JP5276036B2 - Mems素子とその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光通信用の波長選択スイッチ等に使用される静電駆動型のMEMS素子とその製造方法に関するものである。
大容量の情報(データ)を伝送するために光通信が利用されるようになった。光ネットワークの中では、赤外線の生成、伝送、切り替え、受光をする素子を使用している。これらの素子を電子制御することによって、情報を伝達している。光の切り替えのために使用される素子は、光スイッチ素子と呼ばれ、波長多重されている光を分波して波長ごとに光路を切り替える波長選択スイッチ(Wavelength Selective Switch;WSS)、波長多重されている光を分波しないでその光路を切り替える光クロスコネクトスイッチ(Optical Cross Connect Switch;OXC)などのスイッチがある。これらの光スイッチは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)あるいは液晶、PLC(Planar Waveguide Circuits)などを使用して構成されている。
PLCを使用する場合、光導波路で構成された干渉装置と局所加熱構造を利用して、温度によって干渉状態を変えて光路を切り替えるTOスイッチで光スイッチを実現している。この場合、1×2のスイッチが実現できるので、1×Nのスイッチを構成するには1×2のスイッチを多段に接続する。そして、この光スイッチと、波長多重されている光を波長ごとに分波する素子と、光路を切り替えた後に合波する素子とを組み合わせてWSSを構成する。PLCの場合には、分波と合波をAWG(Arrayed Waveguide Grating)で実現しているので、信号光を光導波路から外部に取り出すことなくスイッチングを実現することができる。
これに対して、MEMSと液晶を利用したWSSは、ファイバで伝送されてきた信号光をいったんファイバの外の空間に取り出し、グレーティングなどの波長分散素子を使用して、波長多重された光を波長ごとに異なる位置に導く。MEMSを使用したWSSの場合には、光の波長ごとに異なる位置にMEMSミラーを配置している。n波の光を取り扱うスイッチの場合には、n個のMEMSミラーを配置する。MEMSミラーに照射される光とMEMSミラーとの相対角度を変化させることによって、反射光の伝播する方向の制御、すなわちスイッチングを実現している。
光の分波にグレーティングなどの波長分散素子を使用した場合には、異なる波長の光を分離できるが、虹に見られるように連続した波長の光は連続した空間に分波される。すなわち、波長差の小さい2つの光は、近接した空間に分波される。通信用の光も、ITU(International Telecommunication Union)が規定したグリッドと呼ばれる周波数に中心波長がある光を利用する。そのため、WSSでは、取り扱える波長数に応じた数のMEMSミラーを、波長に応じた(正確には波長と光学系に応じた)間隔で近接してアレイ状に配置することが必須となる。現状のMEMSミラーでは、ミラーの間隔が、100μm程度の間隔となる。
このMEMSミラーアレイでは、電磁力を利用するミラー構造や、静電気力を利用するミラー構造が利用されている。いずれの力を利用するミラー構造でも、可動構造と固定構造との間、すなわち離れた構造体の間に力が作用するように設計されている。
WSSに用いるMEMSミラーでは、原理的にミラーを近接配置しなければならないことと、離れた構造体の間に作用する力を使用していることから、作用力が隣接するミラーにも作用してしまう、いわゆる干渉が発生してしまうという問題がある。静電引力を利用する場合には電気干渉となり、電磁力を使用する場合には磁気干渉となる。
いずれにしても干渉を抑止するためには、電場シールドあるいは磁気シールドなどの遮蔽技術を利用しなければならないが、100μm程度と近接したMEMSミラーの間に効果的な遮蔽構造を配置することは非常に困難である。
ミラー間の干渉を防止する方法としては、特許文献1で示されているように、隣接するミラー構造間に壁状の構造を配置する方法や、特許文献2で示されているように、隣接するミラーあるいは配線までの距離を大きくする方法や、電位がかかる配線などの構造を平面GND電極の下層に配置する多層構造を利用する方法などがある。しかし、WSSに用いられるMEMSミラーアレイは、光学設計で決定される厳密な位置にミラー構造を配置することが求められ、ミラー構造間距離を大きくすることも、配線とミラー構造間の距離を自由に大きくすることもできず、電気干渉が大きくなってしまうという問題が発生しやすい。
また、隣接ミラー構造間に壁などの構造体を配置することは非常に有効であるが、スイッチの特性を考慮すると、隣接するミラー間の距離は際限なく小さいほうが良く、電気シールドのための構造を配置することによって、スイッチの特性を下げて妥協しなければならないという問題がある。ミラーチップと電極チップを接合するバルクマイクロマシーニング技術によってミラーを形成する場合には、電極チップ側に電気シールドのための構造を形成するのが一般的である。
例えば、駆動電極構造を立体的に形成して、その電極構造内に可動電極が入り込むような構造を採用している素子の場合には、可動電極の上部から回り込む電界が隣の素子の可動電極に影響を与える可能性がある。
このような電界をシールドするために、例えば図8、図9、図10に示すようにミラー基板側にも電界シールド構造を形成した例が非特許文献1に開示されている。図8は非特許文献1に開示されたWSSチップの斜視図、図9は図8のWSSチップのA−A’線断面図、図10は図8のWSSチップのC−C’線断面図である。
WSSチップは、ミラー基板100と電極基板200とを接合し、ミラー基板100に形成された平面視矩形の開口部101に電界シールド基板300が嵌挿された構造を有している。図9、図10に示すように、ミラー基板100は、シリコンからなる支持層102と、シリコン酸化膜からなる埋め込み酸化膜(Buried Oxide;BOX)層103と、SOI(Silicon on Insulator)層104とからなる。支持層102とBOX層103には、SOI層104が露出する開口部101が形成されている。開口部101のSOI層104には、板ばね105a,105bと、ミラー106と、連結部107a,107bとが形成されている。ミラー106は、一対の連結部107a,107bを通る、y軸と平行な第1の回動軸廻りに回動することができ、またミラー106の長さ方向と直交するx軸と平行な第2の回動軸廻りに回動することができる。板ばね105a、連結部107a、ミラー106、連結部107bおよび板ばね105bの整列が1つのMEMSミラー素子のミラー基板側の構造を形成しており、このような構造が整列方向と垂直なx軸方向に沿って複数配置されて、MEMSミラーアレイのミラー基板側の構造を形成している。
