以下、添付図面を参照しながら本発明によるコイン識別装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
以下の説明において、第1の基準コインとは識別の基準となるコインであり、典型的には、幾つかの同種の基準コインのうち最初に撮像して特徴データ(識別の際に比較対象となるデータ)を得たものである。この第1の基準コインとしては、目視で確認し得る表面の模様が撮像データに明確に反映されるものが好ましい。
また、第2の基準コインとは、第1の基準コインと同種であるがよく見ると違いがわかる程度のコインであり、典型的には、表面のデザインが同じで線幅や文字の大きさが微妙に異なるもの(すなわち、使用による磨耗や、金型の摩耗による製造ロット毎の形状の相違により、表面画像が第1の基準コインと異なるもの)である。なお、第3ないし第Nの基準コインも、この第2の基準コインと同様に、他の基準コインと同種であるがよく見ると違いがわかる程度のコインである。
また、複数の第1の基準コイン(或いは、複数の第2の基準コイン)という場合には、例えば同一の製造ロットや同じ使用期間のものであって利用状況により磨耗などによる微細な差があるが、第1の基準コイン(または第2の基準コイン)の識別範囲に含まれ得るものである。複数の第1の基準コイン(または複数の第2の基準コイン)を選定する際には、過度な磨耗・損傷・汚れなどが無く、撮像データがそれぞれ僅かに異なる複数のコインを選定することが好ましい。
また、以下の説明において、第1の基準コイン、第2〜第Nの基準コイン並びに識別対象コインは、典型的にはメダルゲーム用メダル、パチスロ機用メダル、スロットマシン用メダルといった遊技施設用のメダルである。但し、貨幣として使用されているコイン(硬貨)であっても、外国硬貨など模様のばらつきが大きい場合には、本実施形態の各基準コインおよび識別対象コインとしてもよい。
図1は、本実施形態によるコイン識別装置の構成を示すブロック図である。図1を参照すると、コイン識別装置1は、コイン処理部2、操作部3、及び制御部4を備えている。コイン処理部2は、識別対象コインを受け入れて撮像し、その撮像データと基準データとの比較により識別対象コインが適正なものか否かを判定し、その判定結果に基づいて識別対象コインの振分け、計数、収納などを行う。操作部3は、コイン処理部での処理選択や、処理結果の表示を行う。制御部4は、コイン処理部2及び操作部3の動作を制御する。
コイン処理部2は、繰出部5、搬送部6、及び識別部9を有している。繰出部5は、一又は複数の識別対象コインを受け入れ、識別対象コインを適宜な間隔で一枚ずつ搬送部6へ繰り出すための機構である。搬送部6は、繰出部5から繰り出された識別対象コインを搬送する。搬送部6は、画像入力部7及び振分機構8を含んでいる。画像入力部7は、識別対象コインの表面を撮像して該表面の撮像データD1を生成する。振分機構8は、識別部9により判定された、識別対象コインが適正か否かの判定結果に基づいて、識別対象コインの振り分けを行う。識別部9は、撮像データD1に基づいて、識別対象コインが適正なものか否かを識別する。
操作部3は、選択部3a及び表示部3bを有している。選択部3aは、コイン処理部2での処理内容の選択に関する操作者からの入力を受け付ける。具体的には、選択部3aは複数のスイッチ等により構成される。また、選択部3aは、識別部9のモード切替などの操作にも利用される。表示部3bは、コイン処理部2における処理結果や、コイン識別装置1の動作状態、或いは選択部3aにおける操作内容などに対応する表示を行う。表示部3bは、例えばLEDランプ、複数の7セグメントディスプレイ、液晶画面などによって構成される。なお、選択部3aにおける操作内容に対応する表示は、識別部9において第1及び第2の基準メダルを登録する際にも利用される。
ここで、画像入力部7の構成について詳細に説明する。図2は、画像入力部7の構成を示す図である。図2を参照すると、画像入力部7は、搬送ベルト31と、搬送板32と、透明ガラス34と、保持部材35と、発光素子36と、CCD37と、レンズ38と、撮像タイミングセンサ39と、制御回路40とを備えている。
搬送ベルト31と搬送板32との間には、識別対象コイン15が搬送されるための空隙である搬送路33が設けられている。また、搬送板32は開口32aを有しており、この開口32aに透明ガラス34が嵌め込まれている。この透明ガラス34は、識別対象コイン15を撮像するための窓となる。開口32aは、識別対象コイン15の大きさよりもやや大きく設けられるとよい。
