JP5278872B2 - 金ナノ皮膜被覆リポソーム及びその製造方法 - Google Patents
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Description
このような特徴から、深在性(内臓性)真菌症の治療を目的にアムホテリシンBを封入したアムビゾーム(AmBisome)がリポソーム製剤として上市されている。
金ナノ粒子は光を吸収して発熱することが知られており、その光吸収特性は金ナノ粒子のサイズや形状によって様々である。例えば、等方的に成長した金ナノ粒子では、その表面プラズモン共鳴により、530nm程度の光を吸収することが知られている(Stephan Link and Mostafa A. El-Sayed J. Phys. Chem. B 1999, 103, 8410〜8426頁)。同じ金からなるナノ粒子でも、異方的に成長した金ナノロッドや、シリカナノ粒子表面で金ナノ皮膜を成長させた金ナノシェルでは、人体に対する透過性が高い近赤外光(波長670〜900nm)を強く吸収することが報告されている(Cheng-Hsuan Chouら, J. Phys.Chem. B 2005, 109, 11135〜11138頁;Andre M. Gobinら, NANO LETTERS 2007 VOL.7,No.7 1929〜1934頁;Christopher Looら, NANO LETTERS 2005 VOL.5, No.4 709〜711頁;Xiaojun Jiら, J. Phys. Chem. C 2007, 111, 6245〜6251頁;Hui Wangら, Acc. Chem. Res. 2007, 40, 53〜62頁)。
そこで、本発明者らは、薬物内包空間を持つリポソームの表面に金ナノ皮膜を成長させることにより、人体に対する透過性が高い近赤外光(波長670〜900nm)応答性を持つリポソームを得ることを目的とした。
本発明は、リポソーム膜表面にカチオンを有するリポソームと金イオン供給化合物とを、水性媒体中で還元剤の存在下に接触させて、金ナノ皮膜で被覆されたリポソームを得ることを含む、金ナノ皮膜被覆リポソームの製造方法も提供する。
リポソーム膜構成脂質としては、リポソームの膜脂質として通常用いられる両親媒性の脂質を用いることができる。このような脂質としては、リン脂質及び糖脂質が挙げられる。リン脂質としては、例えばホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、大豆ホスファチジルコリン、卵黄ホスファチジルコリンなどが挙げられる。これらのリン脂質の構成脂肪酸としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。特に、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンが好ましい。
該カチオン性脂質が有するカチオン性官能基としては、アミノ基、アミジノ基、グアニジノ基、イミダゾリル基などが挙げられる。長鎖脂肪酸の炭素数は、10〜30が好ましく、より好ましくは14〜20である。
カチオン性脂質としては、ステアリルアミン、パルミチルアミン、ミリスチルアミン、ジドデシルアミン、ジオクタデシルアミンなどが挙げられる。
リポソーム膜は、1種又は複数種の上記のリポソーム膜構成脂質から構成されることができる。
本明細書において、物質が「リポソーム膜に保持される」とは、該物質がリポソーム膜に結合してリポソーム膜表面から突出していてもよいし、リポソーム膜を構成する脂質二重膜に該物質の一部分もしくは全体が埋め込まれていてもよい。
R'−(PEG)−X−R (I)
(式中、(PEG)は上記のような分子量のポリエチレングリコールを表し、R'は、水素原子、メトキシ基、または(PEG)と2価の結合手を介して結合していてもよい反応性基であり、Rは、リポソーム膜構成脂質が有する基と反応性を有する基または脂質に由来する基であり、Xはリンカーである)
で表される化合物である。
式(I)におけるXとしてのリンカーは、Rの種類に応じて適宜選択することができ、例えば−CO−、−COCH2CH2CO−、−COCH2CH2CH2CO−などが挙げられる。
1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−350];
1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−550];
1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−750];
1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−1000];
1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−3000];
1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[ポリ(エチレングリコール)−5000];
1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−550];
1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−750];
1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−1000];
1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−3000];
