JP5288778B2 - 重金属含有粉末の処理方法 - Google Patents

重金属含有粉末の処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、ゴミ焼却設備等で発生する飛灰の如き、カルシウム、鉛、亜鉛、銅及び塩素分を含む重金属含有粉末から、カルシウムと、鉛及び亜鉛と、銅を分別して回収し、再資源化するための処理方法に関する。
ゴミ焼却設備で発生する飛灰等の重金属含有粉末は、ナトリウム、カリウム、塩素分等の水溶性成分の他、カルシウム、鉛、亜鉛、銅等を含む。
このうち、カルシウムは、カルシウム化合物として分別回収すれば、セメント原料として利用することができる。また、鉛、亜鉛、銅等は、これら金属元素を含む化合物または金属元素単体として分別回収すれば、非鉄製錬原料として利用することができる。
そこで、飛灰等の重金属含有粉末を処理して、カルシウム化合物等を分別回収し、再資源化するための方法が、提案されている。
例えば、(A)カルシウム及び重金属含有物(例えば、飛灰等)と、水とを硫酸の存在下で混合してスラリーとした後、該スラリーを固液分離して、鉛及びカルシウムを含む固形分と、上記カルシウム及び重金属含有物から溶出した銅及び亜鉛を含む液分を得る硫酸処理工程と、(B)工程(A)で得られた固形分と、水と、アルカリ化剤とを混合して、アルカリ性のスラリーを得た後、該スラリーを固液分離して、カルシウムを含む固形分と、鉛を含む液分とを得るカルシウム回収工程と、(C)工程(A)で得られた液分に亜鉛を添加して、銅からなる固形分と、亜鉛を含む液分を得る銅回収工程と、(D)工程(B)で得られた液分と工程(C)で得られた液分を混合した後、得られた混合液のpHを鉛及び亜鉛の共沈領域に調整し、その後、該混合液を固液分離して、鉛及び亜鉛を含む固形分と、液分を得る鉛及び亜鉛回収工程を含むことを特徴とするカルシウム及び重金属含有物の処理方法が、提案されている(特許文献1)。
また、(A)カルシウム、鉛、亜鉛、銅及び塩素分を含む重金属含有粉末と、水を混合し、かつ、必要に応じてpH調整用薬剤を用いて、pHが9.0〜12.0であるスラリーを得た後、該スラリーを固液分離して、カルシウム、鉛、亜鉛及び銅を含む固形分と、塩素分を含む液分を得る水洗工程と、(B)工程(A)で得られた固形分と、硫酸溶液を混合して、pHが2.0〜4.0である酸性スラリーを得た後、該酸性スラリーを固液分離して、硫酸カルシウム及び硫酸鉛を含む固形分と、溶出成分である亜鉛及び銅を含む酸性の液分を得る酸浸出工程と、(C)工程(B)で得られた硫酸カルシウム及び硫酸鉛を含む固形分と、アルカリ水溶液を混合して、pHが13.5以上のアルカリ性スラリーを得た後、該アルカリ性スラリーを固液分離して、水酸化カルシウムを含む固形分と、溶出成分である鉛を含むアルカリ性の液分を得るアルカリ浸出工程と、(D)工程(B)で得られた亜鉛及び銅を含む酸性の液分に対して、金属亜鉛を浸漬して、金属銅からなる固体と、溶出成分である亜鉛を含む酸性の液体を得る銅回収工程と、(E)工程(C)で得られた鉛を含むアルカリ性の液分に対して、工程(D)で得られた亜鉛を含む酸性の液分を徐々に添加し、pHが9.0〜12.0であるアルカリ性の混合液を得て、その後、該アルカリ性の混合液を固液分離して、硫酸鉛及び酸化亜鉛を含む固形分と、液分を得る重金属回収工程、を含むことを特徴とする重金属含有粉末の処理方法が、提案されている(特許文献2)。
特開2005−177757号公報 特開2007−105561号公報
特許文献1に記載された技術によると、飛灰等のカルシウム及び重金属含有物から、カルシウムを、セメント原料として好適に利用し得る水酸化カルシウムとして回収し、かつ、銅と、亜鉛及び鉛とを分別して回収することができる。
