以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに、図1は本発明の実施形態に係る形状測定装置Zの概略構成図、図2は光照射角度及び表面角度の定義を表す図、図3は形状測定装置Zに採用され得るテレセントリックレンズ方式のカメラの特性を表す図、図4は形状測定装置Zにテレセントリックレンズ方式のカメラを採用した場合の測定部位の表面角度と光路との関係を模式的に表した図、図5は形状測定装置Zにより算出された測定部位の表面角度分布及びエッジプロファイルを表すグラフ、図6は形状測定装置Zに採用され得る非テレセントリックレンズ方式のカメラの特性を表す図、図7は形状測定装置Zに非テレセントリックレンズ方式のカメラを採用した場合の測定部位の表面角度と光路との関係を模式的に表した図、図8は測定部位の形状及び形状測定装置Zのカメラによる撮影画像の第1例を模式的に表した図、図9は測定部位の形状及び形状測定装置Zのカメラによる撮影画像の第2例を模式的に表した図、図10は形状測定装置Zによる撮影画像の一例を表す図、図11は所定の演算対象位置における光照射角度と反射光輝度との対応関係の一例を表すグラフ、図12は形状測定装置Zによる測定手順を表すフローチャート、図13は形状測定装置Zの第1応用例である形状測定装置Z’の概略構成を表す図、図14は形状測定装置Z’により得られる2台のカメラ各々に対応する表面角度分布及びエッジプロファイルのフィッティング処理前後の状態を表す図、図15は形状測定装置Zの第2応用例である形状測定装置Z2の概略構成を表す図、図16は形状測定装置Zの第3応用例である形状測定装置Z3の概略構成を表す図、図17は形状測定装置Z3のカメラによる撮像画像の一例を模式的に表した図、図18は形状測定装置Z3の測定制御手順を表すフローチャートである。
まず、図1を参照しつつ、本発明の実施形態に係る形状測定装置Zの構成について説明する。形状測定装置Zは、薄片試料の一例である半導体ウェーハ1(以下、ウェーハという)の端面の形状(エッジプロファイル)を測定する装置である。本実施形態に示すウェーハ1は、ほぼ円形板状であるが、矩形の板状など、他の形状の薄片試料を測定対象とすることもできる。なお、図1(a)は、形状測定装置Zの平面図(一部ブロック図)、図1(b)は、形状測定装置Zの側面図(一部省略)である。
以下、エッジプロファイルの測定対象となるウェーハ1の端面を、測定部位Pと称する。
図1に示すように、形状測定装置Zは、光照射装置10と、カメラ20と、パーソナルコンピュータ等の計算機30とを備えている。
光照射装置10は、電子回路基板として構成され、その電子回路基板には、ウェーハ1に光を照射する光源である複数のLED12と、そのLED12各々の点滅を切り替えるLED駆動回路11とが実装されている。なお、図1(b)には、一部のLED12について記載を省略している。
ここで、光照射装置10(電子回路基板)を平面視したときのほぼ中央部における所定位置を基準位置Qと称する。
光照射装置10を構成する電子回路基板には、ウェーハ1の測定部位Pを基準位置Qに配置可能とするために、ウェーハ1が挿入される切り欠き部13が形成されている。即ち、基準位置Qが、測定部位Pの配置位置となる。図1(b)には、ウェーハ1のノッチ部(半円形状の切り欠き部)が、基準位置Qに測定部位Pとして配置されている例を示しているが、これに限るものではない。また、ウェーハ1を回転させることにより、測定部位Pを容易に変更できる。これにより、ウェーハ1の周囲全体、或いは周囲全体のうちの複数箇所のエッジプロファイルを容易に測定できる。
また、全てのLED12は、その発光部が、基準位置Qを含む1つの平面内に位置するように、かつ、基準位置Qを中心とする円弧上に(円弧に沿って)位置するように、電子回路基板に実装されている。ここで、各LED12は、カメラ20と干渉する位置を除き、例えば基準位置Qから見た方向が約2°ずつ異なるように等間隔(等角度の間隔)で配置されている。また、各LED12の基準位置Q(測定部位P)からの距離は、測定部位Pの奥行き寸法に対して十分に長い距離(例えば150mm程度)とする。
また、ウェーハ1は、その面(おもて面及びうら面)が、LED12の発光部が配置される1つの平面に対してほぼ直交し、その面の中央部(円板の中心)が、LED12の発光部が配置される1つの平面内に位置する状態で切り欠き部13に挿入され、その状態で測定が行われる。
LED駆動回路11は、計算機30からの制御指令に従って、このように1つの平面内の複数の位置各々に配置された複数のLED12を順次切り替えて点滅させる。これにより、光照射装置10は、基準位置Qに配置されたウェーハ1の測定部位Pに対し、順次異なる照射角度で光を照射する(第1の光照射手段、切替型光照射手段の一例)。
ウェーハ1の測定部位Pである端面(側面)は、滑らかに加工されており、鏡面或いはそれに近い光沢のある面となっている。このため、LED12から出力された光は、測定部位Pにおいて概ね正反射し、ほとんど乱反射はしない。
カメラ20は、基準位置Qから所定間隔隔てた位置(例えば、50mm〜100mm程度)に固定され、ウェハ1の測定部位Pからの反射光を受光して光電変換することにより、各LED12から測定部位Pに照射された光の正反射方向への反射光の二次元の輝度分布を検出するものである(第1の光検出手段の一例)。
図1に示す例では、前記カメラ20は、LED12の発光部が配置される1つの平面(基準位置Qを含む平面)内に配置され、その正面方向が、ウェーハ1の面の中央部に向かうように設置されている。即ち、カメラ20は、その正面方向が、ウェーハ1の厚み方向中央における平断面に沿う方向となるように(ウェーハ1を真横から見るように)設置されている。これにより、カメラ20は、ウェーハ1の端面を、ウェーハ1の厚み方向全体に渡って観測できる。
