JP5276927B2 - 浸水予測装置 - Google Patents
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Description
一方、上記のように物理量データを入力せずに、自然災害の予測を行う方法もある。特許文献2はその例であり、各地域における降雨データと土砂災害発生・非発生の実績情報を用いて解析モデルによる演算を行い、土砂災害の発生限界線等を求める防災事業計画支援システムが示されている。
過去の実績データより土砂災害を予測する後者の場合、上記のような問題は解決される。
一方、本発明の目的のように浸水災害を対象とする場合を考える。浸水災害は、自然条件に加えて、排水設備など複雑に配置される社会基盤の影響も大きい。この点から考えると、浸水予測は、目的に応じて細かい領域から広い領域を単位として簡易に分析や予測、結果表示ができるものであることが望ましい。
機械学習モデルは、入力されたデータを対象に解析を行い、そのデータに潜む規則や判断基準などを抽出するものである。抽出した規則や判断基準は、未知のデータに対する予測に使用できる。手法としてはニューラルネットワークやサポートベクターマシンなどの手法が知られる。
60分最大雨量とは、ある一日の任意の60分間の降雨量の最大値である。60分間最大雨量は降雨状況を表す際によく用いられる指標であり、入手が比較的容易である。また、浸水発生に対する影響も大きい。
メモリ5はRAM(ランダムアクセスメモリ)やROM(リードオンリーメモリ)からなり、各種のデータやプログラム等を一時的に、あるいは恒久的に保存する。
データベース13は、後述の浸水予測装置1の行う処理に用いる各種のデータを読出し可能に保存しておくためのものである。
本実施形態では浸水予測装置1が記憶部11を内蔵し、記憶部11がデータベース13を保持する構成となっている。しかし、浸水予測装置1と記憶部11とデータベース13の構成は様々な形態をとり得る。例えば、記憶部11が浸水予測装置1とネットワークを介して接続する構成や、データベース13が記憶部11と独立して浸水予測装置1と接続する構成などが可能である。
通信部9は通信制御装置、通信ポート等を有する。ネットワーク21に接続し、各種情報の送受信を行う。本実施形態では、浸水予測装置1をネットワーク21に接続する構成となっているが、これをスタンドアローンとする構成でもよく、この場合通信部9は不要である。
出力部17は例えばプリンタやドライブ装置など、浸水予測装置1からのデータ出力を行うための周辺装置である。また、浸水予測装置1と各装置を接続し、データ出力を行うためのインタフェースを備える。
バス19は各装置間の制御信号やデータ信号等の授受を媒介する経路である。
浸水範囲データおよび降雨量データは、予め入力部15等を介して浸水発生日と関連付けて入力され、データベース13に保存されている。
浸水範囲データおよび降雨量データは、浸水発生日をキーとして検索することができる。
データの選択は、例えば、浸水予測装置1が処理中に表示部7に表示させる画面において、マウスの右クリック等によりデータ選択画面を出現させ、データ選択画面で過去の浸水発生日の日付を選択する。これにより浸水発生日に対応する浸水範囲データおよび降雨量データが選択されるようにしておく。
浸水範囲データの場合、東京23区の過去の浸水発生日における浸水範囲が地図と共に示されている画像データを、スキャナ等の入力部15あるいは通信部9等を介して取り込んだ後、GIS(Geographic Information System、地理情報システム)ソフトウェアを用いてベクターデータに変換するなどの方法により、浸水範囲が地図データと共に示された浸水範囲データを作成することができる。
図3は浸水予測装置1の処理に係る各種データの例を示す第1の図であり、降雨量データの例が示されている。降雨量データは複数の降雨観測地点と、過去の浸水発生日における各観測地点の60分間最大雨量を表形式で対応付けたデータである。各行が観測地点、各列が浸水発生日に対応するテーブルが作成され、各浸水発生日の各観測地点における60分間最大雨量が対応するセルに書き込まれる。
表示画面の例を、図4を用いて説明する。
表示画面31は、地図表示部33と各種操作部とを有する。
地図表示部33は、浸水範囲や降雨量の他、浸水予測結果等を地図と共に表示する。また、地図の拡大および縮小、スクロール等が可能である。
