JP5280725B2 - 射出発泡体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えばポリプロピレン系樹脂などの射出発泡体の製造方法に関する。
従来、自動車の内外装あるいは住宅等の建物の内外装には樹脂発泡体が多用されている。例えば、自動車では、室内空間に面する天井、ドア、フロア等の内装には、樹脂発泡体を用いたボードやパネルが利用されている。また、住宅設備においても、住宅用断熱ボードなどの建材として樹脂発泡体が利用されている(例えば、特許文献1参照)。
このような樹脂発泡体の材料としてポリスチレン等が用いられていたが、耐熱性、耐薬品性、軽量性という観点からポリプロピレン系樹脂が好適とされている。
そして、特許文献1に記載のものは、ポリプロピン系樹脂による発泡成形として、超臨界状態の窒素を発泡剤に用いて発泡成形する方法が開示されている。
特開2005−97389号公報
しかながら、従来の射出発泡方法では、特にポリプロピレン系樹脂はポリスチレンと比較して発泡成形性に劣るため、いわゆるスワールマークやあばたなどが成形体の表面に生じ、良好な外観が得られにくいため、射出条件などを適宜調整するなどが必要で、製造が煩雑である。
ここで、スワールマークは成形品表面に発生した細かい白筋模様であり、あばたは成形品表面に発生したディンプル状の凹みである。
そこで、樹脂を金型のキャビティ内に供給するためのゲートとして、いわゆるダイレクトゲート(スプルーゲートとも称される。)を設けることで、材料の流動性がよく、ひけやスワールマークの発生を抑制できることが考えられる。
しかしながら、このダイレクトゲートでは、成形体の表面にゲートマークが出来てしまう。射出発泡の成形体が、例えば自動車のドアトリムなどのように、成形体の一部が外部に露出しないものでは、ゲートマークが成形体を装着した際に表に現れない位置に設けることで対応している。しなしながら、成形体の形状によっては、樹脂をキャビティ内に流し込む好適な位置と、ゲートマークが隠す位置とを両立することが困難である場合があり、製造できる形状に制約が生じるおそれがある。
本発明の目的は、簡単な構成で外観不良を防止できる射出発泡体の製造方法を提供することである。
本発明の射出発泡体の製造方法は、樹脂と発泡材料とを溶融混練する溶融混練工程と、この溶融混練工程で溶融混練された混合物を金型にて射出成形する射出成形工程と、を実施する射出発泡体の製造方法であって、前記金型は、前記混合物を供給するランナの断面積の20%以上250%以下の断面積に形成されたサイドゲートを有し、前記射出成形工程では、前記ランナから前記サイドゲートを介して前記金型のキャビティ内へ前記混合物を注入することを特徴とする。
この発明では、金型のゲートの断面積を、混合物を供給するランナの断面積20%以上250%以下に設計し、ゲートを介してキャビティ内へ、樹脂と発泡材料との溶融混練した混合物を注入して射出発泡成形する。
このことにより、ゲートの位置の融通性があるサイドゲートによりゲートマークが外観に現れず、ランナの断面積の20%以上250%以下の断面積を有するサイドゲートとすることで、キャビティに注入されることにより発生する気泡によるスワールマークやあばたなどの発生を防止できる。したがって、サイドゲートの形状を所定の形状に設定する簡単な構成で、金型を加熱して発生する気泡による痕跡が残らないようにする必要もなく、外観が良好な射出発泡体が得られる。
そして、本発明では、前記射出成形工程では、前記ランナから前記サイドゲートを介して前記キャビティ内に注入する前記混合物における前記発泡材料の発泡ガスの飽和溶解度以下にならない圧力で、前記混合物を供給する構成とする。
この発明では、混合物における発泡ガスの飽和溶解度以下の圧力条件とならない条件で、ランナからサイドゲートを介してキャビティ内へ混合物を注入する。
このことにより、スワールマークやあばたなどの原因となる発泡を防止でき、良好な外観が得られる。
また、本発明では、前記射出成形工程では、前記ランナおよび前記サイドゲート内で、前記混合物における前記発泡ガスの飽和溶解度以下にならない圧力で、前記混合物を供給する構成とする。
この発明では、ランナおよびサイドゲート内で混合物における発泡ガスの飽和溶解度以下の圧力条件とならない条件で、混合物をキャビティへ供給する。
このことにより、スワールマークやあばたなどの原因となる発泡を防止でき、良好な外観が得られる。