電極基板200の上には、1つのMEMSミラー素子毎に、板ばね駆動電極201a,201b,ミラー駆動電極202が設けられている。板ばね駆動電極201a,201bは、y軸と平行な方向、すなわち板ばね105a,105bの整列方向と平行な方向に沿って溝が形成された、断面がU字型の形状となっている。このような板ばね駆動電極201a,201bおよびミラー駆動電極202が1つのMEMSミラー素子の電極基板側の構造を形成しており、このような構造がx軸方向に沿って複数配置されて、MEMSミラーアレイの電極基板側の構造を形成している。
電界シールド基板300は、ミラー基板100の開口部101の深さ(支持層102とBOX層103とを足した厚さ)よりも薄いチップとして形成されるため、支持層102の表面の高さよりもやや低めに電界シールド基板300の表面が位置する。
特開2007−248809号公報 国際公開WO06/073111
M.Usui,S.Uchiyama,E.Hashimoto,K.Hadama,Y.Ishii,N. Matsuura,T.Sakata,N.Shimoyama,Y.Sato,H.Ishii,T.Matsuura,F.Shimokawa,and Y.Uenishi,"Electrically Separated Two-axis MEMS Mirror Array Module for Wavelength Selective Switches",Proc.of Optical MEMS'2009,Clearwater Beach,Florida,USA,Aug.17-20,2009,pp.158-159
図9、図10に図示するように電界シールド基板300はミラー基板100のSOI層104に接するように配置されるが、板ばね105a,105bには接触しないように配することが構造的に望まれる。しかしながら、実際には、電界シールド基板300をミラー基板100の開口部101に嵌挿する際に、電界シールド基板300が板ばね105a,105bと接触してしまう可能性があり、電界シールド基板300が板ばね105a,105bと接触してしまうと、板ばね105a,105bなどのミラーの構造体が破損する可能性が大きくなり、素子の歩留りが低下してしまうという問題点があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、電界シールド基板と板ばね等の可動電極との衝突を防止することができ、素子の歩留りを向上させることができるMEMS素子とその製造方法を提供することを目的とする。
本発明のMEMS素子は、第1の基板と、この第1の基板と対向して配置された第2の基板と、前記第1の基板の前記第2の基板と対向しない側の面上に接合された第3の基板と、前記第1の基板に変位可能に形成された可動電極と、前記第1の基板の前記第2の基板と対向しない側の面から前記可動電極まで至る開口部と、前記第2の基板の前記第1の基板と対向する側の面上に、前記可動電極との間に空隙を設けた状態で対向して配置された、前記可動電極を駆動する固定電極と、前記第3の基板の前記第1の基板と対向する側の面上に形成され、前記第1の基板の開口部に嵌挿されるシールド電極とを備え、前記第3の基板の水平方向の大きさは、前記第1の基板の開口部の水平方向の大きさよりも大きく、前記シールド電極の厚さは、前記第1の基板の開口部の深さと同じかあるいは前記第1の基板の開口部の深さよりも薄く、前記シールド電極が形成された側の前記第3の基板の面のうち前記シールド電極が形成されていない周辺部の面と、前記第3の基板と対向する側の前記第1の基板の面のうち前記開口部の周辺部の面とを接触させることにより、前記第3の基板及び前記シールド電極の厚さ方向の位置が固定されることを特徴とするものである。
また、本発明のMEMS素子の1構成例において、前記シールド電極は、前記可動電極と対向する位置に形成された凹部を有することを特徴とするものである。
また、本発明のMEMS素子の製造方法は、第1のSOI基板のSOI層に可動電極を形成する可動電極形成工程と、前記第1のSOI基板のシリコン支持層と埋め込み酸化膜層の一部であって、前記可動電極が形成された領域に存在する前記シリコン支持層と埋め込み酸化膜層とを、前記可動電極が露出するまでエッチング除去して前記第1のSOI基板に開口部を形成する開口部形成工程と、前記第1のSOI基板を所定の大きさに加工する第1のダイシング工程と、電極基板上に固定電極を形成する電極基板形成工程と、前記第1のSOI基板と前記電極基板とを、前記可動電極と前記固定電極とが離間して対向するように配置して接合する第1の基板接合工程と、前記第1のSOI基板とシリコン支持層の厚さが同じ第2のSOI基板のシリコン支持層を、前記第1のSOI基板の開口部の水平方向の大きさよりも小さいシールド電極の領域が残るようにエッチング除去するシールド電極形成工程と、前記第2のSOI基板を所定の大きさに加工する第2のダイシング工程と、前記第2のSOI基板のシールド電極を前記第1のSOI基板の開口部に嵌挿して、前記第1のSOI基板と前記第2のSOI基板とを接合する第2の基板接合工程とを備え、前記第2のSOI基板の加工後の水平方向の大きさは、前記第1のSOI基板の開口部の水平方向の大きさよりも大きいことを特徴とするものである。
また、本発明のMEMS素子の製造方法の1構成例は、さらに、前記第2のダイシング工程の前に、前記第2のSOI基板のシールド電極の周囲の埋め込み酸化膜層をエッチング除去する埋め込み酸化膜層除去工程を備えることを特徴とするものである。
また、本発明のMEMS素子の製造方法は、SOI基板のSOI層に可動電極を形成する可動電極形成工程と、前記SOI基板のシリコン支持層と埋め込み酸化膜層の一部であって、前記可動電極が形成された領域に存在する前記シリコン支持層と埋め込み酸化膜層とを、前記可動電極が露出するまでエッチング除去して前記SOI基板に開口部を形成する開口部形成工程と、前記SOI基板を所定の大きさに加工する第1のダイシング工程と、電極基板上に固定電極を形成する電極基板形成工程と、前記SOI基板と前記電極基板とを、前記可動電極と前記固定電極とが離間して対向するように配置して接合する第1の基板接合工程と、電界シールド基板に、前記SOI基板の開口部の水平方向の大きさよりも小さい導電材料からなるシールド電極を接合するシールド電極接合工程と、前記電界シールド基板を所定の大きさに加工する第2のダイシング工程と、前記シールド電極を前記SOI基板の開口部に嵌挿して、前記SOI基板と前記電界シールド基板とを接合する第2の基板接合工程とを備え、前記電界シールド基板の加工後の水平方向の大きさは、前記SOI基板の開口部の水平方向の大きさよりも大きく、前記シールド電極の厚さは、前記SOI基板の開口部の深さと同じかあるいは前記SOI基板の開口部の深さよりも薄いことを特徴とするものである。
