JP5307498B2 - 高圧放電ランプの点灯装置 - Google Patents

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本発明は、高圧放電ランプの点灯装置および投射型画像表示装置に関し、特に、高圧放電ランプを交流点灯させる点灯装置等に関する。
近年、大画面映像を実現するシステムとして、液晶プロジェクタやDMD(商標)プロジェクタなどの投射型画像表示装置が普及しつつあり、その光源には、高輝度で発光する高圧放電ランプ、例えば、高圧水銀ランプが用いられている。高圧水銀ランプは、文字通り、高圧の水銀蒸気中の電極間アーク放電による放射を利用したものである。
このような高圧水銀ランプを点灯するための点灯装置は、先ず、ランプ電極間を絶縁破壊するため両電極間に高電圧を所定時間(例えば、2[s]〜5[s])印加する。当該所定時間が経過すると(すなわち、絶縁破壊が起こり、グロー放電に移行したとみなされると)、定格周波数よりも高い周波数で定電流駆動する(以下、「高周波・定電流駆動」という)(特許文献1)。
その後、定格周波数・定電流駆動期間を経て、定格周波数・定電力駆動に移行し、高圧水銀ランプは定常点灯される。
上記高周波・定電流駆動期間を設けるのは、絶縁破壊後直ちに、定格周波数・定電流駆動に移行するとランプが立ち消えてしまうからである。すなわち、グロー放電からアーク放電に移行させると共に、定格周波数・定電流駆動に移行した後も安定したアーク放電が維持できるように、電極を適度に暖めるためである。なお、定格電力300[W]の高圧水銀ランプにあっては、従来の高周波・定電流駆動では、例えば、2[s]〜5[s]の間、10[kHz]〜500[kHz]の範囲の周波数で、11[Ap−p]〜13[Ap−p]の範囲の一定の電流を給電している。
特開2000−133206号公報
ところで、近年、省エネルギー等の観点から、高効率で発光する高圧水銀ランプが求められており、そのため、定常点灯中におけるガラスバルブ内の水銀蒸気圧を高めるべく、両電極が対向配置されている放電空間の縮小化が図られている。
しかしながら、このような、高圧水銀ランプを従来の点灯装置を用いて、点灯・消灯を繰り返すと、当該ランプのガラスバルブ内面が次第にリング状に黒化し輝度が低下してしまうといった現象が生じている。
本発明は、上記した課題に鑑み、高効率化のため放電空間を縮小した高圧放電ランプであっても、ガラスバルブ内面がリング状に黒化するのを可能な限り防止できる点灯装置、およびそのような点灯装置を有する投射型画像表示装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明に係る点灯装置によれば、軸部先端部に当該軸部よりも太径の頭部が形成されてなる一対の電極が、ハロゲン物質が封入されている放電室内に前記頭部を対向させ、かつ同軸上に配されてなる交流点灯型の高圧放電ランプに対して、前記両電極間に絶縁破壊を起こさせた後、定格周波数定電流制御に移行する前に、定格周波数よりも高い周波数で定電流制御する高周波定電流制御の期間を設けて点灯制御する点灯装置であって、当該高周波定電流制御の期間では、8[Ap−p]以下1[Ap−p]以上の範囲で予め定められた電流値[Ap−p]を定電流の目標値とすることを特徴とする。
また、前記高圧放電ランプの定格電力が300[W]の場合において、x−y直交座標系において、前記高周波定電流期間の長さ[s]をx軸にとり、当該高周波定電流期間に両電極間に流す電流値[Ap−p]をy軸にとった場合、(x,y)座標で表される点(5,8)、点(10,8)、点(10,1)、点(8,5)、点(6,7)、点(5,7.5)、点(5,8)を順次、線分で結んで囲まれる領域内(前記線分上を含む)のx座標値とy座標値との組み合わせの内、予め定められた一の組み合わせの電流値[Ap−p]を定電流の目標値とし、対応する長さ[s]の期間、前記高周波定電流制御を行うことを特徴とする。
あるいは、前記高圧放電ランプの定格電力が300[W]の場合において、少なくとも10[s]の期間、前記高周波定電流制御を行うことを特徴とする。
