JP5287383B2 - 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents

高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDF

Info

Publication number
JP5287383B2
JP5287383B2 JP2009061377A JP2009061377A JP5287383B2 JP 5287383 B2 JP5287383 B2 JP 5287383B2 JP 2009061377 A JP2009061377 A JP 2009061377A JP 2009061377 A JP2009061377 A JP 2009061377A JP 5287383 B2 JP5287383 B2 JP 5287383B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
cutting
hard coating
coated
tool
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2009061377A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2010214482A (ja
Inventor
信一 鹿田
裕介 田中
和則 佐藤
貴仁 田渕
大介 風見
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Materials Corp filed Critical Mitsubishi Materials Corp
Priority to JP2009061377A priority Critical patent/JP5287383B2/ja
Publication of JP2010214482A publication Critical patent/JP2010214482A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5287383B2 publication Critical patent/JP5287383B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Physical Vapour Deposition (AREA)
  • Drilling Tools (AREA)

Description

この発明は、高熱発生を伴う高速条件で切削加工した場合に、硬質被覆層がすぐれた高温硬さ、靭性、潤滑性を有するとともに、被削材(の切粉)との耐溶着性にすぐれるため、長期の使用に亘って、すぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
一般に、被覆工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチップ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、さらに前記被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、また前記スローアウエイチップを着脱自在に取り付けて前記ソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具などが知られている。
また、被覆工具としては、例えば、工具基体表面に、TiとAlの複合窒化物層あるいは、これにさらに、Si、B、Y、Zr、V等を微量添加含有させたTiとAlを主成分とする複合窒化物(以下、これらを総称して、(Ti,Al,M)Nで示す)層を硬質被覆層として蒸着形成した被覆工具が知られており、特に、構成成分であるAlによって高温硬さと耐熱性、同Tiによって高温強度を具備することから、上記(Ti,Al,M)N層を被覆した被覆工具は、すぐれた高温強度、耐欠損性、耐摩耗性を示すことが知られている。
また、切削加工時における被覆工具の潤滑性を改善し工具特性を高めるために、上記(Ti,Al,M)N層を下部層とし、この上に、クロムの酸化物(以下、CrOで示す)層からなる上部層を形成した被覆工具も知られている。
さらに、上記従来の被覆工具が、例えば図1に概略説明図で示される物理蒸着装置の1種であるアークイオンプレーティング装置に工具基体を装入し、装置内を、例えば500℃の温度に加熱した状態で、硬質被覆層の組成に対応した合金がセットされたカソード電極、例えば、Ti−Al−M合金,金属Crと、アノード電極との間に、例えば電流:90Aの条件でアーク放電を発生させ、同時に装置内に反応ガスとして窒素ガスあるいは酸素ガスを導入して、例えば2Paの反応雰囲気とし、一方、上記工具基体には、例えば−100Vのバイアス電圧を印加した条件で、前記工具基体表面に、(Ti,Al,M)N層,CrO層からなる硬質被覆層を蒸着することにより製造されることも知られている。
特許第2644710号明細書 特許第2793773号明細書 特許第2793696号明細書 特開平8−199338号公報 特開2000−233324号公報
近年の切削加工装置のFA化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削工具には被削材の材種にできるだけ影響を受けない汎用性、すなわち、できるだけ多くの材種の切削加工が可能な切削工具が求められる傾向にあるが、上記従来の被覆工具においては、これを、合金工具鋼の焼入れ材、高硬度ステンレス鋼などの被削材の通常切削速度での切削加工に用いた場合には問題ないが、これらの被削材を、高い発熱をともなうとともに、切削時の発熱によって被削材および切粉は高温に加熱されて粘性が増大し、これに伴って硬質被覆層表面に対する溶着性が一段と増すようになる高速切削加工条件で用いた場合には、硬質被覆層の高温硬さが不足し、靭性も不十分となり、また、切刃部におけるチッピング(微少欠け)の発生が急激に増加するようになるため、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、特に合金工具鋼の生材・焼入れ材、高硬度ステンレス鋼などの被削材の切削加工を、高速切削条件下で行った場合にも、硬質被覆層がすぐれた潤滑性、高温硬さ、靭性及び耐溶着性を備え、すぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮する被覆工具を開発すべく、鋭意研究を行った結果、以下の知見を得た、
WC基超硬合金またはTiCN基サーメットからなる工具基体の表面に、下部層として、平均層厚1〜5μmの(Ti,Al,M)N層を蒸着形成し、この上に、上部層として、Crとの合量に占めるYの含有割合が1〜10原子%となるようにY成分を含有させたCrとYの複合酸化物層(以下、(Cr,Y)O層で示す)からなる平均層厚1〜5μmの(Cr,Y)O層を蒸着形成してなる硬質被覆層を構成すると、(Ti,Al,M)N層からなる下部層はすぐれた高温硬さ、高温強度、耐熱性を示し、また、(Cr,Y)O層はすぐれた熱的安定性、潤滑性を示し、特に、(Cr,Y)O層中に含有されるY成分によって、(Cr,Y)O層の高温硬さ、靭性及び耐溶着性が向上することを見出した。
したがって、硬質被覆層として、(Ti,Al,M)N層からなる下部層と(Cr,Y)O層からなる上部層を蒸着形成した被覆工具は、合金工具鋼の生材、焼入れ材、高硬度ステンレス鋼などの被削材の高速切削加工において、切削時に高熱が発生しても、高温硬さ、靭性、潤滑性の低下が少なく、しかも、切粉の溶着が抑えられるようになるため、長期の使用に亘って、すぐれた耐チッピング性、耐摩耗性が発揮されるようになる。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、