また、本発明のMEMS素子の製造方法の1構成例は、さらに、前記第2のダイシング工程の前に、前記シールド電極の前記可動電極と対向する位置に凹部を形成する凹部形成工程を備えることを特徴とするものである。
本発明によれば、第3の基板の水平方向の大きさを、第1の基板の開口部の水平方向の大きさよりも大きくすることにより、シールド電極を第1の基板の開口部に嵌挿したときに、第3の基板が第1の基板と接触して、第3の基板の厚さ方向の位置が固定される。このとき、シールド電極の厚さは、第1の基板の開口部の深さと同じかあるいは第1の基板の開口部の深さよりも薄いので、シールド電極と可動電極とが衝突することはない。その結果、本発明では、電気干渉を防止する電界シールド基板としてその効果を実現できる形状・構造の第3の基板を実現することができ、かつ第3の基板を第1の基板に接合する際に、シールド電極と可動電極とが衝突して可動電極が破損することを防止することができ、歩留まりを向上させることができる。
また、本発明では、シールド電極の可動電極と対向する位置に凹部を形成することにより、シールド電極と可動電極との衝突の可能性を更に低減することができる。
また、本発明では、可動電極を形成した第1のSOI基板とシリコン支持層の厚さが同じ第2のSOI基板のシリコン支持層を、第1のSOI基板の開口部の水平方向の大きさよりも小さいシールド電極の領域が残るようにエッチング除去し、第2のSOI基板の加工後の水平方向の大きさが第1のSOI基板の開口部の水平方向の大きさよりも大きくなるように第2のSOI基板を加工し、第2のSOI基板のシールド電極を第1のSOI基板の開口部に嵌挿して、第1のSOI基板と第2のSOI基板とを接合する。これにより、本発明では、シールド電極を第1のSOI基板の開口部に嵌挿したときに、第2のSOI基板が第1のSOI基板と接触して、第2のSOI基板の厚さ方向の位置が固定される。このとき、シールド電極の厚さは、第1のSOI基板の支持層の厚さと同じなので、シールド電極と可動電極とが衝突することはない。その結果、本発明では、電気干渉を防止する電界シールド基板としてその効果を実現できる形状・構造の第2のSOI基板を実現することができ、かつ第2のSOI基板を第1のSOI基板に接合する際に、シールド電極と可動電極とが衝突して可動電極が破損することを防止することができ、歩留まりを向上させることができる。
また、本発明では、電界シールド基板に、SOI基板の開口部の水平方向の大きさよりも小さく、かつSOI基板の開口部の深さと同じかあるいはSOI基板の開口部の深さよりも薄い導電材料からなるシールド電極を接合し、電界シールド基板の加工後の水平方向の大きさがSOI基板の開口部の水平方向の大きさよりも大きくなるように電界シールド基板を加工し、シールド電極をSOI基板の開口部に嵌挿して、SOI基板と電界シールド基板とを接合する。これにより、本発明では、シールド電極をSOI基板の開口部に嵌挿したときに、電界シールド基板がSOI基板と接触して、電界シールド基板の厚さ方向の位置が固定される。このとき、シールド電極の厚さは、SOI基板の開口部の深さと同じかあるいはSOI基板の開口部の深さよりも薄いので、シールド電極と可動電極とが衝突することはない。その結果、本発明では、電気干渉を防止する基板としてその効果を実現できる形状・構造の電界シールド基板を実現することができ、かつ電界シールド基板をSOI基板に接合する際に、シールド電極と可動電極とが衝突して可動電極が破損することを防止することができ、歩留まりを向上させることができる。
本発明の実施の形態に係るWSSチップの斜視図である。 本発明の実施の形態に係るWSSチップの断面図である。 本発明の実施の形態においてミラー基板に電界シールド基板を嵌挿する前のWSSチップの断面図である。 本発明の実施の形態に係るWSSチップの断面図である。 本発明の実施の形態に係るWSSチップのミラーと板ばねと電極の構造を示す斜視図である。 本発明の実施の形態において板ばねが下方向に変位したときの様子を示す断面図である。 本発明の実施の形態において板ばねが変位していないときの様子を示す断面図である。 従来のWSSチップの斜視図である。 従来のWSSチップの断面図である。 従来のWSSチップの断面図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態に係るMEMS素子であるWSSチップの斜視図である。WSSチップは、ミラー基板100と電極基板200とを接合し、ミラー基板100に形成された平面視矩形の開口部101に電界シールド基板300aが嵌挿された構造を有している。電界シールド基板300aは、ミラー基板100の支持層をエッチング除去した開口部101よりも幅広の張出部301を有しているため、電界シールド基板300aがミラー基板100の開口部101に嵌め込まれた際に、この張出部301がミラー基板100の支持層の表面に接するように接合される。
図2は図1のWSSチップのB−B’線断面図、図3はミラー基板100に電界シールド基板300aを嵌挿する前のWSSチップの断面図、図4は図1のWSSチップのD−D’線断面図、図5は図1のWSSチップのミラーと板ばねと電極の構造を示す斜視図である。なお、図5では、記載を容易にするため、板ばねの上部にある電界シールド基板300aの記載を省略している。
図2〜図5に示すように、ミラー基板100は、シリコンからなる支持層102と、シリコン酸化膜からなるBOX層103と、SOI層104とからなる。支持層102とBOX層103には、SOI層104が露出する開口部101が形成されている。開口部101のSOI層104には、可動電極である板ばね105a,105bと、ミラー106と、連結部107a,107bとが形成されている。板ばね105a,105bの一端は、周辺部のSOI層104である枠部(不図示)に固定されている。図2〜図5の例では、y軸方向に平行な線上に、板ばね105aおよび板ばね105bが整列されている。また、板ばね105aおよび板ばね105bは、各々の他端が、ミラー基板の法線方向(z軸方向)に変位可能な片持ち梁構造となっている。
