましく、0.01〜2質量%であるのが最も好ましい。ハードコート層の厚さは、0.1〜50μm程度であるのが好ましく、1〜30μmであるのがより好ましい。
(a)ダイヤモンド微粒子
ダイヤモンド微粒子は、爆射法で得られたナノダイヤモンドを用いるのが好ましい。爆射法で得られた未精製のナノダイヤモンドは、ナノダイヤモンドの表面をグラファイト系炭素が覆ったコア/シェル構造を有しており黒く着色している。未精製のナノダイヤモンドをこのまま用いても良いが、より着色の少ない高表面硬度フィルムを得るためには、未精製のナノダイヤモンドを酸化処理し、グラファイト相の一部又はほぼ全部を除去して用いるのが好ましい。
酸化処理したナノダイヤモンドの比重は、グラファイト系炭素(グラファイトの比重:2.25 g/cm3)の残存量が少なくなればなるほどダイヤモンドの比重(3.50 g/cm3)に近づく。従って、精製度が高くグラファイト系炭素の残存量が少ないほど比重が高くなる。本発明で用いるナノダイヤモンドの比重は2.55 g/cm3(ダイヤモンド24体積%)以上3.48 g/cm3(ダイヤモンド98体積%)以下であるのが好ましく、3.0 g/cm3(ダイヤモンド84体積%)以上3.46 g/cm3(ダイヤモンド97体積%)以下であるのがより好ましく、3.38 g/cm3(ダイヤモンド90体積%)以上3.45 g/cm3(ダイヤモンド96体積%)以下であるのが最も好ましい。なおナノダイヤモンド中のダイヤモンドの体積%は、前記ダイヤモンドの比重3.50 g/cm3及びグラファイトの比重2.25 g/cm3を用いて、ナノダイヤモンドの比重から算出した。
未精製のダイヤモンドの酸化処理方法としては、(a) 硝酸等の共存下で高温高圧処理する方法(酸化処理A)、(b)水及び/又はアルコールからなる超臨界流体中で処理する方法(酸化処理B)、(c)水及び/又はアルコールからなる溶媒に酸素を共存させて、前記溶媒の標準沸点以上の温度及び0.1 MPa(ゲージ圧)以上の圧力で処理する方法(酸化処理C)、又は(d)380〜450℃で酸素を含む気体により処理する方法(酸化処理D)が挙げられる。これらの酸化処理は、単独で行ってもよいし、組合せて行っても良い。酸化処理を組合せる場合は、爆射法で得られた未精製のダイヤモンドにまず酸化処理Aを施し、さらに酸化処理B〜Cのいずれかを施すのが好ましい。
爆射法で得られた未精製のダイヤモンドに酸化処理Aを施すことによりグラファイト相の一部が除去されたナノダイヤモンド(グラファイト-ダイヤモンド粒子)が得られ、このグラファイト-ダイヤモンド粒子に酸化処理B〜Cのいずれかの処理を施すことにより前記グラファイト相をさらに除去することができる。
酸化処理して得られたナノダイヤモンドは、2〜10 nm程度のダイヤモンドの一次粒子からなるメジアン径30〜250 nm(動的光散乱法)の二次粒子である。グラファイト相を除去することにより、着色成分はほとんどなくなるが、微量に残ったグラファイト系炭素の表面に-COOH、-OH等の親水性官能基が存在するため、水、アルコール等の親水的な溶剤への分散に優れている。
前記ダイヤモンド微粒子を、ケイ素原子を含有する基及び/又はフッ素原子を含有する基で修飾して使用しても良い。すなわち(a)ケイ素を有するダイヤモンド微粒子、(b)フッ素を有するダイヤモンド微粒子、(c)ケイ素を有するダイヤモンド微粒子及びフッ素を有するダイヤモンド微粒子の混合物、又は(d)ケイ素及びフッ素を有するダイヤモンド微粒子を用いても良い。これらのケイ素及び/又はフッ素を含む基で修飾したダイヤモンド微粒子をハードコート層に含有させて使用した場合、指紋が付着しにくく、付着した指紋を容易に拭き取ることができる表面層が形成されるとともに、これらの修飾ダイヤモンド微粒子は、ケイ素及び/又はフッ素がダイヤモンドに固定されているので、これらの効果が長期間持続される。
(b)ケイ素化合物
ハードコート層には、指紋の付着防止及び付着した指紋の拭き取り性を改良するためにケイ素化合物を含有させてもよい。ケイ素化合物としては、ハードコート剤との相溶性が良く、成膜したときにヘイズ等の上昇が起こらないものであればどのようなものでもよい。
ケイ素化合物としては、例えば、特開2010-152331号公報に記載の反応性ケイ素化合物、特表2010-512423号公報に記載の反応性ケイ素化合物等を好ましく用いることができる。ケイ素化合物としては、前記ハードコート剤と反応することのできる化合物が好ましく、シリル化剤、アルコキシシラン、シランカップリング剤等が好ましく、特にシリル化剤が好ましい。