「(1) 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層として、1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:(Ti1−αAlα)N
で表した場合、0.45≦α≦0.75(但し、αはAlの含有割合を示す原子比)を満足するTiとAlの複合窒化物層、
(b)上部層として、1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:(Cr1−γγ)O
で表した場合、0.01≦γ≦0.1(但し、γはYの含有割合を示す原子比)を満足するCrとYの複合酸化物層、
上記(a)、(b)からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆切削工具。
(2) 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層として、1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:(Ti1−α−βAlαβ)N
で表した場合、0.45≦α≦0.75、0.01≦β≦0.25、α+β<1.00(但し、Mは、Tiを除く周期律表4a,5a,6a族の元素、Si、B、Yのうちから選ばれた1種又は2種以上の添加成分を示し、また、αはAlの含有割合を示す原子比、βはMの含有割合を示す原子比)を満足するTiとAlとMの複合窒化物層、
(b)上部層として、1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:(Cr1−γγ)O
で表した場合、0.01≦γ≦0.1(但し、γはYの含有割合を示す原子比)を満足するCrとYの複合酸化物層、
上記(a)、(b)からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
つぎに、この発明の被覆工具の硬質被覆層について、詳細に説明する。
(a)(Ti,Al,M)N薄層の組成および平均層厚
(Ti,Al,M)N薄層の構成成分であるAl成分には硬質被覆層における高温硬さを向上させ、同Ti成分には高温強度を向上させる作用があり、さらに、M成分のうちの、Tiを除く周期律表4a,5a,6a族の元素、Si、B、には硬質被覆層の耐摩耗性を向上させる作用があり、また、Yには硬質被覆層の高温耐酸化性を向上させる作用があるが、Alの割合を示すα値がTiとの合量あるいはTiとMの合量に占める割合(原子比、以下同じ)で0.45未満になると、所定の高温硬さを確保することができず、これが耐摩耗性低下の原因となり、一方Alの割合を示すα値が同0.75を越えると、相対的にTiの含有割合が減少し、高速切削加工で必要とされる高温強度を確保することができず、チッピングの発生を防止することが困難になり、さらに、M成分の含有割合を示すβ値がTiとの合量に占める割合(原子比、以下同じ)で0.01未満では、M成分を含有させたことによる耐摩耗性、高温耐酸化性等の特性向上が期待できず、一方同β値が0.25を超えると、高温強度に低下傾向が現れるようになることから、α値を0.45〜0.75、β値を0.01〜0.25、かつ、(α+β)の値を1.00未満と定めた。
また、その平均層厚が1μm未満では、自身のもつすぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮するには不十分であり、一方その一層平均層厚が5μmを越えると、切刃部にチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜5μmと定めた。
(b)(Cr,Y)O層の組成および平均層厚
CrとYの複合酸化物層((Cr,Y)O層)は、すぐれた高温硬さ、靭性を有するとともに、その構成成分であるY成分によって、すぐれた熱安定性、潤滑性を備え、そのため、(Ti,Al,M)N層からなる下部層に不足する潤滑性を補完し、さらに、高熱発生を伴う高速切削条件下でも、すぐれた高温硬さ、靭性を保持するとともに、すぐれた耐溶着性を有し、高温に加熱された切粉が溶着することによって生じるチッピングの発生を抑える。
ただ、Yの含有割合を示すγ値がCrとの合量に占める割合(原子比、以下同じ)で0.01未満になると、高温硬さ、靭性、耐溶着性の向上による耐チッピング性、耐摩耗性の改善効果を期待することができず、一方、Yの割合を示すγ値が同0.10を越えると、相対的にCrの含有割合が減少し、潤滑性が低下傾向を示すようになることから、γ値を0.01〜0.10(原子比、以下同じ)と定めた。
また、(Cr,Y)O層の平均層厚が1μm未満では、耐チッピング性、耐摩耗性を長期の使用に亘って充分に発揮することはできず、一方、平均層厚が5μmを越えると、上部層全体としての高温強度、靭性が低下し、高速条件下の切削加工で切刃部にチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜5μmと定めた。
(c)硬質被覆層の形成
上記(Ti,Al,M)N層からなる下部層と(Cr,Y)O層からなる上部層とで構成される硬質被覆層は、例えば図1に概略説明図で示される物理蒸着装置の1種であるアークイオンプレーティング(AIP)装置で蒸着形成することができる。
まず、図1に示されるアークイオンプレーティング(AIP)装置に工具基体を装入し、ヒーターで装置内を、例えば500℃の温度に加熱した状態で、装置内に所定組成のTi−Al−M合金からなるカソード電極(蒸発源)と、所定組成のCr−Y合金からなるカソード電極(蒸発源)とを配置し、
まず、アノード電極とTi−Al−M合金からなるカソード電極(蒸発源)との間に、例えば電流:90Aの条件でアーク放電を発生させ、同時に装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して、例えば2Paの反応雰囲気とし、一方、上記基体には、例えば−100Vのバイアス電圧を印加した条件で、基体表面に所定層厚の(Ti,Al,M)N層を下部層として蒸着形成し、アーク放電を停止した後、
引き続いて、装置内に反応ガスとして酸素ガスを導入して、例えば2Paの反応雰囲気とし、工具基体には、例えば−100Vのバイアス電圧を印加した条件で、アノード電極とCr−Y合金からなるカソード電極(蒸発源)との間に、前記と同様にアーク放電を行わせ、基体に形成した(Ti,Al,M)N層からなる下部層の表面に、所定層厚の(Cr,Y)O層からなる上部層を蒸着することによって、
下部層としての(Ti,Al,M)N層及び上部層としての(Cr,Y)O層からなる硬質被覆層を蒸着形成することができる。
この発明の被覆工具は、(Ti,Al,M)N層からなる下部層の表面に、すぐれた熱安定性、潤滑性を有するとともに、高温硬さ、靭性及び耐溶着性にもすぐれた(Cr,Y)O層を上部層として形成して硬質被覆層を構成していることから、合金工具鋼の生材・焼入れ材、高硬度ステンレス鋼などの被削材の、高熱発生を伴う高速切削加工であっても、長期の使用に亘って、すぐれた耐チッピング性とすぐれた耐摩耗性を発揮するものである。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPa の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、ISO規格・CNMG120408のチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A−1〜A−10を形成した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比で、TiC/TiN=50/50)粉末、MoC粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を2kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、ISO規格・CNMG120408のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体B−1〜B−6を形成した。
