JP5279023B2 - 導体把持部、スペーサ、および架空電線路 - Google Patents
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以下、同公報に示されている例を参照しながら、従来のルーズ式の電線把持部について説明する。
図7に示すごとく、スペーサ10は、4本の枠体12により左右で軸対称の位置に把持部が設けられる。そして、図7で上下方向の対称軸に対して右片側半分に設けられた導体把持部14,14は、素導体16,16を固定式に把持するものであり、例えば、実公昭57−57462号公報で示される公知のものである。なお、図7にあっては、素導体16,16をアーマーロッド18,18で巻いて、その上から把持しているが、アーマーロッドを使用しないで把持することも可能である。
図10に示すように、素導体16を両側から把持できるように軸を含む平面で筒状体が略2分割された一対の部材(26a,26b)からなる内管部材26が形成される。
そして、この一対の部材(26a,26b)からなる内管部材26全体を両側から把持できるように、軸と平行な揺動軸である蝶番ピン28により蝶番状に開閉自在に2分割された一対の部材として、外管部材30aと外管部材30bとからなる外管部材30が形成され、すなわち、「内管部材26(26a,26b)」と「外管部材30(30a,30b−30b)」とによって、二重管構造が形成される。
さらに、外管部材30を形成する一対の部材「30a,30b−30b」の軸方向の両端部には、内管部材26の外径とほぼ同じ内径の小径部30c,30c・・・が形成され、中央部には内管部材26の外径より大きな径で一部の内周壁30d,30dが形成され、この内周壁30d,30dと内管部材26との間に隙間部32が設けられる。
そしてさらに、外管部材30の一方の部材30aには、蝶番ピン28とは略反対側に一対の突起30g,30gを2組み設け、軸と平行なピン34,34により締付けボルト36,36の一端が揺動自在に連結される。
そしてまた、他方の部材30bには、同様に突起30h,30hが突設され、締付けボルト36,36が揺動して挿入されるように、その先端部からU字状の溝30i,30iが設けられる。
なお、内管部材26の一対の部材(26a,26b)には、両端に円周状に突設する鍔部(a’,b’)を形成しているので、それに合わせて外管部材30にも溝部(a’,b’)を形成している。
かかる内管部材26と外管部材30等の構成部材により、ルーズ用クランプ本体22が形成される。
また、連結部材24の他端には一対の突起24b,24bが設けられ、適宜にスペーサ10の枠体12,12に揺動自在に連結されるように形成される。
さらに、外管部材30の突起30g,30g・・・には、締付けボルト36,36がピン34,34により揺動自在に連結される。しかも、外管部材30と内管部材26の間の隙間部32に連結部材24のT字状突起24aの頭部が挿入されるとともに首部がスリット30fを貫通するようにされる。
そして、外管部材30が閉じられ、締付けボルト36,36が揺動されて溝30i,30iに挿入され、締付けボルト36,36の先端に軸力規制型でスプリング式のロックナット38,38が螺合されて仮止めされる。
なお、このロックナット38,38は、特公平4−20090号公報に示されるごとく、所定の締付け力が得られるロックナットであり、これによれば、スプリングを内蔵しているので一定の軸力で締め付けることができる。
ルーズ式導体把持部20において、連結部材24は「クレビス」と呼ばれる部材であって、T字状突起24aを有して、T字状の形状をなしており、また、外管部材30は「押さえ(クランプ)」と呼ばれる部材であって、T字状の連結部材24によって左右に分断されていて、外管部材30の横幅寸法がかなり大きくなっている。したがって、ルーズ式導体把持部20の全体の構造としては、大型化して重量も重くなっている。
本発明では、ルーズ式の導体把持部のコンパクト化および軽量化を行うことを課題とするもので、そのようなルーズ式の導体把持部を備える送電線用スペーサ、その送電線用スペーサを配置した架空送電線路を提供することをもその目的としている。
前記クランプ本体は、2分割された円筒形状を成して前記素導体を両側から把持するカラー部材をその内部に保持するとともに、前記素導体の軸と直交する面に添ってその両側面を窪ませて、前記本体部材の内面と前記カラー部材の外面との間に円環状のスペース部を形成し、
前記連結部材は、全体としてU字形をなして、外部の部材との連結部と、前記クランプ本体に接続する2本のアーム部と、それぞれのアーム部の先端から内側に突設されて前記スペース部に配設される接続部と、を備え、
前記連結部材の2本のアーム部を前記クランプ本体の両側面に添設して、それぞれの前記接続部を前記クランプ本体内のスペース部内を移動可能に配設することにより、前記連結部材を前記クランプ本体に対して前記素導体の軸回りに揺動自在に接続する構成を備える導体把持部とした。