好ましいシリル化剤としては、トリエチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、アセトキシトリメチルシラン、アセトキシシラン、ジアセトキシジメチルシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、2-トリメチルシロキシペント-2-エン-4-オン、n-(トリメチルシリル)アセトアミド、2-(トリメチルシリル)酢酸、n-(トリメチルシリル)イミダゾール、トリメチルシリルプロピオレート、ノナメチルトリシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリフェニルシラノール、t-ブチルジメチルシラノール、ジフェニルシランジオール等が挙げられる。本発明に用いられるシリル化剤は、これらの化合物に限定されない。
シリル化剤の種類や濃度にもよるが、シリル化剤をハードコート剤と混合し、10〜40℃で十分攪拌しながらシリル化反応を進行させるのが好ましい。10℃未満では反応が進行しにくく、40℃超では反応が不均一になる。
ケイ素化合物の添加量は、ハードコート剤に対して0.0001〜2質量%であるのが好ましく、0.001〜1.5質量%であるのがより好ましく、0.005〜1質量%であるのが最も好ましい。
(c)フッ素化合物
ハードコート層には、指紋の付着防止及び付着した指紋の拭き取り性を改良するためにフッ素化合物を含有させてもよい。フッ素化合物としては、ハードコート剤との相溶性が良く、成膜したときにヘイズ等の上昇が起こらないものであればどのようなものでもよい。
フッ素化合物としては、例えば、特開2002-120311号公報に記載の含フッ素共重合体、特開2007-46031号公報に記載のシロキサンオリゴマーと、フルオロアルキル構造及びポリシロキサン構造を有するフッ素化合物との組合せ、特開2010-152331号公報に記載の反応性フッ素化合物、特開2007-293313号公報に記載の熱硬化型又は電離放射線硬化型の含フッ素化合物、特に含フッ素オルガノシラン化合物、特表2010-512423号公報に記載の反応性フッ素化合物等を好ましく用いることができる。フッ素化合物としては、前記ハードコート剤と反応することのできる化合物が好ましく、後述のフルオロアルキル基含有オリゴマー等が好ましい。
フルオロアルキル基含有オリゴマー
高分子主鎖の両末端にフルオロアルキル基が直接炭素−炭素結合により導入された高分子界面活性剤(含フッ素オリゴマー)は、水溶液中又は有機溶媒中において自己組織化したナノレベルの分子集合体を形成することが知られている。このフルオロアルキル基が末端に導入された含フッ素オリゴマーをハードコート剤と混合することにより、フルオロアルキル基で修飾したハードコート剤を形成させることができる。
フルオロアルキル基含有オリゴマーとしては、一般式(1)で表される化合物が好ましい。
Figure 0005308421
ここで、RFはフルオロアルキル基であり、具体的には、-CF(CF3)OC3F7、-CF(C3F)OCF2CF(CF3)OC3F7等の基が好ましい。Rは置換基であり、-N(CH3)2、-OH、-NHC(CH3)2CH2C(=O)CH3、-Si(OCH3)3、-COOH等の基が好ましい。nは5〜2000であるのが好ましい。
(d) 無機微粒子
前記ハードコート層は、ダイヤモンド微粒子の他に、硬度をアップさせ傷付き耐性を高める目的で、無機微粒子を含んでもよい。前記無機微粒子としては、雲母、合成雲母、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、チタニア、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、フッ化マグネシウム、スメクタイト、合成スメクタイト、バーミキュライト、ITO(酸化インジウム錫)、ATO(酸化アンチモン錫)、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等が挙げられる。
中でも、雲母、合成雲母、シリカ、チタニア、酸化ジルコニウム、フッ化マグネシウム、スメクタイト、合成スメクタイト、ITO(酸化インジウム錫)、ATO(酸化アンチモン錫)、酸化錫、バーミキュライトが好ましく、雲母、合成雲母、スメクタイト、合成スメクタイト、バーミキュライトがより好ましい。前記無機微粒子は、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