また、前記高圧放電ランプの定格電力が350[W]の場合において、x−y直交座標系において、前記高周波定電流期間の長さ[s]をx軸にとり、当該高周波定電流期間に両電極間に流す電流値[Ap−p]をy軸にとった場合、(x,y)座標で表される点(10,8)、点(25,8)、点(25,1)、点(20,3)、点(15,6)、点(10,8)を順次、線分で結んで囲まれる領域内(前記線分上を含む)のx座標値とy座標値との組み合わせの内、予め定められた一の組み合わせの電流値[Ap−p]を定電流の目標値とし、対応する長さ[s]の期間、前記高周波定電流制御を行うことを特徴とする。
あるいは、前記高圧放電ランプの定格電力が350[W]の場合において、少なくとも20[s]の期間、前記高周波定電流制御を行うことを特徴とする。
上記の目的を達成するため、本発明に係る投射型画像表示装置は、上記の点灯装置を有することを特徴とする。
上記構成からなる点灯装置によれば、両電極間の絶縁破壊後に実行される高周波定電流制御における定電流の目標値が、従来よりも低い上記所定の範囲から定められているため、放電空間の縮小化により電極とガラスバルブ内面と距離が近接しても、ガラスバルブ内面がリング状に黒化するのを可能な限り防止することができる。このことは、後述する実験により確認されている。
さらに、目標の電流値を下げるだけでなく、高圧放電ランプの定格電力に対し設計される電極の大きさに応じて、それに合った高周波定電流期間の長さとすることより、定格周波数定電流制御に移行した際のランプの立ち消えを防止することができる。このことも、後述する実験により確認されている。
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
<高圧水銀ランプおよびランプユニット>
図1は、高圧放電ランプの一例として示す高圧水銀ランプ2と高圧水銀ランプ2からの出射光を反射して集光する反射鏡4とを有するランプユニット6を、反射鏡4の光軸を含む平面で切断した断面図である。なお、本図を含めた全ての図において、各構成部材間の縮尺は統一していない。
高圧水銀ランプ2は、石英ガラス製のバルブ8を有している。バルブ8は、外形形状が例えば全体的に略球状に膨出し、気密封止された放電室(発光空間)10を有する本管部12と、本管部12から略同軸上反対向きに延出された第1および第2の側管部14、16からなる。
図2(a)に、本管部12の拡大図を示す。
高圧水銀ランプ2は、放電室10内でその先端部を互いに対向させて配置した一対の第1および第2の電極18,20を有している。
第1の電極18は、軸部22とこれよりも太径の頭部23とを有する。頭部23は、軸部22に巻回されたコイル部24とコイル部24が略半球状に溶融加工されてなる半球部25とからなる。同様に、第2の電極20も、軸部26とこれよりも太径の頭部27とを有し、頭部27は、軸部26に巻回されたコイル部28とコイル部28が略半球状に溶融加工されてなる半球部29とからなる。軸部22,26および頭部23,27は、共にタングステンからなる。
軸部22,26の基端はバルブ8に支持されており、各軸部22,26は、ほぼ同軸上に、放電室10へと延出されている。なお、各軸部22,26にコイル部24,28を設けるのは、各コイル部24,28が、適度な放熱機能を発揮して、高圧水銀ランプ2の点灯中における電極の過熱を防止するためである。
また、各頭部23,27の先端を半球部25,29とするのは、点灯中の放電を可能な限り当該頭部の先端に集中させて、アークが無秩序に変位するいわゆるアークジャンプ現象を防止するためである。両頭部23,27先端の、バルブ8の管軸方向の間隔、すなわち、電極間距離は0.5[mm]2.5[mm]の範囲で設定される。本例では、1.5[mm]としている。
なお、本管部12の外面形状は例えば略球形状や略楕円形状があり、またその内面形状もその外面形状の相似形である必要は無く、種々の設計がなされる。
