JP5294170B2 - 無線通信可能なデバイス,無線通信方法,プログラム,及び情報記録媒体 - Google Patents

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Description

本発明は,無線通信可能なデバイスなどに関する。
近年,広帯域な信号を近距離間で高品質に伝送するための一手法として,無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)が提案されている。WPANとしては,ミリ波帯(例えば60GHz)の電波を利用した無線通信システムがある(たとえば,下記非特許文献1,2参照。)。このようなミリ波帯の電波を利用した無線通信システムは,大容量の伝送と,低コストとを実現する無線通信システムとして期待されている。
ここで,2つのデバイス間で無線通信を開始するためには,まず,一方のデバイスからビーコン(beacon)を送信する必要がある。ビーコンの送信は,たとえば,クワジオムニ(quasi−omni)ビームを用いることで行うことができる。
しかし,デバイスが移動した結果2つのデバイスの相対位置が変化したり,2つのデバイス間に人や障害物が進入してきたりすると,ビーコンを含む電波の受信精度が低くなり,最終的には,ビーコンを見失って,通信が途絶えてしまう。そして,通信が途絶えた場合,ビーコンの送信からやり直す必要がある。そのため,コストと時間がかかることになる。
Federal Communications Commission,"Amendment of parts 2,15 and 97 of the Commision’s rules to permit use of radio frequencies above 40GHz for new radio applications",FCC 95−499,ET Docket No.94−124,RM−8308,1995年12月 H.Ikeda,Y.Shoji,"60GHz Japanese regulations",IEEE802.15−05−0525−03,2006年10月
そこで,本発明は,通信が途絶える可能性を低くして,通信の安定性を高めることができる無線通信可能なデバイスを提供することを目的とする。また,本発明は,無線通信方法,プログラム,及び情報記録媒体も提供することを目的とする。線通信うしnるはりビームPNC)
本発明は,基本的には,他のデバイス(10)との間で無線通信可能なデバイス(20)などに関する。このデバイス(20)は,他のデバイス(10)から送信された電波を受信することで,複数のビーコンを個別に受信する受信手段と,その受信手段で受信した複数のビーコンのうち,少なくとも2つのビーコン(第1のビーコン及び第2のビーコン)をモニターするモニター手段とを含む。このデバイス(20)によれば,少なくとも2つのビーコンをモニターするので,1つのビーコンを用いた無線通信が何らかの影響により遮断されても,他のビーコンを用いて無線通信を行うことができる。つまり,通信が途絶える可能性を低くして,無線通信の安定性(ロバスト性)を高めることができる。
また,本発明の他の側面では,上記モニター手段が,第1のビーコンの強度と,第2のビーコンの強度を比較する比較手段を含んでいる。また,デバイス(20)は,第1のビーコンを用いた無線通信と,第2のビーコンを用いた無線通信との間で切り替えるスイッチング手段とを含んでいる。そして,比較手段による比較の結果,第2のビーコンの強度が第1のビーコンの強度よりも高いときは,スイッチング手段を用いて,第1のビーコンを用いた無線通信から第2のビーコンを用いた無線通信に切り替える。このように構成することにより,第1のビーコンを用いた無線通信が遮断される前に,他のデバイス(10)との間の無線通信を維持することが可能となる。
ところで,他のデバイス(10)は,無線通信に用いる電波として,クワジオムニビーム(quasi−omniビーム)を送信するか,複数方向への指向性を有する指向性ビームを送信する。指向性ビームは,クワジオムニビームの幅を狭めることによって生成されたものであってもよい。
また,本発明の好ましい側面では,他のデバイス(10)が指向性ビームを送信する場合であって,デバイス(20)の受信手段は,複数方向のうちの第1方向から指向性ビームを受信することで,第1のビーコンを受信し,また,複数方向のうちの第1方向とは別の方向から第2のビーコンを受信する。これにより,デバイス(20)は,受信可能な方向として2方向を確保することができる。
また,本発明の好ましい側面では,デバイス(20)が,ビームフォーミングを行って他のデバイス(10)との間の空間に電波を送信する送信手段と,ビームフォーミングによって無線通信可能となる空間の中から,他のデバイス(10)と無線通信を行うのに適した方向を決定する決定手段とをさらに含む。この場合,上記受信手段は,第2のビーコンを決定手段が決定した方向から受信する。このように,デバイス(20)もビームフォーミングを行うように構成することにより,通信の品質をより確実に高めることができる。
また,本発明の別の側面は,第1デバイス(10)と第2デバイス(20)との間で電波を用いた無線通信を行うための無線通信方法である。この無線通信方法は,第1デバイス(10)が,第2デバイス(20)へ,複数のビーコンを含む電波を送信することで,第2デバイス(20)が複数のビーコンを個別に受信するステップと,第2デバイス(20)が,複数のビーコンのうち,少なくとも2つのビーコン(第1のビーコン及び第2のビーコン)をモニターするステップとを含む。このような側面によっても,上述した効果と同等の効果を奏することができる。
さらに,本発明のさらに別の側面は,上述したデバイス(20)によって実行されるようなプログラムや当該プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な情報記録媒体である。
本発明によれば,1つのビーコンを用いた無線通信が何らかの影響により遮断されても,他のビーコンを用いて無線通信を行うことができる。つまり,通信が途絶える可能性を低くして,無線通信の安定性(ロバスト性)を高めることができる。
