JP5283850B2 - 液晶表示装置およびその駆動方法 - Google Patents

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Description

本発明は、液晶表示素子およびその駆動方法に関し、特に、フィールドシーケンシャル(FS)駆動方式の液晶表示素子およびその駆動方法に関する。
カラー表示を行う液晶表示素子(LCD)として、フィールドシーケンシャル(FS)駆動方式のLCD(明細書中ではFSLCDと呼ぶこととする)が知られている。
一般的なFSLCDの表示には時間分解混色表示方法(以下、時分混色法)を用いる。すなわち、マルチカラーバックライトを例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の順で逐次点灯させて、その点灯タイミングと同期させて液晶セルの光シャッタをシンクロ動作させることによりRGBそれぞれの単色、もしくはそれらの混色を人間の目に認識させる方法である。
FSLCDの使用において、例えば周囲環境が暗い場合やLCDが振動する場合、または観察者の視線が高速に移動する場合、混色表示時に各色表示状態が人間の目に分離して観察される、いわゆるカラーブレーク現象が生じ、表示品位が著しく低下する。
出願人らは、特開2005−070440号公報や特開2006−106434号公報において、カラーブレーク現象を抑えるFSLCDおよびその動作方法(明細書中ではカラーブレークレス駆動方式と呼ぶこととする)を提案している。
特開2005−070440号公報 特開2006−106434号公報
図1を参照して、従来例によるカラーブレークレスFS駆動方式の液晶表示素子(LCD)の概要を説明する。ここで説明する液晶表示素子は、主に、2つの液晶セルが基板の法線方向に並んだ構造を含む。2つの液晶セルとは、背景表示セルとしての機能を持つ上側液晶セル101と、表示セルとしての機能を持つ下側液晶セル102である。下側表示セル102の下方に配置されたマルチカラーバックライト103から、表示させたい複数の色、例えばY(イエロー)C(シアン)M(マゼンダ)の光を逐次点灯させる。その点灯タイミングとTN液晶セルの光シャッタとをドライバ105、104を介して同期コントローラ106でシンクロ動作させることによって単色表示を行う。駆動方法の詳細は特開2005−070440号公報中の段落「0043」〜「0055」等に記載されている。
図2に、液晶表示素子の電極パターン例EP1を示す。図示のように、数字の「8」状の0〜9まで表示可能な7セグメント表示を行う場合、表示セルに7セグメントの電極1sg〜7sgを配置し、背景表示セルには表示セルの反転パターンの電極1bc1を配置する。なお、セル内の一つの基板に絶縁層を介した多層電極構造を形成すれば、1つのセルに表示セル、背景表示セル両方の機能を持たせることが可能である。
図3Aに、図2で示した電極の電極パターンEP1で、ノーマリホワイト表示型の液晶表示素子の概略構造(以下、セル配置例RA1と呼ぶこととする)を示す。例えば90°左ねじれTN(ツイストネマチック)液晶セル11aに背景表示セルとしての機能を持たせ、90°右ねじれTN液晶セル11bに表示セルとしての機能を持たせるというように、2つのセルのツイスト(ねじれ)の方向が異なるようにセルを構成する。背景表示セル11aの上部に偏光板P1を、表示セル11bの下部に偏光板P2を、背景表示セル11aと表示セル11bとの間(計3枚)に偏光板P3を配置する。偏光板P1、P2が平行ニコルになるように透過軸を設定する。加えて、偏光板P1、P3ならびに偏光板P2、P3がそれぞれクロスニコルになるように透過軸を設定する。
なお、明細書、特許請求の範囲、図面、要約書におけるねじれの方向は、観察者Oから見た場合の方向とする。
駆動方式を説明する。バックライトから3色が順次発光するとする(1フレーム内に、サブフレームが3つ存在する)。背景色として1種類の色(色X)を用いるとすると、色Xがバックライトから発せられるサブフレームに同期して、背景表示セルが色Xを通すように電圧を制御する。一方、表示セルにおいて、各セグメントが各サブフレームと同期してバックライトからの色を表示できるように各セグメント電極の電圧を制御する。
図2に示した電極パターン例EP1を用いた液晶表示素子においては、表示セルと背景表示セルとの間に物理的な距離(表示セルに形成された電極と背景表示セルに形成された電極との間にガラス基板などが配置されるために生じる距離)が存在するため、液晶表示素子の表示領域を斜めから見た際に視差が生じ、表示領域が2重に観察されたり、立体的に観察されたりする場合がある。
