JP5295869B2 - アルカリ蓄電池モジュールおよび電池劣化判定方法 - Google Patents

アルカリ蓄電池モジュールおよび電池劣化判定方法 Download PDF

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本発明はアルカリ蓄電池モジュールおよび電池劣化判定方法に関する。
鉛蓄電池は通常フロート充電される。フロート充電では、満充電近くになるほど電流値が減少し、満充電近くでは充電電流値は極めて小さい。そのため、容量が10時間率で2000Ahという大容量であっても、電池温度の上昇がほとんどないので強制空冷の必要がない。そのため、鉛蓄電池では所要の電力量に応じて適当な容量の単セルを直列接続して使用する形態が採られている。
これに対し、ニッケル水素蓄電池、ニッケルカドミウム蓄電池等のアルカリ蓄電池は一般的に定電流で充電される。満充電近くになると電解液の水が分解する副反応が起きて、正極で酸素ガス、負極で水素ガスが発生する。正極で発生した酸素ガスは負極活物質と反応して吸収されるが、このとき発熱が起こる。発熱量はおよそ体積に比例し、放熱量は表面積に比例するため、体積が大きくなるほど放熱が困難になる。そのため、定電流で充電するアルカリ蓄電池では大型化が難しく、100Ahを大きく上回るような大容量の単セルは、現在まだ実用化されていない。
このようにアルカリ蓄電池では大容量の単セルが得られないため、大容量を必要とする場合には単セルを多数直列や並列に接続して使用する必要がある。このうち、直列接続のみの形態が最も単純な構成であるが、放電電流の上限値は単セルの上限値により制限される。また、蓄電池電圧と接続機器の入力電圧との差が大きいと昇圧または降圧時の損失が大きくなる。更に、降圧装置が故障して、機器に過度の高電圧が直接印加される危険を避けるため、降圧装置を冗長構成にする等の配慮が必要である。
直列接続のみの構成では放電電流値が不足する場合や、必要な容量を賄うために直列数を多くすると電圧が高くなり過ぎて降圧による効率低下が大きくなる。一方、アルカリ蓄電池を並列に接続した場合、その制御は直列のみの場合に比べて複雑になる。また、安定した放電をさせるためには、昇降圧制御と電流制限を行う放電器が必須である。
並列接続に伴う上記の制御の複雑さを避ける一つの方法として、複数の単セル同士を並列に接続して1モジュールとし、このモジュールを一つの大容量の単セルのように取り扱う方法が考えられる。即ち、このモジュールを直列に接続することにより、鉛蓄電池の場合と同様に、必要な電力量に応じたシステムが構築できると考えられる。しかし、アルカリ蓄電池の場合、単にN個の単セルを並列に接続して単セルのN倍の充電電流を流しても、各単セルに均等に電流が流れる保証はない。電流は各単セルの内部抵抗に反比例して分配されるので、内部抵抗が大きい単セルには過小な電流しか流れず、また内部抵抗が小さい単セルには過大な電流が流れる。蓄電池の内部抵抗は、使用開始直後はセル間で比較的均一であるが、使用するに連れて差が増大することが一般的である。従って、使用開始直後を除けば、満充電をどの単セルで判断したかにより、単セル間の充電アンバランスが生じ、モジュール全体として充電不足あるいは過充電となることも考えられる。満充電の単セルにおいて過充電が続くと電池の劣化を早め、電池の破裂等の事故にもつながる。また充電不足の単セルは放電時に過放電になり易く、やはり劣化を早める。このような恐れがあるため、アルカリ蓄電池の単セル同士を並列に接続してモジュール化して大容量の単セルのように見なし、更にそれを直列に接続して使用する方法は採られていない。
以上の理由で、アルカリ蓄電池を組み合わせて大容量で使用することは鉛蓄電池に比べて難しく、その普及は遅れていた。
北野、宮坂、山下、正代、2009年 電子情報通信学会総合大会 通信講演論文集2、S−105〜S−106頁(2009)