また、カメラ20の焦点は、基準位置Q(即ち、測定部位P)に設定されている。
計算機30は、光照射装置10におけるLED駆動回路11を制御(LED12の点滅制御)するとともに、カメラ20のシャッター制御とカメラ20による撮影画像の取り込みとを行う。その具体的な動作については後述する。ここで、図1には示していないが、計算機30は、LED駆動回路11やカメラ20との間で、信号の授受や画像データの取得を行うためのインターフェースを備えている。
なお、以下に示す計算機30の処理は、計算機30が備えるMPUが、同じく計算機30が備えるハードディスクドライブなどの記憶手段に予め記憶されたプログラムを実行することにより実現される。
次に、形状測定装置Zによるエッジプロファイル測定の原理について説明する。
測定部位Pに光が照射されると、その光は、光沢のある測定部位Pにおいて正反射する。そして、カメラ20による撮影画像は、その反射光の輝度分布を表す像である。
図8は、測定部位Pの形状の一例(a)及びその測定部位Pのカメラ20による撮影画像の一例(b)を模式的に表した図である。
図8(a)には、表面角度が単純増加(或いは、単純減少)するような測定部位Pの形状を示している。なお、図8(a)における上下方向が、ウェーハ1の厚み方向である。
このような測定部位Pを、ある1つのLED12のみによって光を照射しながらカメラ20により撮像すると、図8(b)に示すような像が得られる。その画像において、輝度のピークが生じる位置Xpeak(X座標方向の位置、以下、ピーク輝度位置という)は、LED12から発せられた光線が測定部位Pにおいて正反射した位置(正反射位置)に相当する。
また、測定部位Pにおける正反射位置の面において、その法線方向を基準とした光の入射角度と出射角度(反射方向の角度)とは等しい(左右対称)。このことから、カメラ20の撮影画像におけるピーク輝度位置Xpeakと、測定部位Pに対する光の照射方向(点灯したLED12から測定部位Pへ向かう方向)とに基づいて、測定部位Pにおいて光が正反射する位置(正反射位置)と、その正反射位置の表面角度とを一意に算出することが可能である。
ここで、形状測定装置Zの測定原理を説明する前に、図2を参照しつつ、光の照射方向などを表す符号について説明する。なお、図2(a)は、形状測定装置Zを平面視した状態を模式的に表した図であり、図2(b)は、その基準位置Pの部分を拡大して表した図である。
図2に示すように、測定部位Pとカメラ20とを結ぶ直線の方向(以下、カメラ正面方向という)を基準としたときの光の照射角度をφとする。また、測定部位Pにおける光の正反射Pxにおける、カメラ正面方向に直交する面(以下、撮影画像におけるX−Y平面に相当する面という意味で、X−Y面という)を基準とした表面角度をθとする。
続いて、図4を参照しつつ、形状測定装置Zによるエッジプロファイル測定の原理についてより詳細に説明する。ここでは、カメラ20が、テレセントリックレンズ方式のカメラである場合について説明する。
テレセントリックレンズ方式のカメラは、図3に示すような態様でCCD上に像を結ぶ。
反射光の輝度分布を検出するカメラ20が、図3に示すようなテレセントリックレンズ方式のカメラである場合、図4に示すように、カメラ20のCCD(受光部)に到達する反射光の方向と、カメラ20の正面方向とがほぼ平行となり、撮影画像において高輝のピークが存在するピーク輝度位置Xpeakは、そのまま測定部位Pにおける光の正反射位置Pxを表す。さらに、光の照射方向と反射方向とは、正反射位置Pxの面の法線に対して対称であることから、(90−θ−φ/2)=(90−φ)となり、次の(1)式が成立する。
θ=φ/2 ・・・(1)
従って、撮影画像においてピーク輝度位置Xpeakを画像処理によって特定することにより、正反射位置Pxを特定できる。さらに、点灯したLED12の位置(既知の位置)に応じて定まる光照射角度φ(既知の角度)から、正反射位置Pxにおける表面角度θを特定できる。
次に、図7を参照しつつ、テレセントリックレンズ方式ではない方式(以下、非テレセントリックレンズ方式という)のカメラ20を採用した形状測定装置Zによるエッジプロファイル測定について説明する。非テレセントリックレンズ方式のカメラは、図6に示すような態様でCCD上に像を結ぶ。非テレセントリックレンズ方式のカメラ20を採用した場合、図7に示すように、測定部位Pにおける正反射位置Pxで反射し、カメラ20のCCDに到達して像を結ぶ反射光の角度(方向)を、カメラ正面方向を基準とする角度ψxとして表すと、2θ+ψx=φとなり、次の(2)式が成立する。但し、ψxは、カメラ20の座標系における位置(X軸方向の位置)ごとに予め求めておく。
θ=(φ−ψx)/2 ・・・(2)
従って、撮影画像においてピーク輝度位置Xpeakを画像処理によって特定することにより、そのピーク輝度位置Xpeakと角度ψxとカメラ20から測定部位P間での距離とに基づいて、測定部位Pにおける正反射位置Pxを特定できる。さらに、点灯したLED12の位置(既知の位置)に応じて定まる光照射角度φ(既知の角度)から、(2)式に基づいて、正反射位置Pxにおける表面角度θを特定できる。
また、点灯するLED12を順次切り替えるごとに(即ち、光照射角度φを切り替えるごとに)カメラ20を通じて測定部位Pの画像データを取得し、そのときの光照射角度φ及び表面角度θを求めれば、複数の正反射位置Px各々についての表面角度θ、即ち、測定部位Pにおける表面角度θの分布を求めることができる。
図10は、図8(a)に示したのと同様の形状を有する測定部位Pについて、光照射角度φごとに得られた画像データを表す映像(カメラ20の映像)の一例を表す。図10に向かって右方向が、カメラ20の座標系のX軸方向(即ち、ウェーハ1の厚み方向)である。