保持部材35は、例えばプリント基板からなり、搬送板32の搬送路33とは反対側の面上に設けられている。保持部材35には、搬送板32の開口32aに応じて開口35aが設けられている。また、保持部材35には、発光素子36といった光源が開口32aの周囲に配置されている。発光素子36としては、例えば赤外光を照射する赤外光LEDといった赤外光源を好適に用いることができる。
CCD37は、識別対象コイン15の表面を撮像するための撮像装置である。CCD37は、その受光面が透明ガラス34と対向するように配置されており、識別対象コイン15が透明ガラス34を通過すると、発光素子36から出射された光のうち識別対象コイン15の表面において反射した光を撮像して撮像データD1を生成する。また、CCD37は、制御回路40からの撮像信号S13に応じたタイミングで撮像する。CCD37は、生成した撮像データD1を制御回路40へ送る。CCD37と透明ガラス34との間にはレンズ38が配置されており、レンズ38は識別対象コイン15の表面からの光を集光してCCD37に好適に入射させる。
撮像タイミングセンサ39は、搬送路33において透明ガラス34よりも上流側に設けられており、識別対象コイン15が通過すると通過信号S11を制御回路40へ送る。制御回路40は、発光素子36及びCCD37を制御するための回路である。制御回路40は、撮像タイミングセンサ39から通過信号S11を受けると、発光素子36に電源電圧V1を印加して発光素子36を点灯させるとともに、CCD37に撮像信号S13を送る。そして、CCD37から撮像データD1を受け取り、該撮像データD1を識別部9へ送る。
続いて、識別部9の構成について詳細に説明する。識別部9は、識別対象コインが適正なものか否かを識別するモード(以下、識別モードという)と、識別モードにおける識別の基準となるデータ(特徴データ)を生成して登録するモード(以下、登録モードという)とを備えており、操作者の選択に応じて何れかのモードを実行する。
図3は、識別部9の内部構成を示すブロック図である。図3を参照すると、識別部9は、処理部10、記憶部11、及び判定部12を有している。
処理部10は、例えば、メモリに予め記憶されたプログラムを中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)が読み込むことにより構成される。本実施形態の処理部10は、撮像処理部101、識別データ抽出部102、及び登録部103を含んで構成されている。撮像処理部101は、画像入力部7から撮像データD1を取り込み、撮像データD1を以後の演算が容易になるよう処理して記憶部11に記憶させるための手段である。識別データ抽出部102は、識別モードの際に、識別対象コインの撮像データD1から、第1ないし第Nの基準コインとの比較対象となる部位(特徴部位)のデータ(識別対象データ)を抽出するための手段である。
登録部103は、登録モードの際に、画像入力部7から撮像データD1を取り込み、この撮像データD1に基づいて、識別対象メダルを識別するための基準となるデータ(特徴データ)を生成する。本実施形態の登録部103は、第1の基準コインに関する撮像データD1から第1の特徴データを生成する第1の特徴データ取込部103aと、第2の基準コインに関する撮像データD1から第2の特徴データを生成する第2の特徴データ取込部103bとを有している。なお、登録部103は、第3ないし第Nの基準コインに関する撮像データD1から各特徴データを生成するための特徴データ取込部を更に有していてもよい。
記憶部11は、メモリといった記憶装置からなり、上述した第1及び第2の特徴データなどを記憶する。記憶部11は、撮像処理部101によって処理された撮像データD1を記憶する撮像データ記憶領域111と、第1及び第2の特徴データなどを記憶する基準値記憶領域112とを含んでいる。基準値記憶領域112に記憶されるデータとしては、第1及び第2の特徴データのほか、各特徴データのばらつき許容範囲、第1の特徴データに対応する特徴部位などがある。
判定部12は、識別対象コインから抽出された識別対象データと、第1及び第2の特徴データ並びに他の特徴データとを比較することにより、識別対象コインの模様が第1の基準コインないし第Nの基準コインのいずれかと一致しているか否かを判定する。