無機微粒子の平均粒子径は、10〜300 nmが好ましく、10〜200 nmがより好ましく、30〜150 nmが最も好ましい。平均粒子径が、10 nm以上の場合は、より小さい表面粗さを有するハードコート層を形成することができ、一方、前記平均粒子径が300 nm以下の場合は、より優れた光学特性を有するハードコート層を形成できる。
鱗片状及び/又は不規則薄片状の無機微粒子を使用することにより、より優れたブロッキング防止効果を有するハードコート層を形成できる。このような形状を有する無機微粒子としては、シリカ、チタニア、酸化ジルコニウム、ITO等を鱗片状に成形したもの、雲母、合成雲母、スメクタイト、合成スメクタイト、バーミキュライト等が挙げられる。
ハードコート層中の無機微粒子の含有量は、0.01〜6重量%であるのか好ましく、0.01〜5.5重量%であるのがより好ましい。前記含有量が、0.01重量%以上であると、より優れたブロッキング防止効果を有するバードコート層を形成することができ、6重量%以下であると、より優れた光学特性を有するハードコート層を形成できる。
(2) 透明樹脂基材
透明樹脂基材には、一定の弾力性及び透明性を有し、355 nm付近に比較的高い吸収率を有さないプラスチックフィルムを用いるのが好ましい。355 nm付近に比較的高い吸収率を有さないことにより、レーザ照射時に透明樹脂基材の下層にある透明導電膜を選択的にアブレーションすることができる。透明樹脂フィルムの厚みは、20〜500μmの範囲であるのが好ましい。第一及び第二の基板に用いる透明樹脂基材は、同じであっても異なっていてもよい。
透明樹脂基材としては公知のプラスチックフィルムの中から適宜選択して用いることができる。このようなプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等のポリエステル系フィルム、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、脂環式構造含有重合体等のポリオレフィン系フィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム等を用いることができる。
これらの透明樹脂フィルムの中でタッチパネル用としては、性能及び経済性の面からポリエステル系フィルム、アクリル系フィルム及びポリオレフィン系フィルムが好適である。特にポリエチレンテレフタレート及びポリカーボネートが好ましい。
(3) 透明導電膜
透明導電膜としては、一般的な材料を用いることができるが、本発明では355 nm付近に高い吸収率を有する材料を用いるのが好ましい。具体的には、ITO(Indium Tin Oxide;酸化インジウム錫)、フッ素添加酸化錫、アルミニウム添加酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化錫、酸化亜鉛錫系等の透明導電材料が好ましい。これらの材料は、1種だけを使用しても良いし、重ねて形成してもよい。
(4) 接着材料層
接着材料層としては、前記透明樹脂基材と同様の一般的な市販材料が適用できる。具体的には、アクリル系粘着材、シリコーン系粘着材、天然ゴム系粘着材等が挙げられる。層厚みとしては、10〜150μmのものが好ましい。
前記接着材料層には、紫外線吸収剤を含有させて、レーザ光の吸収層としての機能を持たせるのが好ましい。例えば、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチルテレフタレート樹脂等)やアクリル系粘着材には、ベンゾトリアゾール系やトリアジン系の紫外線吸収剤を用いることができる。
前記接着材料層としては、紫外線を吸収する樹脂フィルムの両面に粘着材を有する構成、紫外線吸収剤を塗布した樹脂フィルムの両面に粘着材を有する構成、紫外線吸収剤を含有する樹脂フィルムの両面に粘着材を有する構成等が好ましい。
[2]製造方法
本発明の基板製造方法は、透明樹脂基材上に形成された透明導電膜に、レーザ加工装置を用いてレーザ光を照射し、回路パターンを形成する方法である。本発明においては、透明樹脂基材の透明導電膜が形成された面とは反対側の面に、レーザ加工を行う前にダイヤモンド微粒子を含有するハードコート層を形成しておき、このハードコート層を介してレーザ光を照射し、回路パターンを形成する。従って、ハードコート層及びそこに含まれるダイヤモンド微粒子は、使用するレーザ光を透過する必要がある。