図1に戻り、各軸部22,26の、頭部23,27とは反対側の端部は、短冊状をした金属箔34,36の一方の端部と接合されている。一対の金属箔34,36の各々は、モリブデン箔からなる。
第1の金属箔34のもう一方の端部には、第1の外部リード線38の一端部が接合されており、第2の金属箔36のもう一方の端部には、第2の外部リード線40が接合されている。なお、第1および第2のリード線38,40は、共に、モリブデン線からなる。第1および第2の外部リード線38,40の、金属箔34,36とは反対側の端部部分は、バルブ8から露出していて、当該端部部分には、それぞれ、給電線42,44が接続されている。給電線42,44から給電することによって、高圧水銀ランプ2を点灯させることができる。このとき、両電極18,20間(両頭部23,27先端間)の真ん中に位置する点Cがアーク中心(発光中心)となる。
放電室10は、バルブ8の、主に金属箔34,36に対応する部分が封着されて形成されている。放電室10には、発光物質である水銀及び始動補助用としてのアルゴン、クリプトン、キセノンなどの希ガスと、併せて沃素、臭素などのハロゲン物質(いずれも不図示)が封入されている。なお、前記ハロゲン物質は、いわゆるハロゲンサイクルにより、電極18,20から蒸発したタングステンを、石英製のバルブ8(本管部12)内面に付着させることなく電極18,20に戻して発光管の黒化を抑制するという機能を果たすために封入されるものである。
上記の構成からなる高圧水銀ランプ2は、第2の側管部16部分においてセメント46により、反射鏡4に固着されている。
反射鏡4は、漏斗状をした硬質ガラス製基体48を有する。基体48において、凹面部分48Aには、反射膜として多層干渉膜50が蒸着されて、反射面52が形成されている。
高圧水銀ランプ2は、基体48のネック部48Bに開設された取付孔48Cに第2の側管部16を挿入して、反射鏡4の光軸方向の所定位置に位置決めがなされた後、セメント46で固着される。所定位置とは、例えば反射鏡4の焦点fとアーク中心Cが略一致する位置である。
<プロジェクタ>
図3に、投射型画像表示装置の一例として示すフロントプロジェクタ60の概略構成を示す。図3は、後述する筐体44の天板を取り除いた状態を示している。フロントプロジェクタ60は、その前方に設置したスクリーン(不図示)に向けて画像を投影するタイプのプロジェクタである。
フロントプロジェクタ60は、例えば、3板式液晶プロジェクタであり、筐体62に収納された、光源であるランプユニット6、光学ユニット64、制御ユニット66、投射レンズ68、冷却ファンユニット70、および電源ユニット72等から構成されている。
光学ユニット64は、画像形成ユニットからの出射光を合成する光合成ユニット、入射光を偏光させて画像を形成する画像形成ユニット、およびランプユニット6からの照明光をその画像形成ユニットに照射する照明ユニット(いずれも図示せず)を有している。照明ユニットは、3色のカラーフィルタ等(図示せず)を有し、照明光を3原色に分解して画像形成ユニットに照射する。3原色に分解された光を光合成ユニットで合成することにより、フルカラーの画像を得られる。
制御ユニット66は、画像形成ユニット等を駆動制御する。
投射レンズ68は、光合成ユニットにより合成された光学像を拡大投射する。電源ユニット72は、後述する点灯装置76(図4)を含み、商用電源から供給される電力を、制御ユニット66やランプユニット6に適した電力に変換してそれぞれ供給する。
なお、ランプユニット6を3板式液晶プロジェクタの光源として用いた例を示したが、これに限らず、DMD(商標)を用いたDLP(商標)の光源として用い、当該DLPを構成することもできる。
<点灯装置>
点灯装置(電子安定器)76は、商用交流電源に接続されるDC電源回路74から供給される直流電力を交流電力に変換して、高圧水銀ランプ2に給電する。
すなわち、点灯装置76は、高圧水銀ランプ4を始動、点灯維持させるものであり、図4(a)に示すように主にDC/DCコンバータ78、DC/ACインバータ80、LC共振型の高電圧供給部82、ランプ電流検出部84、ランプ電圧検出部86、および制御部88から構成されている。なお、高電圧供給部82は、LC共振型に限らず、パルス重畳型としても構わない。