図10に示すように、光照射角度φの変化に応じて、測定部位Pにおける正反射Pxに対応する高輝度位置Xpeak(X方向の位置)が変化する。この高輝度位置Xpeakが、測定部位Pにおける正反射位置Pxに対応する。
なお、正反射位置Pxは、その位置に応じてLED12との距離が若干異なるため、以上の方法によって求めた表面角度θには、その距離差に応じた誤差が含まれる。しかしながら、測定部位Pの表面変位に対し、LED12と測定部位Pとの距離を十分に長くすることにより、その誤差は無視できる程度に抑えられる。
また、図10において、帯状の高輝度の部分において存在する輝度の分布は、測定部位Pの表面粗さや、カメラ20の実効Fナンバーに起因する。また、テレセントリックレンズ方式のカメラを採用した場合、カメラ正面方向に平行な反射光以外の反射光の一部がカメラ20のCCDに到達することにも起因する。
一方、図9は、測定部位Pの形状の他の一例(a)及びその測定部位Pのカメラ20による撮影画像の一例(b)を模式的に表した図である。
図9(a)には、前記窪み形状を有する測定部位Pを示している。なお、図9(a)における上下方向が、ウェーハ1の厚み方向である。
このような測定部位Pを、ある1つのLED12のみによって光を照射しながらカメラ20により撮像すると、図9(b)に示すように、複数のピーク輝度位置Xpeakを有する像が得られる。この現象は、同じ表面角度φを有する正反射位置Pxが複数存在する場合に生じるが、表面角度の求め方は、測定部位Pが、図8(a)に示したような形状を有する場合と同様である。
形状測定装置Zを用いれば、このように測定部位Pが窪み形状を有する場合であっても、表面角度の分布を測定できる。
次に、図12に示すフローチャートを参照しつつ、形状測定装置Zによるウェーハ1の測定部位Pの測定手順について説明する。以下、S1、S2、・・・は、処理手順(ステップ)の識別符号を表す。なお、ウェーハ1の測定部位Pが、基準位置Qに位置するように配置された状態で、図12に示す処理が開始されるものとする。
[ステップS1〜S5]
まず、計算機30は、LED12各々を識別する番号iを初期化(i=1)する(S1)。
そして、計算機30は、LED駆動回路11を制御することによるi番目のLED12の点灯(S2)、その点灯状態におけるカメラ20による測定部位Pの撮像(シャッターON)及び撮影画像の記憶(S3)を、番号iを順次カウントアップ(S5)しながら、全てのLED12について点灯及び撮像が終了するまで繰り返す(S4)。カメラ20による撮影画像は、計算機30が備えるハードディスクなどの記憶手段に記憶される。
このステップS1〜S4の処理により、光照射装置10によって測定部位Pに対して順次異なる照射角度φで光が照射される(S2)。さらに、異なる照射角度で光が照射されるごとに、計算機30により、測定部位Pからの反射光の輝度分布を表す画像データ(撮影画像)が、カメラ20(第1の光検出手段の一例)を通じて取得される(反射光輝度取得手段の一例)。
[ステップS6〜S11]
次に、計算機30は、以下に示すステップS6〜S11の処理を実行することにより、ステップS3の処理により取得された各LED12に対応した画像データ(反射光の輝度分布)と、そのLED12によって測定部位Pに照射された光の照射角度φとに基づいて、測定部位Pの表面角度の分布及びエッジプロファイルを演算する(S11、表面角度分布演算手段の一例)。
ところで、光照射装置10による光の照射角度φの変化幅(ここでは、LED12の間隔)をごく小さくすれば、光の照射角度φを変化させるごとに、反射光の輝度が最も高くなる位置を求めることにより、高い空間分解能で測定部位Pの表面角度の分布を算出することができる。
しかしながら、光の照射角度φの変化幅を小さくすることには限界がある。また、光の照射角度φの変化幅を小さくするほど、カメラ20による撮像回数(反射光の輝度分布を採取する回数)が増え、測定時間が長くなる。さらに、計算機30で取得すべき画像データの点数が増え、計算機30における必要メモリ容量の増大にもつながる。
そこで、本実施形態における計算機30は、以下に示す処理により、測定部位Pの表面角度の分布及びエッジプロファイルを求める。
まず、計算機30は、カメラ20の撮像範囲(光検出手段の光検出範囲の一例)において予め定められたX座標方向の複数の位置(以下、演算対象位置Xjという)各々を識別する番号jを初期化(j=1)する(S6)。
そして、演算対象位置Xj各々について、光の照射角度φと反射光の輝度Eとの対応関係(以下、φ−E対応関係という)を導出する(S7)。
図11は、ある演算対象位置Xjにおける、光の照射角度φ(横軸)と反射光の輝度E(縦軸)との対応関係を表すグラフの一例である。
さらに、計算機30は、ステップS7で得られたφ−E対応関係に基づく所定の演算を行うことにより、反射光の輝度Eがピークとなるときの光の照射角度φpeak(以下、推定ピーク時照射角度という)を推定するとともに、その演算対象位置Xjにおける表面角度θjを算出して記憶する(S8)。
図11に示したように、φ−E対応関係は、離散的なデータに基づくものである。ここで、光照射装置10における各LED12が、極端に広い間隔で配置されているような場合を除けば、図11に示したようなφ−E対応関係に基づく内挿演算処理により、推定ピーク時照射角度φpeakを推定することができる。その内挿演算処理の具体例としては、重心法に基づく内挿演算処理や、2次関数やガウス分布関数に回帰するフィッティング処理に基づく内挿演算処理などが考えられる。なお、内挿演算処理を施さず、単に最大の輝度を示すときの光照射角度φを、推定ピーク時照射角度φpeakとすることも考えられる。但し、この場合、各LED12の間隔によっては、誤差が大きくなる点に留意する必要がある。