本発明で用いられるナノダイヤモンドのバンドギャップは約5eV(”Nanodiamond-Polymer Composite Fibers and Coatings”, ACS Nano, Vol. 3, No. 2, pp 363-369, 2009)であり、248 nm付近の光を吸収するので、透明導電膜を加工するレーザ光の波長は、この波長よりも長波長である必要がある。後述するように、本発明ではYAGレーザ装置からの近赤外光(波長λ=1064 nm)の第三高調波(λ=355 nm)を使用することにより、透明樹脂基材及びダイヤモンド微粒子にダメージを与えずに透明導電膜を加工することができる。
(1) レーザ加工装置
本発明の基板製造方法に使用するレーザ加工装置の概略構成を図3に示す。レーザ加工装置は、パルス状のレーザ光を繰り返し出射するレーザ光源としてのYAGレーザ装置301と、前記YAGレーザ装置301から発生したレーザ光の振動数を3倍に変換する第三高調波(THG)発生器302と、前記レーザ光を集束させ対象物に照射する伝送系303と、加工対象物を固定し照射位置を移動させるXYテーブル304とから構成されている。
加工用レーザ光として、パルス幅が200 nsec以下の短パルスレーザを使用するのが好ましい。パルスレーザのレーザアブレーション作用により透明導電膜を除去することができる。パルス幅が200 nsec以下のレーザとしては、エキシマレーザ、Q-Switch Nd:YAGレーザ、その高調波レーザ、パルス幅が〜数百フェムト秒であるTi:sapphireレーザ等を利用することができる。特に微細加工が必要な場合は、パルス幅が5 psec以下の超短パルスレーザを用いることもできる。例えば、波長800 nm又は1030 nmのフェムト秒レーザが挙げられる。
前記透明導電膜にレーザ光を照射すると、照射した部分が選択的にエネルギーを吸収し、一般的にピコ秒から数十ピコ秒オーダで熱的に緩和され材料が高温化される。その際、特にパルスレーザ光を用いることで、伝導による高温化と異なり、急激な温度変化を伴った高温化が起こる。例えば、ピコ秒オーダで数万ケルビンといった、熱源からの伝導では不可能な温度に昇温させることができる。また、レーザ光を集光することにより、又はレーザ光の照射パターンによって任意の位置にエネルギーを集中させることが可能となる。
パルスレーザ光などで瞬間的(例えば、数十ナノ秒程度)に材料を高温化すると、照射部以外の部分への熱伝導が進まないうちに照射部分の材料の気化が起きる。これにより、徐々に昇温及び蒸発させた場合と比較して、照射領域からのずれが低減され、熱の変質を抑制でき、レーザ照射形状に近い形状に材料を加工することが可能となる。このようなレーザによる気化は、非定常状態での反応であり、非常に高温かつ急速な反応である。一般的にレーザ加工ではパルス幅により反応状態が変化し、気化及び材料に及ぼす影響が変化する。
Q-Switch Nd:YAGレーザを例にして、レーザ装置について以下に説明する。Nd:YAGレーザ装置301は、YAGロッド及びQスイッチを内蔵したレーザヘッド部と、前記Qスイッチを駆動するQスイッチ駆動部と、前記YAGロッドにレーザ発振用の駆動電流を供給するレーザ電源とを有している。前記Qスイッチ駆動部は、前記Nd:YAGレーザ装置301に附属した制御システム(図示せず)から送り出されたレーザ制御信号に基づいてQスイッチを制御する。前記第三高調波(THG)発生器302との組合せで、前記Qスイッチを駆動する制御信号の繰り返し周波数は15〜300 kHzの範囲で変化させることができる。前記第三高調波(THG)発生器302は、レーザヘッドからの近赤外光(波長λ=1064 nm)を3倍の振動数に変換する装置であり、変換された波長(λ=355 nm)においては、透明導電膜であるITO膜の吸収率が高まるのでITO膜の除去を効率よく行うことができる。
前記XYテーブル304の寸法の一例は430 mm×330 mmであり、最大ワーク速度500 mm/sec、位置決め精度±5μmで駆動することができる。第一の基板100は、前記XYテーブル104に吸引及び機械的な位置決め機構等によって固定される。さらに、図には示していないが、必要に応じてアテネータ(減衰器)を伝送系303に挿入することができる。
