本発明のレンズ保護フィルムは、観察者側から見て液晶パネルの背面側の偏光板上に配置され、透明基材とレンズ保護層とを有する。このレンズ保護層は、3以上の官能基を有する(メタ)アクリレート系化合物またはウレタン(メタ)アクリレート系化合物を含むバインダマトリックスと、球形ポリマー粒子またはシリカ粒子と、パーフルオロアルキル基を備える化合物とを含有する。
本発明のレンズ保護フィルムは、3以上の官能基を有する(メタ)アクリレート系化合物またはウレタン(メタ)アクリレート系化合物を含むバインダマトリックスが適度な硬度を有し、球形ポリマー粒子またはシリカ粒子が表面に凹凸を与え、パーフルオロアルキル基を備える化合物がすべり性を与えるので、レンズ保護フィルム自体、およびこれに対向して配置されるレンズシートのレンズを保護する機能を示す。このため、液晶表示素子に組み込んで画像を表示する際に傷が目立つことはない。また、レンズ保護フィルム表面に形成される凹凸は非周期性であるので、液晶パネルの周期性から生じるモアレを低減できる。なお、レンズ保護層中での粒子の分散性を制御することによって散乱性を制御できるので、輝度の低減などのデメリットを抑制することができる。
本発明の液晶表示装置は、液晶パネルの背面側に設けられたレンズ保護フィルムのレンズ保護層に対向して、透明基材上に形成された周期性のあるレンズアレイを有するレンズシートを設けてバックライトユニットを構成している。レンズアレイとして、互いに平行に配置された複数の第1レンズアレイと、第1レンズアレイの各々のレンズに形成された第2レンズアレイとを含むものを用いれば、サイドローブを低減できる。この結果、レンズシートと液晶パネルとの間に拡散フィルムを設ける必要がなく、すなわち拡散フィルムの代替としてレンズ保護層を用いることができ、部材の点数削減が可能になる。しかも、レンズ保護層での拡散を低減できるため、輝度の低下を抑制することができる。
このように非周期性を付与したレンズ保護層を用いることによって、周期性を有するレンズアレイを使用することが可能となり、レンズアレイに賦型できる形状の自由度が増す。また、第1レンズアレイの各々のレンズの頂部に第2レンズアレイを形成して、レンズ保護層に接する面積を増加させることにより、レンズシートおよびレンズ保護層の傷つきをより効果的に防止できる。レンズアレイの各々のレンズの頂点付近が丸みを帯びるようにすれば、レンズシートおよびレンズ保護層の傷つきをさらに効果的に防止できる。
本発明において、傷つきの観点から、レンズ保護層は適度な硬度を有することが好ましい。通常の樹脂では、十分な硬度が得られないが、3官能以上の官能基を有する多官能性のアクリレートを用いると十分な硬度が得られる。ただし、硬度の高い樹脂を用いただけでは、逆にレンズを傷つけることがある。傷つきの問題は、レンズ保護層の表面でのすべり性を向上させることによって低減できる。レンズ保護層の表面でのすべり性を付与するには、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系添加剤をハイドロフルオロエーテルなどの適切な溶剤を用いることにより溶解させて、乾燥時にその表面にブリードアウトさせる。この溶媒としては、トリアセチルセルロースフィルムとの密着を得ることを考慮して、トリアセチルセルロースを溶解するものを使用する。
また、アクリル−スチレン共重合体、フッ素系樹脂などからなる球形ポリマー粒子またはシリカ粒子を用いることにより、レンズ保護層の表面に凹凸を与え、非周期性を付与しつつ、輝度低下の抑制と表面の平滑性を両立させる。
表面凹凸に起因するヘイズを5〜30%の間とし、内部のヘイズを全体の5〜40%となるように適切に設定すると、実質的にモアレのない液晶表示装置が得られることがわかった。ヘイズが上昇すると、モアレが低減するが、同時に輝度の低下も招く傾向がみられ、トレードオフの関係がみられる。モアレの低減を図りつつ輝度の低下を招かないようにするには、粒子の分散状態を制御することが有効である。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る液晶表示装置の一例を示す側面図である。この液晶表示装置は、観察者側から見て順に、偏光板31、液晶パネル32、偏光板33が配置された液晶パネル35と、液晶パネル35の背面側の偏光板33を構成するレンズ保護層332に対向して配置され、透明基材上に形成された周期性のあるレンズアレイを有するレンズシート1を含むバックライトユニットとを有する。
液晶パネルは、一方の透明基材に電極が形成され、もう一方の透明基材に電極およびカラーフィルターが形成されており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。液晶パネル32を挟むように設けられた偏光板は、透明基材間に偏光層を挟持した構造を有する。
バックライトユニットは、ランプハウス内に収納されたシリンダー形状の光源41と、光源41からの光を液晶パネル35に供給する光学シート39を備えている。光源41の周囲には光反射板45が配置されている。光学シート39上には光拡散層25が設けられている。光拡散層25上に、間隙(空気層)200を隔てて、レンズシート1が設けられている。
光源41から光拡散層25および間隙(空気層)200を通して伝達してきた光は、入射面からレンズシート1に入射し、反対側の出射面から出射する。出射する光の光学利得は1以上である。光学利得とは光学的な拡散部材の拡散性を示す指標の一つであり、完全拡散する拡散体の輝度を1として、その光の輝度との比で表される。測定対象である拡散部材の拡散性が方向によって偏っている場合、方向ごとの光学利得を出すことで、その拡散部材の拡散特性を示すことができる。完全拡散とは、吸収が0で、どの方向にも一定の強度をもつ理想的な拡散体のことを示す。つまり、光学利得が1以上であるということは、測定する方向に光を集める効果を持つことを示し、その値が大きいほど集光効果が強いことを示す。
液晶パネル32より背面側の偏光板33には、透明基材331上にレンズ保護層332を有するレンズ保護フィルム330が含まれる。透明基材331は偏光板の透明基材を兼ねている。透明基材331は、典型的にはトリアセチルセルロース(TAC)フィルムからなる。透明基材331としてTACフィルムを用いた場合、ケン化処理によって親水化することにより、レンズ保護層332が設けられる面の反対側の面に偏光層を設けることができる。偏光層としては、ヨウ素を加えた延伸ポリビニルアルコール(PVA)からなるものを用いることができる。偏光層は透明基材に狭持される。レンズ保護フィルム330のレンズ保護層332はレンズシート1と対向するように配置される。
本発明の液晶表示装置は、他の機能性部材を備えていてもよい。他の機能性部材としては、たとえば液晶パネルや偏光板の位相差を補償するための位相差フィルムが挙げられる。
次に、本発明において用いられるレンズ保護フィルムについてより詳細に説明する。図2に本発明のレンズ保護フィルムの断面図を示す。このレンズ保護フィルム330は、透明基材331上にレンズ保護層332を有する。レンズ保護層332は、3以上の官能基を有する(メタ)アクリレート系化合物またはウレタン(メタ)アクリレート系化合物を含むバインダマトリックス33Bと、球形ポリマー粒子またはシリカ粒子33Pと、パーフルオロアルキル基を備える化合物とを含む。レンズ保護層332の表面にパーフルオロアルキル基が露出していることが想定される。
レンズ保護層332表面では、単独または凝集した複数の粒子33Pが表面から突出することによって凹凸が形成される。こうして形成される凹凸は非周期性のものであり、モアレを防止するのに有効である。レンズ保護層332中における粒子の分散状態を制御すれば、モアレ抑制効果の制御にもつながる。
特に、粒子としてアクリルスチレン粒子を用い、バインダマトリックス中にペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を20重量部以上含有する場合、粒子の分散性の制御が容易になる。具体的には、アクリルスチレン粒子のアクリル部位に存在するカルボニル基とPETA中に存在する水酸基の相互作用により粒子の分散状態が変化する。バインダマトリックス中のPETAが20重量部未満の場合、PETA由来の水酸基が少なく、アクリルスチレン粒子のアクリル部位に存在するカルボニル基との相互作用が減少し、粒子の凝集が著しくなり、表面凹凸が過剰になって、輝度低下が大きくなりすぎる。これに対して、バインダマトリックス中のPETAが20重量部以上の場合、アクリルスチレン粒子のアクリル部位の割合を適切に設定することで容易に粒子の分散性を制御できる。このため、表示品質を重視する場合、レンズ保護層にバインダマトリックスと1種類のアクリルスチレン粒子を含有させ、バインダマトリックス中にPETAを20重量部以上含有させることが好ましい。
アクリルスチレン粒子の平均粒径(RA)をレンズ保護層の平均膜厚(H)で除した値(RA/H)が0.80を超える場合、レンズ保護層表面に大きな凸部が形成され、表面凹凸が過剰となり輝度低下を起こしやすい。このため、(RA/H)の値は0.80以下であることが好ましい。アクリルスチレン粒子の平均粒径は、光散乱式粒子径分布測定装置により求められる。