図5は、浸水予測装置1の処理に係る表示画面の例を示す第2の図である。地図表示部33において、地図の拡大表示がされている。
45は降雨量の観測地点を示す。降雨量の多少に応じた凡例に沿って、各観測地点における浸水発生日の60分間最大雨量を示す塗分けが行われる。35は60分間最大雨量の多少に応じた塗分けを示す凡例である。41は浸水範囲であり、浸水した範囲を示す。
49は表示項目設定部である。クリックすると表示項目設定画面(不図示)が表示される。表示項目設定画面では、道路や行政界など地図表示部33における様々な要素を選択して表示・非表示の選択ができ、適宜見やすい画面とすることができる。
先ほどメモリ5に保存した浸水範囲データおよび降雨量データも、表示項目設定部49をクリックして表示させた表示項目設定画面において、地図表示部33に表示することを選択すると、地図表示部33に表示される。
53は浸水判定指示部である。浸水判定基準として用いる値を入力し、メッシュ計算ボタンをクリックすると、CPU3が浸水判定の演算を開始する。
55は機械学習指示部である。SVM学習ボタンをクリックすると、CPU3がサポートベクターマシンによる機械学習の演算を開始する。
57は予測計算指示部である。予測計算ボタンをクリックすると、CPU3が浸水予測計算を開始する。
59は終了指示部である。終了ボタンをクリックすると、CPU3が表示画面31を閉じる。
ステップS201の処理の後、操作者はメッシュ分割条件設定部51にメッシュ分割の大きさ(X方向(画面横方向)およびY方向(画面縦方向))とメッシュ分割開始位置の座標(左上端座標点のX座標およびY座標)、およびメッシュ分割数(X方向およびY方向)の値を入力し、メッシュ分割条件を設定する(ステップS202)。CPU3は、設定されたメッシュ分割条件をメモリ5に保存する。メモリ5に保存したメッシュ分割条件に基づくメッシュ分割の様子は、表示項目設定部49をクリックして表示させた表示項目設定画面において、地図表示部33に表示することを選択すると、地図表示部33に表示される。
また、本実施形態では、メッシュ幅と、メッシュ開始位置と、メッシュ分割数とを定めることでメッシュ分割が定まる。しかし、メッシュ分割の定め方はこれに限らない。例えば、メッシュ開始位置およびメッシュ終了位置(例えば右下端座標点)と、メッシュ分割数を入力することで、メッシュ分割条件を設定することもできる。その他、様々なメッシュ分割条件の設定方法が考えられる。
加えて、メッシュ分割の形態も長方形以外の多角形を用いるなど種々考えられる。メッシュ分割条件の設定方法もこれに対応して様々のものが考えられる。
CPU3は、入力された浸水面積比の値をメモリ5に保存する。
加えて、浸水面積比以外にも浸水有無の判定基準は考えられる。例えば各メッシュ領域における所定の地点が浸水すれば浸水有りと判定するなどが考えられる。入力する値の種類、形式もこれに対応して様々なものが考えられる。
メッシュIDは個々のメッシュ領域を識別するもので、各浸水範囲データを通して、同じメッシュ領域には同じメッシュIDが与えられる。
浸水有無テーブルは、各メッシュ領域のメッシュIDと各浸水範囲データの浸水発生日と、浸水有無の判定結果を対応付けるものである。
図7は、浸水予測装置1の処理に係る各種データの例を示す第2の図であり、浸水有無テーブルの形式を示すものである。
浸水有無テーブルは、各行がメッシュID、各列が浸水発生日に対応する表形式で作成される。各浸水範囲データの各メッシュ領域について、浸水が有ったと判定された場合には、浸水発生日およびメッシュIDの対応するセルに1を書き込む。浸水が無かったと判定された場合には−1を書き込む。
メモリ5に保存した浸水有無データは、表示項目設定部49をクリックして表示させた表示項目設定画面において、地図表示部33に表示することを選択すると、地図表示部33に表示される。
図8は、浸水予測装置1の処理に係る表示画面の例を示す第4の図である。浸水有無データを地図表示部33に表示した例である。71は浸水が有ったと判定されたメッシュ領域であり、黒く塗られている。
ここで、サポートベクターマシンの実行プログラムはメモリ5のROMに格納するようにしてもよいし、記憶部11よりメモリ5に読み込んで機械学習を行わせるようにしてもよい。
図9は、サポートベクターマシンの概念の説明図であり、特徴ベクトルがプロットされた空間を示している。図中の白丸81および黒丸83はデータの集合である。白丸81と黒丸83は2つのクラスを表している。それぞれ、1と−1のラベルが与えられている。