さらに、本発明では、前記サイドゲートは、前記混合物における前記発泡材料の発泡ガスの飽和溶解度以下の圧力に減圧されない断面積に形成された構成とすることが好ましい。
本発明では、断面積が混合物における発泡ガスの飽和溶解度以下の圧力に減圧されない大きさに、サイドゲートを形成する。
このことにより、スワールマークやあばたなどの原因となる発泡を防止でき、良好な外観が得られる。
そして、本発明では、前記サイドゲートは、前記キャビティの厚さ寸法の50%以上100%以下の厚さ寸法である構成とする。
この発明では、サイドゲートの厚さ寸法を、キャビティの厚さ寸法の50%以上100%以下としているので、ランナからサイドゲートを介してキャビティ内へ混合物が円滑に供給される。
このことにより、スワールマークやあばたなどの原因となる発泡をより防止でき、良好な外観が得られる。
また、本発明では、前記サイドゲートは、前記ランナと同形状である構成とすることが好ましい。
この発明では、サイドゲートをランナと断面形状を同じに形成する。
このことにより、混合物が円滑に供給され、スワールマークやあばたなどの原因となる発泡をより防止でき、良好な外観が得られる。
そして、本発明では、前記射出発泡体は、肉厚が薄く平面が広い板状物である構成とすることが好ましい。
この発明では、肉厚が薄く平面が広い板状物を射出発泡する構成に特に有益である。
また、本発明では、前記樹脂は、ポリプロピレン系樹脂である。
この発明では、樹脂として、熱可塑性樹脂が用いられ、耐熱性、耐薬品性、軽量性で有益で用途が広い一方、発泡ガスが比較的に溶解しにくく発泡成形が比較的に困難なポリプロピレン系樹脂を用いる構成で、特に有効である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態では、ポリプロピレン系射出発泡体を製造する製造装置として、射出発泡装置を利用する。
[射出発泡装置の構成]
本発明で使用する射出発泡装置としては、樹脂原料を溶融状態に加熱し、適度の剪断応力を付与しながら混練し、金型に射出充填し発泡することができる公知の射出発泡装置を使用することができる。
なお、本実施形態では、物理発泡により射出発泡させる射出発泡装置を使用した。
図1は、本発明の一実施形態の射出発泡装置を模式的に示す概略図である。
射出発泡装置100は、例えば自動車の構成部材であるドアトリム、バンパー、インパネ、ハッチバックの車内のバック側トリム、トランクの横のデッキサイドトリムなど、特に肉厚が薄く平面が広い板状物を射出発泡成形するものである。なお、本発明は、板状物の成形に限られるものではない。
そして、射出発泡装置100は、図1に示すように、樹脂原料が投入されるホッパー110と、樹脂原料を溶融混練する押出機としてのシリンダ120と、シリンダ120に発泡剤ガスを導入するガス導入路130と、射出発泡金型140と、を備えている。
ホッパー110は、計量器としても機能し、樹脂原料が投入されると同時に計量することもできる。
シリンダ120は略円筒状に形成され、シリンダ120の内径よりも小さい径をもつ略円柱状のスクリュ121を有している。スクリュ121は、その外周面にらせん状の羽122を有しており、スクリュ121の軸を中心として回転可能に支持されている。シリンダ120の内部でスクリュ121が回転することにより、シリンダ120内の樹脂原料が溶融混練される。
なお、シリンダ120における押出温度は適宜設定すればよいが、例えば、170℃以上250℃以下に設定することが好ましい。押出温度が170℃未満であると押出が困難となるおそれがあり、250℃を超えると、発泡性能が低下するおそれがある。
ガス導入路130は、シリンダ120の内部につながる流路であり、発泡ガスを導入する。発泡ガスとしては、不活性ガス、例えば、二酸化炭素、窒素ガス等が挙げられる。発泡ガスの導入により、シリンダ120内で樹脂原料と発泡ガスとが混合される。
射出発泡金型140は、樹脂原料を目的の形状に成形するものである。本実施形態では、例えば図2に示す構成を用いた。
図2は、本実施形態にかかる金型の形状を示す模式図であり、(A)は型締状態を示す断面図、(B)は金型のキャビティ内に射出して充填させた状態を示す断面図、(C)はコアバックによる発泡状体を示す断面図、(D)は冷却して固化した状態を示す断面図、(E)は脱型状態を示す断面図である。
射出発泡金型140は、図2に示すように、対をなす雄型141および雌型142を備えている。