また、推定ピーク時照射角度φpeakに基づく表面角度θjの算出方法は、前述した光照射角度φに基づく正反射位置Pxの表面角度θの算出方法と同様である。
そして、計算機30は、ステップS7〜S8の処理を、番号jを順次カウントアップ(S10)しながら、予め定められた全ての演算対象位置Xjについて行われるまで繰り返す(S9)。ステップS8で算出された各演算対象位置Xjの表面角度θjは、計算機30が備えるハードディスクなどの記憶手段に記憶される。
以上のステップS1〜S10の処理により、測定部位Pの表面角度θの分布(演算対象位置Xjと表面角度θjとの対応関係を表す情報)が得られる。
このように、計算機30は、カメラ20の撮像範囲(即ち、光検出範囲)における複数の演算対象位置Xj各々について、光照射角度φと反射光の輝度Eとの対応関係に基づいて、推定ピーク時照射角度φpeak(反射光の輝度がピークとなるときの光の照射角度)を推定する演算を行うことにより、演算対象位置Xj各々の表面角度θjを算出する(S7〜S10、表面角度分布演算手段の一例)。その結果、光照射装置10における各LED12を、非常に密に配置した場合と同様の高い空間分解能で、表面角度θjの分布を測定できる。理論上は、カメラ20の解像度(画素分解能)のレベルまで、表面角度分布の空間分解能を高めることができる。
最後に、計算機30は、ステップS6〜S10の処理によって得られた表面角度θjの分布に基づいて、測定部位Pのエッジプロファイル(表面形状)を算出して記憶し(S11)、測定処理を終了させる。このとき、計算機30は、必要に応じて、測定部位Pのエッジプロファイルをその表示部に表示させる。
ここで、測定部位Pにおけるある演算対象位置Xjの表面高さと、その隣りの演算対象位置Xj+1の表面高さとの差Δhjは、次の(3)式により計算できる。
Δhj=d・tanθj ・・・(3)
ただし、dは、測定部位Pにおける隣り合う演算対象位置Xjの距離(X軸方向の距離)である。ここでは、カメラ20のX軸方向の画素間距離を、実空間にに換算した距離である。
この(3)式を、演算対象位置Xjの基点から順次適用することにより、測定部位Pの高さ分布、即ち、エッジプロファイルを算出できる。
図5は、あるウェハ1の測定部位Pを形状測定装置Zで測定することによって得られた表面角度φ(x)の分布及びエッジプロファイルの一例を表すグラフである。横軸は、ウェーハ1の厚み方向の位置を表し、左縦軸は測定部位の表面位置(即ち、エッジプロファイル)、右縦軸は表面角度θ なお、図5において細い実線グラフで表す表面角度θ(x)は、その各々の演算対象位置Xjを、測定部位Pにおける実空間の位置に置き換えたものである。また、太い実線グラフで表すエッジプロファイルは、(3)式に基づいて算出したものである。
このように、形状測定装置Zを用いれば、ウェーハ1などの薄片試料のエッジプロファイルを高精度で測定することができる。
[形状測定装置Z’(第1応用例)]
次に、図13を参照しつつ、形状測定装置Zの第1応用例である形状測定装置Z’について説明する。以下、形状測定装置Z’について、前述した形状測定装置Zと異なる点についてのみ説明する。なお、図13において、図1に示した構成要素と同じものについては、同じ符号を記している。
図13に示すように、形状測定装置Z’は、測定部位Pからの反射光の輝度分布を検出するカメラ20として2台のカメラ20R、20Lを備え、それらが、測定部位Pに対して各々異なる方向に配置されている。以下、それぞれ第1カメラ20R、第2カメラ20Lと称する。
さらに、形状測定装置Z’は、前述の計算機30の代わりに、実行するプログラムの一部が異なる計算機30’を備えている。
図13に示す例では、2台のカメラ20R、20Lが、基準位置Q(即ち、測定部位P)を基点として90°をなす方向(ウェーハ1の面方向に対して±45°の方向)に配置されている。これにより、両カメラ20R、20L各々は、測定部位Pの全領域(全面)のうちの一部の領域(各々の配置位置から見える領域)で反射した反射光の輝度を検出する。
そして、計算機30’は、前述したステップS3(図12参照)において、光照射角度φが変更されるごとに、2台のカメラ20R、20L両方により画像データの撮像及び記憶を行うよう制御する。
さらに、計算機30’は、前述したステップS7及びS8(図12参照)において、2台のカメラ20R、20L各々を通じて得られた画像データ(反射光の輝度分布を表すデータ)ごとに、その画像データ及び光の照射角度(推定ピーク時照射角度φpeak)に基づいて、測定部位Pの一部の領域の表面角度θjの分布を算出する。図13に示す例では、計算機30’は、第1カメラ20Rを通じて得た画像データに基づいて、図13に示すウェーハ1の右側の面(一方の面)に近い側の領域の表面角度θjの分布を算出する。同様に、計算機30’は、第2カメラ20Lを通じて得た画像データに基づいて、同ウェーハ1の左側の面(他方の面)に近い側の領域の表面角度θjの分布を算出する。ここで、それら両領域の一部は重複している。
さらに、計算機30’は、前述したステップS11において、両カメラ20R、20Lに対応する前記一部の領域の表面角度θjの分布(ステップS8の処理での演算結果)の各々に基づいて、その一部の領域各々についてのエッジプロファイルを算出するとともに、それらをつなぎ合わせる処理を行うことによって測定部位P全体のエッジプロファイルを算出する(つなぎ合わせ演算手段の一例)。
