JP5293677B2 - 金属材料の腐食疲労寿命診断方法 - Google Patents
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Description
(ステップ1):想定環境中における臨界孔食温度(CPT)の評価。
(ステップ2):CPTと想定使用温度との比較。
(ステップ3):腐食試験tにおける孔食深さの推定。
(ステップ4):腐食試験tで発生した孔食内部における応力拡大係数範囲(ΔK(t))
の推定。
(ステップ5):想定する使用環境中における疲労き裂進展の下限界値(ΔKth)の設定。
(ステップ6):ΔK(t)とΔKthの比較。
(ステップ7):腐食疲労寿命の推定。
想定環境が海水であるため、先ず始めに想定環境を模擬した人工海水中におけるCPTを図2に示す電解装置を用いて測定した。測定装置は、定電位電解装置4,温度調節器5,記録計6,反応槽7,ヒータ8から構成される。また反応槽7内には、人工海水を注入するとともに、評価対象となる金属材料9(ここではステンレス鋼)を基準電極10,対極11,熱電対12とともに人工海水中に浸漬した。ここでは、基準電極10として、塩化カリウム飽和水溶液銀/塩化銀電極を用いた。
今回60℃での使用を想定しているため、CPT(70℃)は使用温度(60℃)より高温であり、評価対象のステンレス鋼は使用できる可能性があることがわかった。
評価対象となるステンレス鋼の孔食深さの経時変化を評価するため、60℃で使用環境と同一濃度の人工海水中に評価対象のステンレス鋼を浸漬し、所定時間ことに取り出して、発生した孔食の深さを計測した。図4は、測定された孔食深さの最大値を浸漬時間に対して示した図である。図中には、孔食深さの経時変化を最小二乗法で求めた推定曲線も示してあり、この測定結果から想定環境中における孔食の進展速度を推定できる。
図4で孔食深さが測定できたので、この孔食深さにおける応力拡大係数範囲(ΔK)を推定した。今回丸棒の周方向に半円状の孔食が発生した場合を仮定し、ΔKの計算には、米国石油協会規格API RP579に掲載の計算式を適用し、曲げ応力が300MPa負荷した場合を想定してΔKを推定した。図5は図4の結果に基づき、応力拡大係数範囲を推定した結果を経時変化として示す。図中には、ΔKの経時変化を最小二乗法で求めた推定曲線も示してある。図5に示すように、孔食深さの進展に伴い、ΔKが増大することが推定できた。
評価対象となる金属材料に所定の条件の人工海水を滴下し腐食させながら、回転曲げ疲労試験を実施し、その試験結果から疲労き裂進展の下限界値(ΔKth)を設定した。図6は、疲労試験後に破断部を観察し、破断部に発生していた孔食の深さを負荷した曲げ応力振幅に対してプロットした図である。図中には、ステップ4で用いたΔKの計算式からΔKthを0.5,1.0,2.0MPa・m0.5に設定したときの孔食深さと曲げ応力振幅との関係を示す曲線も合わせて示している。腐食疲労試験結果のデータプロットは、全てΔKthが2.0MPa・m0.5の曲線より孔食深さが大きい方にあるため、ここでは、ΔKthの値として、2.0MPa・m0.5を設定した。
上記ΔKthが2.0MPa・m0.5の設定値を図5に当てはめると、浸漬時間8時間では、ΔK(8h)は2.0MPa・m0.5よりも小さな値になったが、浸漬時間24時間では、ΔK(24h)は2.0MPa・m0.5よりも大きな値となり、今回の設定条件では、腐食疲労寿命は、8時間と24時間との間に存在することがわかった。
上記の計算方法により、ΔKthを2.0MPa・m0.5に設定したときの腐食疲労寿命と曲げ応力振幅との関係を図7に示す.今回評価対象なる金属材料の大気中における疲労限も合わせて示している。図7から、負荷された曲げ応力が疲労限よりも大きい場合には、その負荷応力の頻度により寿命が決定する。一方、疲労限よりも負荷された曲げ応力が小さい場合には、線図に従い負荷された応力に応じて、孔食の進展に伴い寿命が決まることを示している。図7と腐食疲労試験結果とを比較した結果、両者は良く一致することが確認できた。
(ステップ1):想定環境中における臨界孔食温度(CPT)の評価。
(ステップ2):CPTと想定使用温度との比較。
(ステップ3):想定環境中における孔食進展速度の評価。
(ステップ4):孔食内部における応力拡大係数範囲(ΔK)の推定。
(ステップ5):想定する使用環境中における疲労き裂進展の下限界値(ΔKth)の設定。
(ステップ6):孔食内におけるΔKの経時変化の評価。
(ステップ7):腐食疲労寿命の推定。
想定環境を模擬した人工海水中におけるCPTを図9に示す装置を用いて測定した。測定装置は、無抵抗電流計13,温度調節器5,記録計6,反応槽7,ヒータ8から構成される。また反応槽7内には、人工海水を注入するとともに、評価対象となる金属材料9(ここではステンレス鋼)と、白金製の対極11′,熱電対12とともに人工海水中に浸漬した。
今回60℃での使用を想定しているため、CPT(70℃)は使用温度(60℃)より高温であり、評価対象のステンレス鋼は使用できる可能性があることがわかった。
