以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
無線通信端末は、複数配設された基地局と広帯域の無線通信システムを構築し、この無線通信システムを通じて他の無線通信端末や通信網上のサーバと通信を遂行する。WiMAX等次世代の高速無線通信方式においては、通信可能範囲(カバレージ)の縮小化を回避するため、電波状態が悪い、ビルが密集しているところや、電波状態が著しく変化する移動体に、基地局として機能する中継局を設け無線通信システムの一部を担わせることができる。
[第1実施形態]
(無線通信システム100)
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態にかかる無線通信システム100の概略的な構成を示したブロック図である。当該無線通信システム100は、無線通信端末110(110A、110B)と、基地局120(120A、120B)と、中継局130と、ISDN(Integrated Services Digital Network)回線、インターネット、専用回線等で構成される通信網140と、中継サーバ150と、移動体160とを含んで構成される。
ここでは、無線通信端末110として、携帯電話を用いているが、PHS端末、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルカメラ、音楽プレイヤー、カーナビゲーション、ポータブルテレビ、ゲーム機器、DVDプレイヤー、リモートコントローラ等無線通信可能な様々な電子機器を用いることもできる。
無線通信システム100において、ユーザが自身の無線通信端末110Aから他の無線通信端末110Bへの通信を実行する場合、無線通信端末110Aは、通信可能範囲内にある基地局120Aに無線接続要求を行う。無線接続要求を受信した基地局120Aは、通信網140を介して中継サーバ150に通信相手との通信接続を要求し、中継サーバ150は、他の無線通信端末110Bの位置登録情報を参照し、他の無線通信端末110Bの無線通信範囲内にある基地局120Bを抽出して基地局120Aと基地局120Bとの通信経路を確保し、無線通信端末110Aと無線通信端末110Bの通信を実行(確立)する。
ここで、ユーザが移動体160の例としての電車に乗った場合、無線通信端末110Aは、基地局120Aと直接ではなく、中継局130を介した通信に切り換わる。かかる中継局130は、移動体160に固定されていて移動体160と共に移動するため、移動体160内においても電波状態を良好に確保することができる。かかる移動体160としては、電車に限定されることなく、自動車、バス、船舶、航空機等、人が乗降可能な様々な乗り物を用いることができる。
移動体160内のユーザが有する無線通信端末110Aと中継局130とは、空き座席を探す等の動作が生じない限り互いの位置関係が変化することなく共に移動する。また両者の間を遮蔽する障壁も存在しない。従って、無線通信端末110Aは、移動体160の移動に拘わらず、中継局130を介して他の無線通信端末110Bとの通信を安定して維持することができる。
以下、無線通信システム100を構成する無線通信端末110、基地局120、中継局130について個々に説明する。
(無線通信端末110)
図2は第1実施形態にかかる無線通信端末110のハードウェア構成を示した機能ブロック図であり、図3は第1実施形態にかかる無線通信端末110の外観を示した斜視図である。無線通信端末110は、端末制御部210と、端末メモリ212と、表示部214と、操作部216と、音声入力部218と、音声出力部220と、端末無線通信部222とを含んで構成される。
端末制御部210は、中央処理装置(CPU)を含む半導体集積回路により無線通信端末110全体を管理および制御する。端末制御部210は、端末メモリ212のプログラムを用いて、通話機能、メール送受信機能、撮像機能、音楽再生機能、TV視聴機能も遂行する。端末メモリ212は、ROM、RAM、EEPROM、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、端末制御部210で処理されるプログラムや音声データ等を記憶する。
表示部214は、液晶ディスプレイ、EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成され、端末メモリ212に記憶された、または通信網140を介してアプリケーション中継サーバ(図示せず)から提供される、WebコンテンツやアプリケーションのGUI(Graphical User Interface)を表示することができる。操作部216は、キーボード、十字キー、ジョイスティック等のスイッチから構成され、ユーザの操作入力を受け付ける。
