JP5286911B2 - 多成分用レーザ式ガス分析計 - Google Patents
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Description
ここで、レーザ式ガス分析計の測定原理は、2波長差分方式と周波数変調方式とに大別される。このうち、本発明は周波数変調方式を用いて複数種類のガス濃度を測定する多成分用レーザ式ガス分析計に関するものである。
図14は、周波数変調方式の原理図を示しており、例えば特許文献1に記載されているものである。
周波数変調方式のレーザ式ガス分析計では、中心周波数fc、変調周波数fmで半導体レーザの出射光を周波数変調し、測定対象ガスに照射する。ここで、周波数変調とは、半導体レーザに供給するドライブ電流の波形を正弦波にすることである。
DFB(Distributed Feedback Laser)レーザ等の半導体レーザは、図15(a),(b)に示すようにドライブ電流や温度によって発光波長が変化するため、周波数変調を行うことにより、ドライブ電流の変調に伴って発光波長が変調されることになる。
周波数変調方式において発光部と受光部との間の距離の影響をキャンセルするためには、半導体レーザの出力を周波数変調すると同時に変調周波数fmによって振幅変調を行えば良いが、半導体レーザの出力光に周波数変調をかければ振幅変調もかかるので、これを利用することができる。そして、受光部によりエンベロープ検波を行えば、振幅変調による基本波を推定することができ、この基本波の振幅と前記2倍波信号の振幅との比を位相同期させて検出することにより、発光部と受光部との間の距離に関係なく測定対象のガス濃度に比例した信号を得ることができる。
その方法として、特許文献2に記載されているように、測定対象ガスと同一成分のガスを予め封入した参照用ガスセルを用いる方法が知られている。
図16において、51は光源である半導体レーザ(発光素子)、52は集光レンズ系、53,54はビームスプリッタ、55は測定用ガスセル、56,58,59は光検出器、57は参照用ガスセル(基準ガスセル)、60は被測定ガス供給系、61は増幅器、62は制御用のコンピュータ、63は発光素子51の温度を制御するための温度コントローラ、64は発光素子51を駆動するドライバ、65は発光素子51の発振周波数を制御するためのファンクションジェネレータである。
上記参照用ガスセル57には、被測定ガス供給系60から供給される測定対象ガスと同一成分の参照用ガスが均一濃度で封入されているため、この参照用ガスによる吸収を測定し、測定用ガスセル55の透過光の吸収強度が最大となるように温度コントローラ63により発光素子51の温度調整を行っている。
そして、参照用ガスセル57側を透過した光を測定し、2倍波信号の振幅と基本波の振幅との比が最大となるように発光素子51を温度制御することにより、出射光の波長が一定になるように制御している。
しかしながら、図16に示したような従来技術では、発光素子51の波長可変範囲が狭く、一種または二種程度のガスしか検出できないため、複数種類のガス濃度を計測するためには、これらのレーザ式ガス分析計を複数台設置する必要がある。このように複数台のレーザ式ガス分析計を設置する場合には、設置面積や設置工事・光軸調整費用等が分析計の台数に比例して増加するため、システムが大型化し、コストも増加する等の問題があった。
しかし、この種の多成分用レーザ式ガス分析計では、振動や熱の影響によって各発光素子の光軸が変化するため、同一光軸上に結合する際の光軸の調整に時間がかかると共に、安定性を確保することが困難であった。特に、発光素子から光結合器に至る空間に存在する酸素や水分が受光信号に大きな影響を与えるため、発光部等の筐体を気密構造にして窒素等の不活性ガスで充填するといった対策を講じる必要があった。
前記発光部は、
測定対象ガスの種類の数と同数設けられて周波数変調されたレーザ光を出射するピグテール型発光素子と、これらのピグテール型発光素子の出射光を光ファイバ上で結合する結合手段と、この結合手段から出射される検出光を前記空間に出射する光学系と、を備え、
前記受光部は、
前記空間を透過した検出光を集光する光学系と、この光学系により集光した光を受光し、かつ、検出光の全波長に対して感度を有する受光素子と、を備え、
前記ピグテール型発光素子は、
発光素子本体と、この発光素子本体の温度検出手段と、前記発光素子本体の加熱冷却手段と、前記発光素子本体からの出射波長が所定値になるように前記温度検出手段による検出温度に応じて前記加熱冷却手段を制御する温度制御手段と、前記発光素子本体への供給電流を変化させて測定対象ガスの吸光特性を走査するための波長走査駆動信号を生成する波長走査駆動信号発生手段と、高周波変調信号を生成する高周波変調信号発生手段と、前記波長走査駆動信号を前記高周波変調信号により変調して前記発光素子本体に対する駆動信号を生成する駆動信号発生手段と、をそれぞれ備えると共に、
