JP5283091B2 - ガス製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ガスを製造するガス製造装置に関するものである。
近年、メタンは燃料用ガスとして都市ガスに使用され、また水素は燃料電池等に使用され、消費量や用途が高まっている。
このメタンや水素は、工業的には、LPG、ナフサ等の軽質炭化水素を原料とする水蒸気改質プロセスにより大量に生産されている(例えば、下記の特許文献1,2,3参照)。
特開2004−175617号公報 特開2007−136445号公報 特開平11−323355号公報
しかし、この水蒸気改質プロセスによる生産では、大量の水と、高価な触媒が大量に使用され、ガス製造単価が高くなる要因となっていた。また炭素の析出(コーキング)による触媒活性低下を防止しなければならないという課題も有していた。
さらに、この水蒸気改質プロセスによる生産では、触媒を反応管に充填するため、反応管が大型化し、また、大量の水蒸気を発生させるための装置が必要であり、全体的に装置が大型化し、設置スペースの確保が困難であるという課題も有していた。
この発明は上記に鑑み提案されたもので、水蒸気改質プロセスでの大量の水を大幅に低減することができ、また触媒も使用する必要がなく、使用した場合でも少量で済ますことができ、低コストでメタンや水素を製造することができ、また装置を小型化し設置スペースも容易に確保することができるガス製造装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、ガスを製造するガス製造装置において、水タンクからポンプによって送出され、流量計及び流量制御弁を経由して供給された水と液体タンクからポンプによって送出され流量計を経由して供給された水以外の液体とを均一に混合するようにして水混合体を製造する水混合体製造部と、上記水混合体製造部で製造された水混合体が質量流量計を通過した後加熱器で加熱され脱硫器を経由して原料として供給されメタンガスを発生させるメタンガス製造部と、上記水混合体製造部で製造された水混合体が質量流量計を通過した後加熱器で加熱され脱硫器を経由して原料として供給され水素ガスを発生させる水素ガス製造部と、を備え、上記水以外の液体は、油、ジメチルエーテルの何れかであり、上記油は、ナフサ、ガソリン、灯油、軽油、A重油、B重油、C重油、原油(重質原油を含む)、重質油、動物油、廃油の少なくとも1つからなり、上記水は炭酸カリウム(K 2 CO 3 )を含有し、最大量のメタンガス及び水素ガスが製造されるための最適モル比となるように、上記水以外の液体に対する水の流量を制御する制御部を備え、上記制御部で最適モル比に制御された水と水以外の液体とが、上記水混合体製造部に供給され、上記水以外の液体が油の場合は、上記メタンガス製造部は、下記の熱化学反応式(1)でメタンガスを発生させ、Cmn+{(4m−n)/4}H2O→{(4m−n)/8}CO2+{(4m+n)/8}CH4+(177.1m−25.5n)(MJ/kmol)・・・(1)上記水以外の液体がジメチルエーテル(DME)の場合は、上記メタンガス製造部は、下記の熱化学反応式(2)でメタンガスを発生させる、C26O+H2O→CO2+CH4+2H2+411.3(MJ/kmol)・・・(2)ことを特徴としている。
本発明によると、水と水以外の液体とから水混合体を製造し、その水混合体を原料としてメタンガスや水素ガスを製造するようにしたので、水蒸気改質プロセスでの大量の水を大幅に低減することができ、また触媒も使用する必要がなく、低コストでメタンや水素を製造することができる。
また、触媒を用いないため反応管を小型化でき、さらに、水蒸気を発生させるための装置も不要となるため、全体的に装置を大幅に小型化でき、設置スペースも容易に確保することができる。
本発明のガス製造装置の第1の実施形態を示す図である。 水と天ぷら廃油とのエマルジョンを形成する各粒子の状態を模式的に示す図である。 本発明のガス製造装置の第2の実施形態を示す図である。 本発明のガス製造装置の第3の実施形態を示す図である。
図1は本発明のガス製造装置の第1の実施形態を示す図である。図1において、本発明のガス製造装置1Aは、メタンガスを製造するガス製造装置であり、水と水以外の液体とから水混合体を製造する水混合体製造部20と、その水混合体製造部20で製造された水混合体を原料としてメタンガスを発生させるメタンガス製造部40と、を備えている。