しかし、特許文献1の技術では、工程(D)において、工程(B)で得られた鉛を含む液分と、工程(C)で得られた亜鉛を含む液分を急激に混合すると、混合後に固液分離で得られる鉛及び亜鉛を含む固形分の水分含有率が、80質量%程度と大きくなり、固液分離の効率が低下したり、また、鉛及び亜鉛を含む固形分を山元還元の工場に運搬する際の輸送上の負荷が増大するという問題があった。
一方、特許文献2の技術によると、特許文献1の技術において、鉛を含む液分と、亜鉛を含む液分とを混合することに代えて、鉛を含む液分に対して、亜鉛を含む液分を徐々に添加し、pHを9.0〜12.0に調整すること(工程(E))によって、鉛及び亜鉛を含む固形分の水分含有率を大幅に減少させることができる。
しかし、本発明者の実験によると、特許文献2の技術では、処理対象物の塩素含有率が高い場合、得られる鉛及び亜鉛を含む固形分の塩素分濃度が高くなる傾向があることがわかった。そして、塩素分濃度が高いことは、非鉄製錬の製錬処理工程等において種々のトラブルの原因となり得る。したがって、処理対象物の塩素含有率が高い場合、何らかの手段によって、鉛及び亜鉛を含む固形分の塩素分濃度を、例えば、1.0質量%以下に低減させることが望ましい。
そこで、本発明は、飛灰の如き、カルシウム、鉛、亜鉛、銅及び塩素分を含む重金属含有粉末から、カルシウムと、鉛及び亜鉛と、銅を分別して回収するに際して、鉛化合物及び亜鉛化合物を含む固形分の水分含有率を減少させることができ、かつ、該固形分の塩素分濃度を大幅に減少させることのできる処理方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特許文献2の技術における工程(E)(鉛化合物及び亜鉛化合物を含む固形分を得る工程)の前に、鉛を含む液分中の鉛を鉛化合物として析出させるための特定の工程を設ければ、鉛化合物及び亜鉛化合物を含む固形分の水分含有率を低減させることができるとともに、該固形分の塩素分濃度を大幅に減少させることができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[]を提供するものである。
[1] (A)カルシウム、鉛、亜鉛、銅及び塩素分を含む重金属含有粉末と、水を混合し、かつ、必要に応じてpH調整用薬剤を用いて、pHが9.0〜12.0であるスラリーを得た後、該スラリーを固液分離して、カルシウム、鉛、亜鉛及び銅を含む固形分と、塩素分を含む液分を得る水洗工程と、(B)工程(A)で得られた固形分と、硫酸溶液を混合して、pHが2.0〜4.0である酸性スラリーを得た後、該酸性スラリーを固液分離して、硫酸カルシウム及び硫酸鉛を含む固形分と、溶出成分である亜鉛及び銅を含む酸性の液分を得る酸浸出工程と、(C)工程(B)で得られた硫酸カルシウム及び硫酸鉛を含む固形分と、アルカリ水溶液を混合して、pHが13.5以上のアルカリ性スラリーを得た後、該アルカリ性スラリーを固液分離して、水酸化カルシウムを含む固形分と、溶出成分である鉛を含むアルカリ性の液分を得るアルカリ浸出工程と、(D)工程(C)で得られた鉛を含むアルカリ性の液分に対して、硫酸を加えてpHを9.0〜12.0とし、鉛化合物からなる固形分を含むアルカリ性スラリーを得る鉛析出工程と、(E)工程(B)で得られた亜鉛及び銅を含む酸性の液分に対して、金属亜鉛を浸漬して、金属銅からなる固体と、溶出成分である亜鉛を含む酸性の液分を得る銅回収工程と、(F)工程(D)で得られた鉛化合物からなる固形分を含むアルカリ性スラリーに対して、必要に応じてアルカリ化剤を添加して、pHが9.0以上に常時保たれる条件下で、工程(E)で得られた亜鉛を含む酸性の液分を徐々に添加し、pHが9.0〜12.0であるアルカリ性の混合液を得て、その後、該アルカリ性の混合液を固液分離して、鉛化合物及び亜鉛化合物を含む固形分と、液分を得る重金属回収工程、を含むことを特徴とする重金属含有粉末の処理方法。