或いは、計算機30’は、前述したステップS11において、両カメラ20R、20Lに対応する前記一部の領域の表面角度θjの分布(ステップS8の処理での演算結果)の各々をつなぎ合わせる処理を行うことによって測定部位P全体の表面角度分布θjを算出し、その算出結果に基づいて測定部位P全体のエッジプロファイルを算出する(つなぎ合わせ演算手段の一例)。
このように、各領域のエッジプロファイルを求めてからその各々をつなぎ合わせる方法、或いは各領域の表面角度θjの分布をつなぎ合わせてから全領域のエッジプロファイルを求める方法の2通りの方法が考えられる。
ここで、前記つなぎ合わせは、両カメラ20R、20L各々に対応する前記一部の領域の重複部分について、各カメラ20R、20Lに対応するエッジプロファイル或いは表面角度θjの分布の差が最小となるように、それらのオフセット等を調節(補正)する周知のフィッティング処理により行えばよい。
これにより、例えば、1台のカメラの視野範囲(光の検出範囲)が±60°程度であっても、一般的なエッジプロファイル測定で必要となる±90°(計180°)の範囲での表面角度分布測定を行うことができる。
さらに、計算機30’は、前述したステップS11において、両カメラ20R、20Lに対応する前記一部の領域の表面角度θjの分布(ステップS8の処理での演算結果)の各々に基づいて、その一部の領域各々についてのエッジプロファイルを算出するとともに、それらをつなぎ合わせる処理を行うことによって測定部位P全体のエッジプロファイルを算出する(つなぎ合わせ演算手段の一例)。
或いは、計算機30’は、前述したステップS11において、両カメラ20R、20Lに対応する前記一部の領域の表面角度θjの分布(ステップS8の処理での演算結果)の各々をつなぎ合わせる処理を行うことによって測定部位P全体の表面角度分布θjを算出し、その算出結果に基づいて測定部位P全体のエッジプロファイルを算出する(つなぎ合わせ演算手段の一例)。
図14は、形状測定装置Z’により得られる2台のカメラ各々に対応する表面角度分布及びエッジプロファイルのフィッティング処理前後の状態を表す図である。図14(a)はフィッティング処理前、図14(b)はフィッティング処理後を表す。
また、図中、「表面角度分布R」及び「エッジプロファイルR」と表記するものは、第1カメラ20Rに対応する表面角度θjの分布及びエッジプロファイルを表す。同様に、「表面角度分布L」及び「エッジプロファイルL」と表記するものは、第2カメラ20Lに対応する表面角度θjの分布及びエッジプロファイルを表す。
図14(a)に示すように、第1カメラ20Rに対応する領域の表面角度分布R及びこれに基づくエッジプロファイルRと、第2カメラ20Lに対応する領域の表面角度分布L及びこれに基づくエッジプロファイルLとの間にはオフセット(ずれ)が生じ得る。
これらの結果を、重複する領域の部分についてフィッティング処理を行うことによってつなぎ合わせれば、図14(b)に示すように、測定部位Pの全領域の表面角度分布(全体)或いはエッジプロファイル(全体)が得られる。
また、計算機30’は、LED駆動回路11を通じて複数のLED12を順次切り替えて点灯させる過程(ステップS1〜S5)において、一部のLED12については、各カメラ20R、20Lに対応する複数のLED12を同時に点灯させるよう制御する(切替型光照射手段の一例)。
図13に示すように、円弧上に複数配列されたLED12のうち、第1カメラ20Rに対し、第2カメラ20Lとは反対側に配置されているLED12Rの一部(例えば、LED12Ra)については、その出力光は、ウェーハ1により遮断されて第2カメラ20Lには到達しない(検出されない)。
同様に、第2カメラ20Lに対し、第1カメラ20Rとは反対側に配置されているLED12Lの一部(例えば、LED12La)については、その出力光は、ウェーハ1により遮断されて第2カメラ20Lには到達しない。
そこで、計算機30’は、ステップS2において、第1カメラ20Rに対応する一部のLED(LED12Raなど)と、第2カメラ20Lに対応する一部のLED(LED12Laなど)とが同時に点灯するようLED駆動回路11を制御する。
これにより、測定時間を短縮できる。
なお、図13に示した形状測定装置Z’は、2台のカメラ20を備えるものであるが、3台以上のカメラ20を備えた構成としても、同様の作用効果が得られる。
以上に示した実施形態では、拡散光源であるLED12をそのまま光源として採用している。このような構成を採用できる理由は、各LED12が、測定部位Pの大きさ(奥行きの長さ)に比べて十分に遠い距離に配置されており、各LED12の光が測定部位Pにおいて平行光とみなせるためである。
一方、LED12等の光源を測定部位Pに近づけて配置する場合、その光源の光を、レンズを用いて平行光とした上で測定部位Pに照射することが望ましい。
また、前述した実施形態では、光源としてLED12を採用しているが、レーザダイオードや白熱電球、蛍光灯など、他の種類の光源を採用してもかまわない。
また、前述した実施形態では、ウェーハ1の端面の形状を、ウェーハ1の厚み方向全体に渡って測定するため、カメラ20は、ウェーハ1を真横から見るように設定されていた。しかしながら、カメラ20は、目的に応じて前述の実施形態とは異なる位置及び向きで設置されることも考えられる。
また、一般的なエッジプロファイル測定では、測定部位P各々について、一次元方向(ウェーハ1の厚み方向)の表面角度分布を測定できれば十分である。このため、測定部位Pからの反射光の輝度を検出する手段として、複数の光電変換素子が一列に(1次元方向に)配列されて構成された一次元の受光器を用いることも考えられる。
なお、アルミサブストレート、ガラスサブストレートなどの薄片試料についても、同様にエッジプロファイルの測定が可能である。