レンズ保護層332の平均膜厚とは、表面凹凸のあるレンズ保護層332の膜厚の平均値を意味する。平均膜厚は電子マイクロメーターや全自動微細形状測定機により求めることができる。レンズ保護層の平均膜厚(H)は、3μm〜30μmが好ましく、4μm〜20μmがより好ましい。レンズ保護層の平均膜厚が3μm未満の場合、十分な保護機能が得られず、レンズからの傷が透明基材(たとえばTAC)にまで達して傷が残る。一方、レンズ保護層の平均膜厚が30μmを超える場合、コスト高になるうえに、得られるフィルムのカールの度合いが大きくなって偏光板に設けるための加工工程に適さないことがある。
バインダマトリックスに対する粒子の割合が大きいほど、レンズ保護層を形成する際に粒子どうしの凝集が著しくなり、凹凸間のピッチが大きくなるため、ユズ肌外観を生じる。一方、バインダマトリックスに対する粒子の割合が小さいと、レンズ保護層が十分な散乱性を示さず、拡散性が低下し、外光の映り込みを十分に防ぐことができなくなる。
アクリルスチレン粒子のアクリル部位の割合を変化させることによって、レンズ保護層中での複数の粒子の凝集状態、したがって粒子分散を制御できる。
アクリルスチレン粒子のアクリル部位の割合の変化は、粒子の屈折率の変化と連動する。すなわち、アクリルスチレン粒子のアクリル部位の割合が少ないと屈折率が高くなり、アクリル部位の割合が多いと屈折率が低くなる。粒子の屈折率とバインダマトリックスの屈折率の差が大きいほど凝集する傾向は大きくなる。
バインダマトリックスの屈折率(nM)とはバインダマトリックス形成材料からなる膜の屈折率を意味する。電離放射線によって硬化する電離放射線硬化型のバインダマトリックス形成材料を用いた場合には、バインダマトリックスの屈折率(nM)は電離放射線を照射して硬化させた後の屈折率となる。すなわち、レンズ保護層においてアクリルスチレン粒子を除いた箇所での屈折率がバインダマトリックスの屈折率となる。なお、バインダマトリックスの屈折率(nM)およびアクリルスチレン粒子の屈折率(nA)はベッケ線検出法(液浸法)により求めることができる。
粒子の凝集性を制御することにより輝度低下が少なく、モアレの抑制効果が高いレンズ保護フィルムとすることができ、テレビモニター用のディスプレイに好適に用いられるレンズ保護フィルムおよびそれを用いた透過型液晶ディスプレイを提供できる。
図3に粒子の分散状態がよいレンズ保護層の顕微鏡写真を示す。図4に粒子が比較的凝集しているレンズ保護層の顕微鏡写真を示す。図3および図4に示した2つのレンズ保護層は同等のヘイズを示す。
図3のレンズ保護層ではモアレが認識され易かったが、図4のレンズ保護層ではモアレが認識されにくかった。ただし、単純に凝集状態を強くすると、凝集に起因する欠陥が多数できて品質低下を招くおそれがある。このため、上記のように各種のパラメータを調製して、粒子の凝集状態(分散状態)を適度に制御することが好ましい。
パーフルオロアルキル基を有した化合物としては、パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロアルキル基と極性基、結合基からなるものなどが挙げられる。パーフルオロアルキル基における炭素鎖が長いほどすべり性などの性能が上がることが知られている。パーフルオロアルキル基としては炭素数が6程度のものがよく用いられ、これらをグラフト重合したものも用いられる。
本発明のレンズ保護フィルムには、必要に応じて、反射防止性能、帯電防止性能、防汚性能、電磁波シールド性能、赤外線吸収性能、紫外線吸収性能などを有する機能層が設けられる。これらの機能層としては、反射防止層、帯電防止層、防汚層、電磁波遮蔽層、赤外線吸収層、紫外線吸収層、色補正層などが挙げられる。これらの機能層は単層であってもよいし、複数層であってもよい。機能層は、防汚性能を有する反射防止層というように、1層で複数の機能を有していてもよい。これらの機能層は、透明基材とレンズ保護層の間に設けてもよいし、レンズ保護層上に設けてもよい。これらの層の接着性を向上させるために、各層間にプライマー層や接着層などを設けてもよい。
次に、本発明のレンズ保護フィルムの形成方法を説明する。
本発明のレンズ保護フィルムは、たとえば電離放射線によって硬化するバインダマトリックス形成材料と、球状ポリマー粒子またはシリカ粒子と、パーフルオロアルキル基を有する化合物とを含むレンズ保護層形成用塗布液を透明基材上に塗布して塗膜を形成する工程と、バインダマトリックス形成材料を電離放射線により硬化させる工程により形成することができる。
バインダマトリックス形成材料として、電離放射線硬化型材料である多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリレート化合物を用いることができるが、この中でも3官能アクリレートモノマーまたは4官能アクリレートモノマーを用いることが好ましい。3官能アクリレートモノマーまたは4官能アクリレートモノマーを用いることにより十分な耐擦傷性を備えるレンズ保護フィルムを形成することができる。3官能アクリレートモノマーおよび4官能アクリレートモノマーの具体例としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレートモノマー、またはジイソシアネートと多価アルコールおよびアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステルなどから合成される多官能のウレタンアクリレートモノマーのうち、3官能および4官能のものが挙げられる。また、5官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物または(メタ)アクリレート化合物をバインダマトリックス形成材料に用いることが好ましい。
電離放射線として紫外線を用いる場合、レンズ保護層形成用塗布液に光重合開始剤を加えられる。光重合開始剤はバインダマトリックス形成材料に適合するものを用いることが好ましい。光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタールなどのベンゾインとそのアルキルエーテル類などが用いられる。光重合開始剤の使用量は、バインダマトリックス形成材料に対して0.5〜20wt%が好ましく、1〜5wt%がより好ましい。
レンズ保護層形成用塗布液は溶媒を用いる調製する。溶媒を加えることにより、粒子やバインダマトリックスを均一に分散させ、レンズ保護層形成用塗布液を透明基材上に塗布する際に粘度を適切な範囲に調整することができる。
透明基材としてトリアセチルセルロースを用い、トリアセチルセルロースフィルム上に他の機能層を介さず直接レンズ保護層を設ける場合には、レンズ保護層形成用塗布液の溶媒として、トリアセチルセルロースフィルムを溶解または膨潤させる溶媒とトリアセチルセルロースフィルムを溶解または膨潤させない溶媒の混合溶媒を用いることが好ましい。このような混合溶媒を用いることにより、トリアセチルセルロースフィルムとレンズ保護層が界面において十分な密着性を有するレンズ保護フィルムとすることができる。
また、すべり性を付与するために用いるパーフルオロアルキル基を有するフッ素系添加剤の溶解を容易にするため、ハイドロフルオロエーテル、テトラヒドロフラン、オキセタンなどのエーテル類を用いる。エーテル類は、トリアセチルセルロースフィルムを溶解または膨潤させる溶媒およびトリアセチルセルロースフィルムを溶解または膨潤させない溶媒のいずれかと兼ねることもできる。
トリアセチルセルロースフィルムを溶解または膨潤させる溶媒としては、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、ハイドロフルオロエーテル、テトラヒドロフラン、オキセタンおよびフェネトールなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびエチルシクロヘキサノンなどの一部のケトン類、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトンなどのエステル類、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ類が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。このうちエーテル類は、パーフルオロアルキル基を有する化合物からなる添加剤を溶解する作用を有していてもよい。
トリアセチルセルロースフィルムを溶解または膨潤させない溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトンなどの一部のケトン類などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
レンズ保護層形成用塗布液を塗布してレンズ保護層の塗膜を形成する際に、ハジキやムラといった塗膜欠陥の発生を防止するために、表面調整剤と呼ばれる添加剤を加えてもよい。表面調整剤は、その働きに応じて、レベリング剤、消泡剤、界面張力調整剤、表面張力調整剤とも呼ばれる。これらはいずれも、形成されるレンズ保護層の塗膜の表面張力を低下させる作用を有する。表面調整剤としては、シリコーン系添加剤、フッ素系添加剤、アクリル系添加剤などが挙げられる。