(a)ついで、上記の工具基体A−1〜A−10およびB−1〜B−6のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示されるアークイオンプレーティング装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し、前記回転テーブルを挟んで相対向する両側にカソード電極(蒸発源)を配置し、その一方にはカソード電極(蒸発源)として所定組成のTi−Al−M合金を配置し、また、その他方にはカソード電極(蒸発源)として所定組成のCr−Y合金を配置し、
(b)まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記Ti−Al−M合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって工具基体表面を前記Ti−Al−M合金によってボンバード洗浄し、
(c)次に、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して4Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記Ti−Al−M合金とアノード電極との間に120Aの電流を流してアーク放電を発生させ、前記工具基体の表面に、表3、表4に示される目標組成、目標層厚の(Ti,Al,M)N層からなる下部層を蒸着形成した後、前記Ti−Al−M合金のカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間のアーク放電を停止し、
(d)引き続いて、装置内に反応ガスとして酸素ガスを導入して装置内雰囲気を4Paの酸素雰囲気に保持し、カソード電極(蒸発源)であるCr−Y合金カソード電極とアノード電極との間に120Aの電流を流してアーク放電を発生させて、表3、表4に示される目標組成、目標層厚の(Cr,Y)O層を上部層として蒸着形成し、
本発明被覆工具としての本発明表面被覆スローアウエイチップ(以下、本発明被覆チップと云う)1〜39をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、図1におけるCr−Y合金カソード電極(蒸発源)に代えて、金属Crをカソード電極(蒸発源)として用い、前記本発明被覆チップ1〜39と同様な工程(a)〜(d)により、(Ti,Al,M)N層からなる下部層とCrO層からなる上部層で硬質被覆層が形成された、比較被覆工具としての表面被覆スローアウエイチップ(以下、比較被覆チップと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
つぎに、上記の各種の被覆チップを、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆チップ1〜39および比較被覆チップ1〜16について、
被削材:JIS・SKD11(HRC20)の丸棒、
切削速度: 200 m/min.、
切り込み: 1.5 mm、
送り: 0.2 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件A)での工具鋼の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は、120m/min.)、
被削材:JIS・SKD61(HRC60)の丸棒、
切削速度: 180 m/min.、
切り込み: 1.5 mm、
送り: 0.25 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件B)での高硬度鋼の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は、100m/min.)、
被削材:JIS・SUS440Bの丸棒、
切削速度: 110 m/min.、
切り込み: 1.3 mm、
送り: 0.2 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件C)での高硬度ステンレス鋼の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は、60m/min.)、
を行い、いずれの高速切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表7、表8に示した。
Figure 0005287383
Figure 0005287383
Figure 0005287383
Figure 0005287383
Figure 0005287383
Figure 0005287383
Figure 0005287383
Figure 0005287383
実施例1と同様、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末からなる原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPa の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼結し、直径が13mmの工具基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記の丸棒焼結体から、研削加工にて、切刃部の直径×長さが10mm×22mmの寸法、並びにねじれ角30度の4枚刃スクエア形状をもったWC基超硬合金製の工具基体(エンドミル)A−1〜A−10をそれぞれ製造した。
ついで、これらの工具基体(エンドミル)A−1〜A−10の表面をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図1に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、表10に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Al,M)N層、および、同じく表9に示される目標組成および目標層厚の(Cr,Y)O層からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより、本発明被覆工具としての本発明表面被覆超硬製エンドミル(以下、本発明被覆エンドミルと云う)1〜27をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、上記の工具基体(エンドミル)A−1〜A−10の表面をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、上記実施例1と同一の条件(即ち、Cr−Y合金カソード電極に代えて、金属Crカソード電極を使用)で、表10に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Al,M)N層からなる下部層とCrO層からなる上部層で硬質被覆層が形成された、比較被覆工具としての表面被覆超硬製エンドミル(以下、比較被覆エンドミルと云う)1〜10をそれぞれ製造した。
つぎに、上記本発明被覆エンドミル1〜27および比較被覆エンドミル1〜10について、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SKD11(HRC20)の板材、
切削速度: 90 m/min.、
溝深さ(切り込み): 0.5 mm、