本発明は、上述の、アルカリ蓄電池を組み合わせて大容量で使用することの困難性に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、複数のアルカリ蓄電池単セルを並列に接続してなるモジュールを、1個の相当容量の単セルと同様に安全で、各セル間の容量ばらつきが小さいモジュールとすること、および、該モジュールにおける電池劣化判定方法を提供することである。
本発明の第1の発明では、複数のアルカリ蓄電池の単セルを並列接続したモジュールを次のように構成することを特徴とする。まず、第1のダイオードと第1の正温度係数サーミスタ(PTCサーミスタ、PTCはPositive Temperature Coefficientの略)とを直列に接続した第1の電路と、第1のダイオードとは逆向きに電流を流す第2のダイオードを有する第2の電路とを並列接続し、第1の電路と第2の電路とがともに1つのアルカリ蓄電池単セルと直列接続した構成を1サブモジュールとし、複数のサブモジュールを並列接続して1つのアルカリ蓄電池モジュールを構成する(図3参照)。このアルカリ蓄電池モジュールを充電器(図示せず)によって充電し、直流電源として利用する。ここで、PTCサーミスタは充電制御(図3に示した場合)または放電制御(図3のダイオードの向きをそれぞれ逆にした場合)を行うものである。
本発明の第2の発明では、複数のアルカリ蓄電池の単セルを並列接続したモジュールを次のように構成することを特徴とする。まず、第1のダイオードと第1の正温度係数サーミスタとを直列接続した第1の電路と、第1のダイオードとは逆向きに電流を流す第2のダイオードと第2の正温度係数サーミスタとを直列接続した第2の電路とを並列接続し、第1の電路と第2の電路がともに1つのアルカリ蓄電池単セルと直列接続した構成を1サブモジュールとし、複数のサブモジュールを並列接続して1つのアルカリ蓄電池モジュールを構成する(図4参照)。このアルカリ蓄電池モジュールを、充電器(図示せず)によって充電し、直流電源として利用する。ここで、第1のPTCサーミスタは充電制御を行うものであり、第2のPTCサーミスタは放電制御を行うものである。
以下に、上記モジュール構成を採用することによって、従来の課題であった並列接続されたアルカリ蓄電池単セル間の充放電アンバランスが解消されることを説明する。
正温度係数サーミスタは、チタン酸バリウム等の強誘電体の電気抵抗がキュリー点付近で急激に増大する性質を利用した素子である。一般に、正温度係数サーミスタにおいては、図1に示したように、印加電圧(1)と、強誘電体中を流れる電流(2)との関係は、保護電流値(3)と呼ばれる電流の極大点までは電流が印加電圧にほぼ比例して増大するが、保護電流値を超えると、強誘電体中で発生するジュール熱によって強誘電体の温度がキュリー点を超え、電気抵抗が増大し、電流は印加電圧が増大するにつれて減少する。この性質を利用して、蓄電池に過大な電流が流れないようにすることが可能である。
複数の蓄電池を並列に接続して定電流で充電すると、内部抵抗の小さい単セルには大きな電流が流れ、内部抵抗が大きい単セルには小さい電流しか流れない。そのため充電を同時に終了すれば充電容量に差が生じる。単セルのそれぞれに正温度係数サーミスタを直列に取り付けることにより、最大電流を制限し、電流差を小さく抑えることができるので、充電容量も均等化できる。
充電電流と放電電流が異なる場合には、順方向電流の向きが互いに逆な2つのダイオードを各単セルに直列接続することによって、充放電回路を充電回路と放電回路とに分け、充電回路と放電回路のそれぞれに、充電電流制御用と放電電流制御用の正温度係数サーミスタを挿入すればよい。なお、2つの正温度係数サーミスタのうちの一方を省いてもよい。
また、本発明の第3の発明では、上記第1または第2の発明の構成のアルカリ蓄電池モジュールを複数直列に接続することも特徴とする。
さらに、本発明の第4の発明では、上記第1または第2の発明のモジュール構成、もしくは上記第3の発明の構成でアルカリ蓄電池を充電する場合に、所定の上限電圧まで充電電圧を上昇させても、充電電流値が所定の値に達しない場合に、当該蓄電池モジュールは電池劣化を起こしたと判定することも特徴とする。