[2] 工程(F)において、前記のアルカリ性の混合液の液温を30℃以上に保つ上記[1]に記載の重金属含有粉末の処理方法。
[3] 工程(F)において、工程(D)で得られたアルカリ性スラリーに対する、工程(E)で得られた酸性の液分の添加に要する時間を、前記の鉛化合物及び亜鉛化合物を含む固形分の水分含有率が70質量%以下になるように定める上記[1]又は[2]に記載の重金属含有粉末の処理方法。
[4] 工程(F)で得られる鉛化合物及び亜鉛化合物を含む固形分(乾燥状態)の塩素含有率が、1.0質量%以下である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の重金属含有粉末の処理方法。
[5] 工程(D)における上記アルカリ性スラリーのpHが、11.0を超え、12.0以下である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の重金属含有粉末の処理方法。
本発明の処理方法によれば、飛灰の如き、カルシウム、鉛、亜鉛、銅及び塩素分を含む重金属含有粉末から、カルシウムと、鉛及び亜鉛と、銅を分別して回収するに際して、鉛及び亜鉛を含む固形分の水分含有率を減少させることができるとともに、該固形分中の塩素分濃度を大幅に減少させることができる。
本発明の処理方法によると、水分含有率が十分に低減された、鉛及び亜鉛を含む固形分が得られるため、該固形分の回収手段としての固液分離装置の小型化や、該固液分離装置における処理の効率化や、鉛及び亜鉛を含む固形分の山元還元先への輸送の負荷の軽減等を図ることができる。
本発明の処理方法によると、塩素分濃度が例えば、0.3質量%以下に低減された、鉛及び亜鉛を含む固形分が得られるため、非鉄製錬処理工程における塩素分によるトラブルを起こさずに、該固形分を製錬して、再利用可能な鉛及び亜鉛を得ることができる。
以下、本発明の重金属含有粉末の処理方法を詳しく説明する。図1は、本発明の処理方法の実施形態の一例を示すフロー図である。
[(A)水洗工程]
本工程は、カルシウム、鉛、亜鉛、銅及び塩素分を含む重金属含有粉末と、水を混合し、かつ、必要に応じてpH調整用薬剤を用いて、pHが9.0〜12.0であるスラリーを得た後、該スラリーを固液分離して、カルシウム、鉛、亜鉛及び銅を含む固形分と、塩素分を含む液分を得る工程である。
ここで、重金属含有粉末の例としては、煤塵や、焼却炉の炉底等に焼却残渣として残る焼却灰等が挙げられる。煤塵としては、例えば、焼却炉から発生する飛灰(焼却飛灰)や、焼却灰等の溶融炉から発生する飛灰(溶融飛灰)や、セメント製造工程から抽気されて捕集される粉末や、エコセメントの製造時に得られるバグフィルターに捕集される粉末等が挙げられる。
重金属含有粉末の一例である、エコセメントの製造時に得られるバグフィルターに捕集される粉末の成分組成の一例は、酸化物換算の質量割合で、カルシウム2%、カリウム13%、ナトリウム32%、鉛2%、亜鉛1%、銅2%、塩素38%である。
本発明で処理対象となる重金属含有粉末は、各元素毎の含有割合の相違はあるものの、概ね、前記のバグフィルターに捕集される粉末に含まれる元素(Ca、K、Na、Pb、Zn、Cu、Cl)と同様の元素を含むものである。
本工程において、スラリーのpHは、9.0〜12.0、好ましくは9.0〜11.0の範囲内に調整される。
該pHが9.0未満では、pHの低下に伴い、鉛、亜鉛、銅の溶出量が次第に増大する。pHが12.0を超えると、鉛の溶出量が大きくなる。pHが13.0を超えると、亜鉛の溶出量が大きくなる。したがって、pHが9.0〜12.0であると、鉛、亜鉛、銅のいずれも溶出しなくなり、後工程におけるこれら重金属の回収率を高めることができる。
pHを上記数値範囲内に調整するためのpH調整用薬剤としては、塩酸、硫酸等の無機酸や、水酸化ナトリウム等のアルカリ化剤が用いられる。