水タンク11に貯蔵された水は、ポンプ12で送出され、流量計13および流量制御弁14を経由して、上記の水混合体製造部20に供給される。
液体タンク15に貯蔵された、水以外の液体(以下、単に「液体」という)は、ポンプ16で送出され、流量計17を経由して、上記の水混合体製造部20に供給される。
ここで、液体は、油(ナフサ、ガソリン、灯油、軽油、A重油、B重油、C重油、原油(重質原油を含む)、重質油、植物油(藻油を含む)、動物油、廃油(例えば使用済みのエンジンオイルや天ぷら油))、ジメチルエーテル(DME)、アルコール(メタノール、エタノール、バイオエタノール、発酵生成エタノール等)、タール(コールタール、木タール等)、ベンゼン、トルエン、キシレンであり、また油とアルコールの混合物をいう
液体が油の場合は、水混合体は、水と油からなるが、水と油は通常は界面活性剤を用いて乳化されエマルジョンとなる。ここでは、水と油からなる水混合体として、このような、界面活性剤を用いたエマルジョンだけでなく、水にヒドロキシルイオン(H32 )を含むことで界面活性剤を用いずに水と油とが混ざるようになったエマルジョンも含むものとする。
水混合体製造部20で均一になるように混合され生成された水混合体は、質量流量計(例えばコリオリ式質量流量計)21を通過した後、加熱器22で加熱され、その後脱硫器23で硫黄分が除去され、メタンガス製造部40に原料として供給される。水混合体のメタンガス製造部40の入口での温度は、約300℃となるように、加熱器22で加熱される。この300℃は、メタンガス製造部40において、CO生成による発熱により、高温ガスをつくるのに必要なメタンガス製造部入口温度であり、対象となる水混合体の種類に応じて各種温度に設定される。
上記の流量計13は水の体積流量VFwを計測し、流量計17は液体の体積流量VFqを計測し、質量流量計21は水混合体の質量流量MFmを計測し、その計測結果VFw、VFq、MFmは、制御部100に出力される。制御部100では、その計測結果VFw、VFq、MFmを用いて、次の手順で液体の密度ρqを求める。すなわち、先ず水の密度が1g/ccのとき、水の体積流量VFw=水の質量流量MFwであり、この水の質量流量MFwを用いて、次式(1)により、液体の質量流量MFqを求め、液体の密度ρqを式(2)で求める。
MFq=MFm−MFw=MFm−VFw・・・(1)
ρq=MFq/VFq・・・(2)
制御部100は、さらに液体の密度ρqから、液体を構成する分子の組成式を決定する。例えば、液体が組成式CmHnで表わされる油の場合、液体の密度ρを用いて、組成m、nを決定し、それにより油(液体)の組成式を決定する。
ところで、メタンガス製造部40では、後述するように、水と液体との熱化学反応によりメタンガスを製造するが、その熱化学反応において、水(水蒸気)が余分に存在すると、製造されたメタンガス(CH)は、その余分に存在する水とさらに反応して、一酸化炭素(CO)と水素(H)とに分解し、製造されたメタンガス(CH)が減少してしまう。逆に水が不足すると、水と液体とから最大量のメタンガスが得られなくなる。すなわち、水と液体との間には最大量のメタンガスが製造されるための最適なモル比が既知のものとして存在しており、制御部100は、水と液体とがその最適なモル比となるように、上記の液体の密度ρqを用いて、水の最適体積流量VFwoを求め、続いて流量計13で計測した水の体積流量VFwがその最適体積流量VFwoとなる、流量制御弁14の弁開度Dcを求め、その指令信号を流量制御弁14に出力する。このようにして、メタンガス製造部40には、最大量のメタンガスが得られる最適のモル比に制御された水と液体とからなる水混合体が送り込まれる。
メタンガス製造部40では、入口から出口に渡って反応管(図示省略)が貫通し、その反応管内を水混合体が流れる。反応管内では周囲の熱を受けて熱化学反応が起こって水混合体がガス化され、その大部分がメタンガスとなり、その他に二酸化炭素ガスとなって出口から回収される。なお、水混合体を構成する液体がDMEやアルコールの場合は水素ガスも生成される。
反応管に熱を供給するために、メタンガス製造部40の入口側から内部に向けて、加熱器44で加熱された空気と、燃料とを送り込み、反応管の周囲で燃焼させている。その熱を受けて反応管内では、上記のように、熱化学反応が起こり、入口側では約300℃であった水混合体がガス化し、生成熱が大きいCOの発熱反応により、ガス温度は1300〜1600℃まで温度が上昇する。
ガス温度が高いとガス中のメタンの割合が小さくなるために、冷却媒体による冷却により、メタンが最大割合になるようにメタンガス製造部出口温度が300±150℃となるように制御されている。150℃以下となると、液体が100%蒸気にならない点で不具合が生じ、450℃以上となると他の反応が起こる点で不具合が生じるからである。なお、より好ましい出口温度は300〜350℃である。
なお、冷却媒体に原料である水混合体を用いるようにしてもよい。
メタンガス製造部40で製造されたガスは、その後冷却器41でさらに冷却された後、2系統に分岐し、一方の系統では、脱炭酸部42で二酸化炭素ガスが除去された後、クーラー43で50℃に冷却され、メタンが99.8〜99.9%で、二酸化炭素ガスが0.1〜0.2%の純メタンガスとしてメタンガス消費ユーザに供給される。また、このメタンガスにLPG(液化石油ガス)と付臭剤を添加することで、13Aのような都市ガスに変換されて消費される。
他方の系統では、直接クーラー45で50℃に冷却され、メタンが70〜80%で、二酸化炭素ガスが20〜30%のメタンガスとしてメタンガス消費ユーザに供給される。
上記のメタンガス製造部40における熱化学反応は、水混合体を構成する液体の種類に応じて次のようになる。
先ず、液体が油の場合、メタンガス製造部40は、下記の熱化学反応式(5)でメタンガスを発生させる。なお、液体が油の場合、水混合体は水と油とのエマルジョンである。
+{(4m−n)/4}HO→{(4m−n)/8}CO+{(4m+n)/8}CH+(177.1m−25.5n)(MJ/kmol)・・・(5)
また、液体がジメチルエーテル(DME)の場合、メタンガス製造部40は、下記の熱化学反応式(6)でメタンガスを発生させる。
O+HO→CO+CH+2H+411.3(MJ/kmol)・・・(6)
液体がエタノール(アルコール)の場合、メタンガス製造部40は、下記の熱化学反応式(7)でメタンガスを発生させる。
OH+HO→CO+CH+2H+411.3(MJ/kmol)・・・(7)
液体がナフサ(油)とメタノール(アルコール)の場合、メタンガス製造部40は、下記の熱化学反応式(8)でメタンガスを発生させる。なお、水とナフサとはエマルジョンを形成し、水混合体はこのエマルジョンとメタノールとの混合体である。
12+2HO+CHOH→CO+CO+4CH+2H+689.4(MJ/kmol)・・・(8)
液体がナフサ(油)とエタノールの場合、メタンガス製造部40は、下記の熱化学反応式(9)でメタンガスを発生させる。なお、水とナフサとはエマルジョンを形成し、水混合体はこのエマルジョンとエタノールとの混合体である。
12+2HO+COH→CO+CO+5CH+H+764.3(MJ/kmol)・・・(9)
液体が天ぷら廃油(廃天ぷら油)の場合、メタンガス製造部40は、下記の熱化学反応式(10)でメタンガスを発生させる。
1731COOH+9HO(含KCO)→5.5CO+12.5CH・・・・・・(10)
この場合、水には少量の炭酸カリウム(KCO)が界面活性剤として添加され、水混合体は、水と天ぷら廃油とのエマルジョンとなる。水に添加する炭酸カリウムの重量濃度は、水の硬度に応じて変化し、例えば水の硬度が0のとき0.1wt%、80のとき0.5wt%、1000以上のとき5wt%とするのが適している。上記の適正な濃度の炭酸カリウムを含有する水と、天ぷら廃油とを混合させ、エマルジョンを生成する。このエマルジョンについて説明する。
図2は水と天ぷら廃油とのエマルジョンの状態を模式的に示す図である。水と天ぷら廃油とのエマルジョンは、図2に示すように、天ぷら廃油2の全体にわたって多数の水粒子3が密に存在する状態となっており、W/O型エマルジョンとなっている。個々の水粒子3は水の分子集団であり、粒径は1μm前後である。
水粒子3は、上記のように、天ぷら廃油2の全体にわたって存在し、その水粒子3の各々には、図2に拡大して示すように、全外表面に界面活性剤の炭酸カリウム4が存在している。この状態のエマルジョンを加熱すると、水と天ぷら廃油とはそれぞれ蒸気となって互いに反応し、上記の熱化学反応式(10)に従って高温のCOとCHが生成される。その際に炭酸カリウムはそれぞれの蒸気の表面に存在し、互いに接触したときに反応触媒の役目を担い、COとCHの生成を促進させている。このように、炭酸カリウムは、界面活性剤の機能と反応触媒の機能とを合わせ持っている。
上記の熱化学反応式(10)から、天ぷら廃油と水の体積割合が約2:1のエマルジョンを加熱蒸発反応させると、発生するガスのCOとメタンの割合はそれぞれ31%、69%となる。
天ぷら廃油と水からメタンを製造した場合の特長は以下のとおりである。
a)特殊な水でなく水道水が使用可能
b)炭素(C)は植物由来なので(10)式のCOおよびCHの燃焼によるCOはゼロエミッションとなる。
c)硫黄分が無いので、製造ガスの燃焼排ガス中の硫黄酸化物(SOx)はゼロ。
d)原料費を含む運転費および設備費が非常に安価。
e)装置がシンプルでスペースをとらない。
f)水に溶かした炭酸カリウム(KCO)が反応触媒となるので反応器内に触媒が不要。
g)炭酸カリウム(KCO)が界面活性剤および反応触媒の機能を合わせ持つ
h)KCOは食品にも使われているため、排出されても環境にやさしい
i)産業廃棄物である廃食油を処理でき、かつ高価なCHを製造できるため、環境およびエネルギー問題の解決となる。
j)(10)式のCOの生成熱が大きくその熱を利用できるために定常運転での熱エネルギー費は極端に小さくなる。
上記の説明では、天ぷら廃油からメタンを生成するようにしたが、天ぷら廃油に限らず、他の植物油からも同様にメタンを生成することができる。その場合、上記と同様に、炭酸カリウムを溶かした水と、植物油とでエマルジョンを形成する。
なお、炭酸カリウムはもともと、植物に含まれる物質で、このことは植物を燃やした後の灰に炭酸カリウムが存在することからも分かる。したがって、植物が生きている間に、植物の体内では炭酸カリウムが界面活性剤としての機能を発揮し、水分と油分を混ぜ合わせていたと考えられる。よって、炭酸カリウムが水に溶けその水溶液が植物油と乳化するものと考えられる。
また、水で洗った木炭に火をつけても燃えないことは、炭酸カリウムが水に溶け出し木炭から出て行ったことにより起きた現象である。このことから、炭酸カリウムは反応触媒としての機能を持っていることがわかる。
以上述べたように、この発明の第1の実施形態では、水と水以外の液体とから水混合体を製造し、その水混合体を原料としてメタンガスを製造するようにしたので、従来の水蒸気改質プロセスでの大量の水を大幅に低減することができ、水の消費量を40%未満に低減することができる。また、触媒も使用する必要がなく、コーキングの懸念もなしで設備寿命を延ばすことができる。さらに、高温スチームも不要となる。したがって、メタンガスの製造コストを大幅に低減することができる。
また、触媒を用いないか、用いても極少量であるため、反応管を小型化でき、さらに、水蒸気を発生させるための装置も不要となるため、全体的に装置を大幅に小型化でき、設置スペースも容易に確保することができる。したがって、装置を車両にも搭載可能となり、製造したメタンガスをリアルタイムでエンジンに供給することができるようになる。
また、従来水蒸気改質では改質しにくかった重質成分あるいはアロマ(ベンゼン環)を含む如何なる炭化水素にも対応し、それらを原料として使用することができるようになる。
従来の水蒸気改質に使用される大量の水が、この発明では大幅に低減できるのは、下記の理由による。従来の水蒸気改質による場合、反応管(触媒管)に、予め各々の加熱器で加熱されてガス化された炭化水素系原料と水蒸気の混合ガスを導入し、反応管を加熱することで触媒の存在下に発生する水蒸気改質反応により、炭化水素と水との熱化学反応が進行し、改質ガス(ここではメタンガス)を生成する。このとき、反応管内では、炭化水素分子と水蒸気(水分子)とは、予め各々の加熱器で加熱されてガス状態で混合されたものであるため、その混合は十分なされているとは言えず、炭化水素分子と水分子とは距離が離れた状態になっており、熱化学反応が進み難くなっている。このため、大量の水蒸気を投入してできるだけ、炭化水素分子と水分子とのコンタクトを起こしやすくし熱化学反応が進みやすくなるようにしている。
これに対し、この発明では、水混合体を原料とし、その水混合体を加熱器で加熱しガス状とし反応管に導入する。このガス状の水混合体を構成する、炭化水素と水分子とは、元来液体状態で最初から互いにコンタクトし、均一に混合されていたものであるため、ガス状となってもその混合はより均一な状態を保持しており、炭化水素の周囲には、密に水分子が存在している。したがって、水蒸気を投入しなくても、熱化学反応が円滑に進行可能となっている。このことが、従来の水蒸気改質に使用される大量の水を、この発明では大幅に低減できる理由である。
また、従来の水蒸気改質による場合、炭化水素に大量の水蒸気を供給することで確かに熱化学反応は進行しやすくなるものの、一旦生成したメタンガスと、その周囲の余分の水分子とが吸熱反応を起こし、一酸化炭素と水素に分解してしまい(CH+HO→CO+3H)、回収されるメタンガス(CH)が逆に減少するようになる。このため、ガス生成が効率良く行われていないのが現状である。
これに対し、この発明では上記したように、水の体積流量VFw、液体の体積流量VFq、および水混合体の質量流量MFmを計測し、この計測結果を用いて、水と液体とのモル比が、メタンガス製造に最適なモル比となるように、水の流量を制御している。すなわち、この発明では、投入された水分子中の水素はそのすべてがメタンに変換され、炭化水素の周囲には余分の水分子は存在せず、ガス生成を最高の効率下で行うことができる。
また、この発明では、上記したように、水の体積流量VFw等の計測結果を用いて、組成式CmHnで表わされる油の組成m、nを決定することができる。このため、油の種類に関係なく、水と油とのモル比がメタンガス製造に最適なモル比となるように、水の流量を制御することができ、したがって、ナフサ、ガソリン、灯油、軽油、A重油、B重油、C重油、原油(重質原油を含む)、重質油、植物油(藻油を含む)、動物油、廃油等のどのような油でも使用することができる。
次に、この発明の第2の実施形態を図3を用いて説明する。図3は本発明のガス製造装置の第2の実施形態を示す図である。図3において、上記の図1と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
この第2の実施形態のガス製造装置1Bが第1の実施形態のガス製造装置1Aと異なるのは、メタンガス製造部40に替えて、水素ガス製造部50を設けた点である。
第1の実施形態と同様に、水混合体製造部30で均一になるように混合され生成された水混合体は、質量流量計(例えばコリオリ式質量流量計)31を通過した後、加熱器32で加熱され、その後脱硫器33で硫黄分が除去され、水素ガス製造部50に原料として供給される。水混合体の、水素ガス製造部50の入口での温度は、約400℃となるように、加熱器32で加熱される。この400℃は、水素ガス製造部50において、水と液体との熱化学反応が最も速やかに進行し、効率良く水素ガスが生成される水素ガス製造部入口温度であり、対象となる水混合体の種類に各種温度に設定される。
また、上記の第1の実施形態と同様に、制御部100は、水の体積流量VFw、液体の体積流量VFq、および水混合体の質量流量MFmの計測結果を用いて、液体の密度ρqを求め、その密度ρqから液体を構成する分子の組成式を決定する。一方、水と液体との間には最大量の水素ガスが製造されるための最適なモル比が既知のものとして存在しており、制御部100は、水と液体とがその最適なモル比となるように、上記の液体の密度ρqを用いて、水の最適体積流量VFwoを求め、流量計13で計測した水の体積流量VFwがその最適体積流量VFwoとなる、流量制御弁14の弁開度Dcを求め、その指令信号を流量制御弁14に出力する。このようにして、水素ガス製造部50には、最大量の水素ガスが得られる最適のモル比に制御された水と液体とからなる水混合体が送り込まれる。
水素ガス製造部50では、入口から出口に渡って反応管(図示省略)が貫通し、その反応管内を水混合体が流れる。反応管内では周囲の熱を受けて熱化学反応が起こって水混合体がガス化反応し、その70%程度が水素ガスとなり、その他に一酸化炭素ガスや二酸化炭素ガスとなって出口から回収される。
反応管に熱を供給するために、水素ガス製造部50の入口側から内部に向けて、加熱器54で加熱された空気と、燃料とを送り込み、反応管の周囲で燃焼させている。その熱を受けて反応管内では、上記のように、熱化学反応が起こり、入口側では約400℃であった水混合体が外側からの加熱により反応し、ガス温度は出口に向かって温度が上昇し、出口温度が700±150℃となるように制御されている。550℃以下となると、発熱反応となり水素濃度が減少する点で不具合が生じ、850℃以上となると、水素濃度の上限値となり、熱を加えるだけ熱損失となる点で不具合が生じるからである。なお、より好ましい出口温度は700℃〜800℃である。
水素ガス製造部50で製造されたガスは、その後冷却器51で冷却された後、2系統に分岐し、一方の系統では、CO変成器52で一酸化炭素ガスが二酸化炭素ガスにされた後、クーラー53で50℃に冷却され、水素が約68〜71%で、二酸化炭素ガスが約29〜32%からなるガスとして、PEFC(固体高分子型燃料電池)等の燃料電池ユーザや水素ガス消費ユーザに供給される。
他方の系統では、冷却器51で50℃に冷却された後そのままユーザーへ供給される。すなわち、水素が約68〜71%、一酸化炭素ガスが約22〜24%、二酸化炭素ガスが約5〜10%からなるガスとして、SOFC(固体酸化物型燃料電池)等の燃料電池ユーザや水素ガス消費ユーザに供給される。
上記の水素ガス製造部50における熱化学反応は、水混合体を構成する液体の種類に応じて次のようになる。
先ず、液体が油の場合、水素ガス製造部50は、下記の熱化学反応式(11)で水素ガスを発生させる。なお、液体が油の場合、水混合体は水と油とのエマルジョンである。
+{(12m−n)/8}HO→{(4m−n)/8}CO+{(4m+n)/8}CO+{3(4m+n)/8}H+(125.5m−63.0n)(MJ/kmol)・・・(11)
また、液体がジメチルエーテル(DME)の場合、水素ガス製造部50は、下記の熱化学反応式(12)で水素ガスを発生させる。
O+2HO→CO+CO+5H+411.3(MJ/kmol)・・・(12)
液体がメタノール(アルコール)の場合、水素ガス製造部50は、下記の熱化学反応式(13)で水素ガスを発生させる。
CHOH+HO→CO+3H+336.4(MJ/kmol)・・・(13)
液体がエタノール(アルコール)の場合、水素ガス製造部50は、下記の熱化学反応式(14)で水素ガスを発生させる。
OH+2HO→CO+CO+5H+447(MJ/kmol)・・・(14)
液体がナフサ(油)とメタノール(アルコール)の場合、水素ガス製造部50は、下記の熱化学反応式(15)で水素ガスを発生させる。なお、水とナフサとはエマルジョンを形成し、水混合体はこのエマルジョンとメタノールとの混合体である。
12+6HO+CHOH→CO+5CO+14H+492.8(MJ/kmol)・・・(15)
液体がナフサ(油)とエタノールの場合、水素ガス製造部50は、下記の熱化学反応式(16)で水素ガスを発生させる。なお、水とナフサとはエマルジョンを形成し、水混合体はこのエマルジョンとエタノールとの混合体である。
12+7HO+COH→CO+6CO+16H+656.8(MJ/kmol)・・・(16)
以上述べたように、この発明の第2の実施形態では、水と水以外の液体とから水混合体を製造し、その水混合体を原料として水素ガスを製造するようにしたので、従来の水蒸気改質プロセスでの大量の水を大幅に低減することができ、水の消費量を40%未満に低減することができる。また、触媒も使用する必要がなく、コーキングの懸念もなしで設備寿命を延ばすことができる。さらに、高温スチームも不要となる。したがって、水素ガスの製造コストを大幅に低減することができる。
また、触媒を用いないため反応管を小型化でき、さらに、水蒸気を発生させるための装置も不要となるため、全体的に装置を大幅に小型化でき、設置スペースも容易に確保することができる。したがって、車両にも搭載可能となり、製造した水素ガスをリアルタイムでエンジンに供給することができるようになる。
従来の水蒸気改質に使用される大量の水が、この発明では大幅に低減できるのは、下記の理由による。従来の水蒸気改質による場合、反応管(触媒管)に、予め各々の加熱器で加熱されてガス化された炭化水素系原料と水蒸気の混合ガスを導入し、反応管を加熱することで触媒の存在下に発生する水蒸気改質反応により、炭化水素と水との熱化学反応が進行し、改質ガス(ここでは水素ガス)を生成する。このとき、反応管内では、炭化水素分子と水蒸気(水分子)とは、予め各々の加熱器で加熱されてガス状態で混合されたものであるため、その混合は十分なされているとは言えず、炭化水素分子と水分子とは距離が離れた状態になっており、熱化学反応が進み難くなっている。このため、大量の水蒸気を投入してできるだけ炭化水素分子と水分子とのコンタクトを起こしやすくし熱化学反応が進みやすくなるようにしている。
これに対し、この発明では、水混合体を原料とし、その水混合体を加熱器で加熱しガス状とし反応管に導入する。このガス状の水混合体を構成する、炭化水素と水分子とは、元来液体状態で最初から互いにコンタクトし、均一に混合されていたものであるため、ガス状となってもその混合はより均一な状態を保持しており、炭化水素の周囲には、密に水分子が存在している。したがって、水蒸気を投入しなくても、熱化学反応が円滑に進行可能となっている。このことが、従来の水蒸気改質に使用される大量の水を、この発明では大幅に低減できる理由である。
また、従来の水蒸気改質による場合、炭化水素の周囲に大量の水蒸気が存在することで確かに熱化学反応は進行しやすくなり、炭素析出(コーキング)は防止できるものの、高温水蒸気を60%以上無駄に消費するために水素の生成が効率良く行われていないのが現状である。
これに対し、この発明では上記したように、水の体積流量VFw、液体の体積流量VFq、および水混合体の質量流量MFmを計測し、この計測結果を用いて、水と液体とのモル比が、水素ガス製造に最適なモル比となるように、水の流量を制御している。すなわち、この発明では、投入された水はそのすべてが水素に変換され、炭化水素の周囲には余分の水分子は存在せず、ガス生成を最高の効率下で行うことができる。
また、この発明では、上記したように、水の体積流量VFw等の計測結果を用いて、組成式CmHnで表わされる油の組成m、nを決定することができる。このため、油の種類に関係なく、水と油とのモル比が水素ガス製造に最適なモル比となるように、水の流量を制御することができ、したがって、ナフサ、ガソリン、灯油、軽油、A重油、B重油、C重油、原油(重質原油を含む)、重質油、植物油(藻油を含む)、動物油、廃油等のどのような油でも使用することができる。
次に、この発明の第3の実施形態を図4を用いて説明する。図4は本発明のガス製造装置の第3の実施形態を示す図である。図4において、上記の図1、図3と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
この第3の実施形態のガス製造装置1Cでは、第1の実施形態のガス製造装置1Aおよび第2の実施形態のガス製造装置1Bを並列に設けるととともに、ガス製造装置1Aのメタンガス製造部40と、ガス製造装置1Bの水素ガス製造部50との間に熱交換を行わせるように構成している。
すなわち、メタンガス製造部40では、その発熱反応により、反応管内のガス温度は1300〜1600℃まで温度が上昇する。一方、水素ガス製造部50では、その吸熱反応により、反応管内のガス温度は加熱がないと、温度が低下する。この実施形態では、メタンガス製造部40の高温のガスを水素ガス製造部50の熱交換部(図示省略)に導入し、水素ガス製造部50の反応管内のガス出口温度を所望の700±150℃まで上昇させている。また、水素ガス製造部50の400℃のガスをメタンガス製造部40の熱交換部(図示省略)に導入し、メタンガス製造部40の反応管内のガス出口温度を所望の300±150℃まで低下させている。
このように、この第3の実施形態では、ガス製造装置1Aのメタンガス製造部40と、ガス製造装置1Bの水素ガス製造部50との間で熱交換を行わせるように構成したので、反応管内での熱化学反応で生成した熱を有効に活用することができ、装置全体の熱効率を改善することができる。
上記の各実施形態において、水混合体はメタンガス製造、水素ガス製造の原料になるばかりでなく、各ガス製造部40,50の反応器を加熱するための燃料や、加熱器22,32の燃料にもなり得る。これは、水混合体が着火すると、生成したメタン、CO、水素の可燃性ガスが周囲の酸素と拡散燃焼を行うことによる。
また、製造したメタンガスや水素ガスは、メタンガス製造部や水素ガス製造部の燃料として使用可能である。
本プロセスの最大の特長は水がエネルギー原料として使用されていることである。そして、製造されたメタンや水素が燃焼あるいは燃料電池に使われた時に発生するH2Oはまた、原料H2Oとして使われることができ、この点で水は「再生可能自然エネルギー(Renewable Energy)」でもある。
油と水のエマルジョンを例にとると、上記の反応式(5)に示したように、以下のようになる。
mn+{(4m−n)/4}H2O→{(4m−n)/8}CO2+{(4m+n)/8}CH4・・・・・・(17)
このメタンが燃焼したときの反応式は、下記式(18)となる。
((4m+n)/8)CH4 +((4m+n)/4)O2→((4m+n)/8)CO2+((4m+n)/4)H2O・・・・・・(18)
生成したH2O(化学式(18))から、原料となるH2O(化学式(17))を差し引くと、
((4m+n)/4)H2O−((4m−n)/4)H2O=(n/2)H2Oとなり、水(H2O)に着目すると、再生どころか、n/2増加し、自然界の水が増加する方向になっている。
1A ガス製造装置
1B ガス製造装置
1C ガス製造装置
2 天ぷら廃油粒子
3 水粒子
4 炭酸カリウム
11 水タンク
12 ポンプ
13 流量計
14 流量制御弁
15 液体タンク
16 ポンプ
17 流量計
20 水混合体製造部
21 質量流量計
22 加熱器
23 脱硫器
30 水混合体製造部
31 質量流量計
32 加熱器
33 脱硫器
40 メタンガス製造部
41 冷却器
42 脱炭酸部
43 クーラー
44 加熱器
45 クーラー
50 水素ガス製造部
51 冷却器
52 変成器
53 クーラー
54 加熱器
100 制御部
Dc 流量制御弁の弁開度
MFm 水混合体の質量流量
MFq 液体の質量流量
MFw 水の質量流量
VFq 液体の体積流量
VFw 水の体積流量
VFwo 水の最適体積流量

Claims (3)

  1. ガスを製造するガス製造装置において、
    水タンクからポンプによって送出され、流量計及び流量制御弁を経由して供給された水と液体タンクからポンプによって送出され流量計を経由して供給された水以外の液体とを均一に混合するようにして水混合体を製造する水混合体製造部と、
    上記水混合体製造部で製造された水混合体が質量流量計を通過した後加熱器で加熱され脱硫器を経由して原料として供給されメタンガスを発生させるメタンガス製造部と、
    上記水混合体製造部で製造された水混合体が質量流量計を通過した後加熱器で加熱され脱硫器を経由して原料として供給され水素ガスを発生させる水素ガス製造部と、を備え、
    上記水以外の液体は、油、ジメチルエーテルの何れかであり、
    上記油は、ナフサ、ガソリン、灯油、軽油、A重油、B重油、C重油、原油(重質原油を含む)、重質油、動物油、廃油の少なくとも1つからなり、
    上記水は炭酸カリウム(K 2 CO 3 )を含有し、
    最大量のメタンガス及び水素ガスが製造されるための最適モル比となるように、上記水以外の液体に対する水の流量を制御する制御部を備え、
    上記制御部で最適モル比に制御された水と水以外の液体とが、上記水混合体製造部に供給され、
    上記水以外の液体が油の場合は、
    上記メタンガス製造部は、下記の熱化学反応式(1)でメタンガスを発生させ、
    mn+{(4m−n)/4}H2O→{(4m−n)/8}CO2+{(4m+n)/8}CH4+(177.1m−25.5n)(MJ/kmol)・・・(1)
    上記水以外の液体がジメチルエーテル(DME)の場合は、
    上記メタンガス製造部は、下記の熱化学反応式(2)でメタンガスを発生させる、
    26O+H2O→CO2+CH4+2H2+411.3(MJ/kmol)・・・(2)
    ことを特徴とするガス製造装置。
  2. 上記メタンガス製造部は、300±150℃の温度に設定された第1の反応器でメタンガスを発生させ、
    上記水素ガス製造部は、700±150℃の温度に設定された第2の反応器で水素ガスを発生させる、請求項1に記載のガス製造装置。
  3. 上記第1の反応器と第2の反応器とを接続し、第1の反応器で発生した熱を第2の反応器に供給して第2の反応器を700±150℃の温度に保持し、第2の反応器での吸熱化学反応で第1の反応器を冷却し第1の反応器を300±150℃の温度に保持する、請求項2に記載のガス製造装置。
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