本発明の目的は、FS駆動方式において表示品位を向上させると共に、背景色が任意に設定可能な液晶表示素子およびその駆動方法を提供することである。
本発明の一観点によれば、基板の法線方向に重ねて配置された第1、第2のTN液晶セルであって、各TN液晶セルが、各々電極を備えて対向する一対の基板と、該一対の基板間に保持され、電界が発生していない状態で液晶分子がツイスト配列した液晶層とを含み、該液晶層のツイストの方向が同じであり、液晶層中央分子の配向方向が等しい第1、第2のTN液晶セルと、前記基板の法線方向に配置され、ツイストの方向が前記第1、第2のTN液晶セルにおける液晶層のツイストの方向と逆向きであり、液晶層中央分子の配向方向が前記第1、第2のTN液晶セルと直交する第3のTN液晶セルと、前記第1、第2、第3のTN液晶セルの、前記基板の法線方向に関して両側にクロスニコル配置された2枚の偏光板であって、透過軸または吸収軸の方向が、共に、該第1、第2、第3のTN液晶セルの各々厚さ方向に関して中央に位置する液晶分子の配向方向と45°の角度を為すように配置された偏光板と、複数の色の発光が可能なバックライトと、前記バックライト
の複数の色を逐次点灯させるバックライトドライバと、前記第1及び第2のTN液晶セルの駆動を行うLCDドライバと、前記バックライトドライバと前記LCDドライバとをシンクロ動作させる同期コントローラとを有し、前記同期コントローラと前記LCDドライバと前記バックライトドライバとは、1フレームを複数のサブフレームに分割して、前記第1及び第2のTN液晶セルと前記バックライトとの動作タイミングを同期させて駆動するフィールドシーケンシャル駆動により1フレームで2色以上のマルチカラー表示を行い、前記第1、第2のTN液晶セルの内、一方が情報表示を行う情報表示セル、他方が背景の表示状態を制御する背景表示セルとしての機能を有し、前記第1、第2のTN液晶セルの内の前記情報表示セルにおける電極が任意形状の複数の表示部を有し、前記背景表示セルにおける電極が全面電極である液晶表示装置が提供される。

本発明の他の観点によれば、基板の法線方向に重ねて配置された第1、第2の液晶セルであって、各TN液晶セルが、各々電極を備えて対向する一対の基板と、該一対の基板間に保持され、電界が発生していない状態で液晶分子がツイスト配列した液晶層とを含み、該液晶層のツイストの方向が同じであり、液晶層中央分子の配向方向が等しい第1、第2のTN液晶セルと、前記基板の法線方向に配置され、ツイストの方向が前記第1、第2のTN液晶セルにおける液晶層のツイストの方向と逆向きであり、液晶層中央分子の配向方向が前記第1、第2のTN液晶セルと直交する第3のTN液晶セルと、前記第1、第2、第3のTN液晶セルの、前記基板の法線方向に関して両側にクロスニコル配置された2枚の偏光板であって、透過軸または吸収軸の方向が、共に、該第1、第2、第3のTN液晶セルの各々厚さ方向に関して中央に位置する液晶分子の配向方向と45°の角度を為すように配置された偏光板と、複数の色の発光が可能なバックライトと、前記バックライトの複数の色を逐次点灯させるバックライトドライバと、前記第1及び第2のTN液晶セルの駆動を行うLCDドライバと、前記バックライトドライバと前記LCDドライバとをシンクロ動作させる同期コントローラとを有し、前記同期コントローラと前記LCDドライバと前記バックライトドライバとは、1フレームを複数のサブフレームに分割して、前記第1及び第2のTN液晶セルと前記バックライトとの動作タイミングを同期させて駆動するフィールドシーケンシャル駆動により1フレームで2色以上のマルチカラー表示を行い、前記第1、第2のTN液晶セルの内、一方が情報表示を行う情報表示セル、他方が背景の表示状態を制御する背景表示セルとしての機能を有し、前記第1、第2のTN液晶セルの内の前記情報表示セルにおける電極が任意形状の複数の表示部を有し、前記背景表示セルにおける電極が全面電極である液晶表示装置の駆動方法であって、1フレームを複数のサブフレームに分割して、前記第1、第2のTN液晶セルと前記バックライトとの動作タイミングを同期させて駆動させるフィールドシーケンシャル駆動により1フレームで2色以上のマルチカラー表示を行うことが可能な液晶表示装置の駆動方法が提供される。
FS駆動方式の背景色が任意に設定可能な液晶表示素子において表示品位を向上させる。