図1は,本発明の無線通信システム1の構成例を示す図である。 図2は,図1に示す無線通信システム1において実施される無線通信方法の手順を示すフローチャートである。 図3は,図2の各ステップにおける処理を説明するのに有用な模式図である。 図4は,コードブックを用いたときのビームのパターンの一例を模式的に示す図である。 図5は,ビームフォーミングに関するフィールドを模式的に示す図である。 図6は,アソシエーション処理時のデータを模式的に示す図である。 図7は,デバイス能力に関する情報要素(IE)をデバイスに報知するときのデータを模式的に示す図である。 図8は,CTA(チャネル時間割当て)時のデータを模式的に示す図である。 図9は,ビームフォーミング用のトレーニングシーケンスに対応するデータを模式的に示す図である。 図10は,ビームフォーミング時のフィードバック用の情報要素(IE)を含むデータを模式的に示す図である。 図11は,CTA内における,デバイス−デバイス間のリンク確立処理に関するデータを詳細に示す図である。 図12は,セクター探索用の情報要素(IE)を含むデータを模式的に示す図である。 図13は,CTA内における,セクター探索処理に関するデータを詳細に示す図である。 図14は,ビーム探索用の情報要素(IE)を含むデータを模式的に示す図である。 図15は,CTA内における,ビーム探索処理に関するデータを詳細に示す図である。 図16は,複数のビーコンをモニターするのに必要なデータを模式的に示す図である。 図17は,図16に示すデータにおけるトラッキングに関する情報を説明するのに有用な図である。
以下,図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。しかしながら,以下説明する形態はある例であって,当業者にとって自明な範囲で適宜修正することができる。
図1は,本発明の無線通信システム1の構成例を示す図である。図1に示すように,本システム1は,無線通信可能な第1デバイス10と,無線通信可能な第2デバイス20とを含んでいる。なお,本システム1は,2つのデバイス10,20を含むとしたが,さらに,別の通信可能なデバイスを含んでもよい。
無線通信システム1では,一般的なビームフォーミング技術を利用してデバイス10,20間で無線通信を行う。無線通信としては,家庭用のビデオシステムにおけるデータ転送などが考えられる。ビームフォーミング(BF)は,MACレイヤープロトコルに基づいたコードブックに従って行われる。コードブックは,0°,90°,180°,270°の4種類の位相シフトを,振幅変化させることなく用いて生成されたものである。
無線通信は,たとえば,無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)において,60GHz帯の電波を用いて行われる。そして,本システム1では,第1デバイス10から第2デバイス20へのデータの送信や,第2デバイス20から第1デバイス10へのデータの送信や,それら双方向のデータ送信が可能に構成されている。なお,電波の周波数帯域は,60GHz帯のものに限られることはないが,WPANでは,電波の周波数帯域が59〜76GHzから選択されることが好ましい。そして,詳細については後述するが,本態様によれば,データのストリーミングのパフォーマンスが高まるとともに,データレートが高まる。そのため,本態様を,家庭用のビデオシステムにおけるデータ転送に適用した場合,大容量のデータ転送が可能となり,たとえば圧縮状態から復元した動画データや非圧縮の動画データをも容易に送信することが可能となる。
続いて,デバイス10,20について説明する。
第1デバイス10は,図1に示すように,電波を送信する送信機として機能する送信部と,受信機として機能する受信部とを有している。第2デバイス20も,第1デバイス10と同様に,送信機として機能する送信部と,受信機として機能する受信部とを有している。各送信部は,複数個(t個)のアンテナ素子単体を有しており,アンテナアレイを構成している。各受信部は,複数個(r個)のアンテナ素子単体を有しており,アンテナアレイを構成している。そして,第1デバイス10と第2デバイス20とは,ビームフォーミング技術を利用することによって,互いにリンクを確立して,データの送受信(通信)を行う。
なお,デバイス10,20に設けるアンテナとしては,さまざまなものを使用することが可能である。アンテナとしては,アンテナ素子単体,セクター化されたアンテナ,切替アンテナ,1次元(1D)ビームフォーミングアンテナアレイ,及び2次元(2D)ビームフォーミングアンテナアレイを例示することができる。
図2は,図1に示す無線通信システム1において実施される無線通信方法の手順を示すフローチャートである。図2におけるSは,各ステップを示す。本方法が実施されることにより,第1デバイス10と第2デバイス20とが互いにリンクを確立して,データの送受信(通信)が可能となる。そのため,図2に示す方法に対応するプログラムは,ビーム選択アルゴリズムとして,第1デバイス10及び第2デバイス20に格納されている。図3は,図2の各ステップにおける処理を説明するのに有用な模式図である。
図2に示すように,無線通信方法は,ビーコン(beacon)を送信することで,ビームフォーミングを行って,デバイス−デバイス間のリンクを確立させるための第1段階(S10)と,ビームフォーミングの第1調整(粗いビームフォーミング)を行うことで,セクター探索を行う第2段階(S20)と,ビームフォーミングの第1調整に続く第2調整(精細なビームフォーミング)を行うことで,ビーム探索(ビームトラッキング)を行う第3段階(S30)と,データ通信を行うステップ(S40)とを含んでいる。なお,後述するように,第1段階(S10)では,デバイス−デバイス間のリンクを確立させるために,クワジオムニ探索(quasi−omni探索)も行われる。
まず,第1段階(S10)では,送信機として機能するデバイス(ここでは,第1デバイス10とする)が,MACレイヤープロトコルで定められたビーコン(beacon)を送信する。ビーコンとは,無線通信端末であるデバイスの基本情報を他のデバイスに報知するための信号である。そして,受信機として機能するデバイス(ここでは,第2デバイス20とする)が,ビーコンの受信に成功すると,つまり,デバイス−デバイス間のリンクが確立すると,ビーコンとして送信されているビームの中から,両者の間でデータ通信を行うためのビームが選択される。ここでは,データ通信を行うためのビームとして,互いに異なる複数(たとえば2種類)のクワジオムニ(quasi−omni)ビームが選択される(クワジオムニ探索)。クワジオムニビームとは,準無指向性のビームを意味する。なお,図3に示す例では,2種類のクワジオムニビームは,第1ベストクワジオムニビームと,第2ベストクワジオムニビームである。
