JP5279027B2 - 熱音響冷風器 - Google Patents
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Description
熱音響冷凍装置100の基本構成は以下の通りである(非特許文献1)。図6に示すように、管101の一端に音波を発生するスピーカ102を設け、管101の反対側を封止端103とする。管101の内部の封止端103に近い側に再生器104と称される熱交換器を配置する。再生器104は、微細な空隙が管101の長手方向に沿って形成されるように、細かい平板を積層したものや、細管を束ねるものが知られている。
再生器104内に存在する気体の微小部分(気体塊G)に注目すると、気体塊Gは以下のように挙動する。つまり、気体塊Gは音波により圧力の高い右側に移動させられながら圧縮されて体積が減少する。このとき断熱圧縮により気体塊Gの温度は上がるが、近くの再生器壁104Wに放熱して温度が下がる。その気体塊Gは、再度音波により左側の圧力の低い側に移動させられ、このとき断熱膨張されるので温度が下がる。先ほどの温度が高い側で再生器壁104Wに放熱して温度が下がった分だけ周囲より温度がより低くなる。この微少サイクルが再生器壁104Wに沿って連なってあたかもバケツリレーで熱を運び、結局、再生器104の左端が最も低温に、右側が最も高温になる。気体塊Gは、音波により再生器104内を移動するため、非常に短い時間で圧縮・膨張が繰り返される。
産業界において、極低温まで冷却することが要求されない用途は多々ある。例えば、前述した排熱を利用して冷却を行う場合には、エネルギの有効活用を図りつつ、周囲の環境よりも低い温度の冷気・冷風が生成されれば、利用価値は十分にある。
そこで本発明は、簡易な構造でありながら、温度勾配を利用して冷風を直接生成する熱音響冷風器及びこの冷風器を用いた冷風の発生方法を提供することを目的とする。
この本体容器内には、スタックとも称される再生器が収容されている。再生器は、封止端の側に共鳴空間を、開放端の側に膨張空間を設けて収容される。共鳴空間は、再生器内に存在する気体の振動に基づいて本体容器に共鳴を生じさせる機能を有する。膨張空間は、絞りを通って流入する気体を断熱膨張させて気体の温度を下げる機能を有する。
本体容器には、流通管が繋がれる。この流通管は、その一端が絞りに繋がれ、他端が気体の出入り口となる。
本発明の熱音響冷風器は、再生器に、封止端側を高温とし開放端側を低温とする温度勾配を生じさせる温度勾配生成手段を備える。
温度勾配生成手段は、封止端側を加熱する加熱手段と、開放端側を冷却する冷却手段とから構成することができる。
本実施の形態にかかる熱音響冷風器1は、一方が封止端2a、他方が開放端2bである本体容器2と、本体容器2の開放端2bに接続端10aを介して接続される流通管10とから構成される。熱音響冷風器1は、熱から音響に変換される時に発生する振動エネルギを利用し、流通管10の流出入口10bより冷風を吐出させるものである。
再生器3は、スタックとも称されるものであり、軸方向に連なる微細な通路が多数設けられている。この微細な通路の軸方向に沿って、気体、典型的には空気が流通可能である。微細な通路は、本体容器2の開口面積の1/10〜1/20の開口面積を有することが好ましい。再生器3は、多孔性の焼結金属又はセラミックス、金属製不織布、細い板材の積層体、スチールウールのような金属細線の束等の種々の形態で実現される。
共鳴空間6は、本体容器2に共鳴を生じさせるために設けられるものである。共鳴空間6を設けることにより、後述するように再生器3で生じる気体の微小な振動を増幅させる。共鳴空間6は、この目的を達成するのに必要な容積を有する。この容積をどの程度にするかは、実験的に確認することができる。
膨張空間7は、明らかに空間が存在すると認識できる場合に限らず、流入する気体が断熱膨張できる領域が存在していればよい。たとえば、再生器3が空隙を多く含む例えばスチールウールからなる場合には、再生器(スチールウール)3が、外観上、図4に示すように、プラグ8の内側に接していても、スチールウールの当該接触部近傍の空隙が膨張空間7を構成することになる。つまり、この膨張空間7は、流入する気体が断熱膨張できる領域が実質的に存在するか否かで判断される。