前記信号処理部は、各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、この同期検波手段の出力信号から複数種類の測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備え、
前記演算手段は、前記受光素子の出力信号から波長走査駆動信号成分を抽出し、抽出した波長走査駆動信号成分と予め設定された受光光量設定値との比を受光光量補正係数として算出し、この受光光量補正係数を用いて前記同期検波手段から出力されるガス吸収波形の振幅を補正するものである。
前記発光部は、
測定対象ガスの種類の数と同数設けられて周波数変調されたレーザ光を出射するピグテール型発光素子と、これらのピグテール型発光素子の出射光を光ファイバ上で結合する結合手段と、この結合手段から出射される検出光を前記空間に出射する光学系と、を備え、
前記受光部は、
前記空間を透過した検出光を集光する光学系と、この光学系により集光した光を波長帯域ごとに分波する分波手段と、これらの分波手段により分波された検出光を受光し、かつ、これらの検出光の全波長に対して感度を有する受光素子と、を備え、
前記ピグテール型発光素子は、
発光素子本体と、この発光素子本体の温度検出手段と、前記発光素子本体の加熱冷却手段と、前記発光素子本体からの出射波長が所定値になるように前記温度検出手段による検出温度に応じて前記加熱冷却手段を制御する温度制御手段と、前記発光素子本体への供給電流を変化させて測定対象ガスの吸光特性を走査するための波長走査駆動信号を生成する波長走査駆動信号発生手段と、高周波変調信号を生成する高周波変調信号発生手段と、前記波長走査駆動信号を前記高周波変調信号により変調して前記発光素子本体に対する駆動信号を生成する駆動信号発生手段と、をそれぞれ備えると共に、
前記信号処理部は、各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、この同期検波手段の出力信号から複数種類の測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備え、
前記演算手段は、前記受光素子の出力信号から波長走査駆動信号成分を抽出し、抽出した波長走査駆動信号成分と予め設定された受光光量設定値との比を受光光量補正係数として算出し、この受光光量補正係数を用いて前記同期検波手段から出力されるガス吸収波形の振幅を補正するものである。
また、単一の分析計によって複数種類のガス濃度を測定可能であり、複数台の分析計を設置する場合に比べて、システム全体の小型化、コストの低減を図ることができる。
この基本形態に係る多成分用レーザ式ガス分析計は、測定対象ガスの吸光特性に応じて周波数変調された複数のレーザ光を結合して出射する発光部10と、この発光部10から出射される検出光20を受光する受光部30とを備えている。前記発光部10及び受光部30は、測定対象ガスが流通する配管等の壁41a,41bに、溶接等により固定されたフランジ42a,42b及び光軸調整フランジ43a,43bを介して取り付けられる。
ここで、光軸調整フランジ43a,43bは、発光部10からの検出光20が受光部30において最大の光量で受光されるように光軸を調整するためのものである。
発光部10は、測定対象ガスの吸光特性に応じたレーザ光を周波数変調し、これらを結合してなる検出光20を出射するユニットである。この発光部10は、測定対象ガスの種類の数に等しい個数のピグテール型発光素子101a,101b,101c,……を備えており、これらの発光素子には、例えば前述したDFBレーザや、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)等のレーザダイオード(以下、LDともいう)が用いられる。LDは、ガスの吸光特性に一致する近赤外領域の波長にて発光が可能であり、図15に示したように、ドライブ電流及び温度によって発光波長を可変とすることができる。勿論、測定対象ガスの吸収波長帯域で波長掃引できるものであれば他種の発光素子を用いても良い。
なお、複数のピグテール型発光素子101a,101b,101c,……を備えたレーザ光源としては、例えばNTTエレクトロニクス株式会社製のバタフライ型のパッケージを用いることができる。
図2は、ピグテール型発光素子101a,101b,101c,……の内部構成図であり、ここでは、測定対象ガスが4種類であるとし、バタフライ型のパッケージに4個のピグテール型発光素子101a,101b,101c,101dが内蔵されているものとして説明する。
図6(a)は、例えば発光素子本体15aの駆動電流波形の一例を示している。