図4は、識別部9の内部構成を更に詳細に示すブロック図である。第1及び第2の特徴データ取込部103a,103b、並びに他の特徴データ取込部のそれぞれは、特徴部位抽出部104、特徴部位選択部105、及び特徴データ確認部106を含んで構成されている。特徴部位抽出部104は、第1の基準コインに関する撮像データD1から、識別対象コインとの比較対象となる部位(特徴部位)となり得る、識別に有用な領域を抽出する。
特徴部位選択部105は、第1の基準コインにおける上記領域から識別に最適な特徴部位を選出する。すなわち、第1の基準コインに関する撮像データD1のうち該特徴部位に相当するデータが、第1の特徴データとなる。また、特徴部位抽出部104において、第2の基準コインに関する撮像データD1のうち上記特徴部位に相当するデータが、第2の特徴データとなる。第3ないし第Nの基準コインについても同様である。
特徴データ確認部106は、特徴部位選択部105により選出された第1の特徴データに関して許容すべきばらつき範囲と、特徴部位抽出部104により抽出された第2の特徴データに関して許容すべきばらつき範囲とを確認する。また、特徴データ確認部106は、第1及び第2の特徴データそれぞれの整合性を確認する。
記憶部11の基準値記憶領域112は、特徴部位記憶領域112a及び特徴データ記憶領域112bを含んでいる。特徴部位記憶領域112aは、特徴部位選択部105により選出された特徴部位の位置や大きさに関する情報を記憶する。なお、この情報は、特徴部位抽出部104において第2の特徴データを抽出する際に用いられる。特徴データ記憶領域112bは、第1及び第2の特徴データを記憶する。
なお、記憶部11は、上述した撮像データ記憶領域111及び基準値記憶領域112の他に、登録成果物記憶領域113を更に含んでいる。登録成果物記憶領域113は、登録モードの際に、各特徴データを生成する過程において生じる成果物(データ)を記憶する。例えば、登録成果物記憶領域113は、特徴部位抽出部104において抽出された、特徴部位となり得る識別に有用な領域の位置や大きさに関するデータを記憶するための特徴範囲データ記憶領域113aを含んでいる。
続いて、上述したコイン識別装置1の動作(コイン識別方法)について説明する。図5〜図10は、コイン識別装置1の動作を示すフローチャートである。また、図11(a)〜(d)は、第1及び第2の基準コインの一方の表面を概略的に示す図である。
[識別処理]
まず、図5を参照しながら、識別モードにおけるコイン識別装置1の動作について説明する。まず、操作者が操作部3の選択部3aを操作することにより、識別モードが選択される。そして、操作者が選択部3aを操作して処理種別などが選択されたのち、識別対象コインが繰出部5に投入される(S101)。
識別対象コインは、繰出部5から繰り出されて搬送部6により搬送され、画像入力部7においてその表面が撮像され、撮像データD1が生成される(S102)。そして、撮像処理部101において撮像データD1にグレースケール変換処理及び数値化処理が施され、これらの処理を経た撮像データD1が記憶部11の撮像データ記憶領域111に記憶される(S103)。
次に、識別データ抽出部102において、撮像データD1から、特徴部位記憶領域112aに記憶されている特徴部位に相当する部位に関するデータ(識別対象データ)が抽出される(S104)。そして、判定部12において、特徴データ記憶領域112bに記憶されている第1及び第2の特徴データと識別対象データとが相互に比較され、これらの一致/不一致が判定される(S105)。一致している場合には当該識別対象コインは適正なものとされ、不一致の場合には当該識別対象コインは適正でないものとされる。
前記判定結果が適宜、操作部3の表示部3bに表示される(S106)。以上のステップS102〜S106が、投入された識別対象コインが尽きるまで行われる(S107:NO)。また、操作者が、当該処理種別に対する識別処理を終了する操作を行うことによって、識別モードを終了する(S107:YES)。
なお、特徴データ記憶領域112bに第3ないし第Nの基準コインに関する特徴データが更に記憶されている場合には、これらの特徴データと識別対象データとが更に比較され、これらの一致/不一致が判定される。