板ばね105aと板ばね105bの間には、屈曲可能な一対の連結部107a,107bにより連結されてミラー106が配置されている。ミラー106は、板ばね105aおよび板ばね105bと1列に配列されて板ばね105aと板ばね105bの間に回動可能に配置されている。連結部107aは、板ばね105aの他端とミラー106とを連結し、連結部107bは、板ばね105bの他端とミラー106とを連結している。図2〜図5の例では、y軸方向に平行な線上に、板ばね105a、連結部107a、ミラー106、連結部107b、板ばね105bが順に整列している。
ミラー106は、一対の連結部107a,107bを通る、y軸と平行な第1の回動軸廻りに回動することができ、またミラー106の長さ方向と直交するx軸と平行な第2の回動軸廻りに回動することができる。ミラー106の表面には、金やアルミニウムなどから構成された反射膜が形成され、例えば赤外領域の光を反射可能としている。以上のような板ばね105a、連結部107a、ミラー106、連結部107bおよび板ばね105bの整列が1つのMEMSミラー素子のミラー基板側の構造を形成しており、このような構造が整列方向と垂直なx軸方向に沿って複数配置されて、MEMSミラーアレイのミラー基板側の構造を形成している。
一方、電極基板200の上には、1つのMEMSミラー素子毎に、板ばね駆動電極201a,201b,ミラー駆動電極202a,202bが設けられている。ミラー基板100と電極基板200とが接合されたとき、板ばね駆動電極201a,201bは、それぞれ板ばね105a,105bと対向するように配置され、ミラー駆動電極202a,202bは、ミラー106と対向するように配置されている。板ばね駆動電極201a,201bは、y軸と平行な方向、すなわち板ばね105a,105bの整列方向と平行な方向に沿って溝が形成された、断面がU字型の形状となっている。この板ばね駆動電極201a,201bの大きさは、図6に示すように、板ばね105a,105bが下方向に変位したときに、対向する板ばね駆動電極201a,201bと触れることなく板ばね駆動電極201a,201bの溝の中に入ることができるように設定されている。
以上のような板ばね駆動電極201a,201bおよびミラー駆動電極202a,202bが1つのMEMSミラー素子の電極基板側の構造を形成しており、このような構造がx軸方向に沿って複数配置されて、MEMSミラーアレイの電極基板側の構造を形成している。すなわち、一対の板ばね105a,105bと、ミラー106と、一対の連結部107a,107bと、一対の板ばね駆動電極201a,201bと、一対のミラー駆動電極202a,202bで1つのMEMSミラー素子が構成されている。
板ばね駆動電極201a,201bには、板ばね105a,105bを駆動するための駆動電圧が、図示しない板ばね駆動電極配線を介して供給される。また、ミラー駆動電極202a,202bには、ミラー106を駆動するための駆動電圧が、図示しないミラー駆動電極配線を介して供給される。なお、板ばね105a,105bとミラー106と連結部107a,107bとは、等電位とされる。ここで、等電位とは、例えば接地電位とすればよい。
次に、MEMSミラー素子の動作について説明する。まず、第2の回動軸廻りの回動について説明する。まず、板ばね駆動電極201bに所定の駆動電圧を印加することで、発生した静電引力により板ばね105bに対して電極基板200の側に引き寄せる力を加えれば、板ばね105bが、枠部に支持されている一端を支点としてたわみ(変形し)、板ばね105bの他端が電極基板200の側に引き寄せられるように変位する。この結果、ミラー106は、連結部107aを支点として連結部107bの側が電極基板200の側に引き寄せられるようにして回動する。これは、MEMSミラー素子の配列方向(x軸方向)に平行な、ミラー106の中央部を通る第2の回動軸廻りにミラー106が回動していることになる。
一方、板ばね駆動電極201aに所定の駆動電圧を印加することで、静電引力により板ばね105aに対して電極基板200の側に引き寄せる力を加えれば、板ばね105aが、枠部に支持されている一端を支点としてたわみ、板ばね105aの他端が電極基板200の側に引き寄せられるように変位する。この結果、ミラー106は、連結部107bを支点として連結部107aの側が電極基板200の側に引き寄せられるようにして回動する。この回動動作は、板ばね駆動電極201bに駆動電圧を印加する場合と反対の方向にミラー106を回動させることになる。
次に、第1の回動軸廻りの回動について説明する。ミラー駆動電極202a,202bに印加する電圧を制御することで、一対の連結部107a,107bを通る第1の回動軸廻りにミラー106を回動させることができる。例えば、ミラー駆動電極202aに対してミラー駆動電極202bよりも高い電圧を印加すれば、ミラー106は、第1の回動軸を中心として、ミラー駆動電極202aの側に傾くように回動する。以上のようにして、ミラー106は、直交する2軸で回動する。
本実施の形態では、板ばね駆動電極201a,201bを、断面がU字型の形状とすることにより、以下に説明するように、隣接配置されているMEMSミラー素子との間のクロストークを抑制することができるようになる。MEMSミラー素子は、隣接するMEMSミラー素子との間隔を狭くして配置されるため、板ばね駆動電極201a,201bを単純な平行平板電極とした場合、静電引力が当該MEMSミラー素子の板ばねに対してだけでなく、隣のMEMSミラー素子の板ばねにも影響を与え、その位置が変位してしまうことがある。この結果、隣り合うミラー106の間で電気干渉(クロストーク)が発生する場合がある。
これに対して、本実施の形態では、板ばね駆動電極201a,201bを、断面がU字型の形状とすることにより、MEMSミラー素子毎に板ばねを駆動するための電界を分離することができ、クロストークを抑制することができる。ただし、図6に示したように、板ばね105a,105bが板ばね駆動電極201a,201bの溝の中に入る場合には、当該板ばね駆動電極201a,201bの上部から回り込む電界が隣のMEMSミラー素子の板ばね105a,105bに影響を与える可能性がある。そこで、本実施の形態では、このような電界の回り込みを防止するために、ミラー基板100の開口部101に電界シールド基板300aを嵌挿している。