輸送途中などに擦れることによって、レンズおよびレンズ保護層自体が傷つかないように、レンズ保護層の表面が高いすべり性を有することが好ましい。すべり性を有する化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるようなフッ素樹脂がよく知られている。ただし、このような樹脂は、そのままではTACフィルムへ密着せずTAC表面へのコート剤として使用することができない。
これに対して、PTFEと同様の官能基であるパーフルオロアルキル基を有するいわゆる変性化合物を用いることにより、PTFEと同様のすべり性を有し、レンズ表面を傷つけにくくできることを見出した。パーフルオロアルキル基を有する変性化合物の添加量は、0.1〜3wt%の範囲であることが好ましい。0.1wt%未満であると、すべり性が十分でなく、レンズを傷つけやすい。3%wtを超えると、ミセルを形成しやすくなり、欠陥を発生させてしまう。
レンズ保護層形成用塗布液には、表面調整剤のほかに他の添加剤を加えてもよい。ただし、これらの添加剤は形成されるレンズ保護層のすべり性、透明性、光拡散性などに影響を与えないことが好ましい。機能性添加剤としては、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、防汚剤、撥水剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、硬化剤などが挙げられる。これらの機能性添加剤により、レンズ保護層に帯電防止機能、紫外線吸収機能、赤外線吸収機能、防汚機能、撥水機能といった機能を持たせることができる。
レンズ保護層形成用塗布液を透明基材上に塗布するには、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ダイコーターを用いることができる。特に、ロール・ツー・ロール方式で高速で塗工することが可能なダイコーターを用いることが好ましい。塗布液の固形分濃度は、塗工方法により異なるが、おおよそ30〜70重量%であればよい。
塗布液を透明基材上に塗布することにより得られる塗膜に対し、電離放射線を照射することにより、レンズ保護層が形成される。電離放射線としては、紫外線、電子線を用いることができる。紫外線硬化の場合には、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアークなどの光源を利用できる。電子線硬化の場合には、コックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器から放出される電子線を利用できる。電子線のエネルギーは、50〜1000keVが好ましく、100〜300keVがより好ましい。
硬化によりレンズ保護層を形成する工程の前後に乾燥工程を設けてもよい。また、硬化と乾燥を同時に行ってもよい。乾燥手段としては加熱、送風、熱風などが挙げられる。
図5(a)は、レンズシート1の構成例を示す斜視図である。図5(a)に示すように、レンズシート1の表面に第1レンズアレイ3が形成されている。図5(b)に示すように、レンズシート1の第1レンズアレイ3の単位レンズの頂部には、第2レンズアレイ5が形成されている。第2レンズアレイ5の単位レンズの数は、第1レンズアレイ3の単位レンズの数と同じかそれ以上である。
図5(e)は図5(b)の平面図である。レンズシート1のシリンドリカルレンズの長手方向をX(以下、水平方向という。)、前記水平方向Xと直交する方向をVとする。
第1レンズアレイ3と第2レンズアレイ5は互いにレンズアレイの配列が平行している。
図6は通常のレンチキュラーレンズシートに関する光学シミュレーション(RayTracingシミュレーション)の説明図である。
図6(a)は通常のレンチキュラーレンズシートの一つの単位レンズから正面方向(0度)に出る光線を示す。図6(a)に示されるように、レンズの全面から光線が出ることがわかる。図6(b)は図6(a)と同じレンチキュラーレンズシートの単位レンズの正面方向に対して60度〜90度の方向(斜め方向)に出る光を示す。図6(b)の斜め方向の光はレンズの頂点付近Cからしか出ないことがわかる。すなわち、レンズシートから出る光の輝度分布においてロスになるサイドローブと呼ばれる部分はレンズシートの各単位レンズの頂点付近から出射される光である。
本発明においては、このロスになる光をできるだけ正面方向から出射させるために、第1レンズアレイの単位レンズの頂点に、第2レンズアレイを付与する。
図5(c)および(d)は、それぞれ図5(a)の正面図および側面図を示したものである。図5(c)および(d)に示すように、第1レンズアレイのレンズピッチをP1、単位レンズの高さをH、第2レンズアレイが形成されている領域の幅をW、第2レンズアレイのレンズピッチをP2、単位レンズの高さをhとする。レンズピッチP1は第1レンズアレイ3の一つの単位レンズの高さが最も低くなる谷部(点)同士を直線で結んだときの距離をいう。第1レンズアレイ3の隣り合う各々の単位レンズ同士は接している。これは、単位レンズ同士が離れて谷部が平坦な直線になっていると、そこから出射される光は光の制御がされておらず、光学利得がほぼ0になるためである。このとき、以下の式を満足するようにレンズシート1を設計する。
0.2<W/P1<0.8
図8を参照して上記式について説明する。図8(c)は第1レンズアレイ3に対する第2レンズアレイ5の面積率(W/P1)を変化させたときの正面輝度の値を示したものである。第2レンズアレイ5の面積率が40%近傍で最も正面輝度が高くなることがわかる。
なお、第2レンズアレイ5の面積率が変わると、図8(c)に示す正面輝度だけではなく、他の光学特性、主に輝度分布の垂直・水平の半値角も変化する。図8(d)は第1レンズアレイ3に対する第2レンズアレイ5の面積率(W/P1)を変化させたときの垂直・水平の半値角の値を表したものである。図8(d)より、第2レンズアレイ5の面積率(W/P1)が大きくなると垂直(V)半値角、水平(X)半値角が共に小さくなることがわかる。これは第2レンズアレイ5の面積率(W/P1)が大きくなることで、第1レンズアレイより第2レンズアレイの影響が強く出てくることに起因する。
図8(c)および(d)の結果より、第2段レンズアレイの面積率(W/P1)が40%で最も輝度が高くなり、80%を超えると第2レンズアレイ5の配光特性による影響が強くなる。従って、輝度と垂直・水平の半値角とのバランスを考慮すると、第2レンズアレイ5の面積率(W/P1)は20%以上80%以下が好ましい。
レンズシート1の厚みは、光学特性への影響よりはむしろ製造プロセスまたは要求されるレンズシート1の物理特性などにより決められる。たとえば、紫外線硬化樹脂プロセスにより第1レンズアレイ3および第2レンズアレイ5を作った場合、その支持基材フィルムの基材厚さTは、50μm以下だとシワが出てしまうので、50μm<Tである必要がある。また、使用するバックライトユニットやディスプレイ装置のサイズによりその基材厚みは変化する。たとえば、対角37インチサイズ以上のディスプレイ装置では基材厚さTは50μmから3mmが好ましい。
図7(a)および(b)は、RayTracingシミュレーションにより得られた、本発明に係るレンズシート1および通常のレンチキュラーレンズシートの出射光の輝度分布を比較した結果を示している。
RayTracingシミュレーションの詳細を以下に列挙する。Lambda Research社製TraceProレイトレーシング(光線追跡法)シミュレーションソフトにより計算した。
レンズ入射面は図1のレンズシート1の光入射面であり、拡散板からの出射分布はLambertian(均等拡散)と想定した。
(レンチキュラーレンズ形状)
レンズ形状 球面
ピッチP1 0.15mm
R(曲率) 0.08mm
H 0.05mm
(レンズシート1の形状)
第1レンズアレイ形状 球面
第1レンズアレイピッチ 0.15mm
第1レンズアレイR 0.08mm
第1レンズアレイH 0.04mm
第2レンズアレイ形状 プリズム(プリズム角度70度)
図7(a)は、本発明のレンズシート1と通常のレンチキュラーレンズシートについての垂直方向の輝度分布の比較を示したものである。図7(b)は、本発明のレンズシート1と通常のレンチキュラーレンズシートについての水平方向の輝度分布の比較を示したものである。
図7(a)および(b)より、本発明のレンズシート1は通常のレンチキュラーレンズシートより高い正面輝度が得られることがわかる。その理由は、第1レンズアレイ3において、サイドローブとなる斜めへの出射光が集中する頂点近傍に第2レンズアレイ5が形成されることで、より正面方向へ出射光が制御されるためである。
また図7(c)および(d)は、本発明に係るレンズシート1およびBEFの出射光の輝度分布を比較した結果を示している。本発明のレンズシート1では、BEFと同等な正面輝度が得られ、しかもサイドローブが発生していないことがわかる。
正面輝度の値とサイドローブが発生するかしないかは、第2レンズアレイ5の頂角を変化させることで調整することができる。
図8(a)および(b)は、第2レンズアレイ5の頂角を変えたときの正面輝度と垂直(V)方向および水平(X)方向の半値角を示している。レンズ頂角が90度から小さくなるにつれ、正面輝度が下がり、垂直・水平半値角も小さくなっていることがわかる。しかし、第2レンズアレイ5のレンズ頂角が90度に近づくと第2レンズアレイ5によるサイドローブが発生するため、単純に正面輝度の高いレンズ頂角を選択することはできない。