前記加工対象物は、図1に示す第一の基板(ダイヤモンド微粒子10を含有するハードコート層3、透明樹脂基材2、及び透明導電膜からなる回路パターン4がこの順に積層されたもの)、又は図2に示す第二の基板(ダイヤモンド微粒子10を含有するハードコート層3、第一の透明樹脂基材2、透明導電膜からなる第一の回路パターン4、接着材料層6、透明導電膜からなる第二の回路パターン4’、及び第二の透明樹脂基材2’がこの順に積層されたもの)である。
(2)ハードコート層の形成
透明樹脂基材上のハードコート層は、硬化材料(ハードコート剤)により形成されるもの、又は透明樹脂基材とハードコート層とを共押出しにより積層して形成されるものが好ましい。
(a) 硬化材料(ハードコート剤)による方法
ハードコート剤又はハードコート剤を含む溶液にダイヤモンド微粒子を分散し、ハードコート層を形成する。ハードコート剤としては、シリコーン樹脂系ハードコート剤や有機樹脂系ハードコート剤等が挙げられる。特に爆射法によって得られたナノダイヤモンドは、水、アルコール等の親水的な溶剤に対する分散性が良好なので、このような親水的な溶剤に溶解又は分散されたハードコート剤、もしくは親水的なハードコート剤を用いるのが好ましい。
シリコーン樹脂系ハードコート剤は、シロキサン結合を持った硬化樹脂層を形成するものであり、3官能シロキサン単位に相当する化合物(トリアルコキシシラン化合物等)を主成分とする化合物の部分加水分解縮合物、好ましくはさらに4官能シロキサン単位に相当する化合物(テトラアルコキシシラン化合物等)を含む部分加水分解縮合物、さらにこれらにコロイダルシリカ等の金属酸化物微粒子を充填した部分加水分解縮合物等が挙げられる。シリコーン樹脂系ハードコート剤はさらに2官能性のシロキサン単位及び1官能性のシロキサン単位を含んでよい。これらには縮合反応時に発生するアルコール(アルコキシシランの部分加水分解縮合物の場合)等が含まれるが、さらに必要に応じて任意の有機溶剤、水、又はこれらの混合物に溶解又は分散させてもよい。前記有機溶剤としては、低級脂肪酸アルコール類、多価アルコールとそのエーテル、エステル類等が挙げられる。なお、ハードコート層には平滑な表面状態を得るためシロキサン系、フッ化アルキル系界面活性剤等の各種界面活性剤を添加してもよい。
有機樹脂系ハードコート剤としては、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型材料、電子線硬化型材料、二液混合型硬化型樹脂等が挙げられる。
熱硬化型樹脂とは、熱の作用を受けて分子間架橋による硬化反応を起こし、不溶不融性の三次元網目構造をとる樹脂であり、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。
紫外線硬化型材料及び電子線硬化型材料としては、光重合性の官能基を2個以上、特に3〜6個有するモノマー又はオリゴマーが挙げられる。前記モノマー又はオリゴマーとしては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アクリレートモノマー、シリコンアクリレート等が挙げられる。紫外線硬化型材料とは、前記モノマー又はオリゴマーのうち、紫外線照射により重合や架橋を起すものであり、電子線硬化型材料とは、前記モノマー又はオリゴマーのうち、電子線照射により重合や架橋を起すものである。前記モノマーやオリゴマーは一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
二液混合型硬化型樹脂としては、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
これらハードコート剤のうち長期間の耐久性に優れ、かつ表面硬度が比較的高いシリコーン樹脂系ハードコート剤、又は処理が比較的簡便でかつ良好なハードコート層が形成される紫外線硬化型のアクリル樹脂等が好ましい。
シリコーン樹脂系ハードコート剤はプライマー層とトップ層から構成されるいわゆる2コートタイプ、又は1層のみから形成されるいわゆる1コートタイプのいずれも選択できる。プライマー層(第1層)を形成する樹脂としては、各種ブロックイソシアネート成分及びポリオール成分からなるウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ホスファゼンアクリレート、メラミンアクリレート、アミノアクリレート等の各種多官能アクリル樹脂等を挙げることができ、これらは単独でも2種以上を併用して使用することもできる。これらの中でも好ましくはアクリル樹脂、多官能アクリル樹脂が50重量%、より好ましくは50重量%以上含有するものを挙げることができ、特にアクリル樹脂及びウレタンアクリレートからなるものが好ましい。これらは未反応状態のものを塗布後所定の反応をさせて硬化樹脂とすること、並びに反応後の樹脂を直接塗布し硬化樹脂層を形成することのいずれも適用可能である。後者は通常樹脂を溶媒に溶解し溶液とした後、塗布されその後溶媒が除去される。また前者の場合も溶媒を使用することが一般的である。