1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[ポリ(エチレングリコール)−5000];
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[ビオチニル(ポリエチレングリコール)−2000] ナトリウム塩;
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[マレイミド(ポリエチレングリコール)−2000] ナトリウム塩;
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−550];
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−750];
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−1000];
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−3000];
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[ポリ(エチレングリコール)−5000];
1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−550];
1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−750];
1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−1000];
1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−3000];
1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[ポリ(エチレングリコール)−5000]。
ゲル−液晶相転移可能なリポソーム膜を構成するリポソーム膜構成脂質は公知であり、例えばジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、水素化大豆レシチン(HSPC)などが挙げられる。
金ナノ皮膜は、リポソームの表面の少なくとも一部分を被覆するように形成されていればよく、連続的な皮膜でなくてよいが、近赤外光を吸収して発熱する効果が高い点で、リポソームの表面の全体を被覆することが好ましい。
また、リポソームは、リポソーム膜構成脂質を超臨界状態の二酸化炭素に溶解、分散又は混合することを含む超臨界二酸化炭素法により得ることもできる。
リポソームと金イオン供給化合物との混合比は、リポソームを構成する脂質の合計モル数に比べて金イオン供給化合物に由来する金イオンのモル数が過剰であるのが好ましく、例えば、該脂質のモル数:金イオンのモル数=1:1〜1:10の範囲であり得る。
金イオン供給化合物と還元剤の混合比は、金イオンのモル数:還元剤のモル数=1:2〜1:10の範囲が好ましい。
上記の薬剤は、親水性物質および疎水性物質のいずれであってもよい。親水性物質である場合は、金ナノ皮膜被覆リポソームの内部の閉鎖空間の親水性領域に含有され、疎水性物質である場合は、金ナノ皮膜被覆リポソームのコアのリポソーム膜に保持されることとなる。
上記の薬剤の量は特に限定されず、薬剤の種類などにより適宜選択することができる。
上記の錠剤及びカプセルは、通常の方法により腸溶コーティングを施すことが望ましい。腸溶コーティングとしては、当該分野において通常用いられるものを利用できる。また、カプセルは粉末または液体のいずれを含有することもできる。
よって、本発明により、治療または予防を必要とする対象者に、上記の赤外光応答性薬剤放出システムの有効量を経口又は非経口的に投与し、一定期間経過後に対象の患部に赤外光を照射することを含む、疾患の治療又は予防方法が提供される。
上記の一定期間は、赤外光応答性薬剤放出システムの投与後少なくとも3時間が好ましく、より好ましくは3〜48時間、さらに好ましくは6〜24時間、さらにより好ましくは6〜12時間である。
(1)金ナノ皮膜被覆リポソームの作製
(1-1)リポソームの作製
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC、日本油脂社製)のクロロホルム溶液(10mg/ml)500μl (DPPC 6.81μmol)と、所定量のステアリルアミン(SA、シグマ社製)のクロロホルム溶液(1mg/ml)と、所定量の1,2-ジステアロイル-sn-ホスファチジルエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-5000] (PEG5000-PE、Avanti polar lipids.inc.製)のクロロホルム溶液(10mg/ml)とを混合し、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し薄膜を形成させ、3時間真空乾燥することで溶媒を完全に除去した。その後、pH 5.0の50mM酢酸緩衝液、pH7.0の50mMリン酸緩衝液、又はpH 8.5の50mM Tris-HCl緩衝液500μlを加え、47℃で5分間超音波照射し、47℃でエクストルーダーを用いて孔径100nmのフィルターを通すことでリポソーム分散液を得た。