すなわち、第1レンズアレイ3によるサイドローブを抑制し、第2レンズアレイ5によるサイドローブを抑制しながら、正面輝度を向上させることが重要である。最適なレンズ頂角は、レンズシート1の屈折率によっても変わるため、第2レンズアレイ5のレンズ頂角は70度±30度の範囲が好ましい。
一般にディスプレイは周期的な画素構造をもつものが多い。レンズシート1も図5(e)に示すように周期的な構造を持っている。そのため、それぞれの周期構造同士のモアレ、3つ以上の周期構造で発生する2次モアレなどの高次のモアレが生じ、見た目を損なう欠点が生じる。
そこで、第1レンズアレイ3の配列と第2レンズアレイ5の配列を互いに並行させるよりも、図9(a)および(b)に示すように、第1レンズアレイ3の配列と第2レンズアレイ5の配列を互いにβの角度だけずらすことがモアレを防止するのに有効である。
ここで、βは30度以下に設定することが好ましい。これにより、ディスプレイの周期的な画素構造の横または縦の構造との間で生じるモアレを防止することができる。
またモアレを防ぐ方法として、図5(e)において、第1レンズアレイ3の頂部に形成される幅Wの領域を、水平方向Xと平行ではなく、蛇行させてもよい。
なお、図5(b)では、第1レンズアレイ3をレンチキュラーレンズの形状としたが、これに限らず、同心円状のシリンドリカル形状や放物線状にしてもよい。
また、図5(b)では、第1レンズアレイ3にシリンドリカル形状のもの、第2レンズアレイ5に断面が三角形状となるプリズムアレイを用いているが、これに限定されるわけではなく、第1レンズアレイ3および第2レンズアレイ5に側面が直線または外向き湾曲であるプリズムレンズを用いてもよい。具体的には、ピラミッド状のマイクロプリズム、円弧状のシリンドリカルレンズアレイ、半球状のレンズを並べたマイクロレンズアレイ、またはこれら複数のレンズを組み合わせたものを用いてもよい。
また、第1レンズアレイ3において、各々のレンズの谷部および頂部の端部が丸みを帯びていてもよい。
第1レンズアレイ3および第2レンズアレイ5は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、COP(シクロオレフィンポリマー)などを用いて、当該技術分野ではよく知られている押出成形法、射出成形法、あるいは熱プレス成形法によって形成する。この場合、第1レンズアレイ3と第2レンズアレイ5は、同一の材料から作製してもよいし、それぞれ別の材料から作製してもよい。
第1レンズアレイ3および第2レンズアレイ5を、UVや放射線硬化型の樹脂(UVや放射線で硬化する材料を含む樹脂であれば特に種類は限定されない)を用いて成形してもよい。さらに、第1レンズアレイ3および第2レンズアレイ5のいずれか一方を押出成形法で作製し、もう一方をUV成形で作製してもよく、その組み合わせの別は問わない。
特に第1レンズアレイ3がシリンドリカルレンズである場合、第1レンズアレイ3の単位レンズの凹凸の谷部からの垂線と単位レンズの接線がなす角度αは15°<αであることが好ましい。
その理由は、互いに隣接する第1レンズアレイ3の単位レンズの境界で2つの単位レンズの接線どうしがなす角度2αが30°未満であると、成形後の離型性が低下したり、成形を繰り返すうちに金型先端が曲がって成形品離型ができなくなったり、金型取扱時に金型先端を損傷したりして、金型寿命が短くなることが多いためである。
図10に本発明のレンズシート1の一変形例を示す。このレンズシートは、第2レンズアレイ5の単位レンズのレンズピッチがランダムになっている。このレンズシートは、ディスプレイに組み込んだときに、パネルの横または縦のセル構造とのモアレを低減させるのに有効である。
図11に本発明のレンズシート1の他の変形例を示す。このレンズシートは、第2レンズアレイ5の単位レンズの谷部と頂部の周辺が丸くなっている。レンズアレイの側面はサインカーブなどの波状の形状になっていてもよい。第2レンズアレイ5をこのような形状にすれば、レンズ頂部が傷つきにくいという利点がある。
図12に本発明のレンズシート1の他の変形例を示す。このレンズシートは、第2レンズアレイ5の単位レンズの形状を、第1レンズアレイ3の単位レンズの形状と同じ凸シリンドリカル形状にしたものである。
図13(a)および(b)に本発明のレンズシート1の他の変形例を示す。図13(a)および(b)はそれぞれ、レンズシートの側面図および平面図である。このレンズシートでは、第1レンズアレイのレンズピッチP(P1からP5)がそれぞれ異なり、単位レンズの幅T(T1からT5)もそれぞれ異なる。このレンズシートも、ディスプレイに組み込んだときに、パネルの横または縦のセル構造とのモアレを低減させるのに有効である。
図14(a)および(b)に本発明のレンズシート1の他の変形例を示す。図14(a)および(b)はそれぞれ、レンズシートの側面図および平面図である。このレンズシートでは、第2レンズアレイのレンズ高さhおよび各々のレンズ領域の幅Qは均一(Q1=Q2=Q3=Q4)であるが、第1レンズアレイのレンズピッチ(S1からS4)が異なっている。このため、各々のレンズ領域どうしの間隔が不均一である。このレンズシートも、ディスプレイに組み込んだときに、パネルの横または縦のセル構造とのモアレを低減させるのに有効である。
図15にレンズシート1の製造方法の一例を示す。加熱された熱可塑性の樹脂基材19を、第1レンズアレイ3のレンズ金型である冷却ロール11と冷却ロール15の間を通過させて冷却しながら加圧し、第1レンズアレイ3を樹脂基材19上に成形する。次に、樹脂基材19の温度が完全に下がる前に、第2レンズアレイ5のレンズ金型である冷却ロール13と冷却ロール17の間を通過させて冷却しながら加圧し、第1レンズアレイ3の単位レンズの頂点近傍に第2レンズアレイ3を樹脂基材19上に成形する。このように、2つの金型を使えば、金型の作製が容易になる利点がある。
図15では予め加熱された樹脂基材に冷却ロールで加圧してレンズ形状を成形したが、逆に常温の樹脂基材に第1および第2の加熱ロールで加圧してレンズ形状を成形してもよいし、樹脂基材上に紫外線硬化樹脂など電離線硬化性の樹脂を形成しながら固めてもよい。
図15では2本の金型を用いてレンズシート1を作製する例を示したが、図16に示すように、レンズシート1の雌型を成形した1本のレンズ金型である冷却ロール12とこれに対向する冷却ロール16を用いて、一度にレンズ形状を成形してもよい。この場合、レンズ形状がより正確になるとともに、成形スピードが向上する利点がある。
図15および図16では、シリンダー状の金型を用い連続してレンズ形状を成形する生産性の高い例を示したが、平板状の金型を用い樹脂基材を間欠送りしてレンズを成形してもよい。平板金型を用いる場合、生産スピードは低下するが、金型の製造が容易であり、さらに電鋳工程を用いることで金型の複製が容易になるなどの利点がある。
レンズシート1の背面側に光拡散層25が設けられる。光拡散層25は、入射した光を散乱させながら透過させる作用を有する。光拡散層25は、透明樹脂とこの透明樹脂の中に分散された透明粒子とを含み、透明樹脂の屈折率と透明粒子の屈折率は異なっている。透明樹脂の屈折率と透明粒子の屈折率の差は0.02以上であることが好ましい。屈折率の差がこれより小さいと十分な光散乱性能が得られない。屈折率の差は0.5以下であることが好ましい。レンズ保護層332に含まれる透明粒子の平均粒径は0.5〜10.0μmであることが好ましく、1.0〜5.0μmであることがより好ましい。光拡散層25は透明樹脂中に空気を含む微細な空洞を有していてもよく、透明樹脂と空気の屈折率差で拡散性能を得るようにしてもよい。
透明樹脂としては、たとえば、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シコーン系アクリル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、PET、ポリプロピレンなどを用いることができる。
ここで、ポリカーボネート、ポリスチレン、メチルスチレン樹脂およびシクロオレフィンポリマーの線膨張係数は、それぞれ6.7×10-5(cm/cm/℃)、7×10-5(cm/cm/℃)、7×10-5(cm/cm/℃)および6〜7×10-5(cm/cm/℃)である。一方、レンズシート1がたとえばPETを含む場合、PETの線膨張係数は2.7×10-5(cm/cm/℃)である。この場合、レンズシート1よりも光拡散層25の線膨張係数の方が大きい。従って、レンズシート1が熱を受けて変形する場合には、光拡散層25側に反りが発生する。本発明の実施形態では、レンズシート1の線膨張係数が小さいことを考慮し、光拡散層25の線膨張係数を7.0×10-5(cm/cm/℃)以下とすることにより上述の変形を防止することが可能である。
なお、ポリカーボネートを用いて押出法でレンズシート1を作製する場合、レンズシート1の線膨張係数が光拡散層25に用いられる透明樹脂のそれとほぼ同等であるためそりは発生しない。
