JP5304268B2 - 回折素子成形用金型及びその加工方法 - Google Patents
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Description
この発明は、上記金型を切削加工できる切削工具、加工方法、加工装置に関するものであり、切削工具が鋭角の角部(工具エッジ部分)を有するすくい面を具備していて、回折光学素子の微細階段状の回折面を高精度で切削加工することができるものである。
上記従来技術の場合、直線的な切削部分(刃先)を有する切削工具を用いて、光学素子成形用金型を加工する方法であるが、工具の切削部分の輪郭誤差については考慮されておらず、したがって、輪郭誤差の影響により回折面の形状精度が低下するという問題が残されている。
光軸1の方向から見た時に同心円形状となる回折素子2を図1(a)に示しており、図1(a)に示す回折素子の光軸1を含む断面の断面図を同図(b)に示している。さらに、図1(b)の矢印で示す方向から、回折素子2を見た様子を図2に示しているが、図2に示されているように直線によって回折面が構成される回折素子や回折素子成形用金型を切削加工する場合、図3のように、切削工具(以下、単に「工具」ともいう)の切削部分の左右の角部(工具エッジ部)A,C間が直線である切削工具3によって、回折面を切削加工する加工方法がある。
工具幅Wの工具3を用いて、例えば加工物4に溝5を加工する様子を図6に示しているが、上記溝5の角部A’,C’はそれぞれ工具3の工具エッジ部分A,Cが作用した部分である。また、図6の切削状態において、幅が約400μmの工具3を用いて溝5を加工したときの、当該溝5の形状を精密測定したときの角部A’,C’の形状の一例を示せば図7(a)のとおりであり、この加工に用いた工具3の輪郭形状を精密測定した結果は図7(b)に示すとおりである。図7(a)に示す例では、溝5の中央部5aが両工具エッジ部分A’,C’よりも深く切り込まれており、その中央部5aの円弧状の切り込みの形状は図7(b)に示す工具3の刃先3aの輪郭形状3bと近似しており、工具の輪郭形状3bが加工面5bに転写されていて、その形状が加工面5bに大きく影響していることが明らかである。なお、図7では、縦方向が横方向の1000倍に拡大されている。
図8(a)では縦横の比1:1で示されているが、(b)では縦方向を横方向の1000倍(1000:1)に拡大して、上記円弧形状の突出が誇張して示されている。
図8に示す工具を用いて高さ300nmの上記回折面を種々の幅bに加工する場合を図9に示している。すなわち、図9(a),(b),(c)はその幅bがそれぞれ20μm、200μm、400μmの3つの場合を示している。なお、図(a),(b)の場合は工具送りピッチはそれぞれ20μm、200μmであるが、図(c)の場合は工具送りピッチを200μmにし、2段階で400μm幅の回折面を加工している。
このような形状の回折面2dの上記CBDの面積と等しくなる長方形EBDFを求めて、これに基づいて仮想の回折面AEFを求め、この仮想の回折面AEFの底面EFの段差AEの長さを「段差d’」と定義して、これを用いて回折面の加工精度について説明をする。
この「段差d’」が上記狙いとする段差dsとの差が小さいほど回折面2dの加工精度が高く、大きいほど回折面2dの加工精度が低いことになる。
図9(a),(b),(c)の切削加工による回折面2dの輪郭形状は、それぞれ図11(a),(b),(c)のとおりであり、上記「段差d’」はそれぞれ図示のda,db,dcである。そして、上記各「段差d’」の関係は、ds>dc>db>daとなっており、このことから、図9の形態で回折面2dを加工した場合、回折面2dの幅bによって、上記の「段差d’」が異なってくることが明らかである。
また、図14に図13(b)のcc’断面が示されており、このものの1段目の回折面の幅をW(1)、n段目の回折面の幅をW(n)とすると、下方の段になるほど回折面の幅が狭くなっている。図12に示す回折素子でも同様に下方の段になるほど回折面の幅が狭くなっている。
光軸方向から見た形状が楕円となる回折素子2が図15に示されており、この回折素子2を光軸方向から見た状態が図16(a)に示されており、また、(a)の長軸AA’方向の断面形状が(b)に示され、(a)の短軸BB’方向の断面形状が図(c)に示されている。また、同図(a)における符号7は任意のn段目の回折面2dの輪帯を示している。回折面2dの長軸方向の幅b1はWA(n)であり、短軸方向の幅b2はWB(n)であり、WA(n)>WB(n)である。そして、その周方向位置によってその幅bが異なっている。したがって、光軸方向から見た形状が楕円形状となる回折素子の場合は、回折面の段位置の違いだけなく、周方向位置の違いによっても回折面2dの段差(図11の段差参照)に違いが生じる。