前記ルーズ式把持部として(1)の導体把持部を適用したスペーサとした。
(2-1)枠体の左右対称の位置で、左または右の一方の片側には素導体を固定式に把持する固定式把持部を配設し、かつ、他方の片側には素導体を揺動自在に把持するルーズ式把持部を配設して構成されるスペーサであって、
前記ルーズ式把持部として(1)の導体把持部を適用したスペーサとした。
(2-2)枠体の左右対称の位置で、左または右の一方の片側には、素導体を固定式に把持する固定式把持部と素導体を揺動自在に把持するルーズ式把持部とを交互に配設し、
他方の片側には、前記一方の片側の固定式把持部とルーズ式把持部とは対角配列になるように、固定式把持部とルーズ式把持部とを配設して構成されるスペーサであって、
前記ルーズ式把持部として(1)の導体把持部を適用したスペーサとした。
(3)架設された複数本の送電線にスペーサが取り付けられた架空送電線路であって、
前記スペーサとして(2)のスペーサを適用した架空送電線路とした。
本発明による導体把持部は、カラー部材(内部部材)とクランプ本体(外部部材)とからなる電線把持部を、両把持式(2本腕式)のクレビス(連結部材)で支持する構造を備えている。このように、クレビス(連結部材)を両把持式にする構造を採用したことによって、(1)ルーズ式の導体把持部自体の幅を狭めることができ、(2)ルーズ側・固定側それぞれのカラーの質量を減らすことができる。
また、従来の導体把持部では、図8に示すように、軸力規制型のロックナット38が1把持部につき2つずつ必要であったが、本発明では1つになったので、軽量・コンパクトになり、架線上でのスペーサの取付け作業性を大きく向上させることができる。
図1−3は、ルーズ式の導体把持部の構造を示す図であり、図1は、本発明によるルーズ式の導体把持部100の上面部、側面図、AA断面図、BB断面図であり、図2は、導体把持部100の連結部材であるクレビス3を示す側面図、上面部、右側面図であり、図3は、導体把持部100の外観斜視による説明図である。
ここで、一対となるクランプ本体(2A,2B)は、その内部に、2分割された円筒形状を成して素導体を両側から把持するための二体一組のカラー部材(1a,1b)を配設して保持する手段を有する。
また、クレビス部材4は、2本のアーム部(4a,4b)を有して全体として略U字状を成し、その中央には外部の部材に連結接続するための連結部4Lを有するとともに、それぞれのアーム部(4a,4b)の先端から内側に突設されたルーズ式接続部(4c,4d)を有している。
ここで、ルーズ式接続部(4c,4d)とスペース部(S1,S2)とは、相互の移動が可能なようなルーズ式の接続関係または係合関係を有しており、ルーズ式接続部(4c,4d)がスペース部(S1,S2)の内部を把持した素導体の中心軸g1の回りに所定の角度範囲で移動することができることにより、揺動自在(回動自在)方式によるルーズ式の導体把持部100が構成される。
このクランプ本体(2A,2B)は、回動軸g2を中心にして蝶番式に開閉自在とする構成であり、素導体の中心軸g1を挟んで回動軸g2とは反対側には、クランプ本体2Aを延長して締め付け部Asを設け、同じくクランプ本体2Bを延長して締め付け部Bsを設けている。これらの締め付け部(As,Bs)には、締め付け部材3が適用されて、締付けボルト3bとロックナット3nによって締め付けが行われる。
ここでは、クランプ本体(2A,2B)は軸方向に添ってカラー部材1aおよびカラー部材1bを受け入れて、配設位置HIにおいては、「カラー部材1a+カラー部材1b」による略断面円形の外部形状からなる外接部と同様の内部形状からなる内接部がクランプ本体(2A,2B)に形成されている。
このフランジ状突起部(fa,fb)はクランプ本体(2A,2B)の両側に突起して配置されるので、カラー部材(1a,1b)を取り付ける際の位置の設定が容易となり、架空電線上の宙乗り作業においてもそれが有効である。
ここでの導体把持部100は、蝶番状に組み付けられた外管部材のクランプ本体(2A,2B)の内部には、内管部材であるカラー部材(1a,1b)が配設され、クランプ本体(2A,2B)とカラー部材(1a,1b)との間には、それらの両サイドからクレビス(連結部材)4が内部で移動可能なようにルーズ式に接続されており、「クランプ本体(2A,2B)+カラー部材(1a,1b)」と「クレビス(連結部材)4」との間で、揺動(回動)自在となるルーズ式の構造となっている。
このような状態で、素導体16の上からカラー部材(1a,1b)を跨いで把持させて閉じ、その上からクランプ本体(2A,2B)を被せて、締め付け部材3によってクランプ本体(2A,2B)を締め付ければ、把持が完了する。
そして、把持される素導体16が所定の角度範囲で揺動自在であれば、自由に回転できる素導体のごとく断面円形筒状の着氷雪は発生することができず、それだけ着氷雪による荷重が軽減し得る。
ルーズ式スペーサとは、クランプ把持部がN個(Nは偶数)である多導体スペーサにおいて、N/2個の把持部がある範囲で自由回動できる構造のルーズ式把持部を持つスペーサのことであり、自由回動しないN/2個の把持部は固定式把持部である。