本実施形態では、図9の空間は各メッシュID(メッシュ領域)について作成される。特徴ベクトルは東京23区の31箇所の観測地点それぞれの60分間最大雨量に相当する。白丸81および黒丸83のデータ集合は、同じメッシュIDであるが浸水発生日の異なるデータ集合に相当する。2つのクラスは各浸水発生日において、浸水有りと判定されたか浸水無しと判定されたかに相当する。
wTx+b=0,w∈RN,x∈RN,b∈R (1)
ここで、xは特徴ベクトル(各観測地点の60分最大雨量)、wは特徴ベクトルに対する重み付け係数、bは定数である。またNは観測地点の総数である。
本実施形態においては分離平面の式(1)の左辺を浸水判別式として用いる。
各メッシュ領域について作成される浸水判別式は、重み付けの係数と定数が互いに異なる。
図10は、浸水予測装置1の処理に係る各種データの例を示す第3の図であり、予測基準テーブルの形式を示す。各行がメッシュID、各列が各観測地点に対応する。また、浸水判別式における定数を書き込むための列が加えられる。
CPU3は、上記のテーブルを作成し、サポートベクターマシンを用いた機械学習の結果である浸水判別式の係数値および定数値を、メッシュIDと観測地点の対応する位置に書込み、予測基準データを作成する。
検討降雨量データは、入力部15や通信部9を介して前もって入力したものであり、データベース13に保存されている。また、浸水予測に用いる検討降雨量データは、浸水予測の際に直接入力するようにしてもよい。
また、メモリ5に保存した検討降雨量データは、表示項目設定部49をクリックして表示させた表示項目設定画面において、地図表示部33に表示することを選択すると、地図表示部33に表示される。
検討降雨量データは、各行が各観測地点に対応する検討降雨量テーブルを作成し、各観測地点の60分間最大雨量を一列に書き込んだ表形式のデータである。各観測地点の60分間最大雨量に様々な値を入力し、任意の降雨状況を模擬することができる。検討する降雨状況が複数ある場合には、列を増やして60分最大雨量を同様に書き込む。
また、浸水判別式については、下記のような識別関数を定義しておく。
f(x)=sgn(wTx+b) (2)
ここで、sgn()は()内が正または0なら1、()内が負なら−1をとる符号関数である。
浸水判別式について、wおよびbは図10の予測基準テーブルの行方向に、xは図11の検討降雨量テーブルの列方向に書き込まれている。CPU3は、予測基準テーブルと検討降雨量テーブルを用いて浸水判別式の値を求め、浸水判別式の値が0または正の値であれば、浸水有りと判定する。このとき識別関数(2)の値は1となる。浸水判別式の値が負の値であれば、浸水なしと判定する。このとき識別関数(2)の値は−1となる。このようにして、全てのメッシュ領域について浸水予測を行う。
浸水予測テーブルは、図12に示すように、各行がメッシュIDに対応し、検討降雨量データの降雨時の各メッシュ領域における浸水予測の結果を一列に書き込んでゆくものである。浸水有りと判定されたメッシュ領域のメッシュIDには1を、浸水なしと判定されたメッシュ領域のメッシュIDには、−1を書き込む。検討降雨量データが複数ある場合は、列を追加してその浸水予測結果を書き込んでゆく。
選択された検討降雨量データ全てで、各メッシュ領域の浸水予測を行い、浸水予測テーブルに予測結果を書込むと、浸水予測テーブルを浸水予測データとしてメモリ5に保存する。
以下、図13から図16を参照しながら、本発明の浸水予測装置1による浸水予測の実施例について説明する。
本実施例では、東京23区における2005年9月4日の浸水結果と、過去の浸水発生日の浸水範囲データおよび降雨量データにサポートベクターマシンを適用して作成した予測基準データを用い、2005年9月4日の降雨量データを検討降雨量データとして、2005年9月4日の浸水予測を行った結果とを比較した。
浸水範囲データおよび降雨量データは、東京都建設局ホームページ(http://www.kensetsu.metro.tokyo.jp/index.html)より入手し、これをもとに作成したものである。降雨量データは、東京23区の31箇所の観測地点における60分間最大雨量である。
ここで、メッシュ分割条件は、図13に示すような形で東京23区の浸水範囲データに対し設定した。