図2〜図4に示すように、電界シールド基板300aは、シリコンからなるシールド電極302と、BOX層303と、SOI層304とからなる。シールド電極302は、板ばね105a,105b、ミラー106および連結部107a,107bと等電位(接地電位)とされる。
電界シールド基板300aをミラー基板100の開口部101に嵌挿したとき、板ばね105a,105bの上部にシールド電極302とBOX層303とSOI層304とが配置され、またミラー106と連結部107a,107bとが露出するように電界シールド基板300aにはシールド電極302とBOX層303とSOI層304とを貫通する開口部305が形成されている。本実施の形態の素子をWSSチップとして使用する場合、図4に示すように、信号光は、開口部305を通ってミラー106に入射して反射され、再び開口部305を通って外部に出射することになる。上記のように、板ばね駆動電極201a,201bおよびミラー駆動電極202a,202bに印加する駆動電圧を制御することで、ミラー106の回動角を制御することができ、入射光を所望の角度に反射できるようになっている。
電界シールド基板300aのBOX層303およびSOI層304の水平方向(x軸方向およびy軸方向)の大きさは、ミラー基板100の開口部101の水平方向の大きさよりも大きくなるように設定されている。この開口部101よりも幅広のBOX層303およびSOI層304が張出部301を構成している。電界シールド基板300aをミラー基板100の開口部101に嵌挿するときに電界シールド基板300aを降下させると、図2、図4に示すように、張出部301のBOX層303がミラー基板100の支持層102と接触して、電界シールド基板300aのz軸方向の位置が固定される。電界シールド基板300aのシールド電極302の厚さは、ミラー基板100の支持層102と同じかあるいは支持層102よりも薄くなるように設定されている。したがって、電界シールド基板300aをミラー基板100の開口部101に嵌挿したときに、シールド電極302が板ばね105a,105bなどのミラーの構造体と衝突することはない。ミラー基板100の支持層102とBOX層103とを足した厚みと、シールド電極302の厚みとの差が、シールド電極302と板ばね105a,105bとの間隔になる。
さらに、シールド電極302の板ばね105a,105bと対向する面には、凹部306が形成されている。この凹部306は、電界シールド基板300aがミラー基板100の開口部101に嵌挿されたとき、板ばね105a,105bと対向し、かつy軸と平行な方向、すなわち板ばね105a,105bの整列方向と平行な方向に沿って延びるように形成されている。凹部306の大きさは、図7に示すように、板ばね105a,105bが変位していないときに凹部306の中に入ることができるように設定されている。
次に本実施の形態に係るWSSチップの製造方法について説明する。まず、ミラー基板100の製造方法について述べる。ミラー基板100は、SOIの基板を利用して作製する。SOI基板をスターティング基板として、公知のリソグラフィ技術を使用してSOI層104に板ばね105a,105b、ミラー106および連結部107a,107bを形成する。
最初に、スピンコーティング法を使用してSOI層104の面上に感光性レジストを所望の膜厚で塗布する。パターンに応じた形状の遮光体を有するレチクル(マスク)を、感光性レジストを塗布した基板に位置合わせをして保持する。感光性レジストの感光波長の光をレチクルに照射して、その遮光体の影を、感光性レジストを塗布したウエハ上で結像させる。所望のパターンが所望の寸法で得られるように、光を照射する時間を決定した後に照射する。潜像が焼き付けられた状態のレジストを現像液に浸し、所望のパターンが所望の寸法で形成できるように、現像液にレジスト付きウエハを浸す時間を決定し、その決定した時間の間だけ、ウエハを現像液に浸す。その後ウエハ全体を乾燥させてレジストを硬化させる。ここまでで、SOI基板上にレジストのパターンを形成できた。
次に、形成したレジストをマスクにして、シリコンの深堀加工技術であるDRIE(Deep Reactive Ion Etching )エッチング技術を用いてSOI層104に板ばね105a,105b、ミラー106および連結部107a,107bなどを形成する。その際に、エッチング中間膜を利用しても良いし、レジストをエッチングマスクとして直接的にシリコンを加工してもよい。シリコンのエッチング後にマスクに使用した感光性レジストを除去する。除去後は清浄なシリコン面を露出させるために洗浄をする。
その後、ベース基板(支持層102)を加工する。まず、SOI面側に保護用の有機膜を塗布する。感光性レジストを使用しても良いし、ポリイミドなどの加工性が明らかとなっている膜を利用しても良い。この膜は最終的に除去しなければならないので、剥離性、除去性に富んだ膜を利用することが望ましい。ただし、この保護膜がついている状態で裏面の加工にレジストを使用するので、その際に問題を発生させない材料を選択することが必須となる。
SOI層104の表面に保護膜を形成した後に、支持層102に感光性レジスト膜と塗布する。この感光性レジストの塗布の場合には、SOI面側が塗布装置の試料台に接触することになるが、保護膜が堆積されているので、SOI面に形成した構造が破損することはない。
感光性レジストを塗布した後に、所望のパターンに応じた形伏の遮光体を有するレチクル(マスク)を、感光性レジストを塗布した基板に位置合わせ、特にSOI面の構造体との位置合わせをして保持する。感光性レジストの感光波長の光をレチクルに照射して、その遮光体の影を、感光性レジストを塗布したウエハ上で結像させる。そして、所望のパターンが所望の寸法で得られるように、光を照射する時間を決定した後に照射する。潜像が焼き付けられた状態のレジストを現像液に浸し、所望のパターンが所望の寸法で形成できるように、現像液にレジスト付きウエハを浸す時間を決定し、その決定した時間の間だけ、ウエハを現像液に浸す。その後ウエハ全体を乾燥させてレジストを硬化させる。ここまでで、ベース基板上にレジストのパターンを形成できた。
次に、形成したレジストをマスクにして、シリコンの深堀加工技術であるDRIEエッチング技術を用いてSOI層104にミラー106および連結部107a,107bを形成した部分の不要な支持層102のシリコンをエッチング除去する。その際に、シリコン酸化膜などのエッチング中間膜を利用しても良いし、レジストをエッチングマスクとして直接的にシリコンを加工してもよい。シリコンのエッチング後にマスクに使用した感光性レジストを除去する。除去後は清浄なシリコン面を露出させるために洗浄をする。