また、制御部88は、例えばマイコンで構成され、CPU89を中心として、入・出力インターフェース91、記憶部93、内部タイマー95などが接続された構成を有する。入・出力インターフェース91は、DC/DCコンバータ78、DC/ACインバータ80、ランプ電流検出部84、およびランプ電圧検出部86との間で制御信号等の入出力をする。記憶部93は、後述する高周波定電流制御を行う場合に定電流の目標値となる電流値が予め格納されている目標電流値格納部93Aや当該高周波定電流期間が予め格納されている高周波定電流期間格納部93Bを有している。記憶部93は、この他にも、後述する高周波定電圧印加制御の期間、定格周波数定電流制御の際の目標電流値、定格周波数定電力制御の際の目標電力値等の格納部も有しているのであるが、本願発明の主眼ではないので、図示は省略する。
DC/DCコンバータ78は、制御部88からのPWM(Pulse Width Modulation)制御信号を受けて所定の大きさの直流電流をDC/ACインバータ80に供給する。すなわち、安定点灯時(定常点灯時)において高圧水銀ランプ2からの光出力を一定に保つべくランプ電力を一定にする制御を行う必要があるが、制御部88はそのためにランプ電流検出部84で検出したランプ電流、およびランプ電圧検出部86で検出したランプ電圧にそれぞれ基づいてランプ電力を演算し、それを一定にするようなPWM制御信号をDC/DCコンバータ78に送る。DC/DCコンバータ78は、それを受けてDC電源回路74からの直流電圧を所定の大きさの直流電流に変換する。
ただし、制御部88は、始動時から前記一定のランプ電力を得る(所定のランプ電圧に達する)までの間、一定のランプ電流で制御するようにPWM制御信号をDC/DCコンバータ78に送る。この場合に、制御部88は、ランプ電流検出部84で検出するランプ電流が、目標電流値格納部93Aに格納されている目標値に合うようにPWM制御信号をDC/DCコンバータ78に送る。目標電流値格納部93Aに格納されている電流値については後述する。
DC/ACインバータ80は、例えば、一対のスイッチング素子(FET)90を二組有しており、各組を交互にオン、オフすることによってDC/DCコンバータ78から供給された直流電流に対して制御部88からの制御信号に基づいて所定の周波数の矩形波電流を生成する。
高電圧供給部82は、例えば、コイル92とコンデンサ94を有する共振回路を利用して、周波数が10[kHz]以上10[MHz]以下の範囲内から予め設定されている高周波電圧を発生させて第1の電極18と第2の電極20との間に印加し、第1の電極18と第2の電極20との間での絶縁破壊を促し、高圧水銀ランプ2を始動させる。
次に、点灯装置76の動作について、図5に示すフローチャートに基づき、両電極18,20間で観測される図6に示す電圧・電流波形を参照しながら説明する。なお、以下の例は、定格電力が300[W]の高圧水銀ランプに対してなされる制御内容である。
先ず、DC電源回路74のスイッチ(不図示)のスイッチがオンされると(ステップS2でYES)、制御部88は内部カウンタ(不図示)をリセットする(ステップS4)と共に、内部タイマー95をリセットする(ステップS6)。内部カウンタは、後述する高周波電圧印加期間(ステップS8)を経過しても絶縁破壊が起きていない場合に、再度、高周波電圧印加(ステップS8)を繰り返す回数をカウントするために設けられている。内部タイマー95は、点灯制御の切り替えタイミングを計るために設けられている。
ステップS6に続いて、制御部88は、所定時間T1が経過するまで(ステップS10でYES)、DC/DCコンバータ78とDC/ACコンバータ80を制御して、周波数が10[kHz]以上10[MHz]以下の範囲で予め設定されている、例えば、300[kHz]で、大きさが6[kVp−p]の高周波の高電圧を第1の電極18と第2の電極20との間に印加する(ステップS8)。