評価対象となるステンレス鋼の孔食深さの経時変化を評価するため、図9に示した装置を用いて、60℃で使用環境と同一濃度の人工海水中に評価対象のステンレス鋼と白金製の対極11′を短絡させ、電極の電位差により発生するガルバニック電流の経時変化を記録計6で記録した。測定の一例を図10に示す。図10に示されるように、一時的な電流の増大が繰り返されることがわかった。一時的な電流の増大は、一時的な孔食の発生・進展と消滅に対応する電流変化と考えられるので、電流値と浸漬時間から電気量を求め、この電気量から孔食深さを推定した。図11は、電気量から推定した孔食深さのを浸漬時間に対して示した図である。図は電気量の経時変化にスムージング処理を施した後に孔食深さの経時変化に換算した結果である。この電気量の測定結果から想定環境中における孔食の進展速度が評価できる。実施例1と同様の条件だったが、ガルバニック電流の測定に基づく孔食深さの方が、実施例1に示した直接孔食深さの測定結果よりもやや大きな値となった。
孔食内における応力拡大係数範囲(ΔK)は、丸棒の周方向に半円状の孔食が発生した場合を仮定し、計算には米国石油協会規格API RP579に掲載の計算式を適用し、曲げ応力が300MPa負荷した場合を想定してΔKを推定することとした。
前記の通り、回転曲げ腐食疲労試験の結果から疲労き裂進展の下限界値(ΔKth)を設定した。ここでは、ΔKthの値として、2.0MPa・m0.5を設定した。
図11に示した孔食深さの経時変化の評価結果に基づき、(ステップ4)の計算条件によりΔKthの経時変化を推定した。図12は、曲げ応力として300MPa負荷した場合におけるΔKの経時変化を示した図である。
図12の曲線に基づき、応力拡大係数範囲が2.0MPa・m0.5に達する、すなわち、ΔKthに達する時間を見積もるとおおよそ8時間となる。このことから、今回の評価条件における腐食疲労寿命は、約8時間であることがわかった。
2 心板
3 側板
4 定電位電解装置
5 温度調節器
6 記録計
7 反応槽
8 ヒータ
9 評価対象金属材料
10 基準電極
11,11′ 対極
12 熱電対
13 無抵抗電流計
100 羽根車
Claims (7)
- 評価対象となる機器に用いられる金属材料の腐食疲労寿命を診断するに当たり、想定する使用環境中における臨界孔食温度を評価する第1の工程、想定される最高使用温度と臨界孔食温度を比較する第2の工程、想定される使用環境中における孔食深さを推定する第3の工程、孔食内の応力拡大係数範囲を推定する第4の工程、推定した応力拡大係数範囲と疲労き裂進展の下限界値と比較する第5の工程から構成され、一定時間経過毎に第3の工程から第5の工程を繰り返して応力拡大係数範囲の推定値が疲労き裂進展の下限界値と等しくなる時間を予測することから、評価対象となる機器の寿命を評価することを特徴とする金属材料の腐食疲労寿命診断方法。
- 評価対象となる機器に用いられる金属材料の腐食疲労寿命を診断するに当たり、想定する使用環境中における臨界孔食温度を評価する第1の工程、想定される最高使用温度と臨界孔食温度を比較する第2の工程、想定する使用環境中における孔食進展速度を評価する第3の工程、孔食内の応力拡大係数範囲を推定する第4の工程、孔食進展速度の評価結果に基づき、孔食内の応力拡大係数範囲の経時変化を推定する第5の工程から構成され、推定した応力拡大係数範囲が疲労き裂進展の下限界値と等しくなる期間から評価対象となる機器の寿命を評価することを特徴とする金属材料の腐食疲労寿命診断方法。
- 評価対象となる機器に用いられる金属材料の腐食疲労寿命を診断するに当たり、想定する使用環境中に評価対象となる金属材料を浸漬した後、一定時間毎に金属材料を取り出して孔食深さを測定し、孔食深さに経時変化から孔食進展速度を予測することを特徴とする請求項1または2に記載された金属材料の腐食疲労寿命診断方法。
- 評価対象となる機器に用いられる金属材料の腐食疲労寿命を診断するに当たり、想定する使用環境中に評価対象となる金属材料を浸漬した後に電気化学的に定電位に保持して電気量の経時変化を計測し、計測値に基づいて孔食深さに経時変化から孔食進展速度を予測することを特徴とする請求項1または2に記載された金属材料の腐食疲労寿命診断方法。
- 評価対象となる機器に用いられる金属材料の腐食疲労寿命を診断するに当たり、想定する使用環境中に評価対象となる金属材料と白金とを無抵抗電流計を介して接続して電気量の経時変化を計測し、計測値に基づいて孔食深さに経時変化から孔食進展速度を予測することを特徴とする請求項1または2に記載された金属材料の腐食疲労寿命診断方法。
- 請求項1乃至5の何れかに記載の診断方法に基づき、羽根車の腐食疲労寿命を推定することを特徴とする遠心圧縮機の寿命診断方法。
- 請求項1乃至5の何れかに記載の診断方法に基づき、羽根車の腐食疲労寿命を推定することを特徴とするポンプの寿命診断方法。
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