また、前述した実施形態では、測定部位Pからの反射光を直接的にカメラ20に入射させる構成を示した。しかしながら、測定部位Pからの反射光を変向させる光学機器(ミラーなど)を設け、その光学機器により変向された反射光をカメラ20に入射させる構成も考えられる。これにより、光源(LED12)が配置される平面に沿う方向への反射光を検出したい場合に、設置スペースが比較的大きいカメラ20と光源との干渉を回避できる。これにより、光照射角度の範囲を拡大でき、測定部位Pの表面角度の測定範囲をより広げることができる。
また、前述した実施形態における光照射装置10は、複数の光源(LED12)を順次切り替えて点灯させる切替型の光照射装置であった。しかしながら、光照射装置としては、1つ又は比較的少数の光源(LED等)を一の平面内の複数の位置(例えば、光照射装置10において各LED12が配置された位置)各々に順次移動させる光源移動機構を備え、その移動先の各位置で光源を点灯させる移動型の光照射装置も考えられる。このような移動型の光照射装置によっても、前記光照射装置10と同様に、測定部位Pに対して順次異なる照射角度φで光を照射する装置を構成できる。
この移動型の照明装置としては、例えば、基準位置Qを中心とする円弧状にレールと、そのレールに沿ってLED等の光源を移動させる移動機構と、この移動機構によってLEDが予め定められた複数の位置各々に到達したことを検知する位置センサと、光源がその位置センサにより検知される各位置へ順次移動するよう前記移動機構を制御する制御装置とを備えたものが考えられる。
ところで、複数の光源(前述の実施形態ではLED12)を切り替えて測定部位Pに光を照射する光照射装置10を用いる場合、光源それぞれの個体差により、各光源から基準位置Qの測定部位Pに照射される光の光量(強度)にばらつきが生じ得る。そこで、そのばらつきが極力小さくなるよう予め調整することが重要である。
具体的には、測定部位Pが配置される基準位置Qに光センサを配置し、各光源を順次切り替えて点灯させたときに、その光センサで検出される光強度がほぼ一定のレベルとなるように各光源に供給する電力(電圧や電流)、即ち、各光源の発光量(発光強度)を予め調整しておく。
例えば、光源がLEDである場合、各LEDに対する電力供給ラインに可変抵抗を設け、この可変抵抗の抵抗値を調整することによって各LEDへの供給電流を予め調整する。或いは、各LEDに対する電力供給をパルス幅変調(PWM)によって制御可能とするパルス幅変調装置を設け、これによって各LEDへの供給電力を予め調整する。
その他、測定部位Pが配置される基準位置Qに反射方向や反射率が既知の反射部材(鏡など)を配置し、各光源を順次切り替えて点灯させたときにカメラ20で検出される光強度のばらつきに基づいて、光源ごとの光強度の補正係数を予め算出して記憶しておくことも考えられる。そして、実際の測定時には、その補正係数に基づく補正後の測定値(光強度分布)を用いて測定する。
以上に示すような調整を行うことにより、光源の特性のばらつきに起因する測定誤差が発生することを回避できる。
[形状測定装置Z2(第2応用例)]
次に、図15を参照しつつ、形状測定装置Zの第2応用例である形状測定装置Z2について説明する。以下、形状測定装置Z2について、前述した形状測定装置Zと異なる点についてのみ説明する。なお、図15において、図1に示した構成要素と同じものについては、同じ符号を記している。また、図15(a)は、形状測定装置Z2の平面図(一部ブロック図)、図15(b)は、形状測定装置Z2の側面図である。
図15に示すように、形状測定装置Z2は、前記形状測定装置Zと全く同じ構成要素を備えるが、前記光照射装置10における前記LED12及び前記カメラ20の配置位置が前記形状測定装置Zとは異なる。
図1に示したように、前記形状測定装置Zにおいては、全てのLED12の発光部が、前記基準位置Qを含み、ウェーハ1(薄片試料)の面に直交する1つの平面内、即ち、基準位置Q(測定部位P)におけるウェーハ1(薄片試料)の厚み方向の断面を含む平面内に位置するように配置されていた。
一方、図15(b)に示すように、形状測定装置Z2においては、基準位置Q(測定部位P)におけるウェーハ1(薄片試料)の厚み方向の断面を含む平面50の両側のうちの一方に各LED12の点灯位置が、他方にカメラ20(第1の光検出手段の一例)の配置位置がそれぞれ位置している。なお、平面50は、基準位置Q(測定部位P)を含み、ウェーハ1(薄片試料)の表裏の面にほぼ直交する平面である。
そして、形状測定装置Z2において、各LED12の点灯位置が並ぶ平面に対し直交する方向から見たときの各LED12及びカメラ20の位置関係(図15(a))は、前記形状測定装置Zにおけるそれらの位置関係(図1(a))と同じである。
このような形状測定装置Z2においても、前記形状測定装置Zを用いて行ったのと同じ測定及び演算を行うことにより、ウェーハ1の測定部位Pの形状測定(エッジプロファイルの算出)が可能である。また、形状測定装置Z2においては、測定部位Pの正面方向においてLED12を連続的に並べても、そのLED12がカメラ20と干渉しないように配置できるため、測定部位Pの正面方向の一部の範囲について、表面形状測定の空間分解能をより高めることができる。
[形状測定装置Z3(第3応用例)]
次に、図16を参照しつつ、形状測定装置Zの第3応用例である形状測定装置Z3について説明する。以下、形状測定装置Z3について、前述した形状測定装置Z2と異なる点についてのみ説明する。なお、図16において、図1及び図15に示した構成要素と同じものについては、同じ符号を記している。また、図16(a)は、形状測定装置Z3の平面図(一部ブロック図)、図16(b)は、形状測定装置Z3の側面図である。
図16に示すように、形状測定装置Z3は、前記形状測定装置Z2が備える全ての構成要素を備え、前記光照射装置10における前記LED12及び前記カメラ20の配置位置も前記形状測定装置Z2と同じである。なお、カメラ20は、テレセントリックレンズ方式のカメラである。
さらに、形状測定装置Z3は、ウェーハ1の測定部位P(端面)に対してシート光Ls(シート状の光、スリット光といってもよい)を照射するレーザ光源40(第2の光照射手段の一例)と、そのレーザ光源40を駆動するレーザ駆動回路41とを備えている。
ここで、前記レーザ光源40は、測定部位Pにおけるウェーハ1の厚み方向の断面を含む平面50内、即ち、基準位置Q(測定部位P)を含み、ウェーハ1の表裏の面にほぼ直交する平面50内でシート光Lsを照射する。
これにより、形状測定装置Z3においては、前記シート光Lsを含む平面50の両側のうちの一方に前記光照射装置10におけるLED12の点灯位置が、他方の前記カメラ20(第1の光検出手段の一例)の配置位置がそれぞれ位置している。
また、前記レーザ駆動回路41は、計算機30”からの制御指令に従って、レーザ光源40によるシート光Lsの出射又はその停止を制御する。
そして、前記カメラ20は、前記LED12から測定部位Pに照射された光の正反射方向の反射光の二次元の輝度分布を検出するもの(第1の光検出手段の一例)であると同時に、前記レーザ光源40が出射するシート光Lsの測定部位Pからの正反射方向以外の方向への反射光の二次元の輝度分布を検出するもの(第2の光検出手段の一例)でもある。
さらに、形状測定装置Z3が備える計算機30”は、形状測定装置Z1、Z3が備える計算機30と同じ処理を実行する機能を備え、さらに、前記レーザ駆動回路41の制御プログラムを実行する機能と、光切断法による形状演算プログラムを実行する機能とを備えている。なお、レーザ駆動回路41の制御プログラムや光切断法による形状演算プログラムは、計算機30”の記憶部に予め記憶されている。
即ち、計算機30”は、レーザ駆動回路41を制御することによってレーザ光源40から測定部位Pにシート光Lsを照射させ、シート光Ls照射時の測定部位Pからの反射光の画像データ(二次元輝度分布データ)をカメラ20を通じて取り込み、その画像データに基づいて、周知の光切断法の演算により測定部位Pの表面形状を算出する機能を備えている(光切断法形状演算手段の一例)。
図17は、シート光を照射中の測定部位P(a)、(b)及びその測定部位Pのカメラ20による撮影画像(c)の一例を模式的に表した図である。また、図17(a)は、測定部位Pをシート光Lsが形成する面に垂直な方向から見た図、図17(b)は、測定部位Pをシート光Lsの照射方向から見た図である。
シート光Lsは、前述したように測定部位Pにおけるウェーハ1の厚み方向の断面を含む平面50内にある。このため、測定部位Pの表面においてシート光Lsにより描かれる線CL0は、ちょうど測定部位Pにおけるウェーハ1の厚み方向の断面の輪郭(表面形状)に沿う線状となる。また、その線CL0は、測定部位Pをシート光Lsの照射方向から見た場合は図17(b)に示すようにほぼ直線状となる。
一方、測定部位Pが粗面である(光沢面でない)場合、シート光Lsを照射中の測定部位Pをカメラ20で観測すると、図17(c)に示すように、シート光Lsの反射光により形成される高輝度部分の像が線状の像CL1(以下、光切断線の像という)となる。この光切断線の像CL1のY軸方向の座標の分布(X軸方向における分布)は、測定部位Pの厚み方向における表面高さ分布に対応した値となる。
具体的には、図17に示すように、測定部位Pにおいて、厚み方向の所定の基準となる位置(図17(a)では、ウェーハ1のおもて面と端面(側面)との境界位置)における表面高さを基準とした場合の厚み方向各位置の表面高さをh、測定部位Pをカメラ20で撮像して得られた画像における、前記基準となる位置に相当する位置の前記光切断線の像CL1のY座標と各X座標における前記光切断線の像CL1のY座標との差をhccd、シート光Lsと測定部位Pからカメラ20に向かう反射光とのなす角度をθx、測定部位Pからカメラ20の撮像素子へ至る経路の光学系の倍率をMとした場合、次の(4)式が成立する。
h=hccd/{M・sin(θx)} ・・・(4)
従って、計算機30”が、カメラ20による撮像画像に基づいて前記光切断線の像CL1のY座標の分布(X軸方向(ウェーハ1の厚み方向)の各位置におけるhccdの分布)を検出し、検出したY座標の値を(4)式に代入して演算することによって測定部位Pのエッジプロファイル(厚み方向における表面高さ分布)を算出できる。
次に、図18に示すフローチャートを参照しつつ、形状測定装置Z3の測定制御手順について説明する。図18に示す測定制御手順は計算機30”が実行するものであり、具体的には、測定部位Pの表面の状態を自動判別し、その表面の状態に適した表面形状測定を実行するように制御する手順である。以下、S21,S22、・・・は、処理手順(ステップ)の識別符号を表す。なお、ウェーハ1の測定部位Pが、基準位置Qに位置するように配置された状態で、図18に示す処理が開始されるものとする。
[ステップS21、S22]
まず、計算機30”は、レーザ光源駆動回路41を制御することにより、レーザ光源40から測定部位Pにシート光Lsを照射させる(S21)。
さらに、計算機30”は、シート光Lsの照射中におけるカメラ20による測定部位Pの撮像(シャッターON)及び撮影画像の記憶を実行する(S22)。カメラ20による撮影画像は、計算機30”が備えるハードディスクなどの記憶手段に記憶される。
[ステップS23]