発明者らは、従来例の改良として、電極パターンを工夫した液晶表示素子を作成した。
図4に、その電極パターン例EP2を示す。表示セルの電極構成はパターン例1と同様である。背景表示セルの電極構成はパターン例EP1と異なり、枠(もしくは表示領域)のほぼ全面に電極が形成された、いわゆる全面電極1bc2である。
電極パターン例EP2を用いる場合、表示セル、背景表示セルを重ねた状態でそれぞれを単独で動作させた場合に明暗表示を実現できねばならない。
セル配置例RA1(ノーマリホワイト表示型)の構造で、パターンEP2の電極を有する場合について説明する。背景表示セルには全面電極が形成されているため、背景表示セルに電圧を印加して暗表示にすると、表示セルの各セグメント電圧をいくら制御しても全暗表示となってしまう。
図3Bに、図4で示した電極パターン例EP2を有し、ノーマリブラック表示である液晶表示素子のセル配置例RA2を示す。セル配置例RA1と異なるのは、背景表示セル12aと表示セル12bとの間の偏光板が無く、液晶のツイスト方向が逆向きで、背景表示セル12aの液晶層中央分子と表示セル12bの液晶層中央分子との配向方向が互いに90°ずれている点である。
セル配置例RA2の構造を持つ液晶表示素子であれば、パターンEP2のように、背景表示セルに全面電極を形成した場合でも、背景表示セル、表示セルそれぞれを単独駆動させた場合に90°のツイストが消滅して明状態となることにより明暗表示が可能である。
以下、明細書中では上記の液晶表示素子を参考例と呼ぶこととする。
参考例による液晶表示素子は、2つのTN液晶セルを駆動させ、背景に任意の色を表示でき、かつカラーブレーク現象、2重写りなどを防止することができる。
ただし、背景表示セル、表示セルにおける液晶層中央分子(セルの厚さ方向に関して中央に位置する液晶分子)の配向方向が互いに90°ずれていることにより、最良視認方位が約90°ずれる現象が生じる。
発明者らは、参考例における、背景表示セルおよび表示セルの等透過率曲線(各々電圧3Vrms印加時の明表示状態)をシミュレーションにより算出した。シミュレータとして、シンテック製のLCDシミュレータであるLCDMASTER6.0を用いた。
シミュレーション条件は次の通りである。
(条件1)
・TN液晶セルのリタデーション:約490nm
・表示セルのツイスト角度:左90°
・背景表示セルのツイスト角度:右90°
・液晶材料:メルク製ZLI−4792
・偏光板:ポラテクノ製SKN18243T
図5Aおよび図5Bに、シミュレータにより算出した、参考例による液晶表示素子の表示領域における等透過率曲線を示す。等透過率曲線は外側から透過率5%、10%、15%、20%、25%、30%を示す。図5Aが表示セルに3Vrmsの電圧を印加した場合(この際、背景表示セルは電圧無印加である)の透過率曲線を示し、図5Bが背景表示セルに3Vrmsの電圧を印加した場合(この際、表示セルは電圧無印加)の透過率曲線を示す。
図5A、図5Bに示すように、2つのセルの視角特性が約90°ずれていることが確認できる。特に、図5Bに示した背景表示セルの視角特性が、図中180°−0°方位(9時−3時方位)において非対称であることが分かる。
発明者らは、視角特性を向上させる観点に着目して、実施例による液晶表示素子を発案した。
図6に、実施例(OA1)による液晶表示素子の概要斜視図を示す。図示のように、3つのTN液晶セルが基板の法線方向に並ぶ。3つのセルを図中下(観察者O側)から説明すると、表示セルとしての機能を持つ右ねじれ90°TN液晶セル13b、背景表示セルとしての機能を持つ右ねじれ90°TN液晶セル13a、視角特性を補償する補償セルとしての機能を持つ左ねじれ90°TN液晶セル13cが順に配置される。液晶中央分子の配向方向は、図中下のセルから順に、90°、90°、0°である。上記3つのセルを含むセル構造の下側に配置された偏光板の透過軸方向は135°−315°、セル構造の上側に配置された偏光板の透過軸方向は45°−225°である。
図6に示したセル配置構造の液晶表示素子が良好な視角特性を持ち、狙い通りの動作を行うことが出来るかについて、シンテック製LCDMASTER6.0を用いてシミュレーションを行った。計算条件は次の通りである。
(条件2)
・液晶材料:ZLI−4792
・セル厚:4.9μm
・セルのリタデーション:490nm
・プレチルト角(基板方向に対する電圧無印加時の液晶分子の角度):1°
・偏光板:ポラテクノ製SKN18243T