このルーズ式スペーサは、把持部のうち半分がルーズ式把持部であるが、ギャロッピング抑制効果が高いことはすでに実証されている。
「片側配列型」は、左側上下列と右側上下列とに分けて、固定式把持部とルーズ式把持部とのいずれかを片側上下に配置するものであり、また「対角配列型」は、固定式把持部とルーズ式把持部とを対角に配置するものである。
さらに、図示してはいないが、4導体の例としては、1)上段の2つをルーズ式把持部として、下段の2つを固定式把持部とするもの、2)上段の2つを固定式把持部として、下段の2つをルーズ式把持部とするもの、3)4つの把持部のうちの1つを固定式把持部として他の3つをルーズ式把持部とするもの、4)4つの把持部の全部をルーズ式把持部とするもの、などがある。
送電線の1径間内に複数個のスペーサS10,S10・・・が設けられる。スペーサS10は「片側配列型」であって、線路方向を見て、スペーサS10の枠体12の右の片側半分に設けられた全ての導体把持部14,14で、右の片側半分の送電線42,42が固定把持され、左の片側半分に設けられた全てのルーズ導体把持部20,20で、左の片側半分の送電線42,42が軸回りに所定角度範囲で軸回りに揺動自在に把持される。
ここで、スペーサS10,S10・・・は、左右がバランスした重量であり、スペーサS10,S10・・・を設けることにより送電線42,42・・全体を捩じって回転させるごとき力は作用しない。
そして、それぞれの送電線の捩じれ剛性が同じであると、それぞれの送電線の固有振動数が一致し、送電線路全体の回転運動周期と上下動の振動周期が同期する場合が生じ、この同期によって上下動の振幅が増大されることが知られている。
また、多数本の送電線からなる架空送電線路に比べて単導体の回転運動周期は長く、単導体にあっては上下動の振動周期に比べて回転運動周期が長いために同期することが少なく、ギャロッピング振動を生じにくいことも知られている。
また、4導体を固定把持する従来のものに比べて、本発明のものは対数減衰率が大きく、ギャロッピングの抑制を期待できる。
また、本発明のルーズ式導体把持部は、素導体は軸回りに所定の角度範囲で揺動できるが回転できないので、断面円形筒状の着氷雪の発生を防止でき、クランプ本体とカラー部材を固定しておけば、構成部品を分離しなくても作業ができるので、それだけ部品を脱落させる等の不具合がなく、宙乗り作業等の高所作業にも好適である。
そして、一方の片側半分にある素導体を揺動自在に把持し、他方の片側半分にある素導体を固定把持するので、一方の片側半分の素導体の捩じれ剛性と他方の片側半分にある素導体の捩じれ剛性とが相違し、それぞれの素導体の回転運動周期が相違し、ギャロッピング振動の抑制に貢献し得る。
g1 素導体の中心軸
2A、2B クランプ本体
As、Bs クランプ本体の締め付け部
S1、S2 円環状のスペース部
1a、1b カラー部材
fa、fb フランジ状突起部
3 締め付け部材
4 クレビス(連結部材)
4a,4b アーム部
4c,4d ルーズ式接続部
4L 連結部
S100、S10 スペーサ
12 スペーサの枠体
16 素導体(電線)
14 固定把持する導体把持部
20 ルーズ式の導体把持部
Claims (3)
- 素導体と平行する回動軸を介して開閉自在に2分割されて前記素導体を把持するクランプ本体と、把持した前記素導体の軸回りに所定の角度範囲で揺動自在になるよう構成される連結部材と、を連結接続して、ルーズ式に素導体を把持する手段を有する導体把持部であって、
前記クランプ本体は、2分割された円筒形状を成して前記素導体を両側から把持するカラー部材をその内部に保持するとともに、前記素導体の軸と直交する面に添ってその両側面を窪ませて、前記本体部材の内面と前記カラー部材の外面との間に円環状のスペース部を形成し、
前記連結部材は、全体としてU字形をなして、外部の部材との連結部と、前記クランプ本体に接続する2本のアーム部と、それぞれのアーム部の先端から内側に突設されて前記スペース部に配設される接続部と、を備え、
前記連結部材の2本のアーム部を前記クランプ本体の両側面に添設して、それぞれの前記接続部を前記クランプ本体内のスペース部内を移動可能に配設することにより、前記連結部材を前記クランプ本体に対して前記素導体の軸回りに揺動自在に接続する構成を備えることを特徴とする導体把持部。 - スペーサ枠体に、素導体を固定式に把持する固定式把持部と、素導体を揺動自在に把持するルーズ式把持部とが組み合わされて配設されるスペーサであって、
前記ルーズ式把持部として請求項1記載の導体把持部を適用する、ことを特徴とするスペーサ。 - 架設された複数本の送電線にスペーサが取り付けられた架空送電線路であって、
前記スペーサとして請求項2記載のスペーサを適用する、ことを特徴とする架空送電線路。
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