コート方法としては、バーコート法、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ローラーコート法等の方法を、塗装される透明樹脂基材となる成形品の形状に応じて適宜選択することができる。中でも複雑な成形品形状に対応しやすいディップコート法、フローコート法、及びスプレーコート法が好ましい。
ハードコート層には、さらに必要に応じて、アニオン、カチオン性やノニオン性界面活性剤、光安定剤や紫外線吸収剤、触媒、熱・光重合開始剤、重合禁止剤、シリコーン消泡剤、レベリング剤、増粘剤、沈殿防止剤、垂れ防止剤、難燃剤、有機・無機顔料・染料の各種添加剤、添加助剤等を含むことができる。
(b) 透明樹脂基材とハードコート層とを積層して形成する方法
透明樹脂基材とハードコート層とを積層して形成する場合、後述の透明樹脂基材を形成する材料と、ダイヤモンド微粒子を含有するハードコート層を形成する材料とを共押出しにより積層しても良いし、それぞれを押出成形して単層のシートを形成し、それらをドライラミネーション、熱ラミネーション等により貼り合わせ得てもよい。ただし、生産性の点で共押出しにより積層したものが好ましい。共押出成形の場合には、複雑な工程(乾燥工程や塗工工程)を経なくてもよいため、ゴミなどの外部異物の混入が少なく、優れた光学性能を発揮できる。ハードコート層を形成する材料としては、後述の透明樹脂基材を形成する材料を使用するのが好ましい。
(3) 透明導電膜の成膜
透明樹脂基材上への透明導電膜の成膜は、透明導電膜材料の特質・膜厚等の条件に応じて、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法等の方法が適宜選択される。
(4)レーザ加工の好ましい態様
透明樹脂基材としてPETフィルムを使用し、透明導電膜をITOで形成するのが好ましい。YAGレーザの第三高調波(波長355 nm)を用いることにより、レーザ入射側PETフィルム及びダイヤモンド微粒子に与える熱影響を低減でき、ITO膜のみを選択的に効率よく加工することができる。
図2に示す第二の基板(ダイヤモンド微粒子を含有するハードコート層、第一の透明樹脂基材、透明導電膜からなる第一の回路パターン、接着材料層、透明導電膜からなる第二の回路パターン、及び第二の透明樹脂基材がこの順に積層されたもの)にはレーザ入射側及びレーザ出射側に合計二層のITO膜が存在するため、本発明の一実施形態ではアブレーション対象となる加工対象面はレーザ入射側ITO膜に対して設定する。レーザ入射側及びレーザ出射側のいずれのITO膜にも加工する場合には、まず一方のITO膜を加工した後に、第二の基板を裏返して反対側の面からもう一方のITO膜を加工する。二層のITO膜の間には、紫外線を吸収する接着材料層を有するため、レーザ光のエネルギーはレーザ入射側のITO膜をアブレーションするが、レーザ出射側のITO膜をアブレーションすることはない。
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1
(1)ダイヤモンド微粒子の作製
TNT(トリニトロトルエン)とRDX(シクロトリメチレントリニトロアミン)を60/40の比で含む0.65 kgの爆発物を3 m3の爆発チャンバー内で爆発させて、生成するナノダイヤモンドを保存するための雰囲気を形成した後、同様の条件で2回目の爆発を起こし未精製のナノダイヤモンドを合成した。爆発生成物が膨張し熱平衡に達した後、15 mmの断面を有する超音速ラバルノズルを通して35秒間ガス混合物をチャンバーより流出させた。チャンバー壁との熱交換及びガスにより行われた仕事(断熱膨張及び気化)のため、生成物の冷却速度は280℃/分であった。サイクロンで捕獲した生成物(黒色の粉末)の比重は2.55 g/cm3、メジアン径(動的光散乱法)は220 nmであった。この未精製のナノダイヤモンドは比重から計算して、76体積%のグラファイト系炭素と24体積%のダイヤモンドからなっていると推定された。