図7A、図7Bにシミュレーション結果を示す。
図7Aに、実施例による液晶表示素子の全TN液晶セルが電圧無印加時の場合(明表示)の等透過率(輝度)曲線を示す。なお、等透過率曲線の示し方は参考例の場合と同様である。図示のように、上下、左右がそれぞれほぼ対称な等透過率曲線が認められ、良好な視角特性が得られることが分かる。
図7Bに、実施例の液晶表示素子の表示セルおよび背景表示セルに、方形波5VrmsのON電圧を印加した場合(明表示)の等透過率曲線を示す。図示のように、左右の視角特性の多少の差は見受けられるが、参考例のように最良視認方位が90°ずれる現象は生じていない。なお、参考例と実施例とでシュミュレーション時の印加電圧が異なっているが、実質的な差異を示すものではない。
図8A〜図8Dに、実施例によるTN液晶セルのコントラスト比の分布を示す。コントラスト比は、表示セル、背景表示セルのうち一方のTN液晶セルの電圧を固定(OFFもしくはON)し、他方のTN液晶セルをON/OFFした場合の明暗表示から導出した。各図中の等コントラスト曲線は、一番外側の線をコントラスト比1とし、内側に向かうに従ってコントラスト比5、10、20、50、100、200、300を示す。図8A〜図8Dにおける電圧印加条件は次の通りである。なお、ON電圧は5Vrms、OFF電圧は0Vである。
(電圧印加条件)
・図8A−表示セルON/OFF、背景表示セルOFF
・図8B−表示セルOFF、背景表示セルON/OFF
・図8C−表示セルON/OFF、背景表示セルON
・図8D−表示セルON、背景表示セルON/OFF
図8A〜図8Dにおいて、種々の電圧印加(動作)条件で視角特性が参考例に対して良好な対称性、特に、左右、上下方向の視角特性が良好な対称性を有していることが確認できる。
図9に、シミュレータにより算出した、実施例による液晶表示素子ならびに比較のための単一TN液晶セルの、正面観察時における電圧−透過率特性を示す。単一TN液晶セルは、上下にクロスニコルの偏光板を配置した右ねじれ90°のTN液晶を一つ用いた構成とし、材料その他の条件は(条件2)と同様である。図中AおよびBの曲線が、同一の特性曲線を描いている。従って、実施例による3つのTN液晶セルを用いた場合の電気光学特性と、単一TN液晶セルを用いた場合の電気光学特性とが同一であり、実施例による液晶表示素子が表示素子としての機能を十分果たしていると言える。
図9中Cの曲線は、実施例による液晶表示素子中の表示セルもしくは背景表示セルのどちらか一方にON電圧5Vrmsを印加した状態で、他方のセルに電圧を加えたときの電圧−透過率特性を示す。図中曲線Cが示すように、透過率は印加電圧2Vrms付近で立ち上がり、印加電圧4Vrms付近で飽和状態に近づく。このように、実施例による液晶表示素子は、表示セル、背景表示セルの一方をONした場合にノーマリブラック(ネガ表示)の素子として十分使用可能なことを示している。
上記のように、ねじれの方向が同一の、有効表示領域を画定するための2つのTN液晶セルと、2つのTN液晶セルとねじれの方向が逆向きの補償セルとが液晶セル構造を形成した実施例により、カラーブレークを起こさず、視認性も良好な液晶表示素子を実現できる。
(変型例1および変型例2)
図10A、図10Bに、実施例の変型例1(OA2)、変型例2(OA3)による液晶表示素子の概略図を示す。図10Aに示す変型例1において、各TN液晶セルのツイストの方向と機能は実施例のままで、補償セル14cが表示セル14bと背景表示セル14aとの間に配置される。偏光板P1、P2については実施例と同様である。図10Bに示す変型例2において、TN液晶セルのツイストの方向と機能は実施例のままで、補償セル15cが2つのTN液晶セル15a、15bの下に配置される。偏光板の配置および透過軸の方向は実施例と同様である。
図11A、11Bに、変型例1の表示状態を実施例と同様の条件(条件2)でシミュレーションした結果を示す。
図11Aは、電圧無印加時(明表示)における液晶表示素子の等透過率曲線を示す。等透過率曲線の示し方は実施例と同様である。図示のように、実施例と同様に良好な視角特性を示している。
図11Bは、表示セル、背景表示セル共にON電圧5Vrmsを印加した場合(明表示)における液晶表示素子の等透過率曲線を示す。図示のように、良好な視角特性を示しており、特に左右の対称性が良好である。