次に、BOX層103をエッチング除去する。BOX層103は、シリコン酸化膜で形成されているので、希フッ酸などのフッ酸系の溶液でウェットエッチングすることができる。フッ酸系の溶液を使用したシリコン酸化膜のウェットエッチングでは等方的なエッチングとなるので、支持層102の下部にあるシリコン酸化膜も一部エッチングされることになる。設計上あるいは特性上の問題が顕在化する場合には、ウェットエッチングではなく、ドライエッチングを使用する。いずれにしても、シリコン酸化膜のエッチングは公知のエッチング技術を使用しても問題にならない。こうして、支持層102とBOX層103とをエッチング除去することで、平面視矩形の開口部101をミラー基板100に形成できた。
その後、SOI層104のミラー構造などのパターンを保護している有機膜をエッチング除去して、可動可能な構造体を形成する。ウエハ上に複数のチップが形成されている場合には、ダイシングと呼ばれる、ウエハを切断してチップごとに切り離す工程を経た後に、SOI層104の保護膜をエッチング除去する。
最後に、ミラー106の表裏面に通信波長の光を反射するために金属膜を堆積する。ここでは、例えば使用する赤外線の反射率を大きくするために金あるいはアルミニウムなどの金属を堆積する。構造体の表面がシリコンの場合には、堆積する金やアルミニウムのシリコンヘの密着性を向上させるために、チタンあるいはクロムなどの密着性向上層を利用する。ミラー106の平坦度を良好にすることができる場合には、ミラー106の裏面(図4の下面)に金属を堆積する必要はない。部分的に金属膜を堆積するためには、ステンシルマスクなどを使用して金属を蒸着法あるいはスパッタ法などを利用して堆積する。以上の方法により、回動可能なミラー106を備えるミラー基板100が形成される。
次に、電極基板200の製造方法について述べる。まず、ベースとなる基板の表面に熱酸化膜を形成する。この熱酸化膜の表面に金属スパッタ膜を堆積して後続のメッキプロセスの第1シード層として利用する。その後レジストを塗布して、公知のリソグラフィ技術を使用して板ばね駆動電極配線およびミラー駆動電極配線を形成するために必要なレジストパターンを形成する。そして、このレジストパターンをマスクに金属、例えば金をメッキ成長させる。
板ばね駆動電極配線およびミラー駆動電極配線の形成後、マスクとしたレジストを剥離して、洗浄後、不用な第1シード層部分はエッチング除去する。板ばね駆動電極配線およびミラー駆動電極配線を形成したベース基板の上に、CVD(Chemical Vapor Deposition )法などにより絶縁膜、例えばシリコン酸化膜を堆積する。シリコン酸化膜の表面の平坦性が悪い場合には絶縁膜を堆積した後に平坦化工程を実施する。この絶縁膜上にレジストをスピンコーティング法によって塗布し、続いて公知のリソグラフィ技術でビアホール形成用のレジストパターンを形成する。このレジストをマスクにして、公知のエッチング技術を使用して絶縁膜をエッチングし、ビアホールを形成する。ビアホール形成後に表面を覆っているレジストを剥離し、表面が清浄になるように洗浄をする。
次に、絶縁膜の表面に金属スパッタ膜を堆積して後続のメッキプロセスの第2シード層として利用する。レジストを塗布して、公知のリソグラフィ技術を使用して板ばね駆動電極201a,201bおよびミラー駆動電極202a,202bを形成するためのレジストパターンを形成する。そして、そのレジストパターンをマスクにしてメッキ法で板ばね駆動電極201a,201bおよびミラー駆動電極202a,202bを形成する。そして、レジストを剥離した後に、不要な第2シード層をエッチング除去し、再度洗浄して表面を清浄な状態にする。板ばね駆動電極201a,201bとその下部の板ばね駆動電極配線とは、絶縁膜に形成されたビアホールを介して接続される。同様に、ミラー駆動電極202a,202bとその下部のミラー駆動電極配線とは、ビアホールを介して接続される。
続いて、絶縁膜上の板ばね駆動電極201a,201bおよびミラー駆動電極202a,202bの外側に、板ばね105a,105bと板ばね駆動電極201a,201b間のギャップおよびミラー106とミラー駆動電極202a,202b間のギャップを形成するための台座を形成する。この台座の高さは、板ばね駆動電極201a,201bよりも高くなるように設定されることは言うまでもない。このような台座を形成するために、絶縁膜上に厚いレジストをスピンコーティング法によって塗布し、続いて公知のリソグラフィ技術でレジストパターンを形成する。このレジストをマスクにして、絶縁膜上に台座をメッキ法で形成し、その後に表面を覆っているレジストを剥離し、表面が清浄になるように洗浄をする。
以上の方法により、電極基板200が形成される。上述した電極基板200の形成方法では、板ばね駆動電極201a,201b、ミラー駆動電極202a,202b、板ばね駆動電極配線、ミラー駆動電極配線および台座の材料に金(Au)を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。これらの電極、配線および台座の材料としては、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、銅(Cu)、スズ(Sn)、銀(Ag)などが使用できるし、またこれらの材料の化合物を使用しても良い。また、シリコンなどの半導体材料を用いても良い。
また、本実施の形態では、メッキ法を利用して各構造を形成しているが、導電膜を所望の厚さで堆積できるのであれば、スパッタ法、CVD法、蒸着法などの公知の膜堆積技術を使用しても問題ない。
ウエハ上に複数のチップが形成されている場合には、ダイシングと呼ばれる、ウエハを切断してチップごとに切り離す工程を経た後に電極基板200は完成する。
ミラー基板100と電極基板200を別々に形成した後に、ミラー基板100と電極基板200との位置合わせを行い、電極基板200の接合部の台座の上面にAgペーストを塗布し、ミラー基板100のSOI層104と電極基板200の台座とを接触させた状態で、加圧・加熱することによってAgペーストを固化させて、電極基板200にミラー基板100を接合する。こうして、ミラー基板100と電極基板200とは互いに平行に配置され、電極基板200の上に所定距離離間してミラー基板100が固定される。
次に、電界シールド基板300aの製造方法について述べる。ミラー基板100の製造に用いるSOI基板と支持層の厚さが同じSOI基板を使用して、シールド電極302となる支持層の表面に凹部306を形成する。凹部306は、図2、図3、図6、図7に示すように側面が傾斜していても良いし、側面が垂直であっても良い。