射出発泡金型140には、ホッパー110、シリンダ120およびガス導入路130を備えた射出成形機から供給される混合物が流通するランナ143、このランナ143に連通するとともに雄型141および雌型142間のキャビティ144に連通するサイドゲート145が設けられている。
サイドゲート145は、ランナ143の断面積の20%以上250%以下の断面積に形成されている。特に、サイドゲート145は、キャビティ144の厚さ寸法の50%以上の厚さ寸法に形成されていることが好ましい。なお、図2は、説明の都合上、ランナ143からキャビティ144までを直線流路状に示す。
[混合物]
原料となる樹脂としては、発泡可能ないずれの熱可塑性樹脂を対象とすることができる。すなわち、発泡ガスを溶解するとともに所定の条件で発泡させる樹脂が利用される。
中でも、熱可塑性樹脂としては、非晶性熱可塑性樹脂と結晶性熱可塑性樹脂とを含むものである。非晶性熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリアリレート、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォンなどの熱可塑性のプラスチック材料およびこれらのプラスチック材料を1種または2種以上混合したブレンド物を例示することができる。
また、結晶性熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリスチレン、ポリプロピレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、全芳香族ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンなどの熱可塑性のプラスチック樹脂、およびこれらのプラスチック材料を1種または2種以上混合したブレンド物あるいは非晶性熱可塑性樹脂と結晶性熱可塑性樹脂とを混合したブレンド物を例示することができる。
そして、熱可塑性樹脂の材料の形状は特に限定されず、粒状、ペレット状、粉体状のいずれも使用できる。
特に、本発明は、発泡ガスの溶解性が比較的に低く混合物をキャビティ内へ供給する際に発泡しやすいポリプロピレン系樹脂の射出発泡成形に有効である。
ポリプロピレン系樹脂としては、メルトフローレート(MFR)が20g/10分以上のものが、射出充填の際の圧損を少なくすることができる。
また、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)を20g/10分以上とした。MFRが20g/10分未満であると、樹脂の流動性が劣り、生産性が悪い。すなわち、樹脂のMFRを20g/10分以上とすることにより、射出充填の際の圧損を少なくすることができる。MFRのより好ましい範囲は、30g/10分以上100g/10分以下である。
また、MFRが100g/10分を越えると、ポリプロピレン系樹脂の溶融張力および粘度が低くなり、成形が困難となる場合がある点を留意する。
なお、MFRは、JIS K7210に準拠し、樹脂温度230℃、荷重を2.16kgで測定される。
以上のような性質を満たすポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン系多段重合体、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体、またはこれらをブレンドしたものが用いられる。
また、樹脂を発泡させる手段としては、発泡材料を含有させる。具体的には、成形時に溶融状態の樹脂原料に発泡材料としての発泡ガスを注入する物理発泡、樹脂原料に発泡材料としての発泡剤を混合させる化学発泡などを採用することができる。
化学発泡で使用する発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の無機系化学発泡剤や、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N−ジニトロソペンタテトラミン等の有機系化学発泡剤が挙げられる。これらのうち、無機系化学発泡剤が好ましい。これらの無機系化学発泡剤には、発泡成形体の気泡を安定的に均一微細にするため、必要に応じて例えば、クエン酸のような有機酸等の発泡助剤やタルク、炭酸リチウムのような無機微粒子等の造核剤を添加してもよい。
発泡剤の添加量は、射出発泡体の発泡倍率を達成するために適宜選択すればよく、発泡倍率は通常1.2倍〜10倍程度である。