所定時間T1は、2[s]〜5[s]の範囲で予め設定されている。T1時間は、絶縁破壊が生じるのに十分な時間であり、通常はT1時間内に両電極18,20間に絶縁破壊が起こり、グロー放電が生じて、両電極18,20間に電流が流れ始める(図6参照)。
制御部88は、T1時間が経過すると(ステップS10でYES)、ランプ電流検出部84による検出結果を参照し、両電極18,20間に電流が流れているか否かの判定を行う(ステップS12)。
電流が流れていない場合は(ステップS12でNO)、カウンタを一つインクリメントした上で(ステップS14)、繰り返し回数を確認し(ステップS16)、3回未満であれば(ステップS16でNO)、タイマー95をリセットして(ステップS6)、高周波電圧印加制御(ステップS8)を継続する。
高周波電圧印加期間を2回延長しても、絶縁破壊が生じない場合は(ステップS12でNO、ステップS16でYES)、高圧水銀ランプ2等に不具合が生じていると判断し、ステップS32に移行して、点灯装置76からの出力を停止し、点灯制御を終了する。
一方、電流が流れていると判断した場合は(ステップS12でYES)、制御部88は、外部周辺機器(不図示)に点灯成功信号を出力して、高周波の定電流制御(ステップS20)に移行する。点灯成功信号を出力するのは、高周波・高電圧印加期間の終了によりこれ以降、高いレベルのノイズが発生しないことを周辺機器に通知することにより、早期に周辺機器を立ち上げ、定常点灯に移行した際に速やかに、プロジェクタによる投影が開始できるようにするためである。
高周波定電流制御(ステップS20)を行うのは、上述したように、絶縁破壊後直ちに、後述する定格周波数・定電流制御(ステップS24)に移行するとランプが立ち消えてしまうからである。すなわち、グロー放電からアーク放電に移行させると共に、定格周波数・定電流制御に移行した後も安定したアーク放電が維持できるように、電極を適度に暖めるためである。高周波・定電流制御では、例えば、所定の期間、10[kHz]〜500[kHz]の範囲の周波数で、所定の電流値の電流を給電している。なお、当該所定の期間(T2−T1)、および所定の電流値については後述する。
制御部88は、内部タイマー95を参照し、T2時間経過したと判定すると(ステップS22でYES)、定格周波数の定電流制御(ステップS24)に移行する。
定格周波数の定電流制御(ステップS24)は、放電室10内の水銀蒸発を促進させるために設けられており、ランプ電流検出部84の検出信号に基づき制御部88によってDC/DCコンバータ78を制御して、ランプ電流の値を一定(例えば、4.5[A])にする制御である。
その後、ランプ電圧が所定の値P[V]に到達したか否かを判断する(ステップS26)。この所定の電圧値Pは、例えば、66.7(=300[W]/4.5[A])[V]に予め設定されている。ランプ電圧がP[V]未満であれば(ステップS26でNO)、ステップS24の定格周波数の定電流制御を維持する。
ランプ電圧がP[V]以上になると(ステップS26でYES)、ステップS28に移行し、定常点灯制御である定格周波数の定電力制御に切り替える。定格周波数の定電力制御(ステップS28)は、ランプ電流検出部84およびランプ電圧検出部86のそれぞれ検出信号に基づき制御部88によってDC/DCコンバータ78を制御して、ランプ電力の値が一定(300[W])になるようにDC/DCコンバータ78からの出力電流の値を適宜制御するものである。
そして、スイッチがオフされるまで定格周波数の定電力制御(ステップS28)を継続し、スイッチがオフされると(ステップS30でYES)、点灯装置76からの出力を停止し(ステップS32)、点灯制御を終了する。
〔高周波定電流制御(ステップS20)〕
T1時間経過後T2時間が経過するまで(以下、当該期間を「高周波定電流制御期間」と言う。)の間になされる高周波定電流制御について説明する。
高周波定電流期間を設ける目的は、上述した通りであるが、この間に高圧水銀ランプは、グロー放電からアーク放電へと移行する。