絞り9の開口面積の最適な値は未だ不明なところがあるが、小さすぎると気体をスムーズに流通させることができなくなり、また、大きすぎると絞りとしての機能を果たさなくなる。これらの観点から、絞り9の開口面積は膨張空間7の開口面積の1/10〜1/20の範囲で設定することが好ましい。
流通管10は、ゴム等の可撓性材料から構成することができるし、金属材料から構成することもできる。また、プラグ8側に金属管を設け、その先端に可撓性材料のチューブを繋げてもよい。
図2に示すように、例えばバーナVにより再生器3の封止端2a側の端部を加熱する。再生器3は、当該端部が高温部4となり、他方端がこれよりも温度の低い低温部5を構成し、再生器3には温度勾配が生じる。なお、低温部5は、水で濡らした布を当該部分に当てることにより、室温程度に維持した。
再生器3内の微小部分に注目する。微小な気体塊Gが本体容器2の開放端2b側(右側)に動いたとすると、動く前よりも温度の低い再生器3の部分に接触して微小な気体塊Gは冷却される。冷却された微小な気体塊Gは、圧力が下がり収縮する。したがって、微小な気体塊Gよりも図中右側の気体が左側に動くことになる。
左側に動いた微小な気体塊Gは、今度は、動く前よりも温度の高い再生器3の部分に接触して加熱される。加熱された微小な気体塊Gは、圧力が上がり膨張する。したがって、微小な気体塊Gは右側に動くことになる。
このようにして、微小な気体塊Gは冷却→収縮→加熱→膨張→…のサイクルを繰り返しながら、再生器3内を軸方向に往復動するので、共鳴空間6及び膨張空間7を含む本体容器2内の気柱全体に波及して自励振動が起きる。
膨張空間7に流入した気体は、断熱膨張により温度が下がる。温度の下がった気体は、本体容器2内の気柱が右側に動くのに伴って、膨張空間7から絞り9を通って流通管10に流入し、さらに流通管10の流出入口10bから外部に向けて吐出される。温度の下がった気体は、流通管10の概ね中心部を通るものと解される。この中心部は内周壁近傍に比べて圧力が低いために、ここを通る気体の温度は、理想的には、膨張空間7に流入して断熱膨張により低下した温度に維持される。
本発明者等の実験によると、高温部4を気体バーナVで約400℃に加熱し、低温部5に水で濡らした布を当てることにより室温程度に冷却、保持することにより、室温よりも約1℃低い冷風が得られることを確認した。この冷風は、パルス状に出力される。このことは、図3に示されている。図3は、流通管10の流出入口10bから吐出される冷風をスピーカに当てて得られる圧力をAD変換した電圧値として計測したものである。
なお、この実験に供した熱音響冷風器1は、本体容器2として全長Lが180mm、直径が27mmの試験管を用い、プラグ8の絞り9に対応するように全長が150mm、直径が10mmの金属製の管を繋げ、さらにこの金属製の管に全長が400mmのチューブを繋いで流通管10とした。また、この熱音響冷風器1は、再生器3としてスチールウールを用いた。この再生器3は、軸方向の一方端がプラグ8に接するように本体容器2内に配置された。
例えば、熱音響冷風器1(20)は、本体容器20を一体で構成したが、共鳴空間6に対応する部分、再生器3に対応する部分、膨張空間7に対応する部分を別個の管体で作製して、結合することもできる。
2…本体容器、2a…封止端、2b…開放端
3…再生器、4,14…高温部、5,15…低温部
6…共鳴空間、7…膨張空間
8…プラグ、9…絞り
10…流通管、10a…接続端、10b…流出入口
Claims (2)
- 軸方向の一方側が封止端とされ、他方側に絞りを備える開放端とされる本体容器と、
前記本体容器内にあって、前記封止端の側に共鳴空間を、また前記開放端の側に膨張空間を設けて収容される再生器と、
一端が前記絞りに繋がれ、他端が気体の流出入口となる流通管と、
前記再生器に対して、前記封止端側を高温とし前記開放端側を低温とする温度勾配を生じさせる温度勾配生成手段と、
を備え、
前記温度勾配生成手段により前記温度勾配を生じさせることにより、
前記流通管の前記他端から流入した気体が前記膨張空間に流入されることにより冷却され、冷却された気体を前記流出入口より吐出させることを特徴とする熱音響冷風器。 - 前記温度勾配生成手段は、
前記封止端側を加熱する加熱手段と、前記開放端側を冷却する冷却手段とから構成される請求項1に記載の熱音響冷風器。
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