なお、pH調整用薬剤を用いなくても、スラリーのpHが前記の好ましい範囲内に収まることがある。この場合、pH調整用薬剤の添加によってpHを調整する必要はない。
スラリーの固液比(溶液1リットル中の重金属含有粉末の質量)は、好ましくは100〜600g/リットル、より好ましくは150〜400g/リットルである。該固液比が100g/リットル未満では、スラリーの固液分離に要する時間が増大するなど、処理効率が低下する。該固液比が600g/リットルを超えると、塩素分等を十分に溶出させることができないことがある。
スラリーは、通常、所定時間(例えば、10〜40分間程度)攪拌される。
攪拌後のスラリーは、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分とに分離される。
このうち、液分は、水溶性成分(K、Na、Cl等)を含むものであり、所定の処理工程でこれら水溶性成分を除去した後、系外に排出される。
固形分(ケーキ)は、鉛、亜鉛、銅、カルシウム等と、水洗により除去しきれなかった塩素分を含むものであり、解砕した後、工程(B)で処理される。
[(B)酸浸出工程]
本工程は、上述の前処理工程で得られた固形分と、硫酸溶液を混合して、pHが2.0〜4.0、好ましくは2.5〜3.5である酸性スラリーを得た後、該酸性スラリーを、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて固液分離して、硫酸カルシウム及び硫酸鉛を含む固形分と、溶出成分である亜鉛及び銅を含む酸性の液分を得る工程である。
酸性スラリーのpHが4.0を超えると、工程(A)で得られた固形分に含まれる亜鉛及び銅の液中への溶出が不十分になる。
酸性スラリーのpHが2.0未満であると、SiO2やAl23が液中に溶出し、後工程で回収される鉛、亜鉛、銅の各重金属含有固体分の品位が低下する。
[(C)アルカリ浸出工程]
本工程は、工程(B)で得られた硫酸カルシウム及び硫酸鉛を含む固形分と、アルカリ水溶液を混合して、pHが13.5以上のアルカリ性スラリーを得た後、該アルカリ性スラリーを、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて固液分離して、水酸化カルシウムを含む固形分と、溶出成分である鉛を含むアルカリ性の液分を得る工程である。
ここで、アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物の水溶液等が用いられる。
アルカリ性スラリーのpHが13.5未満では、水酸化カルシウムの生成量及び液中への鉛の溶出量が小さくなる。
なお、アルカリ性スラリーのpHが12.5である場合、鉛の溶出割合は20%程度に留まる。アルカリ性スラリーのpHが13.5である場合、該割合は70%程度以上になる。
本工程で得られた水酸化カルシウムを含む固形分は、セメント原料として用いることができる。
[(D)鉛析出工程]
本工程は、工程(C)で得られた鉛を含むアルカリ性の液分に対して、硫酸を加えてpHを9.0〜12.0とし、鉛化合物(例えば、酸化鉛等)からなる固形分を含むアルカリ性スラリーを得る工程である。
上記pHは、9.0〜12.0、好ましくは10.0〜12.0、より好ましくは11.0を超え、12.0以下である。該pHが9.0未満、あるいは12.0を超えると、鉛の溶出量が増大し、鉛の回収率が低下する。
このように、亜鉛を含む酸性の液分を添加する工程(後述の(F)工程)の前に、液中に溶存する鉛を固体分である鉛化合物として析出させる工程を設けることによって、最終的に得られる鉛化合物及び亜鉛化合物を含む固形物の塩素分濃度を大幅に低減させることができる。すなわち、亜鉛を含む酸性の液分中には、工程(A)で除去されなかった塩素分が含まれており、この塩素分と塩を形成しやすい鉛を、工程(F)の前に、固体分である鉛化合物(例えば、酸化鉛等)としておけば、工程(F)において鉛と塩素分との反応生成物が生じることがなく、最終的に得られる鉛化合物及び亜鉛化合物を含む固形物中の塩素分濃度を大幅に低減させることができる。