図12A〜図12Dに、変型例1によるTN液晶セルのコントラスト比の分布を示す。電圧の印加条件は、図12A〜図12Dがそれぞれ順に図8A〜図8Dに対応している。図12A、図12Bならびに図12C、図12Dをそれぞれ比較すると、左右の視角特性に多少の差が観察されるが、これは表示セルと背景表示セルとの間に補償セルが配置されていることにより、表示セルと背景表示セルとの間に距離が生じているのが原因と思われる。このように電圧印加状態で視角特性に若干差が見られるものの、参考例のように90°視認方向がずれる現象は生じないため、参考例よりも視認性に優れていると言えよう。
変型例2の視角特性については、実施例で示した図7A、図7Bおよび図8A〜図8Dと同様のシミュレーション結果が得られた。
発明者らは、シミュレーション計算時のセル条件をベースに実際に液晶表示素子を作製して表示状態の概観を目視により観察し評価した。表示セル、背景表示セルはセル厚2μm、リタデーション約440nmで右ねじれ90°ツイストとした。補償セルはセル厚2μm、リタデーション440nmで左ねじれ90°ツイストとした。それ以外は実施例、変型例1および変型例2のシミュレーション条件と同様とした。
観察の結果、正面、左右の視角特性とも計算結果と同様の動作、表示が得られた。
続いて、実施例もしくは変型例に対してFS駆動を行って表示をさせる駆動方法について説明する。発明者らは、上記外観観察した液晶表示素子LCD−P(実施例、変型例1、変型例2のいずれかによる液晶表示素子を明細書中ではLCD−Pと呼ぶこととする)を用いて、特開2005−070440号公報で示したカラーブレークレスFS駆動方式を適用した場合、任意のカラー表示が可能かについて検証(表示テスト)を行った。
表示テストにおいて表示するのは、図4で示したセグメント電極1sg〜7sgと、全面電極1bc2とが画定する表示領域である。
図13に、液晶表示素子LCD−Pの表示の一例を示す。図示のように、数字の「8」を7つに分けたセグメント電極のうちの3つと全面電極とが画定する表示領域2d、5d、7dがマゼンダ色を表示し、セグメント電極のうち別の3つと全面電極とが画定する表示領域1d、3d、6dが黄色を表示し、セグメント電極のうち残りの1つと全面電極とが画定する表示領域4d並びに全面電極が画定する表示領域1dbがシアン色を表示するようにTN液晶セルを駆動する。
(表示テスト1)
フレーム周波数を60Hz(1フレーム16.6ms)として、バックライト、表示セル、背景表示セルを同期させて駆動する。1フレームをさらに3つのサブフレームに分割し(1つのサブフレームの時間は5.53ms)、各サブフレームが切り替わる時に指定された動作を行うようにTN液晶セルに電圧を印加する。バックライトは1つのサブフレーム内で指定された色を点灯させるように制御するが、サブフレームが切り替わった瞬間から約2.5ms後に光源を点灯させ、Y(黄)B(青)M(マゼンダ)のいずれか1色を出射するように制御する。
図14に、表示セル、背景表示セルの各電極への信号のON/OFF、及びバックライトの点灯色を各サブフレームでどのように入力するかを表として示す。ONの場合にTN液晶セルに印加する電圧は5Vrms、OFFの場合は0Vとする。
表示セルに形成された各セグメント電極1sg〜7sgの各々と、背景表示セルに形成された全面電極1bc2とを組み合わせた場合、どちらか一方のセルがONで、他方がOFFである時には、液晶表示素子LCD−Pはバックライトの点灯色を遮光する。両方のセルがONもしくは両方のセルがOFFの時にはLCD−Pはバックライトの光を透過する。このような駆動を行うことにより、色の2重写りや表示が立体に見える現象、およびカラーブレーク現象を抑えることが可能となる。
実際に、図14に示した駆動方式を用いて液晶表示素子LCD−Pに表示をさせたところ、図13に示した表示が実現でき、左右の視角特性についても良好であった。カラーブレーク現象も観察上は見られなかった。
バックライトを点灯させるタイミングについて述べる。上記表示テストにおいてはサブフレームが切り替わってから約2.5msバックライトを点灯させない「ブランク」時間を設けた。これはTN液晶セルの電気光学応答によって調整する必要がある。上記表示テストにおいて使用したTN液晶セルの応答時間は立ち上がり、立下りとも2.5msであったためブランク時間を同じ時間に設定したが、ブランク時間をさらに長く設定することはできる。
実際にブランク時間を3.0ms〜5.0msの間で変化させて表示状態を観察したが、表示輝度に多少の差が出る他は変化が無かった。輝度に関してはバックライトの出力を調整することで対応できる。