DPPC/SA/PEG5000-PE/DOPE =66/10/4/20 mol%の量比となるように、DPPC、SA、PEG5000-PE及びジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE、日本油脂社製)を混合し、(1-1)と同様にして、リポソーム分散液を得た。
種々のpHの緩衝液4ml中に、全脂質量が0.621μmolとなるように(1-1)又は(1-2)で作製したリポソーム分散液を加え、次に25mMの四塩化金(III)酸(和光純薬工業)の水溶液60μl(1.5μmol)、及びホルマリン1.13μl(ホルムアルデヒド14μmol)を加えて、室温(25℃)にて静置し、金イオンを還元して、金ナノ皮膜被覆リポソームの分散液を得た。
なお、リン脂質の定量は、リン脂質Cテストワコー(和光純薬工業)を用いて、コリンオキシターゼ・DAOS法によって行った。試料溶液(リポソーム溶液)、ブランク溶液及び、標準溶液をそれぞれ発色溶液と混合し、37℃で5分間加温した。波長600nmで試料溶液の吸光度を日本分光(株)製V-520型紫外・可視光光度計を用いて測定し、得られた吸光度から試料溶液の濃度を決定した。
(2-1)金ナノ皮膜被覆リポソーム分散液のスペクトル測定
金ナノ皮膜被覆リポソーム分散液のスペクトルは、恒温層の付いたJasco製紫外・可視光光度分光計V-560及びV-630を用いて測定した。
銅グリッドにコロジオン膜を貼り、カーボン蒸着して、金ナノ皮膜被覆リポソーム分散液を垂らし、ろ紙で溶液をふき取り、デシケーターで一晩乾燥させ、透過型電子顕微鏡(JEM-2000FEX II、日本電子社製)にて観察した。
金ナノ皮膜被覆リポソーム分散液([全脂質濃度]=78μM、[Au濃度]=1.88×10-1 mM ただし、Au濃度は仕込みの塩化金酸濃度より求めたものである)に、波長809nm、出力密度 0.43W/cm2、ビーム径10mmのレーザ光を照射し、スターラーで撹拌しながら、熱電対にてその温度変化を測定した。
pH7.0の条件で作製した金ナノ皮膜被覆リポソーム分散液1ml([全脂質濃度]=166μM、[Au濃度]=3.77×10-1 mM)に、10% Triton X-100水溶液50μlを加え、スペクトルの時間変化を測定した。用いたリポソームの組成はDPPC/SA/PEG5000-PE = 91/5/4 mol%である。スペクトルの測定は、恒温層の付いたJasco製紫外・可視光光度分光計V-560及びV-630を用いて測定した。
(3-1)pH5.0において作製した金ナノ皮膜被覆リポソーム分散液のスペクトル変化
上記の(1-3)に記載のように、pH5.0の50mM酢酸緩衝液中において、リポソーム存在下で、ホルムアルデヒドを用いて金イオンを還元して、金ナノ皮膜被覆リポソームの分散液を得た。リポソームの膜構成脂質の組成は、DPPC/SA/PEG5000-PE=91/5/4 mol%であった。
金ナノ皮膜被覆リポソーム分散液は、時間の経過とともに金イオンの還元によるものと考えられるスペクトルの増大がみられたため、スペクトルの変化を追跡することで、金イオンの還元状況を調べた。金ナノ皮膜被覆リポソーム分散液を放置した日数によるスペクトルの変化を図1に示す。図1では、550nm付近にピークを持つ、幅広い領域における吸収が得られた。これは、金のナノ構造体による吸収ではなく、散乱による消光の割合が多いと考えられる。
750nmにおける吸光度の変化を図2に示す。図2より、金イオンの還元は9日後に終わっていると考えられる。
(1-3)に記載されるようにしてpH7.0の50mMリン酸緩衝液中で作製した金ナノ皮膜被覆リポソーム分散液を用いて、(3-1)と同様にしてスペクトルの変化を追跡することで、金イオンの還元状況を調べた。リポソームの膜構成脂質の組成は、DPPC/SA/PEG5000-PE=91/5/4 mol%であった。
金ナノ皮膜被覆リポソーム分散液を放置した時間によるスペクトルの変化を図3に示す。図3より、650nm付近にピークを持つ、シャープな吸収が得られた。このスペクトルは、シリカナノ粒子をコアとした金ナノシェルのスペクトルと非常に類似するため、リポソームをコアとした金ナノシェルが形成されていることが示唆される。
次に、750nmにおける吸光度の変化を図4に示す。図4より、金イオンの還元速度はpH5.0の条件よりも速いことが確認できた。
(1-3)に記載されるようにしてpH8.5の50mM Tris-HCl緩衝液中で作製した金ナノ皮膜被覆リポソーム分散液を用いて、(3-1)と同様にしてスペクトルの変化を追跡することで、金イオンの還元状況を調べた。リポソームの膜構成脂質の組成は、DPPC/SA/PEG5000-PE=91/5/4 mol%であった。
金ナノ皮膜被覆リポソーム分散液を放置した日数によるスペクトルの変化を図5に示す。図5より、650nm付近にピークを持つ、pH7.0で金イオンを還元したときよりも、さらに強い吸収が得られた。このスペクトルは、シリカナノ粒子をコアとした金ナノシェルのスペクトルと非常に類似するため、金ナノシェルが形成されていることが示唆される。
次に、750nmにおける吸光度の変化を図6に示す。図6より、金イオンの還元は6日程度で終わっていると考えられる。
図7の結果より、リポソームが存在しなければ、スペクトルの増大が起こらないので、金イオンが還元されていないと考えられる。
また、pH7.0 リン酸緩衝液中では、金イオンの還元は比較的迅速に行われることがわかった。さらに、pH7.0 リン酸緩衝液、及びpH8.5 Tris-HCl緩衝液中では、均質な金ナノ皮膜で覆われたリポソームが形成されている可能性が示唆された。
図1、3及び5で得られたスペクトルは、金のナノ構造体によるものと考えられるので、その形状、大きさなどを、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した。