ところで,第1デバイス10が送信している2種類のクワジオムニビームは,それぞれ,第1デバイス10の周囲にある空間にビームのパターンを形成している(ビームフォーミング)。ここで,ビームのパターンは,第1デバイス10及び第2デバイス20の周囲にある障害物などによって決まる。そして,第1デバイス10が送信したビームのパターンにおける,電波のエネルギー損失が少ない部分に,第2デバイス20が配置されていれば,第2デバイス20は,第1デバイス10から電波を安定して受信することが可能となる。つまり,第1デバイス10から送信された電波を第2デバイス20が受信できるような状態となることで,デバイス−デバイス間のリンクが確立することとなる。
続いて,第2段階(S20)では,ビームフォーミングによって形成されたビームのパターンの調整を行う。具体的には,調整としてビームの絞り込みを行ってビームに指向性を持たせる。この絞り込みに応じて,ビームのパターン(電波のエネルギー損失が低い領域や高い領域)も変わることとなる。そして,ビームの絞り込みを複数のパターンで行うことで,第1デバイス10と第2デバイス20との間のリンクが維持できる領域を決定する。ここで,ビームの絞り込みを行う領域は,クワジオムニビームによって形成されるビームのパターン領域が,たとえば4等分される程度に行う。このように4等分した領域を,以下「セクター」とも称する。そして,第1デバイス10と第2デバイス20との間のリンクが維持できるセクターのうち,最もリンクが維持しやすい,電波のエネルギー損失が最も少ないセクターを,ベストセクターとする。これにより,セクター探索を完了する。
そして,第3段階(S30)では,ビームトラッキングを行う。ビームトラッキングは,上述したセクター探索と同様に,第1デバイス10と第2デバイス20との間のリンクが維持できる領域(セクターよりも小さい領域)のうち,最もリンクが維持しやすい,電波のエネルギー損失が最も少ない領域を求めるものである。このビームトラッキングは,第2段階において定められたベストセクター内で行うだけでよい。ここで,ビームトラッキングのために,コードブックを用いてもよい。そのようにして求めた領域では,分解能が最も高いビーム(以下,「中心ビーム」とも称することがある)が局在していると考えることができる。ここで,図3に示すように,中心ビームとそれに隣接するビーム(隣接ビーム)の組を「ベストクラスター」と称することとする。
ところで,本態様では,第1段階において,2種類のクワジオムニビームを送信している。そのため,第3段階では,各クワジオムニビームについて,中心ビームが定まることとなる。つまり2種類の中心ビームと,2種類のベストクラスター(第1ベストクラスター及び第2ベストクラスター)とが定まることとなる。
そして,ステップS40では,データ通信を行う。具体的には,第1デバイス10は,2種類のビーム(中心ビーム)のうち,一方のビームを用いて,第2デバイス20へのデータを送信する。これにより,第1デバイス10から第2デバイス20へのデータ送信を効率的に行うことができる。また,第2デバイス20は,他方のビームに対応する位置に,当該第2デバイス20から送信された電波が局在するように指向性を持たせ,その状態で第1デバイス10へのデータを送信する。これにより,電波のゲインを十分に高めることができ,その結果,第2デバイス20から第1デバイス10へのデータ送信を効率的に行うことができる。すなわち,本態様によれば,双方向のデータ通信が効率的に行うことができる。なお,本態様のように,ビームの位置を特定して,その位置を中心にしてデータ通信を行うことは,第1デバイス10と第2デバイス20の間に,データ通信用のチャネルを擬似的に設けることに相当すると云える。
上述した態様によれば,3種類の異なる幅をもつビーム(クワジオムニビーム,ベストセクターに対応するビーム,中心ビーム)が生成される。具体的には,クワジオムニビームから,ビームの幅を狭くしていくことで,中心ビームが求まる。このようにすることで,アンテナのゲインの高効率化を図ることができる。なお,クワジオムニビームの段階で,デバイス−デバイス間のリンクが確立されているので,その後にビームの幅を狭くしても,確立しているリンクが切断されることはない。そして,アンテナのゲインの高効率化を図ることができるので,データレートを高くすることができるとともに,データ送信というシナリオにおいて高いパフォーマンスを発揮することができる。また,ビームの幅を狭くすることで,電力消費も抑えることができる。
以下,上述したような各処理を実現するのに必要なシステム構成やデータ構造について詳細に説明する。
本態様では,第1デバイス10は,当該デバイスを無線端末として機能させるための無線端末管理機能(SME:station management entity)を実現するためのコントローラーと,MAC(Medium Access Control)レイヤーを扱うためのMACレイヤー管理機能(MLME:MAC layer management entity)を実現するピコネットコントローラー(PNC)とが実装されている。第2デバイス20も,第1デバイス10と同様に,SMEを実現するためのコントローラーと,ピコネットコントローラー(PNC)とが実装されている。なお,第1デバイス10が有するコントローラーは,ピコネットコントローラー(PNC)に限られることはなく,ビームフォーミングを制御可能なコントローラーであればいかなるものであってもよく,そのようなコントローラーは,ソフトウェアによって実現されてもよいし,ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせで実現されてもよい。