一方、TN液晶セルの応答時間よりも短くブランク時間を設定すると、表示輝度が向上する現象が見られたが、時間が短くなればなるほど表示した色と異なる色に変化する傾向が見られた。
検討の結果、TN液晶セルの応答時間が1サブフレーム以下という条件において、ブランク時間は1サブフレームの約20%〜約95%となるように設定すると概ね良好な表示状態が得られると推定される。
なお、一般的に液晶セルの応答時間は温度変化に対して変化する。低温になれば応答時間は長くなり、高温になれば応答時間は短くなる。液晶セルの応答時間の温度依存性に対してはブランク時間及びバックライト輝度を調整することで対応できるので、広い温度範囲で良好な表示状態が維持できるであろう。
(表示テスト2)
上記の実施例および変型例では、カラーブレークレス駆動方式の表示方法を説明したが、車載用LCD等の、カラーブレークしないことが必須な製品以外の素子用途には、従来技術の説明において記載した時分混色法を用いても良い。
図15に、図4で示した表示セル、背景表示セルの各電極への信号のON/OFF、及びバックライトの点灯色を各サブフレームでどのように入力するかを表として示す。フレーム時間、サブフレーム時間、サブフレーム数、ブランク時間は図14に示したカラーブレークレス駆動方式と同様である。
表示セルに形成された各セグメント電極1sg〜7sgの各々と、背景表示セルに形成された全面電極1bc2とを組み合わせた場合、どちらか一方のセルがONで、他方がOFFである時には、液晶表示素子LCD−Pはバックライトの点灯色を遮光する。両方のセルがONもしくは両方のセルがOFFの時にはLCD−Pはバックライトの光を透過する。
時分混色法を用いて図13に示した色を再現する場合には、複数のサブフレームで各バックライトの色を透過し、混色による表示を行う。
図15に示した駆動方式により、カラーブレーク現象は認められるものの、図13に示す液晶表示が視認性よく実現可能であることを確認した。なお、ブランク時間の設定範囲については表示テスト1と同様である。
表示テスト2により、時分混色法による駆動方法についても実施例および変型例が適用できることが分かった。
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、表示セル、背景表示セルを左ねじれ、補償セルを右ねじれとしても上下左右の視角特性に変化は無いであろう。
また、補償セルの代わりに、補償セルと同等な光学的特性を有する液晶性ポリマーによる光学フィルム(例えばポラテクノ製Twistar)を用いて視角補償が可能である。
さらに、上記シミュレーションおよび表示テストでは、駆動波形が矩形波であるスタティック駆動により駆動させたが、マルチプレックス駆動方式にも適用可能であろう。ただし、マルチプレックス駆動方式の場合、そのduty比によって応答速度が大きく変わる傾向があるので注意が必要である。例えば、1/4duty、1/3biasでON電圧を6.2VとしたときにはTN液晶セルの立ち上がり時間が2.5ms、立ち下がり時間が5msであった。1サブフレームの時間は約5.53msであるから動作可能である。この駆動電圧の条件でカラーブレークレス駆動方式、時分混色法のそれぞれについて液晶表示素子LCD−Pの表示テストを行ったが、良好な視角特性を実現できた。
その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
図1は、液晶セルを2つ用いたFS駆動方式の液晶表示素子の概念図である。 図2は、液晶表示素子の電極パターン例である。 図3Aは、TN液晶セルを2つ用いたノーマリブラック表示の液晶表示素子の概略斜視図であり、図3BはTN液晶セルを2つ用いたノーマリホワイト表示の液晶表示素子の概略斜視図である。 図4は、液晶表示素子の電極パターン例である。 図5Aおよび図5Bは、シミュレータにより算出した、参考例による液晶表示素子の表示領域における等透過率曲線である。 図6は、実施例による液晶表示素子の概要斜視図である。 図7A、図7Bはシミュレーションにより導出した等透過率曲線である。 図8A〜図8Dは、TN液晶セルのコントラスト比の分布である。 図9は、シミュレータにより算出した、実施例による液晶表示素子ならびに比較のための単一TN液晶セルの、電圧−透過率特性である。 図10A、図10Bは、実施例の変型例1、変型例2による液晶表示素子の概略図である。 図11A、図11Bは、シミュレーションにより導出した変型例1の等透過率曲線である。 図12A〜図12Dは、TN液晶セルのコントラスト比の分布である。 図13は、実施例、変型例1および変型例2による液晶表示素子のいずれかを駆動させた場合の表示例である。 図14は、表示テスト1において、表示セル、背景表示セルの各電極への信号のON/OFF、及びバックライトの点灯色を各サブフレームでどのように入力するかについての表である。 図15は、表示テスト2において、表示セル、背景表示セルの各電極への信号のON/OFF、及びバックライトの点灯色を各サブフレームでどのように入力するかについての表である。