アーク放電の場合、図2(b)に示すように、両電極18,20の対向する頭部23,27の先端部間で放電がなされる。一方、グロー放電の場合は、図2(c)に示すように、頭部13,27全体に渡って放電がなされる。
この場合に、放電の起点となる電極部分からタングステン(W)が蒸発する。ハロゲンサイクルが機能していれば、蒸発したタングステン(W)は、本管部12内壁に付着することなく、電極に戻ることとなる。これにより、本管部12内壁の黒化が防止できる。
本願発明者らが、高圧水銀ランプの水銀蒸気圧を高めることにより効率を向上させる目的で、放電室10の容積を従来品よりも縮小したところ、本管部12内壁にリング状の黒化が認められた。これは、以下の理由によるものと考えられる。放電室の縮小化により必然的に、電極の頭部23,27は全体的に本管部12の内壁に近づく。アーク放電の場合には(図2(b))、放電の起点から本管部12内壁まで、蒸発したタングステン(W)がハロゲン(X)と化合するのに十分な距離があるため、ハロゲンサイクルが機能して黒化が防止できる。一方、グロー放電の場合、電極の頭部23,27後端部(軸部22,26側端部)から蒸発したタングステン(W)は、当該後端部と本管部12の内壁とが近接しているため、ハロゲン(X)と化合する前に当該内壁に到達してそのまま付着し黒化を招来してしまうからである。特に、放電室10の縮小化によって、電極頭部23,27の後端部と本管部12内壁との最短距離Lが短縮されたことに因るものと考えられる。従来、L=0.9[mm]であったのが、放電室10を縮小化したことによりL=0.7±0.05[mm]になったものについて、従来と同様の12[Ap−p]の定電流で高周波定電流制御を行ったところリング状の黒化が認められた。
そこで、本願発明者らは、電流値を下げることにより当該黒化を防止することとした。電流値を下げることで、電極表面温度を下げることができ、タングステンの蒸発が抑制され、飛散量が減るからである。
しかし、電流値を下げることによりグロー放電中(高周波定電流制御期間中)に発生するリング状の黒化の発生は防止できるものの、高周波定電流制御期間を従来と同等の長さにすると、電極の暖まり方が不十分で、定格周波数定電流制御(ステップS24、図5)に移行したとたんにランプの立ち消えが生じることも判明した。
(定格電力300[W]の高圧水銀ランプ)
本願発明者らは、定格電力300[W]の高圧水銀ランプについて、電流値と高周波定電流制御期間の長さとの組み合わせを変化させて点灯試験を実施した。
試験結果を図7〜図9に示す。
高周波定電流制御期間の長さを5[s]、6[s](図7)、7[s]、8[s](図8)、9[s]、10[s](図9)とし、その各々の場合において、電流値を1.0[Ap−p]〜8.5[Ap−p]の範囲で変化させた(5[s]の場合のみ、1.0[Ap−p]〜12.0[Ap−p])。
図中「N」欄は、各々の組み合わせにおいて実験に供した試験ランプの本数を示す。そして、試験ランプの各々を、15分点灯、30分消灯を1サイクルとし、これを200サイクル繰り返して黒化発生の有無を調査した。200サイクル繰り返しても黒化の発生しなかった場合を合格、そうでない場合を不合格とした。黒化発生の有無については、実態顕微鏡を用いて放電室内面を本管部の外側から観察し、黒化が認められた場合に黒化が発生したと認定した。
「黒化発生」欄の内、左列は黒化の発生した本数を、中央列は黒化発生ランプの本数を試験ランプの本数で除した百分率を、右列は黒化に関し合否判定をそれぞれ記入している。合否判定では、試験ランプの内、1本でも黒化が発生すると不合格「×」とし、全部において黒化が発生しなかった場合に合格「○」とした。
「点灯性」欄の内、左列は定格周波数定電流制御に移行しても立ち消えなかったランプの本数を、中央列は立ち消えなかったランプの本数を試験ランプの本数で除した百分率を、右列は点灯性に関し合否判定をそれぞれ記入している。合否判定では、1本でも立ち消えた場合を不合格「×」とし、全部が立ち消えなかった場合を合格「○」とした。
「総合」欄では、黒化発生と点灯性の両方で合格した場合を合格「○」、いずれか一方でも不合格の場合を「×」とした。