なお、無機系化学発泡剤を使用する場合は、通常、取扱性、貯蔵安定性、ポリプロピレン系樹脂への分散性の点から、10質量%以上50質量%以下の濃度のポリオレフィン系樹脂のマスターバッチとして使用されることが好ましい。これら無機系化学発泡剤の添加量は種類、マスターバッチ中の濃度によって適宜選択すればよい。一般に、本発明のポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上40質量部以下の範囲で含有されることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上30質量部以下の範囲で選択できる。
これらの発泡材料は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
発泡材料の使用量としては、例えば樹脂としてポリプロピレン系樹脂を用いる場合、ポリプロピレン系樹脂1gに対し、気泡を生成させるガスの発生量が2.0×10-5モル以上7.5×10-3モル以下となるように添加することが好ましい。より好ましくは、2.5×10-4モル以上4.0×10-3モル以下である。
具体的に、二酸化炭素を用いた物理発泡において上記のガス発生量を当てはめると、樹脂原料に二酸化炭素を0.09質量%以上3.1質量%以下、より好ましくは0.11質量%以上1.7質量%以下溶解させることに相当する。
化学発泡においても、発生するガス量が上記モル数の範囲と同様となるように各種化学発泡剤の添加量を調整することが好ましい。
そして、射出発泡成形を行う際には、必要に応じて、酸化防止剤、中和剤、難燃剤、等の添加剤を使用することができる。添加剤の配合量は特に制限されず、適宜調節することができる。
また、粉末状または繊維状の多孔質フィラーとして、シリカ、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、または繊維状活性炭を配合してもよい。
その他にも、結晶化核剤として、タルク、有機カルボン酸塩、有機リン酸塩、ソルビトール系核剤を配合してもよい。
[射出発泡装置の動作]
次に、射出発泡装置の動作を説明する。
まず、ポリプロピレン系樹脂をホッパー110に投入する。ホッパー110は計量器としても機能するため、所望の量の樹脂をホッパー110で計量することもできる。
ホッパー110に投入された樹脂は、シリンダ120に供給される。
シリンダ120の内部では、スクリュ121が軸を中心として回転しているので、このスクリュ121により樹脂が溶融混練される。このとき、物理発泡の場合は、ガス導入路130から二酸化炭素や窒素などの発泡流体が導入されるので、樹脂と発泡流体が混合される。
溶融混練された樹脂と発泡流体の混合物はシリンダ120から射出発泡金型140へ射出充填される。
射出発泡金型140では、まず図2(A)に示すように、雄型141および雌型142が型締され、この状態で樹脂と発泡流体との混合物が供給される。そして、図2(B)に示すように射出発泡金型140のキャビティ内に混合物が充填され、所定時間経過後に、図2(C)に示すように、コアバックにより混合物を発泡させる。
このコアバックによる発泡後、図2(D)に示すように、雄型141および雌型142の高い熱伝導率を利用して冷却して固化させ、図2(E)に示すように、脱型して射出発泡体が成形される。
ここで、樹脂として例えばポリプロピレン系樹脂を用いる場合、射出発泡金型140へ供給する射出温度は、170℃以上250℃以下とすることが好ましい。
射出温度が170℃未満であると、射出が困難となるおそれがあり、250℃を超えると、樹脂原料の発泡性能が低下するというおそれがある。
したがって、混合物の射出温度を170℃以上250℃以下とすることにより、成形性に優れ、高い発泡倍率のポリプロピレン系の射出発泡体を得ることができる。
また、射出圧力は、ランナ143からサイドゲート145を介してキャビティ144内に注入する混合物における発泡ガスの飽和溶解度以下にならない圧力、特にランナ143およびサイドゲート145内で、混合物における発泡ガスの飽和溶解度以下にならない圧力で、キャビティ144内に混合物を射出する。
なお、飽和溶解度となってしまうとスワールマークやあばたなどの原因となる発泡を生じてしまうので、飽和溶解度以下とならない圧力で供給し、発泡を防止して、良好な外観に成形する。この圧力は、発泡ガスの種類および量、樹脂の種類などにより定まる。この圧力は、射出成形機の射出圧力または射出速度で制御できる。
[実施形態の作用効果]