図2の波長走査駆動信号発生回路12において、測定対象ガスの吸光特性を走査する波長走査駆動信号S1は、発光素子本体15aの駆動電流値を直線的に変化させて発光素子本体15aの発光波長を徐々に変化させ、例えば、0.2nm程度の吸光特性を走査する。一方、信号S2は、駆動電流値を発光素子本体15aが安定するスレッショルドカレント以上に保ち、一定波長で発光させるためのものである。更に、信号S3では、駆動電流値を0mAにしておく。
図6(c)は、図2の駆動信号発生回路14aから出力される駆動信号(波長走査駆動信号発生回路12の出力信号と高周波変調信号発生回路13aの出力信号との合成信号)の波形図であり、この駆動信号S5を発光素子本体15aに供給すると、発光素子本体15aからは、測定対象ガスの0.2nm程度の吸光特性を波長幅0.02nm程度で検出可能な変調光が出力される。
但し、4個の発光素子本体15a,15b,15c,15dの変調周波数を、例えば10kHz,12.5kHz,15kHz,17.5kHzとすると、変調信号の2倍周波数成分はそれぞれ20kHz,25kHz,30kHz,35kHzとなり、参照信号発生回路502a,502b,502c,502dがこれらの周波数の参照信号を出力することで、同期検波回路503a,503b,503c,503dは上記2倍周波数成分に吸光特性を有する測定対象ガス、すなわちNH3,HCl,H2S,CH4の吸光特性のみをそれぞれ検出して出力する。
この吸光特性はその波形のピーク値がそのままガス濃度を表すため、例えば、図5の演算回路505によって上記ピーク値を測定したり、信号変化を積分したりすればNH3の濃度を測定することが可能である。他の測定対象ガスの濃度検出動作についても、同様に行えばよい。
なお、検出光20の光路上に測定対象ガスが存在しない場合には、同期検波回路503a,503b,503c,503dの出力に図7のような吸光特性は現れない。
しかし、図8に示すように、発光素子本体15a,15b,15c,15dを時系列的にオンして発光させ、受光部30側でも受光信号を時系列的に同期検波して複数種類のガスa,b,c,dの濃度を順次測定するようにすれば、変調周波数は同一でも良い。
また、図10(a),(b)は図9のI−V変換回路501から出力される電圧信号(受光信号)の波形図であり、図10(a)は、測定環境(壁41a,41bの内部区間、すなわち測定対象ガスが流通する空間)にダストがない清浄な空間における受光信号波形、図10(b)は、ダストが存在する空間における受光信号波形である。これらの図から明らかなように、ダストが存在する場合には検出光20が遮られるため、受光光量(受光信号レベル)が低下することになる。
図11(a)におけるAはガス吸収波形であり、この波形の振幅w(=wa)を検出することでガス濃度を測定することができる。一方、ダストが存在する場合の図11(b)では、図10(b)に対応して振幅w(=wb)も小さくなっている。
このように、受光光量によってガス吸収波形の振幅が変動するため、特にダスト量が変動する環境では、正確なガス濃度の測定が困難である。
図13(a)のように、ある時点において、ダストがなく受光光量が最大である時の受光信号(フィルタ506から出力される波長走査駆動信号)のレベルP(=Pmax)を、前記受光光量設定値として演算回路505に予め設定しておく。演算回路505は、図13(a)のようにダストがある場合の受光信号レベルPを検出し、このPと同一時点のPmaxとの比を、受光光量補正係数βとして数式1により演算する。
[数式1]
β=Pmax/P
[数式2]
wh=w×β
12:波長走査駆動信号発生回路
13a,13b,13c,13d:高周波変調信号発生回路
14a,14b,14c,14d:駆動信号発生回路
15a,15b,15c,15d:発光素子本体
16a,16b,16c,16d:温度検出素子
17a,17b,17c,17d:ペルチェ素子
18a,18b,18c,18d:温度制御回路
20:検出光
30:受光部
31:集光レンズ
32:受光素子
41a,41b:壁
42a,42b:フランジ
43a,43b:光軸調整フランジ
50,50A:信号処理部
101a,101b,101c,101d:ピグテール型発光素子
102a,102b,102c,102d:ピグテール
103:光結合器
104:光ファイバ
105:コリメートレンズ
501:I−V変換回路
502a,502b,502c,502d:参照信号発生回路
503a,503b,503c,503d:同期検波回路
504a,504b,504c,504d,506:フィルタ
505:演算回路
Claims (3)