図7〜図9に示す結果から明らかなように、高周波定電流制御期間において、8[Ap−p]以下1[Ap−p]以上の範囲で予め定められた電流値[Ap−p]を定電流の目標値とすることによりガラスバルブ内面がリング状に黒化するのを防止できることが分かる。
図7〜図9に示す実験結果を、図10においてグラフ化した。
図10は、x軸(横軸)に高周波定電流期間の長さを、y軸(縦軸)に当該高周波定電流期間に両電極間に流す電流値をとったx−y直交座標系である。図7〜図9に示す実験結果は、黒化発生のため不合格となった場合を黒塗りの四角「■」で、点灯不良のため不合格となった場合を黒塗りの三角で「▲」、総合的に合格となった場合を白抜きの丸「○」で、各々、前記x−y直交座標系のグラフにプロットした。
したがって、図10において、白抜きの丸「○」が占める領域内における「高周波定電流期間の長さ」と「電流値」との組み合わせとした場合には、リング状の黒化が発生せず、かつ点灯不良も発生しないこととなる。
すなわち、図10において、(x,y)座標で表される点E1(5,8)、点E2(10,8)、点E3(10,1)、点E4(8,5)、点E5(6,7)、点E6(5,7.5)、点E1(5,8)を順次、線分で結んで囲まれる領域内(前記線分上を含む。)のx座標値とy座標値との組み合わせから、予め一の組み合わせを選択し、これを高周波定電流制御の期間の長さと定電流制御の目標となる電流値とすればよいことになる。予め定めた電流値は、目標電流値格納部93A(図4)に、高周波定電流制御期間は、高周波定電流制御期間格納部93B(図4)に格納されている。
また、「高周波定電流期間の長さ」を10[s]以上にすれば(すなわち、少なくとも10[s]の期間を設ければ)、8[Ap−p]以下1[Ap−p]以上の範囲で予め定められた電流値を定電流制御の目標値とすることができる。
(定格電力350[W]の高圧水銀ランプ)
本願発明者らは、定格電力350の高圧水銀ランプについても、上述した定格電力300[W]の高圧水銀ランプと同様の実験をした。なお、実験に供した高圧水銀ランプは、電極頭部23,27の後端部と本管部12内壁との最短距離L(図2(a))が、従来、L=1.0[mm]であったのが、放電室10を縮小化したことによりL=0.8±0.05[mm]になったものである。
実験の結果を図11、図12に示す。
図11、図12に示す結果から明らかなように、高周波定電流制御期間において、8[Ap−p]以下1[Ap−p]以上の範囲で予め定められた電流値[Ap−p]を定電流の目標値とすれば、黒化が防止できることは、上述した定格電力が300[W]の場合のみならず、350[W]でも妥当することが分かる。
図11、図12に示す実験結果を、図13において、図10と同様にグラフ化した。
図13において、白抜きの丸「○」が占める領域内における「高周波定電流期間の長さ」と「電流値」との組み合わせとした場合には、リング状の黒化が発生せず、かつ点灯不良も発生しないこととなる。
すなわち、定格電力が350[W]の場合には、図13において、「高周波定電流期間の長さ」と「電流値」との組み合わせを、(x,y)座標で表される点F1(10,8)、点F2(25,8)、点F3(25,1)、点F4(20,3)、点F5(15,6)、点F1(10,8)を順次、線分で結んで囲まれる領域内(前記線分上を含む。)のx座標値とy座標値との組み合わせから、予め一の組み合わせを定めて、これを高周波定電流制御の期間の長さと定電流制御の目標となる電流値とすればよいことになる。予め定めた電流値は、目標電流値格納部93A(図4)に、高周波定電流制御期間は、高周波定電流制御期間格納部93B(図4)に格納されている。
また、「高周波定電流期間の長さ」を20[s]以上にすれば(すなわち、少なくとも20[s]の期間を設ければ)、8[Ap−p]以下1[Ap−p]以上の範囲で予め定められた電流値を定電流制御の目標値とすることができる。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下の形態とすることもできる。