[登録処理]
図6を参照しながら、登録モードすなわち第1及び第2の特徴データ並びに他の特徴データを登録する処理について説明する。まず、操作者が操作部3の選択部3aを操作することにより、新規登録モードが選択される。そして、操作者が選択部3aを操作して処理種別などが選択されたのち、第1の基準コインが繰出部5に投入される(S201)。
第1の基準コインは、繰出部5から繰り出されて搬送部6により搬送され、画像入力部7においてその一方の表面(以下、おもて面とする)が撮像され、図11(a)に示す撮像データD1が生成される(S202)。そして、撮像処理部101において撮像データD1にグレースケール変換処理及び数値化処理が施され、これらの処理を経た撮像データD1が記憶部11の撮像データ記憶領域111に記憶される(S203)。
次に、第1の特徴データ取込部103aにおいて、第1の基準コインの撮像データD1から第1の特徴データが生成される(S204)。そして、この第1の特徴データと、第1の特徴データに対応する特徴部位の位置や大きさに関する情報とが、基準値記憶領域112に記憶される(S205)。
なお、図6には示されていないが、第1の基準コインの他方の表面(以下、裏面という)についても上記ステップS201〜S205の動作を行うことが好ましい。但し、第1の基準コインのおもて面及び裏面が互いに同じデザインである場合には、裏面についてのステップS201〜S205の動作を省略してもよい。
続いて、操作者が選択部3aを操作することにより、追加登録モードが選択される。そして、第2の基準コインが繰出部5に投入される(S206)。このとき、先に投入された第1の基準コインと撮像面が同一となるように、第2の基準コインが投入される。そして、第2の基準コインは、繰出部5から繰り出されて搬送部6により搬送され、画像入力部7においておもて面が撮像され、撮像データD1が生成される(S207)。その後、撮像データD1に対し撮像処理部101において上記ステップS203と同様の処理が施され、その処理を経た撮像データD1が記憶部11の撮像データ記憶領域111に記憶される(S208)。
続いて、第2の特徴データ取込部103bにおいて、第2の基準コインの撮像データD1から、基準値記憶領域112に記憶されている特徴部位のデータが抽出されることにより、第2の特徴データが生成される(S209)。生成された第2の特徴データは、追加データとして基準値記憶領域112に記憶される(S210)。
なお、第1の基準コインの裏面についてステップS201〜S205の動作を行った場合には、第2の基準コインの裏面についても上記ステップS206〜S209の動作を行うことが好ましい。また、上記ステップS206〜S209に係る登録処理は、複数の第2の基準コインのそれぞれに対して順に行ってもよい。
また、第3ないし第Nの基準コインについても追加登録が行われる場合には、該当する特徴データ取り込み部において、当該基準コインの撮像データD1から、基準値記憶領域112に記憶されている特徴部位のデータが抽出されることにより、特徴データが生成される。生成された特徴データは、追加データとして基準値記憶領域112に記憶される。
[登録処理の詳細]
図7及び図8を参照しながら、登録モードについて更に詳細に説明する。まず、上記ステップS201に示したように、登録モードを選択する操作が、操作部3の選択部3aを介して行われる(S301)。この操作を受け、操作部3は、処理種別として新規登録モード及び追加登録モードのうちいずれかを選択する為の入力を待機する(S302)。選択部3aにおいて追加登録モードが選択されると、識別部9は追加登録モードの動作を開始する。なお、この追加登録モードの詳細については後述する。
選択部3aにおいて新規登録モードが選択されると、操作部3は、過去の登録内容を消去するか、または第1の特徴データを新規に登録するかの選択に関する入力を待機する(S303)。なお、過去の登録内容を消去せずに新規登録が選択される場合としては、第1の基準コインの登録処理がまだ一度もなされていない場合、および第1の基準コインの一方の表面が登録済みであって他方の表面を登録しようとする場合がある。過去の登録内容を消去する選択がなされた場合には(S304)、記憶部11に記憶されていた第1及び第2の特徴データ等が全て消去され、操作部3は、第1の特徴データの登録を開始するための入力を待機する。