[(E)銅回収工程]
本工程は、工程(B)で得られた亜鉛及び銅を含む酸性の液分に対して、銅よりもイオン化傾向の大きい金属亜鉛を浸漬して、金属銅からなる固体と、溶出成分である亜鉛を含む酸性の液体を得る工程である。
浸漬した金属亜鉛は、析出する銅に代わり、液中に溶出する。液中の溶出成分となった亜鉛は、重金属含有粉末に由来する液中の既存の亜鉛と共に、工程(F)において固体分である亜鉛化合物として回収される。
金属亜鉛の形態の一例として、亜鉛粉末を挙げることができる。金属亜鉛が粉末であれば、金属亜鉛の液中への溶解と、該溶解と同時に起きる液中の銅の金属銅としての析出を迅速に進行させることができる。
亜鉛粉末の添加量は、亜鉛及び銅を含む酸性の液分中の銅に対して、好ましくは1.0〜1.3倍当量である。
また、金属亜鉛の形態の他の例として、亜鉛板を挙げることができる。この場合、亜鉛板の表面から亜鉛が液中に徐々に溶出するとともに、液中の銅が亜鉛板の表面に金属銅として析出する。金属銅を十分に析出させた後、金属銅が析出してなる亜鉛板を液中から引き上げれば、銅を除去した液分を得ることができる。
亜鉛板の質量は、亜鉛及び銅を含む酸性の液分中の銅に対して、好ましくは1.0倍当量以上である。
なお、本明細書において、「浸漬」の語は、亜鉛粉末を液中に添加する場合と、亜鉛板を液中に沈下する場合の両方を含む意で用いられる。
[(F)重金属回収工程]
本工程は、工程(D)で得られた鉛化合物からなる固形分を含むアルカリ性スラリーに対して、必要に応じてアルカリ化剤を添加して、pHが9.0以上に常時保たれる条件下で、工程(E)で得られた亜鉛を含む酸性の液分を徐々に添加し、pHが9.0〜12.0であるアルカリ性の混合液を得て、その後、該アルカリ性の混合液を固液分離して、鉛化合物及び亜鉛化合物を含む固形分と、液分を得る工程である。
本工程において、工程(D)で得られた鉛化合物からなる固形分を含むアルカリ性スラリーに対して、工程(E)で得られた亜鉛を含む酸性の液分を添加してなる混合液のpHは、当該添加の開始時から終了時までに亘り、常時9.0以上、好ましくは9.5以上、より好ましくは10.0以上に保たれる必要がある。pHが9.0未満であると、鉛化合物及び亜鉛化合物を含む固形分の水分含有率が高くなるため好ましくない。
pHを常時9.0以上に保つ方法としては、鉛化合物からなる固形分を含むアルカリ性スラリーに対して、亜鉛を含む酸性の液分を徐々に添加しながら、適宜pHの測定を行い、該pHが9.0未満にならないように、必要に応じてアルカリ化剤を添加する方法が挙げられる。なお、鉛化合物からなる固形分を含むアルカリ性スラリーが、9.0〜12.0のpHを有している(工程(D))ことから、該アルカリ性スラリーに対して、亜鉛を含む酸性の液分を全量添加すると、混合液のpHが9.0未満になることがある。上述のように、亜鉛を含む酸性の液分を徐々に添加しながら、pHの測定及び調整を行うことによって、混合液のpHを確実に9.0以上に保つことができる。
上記アルカリ化剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物の水溶液等が用いられる。なお、混合液のpHが9.0以上(または前記の好ましい数値範囲)に保たれていれば、アルカリ化剤を添加する必要はない。
本工程において得られるアルカリ性の混合液のpHは、9.0〜12.0、好ましくは9.5〜11.5、より好ましくは10.0〜11.0である。該pHが9.0未満では、鉛及び亜鉛の溶出量が増大し、本工程における鉛及び亜鉛の回収率が低下する。該pHが12.0を超えると、鉛の溶出量が増大し、本工程における鉛の回収率が低下する。該pHが13.0を超えると、亜鉛の溶出量が増大し、本工程における亜鉛の回収率が低下する。