この未精製のナノダイヤモンドを60質量%硝酸水溶液と混合し、160℃、14気圧、20分の条件で酸化性分解処理を行った後、130℃、13気圧、1時間で酸化性エッチング処理を行った。酸化性エッチング処理により、未精製のナノダイヤモンドからグラファイトが一部除去された粒子が得られた。この粒子を、アンモニアを用いて、210℃、20気圧、20分還流し中和処理した後、自然沈降させデカンテーションにより35質量%硝酸での洗浄を行い、さらにデカンテーションにより3回水洗し、遠心分離により脱水し、120℃で加熱乾燥し、グラファイト相を有するナノダイヤモンドの粉末を得た。このナノダイヤモンドの粉末の比重は3.38 g/cm3であり、メジアン径は120 nm(動的光散乱法)であった。比重から計算して、90体積%のダイヤモンドと10体積%のグラファイト系炭素からなっていると推定された。
得られたナノダイヤモンドの粉末をビーズミルにより分散処理した。ビーズミルによる分散は、アシザワファインテック株式会社製スターミルLMZを用いて行った。243 gの前記ナノダイヤモンドの粒子を水/トリエチレングリコール(50:50の容量比)に分散して5質量%の水分散液を調製し、ディゾルバーで予備分散した。0.1 mm径のジルコニアビーズを0.15 Lのベッセルに充填し、10 m/sの周速で回転子を回転させながら、前記ナノダイヤモンドの粉末の分散液を0.12 L/minで供給し、連続的に分散処理を行った。約2.0 h分散処理した後のナノダイヤモンドの粒子はメジアン径40 nmであった。
ビーズミルによって分散処理した後、分散媒を水に置換し、ナノダイヤモンド粒子が2.0質量%となるよう調節した。この分散液30 mLを、オートクレーブ(容量50 mL、SUS316製)に入れ、酸素導入管、温度計及び調圧弁を有する蓋で密封し、炉内に設置した。オートクレーブ内の空気を酸素で置換した後、オートクレーブ内が1.0 MPa(ゲージ圧)の圧力となるように、室温で酸素を導入した。オートクレーブを平均昇温速度6.5℃/分で昇温し、400±5℃の温度及び5±1 MPaの圧力で2時間保持した。オートクレーブを室温まで冷却した後、大気圧まで減圧し、精製されたナノダイヤモンドを含む液を回収した。この液は、上澄みと薄い灰色を呈する精製ナノダイヤモンドの沈殿とに分離していた。
前記精製ナノダイヤモンドを含む液を、自然沈降させデカンテーションにより3回水洗し、さらに遠心分離により脱水し、120℃で加熱乾燥し、精製ナノダイヤモンドの粉末を得た。得られた精製ナノダイヤモンド粉末は、メジアン径60 nm(水に分散して測定)、比重3.46 g/cm3であった。この比重から算出した組成は、ダイヤモンド97体積%及びグラファイト3体積%であった。
(2)透明導性基板の作製
ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、O-PET、125μm)の表面に、スパッタリングで25 nmのITO層を形成させた電極を2枚作製した。この電極の表面固有抵抗は250Ω/cm2であった。この電極は、1枚はそのまま下部電極として使用し、もう1枚は以下の様にダイヤモンド微粒子を含有するハードコート層を設けて上部電極とした。
上部電極は、前記ITO層を形成したシートのITO層を有さない側に、紫外線硬化型アクリレートハードコート剤[GE東芝シリコーン(株)製、商品名「UVHC1105」固形分濃度100重量%]100部、紫外線硬化型シリコーン樹脂[チッソ(株)製、商品名「サイラプレーンFM-7711」(分子量1000)]0.2部、精製ナノダイヤモンド粉末10質量部、及びイソプロピルアルコール100部を硬化後の膜厚が5μmになるようにマイヤーバーで塗工し、80℃で2分間乾燥した後、紫外線を照射量1000mJ/cm2で照射してハードコート層を設けて作製した。
得られた上部電極と下部電極とをITO膜側を内側にして、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系)入りの粘着フィルム(約25μm厚)を用いて貼り合せ、透明導性基板を作製した。
(3)レーザ加工
図1に示すYAGレーザ装置(Spectra-Physics社製、HIPPO High Power Q-SwitchedLaser)を用いて、図4に示すように、まず透明導性基板のハードコート層が形成された側からレーザ照射を行った。図4において、左図はレーザ加工時を、右図はレーザ加工終了時の状態を示す。照射条件は、発振周波数160 kHz、焦点レンズ50 mm、駆動用LD電流61%、XYテーブル速度100 mm/秒であった。この時のパワー密度は20 mW/cm3であった。上下方向の焦点位置を調整し、約15μm幅の絶縁層で分離されたライン電極を作製した。次に透明導性基板を裏返し、XYテーブル上で位置決めを行い、再度、同条件でレーザ照射を行い、ライン電極を作製した。上下のライン電極は直交する配置とした。