以上より、本実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
本実施形態では、射出発泡金型140のサイドゲート145の断面積を、混合物を供給するランナ143の断面積の20%以上250%以下の断面積に設計し、サイドゲート145を介してキャビティ144内へ、樹脂と発泡ガスとの混合物を注入して射出発泡成形する。
このため、ゲートの位置の融通性があるサイドゲート145によりゲートマークが外観に現れず、さらにランナ143の断面積の20%以上250%以下の断面積のサイドゲート145とすることで、混合物がランナ143からサイドゲート145を介してキャビティ144に注入される際に、気泡の発生が抑えられスワールマークやあばたなどが表面に発生することを防止できる。したがって、サイドゲート145の形状をランナ143の断面積の20%以上250%以下の断面積とする簡単な構成で、射出発泡金型140を加熱して発生する気泡による痕跡が残らないようにするなどの必要もなく、外観が良好な射出発泡体を得ることができる。
ここで、サイドゲート145の断面積がランナ143の断面積の20%未満では、サイドゲート145からキャビティ144に混合物が流れるときに圧力低下が大きく、またサイドゲート145の絞りが激しくなり、剪断発熱で樹脂温度が上昇し、発泡剤の分解が促進され、外観不良となるおそれがある。一方、250%を越えるとランナ143からサイドゲート145に混合物が流れる時に圧力低下が起こり、気泡が発生し外観不良となるおそれがある。
そして、ランナ143からサイドゲート145を介してキャビティ144内に注入する混合物における発泡ガスの飽和溶解度以下にならない圧力、特にランナ143およびサイドゲート145内で、混合物における発泡ガスの飽和溶解度以下にならない圧力で、キャビティ144内に混合物を射出する。すなわち、ランナ143からサイドゲート145を介してキャビティ144内に注入する混合物における発泡ガスの飽和溶解度以下にならない条件とするサイドゲート145の形状が、ランナ143の断面積の20%以上250%以下の断面積にサイドゲート145を設計する。このように設計するために、幅0.5mm以上60mm以下、厚さ寸法0.5mm以上10mm以下程度が好ましい。
このため、スワールマークやあばたなどの原因となる発泡を防止でき、良好な外観が得られる。
特に、サイドゲート145の厚さ寸法を、キャビティ144の厚さ寸法の50%以上、好ましくは50%以上100%以下とすることで、ランナ143からサイドゲート145を介してキャビティ144内へ混合物が円滑に供給される。このことにより、スワールマークやあばたなどの原因となる発泡をより防止でき、良好な外観が得られる。
そしてさらに、サイドゲート145は、ランナ143の断面積の40%〜160%の断面積に形成するとなおよい。
このことにより、混合物が円滑にキャビティ144内に供給され、スワールマークやあばたなどの原因となる発泡をより防止でき、良好な外観を提供できる。
そして、上述したサイドゲート145に設定した射出発泡金型140は、特にゲートマークの外観不良を生じやすく製品として外面の露出面積が比較的に多くなる肉厚が薄く、例えば1〜5mm程度で、平面が広い板状物を射出発泡する構成に特に有益である。
また、耐熱性、耐薬品性、軽量性で有益でリサイクル性能にも優れ用途が広い一方、発泡ガスが比較的に溶解しにくく発泡成形が比較的に困難なポリプロピレン系樹脂を用いる構成で、特に有効である。
さらに、従来の装置におけるゲートの構成を調整するのみでよく、新たな設備投資が必要なく、また、製造方法にも大きな変更がないので手間がかからず、射出発泡体を簡単に製造することができる。
[実施形態の変形例]
上記実施形態では、ポリプロピレン系樹脂に限らず、発泡樹脂として利用される各種樹脂を対象とすることができる。
また、発泡材料としても、各種のものが利用できる。
そして、射出発泡体としては、自動車の構成物に限らず、住設分野などにも適用できる。
以下、各種サイドゲート145の形状を採用した実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
なお、本発明は実施例等の内容に何ら限定されるものではない。
(1)製造装置
成形機 :宇部興産機械株式会社製 MD350S−III(商品名)
(シャットオフ機構付き)
金型形状:角板金型(コールドランナ;幅寸法5mm、厚さ寸法5mm)