凹部306を形成するには、まずSOI基板の支持層の表面にレジストを塗布し、所望のパターンを有したマスクを使用して、公知のリソグラフィ技術を使用してレジストパターンを形成する。次に、レジストをエッチングマスクとして、支持層をエッチングする。側面が傾斜した凹部306を形成するには、TMAHまたはKOHの水溶液を用いてシリコンからなる支持層をウェットエッチングする。また、側面が垂直な凹部306を形成するには、DRIEによるドライエッチングを用いて支持層をエッチングする。いずれにしても公知のエッチング技術を用いて凹部306を形成することができる。シリコンのエッチング後には、レジストを剥離して洗浄する。
次に、ミラー基板100の開口部101のx軸方向およびy軸方向の大きさと電界シールド基板300aのシールド電極302のx軸方向およびy軸方向の大きさとが略同一になるように、シールド電極302となる支持層を残して、この支持層の周囲に張出部301を形成するための溝を形成する。この溝を形成するためには、支持層の表面に再度レジストを塗布して、形成したい口の字形状のパターンが配置されたマスクを使用してレジストパターンを形成する。こうして、溝を形成する支持層の表面のみレジストが塗布されていないレジストパターンが形成できた。形成したレジストパターンをエッチングマスクとし、DRIEによるドライエッチングを用いて支持層をエッチングする。ここでは、BOX層303が露出するまでエッチングする。BOX層303はエッチングストッパの役割も果たす。このエッチングにより、平面視矩形のシールド電極302と、そのシールド電極302の外側に広がるBOX層303およびSOI層304からなる張出部301とを形成できた。なお、シールド電極302をミラー基板100の開口部101に嵌挿することから明らかなように、実際には、シールド電極302の水平方向の大きさは、開口部101の水平方向の大きさよりも小さいことが好ましい。
次に、エッチング完了後の状態で、使用する電界シールド基板300aの大きさにダイシングする。SOI層304の厚みが強度的に十分である場合には、なんら問題なくダイシングできる。SOI層304の厚みが薄い場合には、ダイシング時に用いる水流でSOI層304部分が破損する恐れがある。その場合には、別途剛性を強化するためのチップを貼り付けるか、あるいはダイシングにステルスダイシングのような水流を利用しないダイシング法を用いる。以上の方法により、電界シールド基板300aが形成される。
次に、上記のようにミラー基板100と電極基板200とを接合した後に、電界シールド基板300aをミラー基板100の開口部101に嵌挿する。ミラー基板100の支持層102の厚みと電界シールド基板300aのシールド電極302を形成した支持層の厚みは、はじめに同じ厚みにしているので、電界シールド基板300aをミラー基板100の開口部101に嵌挿しても、シールド電極302が板ばね105a,105bなどのミラーの構造体と衝突することはない。
電界シールド基板300aとミラー基板100とを接合するには、電界シールド基板300aの張出部301のBOX層303の表面に堆積した半田とミラー基板100の支持層102の表面に堆積した半田とを利用して接合しても良いし、BOX層303の表面に堆積した金と支持層102の表面に堆積した金とを合わせてAu−Auの直接接合をしても良い。また、Agペーストを使用して接合しても良い。いずれにしても公知の接合技術を利用することができる。電界シールド基板300aを接合したミラー基板100を、パッケージにダイボンディングすればWSSチップが完成する。必要であれば、リッドがパッケージに接合されて気密封止されていても良い。
以上のように、本実施の形態では、電界シールド基板300aの水平方向の大きさを、ミラー基板100の開口部101の水平方向の大きさよりも大きくすることにより、シールド電極302をミラー基板100の開口部101に嵌挿したときに、電界シールド基板300aのBOX層303がミラー基板100の支持層102と接触して、電界シールド基板300aの厚さ方向の位置が固定される。このとき、シールド電極302の厚さは、ミラー基板100の支持層102の厚さと同じなので、シールド電極302と板ばね105a,105bとが接触することはない。その結果、本実施の形態では、電気干渉を防止する基板としてその効果を実現できる形状・構造の電界シールド基板300aを実現することができ、かつ電界シールド基板300aをミラー基板100に接合する際に、シールド電極302と板ばね105a,105bとが衝突して板ばね105a,105bが破損することを防止することができ、歩留まりを向上させることができる。
なお、本実施の形態では、ミラー基板100と電界シールド基板300aは別々の基板を使用しているが、同一の基板でミラー基板100と電界シールド基板300aを形成して、同時に切り出しても良い。この場合には、支持層102とシールド電極302の厚みは良い一致を示していることはいうまでもない。
また、本実施の形態では、電界シールド基板300aのシールド電極302の周囲のBOX層303を残しているが、電界シールド基板300aの電位をミラー基板100の電位と同一にするために、シールド電極302の周囲の露出しているBOX層303をエッチング除去しても良い。上記のようにBOX層303をエッチング除去しない場合には、電界シールド基板300aとミラー基板100とが同一の電位(例えば接地電位)になるように実装後に結線しておくことが重要である。
電界シールド基板300aのBOX層303をエッチング除去するプロセスとエッチング除去しないプロセスのいずれかを選択する際に、シールド電極302と板ばね105a,105bとが接触しないように、ミラー基板100と電界シールド基板300aのそれぞれのBOX層103,303の厚みを設定することが重要である。また、BOX層の厚みから、シールド電極302と板ばね105a,105bとが接触しないように、プロセスを選択することも可能である。
なお、本実施の形態では、BOX層103と303の厚みが同じ状態で、BOX層303をエッチング除去した場合、ミラー基板100の開口部101内に入るシールド電極302とBOX層303とを足した厚さが、開口部101の深さ(ミラー基板100の支持層102とBOX層103とを足した厚さ)と同じになるので、シールド電極302と板ばね105a,105bとが接触する可能性があるが、実際には電界シールド基板300aのSOI層304とミラー基板100の支持層102との間に接合用材料(半田、Au、Agなど)が存在し、この接合用材料の厚みの分だけシールド電極302と板ばね105a,105bとの間に間隙が生じるので、シールド電極302と板ばね105a,105bとが接触することはない。さらに、シールド電極302の板ばね105a,105bと対向する面には、凹部306が形成されているので、シールド電極302と板ばね105a,105bとの接触の可能性を更に低減することができる。