テーブル送り: 520 mm/分、
の条件(切削条件D)での工具鋼の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は、60m/min.)、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SKD61(HRC60)の板材、
切削速度: 90 m/min.、
溝深さ(切り込み): 0.5 mm、
テーブル送り: 430 mm/分、
の条件(切削条件E)での焼入れ鋼の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は、60m/min.)、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SUS440Bの板材、
切削速度: 60 m/min.、
溝深さ(切り込み): 0.5 mm、
テーブル送り: 410 mm/分、
の条件(切削条件F)での高硬度ステンレス鋼の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は、40m/min.)、
をそれぞれ行い、いずれの高速溝切削加工試験でも切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。この測定結果を表9、表10にそれぞれ示した。
Figure 0005287383
Figure 0005287383
上記の実施例2で製造した直径が13mmの丸棒焼結体を用い、この丸棒焼結体から、研削加工にて、溝形成部の直径×長さがそれぞれ8mm×22mmの寸法、並びにねじれ角30度の2枚刃形状をもったWC基超硬合金製の工具基体(ドリル)A−1〜A−10をそれぞれ製造した。
ついで、これらの工具基体(ドリル)A−1〜A−10の切刃に、ホーニングを施し、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図1に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、表11に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Al,M)N層、および、同じく表11に示される目標組成および目標層厚の(Cr,Y)O層からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより、本発明被覆工具としての本発明表面被覆超硬製ドリル(以下、本発明被覆ドリルと云う)1〜27をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、上記の工具基体(ドリル)A−1〜A−10の表面に、ホーニングを施し、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、上記実施例1と同一の条件(即ち、Cr−Y合金カソード電極に代えて、金属Crカソード電極を使用)で、表12に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Al,M)N層からなる下部層とCrO層からなる上部層で硬質被覆層が形成された、比較被覆工具としての表面被覆超硬製ドリル(以下、比較被覆ドリルと云う)1〜10をそれぞれ製造した。
つぎに、上記本発明被覆ドリル1〜27および比較被覆ドリル1〜10について、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SKD11(HRC20)の板材、
切削速度: 100 m/min.、
送り: 0.6 mm/rev、
穴深さ: 5 mm、
の条件(切削条件G)での工具鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は、50m/min.)、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SKD61(HRC60)の板材、
切削速度: 80 m/min.、
送り: 0.4 mm/rev、
穴深さ: 5 mm、
の条件(切削条件H)での焼入れ鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は、40m/min.)、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SUS440Bの板材、
切削速度: 100 m/min.、
送り: 0.5 mm/rev、
穴深さ: 6 mm、
の条件(切削条件I)での高硬度ステンレス鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は、40m/min.)、
をそれぞれ行い、いずれの湿式高速穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表11、表12にそれぞれ示した。
Figure 0005287383
Figure 0005287383
この結果得られた本発明被覆工具としての本発明被覆チップ1〜39、本発明被覆エンドミル1〜27、および本発明被覆ドリル1〜27の硬質被覆層を構成する(Ti,Al,M)N層および(Cr,Y)O層の組成、並びに、比較被覆工具としての比較被覆チップ1〜16、比較被覆エンドミル1〜10、および比較被覆ドリル1〜10の(Ti,Al,M)N層からなる硬質被覆層の組成を、透過型電子顕微鏡を用いてのエネルギー分散X線分析法により測定したところ、それぞれ目標組成と実質的に同じ組成を示した。
また、上記の本発明被覆工具および比較被覆工具の硬質被覆層を構成する各層の平均層厚を走査型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均値(5ヶ所の平均値)を示した。
表7〜12に示される結果から、本発明被覆工具は、例えば、合金工具鋼の生材・焼入れ材、高硬度ステンレス鋼などの被削材の高速切削加工でも、硬質被覆層の下部層を構成する(Ti,Al,M)N層が、すぐれた高温硬さ、高温強度、あるいは、これに加えてさらにすぐれた耐摩耗性、高温耐酸化性を有し、同じく上部層を構成する(Cr,Y)O層がすぐれた熱安定性、潤滑性、高温硬さ、靭性に加え、高温条件下での被削材および切粉に対するすぐれた耐溶着性を備え、その結果、(Ti,Al,M)N層に不足する潤滑性が、(Cr,Y)O層によって補完され、さらに、溶着発生が抑制されることによって、硬質被覆層全体として、チッピングの発生なく、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮する。
しかるに、硬質被覆層が(Ti,Al,M)N層とCrO層で構成された比較被覆工具においては、これを前記被削材の高速切削加工に用いた場合には、高熱発生により、被削材および切粉と前記硬質被覆層との粘着性および反応性が一段と高くなり、また、高温硬さ、靭性も不十分であるため、切刃部にチッピングが発生し、また、摩耗進行も促進するため、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、一般的な被削材の切削加工は勿論のこと、特に合金工具鋼の生材・焼入れ材、高硬度ステンレス鋼などの被削材の高速切削加工でもすぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮し、長期に亘ってすぐれた切削性能を示すものであるから、切削加工装置のFA化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
被覆工具の硬質被覆層を形成するのに用いたアークイオンプレーティング装置を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略正面図である。