すなわち、縦500m×横500mの大きさのメッシュ領域で、東京23区の範囲をカバーするようにメッシュ分割条件を設定した。
これにより、東京23区全域が細かくメッシュ分割されることとなった。
図13は、本発明の浸水予測装置1を用いて浸水予測を行った実施例に係る表示画面を示す第1の図であり、本実施例のメッシュ分割の様子を示したものである。
また、浸水判定に用いる浸水面積比は5%とした。
図14は本発明の浸水予測装置1を用いて浸水予測を行った実施例に係る表示画面を示す第2の図であり、作成した浸水有無データを表示画面上に表示したものである。浸水有りと判定されたメッシュ領域がグレーで塗られたものである。
図15は本発明の浸水予測装置1を用いて浸水予測を行った実施例に係る表示画面を示す第3の図であり、図14の地図表示部を拡大したものである。
まず、選択した浸水発生日の浸水範囲データのそれぞれについて、上記浸水有無データ作成時と同じメッシュ分割条件によるメッシュ分割を行い、浸水面積比を5%として浸水有無データを作成した。
作成した浸水有無データと、選択した浸水発生日の降雨量データに対して、サポートベクターマシンを用いた機械学習を行った。その結果として各メッシュ領域の浸水判別式を示す予測基準データが作成された。
図16は、本発明の浸水予測装置1を用いて浸水予測を行った実施例に係る表示画面を示す第4の図であり、浸水予測データを表示画面上に表示したものである。浸水有りと判定されたメッシュ領域がグレーで塗られたものである。
3………CPU
5………メモリ
7………表示部
9………通信部
11………記憶部
13………データベース
15………入力部
17………出力部
19………バス
21………ネットワーク
Claims (7)
- 所定領域における浸水の有無を予測する浸水予測装置であって、
前記所定領域の過去の浸水発生時における浸水範囲のデータを前記所定領域の地図データと共に示す浸水範囲データと、前記過去の浸水発生時における降雨量データと、検討降雨量データと、を入力する入力手段と、
メッシュ分割条件と、浸水判定基準とを設定するパラメータ設定手段と、
前記浸水範囲データを前記メッシュ分割条件に基づいてメッシュ分割し、各メッシュ領域について前記浸水判定基準により浸水の有無を判定し、浸水有無データを作成する浸水判定手段と、
前記浸水有無データと前記降雨量データに対して機械学習モデルを適用し、前記各メッシュ領域における浸水の有無を降雨量より予測する浸水予測基準データを作成する機械学習手段と、
前記検討降雨量データと前記浸水予測基準データより、前記検討降雨量データの降雨量時の前記各メッシュ領域における浸水の有無を予測する浸水予測データを作成する予測計算手段と、
前記浸水予測データを、前記所定領域の前記地図データと共に表示可能な表示手段と、
を有することを特徴とする、浸水予測装置。 - 前記機械学習モデルは、サポートベクターマシンであることを特徴とする、請求項1に記載の浸水予測装置。
- 前記浸水判定基準は、前記各メッシュ領域の面積に対する前記メッシュ領域内の浸水面積の比であることを特徴とする、請求項1および請求項2のいずれかに記載の浸水予測装置。
- 前記表示手段は、更に、前記浸水有無データと、前記降雨量データと、前記検討降雨量データと、を前記所定領域の前記地図データと共に表示可能であることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の浸水予測装置。
- 前記浸水発生時は、一日を単位とし、
前記降雨量データおよび前記検討降雨量データは、複数の観測所のそれぞれにおける浸水発生日の60分最大雨量であることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の浸水予測装置。 - 前記表示手段は、更に、前記メッシュ分割条件を設定するメッシュ分割条件設定部と、前記浸水判定基準を設定して浸水判定手段を動作させる浸水判定指示部と、前記機械学習手段を動作させる機械学習指示部と、前記予測計算手段を動作させる予測計算指示部と、を表示することを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれかに記載の浸水予測装置。
- コンピュータを請求項1から請求項6のいずれかに記載の浸水予測装置として機能させるプログラム。
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