続いて、選択部3aにおいて第1の特徴データの登録を開始する選択がなされると(S305)、操作部3の表示部3bに処理種別(おもて面登録、裏面登録、及び登録不可)が順に表示される(S306)。おもて面の登録である旨が表示されている時には(S307:YES)、第1の基準コインのおもて面(すなわち、一種類目の模様)が撮像されるようにコイン処理部2が第1の基準コインの投入を待機する。そして、おもて面が撮像されるように第1の基準コインが一枚投入されると(S308)、識別部9は、図8に示す第1の特徴データの生成へ移行する。また、裏面の登録である旨が表示されている時には(S309:YES)、第1の基準コインの裏面(すなわち、二種類目の模様)が撮像されるようにコイン処理部2が第1の基準コインの投入を待機する。そして、裏面が撮像されるように第1の基準コインが一枚投入されると(S310)、識別部9は、図8に示す第1の特徴データの生成へ移行する。
上記ステップS306において、登録不可である場合、すなわちおもて面及び裏面の双方に関する第1の特徴データが既に登録されている場合には(S307、S309共にNO)、登録不可である旨が表示部3bに表示され(S311)、登録中断の処理ののち(S312)、登録モードを終了して識別モードへ移行する(図5のBへ)。
ここで、上記ステップS308及びS310に続いて行われる処理について、図8を参照しながら説明する。
まず、投入された第1の基準コインに対して、上記ステップS202及びS203の処理が行なわれる。そして、第1の基準コインの撮像データD1において特徴部位となり得る識別に有用な領域が特徴部位抽出部104により抽出され、該領域に関するデータ(図11(b)に示す特徴範囲データD2)が生成される(S401)。なお、このデータは登録成果物記憶領域113の特徴範囲データ記憶領域113aに記憶される(S402)。
次に、第1の基準コインの登録対象となる面が撮像されるように第1の基準コインが再投入される(S403)。再投入された第1の基準コインに対して、上記ステップS202及びS203の処理が行なわれ、特徴範囲データ記憶領域113aに記憶されている領域データの中から、識別に最適な特徴部位が一箇所又は複数箇所選出される(S404、図11(c)に示す特徴部位D3)。なお、特徴部位の選出に際しては、最初に投入された第1の基準コインそのものを繰り返し投入して上記ステップS403〜S404を実施することが望ましい。こうして選出された特徴部位の位置及び大きさに関する情報は、基準値記憶領域112の特徴部位記憶領域112aに記憶される(S405)。
続いて、上述した第1の基準コインとは別の、一又は複数の他の第1の基準コインが投入される(S406)。投入された一又は複数の第1の基準コインに対して、上記ステップS202及びS203の処理が行なわれ、上記ステップS404において選出された特徴部位の整合性が、特徴データ確認部106により確認される(S407、図11(d)を参照)。このような特徴部位の整合性の確認には、最初に投入された第1の基準コインの特徴部位における撮像データと、別の第1の基準コインの当該特徴部位における撮像データとを比較して、複数の第1の基準コインの間のばらつきを最も吸収できる特徴部位を絞り込むことができる効果がある。こうして選択された特徴部位のデータを用いて識別を行うことで、適正コインの受付け率が最も高くなると言うことができる。
このように、最適な第1の特徴データを生成する為には、複数の第1の基準コインを使用することが望ましい。複数の第1の基準コインを使用して得られた撮像データD1から第1の特徴データを生成することにより、第1の特徴データの最適なばらつき許容範囲(閾値)を求めることができるからである。そして、最適なばらつき許容範囲(閾値)をこのように生成することによって、適正コインのばらつきに対する受付け許容範囲を予め数値的に求めておき、識別対象コインがばらつき範囲内か否かを自動的に判定できる効果がある。
こうして、第1の特徴データがばらつき許容範囲を加味して好適に生成される。基準値記憶領域112は、第1の特徴データを特徴データ記憶領域112bに、第1の特徴データに対応する第1の基準コインの特徴部位を特徴部位記憶領域112aにそれぞれ記憶する。なお、上述したステップS401〜S407の処理は、第1の基準コインのおもて面及び裏面の双方に対して行うことができ、おもて面及び裏面の模様が同一である場合には、裏面についての処理を省略してもよい。