さらに,第1デバイス10は,ビームの幅を調整するためのビーム用コードブックを扱うことができるように構成されている。ここで,コードブックは,MACレイヤープロトコルに準拠するようにデザインされていることが好ましく,この場合,コードブックをピコネットコントローラー(PNC)で扱うことが可能となる。なお,コードブックは,ピコネットコントローラー(PNC)以外のコントローラーが扱ってもよい。いずれにしても,コードブックは,対応するデバイスの記憶手段としてのメモリに格納されており,必要に応じて読み出されて利用される。第2デバイス20も,第1デバイス10と同様に,コードブックを扱うことができるように構成されている。
ここで,コードブックについて具体例を挙げて詳細に説明する。
コードブックは,マトリックス(行列)である。そして,マトリックスの各列は,1種類のビーム(つまり1つのアンテナ素子単体)に対応しており,各列をデザイン(指定)することによって,ビームフォーミングのウェイトベクトル(つまり,ビームのパターン)が定まることとなる。そして,コードブックを用いることで,たとえば無指向性のビームに所望の指向性を持たせることができる。
コードブックの生成には,0°,90°,180°,270°の4種類の位相シフトを利用することが好ましい。そして,位相0°を「+I」,位相180°を「−I」,位相90°を「+Q」,位相270°を「−Q」とすると,コードブックは,これらの組み合わせで表される。たとえば,8種類のアンテナ素子単体から8種類のビームのパターンを作成する場合,下記数1に示すような行列に対応するコードブックWが用いられる。なお,本態様では,電力損失を最小限に抑えるために,振幅調整を行わない。また,図4には,下記数1に示す行列をコードブックとして用いたときのビームのパターンが模式的に示されている。
Figure 0005294170
このようなコードブックは,無線通信の規格に適合したものとなり得るので,汎用性が高い。すなわち,本発明に係る無線通信方法を既存の無線通信方法に容易に適用することができる。
続いて,上述したように構成された第1デバイス10及び第2デバイス20間で行われる無線通信についてより詳細に説明する。
まず,上述した第1段階(S10)について詳細に説明する。この第1段階では,第1デバイス10の送信部と,第2デバイス20の受信部との間で,ベストクワジオムニビームの対が検出される。
その検出を実現するために,まず,第1デバイス10は,送信部からNt個のクワジオムニビームを送信する。これらのビームは,MACレイヤープロトコル(たとえばIEEE802.15.3b)に準拠しており,フィールドとして,ビーコンやビームフォーミング(BF)が予め設定されている。ビームフォーミングに関するフィールドには,第1デバイス10のビームフォーミング能力のいくつかについて情報要素(IE:information element)が設定されており,具体的には,図5に示すように,クワジオムニビームの数,ビーム切替え(ビームスイッチング),及びアンテナのタイプを示す情報が設定されている。
そして,第1デバイス10の送信部からNt個のクワジオムニビームを送信した場合,第2デバイス20は,受信部で,Mr個までのクワジオムニビームを受信可能であり,受信に成功すると,第1デバイス10にその旨を通知する。
第2デバイス20がクワジオムニビームの受信に成功するまでの間におけるデータのやりとりについて詳細に説明する。
<第1ステージ>
まず,MACレイヤーで定められている処理(アソシエーション要求及びアソシエーション応答)が行われている。このとき,各デバイスは,ピコネットコントローラー(PNC)との間で,図6に示すような構造のデータをやりとりする。具体的には,各デバイスは,当該デバイスの能力に関する情報要素(IE)をピコネットコントローラー(PNC)に報知して,当該ピコネットコントローラー(PNC)のレジスターに登録する。このようにして,アソシエーションが確立した状態となる。
<第2ステージ>
続いて,ピコネットコントローラー(PNC)は,図7に示す構造のデータを用いて,CAP内でデバイス能力に関する情報要素(IE)を,アソシエーション確立済みのデバイス(第1デバイス10及び第2デバイス20)に報知する。ここで,CAPとは,競合アクセス期間(contention access period)をさす。この報知の際,ピコネットコントローラー(PNC)は,アナウンスコマンドを用いる。これにより,双方のデバイス(第1デバイス10及び第2デバイス20)は,他方のデバイスの能力に関する情報を取得することになる。
<第3ステージ>
第1デバイス10及び第2デバイス20の一方は,得られた対象物のデバイス能力に基づいてCTAを算出する。ここで,CTAとは,チャネル時間割当て(channel time allocation)をさす。図8に示すように,信号の発生元(Src.DEV)である第1デバイス10は,ピコネットコントローラー(PNC)に対して,CTA要求コマンドを送信する。これに応じて,ピコネットコントローラー(PNC)は,第1デバイス10にCTA応答コマンドを送信することで,第1デバイス10のためにCTAを割当てる。これにより,デバイス−デバイス間のリンクが,割当てたCTA内で確立することとなる。
<第4ステージ>
第1デバイス10は,図9に示すトレーニングシーケンスに対応するデータ(以下,「TSデータ」ともいう)を,Ntグループ分,送信する。トレーニングシーケンスとしては,本態様では,Tensor com社が定めたものを用いる。TSデータは,図9に示すように,シンク(SYNC)フィールドと,チャネル推定(CE)フィールドとを含んで構成されている。ここで,Ntグループ分のTSデータの送信は,第1デバイス10が各クワジオムニビームを送信することから始まる。つまり,TSデータは,各グループにつきMt回送信されることとなる。そうすることにより,第2デバイス20が,第2デバイス20自身の受信側クワジオムニビームのいずれかから,少なくとも1つのTSデータを受信することを期待することができる。
<第5ステージ>
複数グループ分のTSデータを第1デバイス10から第2デバイス20へ送信している間において,第2デバイス20は,自身のクワジオムニビームを1つずつ切り替えて,各クワジオムニビームにつき時間Tsの間待機する。これにより,第2デバイス20が,自身の任意のクワジオムニビームからTSデータを受信することを期待することができる。ここで,時間Tsは,トレーニングシーケンスに要する期間である。第2デバイス20は,Mr×Tsに亘る期間の後に,このようなスキャニングを,第1回目のクワジオムニビームから繰り返す。
<第6ステージ>