符号の説明
1bc1、1bc2 背景電極パターン
1sg、2sg、3sg、4sg、5sg、6sg、7sg セグメント電極パターン
1d、1db、2d、3d、4d、5d、6d、7d 表示領域
11a、12a、13a、14a、15a (背景表示)TN液晶セル
11b、12b、13b、14b、15b (表示)TN液晶セル
13c、14c、15c 補償セル
O 観察者
P1、P2、P3 偏光板

Claims (8)

  1. 基板の法線方向に重ねて配置された第1、第2のTN液晶セルであって、各TN液晶セルが、各々電極を備えて対向する一対の基板と、該一対の基板間に保持され、電界が発生していない状態で液晶分子がツイスト配列した液晶層とを含み、該液晶層のツイストの方向が同じであり、液晶層中央分子の配向方向が等しい第1、第2のTN液晶セルと、
    前記基板の法線方向に配置され、ツイストの方向が前記第1、第2のTN液晶セルにおける液晶層のツイストの方向と逆向きであり、液晶層中央分子の配向方向が前記第1、第2のTN液晶セルと直交する第3のTN液晶セルと、
    前記第1、第2、第3のTN液晶セルの、前記基板の法線方向に関して両側にクロスニコル配置された2枚の偏光板であって、透過軸または吸収軸の方向が、共に、該第1、第2、第3のTN液晶セルの各々厚さ方向に関して中央に位置する液晶分子の配向方向と45°の角度を為すように配置された偏光板と、
    複数の色の発光が可能なバックライトと、
    前記バックライトの複数の色を逐次点灯させるバックライトドライバと、
    前記第1及び第2のTN液晶セルの駆動を行うLCDドライバと、
    前記バックライトドライバと前記LCDドライバとをシンクロ動作させる同期コントローラと
    を有し、
    前記同期コントローラと前記LCDドライバと前記バックライトドライバとは、1フレームを複数のサブフレームに分割して、前記第1及び第2のTN液晶セルと前記バックライトとの動作タイミングを同期させて駆動するフィールドシーケンシャル駆動により1フレームで2色以上のマルチカラー表示を行い、
    前記第1、第2のTN液晶セルの内、一方が情報表示を行う情報表示セル、他方が背景の表示状態を制御する背景表示セルとしての機能を有し、
    前記第1、第2のTN液晶セルの内の前記情報表示セルにおける電極が任意形状の複数の表示部を有し、前記背景表示セルにおける電極が全面電極である液晶表示装置。
  2. 前記液晶分子のツイスト角度が各々90°であり、前記第1、第2および第3のTN液晶セルの各々において、液晶層の厚さdと液晶材料の複屈折率異方性Δnの積であるリタ
    デーションΔndが490nm以下である請求項1記載の液晶表示装置。
  3. 基板の法線方向に重ねて配置された第1、第2のTN液晶セルであって、各TN液晶セルが、各々電極を備えて対向する一対の基板と、該一対の基板間に保持され、電界が発生していない状態で液晶分子がツイスト配列した液晶層とを含み、該液晶層のツイストの方向が同じであり、液晶層中央分子の配向方向が等しい第1、第2のTN液晶セルと、
    前記基板の法線方向に配置され、ツイストの方向が前記第1、第2のTN液晶セルにおける液晶層のツイストの方向と逆向きであり、液晶層中央分子の配向方向が前記第1、第2のTN液晶セルと直交する、液晶性ポリマーを材料とした光学フィルムと、
    前記第1、第2のTN液晶セルと前記光学フィルムの、前記基板の法線方向に関して両側にクロスニコル配置された2枚の偏光板であって、透過軸または吸収軸の方向が、共に、該第1、第2のTN液晶セル及び前記光学フィルムの各々厚さ方向に関して中央に位置する液晶分子の配向方向と45°の角度を為すように配置された偏光板と、
    複数の色の発光が可能なバックライトと、
    前記バックライトの複数の色を逐次点灯させるバックライトドライバと、