固液分離の手段としては、フィルタープレス等が挙げられる。
本工程においては、工程(E)で得られた亜鉛を含む酸性の液分を徐々に添加することが必須である。徐々に添加することによって、亜鉛化合物(例えば、酸化亜鉛、水酸化亜鉛等)の水分含有率を小さくすることができる。その結果、本工程で得られる鉛化合物及び亜鉛化合物を含む固形分の水分含有率が小さくなり、かつ、該固形分の性状が固液分離に好適なものとなるので、前述の本発明の効果(例えば、固液分離装置の小型化等)を得ることができる。
本発明の手順とは異なる手順、例えば、工程(E)で得られた亜鉛を含む酸性の液分に対して、工程(D)で得られた鉛を含むアルカリ性の液分を徐々に添加する場合や、工程(E)で得られた亜鉛を含む酸性の液分と、工程(D)で得られた鉛を含むアルカリ性の液分を一時に混合する場合には、得られる混合液中の沈澱物の性状が、固液分離の困難なゲル状になるとともに、この混合液を固液分離して得られる固形分中の水分含有率が80質量%程度になるので、本発明の効果を得ることができない。
工程(D)で得られたアルカリ性スラリーへの工程(E)で得られた酸性の液分の添加に要する時間は、これら2つの液分の混合液を固液分離した後の固形分の水分含有率が、特定の値以下(例えば、70質量%以下)になるように適宜定めることができる。
具体的な添加時間は、2つの液分の液量や液温等の条件によっても異なるが、好ましくは20分間以上、より好ましくは30分間以上である。添加時間を20分間以上にすれば、混合液を固液分離して得られる固形分中の水分含有率を、確実に小さな値(70質量%以下)にすることができる。なお、添加時間が60分間を超えると、固形分の水分含有率の低下が頭打ち傾向になることがある。
工程(D)で得られたアルカリ性スラリーと、工程(E)で得られた酸性の液分との混合液の液温は、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上である。該液温が高いほど、混合液を固液分離した後の固形分の水分含有率が小さくなる。ただし、液温が60℃を超えると、該水分含有率の低下が頭打ち傾向になることがある。
該液温の上限値は、特に限定されないが、熱エネルギーの節減の観点から、好ましくは60℃以下である。
混合液は、固液分離前にしばらく放置することが望ましい。所定の時間放置することによって、混合液中の固体分の性状が良好なものになり、本発明の効果(固液分離性等)をさらに向上させることができる。放置時間は、特に限定されないが、好ましくは10分間以上、より好ましくは20分間以上である。
混合液は、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、鉛化合物及び亜鉛化合物を含む固形分と、液分とに分離される。
混合液を固液分離して得られる固形分の水分含有率は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。
なお、本明細書中において、「固形分の水分含有率(質量%)」とは、[(乾燥前の固形分の質量)−(乾燥後の固形分の質量)]÷(乾燥前の固形分の質量)×100で算出される値をいう。
得られる固形分(乾燥状態)中の塩素分濃度は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。
鉛化合物及び亜鉛化合物を含む固形分は、製錬工場に運搬されて、山元還元され、再資源化される。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
[実施例1]