幅寸法100mm、長さ寸法420mm、厚さ寸法2mm(型締時)
金型のキャビティ面:鏡面仕上げおよび皮シボ仕上げ
樹脂 :株式会社プライムポリマー製 MFR60g/10分(JIS K7210に準拠、樹脂温度230℃)のポリプロピレン 商品名FX200S(100質量部)+着色顔料マスターバッチ(東京インキ株式会社製 商品名;マスターカラー,3質量部)
発泡剤 :樹脂100質量部に対して、無機系化学発泡剤マスターバッチ「ポリスレンEE275F」(永和化成工業株式会社製)を3質量部
樹脂温度:210℃
金型温度:40℃
型締め力:2300kN
スクリュー回転数:100rpm
樹脂計量時の背圧:5MPa
射出速度:34mm/秒
コアバック量:1mm(発泡倍率1.5倍)
(2)ゲート形状
<実施例1>
図3に示すように、ランナ143を幅寸法5mm、厚さ寸法2mm、長さ寸法1mmのサイドゲート145でキャビティ144に連通させた形状(表1参照)に設定したものを実施例1とした。
図3は、実施例1におけるランナ143からキャビティ144への連通状態を示す模式図で、(A)は平面図、(B)は側面図。
<実施例2>
図4に示すように、ランナ143を幅寸法40mm、厚さ寸法1.5mm、長さ寸法1mmの所謂サイドゲート146でキャビティ144に連通させた形状(表1参照)に設定したものを実施例2とした。
図4は、実施例2におけるランナ143からキャビティ144への連通状態を示す模式図で、(A)は平面図、(B)は側面図。
<実施例3>
図5に示すように、ランナ143を幅寸法5mm、厚さ寸法1mm、長さ寸法1mmのサイドゲート147でキャビティ144に連通させた形状(表1参照)に設定したものを実施例3とした。
図5は、実施例3におけるランナ143からキャビティ144への連通状態を示す模式図で、(A)は平面図、(B)は側面図。
<実施例4>
図6に示すように、ランナ143を幅寸法2.5mm、厚さ寸法2mm、長さ寸法1mmのサイドゲート148でキャビティ144に連通させた形状(表1参照)に設定したものを実施例4とした。
図6は、実施例4におけるランナ143からキャビティ144への連通状態を示す模式図で、(A)は平面図、(B)は側面図。
<実施例5>
図7に示すように、ランナ143を幅寸法40mm、厚さ寸法1mm、長さ寸法1mmの所謂サイドゲート149でキャビティ144に連通させた形状(表1参照)に設定したものを実施例5とした。
図7は、実施例5におけるランナ143からキャビティ144への連通状態を示す模式図で、(A)は平面図、(B)は側面図。
<比較例1>
図8に示すように、ランナ143を幅寸法2.5mm、厚さ寸法1mm、長さ寸法1mmのサイドゲート150でキャビティ144に連通させた形状(表1参照)に設定したものを比較例1とした。
図8は、比較例1におけるランナ143からキャビティ144への連通状態を示す模式図で、(A)は平面図、(B)は側面図。
<比較例2>
図9に示すように、ランナ143を幅寸法1mm、厚さ寸法1mm、長さ寸法1mmのサイドゲート151でキャビティ144に連通させた形状(表1参照)に設定したものを比較例2とした。
図9は、比較例2におけるランナ143からキャビティ144への連通状態を示す模式図で、(A)は平面図、(B)は側面図。
<比較例3>
図10に示すように、ランナ143を幅寸法40mm、厚さ寸法2mm、長さ寸法1mmの所謂サイドゲート152でキャビティ144に連通させた形状(表1参照)に設定したものを比較例3とした。
図10は、比較例3におけるランナ143からキャビティ144への連通状態を示す模式図で、(A)は平面図、(B)は側面図。
(3)製造方法
樹脂原料と発泡剤のドライブレンドによる混合物をホッパー110に投入する。そして、押出機の所定のスクリュ回転数に設定し、押出機内で樹脂原料を210℃で溶融化させるとともに発泡剤と混合し、射出速度34mm/秒で混合物を金型に充填した。この時、充填時間はおよそ2.5秒であった。充填完了後からコアバックするまでの時間は2秒である。そして、コアバック後30秒(冷却時間)後に脱型し、角板状の発泡倍率1.5倍の射出発泡体を得た。
得られた射出成形体の外観結果を、図11〜図13に示す。図11は、実施例1における鏡面仕上げ金型を用いた射出発泡体の末端部の外観写真を示す。図12は、実施例5における鏡面仕上げ金型を用いた射出発泡体の末端部の外観写真を示す。図13は、比較例2における鏡面仕上げ金型を用いた射出発泡体の末端部の外観写真を示す。