    前記第1及び第2のTN液晶セルの駆動を行うLCDドライバと、
    前記バックライトドライバと前記LCDドライバとをシンクロ動作させる同期コントローラと
    を有し、
    前記同期コントローラと前記LCDドライバと前記バックライトドライバとは、1フレームを複数のサブフレームに分割して、前記第1及び第2のTN液晶セルと前記バックライトとの動作タイミングを同期させて駆動するフィールドシーケンシャル駆動により1フレームで2色以上のマルチカラー表示を行い、
    前記第1、第2のTN液晶セルの内、一方が情報表示を行う情報表示セル、他方が背景の表示状態を制御する背景表示セルとしての機能を有し、
    前記第1、第2のTN液晶セルの内の前記情報表示セルにおける電極が任意形状の複数の表示部を有し、前記背景表示セルにおける電極が全面電極である液晶表示装置。
  4. 前記液晶分子のツイスト角度が各々90°であり、前記第1、第2のTN液晶セルの各々において、液晶層の厚さdと液晶材料の複屈折率異方性Δnの積であるリタデーションΔndが490nm以下である請求項3記載の液晶表示装置。
  5. 基板の法線方向に重ねて配置された第1、第2の液晶セルであって、各TN液晶セルが、各々電極を備えて対向する一対の基板と、該一対の基板間に保持され、電界が発生していない状態で液晶分子がツイスト配列した液晶層とを含み、該液晶層のツイストの方向が同じであり、液晶層中央分子の配向方向が等しい第1、第2のTN液晶セルと、
    前記基板の法線方向に配置され、ツイストの方向が前記第1、第2のTN液晶セルにおける液晶層のツイストの方向と逆向きであり、液晶層中央分子の配向方向が前記第1、第2のTN液晶セルと直交する第3のTN液晶セルと、
    前記第1、第2、第3のTN液晶セルの、前記基板の法線方向に関して両側にクロスニコル配置された2枚の偏光板であって、透過軸または吸収軸の方向が、共に、該第1、第2、第3のTN液晶セルの各々厚さ方向に関して中央に位置する液晶分子の配向方向と45°の角度を為すように配置された偏光板と、
    複数の色の発光が可能なバックライトと、
    前記バックライトの複数の色を逐次点灯させるバックライトドライバと、
    前記第1及び第2のTN液晶セルの駆動を行うLCDドライバと、
    前記バックライトドライバと前記LCDドライバとをシンクロ動作させる同期コントローラとを有し、
    前記同期コントローラと前記LCDドライバと前記バックライトドライバとは、1フレームを複数のサブフレームに分割して、前記第1及び第2のTN液晶セルと前記バックラ
    イトとの動作タイミングを同期させて駆動するフィールドシーケンシャル駆動により1フレームで2色以上のマルチカラー表示を行い、
    前記第1、第2のTN液晶セルの内、一方が情報表示を行う情報表示セル、他方が背景の表示状態を制御する背景表示セルとしての機能を有し、
    前記第1、第2のTN液晶セルの内の前記情報表示セルにおける電極が任意形状の複数の表示部を有し、前記背景表示セルにおける電極が全面電極である液晶表示装置の駆動方法であって、
    1フレームを複数のサブフレームに分割して、前記第1、第2のTN液晶セルと前記バックライトとの動作タイミングを同期させて駆動させるフィールドシーケンシャル駆動により1フレームで2色以上のマルチカラー表示を行うことが可能な液晶表示装置の駆動方法。
  6. 各々の画素(セグメント)又は背景表示領域では複数のサブフレームの内1つのサブフレームのみバックライトの光を透過するように前記第1、第2のTN液晶セルの一方を動作させるか、もしくは両方同時に動作させる請求項5記載の液晶表示装置の駆動方法。
  7. 1フレームを3つのサブフレームに分割し、R(赤)G(緑)B(青)のいずれかもしくはY(黄)M(マゼンダ)C(シアン)のいずれかを各サブフレームで点灯させ、
    前記各々の画素又は背景表示領域では単数又は複数のサブフレームでバックライトの光が透過するように前記第1、第2のTN液晶セルの一方を動作させるか、もしくは両方同時に動作させる請求項5記載の液晶表示装置の駆動方法。
  8. 前記サブフレームの各々で、サブフレーム開始からバックライトが点灯するまでの時間を1サブフレーム時間の20%〜95%に設定した請求項5〜7のいずれか1項記載の液晶表示装置の駆動方法。
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