セメント製造設備で生じる飛灰(成分組成:Ca:3質量%、K:17質量%、Na:21質量%、Cl:40質量%、Cu:1質量%、Pb:4質量%、Zn:1質量%)30kgを、水100リットルを貯留した水槽中に投入して、スラリー(pH:12.5)を得た後、塩酸を加えて、スラリーのpHを10.5に調整し、攪拌混合した。
このスラリーをフィルタープレスで固液分離し、固形分5.9kg(絶乾状態の値)を得た。この固形分を解砕した後、98%濃度の硫酸を添加しながら水19リットルと混合して攪拌し、pH3.2のスラリーを得た。このスラリーをフィルタープレスで固液分離し、硫酸カルシウム、硫酸鉛等を含む固形分3.1kg(絶乾状態の値)と、亜鉛、銅等を含む濾液25.8リットルを得た。
このうち、亜鉛、銅等を含む濾液については、亜鉛粉末0.333kgを添加した後、フィルタープレスで固液分離し、析出した金属銅を含む固形分0.293kg(絶乾状態の値)と、亜鉛を含む濾液25.7リットルを得た。この濾液の液温は、40℃であった。
一方、硫酸カルシウム、硫酸鉛等を含む固形分に対して、水酸化ナトリウムを添加しながら水27リットルと混合して攪拌し、pH13.8のスラリーを得た。このスラリーをフィルタープレスで固液分離し、水酸化カルシウム等を含む固形分2.4kg(絶乾状態の値)と、鉛を含む濾液31.5リットルを得た。
この鉛を含む濾液(液温:40℃)に対して、98%濃度の硫酸を添加して、pH12.0の、鉛化合物からなる固形分を含むスラリーを得た。なお、この時点でのpHを、以下、「混合前のpH」という。
この鉛化合物からなる固形分を含むスラリー(液温:40℃)に対して、上述の亜鉛を含む濾液(液温:40℃)を40分間に亘って徐々に添加し、最終的にpH10.5の混合液を得た。なお、この時点でのpHを、以下、「混合後のpH」という。
この間、攪拌混合しながら混合液のpHを測定し、常時pHが10.0以上となるように、20%濃度の水酸化ナトリウムを適宜添加した。
得られた混合液を20分間放置後、フィルタープレスで固液分離し、鉛化合物及び亜鉛化合物を含む固形分1.97kg(絶乾状態の値)と、濾液を得た。
このうち、固形分は、乾燥後に、Zn:36質量%、Pb:45質量%、Cl:0.1質量%の成分組成(ただし、Zn、Pbの数値は酸化物換算の値である。)を有していた。また、固形分の水分含有率は、56質量%であった。
[実施例2]
前記の「混合前のpH」及び「混合後のpH」を10.5に調整したこと以外は実施例1と同様にして、鉛化合物及び亜鉛化合物を含む固形分と、濾液を得た。
このうち、固形分は、乾燥後に、Zn:37質量%、Pb:44質量%、Cl:0.1質量%の成分組成(ただし、Zn、Pbの数値は酸化物換算の値である。)を有していた。また、固形分の水分含有率は、68質量%であった。
[比較例1]
鉛を含む濾液(液温:40℃、pH13.4)に硫酸を添加して鉛化合物を析出させる工程を省き、かつ、鉛を含む濾液と亜鉛を含む濾液との混合後に硫酸を添加して、pH10.5の混合液を得たこと以外は、実施例1と同様にして、鉛化合物及び亜鉛化合物を含む固形分と、濾液を得た。
このうち、固形分は、乾燥後に、Zn:30質量%、Pb:46質量%、Cl:1.1質量%の成分組成(ただし、Zn、Pbの数値は酸化物換算の値である。)を有していた。また、固形分の水分含有率は、42質量%であった。
[比較例2]
前記の「混合前のpH」を7.4とし、かつ、「混合後のpH」を10.5に調整したこと以外は実施例1と同様にして、鉛化合物及び亜鉛化合物を含む固形分と、濾液を得た。
このうち、固形分は、乾燥後に、Zn:30質量%、Pb:43質量%、Cl:0.2質量%の成分組成(ただし、Zn、Pbの数値は酸化物換算の値である。)を有していた。また、固形分の水分含有率は、82質量%であった。
[比較例3]