第1の特徴データの生成および登録が終了すると、表示部3bにその旨が表示され(S408)、図5の識別モードへ移行する。
次に、図7のステップS302において追加登録モードが選択された場合について、図9を参照しながら説明する。
まず、選択部3aにおいて追加登録モードが選択されると(S501)、表示部3bに今回の追加登録の回数の表示、または追加登録ができない旨の表示がなされる(S502)。一回目の追加登録である旨が表示されたとき(S503)、具体的には追加登録が全くなされていない状態(登録内容が消去されている場合を含む)のとき、コイン処理部2は、第2の基準コインが投入されるのを待機する。そして、第2の基準コインが一枚投入されると(S504)、図10に示す特徴データの追加登録処理へ移行する。
また、追加登録の回数が二回目である旨が表示されたとき(S505)、具体的には第2の基準コインの追加登録が既になされているとき、コイン処理部2は、第3の基準コインが投入されるのを待機する。そして、第3の基準コインが一枚投入されると(S506)、図10に示す特徴データの追加登録処理へ移行する。
また、追加登録の回数が三回目である旨が表示されたとき(S507)、具体的には第2及び第3の基準コインの追加登録が既になされているとき、コイン処理部2は、第4の基準コインが投入されるのを待機する。そして、第4の基準コインが一枚投入されると(S508)、図10に示す特徴データの追加登録処理へ移行する。
このように、追加登録の回数がn回目である旨が表示されたとき(S509)、コイン処理部2は、第(n+1)の基準コインが投入されるのを待機する。そして、第(n+1)の基準コインが一枚投入されると(S510)、図10に示す特徴データの追加登録処理へ移行する。なお、基準コインの追加登録の回数が多いほど、適正コインに対する受け付け率が向上する。従って、追加登録の回数すなわち基準コインの数Nは適宜決められていることが好ましい。
ステップS502において追加登録ができない旨の表示がなされた場合、具体的には第1の基準コインの登録処理が行なわれていない場合、または所定回数の追加登録の全てが完了している場合には、表示部3bにおいて追加登録が不可である旨の表示がなされたのち(S511)、登録中断の処理が行なわれ(S512)、追加登録モードを終了して図5の識別モードへ移行する。
ここで、上記ステップS504,S506,S508,及びS510に続いて行われる追加登録処理について、図10を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第2の基準コインに関する第2の特徴データを追加登録する処理について説明するが、第3ないし第Nの基準コインに関しても、同様の処理によって追加登録される。
まず、投入された第2の基準コインに対して上記ステップS202,S203の処理が行なわれ、特徴部位記憶領域112aに記憶されている特徴部位に相当する第2の基準コインの部位のデータを撮像データD1から抽出して、第2の特徴データが生成される(S601)。そして、この第2の特徴データが基準値記憶領域112の特徴データ記憶領域112bに記憶される(S602)。
続いて、上述した第2の基準コインとは別の、二枚目の第2の基準コインが投入される(S603)。投入された二枚目の第2の基準コインに対して上記ステップS202,S203の処理が行なわれ、上記ステップS601において生成された第2の特徴データの整合性が、特徴データ確認部106により確認される(S604)。なお、最適な第2の特徴データを生成する為には、ステップS603において複数の第2の基準コインが投入されることが望ましい。
以上に示したステップS601〜S604が完了するとその旨が表示され(S605)、他の基準コインの追加登録がない場合には、図5の識別モードへ移行する。なお、上記の説明では、一つの基準コインの登録が終了する毎に追加登録モードを自動的に切り替えて識別モードへ移行しているが、所定の回数までは連続的に追加登録を行うことができるようにしてもよい。
以上に説明した本実施形態によるコイン識別装置1が奏する効果について説明する。本実施形態のコイン識別装置1においては、前述したように、識別部9が、識別の基準となる第1の基準コインに関する撮像データD1から特徴部位を決定したのち、該特徴部位に関する第1の特徴データを登録するとともに、第1の基準コインと同種の第2の基準コインに関する撮像データD1の上記特徴部位に相当する部位に関する第2の特徴データを登録する。そして、識別対象コインに関する撮像データD1のうち上記特徴部位に相当する部位に関する識別対象データと、第1及び第2の特徴データのそれぞれとを比較することにより、識別対象コインを識別する。
このようなコイン識別装置1によれば、コインを識別するための基準として、第2の特徴データを第1の特徴データに追加して登録するので、適正コインと判定する範囲が図12の範囲A1及びA2を合成した範囲に限定される。したがって、第1及び第2の特徴データの双方の特徴を平均化した一つのデータにより識別する場合(範囲A3)と比較して識別精度を高めることができるので、適正メダルの受付け率、及び排除すべきメダルの排除率を向上させることができる。
また、本実施形態のコイン識別装置1においては、第1の特徴データを生成する際に第1の基準コインにおいて抽出された特徴部位に相当する第2の基準コインの部位のデータから第2の特徴データを生成するので、第2の特徴データにおいて特徴部位を抽出する処理を省略でき、処理時間を短くできる。
また、本実施形態のように、識別部9は、第1及び第2の基準コインと同種の第3ないし第Nの基準コインに関する撮像データD1の上記特徴部位に相当する部位に関する特徴データを更に登録することが可能であり、該特徴データと識別対象データとを更に比較することが好ましい。このような構成により、第1及び第2の基準コインとは別の基準コインに関する特徴データを追加して登録できるので、適正コインと判定する範囲を不必要に広げることなく、識別精度をより高めることができる。
また、本実施形態のように、識別部9は、第1の基準コインに関する撮像データD1から第1の特徴データを登録する際、一つの第1の基準コインに関する撮像データから識別に有用な領域(図11(b)を参照)を抽出し、該領域の中から特徴部位を決定して第1の特徴データを取得したのち(図11(c)を参照)、他の一又は複数の第1の基準コインの第1の特徴データを取得して(図11(c)を参照)、第1の特徴データの整合性を確認することが好ましい。
識別に有用な領域の中から特徴部位を決定するといったように特徴部位を段階的に抽出することで、特徴データの妥当性を高めることができる。具体的には、特徴部位の選択の処理を早く行う、また、外周付近や中央部など比較的傷みやすい部分を除くことができる。また、撮像の際のコインの回転角度は一般的に撮像毎に異なり、撮像機器の発光による光の当たり方も回転角度によって異なるので、或る特徴部位に関して常に同じ撮像データが得られるわけではない。これに対し、上記のように特徴部位を段階的に抽出することによって、コインの回転角度が様々であっても殆ど影響を受けずに撮像データを得られる部位を特徴部位として選択することが可能となる。
また、本実施形態のように、第1の特徴データを取得したのち、他の一又は複数の第1の基準コインの第1の特徴データを取得して第1の特徴データの整合性を確認することにより、第1の特徴データに対して許容すべき適正コインのばらつき範囲を確認することができる。また、確認された適正コインのばらつき範囲を識別の際の許容範囲(判定閾値)に反映することができ、適正コインに対する受付け率を向上することができる。
また、上記の場合、識別部9は、第2の基準コインに関する撮像データから第2の特徴データを登録する際、既に決定された特徴部位に相当する部位に関する第2の特徴データを取得したのち、他の一又は複数の第2の基準コインの第2の特徴データを更に取得して、第2の特徴データの整合性を確認することが尚好ましい。このように、第2の特徴データを生成する際に特徴部位を決定する過程を省略することにより、処理時間を短くできる。また、このように、特徴データのばらつき範囲の確認を第1及び第2の基準コインの双方に対して同じ手順で行うことにより、手順が異なる場合と比較して使用者の操作ミスを減らすことができる。
また、本実施形態のように、識別対象コイン並びに第1及び第2の基準コインは遊技用メダルであると良い。コインの中でも特に、遊技用メダルは同種のものであっても線幅や文字の大きさが微妙に異なる場合が多いが、本実施形態のコイン識別装置1は、そのような場合に特に有効である。