上記の加工を行った基板に引き出し電極を印刷し、静電容量式タッチパネルを作製した。引き出し電極は銀ペーストをスクリーン印刷して作製した。
実施例2
実施例1で作製した上部電極の透明導電膜の上に、75μmの厚さのPETフィルムをアクリル系接着剤によって貼り付けた。この保護フィルムを形成した上部電極のハードコート層が形成された側から、実施例1と同条件でレーザ照射を行い、ライン電極を作製した。さらに実施例1で作製した下部電極にも実施例1と同条件でレーザ照射を行い、ライン電極を作製し、上部電極及び下部電極を貼り合わせて、引き出し電極を印刷し、静電容量式タッチパネルを作製した。
実施例1及び2のいずれの場合においても、レーザ照射されたITO膜部分には残留分はなく、ライン電極間は完全に絶縁されていた。その結果、視認性がよく、透明性の高い静電容量式タッチパネルを実現することができた。
100、101・・・第一の基板
200・・・第二の基板
2、2’・・・透明樹脂基材
3・・・ハードコート層
4、4’・・・透明導電膜からなる回路パターン
5・・・保護フィルム
6・・・接着材料層
10・・・ダイヤモンド微粒子
301・・・YAGレーザ装置
302・・・第三高調波(THG)発生器
303・・・伝送系
304・・・XYテーブル

Claims (10)

  1. 透明樹脂基材上に形成された透明導電膜に、レーザ加工装置を用いてレーザ光を照射し、前記透明樹脂基材上に前記透明導電膜からなる回路パターンを形成する基板製造方法であって、前記透明樹脂基材に前記透明導電膜を形成する工程、前記透明導電膜を形成した前記透明樹脂基材の、前記透明導電膜とは反対側の面にダイヤモンド微粒子を含有するハードコート層を形成する工程、及び前記ハードコート層を形成した面からレーザ光を照射し、前記透明導電膜に回路パターンを形成する工程を有することを特徴とする基板製造方法。
  2. 請求項1に記載の基板製造方法において、前記透明導電膜を形成する工程の後に、前記透明導電膜の上に、保護フィルムを形成する工程を有することを特徴とする基板製造方法。
  3. 請求項1に記載の基板製造方法において、前記ハードコート層を形成する工程の後に、前記透明導電膜及び前記ハードコート層を有する透明樹脂基材に、片面に透明導電膜を有するもう一つの透明樹脂基材を、透明導電膜同士が向かい合うように接着材料層を介して貼り合せる工程を有し、前記レーザ光の照射を、前記得られた積層基材の両側から行うことにより、前記2層の透明導電膜にそれぞれ異なる回路パターンを形成することを特徴とする基板製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の基板製造方法において、透明樹脂基材がレーザ光に対して透明な材料からなることを特徴とする基板製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の基板製造方法において、前記透明導電膜がITO(酸化インジウム錫)からなることを特徴とする基板製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の基板製造方法において、前記透明樹脂基材がポリエチレンテレフタレート又はポリカーボネートであることを特徴とする基板製造方法。
  7. 請求項3〜6のいずれかに記載の基板製造方法において、前記接着材料層が前記レーザ光を吸収する層であることを特徴とする基板製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の基板製造方法において、前記レーザ加工装置の光源が、YAGレーザ光源であり、前記レーザ光がYAG第三高調波であることを特徴とする基板製造方法。
  9. 請求項8に記載の基板製造方法において、前記レーザ光のパルス幅が200 nsec以下であることを特徴とする基板製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の基板製造方法によって作製された静電容量式タッチパネル。
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