- 複数種類のガスの濃度を測定する周波数変調方式の多成分用レーザ式ガス分析計であって、検出光としてレーザ光を出射する発光部と、測定対象ガスが存在する空間を介して伝播された検出光を受光する受光部と、この受光部の出力信号を処理する信号処理部と、を備えた多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記発光部は、
測定対象ガスの種類の数と同数設けられて周波数変調されたレーザ光を出射するピグテール型発光素子と、これらのピグテール型発光素子の出射光を光ファイバ上で結合する結合手段と、この結合手段から出射される検出光を前記空間に出射する光学系と、を備え、
前記受光部は、
前記空間を透過した検出光を集光する光学系と、この光学系により集光した光を受光し、かつ、検出光の全波長に対して感度を有する受光素子と、を備え、
前記ピグテール型発光素子は、
発光素子本体と、この発光素子本体の温度検出手段と、前記発光素子本体の加熱冷却手段と、前記発光素子本体からの出射波長が所定値になるように前記温度検出手段による検出温度に応じて前記加熱冷却手段を制御する温度制御手段と、前記発光素子本体への供給電流を変化させて測定対象ガスの吸光特性を走査するための波長走査駆動信号を生成する波長走査駆動信号発生手段と、高周波変調信号を生成する高周波変調信号発生手段と、前記波長走査駆動信号を前記高周波変調信号により変調して前記発光素子本体に対する駆動信号を生成する駆動信号発生手段と、をそれぞれ備えると共に、
前記信号処理部は、各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、この同期検波手段の出力信号から複数種類の測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備え、
前記演算手段は、前記受光素子の出力信号から波長走査駆動信号成分を抽出し、抽出した波長走査駆動信号成分と予め設定された受光光量設定値との比を受光光量補正係数として算出し、この受光光量補正係数を用いて前記同期検波手段から出力されるガス吸収波形の振幅を補正することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。 - 複数種類のガスの濃度を測定する周波数変調方式の多成分用レーザ式ガス分析計であって、検出光としてレーザ光を出射する発光部と、測定対象ガスが存在する空間を介して伝播された検出光を受光する受光部と、この受光部の出力信号を処理する信号処理部と、を備えた多成分用レーザ式ガス分析計において、
前記発光部は、
測定対象ガスの種類の数と同数設けられて周波数変調されたレーザ光を出射するピグテール型発光素子と、これらのピグテール型発光素子の出射光を光ファイバ上で結合する結合手段と、この結合手段から出射される検出光を前記空間に出射する光学系と、を備え、
前記受光部は、
前記空間を透過した検出光を集光する光学系と、この光学系により集光した光を波長帯域ごとに分波する分波手段と、これらの分波手段により分波された検出光を受光し、かつ、これらの検出光の全波長に対して感度を有する受光素子と、を備え、
前記ピグテール型発光素子は、
発光素子本体と、この発光素子本体の温度検出手段と、前記発光素子本体の加熱冷却手段と、前記発光素子本体からの出射波長が所定値になるように前記温度検出手段による検出温度に応じて前記加熱冷却手段を制御する温度制御手段と、前記発光素子本体への供給電流を変化させて測定対象ガスの吸光特性を走査するための波長走査駆動信号を生成する波長走査駆動信号発生手段と、高周波変調信号を生成する高周波変調信号発生手段と、前記波長走査駆動信号を前記高周波変調信号により変調して前記発光素子本体に対する駆動信号を生成する駆動信号発生手段と、をそれぞれ備えると共に、
前記信号処理部は、各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、この同期検波手段の出力信号から複数種類の測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備え、
前記演算手段は、前記受光素子の出力信号から波長走査駆動信号成分を抽出し、抽出した波長走査駆動信号成分と予め設定された受光光量設定値との比を受光光量補正係数として算出し、この受光光量補正係数を用いて前記同期検波手段から出力されるガス吸収波形の振幅を補正することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。 - 請求項1または2に記載した多成分用レーザ式ガス分析計において、
各ピグテール型発光素子を時系列的に動作させ、前記受光素子の時系列的な出力信号を前記信号処理部によって処理することを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
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