本発明により、複数のアルカリ蓄電池単セルを並列に接続し、少なくとも充電制御または放電制御を正温度係数サーミスタによって行い、1個の大容量の単セルと同様に安全で、各セル間の容量ばらつきの小さい充放電を行うことが可能なアルカリ蓄電池モジュールを提供することが可能となる。
正温度係数サーミスタの印加電圧と電流の関係を示す模式図である。 3個のアルカリ蓄電池単セルを並列に接続した図である。 3個の並列に接続されたアルカリ蓄電池単セルに充電電流制御用の正温度係数サーミスタを取り付けた図である。 3個の並列に接続されたアルカリ蓄電池単セルに充電電流制御用の正温度係数サーミスタと放電電流制御用の正温度係数サーミスタとを取り付けた図である。
以下、実施例に基づいて本発明を詳述するが、本発明は本実施例に限定されない。
[比較例]
図2に示すように、定格容量100Ahのニッケル水素蓄電池単セル3個(6、7、8)を互いに並列に接続し、正極側端子4と負極側端子5に充電器を接続して、室温において電流値60Aで充電した。各単セルを流れる充電電流は、充電開始1分後にそれぞれ22.6A、21.7A、15.7Aであった。また充電終止条件、すなわちdT/dt=0.3℃/分(dT/dtはセルの温度上昇速度)で終了直前の電流値はそれぞれ22.5A、21.6A、15.9Aであった。続いて電流値9Aで2時間、均等化充電を行った。そのときの各セルを流れる電流値はそれぞれ3.4A、3.2A、2.4Aであった。
充電終了後1時間の休止の後、同じ図2の正極側端子4と負極側端子5を電子負荷に接続し、3セルを並列接続のまま電流値90Aで定電流放電を行った。放電電流値は放電開始1分後にそれぞれ33.8A、32.4A、23.8Aであった。また放電終了直前にはそれぞれ、34.0A、32.5A、23.5Aであった。セル電圧1.0Vまで放電させた後、1時間の休止をおいて各セル間の接続を切断し、1セル毎に電子負荷に接続して電流値30Aで放電させたところ、放電容量は1.2Ah、5.8Ah、11.3Ahであった。このように、ニッケル水素電池単セル間で、大きな容量アンバランスが生じている。
図3に示すように、比較例と同一のニッケル水素蓄電池単セル6、7、8を用いて、第1のダイオードである充電用ダイオード9と第1の正温度係数サーミスタである充電電流制御用正温度係数サーミスタ11とを直列に接続した第1の電路と、充電用ダイオード9とは逆向きに電流を流す第2のダイオードである放電用ダイオード10を有する第2の電路とを並列接続し、第1の電路と第2の電路とがともに1つのアルカリ蓄電池単セル6、7または8に直列接続した構成を1サブモジュールとし、3つのサブモジュールを並列接続して1つのアルカリ蓄電池モジュールを構成した。
まず、このアルカリ蓄電池モジュールを、比較例と同様に電流値60Aで充電した。保護電流値は21.5Aであった。充電開始1分後の電流値はそれぞれ19.9A、21.4A、18.7Aであった。また充電終止条件、すなわちdT/dt=0.3℃/分による充電終了直前の電流値はそれぞれ19.8A、20.5A、19.7Aであった。続いて電流値9Aで2時間、均等化充電を行った。そのときの各セルを流れる電流値はそれぞれ2.6A、2.7A、3.7Aであった。
充電終了後1時間の休止の後、放電電流90Aでセル電圧1.0Vまで放電させた。放電終了1時間後、各単セルを切り離して電子負荷に接続し、30Aでセル電圧1.0Vまで放電させて残容量を測定した。残容量はそれぞれ0.8Ah、2.8Ah、6.5Ahであり、充電制御用の正温度係数サーミスタ11を取り付けたことにより、比較例の場合に比べて容量の均等化が実現できたことがわかった。
なお、図3に示したダイオードの向きを逆にすれば、放電電流制御のみを行うアルカリ蓄電池モジュールとなる。
図4に示すように、比較例と同一のニッケル水素蓄電池単セル6、7、8を用いて、第1のダイオードである充電用ダイオード9と第1の正温度係数サーミスタである充電電流制御用正温度係数サーミスタ11とを直列接続した第1の電路と、充電用ダイオード9とは逆向きに電流を流す第2のダイオードである放電用ダイオード10と第2の正温度係数サーミスタである放電電流制御用正温度係数サーミスタ12とを直列接続した第2の電路とを並列接続し、第1の電路と第2の電路とがともに1つのアルカリ蓄電池単セル6、7または8と直列接続した構成を1サブモジュールとし、3つのサブモジュールを並列接続して1つのアルカリ蓄電池モジュールを構成した。