結果を図9に示す。図9では、(a)pH5.0 酢酸緩衝液中で作製したもの、(b)pH7.0 リン酸緩衝液中で作製したもの、及び(c)pH8.5 Tris-HCl緩衝液中で作製したものを示す。
(a)では、凝集した粒子が観察された。これは、金ナノ粒子表面は負電荷を帯びて、静電反発によって分散力を得ると考えられるが、溶液中のプロトンが多いために、その負電荷が打ち消された結果、コロイドとしての分散力が低下して、金ナノ皮膜被覆リポソームが凝集したと考えられる。
(b)では、いびつな形の粒子が観察された。これは、金イオンの還元速度が比較的速いので、金ナノクラスターが不均一な成長をしたためだと考えられる。
(c)では、比較的均一な粒子が観察された。
上記のいずれのpHにおいても、粒子の直径は100nm程度であった。この直径は、用いたリポソームの直径とほぼ一致するので、リポソーム表面が金ナノ皮膜で被覆されていることが確認された。
金ナノ皮膜は、SAによりカチオンを有するリポソーム表面に塩化金イオンが集まり、塩化金イオン濃度が高くなるために還元されやすい状態になり、リポソーム表面近傍で金イオン還元による金ナノクラスターが生成し、そして、生成した金ナノクラスターがSAの一級アミン部位に吸着し、さらに成長して金ナノクラスター同士が融合することで、リポソーム表面上で生成していると考えられる。そこで、次に、リポソーム膜構成脂質及びPEG誘導体の合計に対するカチオン性脂質であるSAの含率が、金ナノ皮膜の光吸収特性にどのような影響を及ぼすのかについて、pH7.0 リン酸緩衝液中の金ナノ皮膜被覆リポソーム分散液を放置した時間によるスペクトル変化を調べた。
(3-5)と同様にして、pH8.5 Tris-HCl緩衝液中の金ナノ皮膜被覆リポソーム分散液のスペクトル変化を調べた。SA含率が0mol%の場合の結果は図13に、SA含率が7.5mol%の場合の結果は図14に、SA含率が10mol%の場合の結果は図15に示す。図13では、スペクトルの増大はほとんどみられなかった。時間経過とともに一度少し増大したスペクトルが、減少してきていることから、金イオンは多少還元されているが、凝集・沈殿してしまったと考えられる。図14では、800nm付近にピークをもつスペクトルが得られた。図15では、近赤外領域である900nm付近にピークを持つスペクトルが得られた。図16にSA含率とピーク波長の関係を示す。pH7.0の場合と同様に、SAの含率が増加するほど、ピーク波長は長波長側にシフトしていることがわかる。pH7.0とpH8.5の場合の結果を比較すると、同じSA含率のリポソームを用いて、金ナノ皮膜を有するリポソームを作製したときでは、pH8.5 Tris-HCl緩衝液中で作製したほうが、ピーク波長はより長波長側であることがわかる。これは金イオンの還元速度が、金ナノ皮膜の形状に影響を与え、その結果がスペクトルに反映されているためであると考えられる。
等方的に成長した金ナノ粒子や、棒状の金ナノ粒子である金ナノロッドや、シリカナノ粒子をコアとした金ナノシェルは、それぞれの光吸収特性に合わせたレーザ光を照射すると発熱することが知られている。そこで、本発明の金ナノ皮膜被覆リポソームに、近赤外光を照射して発熱するかを検討した。
用いたコアとなるリポソームの組成は、DPPC/SA/PEG5000-PE/DOPE =66/10/4/20 mol%であった。金ナノ皮膜被覆リポソームは、[全脂質濃度]=78μM、[Au濃度]=1.88×10-1 mMであった。金ナノ皮膜で被覆されたか又はされていないリポソームに、0.43 W/cm2の出力密度で、809nmのレーザを用いて近赤外光を照射し、金ナノ皮膜被覆リポソーム分散液の温度の変化を測定した。
その結果を図17に示す。図17のグラフは、y軸に近赤外光を照射する前の金ナノ皮膜被覆リポソーム分散液の温度から増加した温度を、x軸に時間をとる。図17より、金ナノ皮膜で被覆されていないリポソーム(▲)では30分で10℃程度の発熱しかみられなかったのに対し、金ナノ皮膜を有するリポソーム(●)では、30分で30℃近い発熱がみられた。この結果から、金ナノ皮膜を有するリポソームは近赤外光を照射することで、発熱することが確認された。
Claims (6)
- リポソーム膜を構成する脂質としてカチオン性脂質を含むリポソームと金イオン供給化合物とを、水性媒体中で、金微粒子をシードとして用いることなく、かつカチオン性脂質に予め金属触媒を担持させることなく、還元剤の存在下に接触させて、金ナノ皮膜で被覆されたリポソームを得ることを含む、金ナノ皮膜が波長670〜900nmの近赤外光領域に吸収ピークを有する金ナノ皮膜被覆リポソームの製造方法。
- カチオン性脂質がステアリルアミン、パルミチルアミン、ミリスチルアミン、ジドデシルアミン、ジオクタデシルアミンから選択される請求項1に記載の製造方法。
- カチオン性脂質がステアリルアミンである請求項1又は2に記載の製造方法。
- 金イオン供給化合物が、金の無機塩である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 金ナノ皮膜で表面を被覆されてなり、リポソーム膜を構成する脂質として、5〜10mol%のステアリルアミンを含み、金ナノ皮膜が波長670〜900nmの近赤外光領域に吸収ピークを有することを特徴とする金ナノ皮膜被覆リポソーム。
- ポリエチレングリコールがリポソーム膜に保持されてなる請求項5に記載の金ナノ皮膜被覆リポソーム。
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