第1デバイス10が,Ntグループ分のTSデータの全てを送信し終えた後には,第2デバイス20は,TSデータの少なくとも1つを受信していることとなる。ところで,第2デバイス20は,TSデータを受信するときはいつも,推定した通信リンクのSNRに応じて,第1デバイス10が送信した複数のクワジオムニビームの中から,ベストクワジオムニビームを決定するとともに,第2デバイス20自身の受信側ベストクワジオムニビームを決定している。ここで,通信リンクのSNRは,トレーニングシーケンスごとに求められる。そのため,トレーニングシーケンスが行われるたびに,第2デバイス20から第1デバイス10へと,図10に示すようなビームフォーミング時のフィードバック用の情報要素(IE)が送信される。
<第7ステージ>
TSデータが第1デバイス10から第2デバイス20へ送信されるに従って,第2デバイス20は,各グループにつきNr回分の繰り返しを,第4ステージでの解読と同じ方法で行いながら,Mtグループ分のTSデータを送信する。そうすることにより,第1デバイス10が,第1デバイス10自身の受信側クワジオムニビームのいずれかから,少なくとも1つのTSデータを受信することを期待することができる。
<第8ステージ>
TSデータが第2デバイス20から第1デバイス10へ送信されている間,第1デバイス10は,第5ステージでの解読と同じ方法でクワジオムニビームのいずれかからトレーニングシーケンスを受信しようとする。
<第9ステージ>
第2デバイス20が,Mtグループ分のTSデータの全てを送信し終えた後には,第1デバイス10は,TSデータの少なくとも1つを受信していることとなる。第1デバイス10は,TSデータを受信するたびに,推定した通信リンクのSNRに応じて,第2デバイス20が送信した複数のクワジオムニビームの中から,ベストクワジオムニビームを決定するとともに,第1デバイス10自身の受信側ベストクワジオムニビームを決定している。
<第10ステージ>
トレーニング期間の後,第2デバイス20は,第1デバイス10のベストクワジオムニビームのオフセットインデックスをフィードバックする。このフィードバックは,第2デバイス20が,図10に示す構造のデータ(ビームフォーミングに関するフィードバック用の情報要素(IE))を,第1デバイス10へと送信することで行われる。図10に示すデータの送信方向は,Mt回分の送信のそれぞれに応じたものであり,その送信の際には,アナウンスコマンドが用いられる。
<第11ステージ>
第2デバイス20が,第1デバイス10へとフィードバックを送信している間,第1デバイス10は,受信側ベストクワジオムニビームから,フィードバック情報を得ようとする。ここで,受信側ベストクワジオムニビームは,上述した第9ステージのトレーニングステップの間に決定されるものである。
<第12ステージ>
ビームフォーミング(BF)に関するフィードバックとして受信した情報要素(IE)にしたがって,第1デバイス10は,自身にとってベストな,送信側クワジオムニビームを把握する。また,第1デバイス10は,把握したクワジオムニビームをベストクワジオムニビームとして用いて後続の送信を行う。
<第13ステージ>
第2デバイス20が第1デバイス10へとフィードバックしたことに応じて,第1デバイス10は,第2デバイス20のベストクワジオムニビームのオフセットインデックスをフィードバックする。このフィードバックは,第1デバイス10が,ビームフォーミングに関するフィードバック用の情報要素(IE)(図10参照)を,第2デバイス20へと送信することで行われる。この送信の際には,アナウンスコマンドが用いられる。ただし,第1デバイス10は,フィードバックの送信を,ベストクワジオムニビームから1度で行う必要がある。なお,ベストクワジオムニビームは,上述した第12ステージのトレーニングステップの間に決定されるものである。
<第14ステージ>
第1デバイス10が第2デバイス20へとフィードバックを送信している間,第2デバイス20は,受信側クワジオムニビームのうち,自身にとってベストなクワジオムニビームを用いることで,フィードバックを受信しようとする。
<第15ステージ>
上述した全ての動作(オペレーション)が行われることによって,図11に示すようなデータのやりとりがなされ,最終的には,双方の送信方向(第1デバイス10から第2デバイス20への送信方向,及び第2デバイス20から第1デバイス10への送信方向)に関して,ベストクワジオムニビームの対が決定される。
なお,第2デバイス20が,上記第5ステージの間に,第1デバイス10からTSデータを何も受信しない場合,又は,第2デバイス20が上記第14ステージで第1デバイス10からフィードバックを何も受信しない場合,第2デバイス20は,「ビームフォーミング失敗」の旨を宣言する。具体的には,この宣言は,第2デバイス20が,ピコネットコントローラー(PNC)にアナウンスコマンドとともにビームフォーミング失敗の旨の情報要素を送信することで行われる。これに応じて,ピコネットコントローラー(PNC)は,その旨を,アナウンスコマンドを用いることで第1デバイス10に報知する。その後,第1デバイス10は,本処理を再開するか断念するかの一方を選択することとなる。
第1デバイス10が,上記第8ステージの間に,第2デバイス20からTSデータを何も受信しない場合,又は,第1デバイス10が上記第11ステージで第2デバイス20からフィードバックを何も受信しない場合,第1デバイス10は,「ビームフォーミング失敗」を宣言する。具体的には,この宣言は,第1デバイス10が,ピコネットコントローラー(PNC)にアナウンスコマンドとともにビームフォーミング失敗の旨の情報要素を送信することで行われる。そして,ピコネットコントローラー(PNC)は,その旨を,アナウンスコマンドを用いることで第2デバイス20に報知する。その後,第2デバイス20は,本処理を再開するか断念するかの一方を選択することとなる。
続いて,第2段階(S20)について詳細に説明する。この第2段階では,セクター探索が行われて,第1デバイス10及び第2デバイス20間の第1ベストセクターと第2ベストセクターの対が検出される。この検出を実現するために,第1デバイス10や第2デバイス20は,以下のように構成又は設定されている。
第1に,第1デバイス10及び第2デバイス20の双方は,幅を狭めたファインビーム用のコードブックを有している。このコードブックは,それらデバイスの周囲において関心のあるターゲットエリアの全領域をカバーすることが可能となるように作成されたものである。