まず、このアルカリ蓄電池モジュールを、実施例1と同様に充電電流60Aでを充電した。
充電終了後1時間の休止の後、放電電流90Aで定電流放電を行った。放電制御用正温度係数サーミスタの保護電流値は33Aであった。放電開始直後の各セルを流れる放電電流は、それぞれ29.2A、31.8A、29.0Aであった。またセル電圧1.0Vで放電終了直前の放電電流はそれぞれ、29.1A、32.1A、28.8Aであった。放電終了後1時間の休止の後、各セルを互いに切り離してそれぞれ電子負荷に接続し、残容量を測定した。残容量はそれぞれ1.3Ah、1.7Ah、1.8Ahであり、実施例1の場合と比較して、更に容量の均等化が実現できたことがわかった。
実施例1および2で用いた単セルの1つを容量が70Ah未満まで劣化した単セルに取り替え、実施例1および2と同様に接続して、充電電流60Aで充電を試みた。しかし、所定の上限電圧である19Vまで充電電圧を上昇させても充電電流は所定の値である60Aに達しなかったため、一部のセルが劣化しており、取り替えが必要と判定した。他のセルに比較して大きく劣化した単セルが並列に接続されていると、充電電流が所定値に達しないので、この点から蓄電池セルの劣化、取り替えの必要性を判定することが可能であることがわかった。このような電池劣化判定方法が有効である理由は、容量低下を起こした蓄電池セルは、容量低下を起こしていない蓄電池セルよりも少ない充電量で満充電に達し、その結果として、充電電流の合計が所定の値に達しなくなることにある。
比較例、実施例1、実施例2で用いた並列セル回路をそれぞれ4段直列に接続して充電器に接続し、充電電流60Aで充電した。充電終止条件、すなわちdT/dt=0.3℃/分で終了後、更に9Aで2時間充電した。
その後1時間の休止を挟んで90Aで4.0V(1.0V/セル)まで放電し、更に1時間後各単セルを切り離して30Aで放電し、残容量を比較した。その結果、残容量の最大と最小の差はそれぞれ、13.3Ah、5.2Ah、1.6Ahであり、比較例を用いた場合(13.3Ah)に比べて、正温度係数サーミスタを取り付けたことにより、各セル間の容量ばらつきが大幅に低下したこと(5.2Ah、1.6A)が確かめられた。
上記比較例と各実施例ではニッケル水素蓄電池セルを例に説明したが、本発明は、同じアルカリ蓄電池であるニッケルカドミウム蓄電池セルにおいても同様の効果を奏する。
1:印加電圧、2:電流、3:保護電流値、4:正極側端子、5:負極側端子、6:蓄電池A、7:蓄電池B、8:蓄電池C、9:充電用ダイオード、10:放電用ダイオード、11:充電電流制御用正温度係数サーミスタ、12:放電電流制御用正温度係数サーミスタ。

Claims (4)

  1. 第1のダイオードと第1の正温度係数サーミスタとが直列接続されている第1の電路と、前記第1のダイオードとは逆向きに電流を流す第2のダイオードを有する第2の電路とを並列接続し、前記第1の電路および第2の電路を1つのアルカリ蓄電池単セルに直列接続して1つのサブモジュールを構成し、複数の前記サブモジュールを並列接続して構成されることを特徴とするアルカリ蓄電池モジュール。
  2. 請求項1に記載のアルカリ蓄電池モジュールにおいて、前記第2の電路には、前記第2のダイオードと直列に第2の正温度係数サーミスタが挿入されていることを特徴とするアルカリ蓄電池モジュール。
  3. 請求項1または2に記載のアルカリ蓄電池モジュールにおいて、該アルカリ蓄電池モジュールが複数直列接続されていることを特徴とするアルカリ蓄電池モジュール。
  4. 請求項1、2または3に記載のアルカリ蓄電池モジュールを充電する過程において、充電電圧を所定の上限電圧まで上昇させても、充電電流値が所定の値に達しない場合に、当該アルカリ蓄電池モジュールは電池劣化を起こしたと判定することを特徴とする電池劣化判定方法。
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