上記課題を解決するための手段は、回折素子成形金型の切削加工において、切削工具の切削部分(刃先)の輪郭形状の直線形状からの形状誤差の値に基づき、当該切削工具の傾き角度を設定することであり、回折面の幅が変動する際の、回折面の段差の変動を抑制することができ、高精度な回折素子成形用金型を製作することができるものであり、具体的には次の(イ)(ロ)によるものである。
(イ)光軸を含む断面における回折面の断面形状が直線で構成され、かつ、光軸方向から見た形状が、同心円、直線、楕円形状となる回折面を備えた回折素子成形用金型の切削成形方法であって、
(ロ)前記金型の回折面を切削工具の刃先の直線部分を転写することによって加工を行うとき、切削工具の切削部分の輪郭形状の直線形状に対する形状誤差の値に基づき、回折面の段差部分を加工する工具エッジ部分と、当該工具エッジ部分から送りピッチ分だけ離れた位置での工具稜線上の点とを結んだ直線が加工対象の回折面と平行となるように工具の傾き角度を設定して切削加工を行うことにより回折面を形成すること。
また、回折素子を切削加工する場合に、切削工具の直線からの形状誤差の大きさに応じて、当該切削工具の傾き角度を設定することであり、切削加工によって高精度の回折素子を製作することができるものであって、具体的には、次の(イ)(ロ)によるものである。
(イ)光軸を含む断面における回折面の断面形状が直線で構成され、かつ、光軸方向から見た形状が、同心円、直線、楕円形状となる回折素子の切削成形方法であって、
(ロ)前記回折素子の回折面を切削工具の直線部分を転写することによって加工を行うとき、切削工具の直線からの形状誤差の値に基づき、回折面の段差部分を加工する工具エッジ部分と、当該工具エッジ部分から送りピッチ分だけ離れた工具稜線上の位置での工具稜線上の点とを結んだ直線が加工対象の回折面と平行となるように工具の傾き角度を設定して切削加工を行うことにより回折面を形成すること。
請求項1に係る発明の効果は次のとおりである。
この発明によれば、光軸を含む回折面の断面形状が直線で構成され、かつ、光軸方向から見た形状が、同心円、直線、楕円形状となる回折素子の成形金型は、解決手段1によって切削加工されることにより、その回折面の幅が異なる場合の段差誤差が低減され、回折面が高精度に成形され、したがって、高精度の回折素子を型成形することが可能である。
すなわち、前記金型の回折面を工具の刃先の直線部分によって切削するとき、工具の切削部分(刃先)の輪郭形状の直線形状に対する形状誤差の値に基づき、回折面転写成型面の段差部分を切削加工する工具エッジ部分と、形状誤差が工具の切り込み方向で最大となる工具稜線上の点とを結んだ直線が上記回折面転写成型面と平行となるように工具の傾き角度が設定された状態で切削加工がなされるので、工具輪郭形状の直線からの誤差の影響によって加工幅が変化した際に発生する段差誤差の量を抑制することができるため、金型の回折面転写成形面の幅が異なるときの段差誤差が低減される。したがって、段差誤差の小さい高精度の回折面転写成形面を備えた金型が製作され、また、この高精度の金型によって、回折面が高精度の回折光学素子を型成形することができる。
請求項3に係る発明の効果は次のとおりである。
この発明によれば、光軸を含む断面における回折面の断面形状が直線で構成され、かつ、光軸方向から見た形状が、同心円、直線、楕円形状となる回折素子は、回折面の幅が異なる場合の、段差誤差が抑制されているため、高精度の回折素子が製作される。
すなわち、前記回折素子の回折面を切削工具によって加工するとき、工具の切削部分の輪郭形状の直線形状に対する形状誤差の値に基づき、回折面の段差部分を加工する工具エッジ部分と、形状誤差が工具の切り込み方向で最大となる工具稜線上の点とを結んだ直線が加工対象の回折面と平行となるように工具の傾き角度が設定されて状態で切削加工がなされるので、工具輪郭形状の直線からの誤差の影響によって加工幅が変化した際に発生する段差誤差の量を抑制することができるため、回折面の幅が異なるときの段差誤差が低減される。したがって、これにより、回折面の段差誤差が小さい高精度の光学素子が切削成形される。
この発明の切削成形方法を実施するための加工装置の一例が図17に示されている。同図において符号11は被加工物(ワーク)12の回転軸線(Z軸方向軸線)であり、13は切削工具であり、符号14,15,16はそれぞれX軸、Y軸、Z軸方向の移動ステージである。また、符号17はY軸方向の回転軸線を中心としてB方向に回転する回転体であり、当該回転体17に工具(切削工具)13が保持されていて、回転体17の回転によって工具13の傾き角度が調節される。また符号18はZ軸方向の回転軸線を中心としてC方向に回転する回転体であり、当該回転体18に被加工物12が保持されていて、回転体18の回転によって被加工物12が駆動される。さらに符号19は加工機のベースを示している。