第2に,第1デバイス10及び第2デバイス20の双方は,ファインビームをセクターにグルーピングする。このようにしても,第1段階(S10)で決定されたクワジオムニビーム(以下,「選択クワジオムニビーム」ともいう)によってカバーされた全領域をカバーすることが可能である。
第3に,第1デバイス10及び第2デバイス20は,第1段階(S10)で決定されたクワジオムニビームを用いることによって,互いに通信を行うことが可能となっている。
第4に,第1デバイス10は,送信部用にJt個のセクターを有しており,それらセクターによって,送信部用の選択クワジオムニビームをカバーする。また,第1デバイス10は,受信部用にJr個のセクターを有しており,それらセクターによって,受信部用の選択クワジオムニビームをカバーする。それらに応じて,第2デバイス20は,送信部用にKt個のセクターを有しており,それらセクターによって,送信部用の選択クワジオムニビームをカバーするとともに,受信部用のKr個のセクターを有しており,それらセクターによって,受信部用の選択クワジオムニビームをカバーする。なお,これらの情報は,図12に示すセクター探索用の情報要素(IE)に含まれており,第1デバイス10及び第2デバイス20の双方が参照可能となっている。
そして,上述したように構成又は設定された第1デバイス10と第2デバイス20とを用いることで,第2段階(S20)のセクター探索が以下の手順で行われる。
<第1ステージ>
まず,第1デバイス10及び第2デバイス20は,セクター候補情報を互いにアナウンスコマンドを用いて送信し合う。具体的には,第1デバイス10は,セクター候補情報として,Jt及びJrを第2デバイス20に送信し,それに応じて,第2デバイス20は,セクター候補情報として,Kt及びKrを第1デバイス10に送信する。
<第2ステージ>
続いて,第1デバイス10及び第2デバイス20は,上述した第1段階(S10)の第4ステージ〜第15ステージで定められている動作と同じ動作を行う。ただし,Nt,Nr,Mt,及びMrは,それぞれ,Jt,Jr,Kt,及びKrに置き換える必要がある。そして,セクター探索中に,第1デバイス10及び第2デバイス20は,セクター候補のあらゆる組み合わせ(コンビネーション)について,SNRを記録する。
<第3ステージ>
上述した全ての動作(オペレーション)が行われることによって,図13に示すようなデータのやりとりがなされる。最終的には,SNRテーブルに基づいて,双方の送信方向(第1デバイス10から第2デバイス20への送信方向,及び第2デバイス20から第1デバイス10への送信方向)に関して,ベストセクターの対(つまり,第1ベストセクターと第2ベストセクターの対)を決定する。
なお,第2段階(S20)においても,第1デバイス10及び第2デバイス20は,「ビームフォーミング(BF)失敗」の旨を宣言することがある。この宣言がなされる場合は,上述した第1段階(S10)において定められている場合と同様である。
続いて,第3段階(S30)について詳細に説明する。この第3段階では,ビーム探索(ビームトラッキング)が行われて,第1デバイス10及び第2デバイス20間の第1ベストビームと第2ベストビームの対が検出される。この検出を実現するために,第1デバイス10や第2デバイス20は,以下のように構成又は設定されている。
第1に,第1デバイス10及び第2デバイス20の双方は,幅をさらに狭めたスーパーファインビーム用のコードブックを有している。このコードブックは,それらデバイスの周囲において関心のあるターゲットエリアの全領域をカバーすることが可能となるように作成されたものである。
第2に,第1デバイス10及び第2デバイス20の双方は,スーパーファインビームを第2段階(S20)で決定されたセクター(以下,「選択セクター」ともいう)内でグルーピングする。言い換えると,スーパーファインビームで選択セクターを分解する。したがって,選択セクターによってカバーされた全領域は確実にカバーされることとなる。
第3に,第1デバイス10及び第2デバイス20は,第2段階(S20)で決定されたベストセクターを用いることによって,互いに通信を行うことが可能となっている。
第4に,第1デバイス10は,送信部用にSt個のビーム用のビーム領域を有しており,それらビーム領域によって,送信部用の選択セクターをカバーする。また,第1デバイス10は,受信部用にSr個のビーム領域を有しており,それらビーム領域によって,受信部用の選択セクターをカバーする。それらに応じて,第2デバイス20は,送信部用にTt個のビーム領域を有しており,それらビーム領域によって,送信部用の選択セクターをカバーするとともに,受信部用のTr個のビーム領域を有しており,それらビーム領域によって,受信部用の選択セクターをカバーする。なお,これらの情報は,図14に示すビーム探索用の情報要素(IE)に含まれており,第1デバイス10及び第2デバイス20の双方が参照可能となっている。
そして,上述したように構成又は設定された第1デバイス10と第2デバイス20とを用いることで,第3段階(S30)のビーム探索が以下の手順で行われる。なお,下記の手順は,第1ベストセクターについて行われるだけでなく,第2ベストセクターについても行われる。つまり,ビーム探索は2回行われる。
<第1ステージ>
まず,第1デバイス10及び第2デバイス20は,ビーム領域候補情報を互いにアナウンスコマンドを用いて送信し合う。具体的には,第1デバイス10は,ビーム領域候補情報として,St及びSrを第2デバイス20に送信し,それに応じて,第2デバイス20は,ビーム領域候補情報として,Tt及びTrを第1デバイス10に送信する。
<第2ステージ>
続いて,第1デバイス10及び第2デバイス20は,上述した第1段階(S10)の第4ステージ〜第15ステージで定められている動作と同じ動作を行う。ただし,Nt,Nr,Mt,及びMrは,それぞれ,St,Sr,Tt,及びTrに置き換える必要がある。そして,ビーム探索中に,第1デバイス10及び第2デバイス20は,ビーム領域候補のあらゆる組み合わせ(コンビネーション)について,SNRを記録する。
<第3ステージ>