音声入力部218は、マイク等の音声変換手段で構成され、通話時等に入力されたユーザの音声を無線通信端末110内で処理可能な電気信号に変換する。音声出力部220は、スピーカで構成され、無線通信端末110で受信した通話相手の音声信号を音声に変えて出力する。また、音声出力部220は、着信音や、操作部216の操作音、アラーム音等も出力できる。端末無線通信部222は、通信網140における基地局120または中継局130との無線通信を実行する。端末無線通信部222には、WiMAX、ARIB(Association of Radio Industries and Businesses) STD T95、PHS MoU(Memorandum of Understanding)等OFDMA方式の他、OFDM方式、TDMA(時分割多重接続:Time Division Multiple Access)方式等様々な無線通信方式を適用することができる。
(基地局120)
図4は、第1実施形態にかかる基地局120の概略的な構成を示した機能ブロック図である。基地局120は、基地局制御部250と、基地局メモリ252と、基地局無線通信部254と、基地局有線通信部256とを含んで構成される。
基地局制御部250は、中央処理装置(CPU)を含む半導体集積回路により基地局120全体を管理および制御する。基地局メモリ252は、ROM、RAM、EEPROM、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、基地局制御部250で処理されるプログラム等を記憶する。
基地局無線通信部254は、無線通信端末110または中継局130と、例えばOFDMA方式等による無線通信を実行する。基地局有線通信部256は、通信網140を介して中継サーバ150を含む様々なサーバと通信を実行することができる。
(中継局130)
図5は、第1実施形態にかかる中継局130の概略的な構成を示した機能ブロック図である。中継局130は、中継局無線通信部310と、中継局制御部312と、速度センサ314と、位置取得部316と、時計318と、中継局メモリ320とを含んで構成される。かかる中継局130は、移動体160内に搭載(設置)されている。
中継局無線通信部310は、端末通信部350と、基地局情報取得部352と、接続制御部354と、基地局通信部356と、情報送信部358とからなり、無線通信端末110と基地局120の無線通信を中継する。
端末通信部350は、移動体160の筐体外側に設置され、基地局120に対する通信に関して無線通信端末110として機能し、OSI参照モデルにおける物理層(レイヤ1)およびデータリンク層(レイヤ2)を担う。ここでは、OFDMA方式の端末通信部350を設ける構成を説明しているが、かかる場合に限らず、OFDMA方式において、また、他の通信方式において端末通信部350を複数設けることも可能である。このように端末通信部350を複数設けた場合、それぞれ独立して基地局120に通信させることができる。
基地局情報取得部352は、基地局120から、端末通信部350が通信可能な1または複数の基地局を特定できる基地局情報を取得する。基地局情報には、その基地局120を特定可能なCSID(基地局識別番号:Cell Station IDentifier)や、通信する基地局120の優先順位等が含まれる。取得した基地局情報は、後述する接続制御部354を介して情報送信部358に送信される。
接続制御部354は、後述する基地局通信部356に無線通信端末110が複数接続された場合、そのチャネル制御を行う(MACトレーサ機能)。また、特にOFDMA方式が採用されている場合、接続制御部354は通信データの最小送信単位であるサブチャネルを時間および周波数方向に配列したチャネルマップへの通信データの割当を行う。なお、接続制御部354は、QoS(Quality Of Service)の確保を図るため、基地局通信部356と無線通信を実行している無線通信端末110との通信状態に応じて変調方式を変更する適応変調を採用し得る。
基地局通信部356は、移動体160内部の無線通信端末110に対して、あたかも基地局120と無線通信を実行しているかの如く動作する。OSI参照モデルでは、物理層およびデータリンク層を担う。基地局通信部356は、図5に示すように、本実施形態において中継局1つに対して1つだけ設けられている。しかし、船舶、航空機等のある程度広い空間に適用される場合、複数で構成することもできる。
情報送信部358は、後述する停止判定部370が停止状態と判定すると、基地局情報と、この基地局情報に基づいて移動体160の周辺にある通信可能な1または複数の基地局120の電波強度を取得させるスキャン命令とを、基地局通信部356を通じて無線通信端末110に送信する。
情報送信部358は、ハンドオーバに至る電波強度の下限の閾値を所定量低くして無線通信端末110に送信する。これにより、例えば移動体160内が混んでいて乗降口付近のユーザが一時的に移動体160外に出なければならない場合に、ハンドオーバを実行するおそれを排除できる。