被加工物12に対する工具13による切削加工は、加工物12に対する工具13による切削加工は、移動ステージ14,15,16の上記X軸、Y軸、Z軸方向の直線運動と、回転体17のB方向回転運動と、回転体18のC方向回転運動とによって行われる。
以上は、図13に示す回折素子の回折面を成形するため加工装置、すなわち、被加工物を回転させて同心円状に回折面を形成する加工装置の基本構造である。
図20は図15(b)に示すものと同様の光学素子、すなわち、光軸方向からみた形状が楕円形状である回折素子を切削加工する様子を示しており、同図で符号11はZ軸方向の回転軸線を示し、符号12は被加工物を示し、符号13は切削工具を示し、符号20は回折面を示している。矢印31はX軸方向の工具の移動方向を示し、矢印32はZ軸方向の回転軸線回りの回転方向を示している。また、矢印33はY軸方向の回転軸線回りの切削工具の揺動方向を示している。
同図22で符号1は回折素子の光軸、符号12は被加工物、符号13は切削工具であり、符号20’は切削加工中の回折面、符号23はZ軸に平行な直線である。上記回折面20’が光軸1に対して角度θだけ傾いているとするとき、この角度θの値は、回折素子の設計によって異なり回折面毎にθの値が異なる場合や、全ての回折面でθが一定となる場合もある。
図23は上記角度θが90度の回折面を加工するときの様子を示している。
図23において符号23はZ軸と平行な軸を示しており、符号24は工具13の工具エッジ部分(角部分)AとCを結んだ直線であり、当該直線24が形状誤差0の直線であると仮定すれば、直線23と直線24とがなす角度がθ=90度となるようにして回折面20’を切削する。
よって、直線ABと直線26とがなす角度φは約0.029度となる。
12:被加工物
13:切削工具
14,15,16:移動ステージ
17,18:回転体
19:加工機のベース
20,20’:回折面
23:Z軸と平行な直線
24:工具エッジ部A,Bを結んだ直線
25:稜線AC上の点BとAを結んだ直線
26:X軸と平行で点Bをとおる直線
28:点Aと、点Aから送りピッチ分だけ離れた位置での工具稜線上の点Dとを結んだ直線
A,C:工具の切削部分の工具エッジ部分
B:工具の切削部分の輪郭形状の最下点
D:点Aから送りピッチ分だけ離れた位置の輪郭形状上の点
φ:直線25と26の間の角度
Claims (4)
- 光軸を含む断面における回折面の断面形状が直線で構成され、かつ、光軸方向から見た形状が、同心円、直線、楕円形状となる回折面を備えた回折素子成形用金型の切削成形方法であって、
前記金型の回折面を切削工具の刃先の直線部分を転写することによって加工するとき、切削工具の切削部分の輪郭形状の直線形状に対する形状誤差の値に基づき、回折面の段差部分を加工する工具エッジ部分と、形状誤差が工具の切り込み方向で最大となる工具稜線上の点とを結んだ直線が加工対象の回折面と平行となるように工具の傾き角度を設定して切削加工を行うことにより回折面を形成することを特徴とする、回折素子成形用金型の切削成形方法。 - 光軸を含む平面による回折面の断面形状が直線で構成され、かつ、光軸方向から見た形状が、同心円、直線、楕円形状となる回折素子を成形する金型であって、前記金型の回折面を切削工具の直線部分を転写することによって加工を行うとき、切削工具の切削部分の輪郭形状の直線形状からの形状誤差の値に基づき、回折面の段差部分を加工する工具エッジ部分と、形状誤差が工具の切り込み方向で最大となる工具稜線上の点とを結んだ直線が加工対象の回折面と平行となるように工具の傾き角度を設定して切削加工を行って回折面を形成したことを特徴とする回折素子成形用金型。
- 光軸を含む断面における回折面の断面形状が直線で構成され、かつ、光軸方向から見た形状が、同心円、直線、楕円形状となる回折素子の切削成形方法であって、
前記回折素子の回折面を切削工具の直線部分を転写することによって加工するとき、切削工具の切削部分の輪郭形状の直線形状からの形状誤差の値に基づき、回折面の段差部分を加工する工具エッジ部分と、形状誤差が工具の切り込み方向で最大となる工具稜線上の点とを結んだ直線が加工対象の回折面と平行となるように工具の傾き角度を設定して切削加工を行うことにより回折面を形成することを特徴とする、回折素子の切削成形方法。 - 光軸を含む断面における回折面の断面形状が直線で構成され、かつ、光軸方向から見た形状が、同心円、直線、楕円形状となる回折素子であって、
前記回折素子の回折面を切削工具の直線部分を転写することによって加工を行うとき、切削工具の切削部分の輪郭形状の直線形状からの形状誤差の値に基づき、回折面の段差部分を加工する工具エッジ部分と、形状誤差が工具の切り込み方向で最大となる工具稜線上の点とを結んだ直線が加工対象の回折面と平行となるように工具の傾き角度を設定して切削加工を行うことにより回折面を形成した回折素子。
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