上述した全ての動作(オペレーション)が行われることによって,図15に示すようなデータのやりとりがなされる。最終的には,SNRテーブルに基づいて,双方の送信方向(第1デバイス10から第2デバイス20への送信方向,及び第2デバイス20から第1デバイス10への送信方向)に関して,ベストビーム領域の対(つまり,第1ベストビームと第2ベストビームの対)を決定する。
なお,第3段階(S30)においても,第1デバイス10及び第2デバイス20は,「ビームフォーミング(BF)失敗」の旨を宣言することがある。この宣言がなされる場合は,上述した第1段階(S10)において定められている場合と同様である。
ところで,上述した態様では,第1ベストクワジオムニビームを検出するだけでなく,第2ベストクワジオムニビームを検出している。そして,図3の下部に示したように,検出したクワジオムニビームに関してビーム(中心ビーム)を選択している。このように,第2ベストクワジオムニビームに対してビーム(中心ビーム)を選択しておくことにより,2つのデバイス(第1デバイス10及び第2デバイス20)間の無線通信の安全性を高めることが可能となる。これについて,以下詳細に説明する。
まず,上述した態様では,第1デバイス10も第2デバイス20もビームフォーミングを行うことができるように構成されている。したがって,第2デバイス20は,ビームフォーミングを行って,第1デバイス10との間の空間に電波を送信する送信手段を有している。
そして,第2デバイス20は,検出した第2ベストクワジオムニビームに対して,ベストビームを選択している。このことは,ビームフォーミングによって通信可能となる空間の中から,第1デバイス10と無線通信を行うのに適した方向を決定する決定手段を有していることに相当する。
さらに,第2デバイス20は,選択したベストビームを含む電波を第1デバイス10から受信することで,第1デバイス10とのリンク確立に必要なビーコン(たとえば,図6に示す「Q−Omni beacon1」;以下「第1のビーコン」ともいう)だけでなく,第1デバイス10とのリンク確立には必要のないビーコン(たとえば,図6に示す「Q−Omni beacon2」;以下「第2のビーコン」ともいう)をも受信している(受信手段)。ここで,第1のビーコンと第2のビーコンとは,元となるクワジオムニビームが異なるので,第2デバイス20にとっての受信方向も異なっている。
なお,第1のビーコンと第2のビーコンとは,第2デバイス20にとっての受信方向が異なっていればよく,複数方向への指向性を有する単一の電波(ビーム)に含まれるものであってもよい。したがって,ビームは,複数のビーコンを含むことが可能な電波であれば,クワジオムニビームであってもよいし,指向性ビームであってもよい。また,第2デバイス20は,さらに他のビーコンを受信してもよい。つまり,第2デバイス20は,2つ以上のビーコンを個別に受信可能に構成されている。具体的には,第2デバイス20は,指向性ビームが来ると,その指向性ビームに含まれるビーコンを受信できるように受信方向を変化させることで,複数のビーコンを個別に受信する。
そして,このとき受信する電波のデータ構造は,概略的には,図16に示すとおりである。図16に示すように,CAPが複数のサブCAP(S−CAP)に分割されている。このCAPの分割は,たとえば,第1デバイス10のピコネットコントローラー(PNC)が行う。なお,CAPの分割は,第1デバイス10のピコネットコントローラー(PNC)が行う必要はなく,無線通信システム1内に配置されたコントローラーが行えばよい。そして,第2デバイス20は,各ビーコンをモニターする(モニター手段)。各ビーコンのモニタリングは,トラッキング周波数fsでトラッキングすることで行う。各トラッキング時刻におけるモニタリングの結果(各ビーコンの情報)は,アナウンスコマンドを用いることによって,対応するS−CAP内に確認情報として集約(記録)される。なお,トラッキングに関する情報は,CAPに続くCTAP内に格納されている(図17参照)。
ここで,モニターされている各ビーコンの強度は,第2デバイス20の内部で,比較されている(比較手段)。この比較の対象となるビーコンとしては,第2デバイス20が受信した複数のビーコンのうち,強度が最も高い,少なくとも2つのビーコンが選ばれる。そして,その比較の結果,リンク確立には必要のなかったビーコン(第2のビーコン)の強度が,リンク確立に必要であったビーコン(第1のビーコン)の強度よりも高かった場合,第2デバイス20は,前者のビーコンを含む電波を用いて第1デバイス10と無線通信を行うことができるように,無線通信を切り替える(スイッチング手段)。切替えの際,無線通信の同期をとることが好ましい。
ところで,ビーコンの強度が変動する理由としては,背景技術の欄で説明したように,デバイスが移動した結果2つのデバイスの相対位置が変化したり,2つのデバイス間に人や障害物が進入してきたりしたことが考えられる。これを考慮して,本態様では,リンク確立には必要のなかったビーコンもモニターしており,これにより,そのビーコンの受信方向からの無線通信を行う可能性を保持している。そして,本態様では,第1のビーコンを用いた無線通信が遮断される前に,第2のビーコンを用いた無線通信に切り替える。これにより,第1デバイス10との間の無線通信を維持する。このため,本態様によれば,通信が途絶える可能性を低くして,無線通信の安定性(ロバスト性)を高めることができる。
なお,ビーコンの強度の比較の結果,リンク確立に必要であったビーコンの強度の方がリンク確立には必要なかったビーコンの強度よりも依然として高い場合,無線通信の切り替えを行う必要はない。
ところで,第1デバイス10と第2デバイス20との間の無線通信を最低限維持する点に限っていえば,ベストビームを用いる必要はない。言い換えると,第2デバイス20は,ビームフォーミングを行う手段を有していない場合であっても,複数のビーコンをモニターする手段さえ有していれば,本態様に示した実施の形態にしたがって,第1デバイス10との間で無線通信を維持することができる。しかし,ベストビームを用いた方が無線通信の品質を高い状態のまま維持することができるので有利である。
なお,第2デバイス20が,モニター対象のビーコンの全てを見失った場合には,第1デバイス10からリアソシエーション要求がなされて,無線通信を再開することとなる。ただし,本態様では,複数のビーコンをモニターして第1デバイス10との無線通信が維持されるので,リアソシエーション処理が行われる可能性を低くすることができる。つまり,本態様によれば,リアソシエーション処理にかかるコストと時間を削減することができる。