すなわち、無線通信端末110に設定されている閾値(通常値)より低く、ハンドオーバに至る閾値を設定することで、移動体160から一時的に離れる程度では、ハンドオーバを実行させないようにすることができる。かかる構成により、移動体160から離れるときの通信の安定性を確保しつつ、移動体160から一時的に離れた場合に生じてしまう煩雑なハンドオーバを回避することができ、より効率的に無線通信を実行できる。
中継局制御部312は、中央処理装置(CPU)を含む半導体集積回路により中継局130全体を管理および制御する。また、中継局制御部312は、停止判定部370と、時刻取得部372とを含んで構成される。
停止判定部370は、移動体160が移動を停止する停止状態にあるか否かを判定する。なお、停止状態の具体的な判定方法については後述するものとする。時刻取得部372は、時計318から、そのときの現在時刻と年月日を含む日時情報を取得し、停止判定部370に送信する。
速度センサ314は、移動体160の速度を検出する。
位置取得部316は、GPSセンサで構成され、GPS衛星170から放出されるGPS信号を受信する。かかるGPS信号には、移動体160の位置情報として緯度、経度が含まれ、位置取得部316は、位置情報を位置記憶部380に送信する。なお、位置取得部316は、少なくとも3つの基地局120の絶対位置と、それら基地局120からの距離による電波の伝播時間または電波強度とを用いて位置を特定する3点測位法によって、位置情報を取得してもよい。
時計318は、現在時刻と年月日を保持し、時刻取得部372に現在時刻と年月日を含んだ日時情報を送信する。
中継局メモリ320は、ROM、RAM、EEPROM、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、中継局制御部312で処理されるプログラム等を記憶する。また、中継局メモリ320は、位置記憶部380と、時刻記憶部382とを含んで構成される。
位置記憶部380は、移動体160が人を乗降させる乗降位置を記録する。そして、停止判定部370は、位置取得部316が取得した移動体160の現在位置と乗降位置との差分距離が所定距離内にあるときに、停止状態と判定する。
時刻記憶部382は、移動体160が人を乗降させる乗降時刻を記録する。そして、停止判定部370は、時刻取得部372が取得した現在時刻と乗降時刻との差分時間が所定時間内にあるときに、停止状態と判定する。
図6は、基地局情報取得部352の基地局情報の取得を説明した説明図である。駅Aの周辺において、移動体160としての電車の車両に設置された中継局130は、通信可能圏400Aを有する基地局120Gと無線通信を実行する。駅Aと駅Bの間を走行中は周囲の基地局120D、120E、120F等と必要に応じてハンドオーバをしながら、無線通信端末110の通信を中継する。そして、移動体160が駅Bに到着するとき、中継局130は通信可能圏400Cを有する基地局120Gと無線通信を実行する。
移動体160が駅Bに停止する停止状態にあるとき、基地局情報取得部352は、基地局120GのCSIDや、移動体160の周辺の基地局120として基地局120Gより少し離れた位置にある通信可能圏400Bを有する基地局120HのCSIDを、基地局情報として基地局120Gから取得する。そして、情報送信部358は、取得した基地局情報と、スキャン命令と、ハンドオーバに至る通常より低い閾値を無線通信端末110に配信する。
無線通信端末110は、配信されたスキャン命令および基地局情報に基づいて付近の基地局120を探知する。そして、基地局120G、H等のCSIDとRSSI(受信信号強度:Received Signal Strength Indicator)を受信し、より通信環境の良い基地局120へのハンドオーバの準備が整う。この後、無線通信端末110を持ったユーザが移動体160を出ると、円滑に基地局120へのハンドオーバを行うことができる。
さらに、基地局情報に各基地局120に対して通信を行う優先順位を含み、無線通信端末110には、その優先順位に基づいてハンドオーバ先の基地局120を選択させてもよい。かかる構成により、無線通信端末110は、複数の基地局120のCSIDやRSSIを探知する必要が無くなり、処理負荷および電力消費を削減できる。
図7は、停止判定部370の速度、加速度による停止状態の判定を説明した説明図である。特に、図7(a)は、停止判定部370の速度による停止状態の判定を説明した説明図であり、図7(b)は、停止判定部370の加速度による停止状態の判定を説明した説明図である。
停止判定部370は速度センサ314から移動体160の速度を取得し、速度が所定速度以下になったとき停止状態と判定する。かかる構成により、停止状態をより確実に判定でき、移動体160が完全に停止して人が乗降するよりも先に、十分な時間を持ってハンドオーバの準備を行わせることで、通信の切断を回避し、より安定した通信を実行することができる。また、速度の代わりに加速度を用いて停止状態と判定してよい。