Claims (2)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
    (a)下部層として、1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、
    組成式:(Ti1−αAlα)N
    で表した場合、0.45≦α≦0.75(但し、αはAlの含有割合を示す原子比)を満足するTiとAlの複合窒化物層、
    (b)上部層として、1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、
    組成式:(Cr1−γγ)O
    で表した場合、0.01≦γ≦0.1(但し、γはYの含有割合を示す原子比)を満足するCrとYの複合酸化物層、
    上記(a)、(b)からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆切削工具。
  2. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
    (a)下部層として、1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、
    組成式:(Ti1−α−βAlαβ)N
    で表した場合、0.45≦α≦0.75、0.01≦β≦0.25、α+β<1.00(但し、Mは、Tiを除く周期律表4a,5a,6a族の元素、Si、B、Yのうちから選ばれた1種又は2種以上の添加成分を示し、また、αはAlの含有割合を示す原子比、βはMの含有割合を示す原子比)を満足するTiとAlとMの複合窒化物層、
    (b)上部層として、1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、
    組成式:(Cr1−γγ)O
    で表した場合、0.01≦γ≦0.1(但し、γはYの含有割合を示す原子比)を満足するCrとYの複合酸化物層、
    上記(a)、(b)からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆切削工具。
JP2009061377A 2009-03-13 2009-03-13 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 Expired - Fee Related JP5287383B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009061377A JP5287383B2 (ja) 2009-03-13 2009-03-13 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009061377A JP5287383B2 (ja) 2009-03-13 2009-03-13 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010214482A JP2010214482A (ja) 2010-09-30
JP5287383B2 true JP5287383B2 (ja) 2013-09-11

