JP5298386B2 - 対話型居住環境緑化デザイン支援システム - Google Patents
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Description
本発明は、居住環境の緑化、すなわち、居住環境に観葉植物などを配置することによって居住者の快適性を向上させるためのデザイン(観葉植物などの種類・大きさ・鉢数・配置場所の決定等)を対話方式で支援する居住環境緑化デザイン支援システムに関するものである。
居住環境の緑化が居住者の快適性を向上させることに着目して様々な研究がなされており、現状ではその緑化効果として、(1)温熱環境調節・快適性向上効果、(2)空気浄化(有害物質除去)効果、(3)心理・生理的効果、(4)視覚疲労緩和・回復効果の4つが示されている。
詳しくは、(1)の温熱環境調節・快適性向上効果については、冬季に室内に観葉植物を配置することによって、植物の蒸散作用により湿度が乾燥状態の30%から快適状態の50〜60%に上昇し、風邪、乾燥肌、静電気を防止することができ、(2)の空気浄化(有害物質除去)効果については、シックハウス症候群の原因物質と考えられているホルムアルデヒドなどの有害物質を植物が吸収・吸着できることが知られている。(3)の心理・生理的効果については、室内に植物を配置すると居住者がリラックスすることが、脳波の測定・解析や心理評定によって実証されている。(4)の視覚疲労緩和・回復効果については、植物を見ることによって目の疲れが緩和、回復することが知られている。これは緑色のものを見ると目によいと言い伝えられてきたことと基本的に同じである。
また、居住環境の緑化による上記各効果の大きさは観葉植物の種類によって異なるため、各観葉植物についてのデータ、事例、知識などが蓄積され、一部はデータベース化されている(非特許文献参照)。
渡部美佳・仁科弘重著、"グリーンアメニティデザイン支援システムの構築に関する研究"、農業環境工学関連5学会2003年合同大会(日本生物環境調節学会(現日本生物環境工学会))講演要旨、2003年9月9日発表、249頁。
しかしながら、従来の「居住環境緑化最適デザインシステム」では、居住者の条件・希望に基づいてデザインが一方的に提示されるだけである。
また、上記デザインシステムでは、代表的な11種類の観葉植物をデザイン対象の植物としているが、室内における観葉植物の配置パターンが窓際に一列に並べるか、または室内に点在させるかの2通りしか想定されていないため、居住者の多様な希望に対応できるものではなかった。
居住者の多様な希望に対応できるためには、居住環境を緑化する過程において居住者との対話が必要であり、具体的には、居住者がディスプレイ上に表示された情報を基にデザインを繰り返し実行できる機能をもった「対話型居住環境緑化デザイン支援システム」の開発が要望されていた。
本発明は以上のような従来の居住環境緑化最適デザインシステムにおける課題を考慮してなされたものであり、居住者、またはデザインシステムを使用するユーザーの多様な希望に答えながら、その居住者、ユーザーにとって最適な居住環境の緑化を実現することができる対話型居住環境緑化デザイン支援システムを提供するものである。
本発明は、観葉植物に関する各種情報を植物の種類別に記憶しているデータベースと、
居住環境の条件等を入力するとともに、上記データベース内の少なくとも一つの観葉植物を選択して仮想的に室内に配置する入力手段と、
上記観葉植物を仮想的に配置した際に、条件が特定された上記居住環境における温熱快適効果、リラックス効果、空気浄化効果、視覚疲労を緩和または回復させる視覚効果およびイメージによる効果を、上記データベースに記憶されている各種情報に基づいて数値化する処理手段と、
数値化された各効果を可視出力する出力手段と、を備えてなる居住環境緑化デザイン支援システムである。
居住環境の条件等を入力するとともに、上記データベース内の少なくとも一つの観葉植物を選択して仮想的に室内に配置する入力手段と、
上記観葉植物を仮想的に配置した際に、条件が特定された上記居住環境における温熱快適効果、リラックス効果、空気浄化効果、視覚疲労を緩和または回復させる視覚効果およびイメージによる効果を、上記データベースに記憶されている各種情報に基づいて数値化する処理手段と、
数値化された各効果を可視出力する出力手段と、を備えてなる居住環境緑化デザイン支援システムである。
上記仮想的に室内に配置するとは、例えばディスプレイ上にアイコン表示されている観葉植物をそのディスプレイ上の室内に移動させるといったソフトウエア処理上の配置を意味する。
本発明において、上記処理手段は、上記居住環境の室内照度分布を算出する照度分布算出部と、算出された上記室内照度分布に基づき気孔抵抗を算出する気孔抵抗算出部と、算出された上記気孔抵抗および換気量から室内の相対湿度を算出する相対湿度算出部と、相対湿度と温熱快適度との関係を記憶している湿度/温熱快適度記憶部とから構成される温熱快適効果値処理部を有し、この温熱快適効果値処理部は、上記相対湿度算出部によって求められた相対湿度に対応する温熱快適度を上記湿度/温熱快適度記憶部から求め、温熱快適効果値として出力するように構成することが好ましい。
本発明において、上記処理手段は、距離の変化に応じて視野内で植物が占める割合が変化する関係を示した距離−緑視率関係式と、積算緑視率とリラックス度との関係を示した積算緑視率−リラックス度関係式とを記憶しているリラックス効果値処理部を有し、このリラックス効果値処理部は、上記距離−緑視率関係式に基づき、仮想的に配置された観葉植物と居住者との距離から緑視率を求め、上記積算緑視率−リラックス度関係式に基づいてリラックス度を求め、リラックス効果値として出力するように構成することが好ましい。
本発明において、上記処理手段は、観葉植物の種類別の空気浄化効果値を記憶している空気浄化効果値記憶部を備えた空気浄化効果値処理部を有し、この空気浄化効果値処理部は、仮想的に配置された観葉植物の空気浄化効果値を上記空気浄化効果値記憶部から求めて出力するように構成することが好ましい。
本発明において、上記処理手段は、視覚疲労緩和・回復に関する実験の結果から求めた視覚効果値を記憶している視覚効果値記憶部を備えた視覚効果値処理部を有し、この視覚効果値処理部は、仮想的に配置された観葉植物によって得られる視覚効果値を上記視覚効果値記憶部から求めて出力するように構成することが好ましい。
本発明において、上記処理手段は、観葉植物の種類別のイメージを、季節別、性別、年齢別に解析したイメージデータ記憶部を備えたイメージ効果値処理部を有し、このイメージ効果値処理部は、仮想的に配置された観葉植物のイメージを上記イメージデータ記憶部から求めて出力するように構成することが好ましい。
本発明において、上記入力手段は、上記データベースに記憶されているすべての観葉植物を表示するエリアと、観葉植物を仮想配置するための部屋を平面図で表示するエリアと、選択中の観葉植物の名前、特徴等の情報を表示するエリアを有するディスプレイから構成することができる。
本発明において、上記出力手段は、数値化された各効果値をレーダーチャートで表示するエリアを有するディスプレイから構成することができる。
本発明の対話型居住環境緑化デザイン支援システムによれば、居住者の居住環境に適した観葉植物およびその配置を、対話形式でデザインすることができる。
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明に係る対話型居住環境緑化デザイン支援システムの構成を示したブロック図である。
同図において、対話型居住環境緑化デザイン支援システム(以下、支援システムと略称する)1は、居住者とシステムが対話をしながら作業を進めていく、いわゆる対話型システムから構成されている。
上記支援システム1が適用される居住環境として、床面積5m×5m、天井高2.8mで、1つの方位(壁)にのみ窓がある室内を想定する。窓の高さは、床面から0.8mを下縁とし、2.8m(天井高さと同じ)を上縁とする。なお、上記窓の高さはオフィスを想定した場合であるが、オプションとして自宅を想定した窓構成も選択可能である。
支援システム1は、各種データを入力するとともに各種指令を入力する入力部(入力手段)2と、その入力部2から入力されたデータを受け、観葉植物に関する各種情報を記憶しているデータベースを参照しながら居住環境緑化のデザインを支援するための各種処理を実行する処理部(処理手段)3と、処理結果を表示する出力部(出力手段)4とから主として構成されている。
1. 入力部
上記入力部2は、例えば、キーボード2aとポインティングデバイスとしてのマウス2bおよび対話型入力のためのディスプレイ2cから構成されている。
上記入力部2は、例えば、キーボード2aとポインティングデバイスとしてのマウス2bおよび対話型入力のためのディスプレイ2cから構成されている。
上記マウス2bおよびキーボード2aからは、例えば、居住している地域(例えばリスト表示された47都道府県から選択する)、想定月(例えばリスト表示された1〜12月から選択する)、窓の方位(例えばリスト表示された東、西、南、北から選択する)、居住者の性別(例えばリスト表示された男、女から選択する)・年齢の各データが入力される。
ここまでのデータ入力によって、想定された室内(平面図)が図2に示すディスプレイ2cの「室内での植物配置」表示エリア2dとして表示されるとともに、後述する室内照度分布算出部によって求められた、床面上0.7mの水平面上の光(照度)分布がその表示エリア2d内に表示される。
図3は、上記室内の照度分布を詳細に示したものであり、窓側は照度3000〜4000lux(2d1参照)、窓から遠ざかるにつれて照度2000〜3000lux(2d2参照)、照度1000〜2000lux(2d3参照)、照度0〜1000lux(2d4参照)と減衰している。
また、上記床面上0.7mの高さは、観葉植物を配置する場合にほぼ観葉植物の中心高さに相当する。なお、オプションとして、家具類を配置することもできる。
次に、ディスプレイ2cの「観葉植物」表示エリア2e内に表示された11種類の観葉植物(パキラ、ユッカ、コンシンナ、斑入りカポック、カポック、シュロチク、マッサンギアナ、ポトス、ベンジャミン、アレカヤシ、ゴールドクレスト)の中から、配置しようとする観葉植物をマウス2bで選択する。
なお、本実施形態では観葉植物の種類を11種類としたが、それ以上であってもよい。
マウス2bで観葉植物を選択する際、その観葉植物の特徴がディスプレイ2c上の「選択中の植物」表示エリア2f内に表示され、観葉植物を選択する際のガイドとなる。
次に、マウス2bをクリックしドラッグすることにより、その観葉植物を室内(「室内での植物配置」表示エリア2d参照)の任意の位置に仮想的に配置する。この一連の操作を繰り返すことによって、室内に観葉植物を配置していく。一度、仮想的に配置した観葉植物を撤去することもできる。
なお、観葉植物に正常な生育をさせるためには、その種類ごとに必要な光強度がある。例えば、500、1000luxでは、カポックは正常な生育(光合成)を示すが、ゴールドクレストは枯死に至る。そこで、データベースに記憶されている最低必要照度(表1参照)に基づき、また、室内の照度分布を考慮することにより、選択した観葉植物をその位置に配置した場合に正常な生育が得られないと判断された場合は、警告メッセージをディスプレイ2c上に表示するようになっている。
また、オプションとして、配置する観葉植物の大きさを変えることができるようになっている。鉢を含めた高さで0.8m、1.0m、1.2m、1.6mから選択するが、デフォルトは1.2mである。
なお、室内に配置する観葉植物の数は任意であるが、例えば最大10鉢とし、これを越えて配置しようとした場合も、警告メッセージをディスプレイ2c上に表示する。
2. 処理部
上記処理部3は、温熱快適効果値処理部3aと、リラックス効果値処理部3bと、空気浄化効果値処理部3cと、視覚効果値処理部3dと、イメージ効果値処理部3eとから主として構成されており、支援システム1に予め組み込まれたプログラムにしたがって所定の処理を実行するようになっている。
上記処理部3は、温熱快適効果値処理部3aと、リラックス効果値処理部3bと、空気浄化効果値処理部3cと、視覚効果値処理部3dと、イメージ効果値処理部3eとから主として構成されており、支援システム1に予め組み込まれたプログラムにしたがって所定の処理を実行するようになっている。
2.1 温熱快適効果値処理部
温熱快適効果値処理部3aは、室内照度分布算出部3a1と、観葉植物気孔抵抗算出部3a2と、室内相対湿度算出部3a3と、温熱快適度算出部3a4とから構成されている。
温熱快適効果値処理部3aは、室内照度分布算出部3a1と、観葉植物気孔抵抗算出部3a2と、室内相対湿度算出部3a3と、温熱快適度算出部3a4とから構成されている。
2.1.1 室内照度分布算出部
室内照度分布算出部3a1では、想定月および窓の方位に基づいて、太陽位置の計算、直達および散乱日射量の計算によって、窓外面の日射量(照度)を算出する。次に、ブラインドの操作によって室内側からは窓面を面光源として扱い、その面光源の光束発散度を算出する。さらに、床面上0.7mの水平面上の各点が窓面を見る形態係数から、室内照度(lux)分布を算出する。なお、上記形態係数とは、面(点)と面間の相対的位置関係から求められ、伝熱工学、建築環境工学の分野で放射伝熱量、室内光分布などの計算に用いられる係数である。
室内照度分布算出部3a1では、想定月および窓の方位に基づいて、太陽位置の計算、直達および散乱日射量の計算によって、窓外面の日射量(照度)を算出する。次に、ブラインドの操作によって室内側からは窓面を面光源として扱い、その面光源の光束発散度を算出する。さらに、床面上0.7mの水平面上の各点が窓面を見る形態係数から、室内照度(lux)分布を算出する。なお、上記形態係数とは、面(点)と面間の相対的位置関係から求められ、伝熱工学、建築環境工学の分野で放射伝熱量、室内光分布などの計算に用いられる係数である。
2.1.2 観葉植物気孔抵抗算出部
観葉植物気孔抵抗算出部3a2は、配置された観葉植物ごとに、配置された場所の照度から気孔抵抗を算出する。気孔抵抗(R:h/m)は、照度(S:lux)の関数
R=A×Sb……(1)
で表せるとして観葉植物ごとに求め、データベースに予め格納されている係数A、b(表2参照)に基づいて算出する。
観葉植物気孔抵抗算出部3a2は、配置された観葉植物ごとに、配置された場所の照度から気孔抵抗を算出する。気孔抵抗(R:h/m)は、照度(S:lux)の関数
R=A×Sb……(1)
で表せるとして観葉植物ごとに求め、データベースに予め格納されている係数A、b(表2参照)に基づいて算出する。
2.1.3 室内相対湿度算出部
室内相対湿度算出部3a3では、上記式(1)によって算出された気孔抵抗と、室内と屋外の換気量とから室内の相対湿度を算出する。この場合、室内気温は想定月によって変化させる(7〜8月は28℃、1〜2月は22℃)。
室内相対湿度算出部3a3では、上記式(1)によって算出された気孔抵抗と、室内と屋外の換気量とから室内の相対湿度を算出する。この場合、室内気温は想定月によって変化させる(7〜8月は28℃、1〜2月は22℃)。
2.1.4 温熱快適度算出部
温熱快適度算出部3a4は、上記室内相対湿度算出部3a3によって算出された相対湿度を用い、湿度/温熱快適度記憶部としてのデータベースに記憶されている相対湿度と温熱快適度との関係(表3参照)に基づき、温熱快適度(0〜100)を求め、これを温熱快適効果値とする。
温熱快適度算出部3a4は、上記室内相対湿度算出部3a3によって算出された相対湿度を用い、湿度/温熱快適度記憶部としてのデータベースに記憶されている相対湿度と温熱快適度との関係(表3参照)に基づき、温熱快適度(0〜100)を求め、これを温熱快適効果値とする。
2.2 リラックス効果値処理部
リラックス効果値処理部3bは、データベースに記憶されている距離−緑視率データ3b1と、緑視率算出部3b2と、積算緑視率算出部3b3と、リラックス効果値算出部3b4からと構成されている。
リラックス効果値処理部3bは、データベースに記憶されている距離−緑視率データ3b1と、緑視率算出部3b2と、積算緑視率算出部3b3と、リラックス効果値算出部3b4からと構成されている。
2.2.1 緑視率算出部
緑視率Rは視野の中に植物が占める割合を意味している。この緑視率Rは、デジタルカメラ(焦点距離:28mm)との距離を変えながら観葉植物1鉢ずつを撮影し、撮影画像の撮影範囲中、植物の面積が占める割合(0〜1)を、予め実験し画像処理することにより、距離−緑視率データ3b1として記憶されている(表4参照)。
緑視率Rは視野の中に植物が占める割合を意味している。この緑視率Rは、デジタルカメラ(焦点距離:28mm)との距離を変えながら観葉植物1鉢ずつを撮影し、撮影画像の撮影範囲中、植物の面積が占める割合(0〜1)を、予め実験し画像処理することにより、距離−緑視率データ3b1として記憶されている(表4参照)。
上記実験により求められた表4の値に下記近似式(2)を当てはめ、表5に示す係数A、bを求めている。
すなわち、距離−緑視率データ3b1は、緑視率が、居住者と観葉植物との距離および観葉植物の種類・大きさによって変わることを考慮し、緑視率R(0≦R≦1)は距離L(m)関数で表せる(概ね、距離の2乗に反比例する)と仮定している。
緑視率R=A×Lb……(2)
緑視率R=A×Lb……(2)
上記(2)式における係数A、bは、代表的な11種類の観葉植物について種類・大きさごとに予め求められデータベースに記憶されている。高さ1.0〜1.2mの観葉植物(概ね8号鉢)の場合のA、bの値を表5に示す。
2.2.2 積算緑視率算出部
配置する観葉植物の鉢数・距離を変えることによって積算緑視率を変化させながら、脳波測定・解析とSD法によるアンケートによって被験者の心理状態を予め実験し評定した。また、積算緑視率とリラックス度との関係を解析し、積算緑視率からリラックス度を推定する式を導出している(図4参照)。
配置する観葉植物の鉢数・距離を変えることによって積算緑視率を変化させながら、脳波測定・解析とSD法によるアンケートによって被験者の心理状態を予め実験し評定した。また、積算緑視率とリラックス度との関係を解析し、積算緑視率からリラックス度を推定する式を導出している(図4参照)。
図4のグラフは積算緑視率とリラックス度との関係式を示しており、例えば積算緑視率がゼロであればリラックス度もゼロになるが、積算緑視率5%→10%と増加するにつれてリラックス度も12→19と上昇し、積算緑視率が15%でリラックス度は最も高くなり、それを超えると、すなわち緑が多すぎてもリラックス度は低下する。
2.2.3 緑視率効果値算出部
居住者が仮想的に配置した観葉植物の種類・大きさ・鉢数から上記積算緑視率を求め、上記積算緑視率とリラックス度との関係を示した上記関係式にその積算緑視率を代入することより、その植物配置状態におけるリラックス効果値とした。
居住者が仮想的に配置した観葉植物の種類・大きさ・鉢数から上記積算緑視率を求め、上記積算緑視率とリラックス度との関係を示した上記関係式にその積算緑視率を代入することより、その植物配置状態におけるリラックス効果値とした。
2.3 空気浄化効果値処理部
空気浄化効果値処理部3cは、配置した観葉植物の種類と室内気温から求める。
空気浄化効果値処理部3cは、配置した観葉植物の種類と室内気温から求める。
詳しくは、ホルムアルデヒドなどの有害物質が植物の葉で吸収されるのは、基本的に葉の気孔を通して行われるため、気孔コンダクタンス(気孔抵抗の逆数)との相関が高いことが分かっている。このことと気孔抵抗のデータから観葉植物における種類別の空気浄化効果値を求めた結果が空気浄化効果値データ3c1としてデータベースに格納されており、その内容を表6に示す。
なお、上記空気浄化効果値データ3c1を記憶しているデータベースは空気浄化効果値記憶部として機能する。
なお、上記気孔抵抗とは、水蒸気、二酸化炭素ガス、有害物質ガスが植物の気孔を通って植物内と空気との間で移動する際の抵抗を意味し、気孔抵抗が小さいことは蒸散が盛んで有害物質を吸収しやすいことを表している。
気孔抵抗Rsは下記式により求めた。
Rs=Rt−Rb……(3)
Rt=(Ct−Ca)/T……(4)
Rb=(Cp−Ca)/E……(5)
Rs:気孔抵抗(h・m-1)
Rt:全抵抗(h・m-1)
Rb:境界層抵抗(h・m-1)
Ct:葉面における飽和水蒸気濃度(kg・m-3)
Ca:実験空間内空気の水蒸気濃度(kg・m-3)
T:蒸散速度(kg・m-2・h-1)
Cp:濾紙温度における飽和水蒸気濃度(kg・m-3)
E:濾紙からの蒸発速度(kg・m-2・h-1)
Rs=Rt−Rb……(3)
Rt=(Ct−Ca)/T……(4)
Rb=(Cp−Ca)/E……(5)
Rs:気孔抵抗(h・m-1)
Rt:全抵抗(h・m-1)
Rb:境界層抵抗(h・m-1)
Ct:葉面における飽和水蒸気濃度(kg・m-3)
Ca:実験空間内空気の水蒸気濃度(kg・m-3)
T:蒸散速度(kg・m-2・h-1)
Cp:濾紙温度における飽和水蒸気濃度(kg・m-3)
E:濾紙からの蒸発速度(kg・m-2・h-1)
室内に、より多くの観葉植物を配置した方が空気浄化効果は高まるが、研究によれば床面積約25m2の室内では観葉植物を4〜7鉢以上配置しても、空気浄化効果はあまり変化しない。そこで1鉢の空気浄化効果値は表6の値に0.2を掛けた値とし、空気浄化効果値処理部3cは、鉢ごとの空気浄化効果値の和を求め空気浄化効果値とする。ただし、その和の値が100を超えた場合は100とする。
2.4 視覚効果値処理部
視覚効果値処理部3dは、データベースに格納されている視覚疲労緩和・回復に関する実験の結果から求めた視覚効果値データ3d1(表7参照)を参照することにより、仮想的に配置された観葉植物の視覚効果値を求める。
視覚効果値処理部3dは、データベースに格納されている視覚疲労緩和・回復に関する実験の結果から求めた視覚効果値データ3d1(表7参照)を参照することにより、仮想的に配置された観葉植物の視覚効果値を求める。
なお、上記視覚効果値データ3d1を記憶しているデータベースは、視覚効果値記憶部として機能する。
上記表7に示されるように、マッサンギアナのように葉に斑や濃淡のあるもの方が、視覚に対する効果が大きい。
なお、複数の種類の観葉植物を配置した場合は、それらの観葉植物の視覚効果値のうちの最大値を全体の視覚効果値とする。
2.5 イメージ効果値処理部
2.5.1 安らぎ感値算出部
イメージ効果値処理部3eは安らぎ感値算出部3e1と華やかさ値算出部3e2とを有している。
2.5.1 安らぎ感値算出部
イメージ効果値処理部3eは安らぎ感値算出部3e1と華やかさ値算出部3e2とを有している。
安らぎ感値算出部3e1は、代表的な観葉植物11種類のイメージを、季節別、性別、年齢別に解析したデータベース内のイメージデータ3e3(表8参照)を参照することにより、配置された観葉植物の安らぎ感値を求める。
なお、イメージデータ3e3を記憶しているデータデータはイメージデータ記憶部として機能する。
表8におけるイメージデータ3e3において、評価したイメージは全部で21項目であるが、安らぎ感値は「安らぎのある」欄の値を選択する。
また、複数の種類の観葉植物、複数の鉢を配置した場合は、観葉植物の種類ごとの値に鉢数を掛けた加重平均値を全体の安らぎ感値とする。
2.5.2 華やかさ値算出部
華やかさ値算出部3e2は、上記イメージデータ3e3に含まれる「おしゃれな」、「優雅な」、「高級感のある」欄の値の平均値を選択する。
華やかさ値=(「おしゃれな」値+「優雅な」値+「高級感のある」値)/3
……(6)
なお、上記イメージデータ3e3は、居住者の性別、年齢、季節に応じたものを用いる。
華やかさ値算出部3e2は、上記イメージデータ3e3に含まれる「おしゃれな」、「優雅な」、「高級感のある」欄の値の平均値を選択する。
華やかさ値=(「おしゃれな」値+「優雅な」値+「高級感のある」値)/3
……(6)
なお、上記イメージデータ3e3は、居住者の性別、年齢、季節に応じたものを用いる。
また、複数の種類の観葉植物、複数の鉢を配置した場合は、観葉植物の種類ごとの値に鉢数を掛けた加重平均値を全体の華やかさ値とする。
2.6 グラフ化処理部
上記温熱快適効果値処理部3aによって求められた温熱快適効果値と、上記リラックス効果値処理部3bによって求められた緑視率効果値と、上記空気浄化効果値処理部3cによって求められた空気浄化効果値と、上記視覚効果値処理部3dによって求められた視覚効果値と、上記イメージ効果値処理部3eによって求められた安らぎ感値および華やかさ感値をそれぞれグラフ化処理部3fに与えられる。
上記温熱快適効果値処理部3aによって求められた温熱快適効果値と、上記リラックス効果値処理部3bによって求められた緑視率効果値と、上記空気浄化効果値処理部3cによって求められた空気浄化効果値と、上記視覚効果値処理部3dによって求められた視覚効果値と、上記イメージ効果値処理部3eによって求められた安らぎ感値および華やかさ感値をそれぞれグラフ化処理部3fに与えられる。
グラフ化処理部3fは、各効果値をレーダーチャートで可視出力するための画像化処理を行うように構成されており、各効果を項目1〜6の名前情報として、また、各効果の最大値と最小値を目盛情報として設定し、さらに、上記各算出部によって求められた効果値を目盛上にプロットし、各プロットを結んでレーダーチャートを作成するようになっている。
なお、本実施形態におけるグラフ化処理部3fでは、6種類の項目について各効果を数値化しグラフ化したが、項目数はこれに限らず、例えば、イメージデータベース3e3に格納されている他のイメージを項目として選択する等して増加することもできる。
3. 出力部
出力部4は、例えば液晶ディスプレイから構成され、図5の出力画面に示すように、グラフ化処理部3fから出力される情報に基づいて「温熱快適効果」、「リラックス効果」、「空気浄化効果」、「視覚効果」、「安らぎ感」、「華やかさ」の6つの項目を「期待される効果」表示エリア2gにレーダーチャートで表示するようになっている。
出力部4は、例えば液晶ディスプレイから構成され、図5の出力画面に示すように、グラフ化処理部3fから出力される情報に基づいて「温熱快適効果」、「リラックス効果」、「空気浄化効果」、「視覚効果」、「安らぎ感」、「華やかさ」の6つの項目を「期待される効果」表示エリア2gにレーダーチャートで表示するようになっている。
なお、本実施形態では説明の便宜上、入力部2のディスプレイと出力部4とを別の構成で示しているが、入力画面と出力画面は共通である。また、本発明の入力手段と出力手段は、液晶パネルのような表示装置の画面上にタッチパッドのような位置入力装置を組み合わせた、いわゆるタッチパネルで構成することもできる。
このように、所望する観葉植物を選んで室内の好きな所に仮想的に配置すれば、その観葉植物を配置することによって期待される各効果がグラフで表示され、また、仮想的に配置する観葉植物の種類、鉢数、観葉植物との居住者との距離を変化させると、その都度、出力部4のディスプレイの「期待される効果」の各項目の値が変化し、レーダーチャートの形状および面積が変化する。したがって、居住者はそのレーダーチャートを参照すれば、例えば、空気浄化に優れたタイプの観葉植物を優先させた配置や、安らぎ感を重視した観葉植物の配置等、自分の要望に最も適した緑化環境をデザインすることが可能になる。
なお、本実施形態では各効果をレーダーチャートで表示するように構成したが、これ以外の表示手法、例えば、棒グラフや円グラフで表示することもできる。
1 支援システム(居住環境緑化デザイン支援システム)
2 入力部(入力手段)
2a キーボード
2b マウス
2c ディスプレイ
2d 植物配置表示エリア
2e 観葉植物表示エリア
2f 選択中の植物表示エリア
2g 期待される効果表示エリア
3 処理部(処理手段)
3a 温熱快適効果値処理部
3b リラックス効果値処理部
3c 空気浄化効果値処理部
3d 視覚効果値処理部
3e イメージ効果値処理部
3f グラフ化処理部
4 出力部(出力手段)
2 入力部(入力手段)
2a キーボード
2b マウス
2c ディスプレイ
2d 植物配置表示エリア
2e 観葉植物表示エリア
2f 選択中の植物表示エリア
2g 期待される効果表示エリア
3 処理部(処理手段)
3a 温熱快適効果値処理部
3b リラックス効果値処理部
3c 空気浄化効果値処理部
3d 視覚効果値処理部
3e イメージ効果値処理部
3f グラフ化処理部
4 出力部(出力手段)
Claims (8)
- 観葉植物に関する各種情報を植物の種類別に記憶しているデータベースと、
居住環境の条件等を入力するとともに、上記データベース内の少なくとも一つの観葉植物を選択して仮想的に室内に配置する入力手段と、
上記観葉植物を仮想的に配置した際に、条件が特定された上記居住環境における温熱快適効果、リラックス効果、空気浄化効果、視覚疲労を緩和または回復させる視覚効果およびイメージによる効果を、上記データベースに記憶されている各種情報に基づいて数値化する処理手段と、
数値化された各効果を可視出力する出力手段と、を備えてなることを特徴とする居住環境緑化デザイン支援システム。 - 上記処理手段は、上記居住環境の室内照度分布を算出する照度分布算出部と、算出された上記室内照度分布に基づき気孔抵抗を算出する気孔抵抗算出部と、算出された上記気孔抵抗および換気量から室内の相対湿度を算出する相対湿度算出部と、相対湿度と温熱快適度との関係を記憶している湿度/温熱快適度記憶部とから構成される温熱快適効果値処理部を有し、この温熱快適効果値処理部は、上記相対湿度算出部によって求められた相対湿度に対応する温熱快適度を上記湿度/温熱快適度記憶部から求め、温熱快適効果値として出力するように構成されている請求項1記載の居住環境緑化デザイン支援システム。
- 上記処理手段は、距離の変化に応じて視野内で植物が占める割合が変化する関係を示した距離−緑視率関係式と、積算緑視率とリラックス度との関係を示した積算緑視率−リラックス度関係式とを記憶しているリラックス効果値処理部を有し、このリラックス効果値処理部は、上記距離−緑視率関係式に基づき、仮想的に配置された観葉植物と居住者との距離から緑視率を求め、上記積算緑視率−リラックス度関係式に基づいてリラックス度を求め、リラックス効果値として出力するように構成されている請求項1または2記載の居住環境緑化デザイン支援システム。
- 上記処理手段は、観葉植物の種類別の空気浄化効果値を記憶している空気浄化効果値記憶部を備えた空気浄化効果値処理部を有し、この空気浄化効果値処理部は、仮想的に配置された観葉植物の空気浄化効果値を上記空気浄化効果値記憶部から求めて出力するように構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の居住環境緑化デザイン支援システム。
- 上記処理手段は、視覚疲労緩和・回復に関する実験の結果から求めた視覚効果値を記憶している視覚効果値記憶部を備えた視覚効果値処理部を有し、この視覚効果値処理部は、仮想的に配置された観葉植物によって得られる視覚効果値を上記視覚効果値記憶部から求めて出力するように構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の居住環境緑化デザイン支援システム。
- 上記処理手段は、観葉植物の種類別のイメージを、季節別、性別、年齢別に解析したイメージデータ記憶部を備えたイメージ効果値処理部を有し、このイメージ効果値処理部は、仮想的に配置された観葉植物のイメージを上記イメージデータ記憶部から求めて出力するように構成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の居住環境緑化デザイン支援システム。
- 上記入力手段は、上記データベースに記憶されているすべての観葉植物を表示するエリアと、観葉植物を仮想配置するための部屋を平面図で表示するエリアと、選択中の観葉植物の名前、特徴等の情報を表示するエリアを有するディスプレイから構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の居住環境緑化デザイン支援システム。
- 上記出力手段は、数値化された各効果値をレーダーチャートで表示するエリアを有するディスプレイから構成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の居住環境緑化デザイン支援システム。
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