なお,上述した態様は,主に,無線通信システム1及び無線通信方法に関するものであった。しかし,本発明の無線通信システム1を構成する各デバイス10,20,アンテナ,送信部,受信部,また,本発明の無線通信方法において利用されるコードブック,ビーム探索処理(セクター検索処理,ビームトラッキング処理など),フィードバック処理,アナウンスコマンド,ビームフォーミングに関するフィールドを含むデータのフォーマットやフレーム構造も本発明又は本発明の一部を構成することとなる。また,上述した処理の一部又は全部に対応するプログラム(アルゴリズム)や当該プログラムを記憶した情報記録媒体も,本発明又は本発明の一部を構成するのはいうまでもない。
本発明は,家庭用のビデオシステムにおけるデータ転送に限られて利用されるものではなく,無線通信のあらゆる分野で利用されうる。また,本発明は,有線通信を無線通信に切り替える際にも利用されうる。
1 無線通信システム
10 第1デバイス(DEV1)
20 第2デバイス(DEV2)

Claims (5)

  1. 他のデバイス(10)との間で無線通信可能なデバイス(20)であって,
    他のデバイス(10)から送信される電波は,複数方向への指向性を有する電波であり,
    受信方向の異なる複数個のアンテナ素子単体を有し,当該複数個のアンテナ素子単体によって,前記他のデバイス(10)から送信された指向性の異なる複数個の電波を同時に受信することで,複数のビーコンを当該アンテナ素子単体ごとに個別に受信可能であり,前記複数方向のうちの一方向から前記他のデバイス(10)により送信される電波を受信することで,第1のビーコンを受信して,前記他のデバイス(10)との間でのリンクを確立する受信手段と,
    前記受信手段が前記第1のビーコンを受信することによって前記他のデバイス(10)との間でリンクが確立された後,当該第1のビーコンを用いた無線通信が当該他のデバイス(10)との間で行われている期間中に,前記受信手段で同時に受信している複数のビーコンのうち,前記他のデバイス(10)とのリンク確立に必要な第1のビーコンと共に,当該第1のビーコンとは受信方向の異なる第2のビーコンとを少なくともモニターするモニター手段とを含む,
    デバイス(20)。
  2. 前記モニター手段は,
    前記第1のビーコンを用いた無線通信が当該他のデバイスと(10)との間で行われている期間中に,前記第1のビーコンの強度と,前記第2のビーコンの強度を比較する比較手段を含み,
    前記デバイス(20)は,
    前記第1のビーコンを用いた無線通信と,前記第2のビーコンを用いた無線通信との間で切り替えるスイッチング手段
    を含み,
    前記比較手段による比較の結果,前記第2のビーコンの強度が前記第1のビーコンの強度よりも高いときは,前記スイッチング手段を用いて,前記第1のビーコンを用いた無線通信から前記第2のビーコンを用いた無線通信に切り替え,
    これにより,前記第1のビーコンを用いた無線通信が遮断される前に,前記他のデバイス(10)との間の無線通信を維持する,
    請求項1に記載のデバイス(20)。
  3. 第1デバイス(10)と第2デバイス(20)との間で電波を用いた無線通信を行うための無線通信方法であって,
    少なくとも前記第1のデバイス(10)から送信される電波は,複数方向への指向性を有する電波であり,
    第2のデバイス(20),受信方向の異なる複数個のアンテナ素子単体によって,前記第1デバイス(10)から送信された指向性の異なる複数個の電波を同時に受信することで,複数のビーコンを当該アンテナ素子単体ごとに個別に受信可能であり,
    第2のデバイス(20)が,前記複数個のアンテナ素子単体によって,前記複数方向のうちの一方向から前記第1のデバイス(10)により送信される電波を受信することで,第1のビーコンを受信して,前記第1のデバイス(10)との間でのリンクを確立する受信ステップと,
    前記受信ステップにおいて前記第1のビーコンを受信することによって前記第1のデバイス(10)との間でリンクが確立された後,当該第1のビーコンを用いた無線通信が当該第1のデバイス(10)との間で行われている期間中に,前記第2のデバイス(20)が,前記複数個のアンテナ素子単体で同時に受信している複数のビーコンのうち,前記第1のデバイス(10)とのリンク確立に必要な第1のビーコンと共に,当該第1のビーコンとは受信方向の異なる第2のビーコンとを少なくともモニターするモニタリングステップと,
    を含む,
    無線通信方法。
  4. あるデバイス(20)が他のデバイス(10)との間で電波を用いた無線通信を行うために当該あるデバイス(20)によって実行されるプログラムであって,
    少なくとも前記他のデバイス(10)から送信される電波は,複数方向への指向性を有する電波であり,
    前記あるデバイス(20)は,受信方向の異なる複数個のアンテナ素子単体によって,前記他のデバイス(10)から送信された指向性の異なる複数個の電波を同時に受信することで,複数のビーコンを当該アンテナ素子単体ごとに個別に受信可能であり,
    前記あるデバイス(20)に,
    前記複数個のアンテナ素子単体によって,前記複数方向のうちの一方向から前記他のデバイス(10)により送信される電波を受信することで,第1のビーコンを受信して,前記他のデバイス(10)との間でのリンクを確立する受信ステップと,
    前記受信ステップにおいて前記第1のビーコンを受信することによって前記他のデバイス(10)との間でリンクが確立された後,当該第1のビーコンを用いた無線通信が当該他のデバイス(10)との間で行われている期間中に,前記複数個のアンテナ素子単体で同時に受信している複数のビーコンのうち,前記他のデバイス(10)とのリンク確立に必要な第1のビーコンと共に,当該第1のビーコンとは受信方向の異なる第2のビーコンとを少なくともモニターするモニタリングステップとを実行させる,
    プログラム。
  5. 請求項4に記載のプログラムを格納した,コンピュータ読み取り可能な情報記録媒体。
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