(4)評価
<スワールマークの評価>
スワールマークの評価は、射出発泡金型140のキャビティ144に臨む面を鏡面仕上げしたものおよび自動車内装部品で用いられる皮シボ仕上げしたものを用いて成形し、目視によりスワールマークの発生状況を観察した。その結果を表1に示す。
なお、表1中、観察されなかったものを「なし」、僅かに観察されたものを「僅か」、多数観察されたものを「多数」として示す。
(5)結果
図11に示す実施例1および図12に示す実施例5でも明らかなように、実施例1ないし実施例5のいずれの射出発泡体は、スワールマークやあばたなどの外観不良は発生しなかった。
一方、比較例1〜3では、図13の比較例2に示すように、スワールマークが多数発生した。
本発明の射出発泡体は、簡単な構成で良好な外観が得られ、例えば、住設分野や自動車分野の内外装材などに好適である。
本発明の一実施形態の射出発泡装置を模式的に示す概略図。 本実施形態にかかる金型による射出成形工程を説明する模式図であり、(A)は型締、(B)は充填、(C)はコアバック発泡、(D)は冷却、(E)は脱型の断面図。 実施例1のゲート形状を説明する模式図であり、(A)は平面図、(B)は側面図。 実施例2のゲート形状を説明する模式図であり、(A)は平面図、(B)は側面図。 実施例3のゲート形状を説明する模式図であり、(A)は平面図、(B)は側面図。 実施例4のゲート形状を説明する模式図であり、(A)は平面図、(B)は側面図。 実施例5のゲート形状を説明する模式図であり、(A)は平面図、(B)は側面図。 本発明を説明するための比較例1のゲート形状を説明する模式図であり、(A)は平面図、(B)は側面図。 本発明を説明するための比較例2のゲート形状を説明する模式図であり、(A)は平面図、(B)は側面図。 本発明を説明するための比較例3のゲート形状を説明する模式図であり、(A)は平面図、(B)は側面図。 実施例1の射出発泡体の外観表面写真を示す図であり、サイドゲートと反対側の末端部の外観図。 実施例5の射出発泡体の外観表面写真を示す図であり、サイドゲートと反対側の末端部の外観図。 本発明を説明するための比較例2の射出発泡体の外観表面写真を示す図であり、サイドゲートと反対側の末端部の外観図。
符号の説明
100…押出発泡装置
110…ホッパー
120…シリンダ
130…ガス導入路
140…射出発泡金型
143…ランナ
144…キャビティ
145〜149…サイドゲート

Claims (4)

  1. JIS K7210に準拠し、樹脂温度230℃、荷重を2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が20g/10分以上100g/10分以下であるポリプロピレン系樹脂と発泡材料とを溶融混練する溶融混練工程と、この溶融混練工程で溶融混練された混合物を、170℃以上250℃以下の射出温度で金型のキャビティ内に注入して射出成形する射出成形工程と、を実施する射出発泡体の製造方法であって、
    前記金型は、前記混合物を供給するランナの断面積の20%以上250%以下の断面積に形成されたサイドゲートを有し、
    前記サイドゲートは、前記キャビティの厚さ寸法の50%以上100%以下の厚さ寸法であり、
    前記射出成形工程では、前記混合物中の発泡材料に由来する発泡ガスが、前記混合物における発泡ガスの飽和溶解度以下にならない圧力で、前記混合物を前記ランナから前記サイドゲートを介して前記金型のキャビティ内へ前記混合物を注入し、
    発泡倍率が1.2〜10倍である
    ことを特徴とする射出発泡体の製造方法。
  2. 請求項1に記載の射出発泡体の製造方法であって、
    前記サイドゲートは、前記混合物における前記発泡材料の発泡ガスの飽和溶解度以下の圧力に減圧されない断面積に形成された
    ことを特徴とする射出発泡体の製造方法。
  3. 請求項1または請求項に記載の射出発泡体の製造方法であって、
    前記サイドゲートは、前記ランナと同形状である
    ことを特徴とする射出成形体の製造方法。
  4. 請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の射出発泡体の製造方法であって、
    前記射出発泡体は、肉厚が薄く平面が広い板状物である
    ことを特徴とする射出成形体の製造方法。
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