ランプユニット6は、投射型画像表示装置の一例として図14に示す、リアプロジェクタ100の光源としても用いることができる。
リアプロジェクタ100は、例えば、3板式液晶プロジェクタであり、ランプユニット6、光学ユニット、投射レンズ、ミラー(いずれも不図示)等が筐体102内に収納された構成を有しており、投射レンズから投射されミラーで反射された画像が透過式スクリーン104の裏側から投影されて画像表示するプロジェクタである。
上記は、ランプユニット6を3板式液晶プロジェクタの光源として用い、リアプロジェクタの光学エンジンを構成する例であるが、これに限らず、ランプユニット6を、DMD(商標)を用いたDLP(商標)の光源として用い、当該DLPを光学エンジンとしてリアプロジェクタを構成することもできる。
本発明に係る点灯装置は、例えば、高効率化のため放電室の容量を縮小した高圧水銀ランプの点灯装置として好適に利用可能である。
ランプユニットを反射鏡の光軸を含む平面で切断した断面図である。 (a)は、上記ランプユニットを構成する高圧水銀ランプの本管部の拡大断面図であり、(b)は、上記高圧水銀ランプにおいてアーク放電している様子を模式的に描いた図であり、(c)は、上記高圧水銀ランプにおいてグロー放電している様子を模式的に描いた図である。 フロントプロジェクタの概略構成を示す斜視図である。 点灯装置の概略構成を示すブロック図である。 上記点灯装置の動作を表したフローチャートである。 上記点灯装置のスイッチオン時から定常点灯に至るまでの間に、高圧水銀ランプの両電極間で観測される電圧および電流の波形を表した図である。 定格電力300[W]の高圧水銀ランプに対してした、黒化発生と点灯性についての実験結果の一部を示す図である。 定格電力300[W]の高圧水銀ランプに対してした、黒化発生と点灯性についての実験結果の一部を示す図である。 定格電力300[W]の高圧水銀ランプに対してした、黒化発生と点灯性についての実験結果の一部を示す図である。 図7〜図9に基づいて作成したグラフである。 定格電力350[W]の高圧水銀ランプに対してした、黒化発生と点灯性についての実験結果の一部を示す図である。 定格電力350[W]の高圧水銀ランプに対してした、黒化発生と点灯性についての実験結果の一部を示す図である。 図11、図12に基づいて作成したグラフである。 リアプロジェクタの概略構成を示す斜視図である。
符号の説明
2 高圧水銀ランプ
10 放電室
18,20 電極
22,26 軸部
23,27 頭部
76 点灯装置

Claims (2)

  1. 軸部先端部に当該軸部よりも太径の頭部が形成されてなる一対の電極が、ハロゲン物質が封入されている放電室内に前記頭部を対向させ、かつ同軸上に配されてなる交流点灯型の高圧放電ランプに対して、前記両電極間に絶縁破壊を起こさせた後、定格周波数定電流制御に移行する前に、定格周波数よりも高い周波数で定電流制御する高周波定電流制御の期間を設けて点灯制御する点灯装置であって、
    前記高圧放電ランプの定格電力は300[W]であり、
    前記電極の前記頭部の後端部と前記放電室の内壁との最短距離Lが、L=0.7±0.05[mm]の範囲にあって、
    x−y直交座標系において、前記高周波定電流期間の長さ[s]をx軸にとり、当該高周波定電流期間に両電極間に流す電流値[A p−p ]をy軸にとった場合、
    (x,y)座標で表される点(5,8)、点(10,8)、点(10,1)、点(8,5)、点(6,7)、点(5,7.5)、点(5,8)を順次、線分で結んで囲まれる領域内(前記線分上を含む)のx座標値とy座標値との組み合わせの内、予め定められた一の組み合わせの電流値[A p−p ]を定電流の目標値とし、対応する長さ[s]の期間、前記高周波定電流制御を行うことを特徴とする点灯装置。
  2. 請求項に記載の点灯装置を有することを特徴とする投射型画像表示装置。
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