前記の「混合前のpH」を5.0とし、かつ、「混合後のpH」を10.5に調整したこと以外は実施例1と同様にして、鉛化合物及び亜鉛化合物を含む固形分と、濾液を得た。
このうち、固形分は、乾燥後に、Zn:33質量%、Pb:41質量%、Cl:0.4質量%の成分組成(ただし、Zn、Pbの数値は酸化物換算の値である。)を有していた。また、固形分の水分含有率は、86質量%であった。
以上の実験結果から次のことがわかる。実施例1、2では、水分含有率が70質量%以下でかつ塩素分濃度が0.1質量%以下である鉛化合物及び亜鉛化合物からなる固形分が得られた。一方、比較例1では、鉛化合物及び亜鉛化合物からなる固形分中の塩素分濃度が1.1質量%であり、実施例1、2と比べて高かった。比較例2、3では、鉛化合物及び亜鉛化合物からなる固形分の水分含有率が82〜86質量%であり、実施例1、2と比べて高かった。
本発明の重金属含有粉末の処理方法の実施形態の一例を示すフロー図である。

Claims (5)

  1. (A)カルシウム、鉛、亜鉛、銅及び塩素分を含む重金属含有粉末と、水を混合し、かつ、必要に応じてpH調整用薬剤を用いて、pHが9.0〜12.0であるスラリーを得た後、該スラリーを固液分離して、カルシウム、鉛、亜鉛及び銅を含む固形分と、塩素分を含む液分を得る水洗工程と、
    (B)工程(A)で得られた固形分と、硫酸溶液を混合して、pHが2.0〜4.0である酸性スラリーを得た後、該酸性スラリーを固液分離して、硫酸カルシウム及び硫酸鉛を含む固形分と、溶出成分である亜鉛及び銅を含む酸性の液分を得る酸浸出工程と、
    (C)工程(B)で得られた硫酸カルシウム及び硫酸鉛を含む固形分と、アルカリ水溶液を混合して、pHが13.5以上のアルカリ性スラリーを得た後、該アルカリ性スラリーを固液分離して、水酸化カルシウムを含む固形分と、溶出成分である鉛を含むアルカリ性の液分を得るアルカリ浸出工程と、
    (D)工程(C)で得られた鉛を含むアルカリ性の液分に対して、硫酸を加えてpHを9.0〜12.0とし、鉛化合物からなる固形分を含むアルカリ性スラリーを得る鉛析出工程と、
    (E)工程(B)で得られた亜鉛及び銅を含む酸性の液分に対して、金属亜鉛を浸漬して、金属銅からなる固体と、溶出成分である亜鉛を含む酸性の液分を得る銅回収工程と、
    (F)工程(D)で得られた鉛化合物からなる固形分を含むアルカリ性スラリーに対して、必要に応じてアルカリ化剤を添加して、pHが9.0以上に常時保たれる条件下で、工程(E)で得られた亜鉛を含む酸性の液分を徐々に添加し、pHが9.0〜12.0であるアルカリ性の混合液を得て、その後、該アルカリ性の混合液を固液分離して、鉛化合物及び亜鉛化合物を含む固形分と、液分を得る重金属回収工程、
    を含むことを特徴とする重金属含有粉末の処理方法。
  2. 工程(F)において、前記のアルカリ性の混合液の液温を30℃以上に保つ請求項1に記載の重金属含有粉末の処理方法。
  3. 工程(F)において、工程(D)で得られたアルカリ性スラリーに対する、工程(E)で得られた酸性の液分の添加に要する時間を、前記の鉛化合物及び亜鉛化合物を含む固形分の水分含有率が70質量%以下になるように定める請求項1又は2に記載の重金属含有粉末の処理方法。
  4. 工程(F)で得られる鉛化合物及び亜鉛化合物を含む固形分(乾燥状態)の塩素含有率が、1.0質量%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の重金属含有粉末の処理方法。
  5. 工程(D)における上記アルカリ性スラリーのpHが、11.0を超え、12.0以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の重金属含有粉末の処理方法。
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