次に、計算機30”は、レーザ光源40によりシート光Lsを照射中のカメラ20の撮影画像(第2の光検出手段による検出輝度に相当)に基づいて、光照射角度変更方式による形状演算結果と、光切断法に基づく形状演算結果とのいずれを測定部位Pの形状評価に採用するかを自動判別する(S23、第2の採用判別手段の一例)。ここで、光照射角度変更方式による形状演算結果とは、図12に示したLED12の点灯制御及び表面角度分布演算(S1〜S11)による測定部位Pの表面角度の分布の演算結果のことである。
具体的には、計算機30”は、シート光Lsを照射中のカメラ20の撮影画像に、X軸方向におけるウェーハ1の厚みに相当する範囲において連続する線状の像(所定輝度以上の画素からなる像)である前記光切断線の像CL1(図17参照)が含まれているか否かを判別する。ここで、測定部位Pの表面が粗面である場合、シート光Lsが測定部位Pで散乱反射し、その反射光がカメラ20に到達するので、カメラ20の撮影画像に前記光切断線の像CL1が表れる。一方、測定部位Pの表面が研磨された光沢面(鏡面等)である場合、シート光Lsが測定部位Pで正反射し、その反射光はカメラ20に到達しないので、カメラ20の撮影画像に前記光切断線の像CL1が表れない。
そして、計算機30”は、カメラ20の撮影画像に前記光切断線の像CL1が含まれていると判別した場合には、光切断法に基づく形状演算による測定部位Pの表面形状の演算結果を採用すると判別し、そうでなければ前記光照射角度変更方式による形状演算結果を採用すると判別する。
[ステップS24、S25]
そして、計算機30”は、前記光照射角度変更方式による形状演算結果を採用すると判別した場合は、図12に示したLED12の点灯制御及び表面角度分布演算(S1〜S11)を実行することにより、測定部位Pの表面角度の分布に基づくエッジプロファイルの算出及び算出結果の記憶等を行い(S24)、測定処理を終了させる。
一方、計算機30”は、光切断法に基づく形状演算結果を採用すると判別した場合は、ステップS22で撮影した画像(画像データ)に基づいて、光切断法による測定部位Pのエッジプロファイルの算出(表面形状演算)及び算出結果の記憶を行い(S25)、測定処理を終了させる。このとき、計算機30”は、必要に応じて、測定部位Pのエッジプロファイルをその表示部に表示させる。具体的には、計算機30”は、測定部位Pの厚み方向における表面高さhの分布(エッジプロファイル)を、前記(4)式に基づいて算出する。
このように、形状測定装置Z3は、ウェーハ1(薄片試料)の端面が光沢面であっても粗面であってもその表面形状を測定することが可能である。しかも、ユーザが、測定部位Pの状態に応じて測定内容や演算内容を切り替える手間を要しない。
ところで、図18に示したステップS23の処理は、前記レーザ光源40による光照射時のカメラ20による撮影画像(第2の光検出手段による検出輝度に相当)に基づいて、前記光照射角度変更方式による形状演算結果(表面角度分布の演算結果)と、光切断法に基づく形状演算結果とのいずれかを測定部位Pの形状評価に採用するかを判別する例を示した。
これに対し、計算機30”(第1の採用判別手段の一例)が、ステップS23において、光照射装置10(第1の光照射手段の一例)におけるLED12の光を照射時のカメラ20による撮影画像(検出輝度)に基づいて、前記光照射角度変更方式による形状演算結果(表面角度分布演算手段による測定部位の表面角度の分布の演算結果に相当)と、光切断法に基づく形状演算結果とのいずれを測定部位Pの形状評価に採用するかを判別することも考えられる。
例えば、計算機30”が、前記光照射装置10における予め定められた1つ又は複数のLED12を点灯させ、そのときのカメラ20による撮影画像(第1の光検出手段による検出輝度に基づく画像)に、点灯したLED12の位置及び数に応じた数の帯状の像(図8参照)が含まれるか否かを判別し、その判別結果に応じていずれの演算結果を採用するかを判別すること等が考えられる。
測定部位Pが研磨後の鏡面である場合、LED12の光が測定部位Pにおいて正反射し、その反射光がカメラ20に到達するため、図8に高輝度部分として示すようなY軸方向に伸びる帯状の像が表れる。この帯状の像の数は、測定部位Pの概ねの形状が既知であれば、点灯したLED12の位置及び数に応じて一意に定まる。
一方、測定部位Pの表面が研磨前の粗面である場合、点灯したLED12の光が測定部位Pで散乱反射し、その反射光はカメラ20に到達しないので、カメラ20の撮影画像に前記帯状の像が表れない。
このため、計算機30”が、カメラ20の撮影画像に点灯したLED12の位置及び数に応じた数の前記帯状の像が含まれていると判別した場合には、前記光照射角度変更方式による形状演算結果を採用すると判別し、そうでなければ光切断法に基づく形状演算による測定部位Pの表面形状の演算結果を採用すると判別することが考えられる。
前記形状測定装置Z3は、以上に示した処理を実行することによっても、ウェーハ1(薄片試料)の端面の状態に応じて測定内容や演算内容を自動的に切り替えるものとなる。
また、図16に示した前記レーザ光源40は、測定部位Pにおけるウェーハ1の厚み方向の断面を含む平面50内でシート光Lsを照射するよう配置されているが、それ以外の平面内でシート光Lsを照射するよう配置されることも考えられる。但し、シート光Lsが前記平面50以外の平面内で照射される場合、測定部位Pの表面においてシート光Lsにより描かれる線CL0は、測定部位Pにおけるウェーハ1の厚み方向の断面の輪郭(表面形状)に対してずれた線状となる。このため、前記平面50に対するシート光Lsを含む平面のずれが大きくなるに従って、前記光照射角度変更方式による形状演算結果と、光切断法に基づく形状演算結果との間の誤差が大きくなる。
また、シート光Lsの反射光の二次元の輝度(画像)を検出するカメラが、LED1の光の反射光の輝度を検出する前記カメラ20と別個に設けられた例も考えられる。