Family

ID=42973878

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009061377A Expired - Fee Related JP5287383B2 (ja) 2009-03-13 2009-03-13 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5287383B2 (ja)

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4569862B2 (ja) * 2004-03-02 2010-10-27 三菱マテリアル株式会社 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP4645821B2 (ja) * 2005-04-08 2011-03-09 三菱マテリアル株式会社 耐熱合金の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具
JP4697661B2 (ja) * 2005-06-30 2011-06-08 三菱マテリアル株式会社 耐熱合金の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP2009119551A (ja) * 2007-11-14 2009-06-04 Mitsubishi Materials Corp 高速高送り切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP5234332B2 (ja) * 2008-05-28 2013-07-10 三菱マテリアル株式会社 高速高送り切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具

Also Published As

Publication number Publication date
JP2010214482A (ja) 2010-09-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2009061520A (ja) 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP2012024854A (ja) 表面被覆切削工具
JP5041222B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP2009119551A (ja) 高速高送り切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP2009125832A (ja) 表面被覆切削工具
JP5196122B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5088480B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP4702538B2 (ja) 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP4687965B2 (ja) 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP4645820B2 (ja) 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具
JP4645819B2 (ja) 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具
JP4697662B2 (ja) 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP2011240438A (ja) 耐熱性および耐溶着性にすぐれた表面被覆切削工具
JP5234332B2 (ja) 高速高送り切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP4678582B2 (ja) 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具
JP4535249B2 (ja) 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具の製造方法
JP2009285764A (ja) 高速高送り切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP5287383B2 (ja) 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP2011240436A (ja) 耐熱性および耐溶着性にすぐれた表面被覆切削工具
JP2011189470A (ja) 表面被覆切削工具
JP5099495B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP2008188737A (ja) 難削材の重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP2011240435A (ja) 耐熱性および耐溶着性に優れた表面被覆切削工具
JP2011173174A (ja) 耐熱性及び耐溶着性に優れた表面被覆切削工具
JP5692635B2 (ja) 表面被覆切削工具

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110927

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130305

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130408

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130507

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130520

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5287383

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees