一般的な発電プラントに用いられるガスタービンは、圧縮機と燃焼器とタービンと発電機とで構成され、圧縮機で高圧となった空気と熱交換器で高温となった燃料ガスとを燃焼器に送って燃焼させ、その燃焼ガス(熱ガス)によってタービンを駆動して発電機を運転する。
このようなガスタービン設備(ガスタービン発電プラント)では、燃焼器での燃焼温度が1500℃程度まで上昇し、内部で不安定燃焼による圧力変動や火炎位置変動が発生して局部的な応力集中や熱サイクル変動が発生し、亀裂が生じてしまうことがある。燃焼器に亀裂や破損が発生すると、燃焼器へ導入される空気量が計画からずれ、燃焼異常が発生して発電効率が低下したり、場合によっては破損片がタービンに入って翼を損傷してしまうという問題がある。そのため、早期にクラックとか、色々な異常を検知したいという要望がある。
こういった問題に対して従来では、燃焼器内に圧力変動検出器を設けたり、高温になる燃焼器内部に直接温度検出器を取り付ると短期間でダメになるため、タービンの最終翼付近や排気ダクトのところに温度検出器を複数設け、この各検出器の計測結果に基づいて燃焼器の燃焼異常を検知することが行われている。
しかしながらガスタービンは、プラント負荷や気温、湿度、気象条件などの環境条件、及び負荷状態などの種々のプラント運転条件によってその出力が変動し、正常な圧力・温度範囲がそれぞれの条件によって異なってくることから、正常と異常とを判別する閾値の設定が困難であり、厳しくすると過検知によって正常動作であるにもかかわらず異常と判断され、緩くすると異常を見逃すことになる。このように燃焼器の異常燃焼を正常と誤判定すると、燃焼器に亀裂等が生じたまま運転を継続することとなり、発電効率を低下させてしまうばかりでなく、場合によっては翼をも損傷させてしまうこととなる。
また、朝、晩に起動、停止を行うような場合、例えば起動に際しては、20分程度の間に0MWから250MWまで出力が上昇し、その間、温度や圧力は短時間の間に急激に上昇する。停止指令後の停止までの間も同様であるが、こういった起動、停止の際にも異常が発生することがあり、こういった場合も早期に異常を検知したいという要望があるが、このように急激に状態が変動している状態では、現在の状態が正常か異常かを判定するのは非常に困難である。
こういったガスタービンなどのプラントにおける異常監視については、例えば特許文献1に、排気室に温度検出器を設け、この温度検出器によって得られる排ガス流に直交する平面内の温度分布から、断面排気温度分布のパターンの特徴を求めて異常原因判定を行うガスタービン燃焼監視装置が提案されている。
また特許文献2には、燃焼器に表面温度分布を検出する温度検出器を設け、この温度検出器により得られた表面温度分布に基づいて燃焼器の異常原因判定を行うガスタービン燃焼器監視装置が提案されている。
さらに特許文献3には、ガスタービンの性能劣化や故障発生を高精度に検出するため、ガスタービン各部の運転データを検出し、その検出された運転データを標準化して所定時間にわたってサンプリングした後、そのサンプリングされたデータを移動平均処理して、そのデータに基づいてガスタービンの運転状態を診断するようにしたガスタービンの運転状態診断装置が示されている。
また特許文献4は、本願出願人の出願になる機器の異常監視装置及びガスタービンの異常監視装置及びガスタービン設備及び複合発電設備であるが、ガスタービンの異常燃焼や損傷によって最も影響の出る運転状態として、排ガス温度を検出すると共にこの排ガス温度に影響の高い因子としての発電機の出力を検出し、複数の温度センサが計測した排ガス温度の振幅を算出して、この振幅が所定のしきい値を超える異常な変動の発生頻度を出力するとともに、発生頻度が所定のしきい値を超えた場合に該当する燃焼器で異常燃焼や損傷が発生していると判断するようにしている。
また特許文献5には、ガスタービンに関するものではないが、機械・機器類の騒音弁別のように、信号の質・量が時間的に著しく変化する信号を弁別するため、信号から特徴量を抽出して事前に評価した特徴量との類似性から異常を識別する信号弁別装置が提案されている。
しかしながら特許文献1、2に示された監視装置は、排気室や燃焼器に設けた温度検出器によって得られる温度分布から温度分布パターンの特徴を求めているため、一つの燃焼器に多数の温度検出器が必要となる。一般的な発電プラントに用いられるガスタービンでは、1つのガスタービンに例えば16台の燃焼器が備えられるから、大量の温度検出器が必要となると共に設置上の問題もあり、設備コストが増加してしまうという問題がある。
また、特許文献3に示されたガスタービンの運転状態診断装置は、ガスタービン各部の運転データを標準化して所定時間にわたってサンプリングした後、そのサンプリングされたデータを移動平均処理しているが、例えこのように移動平均処理しても、前記した起動、停止時における異常を検知することは困難である。さらに特許文献4に示された装置も、異常が短時間の間に起こる場合は検知できるが、例えば長期にわたって少しずつ進行してゆくような異常の場合は検出が難しい。
また、特許文献5に示された信号弁別装置では、例えば異常騒音を故意に発生して特徴量をデータベース化するようなことは非常に困難であり、また、全ての異常パターンを持つなどということはできない上に、特徴量が一定値に留まるとは限らず、時間とともに変化するような信号においては利用することができない。
そのため本発明においては、多数の状態検出手段を用いずとも、ガスタービンの不安定燃焼による圧力変動や火炎位置変動に起因する、局部的な応力集中や熱サイクル変動に伴う亀裂などによる異常を未然に、かつ、過検知を行うことなく防止できるようにしたガスタービンにおける異常監視方法及び装置を提供することが課題である。
上記課題を解決するため本発明におけるガスタービンにおける異常監視方法は、
外気温度を含む環境条件の変動で出力が変動するガスタービンにおける、温度、圧力、燃料や燃焼用空気の流量の状態と、排出物の状態とを含む前記ガスタービンの状態を検出する状態検出手段からのデータを基に、前記ガスタービンの異常を監視するガスタービンにおける異常監視方法において、
前記ガスタービンの特定状態における前記状態検出手段の過去に蓄積した出力データを統計処理し、平均と分散あるいは標準偏差を求めると共に、前記出力データの母平均が存在する範囲を区間推定法で求め、該求めた範囲と前記分散あるいは標準偏差とから前記状態検出手段出力の正常範囲を算出し、前記状態検出手段出力が該正常範囲の値を逸脱したときに異常であると判定することを特徴とする。
また、このガスタービンにおける異常監視方法を実施するための装置は、
外気温度を含む環境条件の変動で出力が変動するガスタービンにおける、温度、圧力、燃料や燃焼用空気の流量の状態と、排出物の状態とを含む前記ガスタービンの状態を検出する状態検出手段を有し、該状態検出手段からのデータを基に、前記ガスタービンの異常を監視するガスタービンにおける異常監視装置において、
前記ガスタービンの特定状態における前記状態検出手段の過去に蓄積した出力データの平均と分散あるいは標準偏差を求め、前記出力データの母平均が存在する範囲を区間推定法で求める特徴量算出手段と、該特徴量算出手段の求めた範囲と前記分散あるいは標準偏差とから前記状態検出手段出力の正常範囲を算出し、該正常範囲と前記状態検出手段出力とを比較して、前記状態検出手段出力が前記正常範囲を逸脱したときに異常であると判定する健全性評価手段とを備えたことを特徴とする。
ガスタービンは、前記したように朝、晩における起動、停止を行うような場合、例えば20分程度の間に0MWから250MWまで出力が上昇し、データが刻々と変化して、異常による変動なのか出力上昇による変動なのかの判定が非常に難しい。そのため、ガスタービンの正常、異常の判定を一律に行うのではなく、例えば起動、停止のように急激な変化をしている状態においては過去の同じ状態の蓄積データを基に正常、異常の判定を行い、ガスタービンが整定状態となって、例えば気温変化などの環境条件変化によって緩やかに状態が変動する場合は、1時間から数時間前のデータと直近のデータとを比較して判定する、など、急激な変化状態と整定状態に近い緩やかな変化状態、負荷変動状態のいずれであるかを判定し、それによって状態検出手段出力の最適な数理統計処理の方法を選択することで、こういった急激な変化や緩やかな変化のそれぞれに対応した異常判定が可能となる。
従って、従来技術のように多数の温度検出器を用いることなく、朝、晩における起動、停止を行うような状態が急激に変化している場合でも、ガスタービンの不安定燃焼による圧力変動や火炎位置変動に起因する、局部的な応力集中や熱サイクル変動に伴う亀裂などによる異常を発見することができ、こういった異常に起因する事故を未然に防止できる、ガスタービンにおける異常監視方法及び装置を提供することができる。
そして、前記状態検出手段出力における直近の特定期間におけるデータのバラツキを算出し、該バラツキが予め定めた閾値Aより大きいとき、または前記バラツキが予め定めた閾値Aより小さく、前記状態検出手段出力における直近と隔たった区間におけるデータの平均値から現在値を引いた値が予め定めた閾値Bより大きいときは、前記ガスタービンにおける急激な変化状態、または負荷変動状態と判定し、前記バラツキが予め定めた閾値Aより小さく、かつ、前記状態検出手段出力における直近と隔たった区間におけるデータの平均値から現在値を引いた値が、予め定めた閾値Bより小さい場合は整定状態に近い緩やかな変化状態と判定する判断手段とを備えたことで、急激な変化状態か、整定状態かを容易に判定することができる。
さらに、前記異常監視装置は、前記ガスタービンの特定状態における前記状態検出手段の過去に蓄積した出力データの平均と分散あるいは標準偏差を求め、前記出力データの母平均が存在する範囲を区間推定法で求めると共に、前記状態検出手段の直近を含む2つ以上の最近の特定期間におけるそれぞれの出力の分布の平均と標準偏差とを求める特徴量算出手段と、該特徴量算出手段の求めた前記出力データの母平均が存在する範囲の上限と下限のそれぞれを中心に前記標準偏差を加えた正常範囲を逸脱したか否かの判定、及び、前記特徴量算出手段が算出した2つ以上の特定期間におけるそれぞれの出力の分布の平均と標準偏差とを算出し、それぞれの算出した平均もしくは標準偏差に統計的に有意な差がある場合に異常、差がない場合に正常と判定を行う健全性評価手段とを備えたことを特徴とする。
さらに、前記異常監視方法において、
前記状態検出手段出力における直近の特定期間におけるデータのバラツキを算出し、該バラツキが、予め定めた閾値Aより大きいとき、または前記バラツキが予め定めた閾値Aより小さく、前記状態検出手段出力における直近と隔たった区間におけるデータの平均から現在値を引いた値が、予め定めた閾値Bより大きいときは、前記ガスタービンの特定状態における前記状態検出手段の過去に蓄積した出力データを統計処理し、平均と分散あるいは標準偏差を求めると共に、前記出力データの母平均が存在する範囲を区間推定法で求め、該求めた範囲と前記分散あるいは標準偏差とから前記状態検出手段出力の正常範囲を算出して前記状態検出手段出力が該正常範囲の値を逸脱したときに異常であると判定し、
前記バラツキが予め定めた閾値Aより小さく、かつ、前記状態検出手段出力における直近と隔たった区間におけるデータの平均から現在値を引いた値が、予め定めた閾値Bより小さい場合は、前記状態検出手段の直近を含む2つ以上の最近の特定期間におけるそれぞれの出力の分布の平均と標準偏差とを用いて算出される検定統計量Tが予め定めた有意水準に基づいた閾値Cを越えている場合に異常であると判定することを特徴とする。
このように、直近の特定期間におけるデータのバラツキを算出し、該バラツキが、予め定めた閾値Aより大きいか小さいかにより、状態検出手段出力の正常範囲を算出するルーチンと、状態検出手段の直近を含む2つ以上の最近の特定期間におけるそれぞれの出力の分布の平均と標準偏差とを算出し、予め定めた有意水準に基づいた閾値と前記算出したそれぞれの期間における分布の平均と標準偏差とを比較するルーチンとに分けて異常を検出することにより、ガスタービンの状態に応じた異常検出を確実に行うことができる。
前記発明によれば、ガスタービンにおける例えば特定出力の時における圧力など、特定状態における前記状態検出手段の過去に蓄積した出力データを統計処理し、平均と分散あるいは標準偏差を求めると共に、前記出力データの母平均が存在する範囲を区間推定法で求め、それによって求めた範囲に前記平均と分散あるいは標準偏差とをさらに加えて正常範囲を算出し、その広い正常範囲の値を逸脱した場合のみ異常と判定することで、統計的にガスタービンプラントの正常、異常を判断するため判断基準が明確であり、それによって過検知を防ぐと共に、異常を正常と誤検知することも防止することができるガスタービンにおける異常監視方法を提供することができる。
その正常範囲は、
前記出力データの母平均が存在する範囲の上限と下限のそれぞれを中心に
前記標準偏差を加えた範囲を定め、該範囲の値を前記状態検出手段出力の正常値
とする。前記状態検出手段出力の正常範囲T
2は、μを平均、σを標準偏差、k(n)、mを自由度と信頼水準により決定される定数、
nをデータ点数としたとき、下記式で算出されるT
2の範囲の値を閾値として判断したりすることで、容易に正常、異常を判断することができる。
また、前記状態検出手段出力の正常範囲を少なくとも2つ以上設け、前記状態検出手段出力が、前記定めた正常範囲のうちの最も広く設定した範囲の値を逸脱したときは直ちに、最も広く設定した範囲より狭く設定した範囲の値を逸脱したときは、複数回逸脱が検出されたときに異常と判定するようにすることで、さらに誤検知を防止し、異常判定をより確実に行うことができる。
さらに、前記異常監視方法において、
前記状態検出手段の直近を含む2つ以上の最近の特定期間におけるそれぞれの出力の分布の平均と標準偏差とを算出し、それぞれ算出した平均もしくは標準偏差に統計的に有意な差がある場合に異常、差がない場合に正常と判定することを特徴とする。
また、前記異常監視装置において、
前記状態検出手段の直近を含む2つ以上の最近の特定期間におけるそれぞれの出力の分布の平均と標準偏差とを求める特徴量算出手段と、該特徴量算出手段が算出した2つ以上の特定期間におけるそれぞれの出力の分布の平均と標準偏差とを算出し、それぞれの算出した平均もしくは標準偏差に統計的に有意な差がある場合に異常、差がない場合に正常と判定する健全性評価手段とを備えたことを特徴とする。
このように、状態検出手段の直近を含む2つ以上の最近の特定期間におけるそれぞれの出力の分布の平均と標準偏差とを算出して比較し、その結果を、予め定めた有意水準に基づく閾値Cと比較して正常か異常かを判定することで、ガスタービンの例えば気温変化などに伴う緩やかな状態変化が、単に環境変化による変化か異常事態発生による変化かを判別することができ、それによって過検知を防ぎながら明確な判定基準による判定を行うことができ、異常を正常と誤検知することのないガスタービンにおける異常監視方法を提供することができる。
そして、前記状態検出手段の直近の特定期間出力における平均をμ
n、標準偏差をσ
n、データ点数をn
n、直近以前の特定期間における出力の1つの平均をμ
b、標準偏差をσ
b、データ点数をn
bとしたとき、下記式で算出される検定統計量Tが
閾値Cを越えている場合に異常であると判定することで、容易に正常、異常を判定することができる。
また、前記閾値Cを少なくとも2つ以上設け、前記状態検出手段出力の直近を含む2つ以上の最近の特定期間における算出した平均と標準偏差とを用いて算出される前記検定統計量Tが、前記閾値Cにおける高い値を超えた場合は直ちに、それ以外の閾値Cの場合は該閾値Cを複数回越えた場合に異常と判定することで、誤検知を防止し、異常判定をより確実に行うことができる。
さらに、前記状態検出手段出力のうち、振動の大きな出力に対してフィルタ処理を行い、前記平均と標準偏差を求めることにより、統計処理に載りにくい振動の大きな出力を容易に統計処理することができ、異常の検知能力をより高めることができる。
この手法は、前記状態検出手段出力のうち、振動の大きな出力であるガスタービンにおける圧力変動に適用することで、大きな効果を得ることができる。
さらに、前記状態検出手段出力のうち、異常の進展度合いに対応させて前記特定期間の長さを調整することも一種のフィルタ処理であり、異常の進展度合いが速い事象には処理対象期間を短くし、進展度合いが遅い事象に対しては処理対象期間を長くすること、異常の進展度合いが速い事象の場合には前記直近の特定期間を前記直近以前の特定期間に含ませ、進展度合いが遅い事象の場合には、前記直近の特定期間と前記直近以前の特定期間の間隔を時間的に離すことが有効な実施態様である。
また、前記異常監視方法において、
前記ガスタービンの特定状態における前記状態検出手段の過去に蓄積した出力データを統計処理し、平均と分散あるいは標準偏差を求めると共に、前記出力データの母平均が存在する範囲を区間推定法で求め、該求めた範囲と前記分散あるいは標準偏差とから前記状態検出手段出力の正常範囲を2つ以上算出すると共に、前記状態検出手段の直近を含む2つ以上の最近の特定期間におけるそれぞれの出力の分布の平均と標準偏差とを算出し、
前記状態検出手段出力が、最も広く設定した範囲の値を逸脱したとき、及び算出した前記状態検出手段の直近を含む2つ以上の最近の特定期間におけるそれぞれの出力の分布の平均と標準偏差とを用いて算出される検定統計量Tが、予め定めた有意水準に基づいて定めた複数の閾値Cにおける最も高い値を超えた場合は直ちに、または、前記最も広く設定した範囲より狭く設定した範囲の値を逸脱したときは複数回逸脱が検出されたとき、及び前記閾値Cにおける最も高い値より低い閾値Cの場合は該閾値Cを複数回越えた場合に、それぞれ異常と判定することを特徴とする。
そして、前記異常監視装置において、
前記ガスタービンの特定状態における前記状態検出手段の過去に蓄積した出力データの、平均と分散あるいは標準偏差と、区間推定法により前記出力データの母平均の存在する範囲、及び、前記状態検出手段の直近を含む2つ以上の最近の特定期間におけるそれぞれの出力の分布の平均と標準偏差とを求める特徴量算出手段と、
該特徴量算出手段の求めた前記出力データの母平均の存在する範囲と前記分散あるいは標準偏差とから前記状態検出手段出力の正常範囲を2つ以上算出し、該正常範囲の値と前記状態検出手段出力とを比較して、前記状態検出手段出力が最も広く設定した範囲の値を逸脱していることを検出するか、または、最も広く設定した範囲より狭く設定した範囲の値を逸脱したときは複数回逸脱したことの検出結果で、及び、前記特徴量算出手段が算出した2つ以上の最近の特定期間におけるそれぞれの出力の分布の平均と標準偏差とを用いて算出される前記検定統計量Tが予め定めた有意水準に基づいた複数の閾値Cにおける高い値を超えたことを検出するか、それ以外の閾値Cの場合は該閾値Cを複数回越えたことの検出結果で異常と判定する健全性総合評価手段とを備えたことを特徴とする。
このように、特徴量算出手段における、状態検出手段出力の正常範囲、及び閾値Cをそれぞれ少なくとも2つ以上設け、それによって、健全性総合評価手段における判定をそれぞれの正常範囲、閾値Cに対応させて行うことで、さらに誤検知を防止し、異常判定をより確実に行うことができる。
以上記載のごとく本発明になるガスタービンにおける異常監視方法及び装置は、従来技術のように多数の温度検出器を用いることなく、朝、晩における起動、停止を行うようなガスタービンの状態が急激に変化している場合や、気象条件などの変化に伴う緩やかな状態変化のいずれにおいても、局部的な応力集中や熱サイクル変動に伴う亀裂などによる異常を、過検知することなく発見することができ、こういった異常に起因する事故を未然に防止できる、ガスタービンにおける異常監視方法及び装置を提供することができる。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明になるガスタービンにおける異常監視装置の実施例1、実施例2に対応したブロック図、図2そのフロー図、図3はガスタービンにおけるプロセス量のトレンドの例で、(A)は正常時、(B)は異常時、(C)は少数データしか集められない場合の例、図4は実施例1の健全性判断の考え方の例を示した図、図14はガスタービンプラントの構成概略図である。
最初に図14に基づき、本発明を実施するガスタービンプラントの概略について簡単に説明する。
図14に示したガスタービン11は、圧縮機12と燃焼器13とタービン14等からなり、このタービン14の同軸上に出力センサ10を備えた発電機15が連結されている。圧縮機12には吸気通路16が連結され、この吸気通路16には吸入空気量を調整する入口案内翼17が設けられると共に、この入口案内翼17の開度を検出する開度センサ18が設けられている。また、吸気通路16には吸入空気の温度センサ19、圧力センサ20、流量センサ21が設けられている。
また、圧縮機12と燃焼器13とは圧縮空気供給通路22により連結されて、この圧縮空気供給通路22に圧縮空気の温度センサ23、圧力センサ24が設けられている。そして、燃焼器13とタービン14とは燃焼ガス通路25により連結され、圧縮空気供給通路22と燃焼ガス通路25とは燃焼器13を迂回するバイパス通路26により連結されて、このバイパス通路26には、燃焼器バイパス弁27が設けられると共に、この燃焼器バイパス弁27の開度を検出する開度センサ28が設けられている。
燃料通路29は、メイン燃料通路30とパイロット燃料通路31に分岐され、それぞれ燃焼器13に連結されており、メイン燃料通路30及びパイロット燃料通路31にはそれぞれ流量制御弁32、33が設けられている。そして、燃料通路29には供給燃料の温度センサ34が設けられ、メイン燃料通路30及びパイロット燃料通路31には、供給燃料の圧力と流量を監視する圧力センサ35、36と流量センサ37、38とが設けられている。
燃焼器13は、ガスタービン11の周方向に沿って複数設けられており、さらにタービン14には排ガス通路39が連結され、タービン14の排ガスが排ガス通路39から例えば図示していない排熱回収ボイラに送られて熱回収されるようになっている。また、排ガス通路39には、図示しない浄化装置をはじめ、排ガスの温度センサ40、NOxセンサ41、COセンサ42などが複数の燃焼器13のそれぞれに対応して設けられている。
さらに、燃焼器13及び燃焼ガス通路25の回りには冷却蒸気配管43が設置され、冷却蒸気配管43には、例えば、排熱回収ボイラからの蒸気が送られて、冷却蒸気により高温の燃焼ガスにさらされる燃焼器13及び燃焼ガス通路25が冷却される。そして冷却蒸気配管43の入口側及び出口側それぞれに、冷却蒸気の圧力センサ44、45、温度センサ46、47、流量センサ48、49が設けられている。
燃焼器13には、メイン燃料通路30とパイロット燃料通路31から燃料が、圧縮機12からは圧縮空気供給通路22を経由して圧縮空気が送り込まれて燃焼が行われ、内部温度は1600℃から1700℃くらいとなる。そして燃焼ガスは、燃焼ガス通路25からタービン14に入ってこのタービン14を回転させ、さらに発電機15を回転させて発電が行われる。タービン14を出た排ガスは、排ガス通路39から前記したように例えば図示していない排熱回収ボイラに送られ、熱回収される。
本実施形態のガスタービンの異常監視方法及び装置は、以上説明してきたガスタービン11における吸入空気の温度センサ19、圧力センサ20、流量センサ21、圧縮空気供給通路22に設けられた圧縮空気の温度センサ23、圧力センサ24、燃料通路29に設けられた供給燃料の温度センサ34、メイン燃料通路30及びパイロット燃料通路31に設けられた供給燃料の圧力と流量を監視する圧力センサ35、36と流量センサ37、38、排ガス通路39に設けられた排ガスの温度センサ40、NOxセンサ41、COセンサ42、冷却蒸気配管43の入口側及び出口側それぞれに設けられた、冷却蒸気の圧力センサ44、45、温度センサ46、47、流量センサ48、49、また図示されてはいないが、燃焼の度合いが不安定になったことを検知するため、燃焼器13内の圧力変動を計る圧力変動センサなどの状態検出手段出力を監視し、異常燃焼あるいは損傷を早期に、また、過検知することなく検出することを課題としたものである。
図1は本発明になるガスタービンの異常監視装置の実施例1、実施例2を表すブロック構成であり、図2は異常監視方法を説明するためのフロー図である。本発明になるガスタービン異常監視装置1は、上記したガスタービンプラント2の各所に設けられた温度計、圧力計、NOxセンサなどからの信号を取り込む入力手段3、入力されたデータを保存するデータベース4、データベース4に保存した過去のデータと現在のデータとからガスタービンプラント2の状態の特徴量を算出する特徴量算出手段5、特徴量算出手段5が算出した特徴量からガスタービンプラント2の運転状態を評価する健全性評価手段6と、健全性評価手段6が評価した評価データを外部に出力または表示する出力手段7とからなっている。
そして、この実施例1、2における特徴量算出手段5は、ガスタービンプラント2における前記状態検出手段たるセンサ類からの出力のうち、異常運転状態により影響の出る、図14におけるタービン14の最終翼付近や排気室の温度、NOx・CO濃度、燃焼器冷却系統の温度、圧力、流量、圧縮機出口付近の温度、圧力、燃料系統の温度、圧力、流量、燃焼器内部の圧力あるいは圧力変動等の統計量を算出して特徴量とする。また、健全性評価手段6は、特徴量算出手段5が算出した統計量をもとに、ガスタービンプラント2に異常が生じていないかを判定するものである。
図3はガスタービンにおけるプロセス量のトレンドの例で、(A)は正常時、(B)は異常時、(C)は少数データしか集められない場合の例である。まず、図3(A)、(B)において横軸は時間、縦軸はタービン14の排ガス通路39に設けられた温度センサ出力の平均に対する温度差であり、例えば16本ある燃焼器13のそれぞれに設けられた温度計出力の平均値から、各温度計の出力を引いた値を示している。
すなわち、図3(A)における例えば16時の約13という値は、16本の温度計出力の平均値より13℃高いということを示している。また、このグラフでは温度が非常に振動しているように見えるが、横軸が2時間の目盛であるため圧縮されて振動しているように見えるだけで、時間軸を延ばすと振動的なものではない。また図3(C)は、横軸がガスタービン14の負荷(単位MW)、縦軸が燃焼器13における燃焼振動(単位kPa)である。
通常ガスタービン14は、整定状態にあるときは図3(A)のように温度計はほぼ一定の温度を保ち、気温の変化などの環境条件の変化に応じて緩やかな変化をしている。このような状態から、例えば燃焼器13の一つに亀裂が入って空気のバランスが代わったりすると、燃焼後の燃焼ガスに余分に空気が入るので温度が下がったり、或いは燃料が余分に出るような現象が起こって温度が上がったりする。そうするとこの異常が温度計によって検出されて、例えば図3(B)における16時に示したように温度が1℃上昇したというような現象として出てくる。なお、この1℃というのはあくまでも一例であり、5℃、10℃ということも当然ある。
このような場合、例えば5℃、10℃の変化があれば異常と診断することは容易だが、1℃の変化を異常と判定するかどうかは微妙なところであり、閾値を厳しくすると、当然このような微小な変動も異常と判定される。そのため、異常と判断された場合はガスタービンプラントを停止して検査する必要があり、その結果、異常でなければガスタービンプラントを停止していた間は損失となる。
また、図3(C)に例えば60に示した枠で囲った部分のように、ガスタービンが整定状態である場合は多数のデータが蓄積できるが、61で示した枠で囲った部分のように、負荷整定のない負荷帯や、前記した朝、晩の起動、停止の際の負荷上昇、下降中においては、このような燃焼振動のデータは非常に少数しか集まらない。そのため、このようにデータが少ししか集まらない負荷帯における異常判定は非常に困難である。
そのため本発明における実施例1では、負荷整定のない負荷帯や、前記した朝、晩の起動、停止の際の負荷上昇、下降中の例えば10分とか20分という特定期間における、温度計出力や圧力計などの状態検出手段出力データのうち、例えば特定出力値に対する燃焼振動値などの過去に蓄積したデータの平均と分散、あるいは標準偏差を求めると共に、これら平均と分散、あるいは標準偏差の母平均が存在する範囲を区間推定法で求め、例えばその範囲の上限と下限のそれぞれを中心にさらに前記平均と分散、あるいは標準偏差の範囲を演算し、状態検出手段出力の正常範囲とするようにしたものである。
これを示したのが図4である。この図4に65で示した中心の正規分布は、上記したように例えば図3(C)における61で囲った部分の負荷整定のない負荷帯や、朝、晩の起動、停止の際の負荷上昇、下降中の特定期間における特定出力値に対する燃焼振動値などの過去に蓄積したデータから求めたものであり、μを平均、k(n)を自由度と信頼水準により決定される定数、σを標準偏差、nをデータ点数とすると、26で示した例えば区間T
1は平均の推定区間であり、これは、下記(1)式で表される。
そこで、図3(C)の61で示した枠で囲った部分のように、データが少ししか集まらない負荷帯では、この(1)式で算出される正規分布65における平均が、推定した区間T
1の上限と下限位置までずれていることがあると考え、それぞれの位置を中心として64と66に示したように正規分布を考えたものである。この場合の例えば燃焼振動の推定区間T
2は、mを自由度と信頼水準により決定される定数とすると下記(2)式で算出できる。
このようにすることで、過去に蓄積されたデータによって正常と判断できる範囲を正規分布の4σ、5σをもとに広く定めることができるから、正常、異常を判断するための判断基準が明確であり、例え微小変動であってもそれが正常範囲であるか異常であるかを正確に判定することができる。
次に、図1、図2を用いて本発明の実施例1を説明すると、図2におけるステップS1で処理がスタートすると、ステップS2において前記したように、図1のガスタービンプラント2の各所に設けられた温度計、圧力計、NOxセンサなどの状態検出手段からの信号を入力手段3で取り込み、ステップS3でデータベース4にこれを蓄積する。そしてこの蓄積されたデータを基に、ステップS4において特徴量算出手段5は、例えば前記したように、図4(C)における61で囲った部分の負荷整定のない負荷帯や、朝、晩の起動、停止の際の負荷上昇、下降中の過去に蓄積されたMWと対応する燃焼振動などの出力データを統計処理し、平均と分散、あるいは標準偏差を求める。
また、前記式(1)に基づいて、前記求めた平均と分散、あるいは標準偏差が存在する範囲を区間推定法で求め、さらに式(2)により、求めた範囲と前記平均と分散、あるいは標準偏差とから状態検出手段出力の正常範囲を算出する。そして、この正常範囲と算出された範囲の値を閾値として図1の健全性評価手段6に送り、健全性評価手段6は、ステップS5においてガスタービンプラント2から入力手段3、特徴量算出手段5を介して送られてきたデータ状態検出手段からの信号が、正常範囲か異常であるかを判断し、ステップS6で結果を出力手段7に送って出力、または表示する。
そしてステップS2へ戻って同様な処理を繰り返すわけであるが、このようにすることにより、負荷整定のない負荷帯や、朝、晩の起動、停止の際の負荷上昇、下降中などのように、データが少量しか集まらない、例え状態が急激に変化する場合においても正常、異常を正確に判断することができ、過検知も防止できる。
以上が本発明になるガスタービンにおける異常監視方法及び装置の実施例1であるが、次に図5、図6を用いて本発明になるガスタービンにおける異常監視装置の実施例2を説明する。なお図5は、前記図14に示したガスタービン11における燃焼器13の図示していない内圧計で測定した燃焼振動のトレンドであり、横軸は時間、縦軸は燃焼振動(単位kPa)である。また図6は、特徴量算出と健全性評価の処理フローの例である。
以上説明してきた実施例1の異常監視方法及び装置は、前記したように負荷整定のない負荷帯や、朝、晩の起動、停止の際の負荷上昇、下降中などのように、データが少量しか集まらない、状態が急激に変化する場合の例であったが、ガスタービンプラント2も、例えば日中などの気温や天候状態、負荷状態が安定した時間帯では前記図3(A)に示したように、温度、圧力、流量、排出物などの状態検出手段出力は安定し、かつ、気温の緩やかな変動により、これら状態検出手段出力も緩やかに変化する。
しかもこの変化は、その日の天候、負荷状態などによっても変化し、特定の時間にいつも同じ状態が再現されるというわけではない。そのため、こういった場合はある時間と別の時間のデータを比較しても、状態検出手段出力や負荷が緩やかに変動していることが多く、さらにきれつなどの異常は、その発生によって状態検出手段出力や負荷が急激に変動した場合は容易に発見できるが、少しずつ進展する場合があり、このような場合は気温の緩やかな変動によって状態が変化しているのか、きれつなどの進展の遅い異常によって変化しているかを判別するのは難しい。
そのためこの実施例2では、Aという分布とBという分布が同等と見て良いかどうか、という統計における検定(2群の平均値の差の検定で、例えばWelchの方法によるt検定)を使い、前記状態検出手段の直近を含む2つ以上の最近の特定期間におけるそれぞれの出力の分布の平均値と標準偏差とを算出し、その算出した平均値と標準偏差とを比較して、その比較結果が予め定めた有意水準に基づいた閾値Cを越えているか否かによって正常か異常かを判定するようにしたものである。
すなわち、前記図3(B)や、図5のように状態検出手段出力が変動し、例えば図5において今の時間が71で示した6時10分だとした場合、それ以前の70で示した30分間における時間平均値と、さらに69で示した5時40分より以前の30分間における時間平均値とを算出し、それぞれの時間平均値に統計的に有意な差がある場合に異常、差がない場合を正常とするものである。
そのため、状態検出手段の直近の特定期間(例えば図5における70で示した期間)出力における平均をμ
n、標準偏差をσ
n、データ点数をn
n、直近以前の特定期間(例えば図5における69で示した期間)における出力の平均をμ
b、標準偏差をσ
b、データ点数をn
bとしたとき、下記式で算出される検定統計量Tが、予め定めた有意水準に基づいた閾値を越えている場合に異常であると判定する。
これを図6のフロー図に基づいて説明するが、図6は、図2におけるステップS4の特徴量算出とステップS5の健全性評価の詳細処理フローであり、その他の処理は前記実施例1において説明したのと同様なので説明を省略する。
図6においてステップS11で処理がスタートすると、最初に図1における特徴量算出手段5は、ステップS12で、直近の期間、例えば図5に70で示した期間における時間平均値を統計量として算出する。そして次のステップS13で健全性評価手段6は、予め特徴量算出手段5が、例えば前記図5における最初の期間69における統計量として算出した時間平均値と、今算出した70で示した期間における時間平均値とを用い、前記式(3)に基づいて検定量Tを算出する。
そして次のステップS14で、予め定めた有意水準とWelchの方法で求められる自由度に基づき、t分布表より閾値k(n)を算出する。そして次のステップS15で、図1における健全性評価手段6は、算出された検定量Tが閾値k(n)より小さいか否か(すなわち予め定めた閾値より小さいか否か)を判断し、大きい場合は異常としてステップS16へ、小さい場合はステップS17に進んで正常であると判断する。
そのため図1における出力手段7は、この健全性評価手段6が判断した結果を出力或いは表示し、次の時刻の処理、すなわちステップS2へ戻って同様な処理を繰り返すわけであるが、このようにすることにより、負荷が整定し、状態検出手段からのデータや負荷が緩やかに変化する場合でも、正常、異常を正確に判断することができ、過検知が防止できる。
以上が本発明になるガスタービンにおける異常監視方法及び装置の実施例2であるが、以上の説明では、負荷整定のない負荷帯や、朝、晩の起動、停止の際の負荷上昇、下降中などのように、データが少量しか集まらない、状態が急激に変化する場合は前記実施例1を、温度、圧力、流量、排出物などの状態検出手段出力が安定する整定状態で、状態検出手段出力や負荷も緩やかに変化する場合は前期実施例2を用いるよう説明してきたが、このように明確に分ける必要はなく、必要に応じて使い分けることも可能である。
また、これら実施例1と実施例2を使い分ける場合、例えば朝、晩の起動、停止の際や日中の整定状態など、時間的に或る程度状態がわかっている場合はそれぞれの時間帯に応じて使い分けをすることが可能であるが、例え同じ時間帯であっても、天候や負荷の急変等があると日中であっても急激な変化が生じる場合がある。そのため本発明の実施例3においては、こういった事態に対処できるよう、図1の特徴量算出手段5に、ガスタービンプラント2の負荷変動状態を検出する負荷変動判定(検知ロジック)の処理を行わせる機能も持たせるようにした。
それが図7(A)のフロー図であり、ステップS20で処理がスタートすると、まずステップS21で例えば過去10分間の統計量として、状態検出手段出力のばらつきX1が特徴量算出手段5で計算される。そしてこのばらつきX1が次のステップS22で、図7(B)に設定値として示した表に記された閾値α(一例として2MW)と比較され、この閾値αより大きい場合は変動ありとしてステップS25へ、小さい場合はステップS23へ進む。
ステップS23へ進んだ場合はこのステップS23で、5分前から10分前までのデータの平均値X2が計算され、その値を用いてステップS24で(X2−現在値)が算出されてその絶対値がとられ、図7(B)に設定値として示した表に記された閾値β(一例として4MW)と比較される。そしてこの閾値βより大きい場合は変動ありとしてステップS25へ、小さい場合はステップS26へ進む。なお、この図7(B)の値は一例であり、状況に応じて設定することはいうまでもない。
ステップS22とステップS24からステップS25へ進んだ場合、このステップS25で、負荷整定のない負荷帯や、朝、晩の起動、停止の際の負荷上昇、下降中などのように、データが少量しか集まらない、状態が急激に変化する変動状態であるとして前記した実施例1の処理が行われ、ステップS21に戻る。
一方ステップS24からステップS26へ進んだ場合は、負荷整定、或いは状態検出手段からのデータや負荷が緩やかに変化する場合であるとして、前記実施例2が実施される。そして、前記実施例1を実施する場合と同様、ステップS21へ進んで処理が続行される。
このようにして負荷変動判定(検知ロジック)の処理をおこない、それに続けて異常か否かの判定を行うことで、前記したように例え日中に天候や負荷の急変等があってガスタービン14の状態が変化しても、その状態に最適な異常監視動作を行うことができ、異常を早期に発見して損害を最小限にすることができる、ガスタービンにおける異常監視方法及び装置を提供することができる。
図8は、本発明になるガスタービンにおける異常監視方法及び装置の実施例4のブロック図、図9はガスタービンプラント2におけるプロセス量のトレンドで、(A)は実施例4による処理を実施する前の状態を、(B)は実施例4の方法により処理した、それぞれ異常時の例である。
ガスタービンプラント2に設けられた、前記した各種の状態検知手段たるセンサの出力は、例えば温度の場合は温度計自身の特性もあって、時定数が長くて短時間の間に出力データが大きくバラツクということはないが、内部の圧力変動は、燃料や圧縮空気の供給などの関係で出力値が大きく上下することがあり、平均とか分散を求める場合に扱いにくいデータとなる。
そのためこの実施例4においては、状態検知手段たるセンサの出力値が大きく上下する、例えば前記した内部の圧力変動などの出力データを、統計処理ができるようにローパスフィルタやソフト的なフィルタ処理を行うようにしたものである。
このフィルタ処理の具体例としては、例えば前記したように、内部の圧力変動などの状態検知手段たるセンサの出力値に、ローパスフィルタをかけてなまらせる、一次遅れ処理や移動平均処理、指数平滑化処理などのソフト的なフィルタ処理を行う、等の方法がある。また、前記した実施例1では、例えば異常と判断された場合に、その異常の進展速度が速い事象は処理対象期間を短くし、進展速度が遅い事象に対しては期間を長くすることによって検知性能を向上する方法もある。
また、前記した実施例2の場合であれば、異常の進展速度が速い事象であれば、例えば現在を含む過去10分と現在を含む過去20分という具合に2つの期間の内の1つを他の期間の一部とし、早期検知性能を向上したり、進展速度が遅い事象であれば、例えば現在を含む10分と例えば1時間前から50分前までの10分という具合に2つの期間を時間的に離し、検知対象とする異常の進展パターンによって期間を適切に設定することで、検知性能を向上させる方法などがある。
このようにしてフィルタ処理を行った一例が図9に示したトレンドであり、この図9においてそれぞれ横軸は時間、縦軸は燃焼振動(単位kPa)であり、(A)ではそのデータが非常にばらついているため、73で示した枠で囲った整定状態に対して6時付近以後の74で示した枠で囲った状態は振動値がわずかに上昇して異常事態が起こっているが、この(A)のグラフからはそれが明確ではない。
それに対し、状態検知手段たるセンサの出力値にソフト的なフィルタ処理を行った(B)のトレンドでは、75で示した枠で囲った整定状態に対して6時付近以後の76で示した枠で囲った状態は振動値がわずかに上昇しているのが明確であり、異常事態が起こっていることが明確に読みとれる。
図8は、このような処理を行わせる本発明になるガスタービンにおける異常監視装置のブロック図であり、前記したフィルタ処理は特徴量算出手段5で行い、このフィルタ処理を実施するか否か、また、どのようなフィルタ処理を実施したらよいかを、データベース4を介して送られてくる状態検知手段たるセンサの出力値を参照し、特徴量評価法決定手段8で行うようにしたものである。
すなわち、ガスタービンプラント2の各所に設けられた温度計、圧力計、NOxセンサなどの状態検出手段からの信号を入力手段3で取り込み、データベース4に蓄積すると共に特徴量算出手段5、特徴量評価法決定手段8に送り、この特徴量評価法決定手段8によってこの送られてきた出力データが振動的なものであるかどうかをまず判断する。そして送られてきたデータが振動的なものでない場合は、特徴量評価法決定手段8は送られてきた出力データが振動的ではない旨特徴量算出手段5に通知し、そのまま前記した実施例1または実施例2の統計処理を行うよう指示する。
一方、送られてきたデータが振動的である場合は、特徴量評価法決定手段8はその振動内容を解析し、前記したローパスフィルタをかけてなまらせるなど、ソフト的なフィルタ処理におけるどの方法を実施するのがよいかを判断し、また、異常が見いだされた場合は、前記した実施例1または実施例2のどちらの方法で異常を判断したのか判別し、その異常の進展度合いに応じ、前記したように実施例1の場合は、異常の進展速度が速い事象には処理対象期間を短くし、遅い事象に対しては期間を長くするよう特徴量算出手段5に指示する。
また、実施例2の場合であれば、異常の進展速度が速い事象では現在を含む過去10分と現在を含む過去20分という具合に2つの期間の内の1つを他の期間の一部とし、遅い事象であれば、例えば現在を含む10分と例えば1時間前から50分前までの10分という具合に2つの期間を時間的に離して特徴量の統計処理を実施するよう特徴量算出手段5に指示する。
そのため特徴量算出手段5は、この指示に従い、負荷整定のない負荷帯や、朝、晩の起動、停止の際の負荷上昇、下降中などのように、状態が急激に変化する場合は前記実施例1の、逆に整定状態の場合は前記実施例2の方法により特徴量を算出し、健全性評価手段6は、特徴量算出手段5を介して送られてきたデータ状態検出手段からの信号が、正常範囲か異常であるかを判断して結果を出力手段7に送って出力、または表示する。
このようにすることにより、例え出力値が大きく上下して平均とか分散などの統計量を求める場合に扱いにくいデータであっても、容易に統計処理が実施できて前記した実施例1乃至3の処理を確実に行えるようになる。
なお、以上説明してきた実施例では、それぞれ単独でガスタービンプラントの異常を検出する場合を例に説明してきたが、以上説明してきた各実施例を組み合わせ、いわゆる多数決の方法により異常を判定するようにすると、例えばガスタービンの状態が急激に変化しているのか緩やかに変化しているのかが判然としないような場合でも有効な異常判定ができる。
その場合の例を実施例5として示したのが図10のブロック図であり、図11はその場合の健全性判断の考え方の例を示した表、図12は健全性判断の一例である。
この実施例5においては、以上説明してきた実施例1乃至4の手法のそれぞれを用いて特徴量算出手段5が処理した統計量を用いると共に、さらに、例えば前記した実施例1の方法においては正常と判断する範囲を少なくとも2つ以上算出し、また、前記実施例2の方法においては閾値を少なくとも2つ以上設け、それによって、例えば実施例1の方法においては、状態検出手段出力が定めた正常範囲のうちの最も広く設定した範囲の値を逸脱したときは直ちに、最も広く設定した範囲より狭く設定した範囲の値を逸脱したときは、複数回逸脱が検出されたときに異常と判定し、また、実施例2の方法では、状態検出手段出力の直近を含む2つ以上の最近の特定期間における算出した平均値と標準偏差との比較結果が、前記閾値における高い値を超えた場合は直ちに、それ以外の閾値の場合は該閾値を複数回越えた場合に異常と判定するようにしたり、さらに、実施例1と実施例2の両方で異常と判定された場合のみ異常とする等の判定を行うものである。
この後者の例を示したのが図11であり、この表における最上段は異常監視方法とその総合評価を示していて、例えば手法1は、例えば単純に状態検出手段出力を統計処理して3σの範囲を定め、その範囲にあるか否かで正常か異常かを判断するなどの手法とし、例えば手法2は前記実施例1の場合を、手法3は例えば前記実施例2の場合とする。
そして、ケース1では例えば手法1から手法3までの全てで「正常」と判断されたためこの場合は総合評価で「正常」と評価し、ケース2の場合は手法1が「注意」ではあるが手法2と3は「正常」であるため総合評価は「正常」であると判断し、ケース3では手法3が「正常」ではあるが手法1と2が「注意」であるため「異常」と判断し、ケース4では、手法2と3が「正常」であるが手法1が「異常」であるため「異常」と判断した例である。
このような考え方に従がい、ガスタービンにおける異常監視を行うようにしたのが図10に示したブロック図である。この図10において1乃至8の番号を付したブロックは、ブロック6を除いて前記実施例4として示した図8のブロック図と同様であり、ブロック9は、ブロック6の代わりに設けたブロックで、前記した実施例1の方法においては例えば特徴量算出手段5で正常と判断する範囲を少なくとも2つ以上算出し、また、前記実施例2の方法においては閾値を少なくとも2つ以上設け、それによって、例えば実施例1の方法においては、定めた正常範囲のうちの最も広く設定した範囲の値を状態検出手段出力が逸脱したときは直ちに、最も広く設定した範囲より狭く設定した範囲の値を逸脱したときは、複数回逸脱が検出されたときに異常と判定し、また、実施例2の方法では、状態検出手段出力の直近を含む2つ以上の最近の特定期間における算出した平均値と標準偏差との比較結果が、前記閾値における高い値を超えた場合は直ちに、それ以外の閾値の場合は該閾値を複数回越えた場合に異常と判定するようにしたり、さらに、図11に示した多数決処理を行う、健全性総合評価手段である。
この図10において、前記実施例1乃至4と同様、ガスタービンプラント2の各所に設けられた温度計、圧力計、NOxセンサなどの状態検出手段からの信号は、入力手段3で取り込まれてデータベース4に蓄積されると共に特徴量算出手段5、特徴量評価法決定手段8に送られる。そして、この特徴量評価法決定手段8によって、前記したように出力データが振動的なものであるかどうかが判断され、その判断に応じて特徴量算出手段5によってそのまま前記した実施例1または実施例2の統計処理を行なったり、選択されたフィルタ処理を施した上で前記した実施例1または実施例2の統計処理が行われる。
このとき特徴量算出手段5は、前記した実施例1の方法においては例えば式(2)における自由度と信頼水準により決定される定数kやmの値を、信頼水準を変えて正常と判断する範囲を少なくとも2つ以上算出し、また、前記実施例2の方法においては、状態検出手段の直近の特定期間の間隔や、直近以前の特定期間の間隔を変えて平均μn、標準偏差σn、データ点数nn、平均μb、標準偏差σb、データ点数nbを変化させたり、有意水準を変えて閾値を少なくとも2つ以上設けるよう演算を行う。
そのため健全性総合表手段9は、例えば実施例1の方法においては、定めた正常範囲のうちの最も広く設定した範囲の値を状態検出手段出力が逸脱したときは直ちに、最も広く設定した範囲より狭く設定した範囲の値を逸脱したときは、複数回逸脱が検出されたときに異常と判定し、また、実施例2の方法では、状態検出手段出力の直近を含む2つ以上の最近の特定期間における算出した平均値と標準偏差との比較結果が、前記閾値における高い値を超えた場合は直ちに、それ以外の閾値の場合は該閾値を複数回越えた場合に異常と判定する。
また、前記図11で説明したように、例えば手法1が単純に状態検出手段出力を統計処理して3σの範囲を定め、その範囲にあるか否かで正常か異常かを判断するなどの手法、手法2が前記実施例1、手法3が前記実施例2とした場合、それぞれの手法による判断を、例えば手法1では3σの範囲を1回越えた場合は「注意」、複数回越えた場合を「異常」とし、また、実施例1(手法2)において、定めた正常範囲のうちの最も広く設定した範囲の値を状態検出手段出力が逸脱したときは「異常」とし、最も広く設定した範囲より狭く設定した範囲の値を1回逸脱したときに「注意」、複数回逸脱が検出されたときに「異常」と判定し、さらに、実施例2(手法3)では、状態検出手段出力の直近を含む2つ以上の最近の特定期間における算出した平均値と標準偏差との比較結果が、前記閾値における高い値を超えた場合は「異常」とし、それ以外の閾値の場合は該閾値を1回越えた場合に「注意」、複数回越えた場合に「異常」と判定することによって、それぞれの手法から「注意」または「異常」が2つ以上出た場合に「異常」と判定し、1つだけ出た場合は監視を続ける、という具合にする。
このように、複数の方法で判定された結果で最終的な判断を行うことにより、例え1つの手法で誤検知があっても他の手法が正常と判断した場合、さらに詳細に調べるなどの方法を取ることができ、過検知を無くして、正確に正常、異常を判定できるガスタービンにおける異常監視方法及び装置を提供することができる。
図12は、以上述べてきたような方法で異常を監視する方法の具体例である。図中100、102内部におけるBPTは温度計出力データで、燃焼振動データは圧力変動センサ出力データである。これら温度計や圧力変動センサは、図14に示した燃焼器13が例えば16本ある場合、温度計が16本、圧力変動センサも燃焼器13毎に付いているので16本あり、少なくとも32本のセンサがある。
また、101は、前記した他の方法による異常監視方法を手法1(101、103において手法(1)と記載)、前記本発明の実施例1を手法2(101、103において手法(2)と記載)、実施例2を手法3(101、103において手法(3)と記載)、及びさらに他の手法を手法4(101、103において手法(4)と記載)とした場合、それぞれの手法で正常と判断する範囲を少なくとも2つ以上算出し、101はそのうち、例えば実施例1(この例では手法2)においては、定めた正常範囲のうちの最も広く設定した範囲より狭く設定した範囲の値、また、実施例2(手法3)では、状態検出手段出力の直近を含む2つ以上の最近の特定期間における算出した平均値と標準偏差との比較結果が、閾値における最も高い値以外を越えた場合など、複数回「異常」と判定された場合に「異常」と判定するよう判定基準が緩い場合であり、103は判定基準を厳しくして1回「異常」と判定されたら「異常」と出力する場合である。
そして111から114、及び147から150の#NΔPと記したのは、16本ある圧力変動センサのうちのN番目の圧力変動センサ出力の値を判定する手法1乃至4を示し、115から126までの#N+2、3、4BPTは、16本ある温度計のうちのN番目から+2した温度計、+3した温度計、+4した温度計の値を判定する手法1乃至4を示し、151から154までの#N+2〜#N+4BPTは、16本ある温度計のうちのN番目から+2から+4した温度計の値を判定する手法1乃至4を示したものである。
また、127、130、133、136、144、145、146、155は、接続した例えば101からの115から126出力のうち、どれか1つの手法で「異常」が出たら出力するオア回路に相当し、128、129、131、132、134、135、141、142、143は、どれか2つの手法で「異常」が出たときに出力する例えばアンド回路に相当する。
141から145のブロックは、それぞれ右横に説明を記したように、141では前記した日中などの緩やかに出力が変動する場合の検知であり、燃焼振動の値が111、112の2つの手法で異常と検知された場合に「異常」と出力する。また142のブロックは、朝晩の起動、停止を含む急激に状態が変動する場合の検知であり、燃焼振動の値が112から114の3つの手法のうちの2つで異常と検知された場合に「異常」と出力する。さらに143のブロックでは、燃焼振動の値が111から114のいずれか1つの手法で異常検知し、かつ、燃焼器13に相応する3箇所の温度計のいずれか1つの手法で異常と検知された場合に「異常」と出力する。
144のブロックは、前記した日中などの緩やかに出力が変動する場合の検知であり、温度計の値が手法1から4のうちの2つの手法で異常と検知された場合に「異常」と出力する。また145のブロックは、朝晩の起動、停止を含む急激に状態が変動する場合の検知であり、温度計の値が手法1から4のうちの2つの手法で異常と検知された場合に「異常」と出力する。
そして146のブロックは、これら141から145からの出力のうち、1つから「異常」が出力されたら「異常警報」を出力し、155のブロックは、147から154のどれか1つで「異常」と判断されたら、「異常警報」を出力する。
以上の説明からわかるとおり、このように異常監視方法及び装置を構成することで、146のブロックからは異常検知の閾値を緩めに設定したそれぞれの手法からの判定結果を、多数決処理によって複数の手法で「異常」を検知したときに「異常警報」が出力され、155のブロックからは異常検知の閾値を厳しく設定したそれぞれの手法のうちの1つから「異常」が出力されたときに「異常警報」が出力されるから、それぞれの場合に対応して正常、異常を的確に判断でき、過検知を無くしたガスタービンにおける異常監視方法及び装置を提供することができる。
なお、以上の説明では、手法を4つの場合を例に説明してきたが、さらに多数の手法を用いることができる場合は手法の数を増やしても良い。
また、以上の説明では、ガスタービンプラントと異常監視装置が同一位置、またはすぐ近くにある場合を想定して説明してきたが、こういったプラントが遠隔地にあり、異常監視装置をプラントと離れた位置に設置したいという要望もある。
この場合の例が図13に示した構成である。すなわち、この図13に示したガスタービンプラント2は例えば遠隔地に設置されていて、ガスタービンプラント2の内部に取り付けられた温度計、圧力計、NOxセンサなどの状態検出手段たるセンサからの信号を取得する入力手段3と、取得したデータを異常監視装置82に送るための通信手段83とで構成される、データ送信手段81が備えられている。
異常監視装置82は、通信手段83から送られてくるデータを受信する通信手段84と、以上説明してきた実施例1乃至5と同じ、データベース4、特徴量算出手段5、特徴量評価法決定手段8、健全性総合評価手段9、出力手段7等で構成されている。なお、通信手段83、84は、一般的な無線通信手段やインターネットを用いた通信手段、WAN等を用いたものなど、どのような形態のものであっても良い。
この図13において、前記実施例1乃至5と同様、ガスタービンプラント2の各所に設けられた温度計、圧力計、NOxセンサなどの状態検出手段からの信号は入力手段3で取り込まれ、通信手段83で異常監視装置82に送られてその通信手段84で受信される。そしてデータベース4に蓄積されると共に、特徴量算出手段5、特徴量評価法決定手段8に送られる。
この特徴量評価法決定手段8では、前記したように出力データが振動的なものであるかどうかが判断され、その判断に応じて特徴量算出手段5によってそのまま前記した実施例1または実施例2の統計処理を行なったり、選択されたフィルタ処理を施した上で前記した実施例1または実施例2の統計処理が行われる。
このとき特徴量算出手段5は、前記した実施例1の方法においては例えば式(2)における自由度と信頼水準により決定される定数kやmの値を、信頼水準を変えて正常と判断する範囲を少なくとも2つ以上算出し、また、前記実施例2の方法においては、状態検出手段の直近の特定期間の間隔や、直近以前の特定期間の間隔を変えて平均μn、標準偏差σn、データ点数nn、平均μb、標準偏差σb、データ点数nbを変化させたり、有意水準を変えて閾値を少なくとも2つ以上設けるよう演算を行う。
そのため健全性総合表手段9は、前記したように定めた正常範囲のうちの最も広く設定した範囲の値を状態検出手段出力が逸脱したときは直ちに、最も広く設定した範囲より狭く設定した範囲の値を逸脱したときは、複数回逸脱が検出されたときに異常と判定したり、状態検出手段出力の直近を含む2つ以上の最近の特定期間における算出した平均値と標準偏差との比較結果が、前記閾値における高い値を超えた場合は直ちに、それ以外の閾値の場合は該閾値を複数回越えた場合に異常と判定する。
また、前記図11、図12で説明したように、複数の手法による多数決処理により最終的な判断を行なってもよく、このようにすることで、遠隔地に設置されたプラントであっても、すぐ近くに設置されているのと同様にして異常監視を行うことができる。