図7(a)では、移動体160が駅等に近づき速度が低下し、境界速度Vを下回ると、停止判定部370は、停止状態と判定する。そして、情報送信部358は、取得した基地局情報と、スキャン命令と、ハンドオーバに至る通常より低い閾値を移動体160内の無線通信端末110に配信する。その後、駅に到着して速度が0m/secになってから停車時間が過ぎ、再び速度が0m/secより大きくなると情報送信部358は、無線通信端末110への配信を止める。図7(a)における情報送信時間は、境界速度Vの設定によっても任意に変更可能である。
図7(b)では、移動体160が駅から次の駅へ移動している間は、ほとんど等速度に近く加速度は約0m/sec2となる。その後、駅に近づくと減速し始め、−am/sec2の加速度が発生する。このとき、停止判定部370は停止状態と判定してよい。そして、情報送信部358は、取得した基地局情報と、スキャン命令と、ハンドオーバに至る通常より低い閾値を移動体160内の無線通信端末110に配信する。その後、駅に到着して停止すると、加速度は約0m/sec2となる。さらに、停車時間がすぎると、加速度aとなり、加速していく。移動体160が加速を開始し、加速度が正の値を示すと、停止判定部370は、停止状態の判定を止め、情報送信部358は、無線通信端末110への配信を止める。図7(b)における情報送信時間も、加速度を検出してから所定時間後に停止状態と判定する等、任意に変更できる。
図8は、停止判定部370の乗降位置による停止状態の判定を説明した説明図である。図8(a)は、簡略地図によって乗降位置と情報送信を説明する説明図であり、図8(b)は、位置記憶部380の一例を示した説明図である。
図8(a)において、破線で描かれた円は、停止判定部370が停止状態と判定する位置の範囲を示す。位置取得部316が取得した位置情報が示す緯度、経度と、図8(b)のような位置記憶部380に記憶されている乗降位置を示す緯度、経度から算出した差分距離が所定距離より小さい場合(破線の円の範囲内の場合)、停止判定部370は停止状態と判定する。そして、情報送信部358は、取得した基地局情報と、スキャン命令と、ハンドオーバに至る通常より低い閾値を移動体160内の無線通信端末110に配信する。
かかる構成により、移動体160として電車ではなくバス等を対象とした場合、人が乗降するバス停等に限って停止状態と判定することができる。例えば、バスが信号等によりバス停以外で一時的に停車する場合に、無駄なハンドオーバの準備を実行させる事態を回避することができ、より効率的に無線通信を実行することが可能となる。
図9は、停止判定部370の乗降時刻による停止状態の判定を説明した説明図である。図9(a)は、乗降時刻と情報送信について説明した説明図であり、図9(b)は時刻記憶部382に記憶されている乗降時刻の例として、移動体160である列車の各駅における時刻表を示した説明図である。
移動体160が駅Aに停車する乗降時刻が近づき、現在時刻と日時情報を含む日時情報と、時刻記憶部382に記憶されている乗降時刻から算出した差分時間が、所定時間tより短いとき、停止判定部370は、停止状態と判定する。そして、駅A停車の時間(停車の時間は、例えば乗降時刻の前後10秒とする)が過ぎると、停止判定部370は、停止状態にないと判定する。続いて駅Bに停車する乗降時刻が近づくと、乗降時刻より所定時間tだけ早い時間に、停止判定部370は、停止状態とみなし、以降、乗降時刻に基づいて同様の処理を繰り返す。
かかる構成により、乗降時刻より所定時間前にハンドオーバの準備を実行させることができ、より迅速かつ確実に安定性の高い通信を実行することが可能となる。
また、時刻記憶部382に記憶されている乗降時刻は、無線通信によって常に最新の情報に更新されても良い。かかる構成により、例えば混雑や事故などにより乗降時刻に変更が生じた場合でも、停止判定部370は、乗降する時刻を正しく認識して停止状態と判定できる。
以上説明したように、本実施形態によれば、人が無線通信端末110を持って移動体160外に出て、それまで通信を行っていた中継局130との通信が唐突に断たれそうになったとしても、ハンドオーバの準備処理を改めて実行することなく迅速に周囲の基地局120にハンドオーバを行うことができる。従って、通信の切断を回避し、より安定性の高い通信を実行することができる。
(無線通信中継方法)
次に、無線通信端末110と、基地局120と、中継局130とを用いて無線通信を実行する無線通信中継方法を詳細に説明する。
図10は、第1実施形態にかかる中継局130の処理の流れを説明したフローチャートである。停止判定部370は、速度センサ314から取得した速度が境界速度Vよりも大きい場合(S400YES)、位置取得部316が取得した位置と、位置記憶部380が記憶している乗降位置との差分距離の判定を行う(S402)。差分距離が所定距離以上の場合(S402YES)、時刻取得部372が取得した現在時刻と年月日を含んだ日時情報と時刻記憶部382が記憶している乗降時刻との差分時間の判定を行う(S404)。差分時間が所定時間以上の場合(S404YES)、速度センサ314から取得した速度の判定(S400)に戻る。
速度センサ314から取得した速度が境界速度Vより小さい場合(S400NO)、または、差分距離が所定距離より小さい場合(S402NO)、または、差分時間が所定時間より短い場合(S404NO)、停止判定部370は、停止状態と判定し(S406)、無線通信端末110へ取得した基地局情報と、スキャン命令と、ハンドオーバに至る通常より低い閾値を送信する(S408)。そして、速度センサ314から取得した速度の判定(S400)に戻る。
図10においては、速度センサ314から取得した速度、差分距離、差分時間の各条件において、1つでも条件を満たさない場合、停車状態と判断したが、かかる場合に限られず、各条件のうちいずれか2つ以上が条件を満たさなければ停車状態と判断してもよいし、3つ全てが条件を満たさなければ停車状態と判断しないこととしてもよい。
例えば、速度センサ314から取得した速度が境界速度Vより小さくとも、電車が遅延して駅と駅の間で停止している場合がある。また、差分距離が所定距離以内であっても、駅のすぐそばで前の電車が詰まっている等、停止が続く場合もある。さらに、電車遅延によるダイヤの乱れがひどく、すぐに更新することができない場合もある。
このように、停止状態の判定のための判定条件は、それぞれ例外的に誤った判断をしてしまう場合がある。しかし、適用する移動体160に応じてそれぞれの判定条件の論理和や論理積を好適に組合せることで、欠点を相補的に補うことができる。中継局130が誤って停止状態と判断しても、一時的に処理負荷や消費電力が高まるのみで済むため、より広く停止状態と判定するように判定条件を設定し、無線通信端末110の基地局120へのハンドオーバを円滑に行うようにしてもよい。
なお、無線通信中継方法における各工程は、必ずしも記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態は、中継局130が停止状態を判定して、基地局情報とスキャン命令とを送信する例として説明した。これに対し第2実施形態は、中継局530が降車位置を判定して、無線通信端末110に基地局情報を送信する例である。以下、中継局530について説明する。
(中継局530)
図11は、第2実施形態にかかる中継局530の概略的な構成を示した機能ブロック図である。中継局530は、中継局無線通信部510、中継局制御部512、速度センサ314、位置取得部316、時計318、中継局メモリ320を含んで構成される。
中継局無線通信部510は、端末通信部350、基地局情報取得部352、接続制御部354、基地局通信部356、基地局情報送信部558からなり、無線通信端末110と基地局120の無線通信を中継する。
基地局情報送信部558は、後述する降車位置判定部570が降車位置の近傍にあると判定した場合に基地局情報を無線通信端末110に送信する。基地局情報の具体的な送信形態としては、例えば、MOB_NBR−ADV(mobility neighborhood advertisement)メッセージとして送信することができる。
中継局制御部512は、中央処理装置(CPU)を含む半導体集積回路により中継局530全体を管理および制御する。また、中継局制御部512は、降車位置判定部570と、時刻取得部372とを含んで構成される。
降車位置判定部570は、移動体160からユーザが降車し得る降車位置の近傍に移動体160があるか否かを判定する。降車位置の近傍にあるか否かの具体的な判定方法としては、上述した停止状態の判定方法(速度判定、位置判定、時間判定)を適用できる。すなわち、移動体160が降車位置の近傍にあることは、概して停止状態にあることと同義となる。なお、複数の判定方法(速度判定、位置判定、時間判定)を組み合わせることで、判定の精度向上を図ることができる。
図12は、第2実施形態における無線通信端末110と中継局530の動作を示したシーケンス図である。以下、図12を参照しながら、第2実施形態において無線通信端末110が中継局530から基地局120へハンドオーバする工程を説明する。
ここでは、無線通信端末110のユーザは、移動体160としての電車内にいて駅Bへ向かう(駅Bで降車する)ものとする。また、移動体160は駅A(ユーザ非降車位置)を経由して駅B(ユーザ降車位置)へと移動し、駅Aの周辺には基地局120C、駅Bの周辺には基地局120G、120Hがあるものとする。
移動体160内において、無線通信端末110は中継局530を中継して無線通信を実行する。中継局530(基地局情報送信部558)は、移動体160が駅A(ユーザ非降車位置)の近傍に達すると(降車位置判定部570が駅の近傍と判定)、基地局120Cの基地局情報をMOB_NBR−ADV(mobility neighborhood advertisement)メッセージとして無線通信端末110に送信する(S530)。
基地局情報を受信した無線通信端末110は、駅(降車位置)の近傍にあると判断してハンドオーバ可能な態勢へと移行する。移動体160内では、中継局530と安定的な無線通信が確立されるため、無線通信端末110は新たな基地局情報の追加をもって降車位置の近傍に達したと判断することができる(スキャン命令を受信する必要がない)。ハンドオーバ可能な態勢へと移行した無線通信端末110は、追加された基地局120Cの電波強度および中継局530の電波強度を監視する。
移動体160が駅A(ユーザ非降車位置)の近傍から離れると(降車位置判定部570が駅の近傍ではないと判定)、中継局530(基地局情報送信部558)は無線通信端末110への基地局120Cの基地局情報の送信を停止する。すなわち、基地局情報を包含しないMOB_NBR−ADV(mobility neighborhood advertisement)メッセージを無線通信端末110に送信する(S532)。これにより、無線通信端末110は、上記態勢を解除し、再度中継局530と安定的な無線通信を行う。そのため、駅A(ユーザ非降車位置)から駅B(ユーザ降車位置)へ移動する間にハンドオーバが行われる可能性は排除される。
移動体160が駅B(ユーザ降車位置)の近傍に達すると(降車位置判定部570が駅の近傍と判定)、中継局530(基地局情報送信部558)は基地局120G、120Hの基地局情報をMOB_NBR−ADV(mobility neighborhood advertisement)メッセージとして無線通信端末110に送信する(S534)。
そして、基地局情報を受信した無線通信端末110は、駅(降車位置)の近傍にあると判断して再度ハンドオーバ可能な態勢へと移行する。ハンドオーバ可能な態勢へと移行した無線通信端末110は、追加された基地局の電波強度および中継局530の電波強度を監視する。ここで、無線通信端末110を保持したユーザが移動体160から降車して、中継局530からの電波強度が所定の閾値を下回ると、基地局120Gまたは120Hへのハンドオーバが行われる。この閾値は無線通信端末110を保持したユーザが移動体160から一定距離以上離れたことを識別するように(ハンドオーバの条件とするように)設定される。これにより、ユーザの降車を確実に判断し、的確な(ユーザが移動体160から降車した場合にのみ)ハンドオーバを行うことができる。なお、ハンドオーバされる基地局120G、120Hは、基地局情報に優先順位が包含され選択されてもよいし、そのときの電波強度に基づいて選択されてもよい。
以上説明したように本実施形態によれば、移動体160内では中継局530と安定的な無線通信を行うと共に、移動体160から降車する場合においては、中継局530を主体とした一連の動作によって円滑に周辺の基地局120にハンドオーバすることができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態は、無線通信端末610が降車位置を判定して、中継局730から基地局情報を取得する例である。以下、無線通信端末610および中継局730について説明する。
(無線通信端末610)
図13は第3実施形態にかかる無線通信端末610のハードウェア構成を示した機能ブロック図である。無線通信端末610は、端末制御部210、端末メモリ212、表示部214、操作部216、音声入力部218、音声出力部220、端末無線通信部222、位置取得部616、降車位置判定部670、基地局情報要求部672からなる。
位置取得部616は、GPS衛星170からの信号を受信するGPSセンサ等で構成され、無線通信端末610の位置情報を取得する。
降車位置判定部670は、移動体160からユーザが降車し得る降車位置の近傍に移動体160があるか否かを判定する。具体的には移動体160内において、位置取得部616が取得した位置情報と端末メモリ212に記録された移動体160の降車位置(例えば、駅やバス停)の位置情報を照合することで、無線通信端末610が降車位置の近傍にあるか否かを判定する。なお、上述した速度判定、時間判定を適用することもできる。
基地局情報要求部672は、降車位置判定部670が降車位置の近傍にあると判定した場合に、周辺の基地局情報を中継局730に要求する。具体的には、周辺の基地局情報を発信させるトリガメッセージを中継局730に送信する。
(中継局730)
図14は、第3実施形態にかかる中継局730の概略的な構成を示した機能ブロック図である。中継局730は、中継局無線通信部710、中継局制御部712、速度センサ314、位置取得部316、時計318、中継局メモリ320を含んで構成される。
中継局無線通信部710は、端末通信部350、基地局情報取得部352、接続制御部354、基地局通信部356、基地局情報送信部758、アシスト情報送信部760からなり、無線通信端末610と基地局120の無線通信を中継する。
基地局情報送信部758は、基地局情報要求部672からの要求(トリガメッセージ)に応じて基地局情報取得部352が取得した基地局情報を無線通信端末610に送信する。基地局情報の具体的な送信形態としては、例えば、MOB_NBR−ADV(mobility neighborhood advertisement)メッセージとして送信することができる。
アシスト情報送信部760は、速度センサ314や位置取得部316によって測位された移動速度状況や、GPSに関するアシスト情報や位置情報などの測位アシスト情報を無線通信端末610に送信する。この測位アシスト情報は、無線通信端末610において位置情報を取得する際の補助的な情報として活用される。
中継局制御部712は、中央処理装置(CPU)を含む半導体集積回路により中継局730全体を管理および制御する。
図15は、第3実施形態における無線通信端末610と中継局730の動作を示したシーケンス図である。以下、図15を参照しながら、第3実施形態において無線通信端末610が中継局730から基地局120へハンドオーバする工程を説明する。
ここでは、無線通信端末610のユーザは、移動体160としての電車内にいて駅Bへ向かう(駅Bで降車する)ものとする。また、移動体160は駅A(ユーザ非降車位置)を経由して駅B(ユーザ降車位置)へと移動し、駅Aの周辺には基地局120C、駅Bの周辺には基地局120G、120Hがあるものとする。
移動体160内において、無線通信端末610は中継局730を中継して無線通信を実行する。この中継局730(アシスト情報送信部760)は、無線通信端末610に測位アシスト情報を適宜送信する(S730)。これにより、降車位置判定部670の判定精度を向上させることができる。測位アシスト情報の送信は、継続的に行う。
測位アシスト情報に基づき移動体160が駅A(ユーザ非降車位置)の近傍に達した判定が降車位置判定部670により下されると、無線通信端末610(基地局情報要求部672)は、中継局730に周辺の基地局情報を要求(トリガメッセージを送信)する(S610)。そして、この基地局情報の要求(トリガメッセージの受信)に応じて中継局730(基地局情報送信部758)は、基地局120Cの基地局情報をMOB_NBR−ADV(mobility neighborhood advertisement)メッセージとして無線通信端末610に送信する(S732)。
基地局情報を受信した無線通信端末610は、ハンドオーバ可能な態勢へと移行する。ハンドオーバ可能な態勢へと移行した無線通信端末110は、追加された基地局120Cの電波強度および中継局730の電波強度を監視する。
移動体160が駅A(ユーザ非降車位置)の近傍から離れると(降車位置判定部670が駅の近傍ではないと判定)、無線通信端末110は、上記態勢を解除し、再度中継局530と安定的な無線通信を行う。そのため、駅A(ユーザ非降車位置)から駅B(ユーザ降車位置)へ移動する間にハンドオーバが行われる可能性は排除される。この間も、中継局730(アシスト情報送信部760)から無線通信端末610への測位アシスト情報の送信(S730)は継続される。
測位アシスト情報に基づき移動体160が駅B(ユーザ降車位置)の近傍に達した判定が下されると、無線通信端末610(基地局情報要求部672)は、中継局730に周辺の基地局情報を再度要求(トリガメッセージを送信)する(S612)。そして、この基地局情報の要求(トリガメッセージの受信)に応じて中継局730(基地局情報送信部758)は、基地局120G、120Hの基地局情報をMOB_NBR−ADV(mobility neighborhood advertisement)メッセージとして無線通信端末610に送信する(S736)。
基地局情報を受信した無線通信端末610は、再度ハンドオーバ可能な態勢へと移行する。ハンドオーバ可能な態勢へと移行した無線通信端末110は、追加された基地局120G、120Hの電波強度および中継局730の電波強度を監視する。ここで、無線通信端末110を保持したユーザが移動体160から降車して、中継局730からの電波強度が所定の閾値を下回ると、基地局120Gまたは120Hへのハンドオーバが行われる。
以上説明したように本実施形態によれば、移動体160内では中継局730と安定的な無線通信を行うと共に、移動体から降車する場合においては、無線通信端末610を主体とした動作によって円滑に周辺の基地局120にハンドオーバすることができる。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態は、ユーザに降車位置を選択させることにより、さらに適切にハンドオーバ可能な態勢への移行を行う例である。以下、無線通信端末810および中継局930について説明する。
(無線通信端末810)
図16は第4実施形態にかかる無線通信端末810のハードウェア構成を示した機能ブロック図である。無線通信端末810は、端末制御部210、端末メモリ212、表示部214、操作部216、音声入力部218、音声出力部220、端末無線通信部822、位置取得部616、降車位置選択部868、被選択降車位置判定部870、基地局情報要求部872からなる。
端末無線通信部822は、通信網140における基地局120または中継局130との無線通信を実行する。また、中継局930から送信された地図情報および基地局情報を受信する。地図情報については後述するものとする。
降車位置選択部868は、受信した地図情報に基づいてユーザに降車位置を選択させる。降車位置の選択方法としては、例えば操作部216の操作により選択されてもよい。また、過去に降車した履歴を記憶しておき、ユーザの操作を待たずに降車位置を選択してもよい。
被選択降車位置判定部870は、降車位置選択部868により選択された降車位置の近傍に移動体160があるか否かを判定する。具体的には移動体160内において、位置取得部616が取得した位置情報と選択された降車位置の位置情報を照合することで、無線通信端末810が所望の降車位置の近傍にあるか否かを判定する。なお、上述した速度判定、時間判定を適用することもできる。
基地局情報要求部872は、被選択降車位置判定部870が降車位置の近傍にあると判定した場合に、基地局情報を中継局に要求する。具体的には、周辺の基地局情報を発信させるトリガメッセージを中継局930に送信する。
(中継局930)
図17は、第4実施形態にかかる中継局930の概略的な構成を示した機能ブロック図である。中継局930は、中継局無線通信部910、中継局制御部712、速度センサ314、位置取得部316、時計318、中継局メモリ320を含んで構成される。
中継局無線通信部910は、端末通信部350、基地局情報取得部352、接続制御部354、基地局通信部356、降車位置情報送信部956、基地局情報送信部758、アシスト情報送信部760からなり、無線通信端末610と基地局120の無線通信を中継する。
降車位置情報送信部956は、無線通信の確立に際して上述した地図情報を送信する。地図情報とは、ユーザが降車し得る降車位置を選択可能に表したものであって、駅名のリスト情報、降車位置がアイコン表示された地図情報(路線図)等を包含するものとする。
図18は、第4実施形態における無線通信端末810と中継局930の動作を示したシーケンス図である。以下、図18を参照しながら、第4実施形態において無線通信端末810が中継局930から基地局120へハンドオーバする工程を説明する。
ここでは、無線通信端末810のユーザは、移動体160としての電車内にいて駅Bへ向かう(駅Bで降車する)ものとする。また、移動体160は駅A(ユーザ非降車位置)を経由して駅B(ユーザ降車位置)へと移動し、駅Aの周辺には基地局120C、駅Bの周辺には基地局120G、120Hがあるものとする。
移動体160内において、無線通信端末810は中継局930を中継して無線通信を実行する。中継局930(降車位置情報送信部956)は、この無線通信の実行に際して(無線通信端末810と最初に繋がった段階で)、各駅の情報を包含する地図情報を無線通信端末810に送信する(S930)。
地図情報を受信すると、無線通信端末810ではその地図情報に基づいて降車位置の選択(駅Bの選択)が行われる。そして、降車位置が選択されると、被選択降車位置判定部870がその降車位置の近傍にあるか否かの判定を開始する。一方、中継局930(アシスト情報送信部760)は、無線通信端末810に降車位置の判定を補助する測位アシスト情報を適宜送信する(S932)。
駅Aの近傍に達しても、当然ながら無線通信端末810(基地局情報要求部872)は中継局930に基地局情報の要求を行わない。移動体160が駅B(ユーザ降車位置)の近傍に達することのみをもって、無線通信端末810(基地局情報要求部872)は、中継局930に周辺の基地局情報を要求(トリガメッセージを送信)する(S910)。中継局930(基地局情報送信部758)は、この基地局情報の要求(トリガメッセージの受信)に応じて基地局120G、120Hの基地局情報をMOB_NBR−ADV(mobility neighborhood advertisement)メッセージとして無線通信端末810に送信する(S934)。
基地局情報を受信した無線通信端末810は、ハンドオーバ可能な態勢へと移行する。ハンドオーバ可能な態勢へと移行した無線通信端末110は、追加された基地局120G、120Hの電波強度および中継局930の電波強度を監視する。ここで、無線通信端末810を保持したユーザが移動体160から降車して、中継局930からの電波強度が所定の閾値を下回ると、基地局120Gまたは120Hへのハンドオーバが行われる。
以上説明したように本実施形態によれば、移動体160内では中継局930と安定的な無線通信を行うと共に、移動体から降車する場合においては、無線通信端末810を主体とした動作によって円滑に周辺の基地局120にハンドオーバすることができる。また、本実施形態では選択された降車位置(駅B)でのみハンドオーバ可能な態勢へと移行するため、処理負荷や消費電力の低減を図ることができる
なお、本実施形態では無線通信の確立に際して(無線通信端末810と最初に繋がった段階で)、地図情報を無線通信端末810に送信するものとしたが、この地図情報に包含された各降車位置に対応する周辺の基地局情報を併せて送信してもよい。これにより、無線通信端末810は、降車位置の近傍にて基地局情報を受信せずとも、ハンドオーバ可能な態勢へと移行できる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。