透明粒子としては、無機酸化物からなる透明粒子または樹脂からなる透明粒子が使用できる。たとえば、無機酸化物からなる透明粒子としてはシリカやアルミナなどからなる粒子を挙げることができる。また、樹脂からなる透明粒子としては、アクリル粒子、スチレン粒子、スチレンアクリル粒子およびその架橋体、メラミン−ホルマリン縮合物の粒子、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシ樹脂)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PVDF(ポリフルオロビニリデン)、およびETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)などの含フッ素ポリマー粒子、シリコーン樹脂粒子などが挙げられる。これら透明粒子は、2種類以上を混合して使用してもよい。
透明樹脂中に透明粒子を分散させて押出成形することにより、板状の光拡散層25を製造することができる。その厚みは1〜5mmであることが好ましい。厚みが1mm未満の場合、光拡散層25の腰がなくなってたわむという欠点がある。厚みが5mmを越えると、光源41からの光の透過率が悪くなるという欠点がある。
光拡散層25の表面に微細な凹凸を形成して、光の拡散性を得るようにしてもよい。この場合、光拡散層25を、当該分野でよく知られた押出法、キャスト法、または押出法とキャスト法を併用した方法で作製することにより、微細な凹凸を形成することができる。
図17(a)〜(d)に、微細な凹凸を有する光拡散層25の具体例を示す。図17(a)は、光拡散層25の一方の面に微細な凹凸を形成したものである。図17(b)および(c)は光拡散層25の両面に微細な凹凸をつけたものである。微細な凹凸の種類としては、凸状シリンドリカル形状のもの、レンズ形状のもの、三角プリズム形状が挙げられるが、これらに限らない。微細な凹凸を付与する前に比較して、光拡散層25の光拡散機能を向上できる凹凸形状であればよい。光拡散層25の表面に微細な凹凸を形成すると、光拡散機能が得られるだけでなく、光拡散層25の光出射面とレンズシート1の光入射面を接合する際に光拡散層25の光出射面に形成された微細な凹凸により空隙200を確保するのに有利になる。
図17(d)は、光拡散層25の両面に微粒子層23を付けたものである。この微粒子層23は片面のみに付けてもよい。微粒子層23は、たとえばビーズ、スペーサーなどを含有する透明インキを用いて形成される。微粒子層23の厚さ、微粒子の種類、大きさは限定されず、微粒子層23を付与する前と比較して光拡散層25の光拡散機能が向上するものであればよい。
上述のように透明樹脂中に空気を含む微細な空洞を有する光拡散層25を作製する場合、予め透明樹脂中に含有された発泡剤を発泡させて作製してもよいし、透明樹脂と相溶しない樹脂を含有させ、少なくとも一軸方向に延伸する方法で作製してもよい。
光拡散層25とレンズシート1との間に、間隙を保持しながら両者を固定する固定要素37を設けてもよい。固定要素37としては、光拡散層25によって散乱された光を透過する複数のリブ、粘接着剤層、または光拡散層25によって散乱された光を光拡散層25側に反射する複数の反射表面を有するかもしくは反射材を含むリブ、反射材を含む粘接着剤層が挙げられる。固定要素37はこれらの手法によって形成されるものに限定されず、溶着法、固定具を用いる方法、エキシマUVを照射して常温接合する方法によって形成してもよい。固定要素37はレンズシート1の入射面(したがって光拡散層25の出射面)の全てを覆うことはない。
固定要素37を設けることにより光拡散層25とレンズシート1との間に間隙200を確保し、光拡散層25によって散乱した光を、空隙200を通してレンズシート1に導くことが可能となる。空隙200は、たとえば空気や窒素などの気体からなる。
固定要素37に粘接着剤層を用いる場合について説明する。粘接着剤層を付ける位置は、光拡散層25とレンズシート1の表示領域外(ディスプレイ装置にレンズシート1が組み込まれた場合に画像表示に使用される以外の領域をいう)の少なくとも一部であることが好ましい。ただし、場合によっては、固定要素37がディスプレイから視認されるなどの現象がなく、ディスプレイの画像表示品位に影響がなければ、粘接着剤層を表示領域内に付けてもよい。
図18(a)〜(e)に、粘接着剤層を付ける位置の例を示す。図18(a)は、光拡散層25の周辺全体に粘接着剤層29を塗る場合を示している。図18(b)および(c)は、それぞれ、光拡散層25の対向する一組の辺に沿ってのみ粘接着剤層29を塗る場合を示している。図18(d)は、光拡散層25の4隅に粘接着剤層29を塗る場合を示している。図18(e)は、光拡散層25の周辺全体に、点状に粘接着剤層29を塗る場合を示している。なお、図18(b)および(c)の場合にも、必要に応じて、粘接着剤層29を点状に塗工してもよい。
後述するようにリブや白箔に粘接着剤を使用する場合、粘接着剤層はリブや光反射部のみに形成してもよいし、光拡散層25の全面に形成してもよい。
粘接着剤としては、たとえば、アクリル系、ウレタン系、ゴム系、シリコーン系のものが挙げられる。これらの粘接着剤は高温になるバックライトユニット内で使用されるため、100℃での貯蔵弾性率G’が1.0E+04Pa以上であることが好ましい。貯蔵弾性率G’の値がこれより低いと、使用中に光拡散層25とレンズシート1がずれるおそれがある。間隙200を安定に確保するために、粘接着剤層中に透明の微粒子、たとえばビーズなどを混ぜてもよい。粘接着剤は両面テープ状のものでもよいし、単層のものでもよい。
表示領域内に粘接着剤を使用する場合、粘接着剤による光吸収を1%以内にすることが好ましい。光吸収が1%を超えるとレンズシート1から出射する積算光量が減少し、レンズシート1の形状によらず正面輝度が低下する。
粘接着剤層を塗る方法として、コンマコーターなどの各種塗工装置、印刷方式、ディスペンサーやスプレーを用いる方法、または筆などを用いた手作業による塗工が挙げられる。
固定要素37として、リブを用いることもできる。リブを用いると、一定の厚みの間隙200をきわめて安定に形成でき、均一な固定が可能になるので表示品位(光学密着、ムラ、ニュートンリング)などの外観特性を向上することができる。
リブは一定の形状に成形された透明樹脂から構成される。透明樹脂中に、無機または有機粒子や気泡などを含有させて、拡散や着色など他の効果を併せ持たせてもよい。
リブ材料の透明樹脂としては、たとえばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネ−ト樹脂、ポリスチレン樹脂、メチルスチレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、シクロオレフィンポリマーなどの熱可塑性樹脂、あるいはポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートなどのオリゴマーまたはアクリレート系などからなる放射線硬化性樹脂などの透明樹脂が一般的に用いられるが、上記の材料以外にもリブの特性を出せる樹脂を使用することができる。
透明樹脂中に分散させる粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック、ガラスビーズなどの無機物や各種樹脂ビーズなどの有機物を使用することができる。透明リブに分散させる各種粒子を局所的に配置して、たとえばリブ表面に反射特性を持たせるようにすることもできる。樹脂中に気泡などを分散させて粒子の代わりに用いることもできる。透明樹脂中に分散させる粒子や気泡は、使用する用途に応じて複数種を組み合わせて使用することもできるし、あえて使用しなくてもよい。
レンズシート1と光拡散層25間の空隙200の厚さは、レンズシート1の歪みによる光学密着を防ぐために200nm以上に保つことが好ましい。一方、間隙200の厚さが2mmを超えると、リブの視認性が上がり、ムラの原因になり、またサイドから光漏れが起こりやすくなるため好ましくない。上記の空隙200の厚さを確保するように、リブの高さを設定する。
接着強度の低下や正面輝度の低下を防ぐために、光拡散層25の出射面またはレンズシートの入射面と接するリブの総接地面積を、光拡散層25の出射面またはレンズシートの入射面の面積に対して0.01以上60%以下にすることが好ましく、輝度低下を最小限に抑えるためには1%以上20%以下にすることがより好ましい。
ここで、リブを用いる場合、図18(a)〜(e)に示した粘接着剤層の場合のように、設置位置を表示領域外に限定する必要はなく、レンズシート1の入射面または光拡散層25の出射面の全面に設置することもできる。
リブの形状は、一方向に延在したレンチキュラー形状、台形形状、プリズム形状などの構造、多角台錐、円錐、多角台錐台、円錐台などの錐状、多角柱や円柱などの柱状、直方体、球状または半球状、楕円体などの構造が挙げられる。リブの作製方法によっては、リブの高さが一定であれば、側面の形状は不特定の形状であってもよい。これらのリブによって所定の空隙を確保する場合、1種類のリブ構造を全体に使用してもよいし、複数種類のリブ構造を組み合わせて使用してもよい。リブの配列はストライプ状や点線などの周期的なものでもランダムでもよく、設計に応じて適宜選択される。
1つのリブ(場合によっては一群のリブ)の光拡散層25の出射面への接地サイズは、レンズシート1の上面からのリブむらの視認性を低下させるように設定する。一方向に延在したレンチキュラー形状、台形状、プリズム形状などの構造ではレンズシート1に接合した部分の線幅を50μm以下にすることが好ましい。多角台錐、円錐、多角台錐台、円錐台などの錐状、多角柱や円柱などの柱状、直方体、球状または半球状、楕円体などの構造の接地部分の面積は2500μm2以下にすることが好ましい。さらに視認性を向上させるために前記線幅を3μm以下、前記面積を900μm2以下にすることがより好ましい。