また、本実施の形態では、ミラー基板100および電界シールド基板300aの材料として、各層の膜厚精度が良いSOI基板を用いたが、他の材料を用いた多層基板を用いても良い。
また、本実施の形態では、SOI基板のシリコン支持層を利用してシールド電極302を作成しているが、これに限るものではなく、電界シールド基板とは別に導電材料でシールド電極を作製して、シールド電極を電界シールド基板に接合するようにしても良い。この場合も、シールド電極の厚さは、ミラー基板100の開口部101の深さと同じかあるいは開口部101の深さよりも薄くなるように設定すれば良い。
本発明は、波長選択スイッチ等の静電駆動型のMEMS素子に適用することができる。
100…ミラー基板、101,305…開口部、102…支持層、103,303…BOX層、104,304…SOI層、105a,105b…板ばね、106…ミラー、107a,107b…連結部、200…電極基板、201a,201b…板ばね駆動電極、202a,202b…ミラー駆動電極、300a…電界シールド基板、301…張出部、302…シールド電極、306…凹部。

Claims (6)

  1. 第1の基板と、
    この第1の基板と対向して配置された第2の基板と、
    前記第1の基板の前記第2の基板と対向しない側の面上に接合された第3の基板と、
    前記第1の基板に変位可能に形成された可動電極と、
    前記第1の基板の前記第2の基板と対向しない側の面から前記可動電極まで至る開口部と、
    前記第2の基板の前記第1の基板と対向する側の面上に、前記可動電極との間に空隙を設けた状態で対向して配置された、前記可動電極を駆動する固定電極と、
    前記第3の基板の前記第1の基板と対向する側の面上に形成され、前記第1の基板の開口部に嵌挿されるシールド電極とを備え、
    前記第3の基板の水平方向の大きさは、前記第1の基板の開口部の水平方向の大きさよりも大きく、
    前記シールド電極の厚さは、前記第1の基板の開口部の深さと同じかあるいは前記第1の基板の開口部の深さよりも薄く、
    前記シールド電極が形成された側の前記第3の基板の面のうち前記シールド電極が形成されていない周辺部の面と、前記第3の基板と対向する側の前記第1の基板の面のうち前記開口部の周辺部の面とを接触させることにより、前記第3の基板及び前記シールド電極の厚さ方向の位置が固定されることを特徴とするMEMS素子。
  2. 請求項1記載のMEMS素子において、
    前記シールド電極は、前記可動電極と対向する位置に形成された凹部を有することを特徴とするMEMS素子。
  3. 第1のSOI基板のSOI層に可動電極を形成する可動電極形成工程と、
    前記第1のSOI基板のシリコン支持層と埋め込み酸化膜層の一部であって、前記可動電極が形成された領域に存在する前記シリコン支持層と埋め込み酸化膜層とを、前記可動電極が露出するまでエッチング除去して前記第1のSOI基板に開口部を形成する開口部形成工程と、
    前記第1のSOI基板を所定の大きさに加工する第1のダイシング工程と、
    電極基板上に固定電極を形成する電極基板形成工程と、
    前記第1のSOI基板と前記電極基板とを、前記可動電極と前記固定電極とが離間して対向するように配置して接合する第1の基板接合工程と、
    前記第1のSOI基板とシリコン支持層の厚さが同じ第2のSOI基板のシリコン支持層を、前記第1のSOI基板の開口部の水平方向の大きさよりも小さいシールド電極の領域が残るようにエッチング除去するシールド電極形成工程と、
    前記第2のSOI基板を所定の大きさに加工する第2のダイシング工程と、
    前記第2のSOI基板のシールド電極を前記第1のSOI基板の開口部に嵌挿して、前記第1のSOI基板と前記第2のSOI基板とを接合する第2の基板接合工程とを備え、
    前記第2のSOI基板の加工後の水平方向の大きさは、前記第1のSOI基板の開口部の水平方向の大きさよりも大きいことを特徴とするMEMS素子の製造方法。
  4. 請求項3記載のMEMS素子の製造方法において、
    さらに、前記第2のダイシング工程の前に、前記第2のSOI基板のシールド電極の周囲の埋め込み酸化膜層をエッチング除去する埋め込み酸化膜層除去工程を備えることを特徴とするMEMS素子の製造方法。
  5. SOI基板のSOI層に可動電極を形成する可動電極形成工程と、
    前記SOI基板のシリコン支持層と埋め込み酸化膜層の一部であって、前記可動電極が形成された領域に存在する前記シリコン支持層と埋め込み酸化膜層とを、前記可動電極が露出するまでエッチング除去して前記SOI基板に開口部を形成する開口部形成工程と、
    前記SOI基板を所定の大きさに加工する第1のダイシング工程と、
    電極基板上に固定電極を形成する電極基板形成工程と、
    前記SOI基板と前記電極基板とを、前記可動電極と前記固定電極とが離間して対向するように配置して接合する第1の基板接合工程と、
    電界シールド基板に、前記SOI基板の開口部の水平方向の大きさよりも小さい導電材料からなるシールド電極を接合するシールド電極接合工程と、
    前記電界シールド基板を所定の大きさに加工する第2のダイシング工程と、
    前記シールド電極を前記SOI基板の開口部に嵌挿して、前記SOI基板と前記電界シールド基板とを接合する第2の基板接合工程とを備え、
    前記電界シールド基板の加工後の水平方向の大きさは、前記SOI基板の開口部の水平方向の大きさよりも大きく、
    前記シールド電極の厚さは、前記SOI基板の開口部の深さと同じかあるいは前記SOI基板の開口部の深さよりも薄いことを特徴とするMEMS素子の製造方法。
  6. 請求項3乃至5のいずれか1項に記載のMEMS素子の製造方法において、
    さらに、前記第2のダイシング工程の前に、前記シールド電極の前記可動電極と対向する位置に凹部を形成する凹部形成工程を備えることを特徴とするMEMS素子の製造方法。
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