リブの硬さに関しては、バックライト使用中の高温化でもレンズシート1と光拡散層25との間の反りを最小限に抑えることができるように、適度な柔軟性を有することが好ましい。リブの高さに関しては、全体的に均一にリブが配置されていることが好ましいが、レンズシート1の基材の剛性や、熱、吸水などによる伸縮に合わせて、適度な高さの変動を有していてもよい。
上述した透明樹脂や粒子などを利用して、リブ単体を作製するか、またはレンズシート1の裏面、光拡散層25の表面に一度に放射線硬化成形、押出成形、熱プレス成形など種々の方法を用いてリブ形状を作製することができる。貼り合わせを行う場合、リブの片面または両面に粘着剤や接着剤を使用してレンズシート1と光拡散層25の間に一定の空隙が形成されるように一体化することができる。他のリブ成形方法として、予め粘着剤または接着剤にリブを分散させ各種印刷法で塗工する方法が挙げられる。この方法では、粘着または接着性を有するリブを一度に作製でき、さらに散在させることができるため、所定の空隙を形成するように一体化することができる。このようにリブを用いて一体化することにより、従来の構成では不可欠であった挟持されている状態のフィルムがなくなり、全ての部材を保持された状態にすることができ、輸送中などにおけるレンズシートの剥がれを防止することができる。
固定要素37として、複数の反射表面を有するリブ、または反射材を含有する粘接着剤層を用いる場合について説明する。反射材を含有する粘接着剤層は、上述した粘接着剤に金属粒子または高屈折率透明粒子を分散させたものを光拡散層25に塗工することにより形成することができる。反射表面を有するリブは、リブを構成する透明樹脂に金属粒子または高屈折率透明粒子を練り混ぜて作製することができる。リブの表面に、光反射性の高い銀、アルミウム、ニッケルなどの金属を、蒸着やスパッタなどの乾式成膜することによっても作製できる。透明なリブの表面に、高屈折率透明粒子を分散混合してなるインキまたは高屈折率透明粒子を分散混合してなる粘接着剤層を塗布することによっても作製できる。なお、上記以外に反射性を有する固定要素37の作製方法として、金属粒子または高屈折率透明粒子をバインダーに練りこんだものを転写する方法、または白箔や金属箔をラミネートによって形成する方法が挙げられる。
高屈折率透明粒子としては、たとえば酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、クレー、水酸化アルミニウム、硫化亜鉛、シリカおよびシリコーンなどが挙げられる。金属粒子または金属箔としては、たとえばアルミニウムや銀が挙げられる。これらの高屈折率透明粒子、金属粒子または金属箔は、1種類を使用してもよいし、複数種類を混合して使用してもよい。
光反射機能を有する固定要素37による光吸収は1%以内であることが好ましい。光吸収が1%を超えると光学シート39から出射する積算光量が減少し、レンズシート1の形状によらず軸上輝度が低下する。
光反射機能を有する固定要素37の場合、反射率は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。反射率が70%より低い場合、透過光が増えすぎるため、輝度の低い視野で明部として視認される場合がある。反射率が80%以上であれば、輝度の低い視野でも視認されない。光反射機能を有する固定要素37の配置は、光反射機能がないリブの場合と同じである。
固定要素37を溶着によって形成する場合、たとえば熱、超音波、レーザーを使用する方法が挙げられる。これらの方法は加工法が容易であり、表示領域外の接合に適している。固定要素37として固定具を用いる場合、たとえば樹脂や金属の止め具、ホチキス、テープなどが挙げられる。樹脂や金属の止め具はバックライトの筺体と一体化されていてもよい。これらの方法は溶着よりもさらに加工法が容易であり、表示領域外の接合に適している。
固定要素37としてエキシマUVを照射し常温接合する方法を用いる場合、178nmのエキシマUVを、接合すべき2つの部材の片方または両方に照射した後、2つの部材をラミネートする。ラミネート時に熱をかけてもよいし、ラミネート後に熱をかけてもよい。
本発明に係るレンズシート1は、光源が冷陰極蛍光ランプであるディスプレイ装置に限らず、近年ディスプレイ用光源として注目を浴びているLED、EL、半導体レーザーなどを用いたディスプレイ装置にも用いることができる。
またバックライトユニットはますます薄型化が進んでおり、それに従い光源と光学シートの距離も短くなっているが、本発明のレンズシート1を使用すれば直下型やサイドエッジ型のバックライトユニットにおいても、光源ランプ同士の間に暗い個所を生じるなど視認性の影響はなく十分に使用することができる。
さらにディスプレイ装置もますます大型化の一途をたどっており、それに伴いレンズシート1のサイズも大きくなっていくが、本発明のレンズシート1は薄くて強度が強く、表示品位も優れているため、大型ディスプレイ装置にも十分に使用できる。
図19は、本発明に係るレンズシート1を、EL光源49を用いたディスプレイに適用した例を示している。
図20は、本発明に係るレンズシート1を、LED光源53を用いたディスプレイに適用した例を示している。ディスプレイ装置の光源としてLEDを用いる場合、赤色、緑色、青色のLEDのアレイを使用し、導光板などで赤色、緑色、青色のLEDのアレイからの光を混ぜ合わせ白色光として均一に出射してもよいし、拡散板などを用いた赤色、緑色、青色のLEDのアレイからの光を混ぜ合わせ白色光として均一に出射してもよい。
(実施例1:レンズシートの作製)
ロール・ツー・ロール方式により、以下にようにしてレンズシートを作製した。熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂を約300℃に加熱し、ロールに沿わせ延伸しながら厚さ0.3mmのフィルムを成形した。第1レンズアレイ3の形状が切削されたシリンダー金型を使用し、このシリンダー金型自体の温度を80℃とし、加熱されたフィルムを加圧しながら冷却した。第1レンズアレイ3の形状が成形されたフィルムが完全に硬化する前に、第2レンズアレイ5の形状が切削されたシリンダー金型(水冷式)を使用し、このシリンダー金型の温度を10℃に設定し、フィルムを加圧しながら冷却し、フィルムの粘性を低下させ完全に硬化させた。こうして作製されたレンズシート1は、第1レンズアレイがレンズピッチ140μmのレンチキュラーレンズ群であり、単位レンチキュラーレンズの長手方向に沿って配置されている第2レンズアレイ5がレンズピッチ20μmの三角プリズム形状を有する。
第1レンズアレイ3と第2レンズアレイ5のレンズ形状を有する金型ロールを使用することにより、フィルム送り速度1m/minでロール・ツー・ロール方式による押出成形で1度にレンズシート1を作製することができた。
作製されたレンズシート1をイージーコントラスト(視野角測定装置)で測定したところ、図7に示したのとほぼ同じ形状の視野角を得ることができた。
(実施例2:レンズシートの作製)
熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂を約300℃に加熱し、ロールに沿わせ延伸しながら厚さ0.3mmのフィルムを成形した。レンズシート1の形状が切削されたシリンダー金型(水冷式)を使用し、このシリンダー金型の温度を80℃に設定し、加熱されたフィルムを加圧しながら冷却し、フィルムの粘性を低下させ、レンズシート1の形状を維持した状態で硬化させた。こうして作製されたレンズシート1は、第1レンズアレイがレンズピッチ140μmのレンチキュラーレンズ群であり、単位レンチキュラーレンズの長手方向に沿って配置されている第2レンズアレイ5がレンズピッチ20μmの三角プリズム形状を有する。
レンズシートの形状を有する1つの金型ロールを使用することにより、フィルム送り速度1.5m/minでロール・ツー・ロール方式による押出成形で1度にレンズシート1を作製することができた。作製されたレンズシート1は、実施例1のレンズシートとほぼ同一であった。
作製されたレンズシート1をイージーコントラスト(視野角測定装置)で測定したところ、図7に示したのとほぼ同じ形状の視野角を得ることができた。
実施例1の方法は、2つの冷却ロールの一つをレンズ形状が異なるものに代えることで容易にレンズシート1の形状を変形できるという利点がある。これに対して、実施例2の方法は、実施例1のように2つの冷却ロールの冷却温度の設定や加圧条件の最適化をする手間が少ないので簡便であるという利点がある。
(実施例3:レンズシートの作製)
光学用2軸延伸易接着PETフィルム(膜厚125μm)上に、レンズシート1のパターンを形成させるウレタンアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂(日本化薬社製ウレタンアクリレート樹脂、屈折率1.51)を塗布した。レンズシート1の形状に切削したシリンダー金型を使用して紫外線硬化型樹脂が塗布されたフィルムを搬送しながらUV光をPETフィルム側から露光することにより、紫外線硬化型樹脂を硬化させた。硬化後、PETフィルムから金型を離型することにより、レンズシート1を作製した。こうして作製されたレンズシート1は、第1レンズアレイがレンズピッチ140μmのレンチキュラーレンズ群であり、単位レンチキュラーレンズの長手方向に沿って配置されている第2レンズアレイ5がレンズピッチ20μmの三角プリズム形状を有する。
作製されたレンズシート1をイージーコントラスト(視野角測定装置)で測定したところ、図7に示したのとほぼ同じ形状の視野角を得ることができた。
(実施例4:レンズシートの作製)
熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂を約300℃に加熱し、ロールに沿わせ延伸しながら厚さ0.3mmのフィルムを成形した。第1レンズアレイ3の形状が切削されたシリンダー金型を使用し、このシリンダー金型自体を常温の25℃とし、加熱されたフィルムを加圧しながら冷却した。第1レンズアレイ3の形状が成形されたフィルムが完全に硬化する前に、第2レンズアレイ5の形状が切削されたシリンダー金型(水冷式)を使用し、このシリンダー金型の温度を80℃に設定し、フィルムを加圧しながら冷却し、フィルムの粘性を低下させ完全に硬化させた。この方法において、図9(b)に示す第2レンズアレイ5の傾き角βがそれぞれ10°と40°である2種類のシリンダー金型を用い、2種類のレンズシート1を作製した。
こうして作製されたレンズシート1は、第1レンズアレイがレンズピッチ140μmのレンチキュラーレンズ群であり、第2レンズアレイ5がレンズピッチ20μmの三角プリズム形状(βが10°)を有するものと、第1レンズアレイがレンズピッチ140μmのレンチキュラーレンズ群であり、第2レンズアレイ5がレンズピッチ20μmの三角プリズム形状(βが40°)を有するものであった。
これらの2種類のレンズシート1を、300μm〜600μmの様々なセルピッチの液晶パネルに組み込み、パネルから10cm離れたところでモアレが視認できるか目視確認を行った。その結果、βが10°であるレンズシート1ではモアレが発生しなかったが、βが40°であるレンズシート1ではモアレが発生した。
(実施例5:レンズシートの評価)
実施例2の方法により、下記の(1)〜(4)の4種のレンズシートを作製した。
(1)第1レンズアレイ:レンズピッチP1=100μm、W=10μmのレンチキュラーレンズ群;第2レンズアレイ:レンズピッチ=20μm、頂角=70度の三角プリズム形状、
(2)第1レンズアレイ:レンズピッチP1=100μm、W=50μmのレンチキュラーレンズ群;第2レンズアレイ:レンズピッチ=20μm、頂角=70度の三角プリズム形状、
(3)第1レンズアレイ:レンズピッチP1=100μm、W=80μmのレンチキュラーレンズ群;第2レンズアレイ:レンズピッチ=20μm、頂角=70度の三角プリズム形状、
(4)第1レンズアレイ:レンズピッチP1=100μm、W=50μmのレンチキュラーレンズ群;第2レンズアレイ:レンズピッチ=20μm、頂角=30度の三角プリズム形状。
(1)〜(4)のレンズシート1をイージーコントラスト(視野角測定装置)で測定した。(2)のレンズシート1では、図7に示したのとほぼ同じ形状の視野角を得ることができた。しかし、(1)のレンズシート1では、サイドローブが発生した。(3)および(4)のレンズシート1では、正面輝度が低下し、いずれの場合もディスプレイ装置に使用することは困難であった。
(実施例6:リブの作製方法)
2軸延伸易接着PETフィルム(膜厚125μm)上に、リブ形状を形成させるウレタンアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂(日本化薬社製ウレタンアクリレート樹脂、屈折率1.51)を塗布し、リブ形状に切削したシリンダー金型を使用し、フィルムを搬送しながらUV光をPETフィルム側から露光することにより、紫外線硬化型樹脂が硬化した。硬化後、PETフィルムから金型を離型することにより、幅が60μm、高さが100μmのリブを作製した。
(実施例7:リブの作製方法)
反射材料である酸化チタン(デュポン社製)を重量比で20%分散させたポリカーボネート樹脂を加熱し、ロールに沿わせ延伸しながらフィルムを成形した後に、リブ形状に切削したシリンダー金型を使用し、加熱されたフィルムを加圧しながら冷却することで熱可塑性樹脂の粘性を低下させ、リブ形状を維持した状態で硬化させた。硬化後、ポリカーボネートフィルムから金型を離型することにより、幅60μm、高さ100μmの反射性を有するリブを作製した。
(実施例8:リブの作製方法)
2軸延伸易接着PETフィルム(膜厚125μm)上に、リブ形状を形成させるため、反射材料である酸化チタン(デュポン社製)を重量比で20%分散させたウレタンアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂(日本化薬社製ウレタンアクリレート樹脂、屈折率1.51)を塗布し、リブ形状に切削したシリンダー金型を使用してフィルムを搬送しながらUV光をPETフィルム側から露光することにより、紫外線硬化型樹脂を硬化させた。硬化後、PETフィルムから金型を離型することにより、リブ幅60μm、高さ100μm、ピッチ間隔600μmの反射性を有するリブを作製した。
(実施例9:リブの作製方法)
実施例6で作製した透明リブ上に光反射機能を有する転写箔(クルツ社製)を加圧、加熱しながら転写することで透明リブ上に反射表面を有するリブ形状を作製した。
(実施例10:レンズシート・バックライトユニット・液晶表示装置の作製方法)
700mm×900mmの拡散板(帝人化成ポリカーボネート65HLW)の端部5mmに、ロールコーターで主成分がアクリル系樹脂の接着剤を塗布(塗布量5g/m2)し、レンズシートをラミネーターでラミネートし、80℃、50%の乾燥炉に30分置き接着剤を硬化させて作製した。
作製されたレンズシートを80℃に24時間置いた。この条件はバックライト点灯時の温度を想定している。その結果、拡散板とレンズシートは剥がれず、接着剤からも気泡が発生しなかった。
輸送による振動の影響を試験するために、作製されたレンズシートと冷陰極ランプが入ったランプハウスを筐体に組み込みバックライトユニットを作製し、更にバックライトユニットの上に液晶パネルを設置し、バックライトユニットと液晶パネルの周辺を止め具で固定し筐体に入れて液晶表示装置を作製した。作製された液晶表示装置を、振動数5から50Hz、加速度1.0Gとして、Z方向に70分、X方向に20分、Y方向に20分振動させて試験した。その結果、レンズシートに剥がれは発生しなかった。
(実施例11:レンズシート・バックライトユニット・液晶表示装置の作製方法)
拡散板(帝人化成ポリカーボネート65HLW)の端面5mmの範囲内に両面テープ(3M製)を貼り、レンズシートをラミネートした。
作製されたレンズシートを80℃に24時間置いた。この条件はバックライト点灯時の温度を想定している。その結果、拡散板とレンズシートは剥がれなかった。
輸送による振動の影響を試験するために、作製されたレンズシートと冷陰極ランプが入ったランプハウスを筐体に組み込みバックライトユニットを作製し、更にバックライトユニットの上に液晶パネルを設置しバックライトユニットと液晶パネルの周辺を止め具で固定し筐体に入れて液晶表示装置を作製した。作製された液晶表示装置を、振動数5から50Hz、加速度1.0Gとして、Z方向に70分、X方向に20分、Y方向に20分振動させて試験した。その結果、レンズシートに剥がれは発生しなかった。
(実施例12:レンズシートの作製方法)
PETからなるレンズシートと、ポリカーボネート樹脂を押出して作製されたレンズシートを用意した。
各々のレンズシートに予め5g/m2で塗工した粘着剤シートをラミネートした後、レンズシートと拡散板(帝人化成メチルスチレン樹脂、線膨張係数7.0×10-5cm/cm/℃)をラミネートした。その後、常温から80℃の環境に投入し、温度変化によるレンズシートの反りを確認した。反りは、平らな台にレンズ側を上にしてレンズシートを置き、台からの4隅の距離を測定することによって評価した。初期はいずれも反りが0mmだった。80℃投入直後から、PETからなるレンズシートは拡散板側に凸になった反りが発生した。4隅の反り量は10から15mmであった。一方、ポリカーボネート樹脂を押し出して作製されたレンズシートは反りが0mmのままであった。
上記試験はバックライト点灯時に高温になる状況を再現したものであるが、いずれのサンプルもレンズシート側が凸になることはなく、液晶パネルに組み込んでも点灯時にパネルを押して表示画像に異常をきたすことはないと考えられる。
(実施例13:レンズシートの作製方法)
上記の2種類のレンズシートを用い、拡散板として線膨張係数7.2×10-5cm/cm/℃のものを使用して実施例12と同様の実験を行った。
その結果、PETからなるレンズシートは拡散板側に凸になった反りが発生した。4隅の反り量は18から40mmであった。一方、ポリカーボネート樹脂を押し出して作製されたレンズシートは反りが約5mmのままであった。
次に、輸送による振動の影響を試験するために、作製されたレンズシートを液晶表示装置に組み込み、振動数5から50Hz、加速度1.0Gとして、Z方向に70分、X方向に20分、Y方向に20分振動させて試験した。その結果、PETからなるレンズシートでは、端部に剥がれが発生した。
(実施例14:レンズシート・バックライトユニット・液晶表示装置の作製方法)
市販のUV硬化性接着剤に粒子径15μmのポリスチレンフィラーを20%添加し、ロールコーターで拡散板(帝人化成ポリカーボネート65HLW)上に厚さ30μmになるように塗布した。タックが残っている状態まで一度UVで硬化させた。その後、レンズシートをラミネートし、再度UVを照射し完全に接着剤を硬化させて作製した。
作製されたレンズシートを80℃に24時間置いた。この条件はバックライト点灯時の温度を想定している。その結果、拡散板とレンズシートは剥がれず、接着剤からも気泡は発生しなかった。
輸送による振動の影響を試験するために、作製されたレンズシートと冷陰極ランプが入ったランプハウスを筐体に組み込みバックライトユニットを作製し、更にバックライトユニットの上に液晶パネルを設置しバックライトユニットと液晶パネルの周辺を止め具で固定し筐体に入れて液晶表示装置を作製した。作製された液晶表示装置を、振動数5から50Hz、加速度1.0Gとして、Z方向に70分、X方向に20分、Y方向に20分振動させて試験した。その結果、レンズシートに剥がれは発生しなかった。
(実施例15:レンズシート・バックライトユニット・液晶表示装置の作製方法)
ポリカーボネート樹脂を押出して作製されたレンズシートを、172nmのエキシマUV(岩崎電気)を30秒照射した後、表面にレンズピッチ140μm、レンズ高さ60μmのレンチキュラーレンズが形成された厚さ1mmのポリカーボネートの拡散板と、80℃のラミロールでラミネートした。
作製されたレンズシートを80℃に24時間置いた。この条件はバックライト点灯時の温度を想定している。その結果、拡散板とレンズシートは剥がれなかった。
輸送による振動の影響を試験するために、作製されたレンズシートと冷陰極ランプが入ったランプハウスを筐体に組み込みバックライトユニットを作製し、更にバックライトユニットの上に液晶パネルを設置しバックライトユニットと液晶パネルの周辺を止め具で固定し筐体に入れて液晶表示装置を作製した。作製された液晶表示装置を、振動数を5から50Hz、加速度1.0Gとして、Z方向に70分、X方向に20分、Y方向に20分振動させて試験した。その結果、レンズシートに剥がれは発生しなかった。
(実施例16:レンズシート・バックライトユニット・液晶表示装置の作製方法)
予め大きいサイズ(1000mm×1000mm)で作製したレンズシートと拡散板を重ね、間に浮きがないように軽く除電ブラシで押さえ、炭酸ガスレーザー断裁機で500mm×500mmのサイズにレーザー断裁した。レーザー照射により切断された端部5mm程度はレンズシートの色が多少黄色く変色した。
予めレンズシートと拡散板の表面に保護フィルムとして25μmの易接着PETフィルムをラミネートしておき、同様にレーザー断裁を行い、保護フィルムを剥がしたところレンズシートと拡散板に変色はなかった。
作製されたレンズシートを80℃に24時間置いた。この条件はバックライト点灯時の温度を想定している。その結果拡散板とレンズシートは剥がれなかった。
輸送による振動の影響を試験するために、作製されたレンズシートと冷陰極ランプが入ったランプハウスを筐体に組み込みバックライトユニットを作製し、更にバックライトユニットの上に液晶パネルを設置しバックライトユニットと液晶パネルの周辺を止め具で固定し筐体に入れて液晶表示装置を作製した。作製された液晶表示装置を、振動数5から50Hz、加速度1.0Gとして、Z方向に70分、X方向に20分、Y方向に20分振動させて試験した。その結果、レンズシートに剥がれは発生しなかった。
(実施例17:レンズシート・バックライトユニット・液晶表示装置の作製方法)
予めレンズシートと拡散板に穴を開けておき、金属の針金でレンズシートと拡散板を固定した。
輸送による振動の影響を試験するために、作製されたレンズシートと冷陰極ランプが入ったランプハウスを筐体に組み込みバックライトユニットを作製し、更にバックライトユニットの上に液晶パネルを設置しバックライトユニットと液晶パネルの周辺を止め具で固定し筐体に入れて液晶表示装置を作製した。作製された液晶表示装置を振動数5から50Hz、加速度1.0Gとし、Z方向に70分、X方向に20分、Y方向に20分振動させて試験した。その結果、レンズシートに剥がれは発生しなかった。
(実施例18)
レンズシートとして、第1レンズアレイがレンズピッチP1=100μm、W=50μmのレンチキュラーレンズ群、第2レンズアレイがレンズピッチ=20μm、頂角70度の三角プリズム形状を有するものを用意した。モアレを低減させるために、第2レンズアレイをレンズシートの軸に対して5度の角度を付けた。
レンズ保護フィルムを以下のようにして作製した。バインダーとしてペンタエリスリトールトリアクリレートとダイセル・サイテック製ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を60対40の比率で混合したものを用いた。バインダー100重量部に対して、開始剤としてチバスペシャリティケミカルズ製のイルガキュア184を5重量部混合し、さらにアクリルスチレン重合体(屈折率:1.58)を12重量部分散させ、酢酸エチル、ハイドロフルオロエーテル、トルエンを20:10:70の比率で混合した溶剤で希釈し、ダイキン工業製フッ素樹脂添加剤オプツールを1%wt添加した。この塗布液を、富士フイルム製80μmTACフィルム フジタック上に、硬化後の膜厚が10μmとなるように塗布し乾燥した。
作製されたレンズ保護層フィルムを、三菱電機製52インチ液晶テレビLCD−52MZW75のパネルの背面に貼り合せ、レンズシートをバックライトユニットに配置し、輝度およびモアレについて評価した。レンズ保護フィルムを貼り合せたことにより、設置前に比べてモアレが有意に低下し、輝度は2%程度の低下が見られたが問題のないレベルであった。
(比較例1)
以下のようにしてレンズ保護フィルムの作製を試みた。バインダーとしてペンタエリスリトールトリアクリレートとダイセル・サイテック製DPHAを60対40の比率で混合したものを用いた。バインダー100重量部に対して、開始剤としてチバスペシャリティケミカルズ製のイルガキュア184を5重量部混合し、さらにアクリルスチレン重合体(屈折率:1.58)を12重量部分散させ、酢酸エチル、トルエンを30:70の比率で混合した溶剤で希釈し、ダイキン工業製フッ素樹脂添加剤オプツールを1%wt添加した。しかし、オプツールが溶解せずに相分離した。
(比較例2)
レンズ保護フィルムを以下のようにして作製した。バインダーとしてペンタエリスリトールトリアクリレートとダイセル・サイテック製DPHAを60対40の比率で混合したものを用いた。バインダー100重量部に対して、開始剤としてチバスペシャリティケミカルズ製のイルガキュア184を5重量部混合し、さらにアクリルスチレン重合体(屈折率:1.58)を12重量部分散させ、酢酸エチル、トルエンを30:70の比率で混合した溶剤で希釈し、ビックケミー製シリコーン添加剤BYK−333を0.3%wt添加した。この塗布液を、富士フイルム製80μmTACフィルム フジタック上に、硬化後の膜厚が10μmとなるように塗布し乾燥した。
実施例18と同様に、作製されたレンズ保護層フィルムを、三菱電機製52インチ液晶テレビLCD−52MZW75のパネルの背面に貼り合せ、レンズシートをバックライトユニットに配置した。しかし、このレンズ保護層フィルムでは、十分なすべり性が得られず、レンズへの応力が集中した部分でレンズにスリ傷ができた。
(実施例101〜103および比較例101〜129)
代表例として実施例101について説明する。レンズ保護フィルムを以下のようにして作製した。バインダーとしてペンタエリスリトールトリアクリレートとダイセル・サイテック製ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を60対40の比率で混合したものを用いた。バインダー100重量部に対して、開始剤としてチバスペシャリティケミカルズ製のイルガキュア184を5重量部混合し、さらにアクリルスチレン重合体(屈折率:1.58)を12重量部分散させ、ハイドロフルオロエーテル:酢酸エチル:トルエンを10:30:60の比率で混合した溶剤で希釈し、ダイキン工業製フッ素樹脂添加剤オプツールを1%wt添加した。このときオプツールが溶解した。この塗布液を、80μmのTACフィルム(富士フイルム製フジタック)上に塗布し、溶剤を乾燥させた後、紫外線により硬化し、10μmのレンズ保護層を有するレンズ保護フィルムを得た。
このレンズ保護フィルムを下側偏光板の下側に配置し、キズの発生を確認したところ、レンズ保護層にもレンズにもキズは認められなかった。
アクリル樹脂および/または添加剤を変えた以外は実施例101と同様にしてレンズ保護フィルムを作製し、実施例101と同様にしてレンズ保護層およびレンズへのキズの発生を調べた。これらの結果を表1に示す。
1…レンズシート、3…第1レンズアレイ、5…第2レンズアレイ、11、12、13、15、16、17…冷却ロール、19…樹脂基材、25…光拡散層、29…粘着剤層、31…偏光板、32…液晶パネル、33…レンズ保護フィルム付き偏光板、330…レンズ保護フィルム、331…透明基材、332…レンズ保護層、33B…バインダマトリックス、33P…粒子、37…固定要素、39…光学シート、41…光源、45…光反射板、49…EL光源、53…LED光源、200…空隙。