JP5275727B2 - 酢酸−硝酸−リン酸系混酸廃液からのリン酸の分離回収方法 - Google Patents

酢酸−硝酸−リン酸系混酸廃液からのリン酸の分離回収方法 Download PDF

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Description

この発明は、例えば液晶製造工程や半導体製造工程等から排出される酢酸−硝酸−リン酸系混酸廃液からリン酸を長期間にわたって高効率でかつ選択性良く分離回収する方法に関し、特に剥離工程で出た油相の抽剤液を抽出工程に供給して抽剤液を長期間にわたって循環使用する方法に関する。
近年飛躍的に成長した液晶製造産業や半導体製造産業においては、その製造過程において多様な廃水が出るが、各廃水の種類、性質等に応じてしかるべき処理が施されて排出されている。例えば、液晶製造工程や半導体製造工程から酢酸、硝酸、リン酸が混合された混酸廃液が出るが、これらのうち例えばリン酸を分離回収できれば肥料としての有効利用が期待できるところであるが、このような混酸廃液からリン酸を分離回収することは現状では技術的に困難であることから、この混酸廃液に対して中和処理を施して排水するのが一般的であった。
上述のように酢酸、硝酸、リン酸が混合された混酸廃液に対して中和処理を施して排水する場合、この中和処理によって排水中に酢酸塩、硝酸塩等の塩が生じるので、少なからず環境汚染の原因となることは避けられず、環境保全の観点からするとこの中和処理は決して望ましい手段とは言えない。また、地球環境保全の要請から、近年リサイクル利用の重要性が叫ばれているが、従来の中和処理による排出方法は廃酸を全くリサイクル利用することなく捨ててしまう方法であるので、このような社会的要請にも全く応えることができないものであった。
そこで、本発明者らは、資源の有効利用を図り得て環境保護の要請にも十分に応えることができる、酢酸−硝酸−リン酸系混酸廃液からのリン酸の分離回収方法として、酢酸、硝酸及びリン酸を含む廃液と、トリアルキルホスフェートを含有してなる抽剤液とを混合することによって、該抽剤液中に前記酢酸及び硝酸を選択的に溶解させて抽出する酢酸・硝酸抽出工程と、前記抽出工程で出た抽出残液から前記リン酸を回収する工程と、前記酢酸・硝酸抽出工程で得られた酢酸・硝酸含有抽剤液と、剥離用水とを接触させることによって、前記酢酸及び硝酸をこの剥離用水に溶解移動せしめて酢酸及び硝酸を回収する工程とを備え、前記酢酸・硝酸回収工程(剥離工程)で出た油相の抽剤液を前記酢酸・硝酸抽出工程に供給することによって抽剤液を循環使用することを特徴とするリン酸の分離回収方法を開発し、特許出願した(特許文献1参照)。
上記分離回収方法は、例えば槽容積約2Lの研究用小型ミキサーセトラーを20槽用いた小型テスト装置では、剥離工程での分離不良も特になく、抽剤液を良好状態に循環使用することができた。
しかしながら、槽容積約200L(小型機の約100倍)の実証用ミキサーセトラーを22槽用いて商用運転に必要な最小レベルの循環量、廃混酸供給量でもって実施するためには、例えば実証機のミキサー先端の剪断速度を小型機の約37〜38m/分に対して約100m/分まで上げて実施しなければならないのであるが、このような実機レベルに対応させた状態で(実機レベルに対応させた循環量、廃混酸供給量で)運転すると、即ちミキサー先端の剪断速度を増大させると前記剥離工程において分離不良を生じてしまい、リン酸を分離回収できないという問題を生じていた。
即ち、スケールアップによって剥離工程のミキサー槽での攪拌時にブレークし難いエマルジョン状態が形成され、これによって剥離工程のセトラー槽での静置状態においても油相と水相のエマルジョン化が解消されず、このように油相と水相の分離性が低下するために剥離が十分に行われず、その結果、この剥離工程で出た油相の抽剤液は、不純物としての酢酸・硝酸の含有率が多いものとなっており、このためにこの剥離工程で出た抽剤液を次の酢酸・硝酸抽出工程に供給して循環使用してもこの工程で酢酸・硝酸の抽出を十分に行うことは難しく、これによって抽出残液(リン酸が分離される相)の方にも相当量の酢酸・硝酸が混在したものとなり、高純度のリン酸を回収するのが難しいという問題があった。実験レベルの小スケールではそれ程問題にはならなかったのであるが、実機など商業運転レベルまでスケールアップした場合には、前記油相と水相のエマルジョン化に起因した油相と水相の分離性の低下は顕著であった。即ち、上記特許文献1(請求項6)に記載された抽剤液を循環使用する手法において商業運転レベルまでスケールアップした場合には、高純度のリン酸水溶液を回収することはできなかったのである。
そこで、本発明者らは、実機商業運転レベルでのこのような剥離工程における分離不良発生の問題を解消し得る方法として、酢酸、硝酸及びリン酸を含む廃液と、トリアルキルホスフェート及び芳香族系有機溶剤(ケロシン等)を含有してなる抽剤液とを混合することによって、該抽剤液中に前記酢酸及び硝酸を選択的に溶解させて抽出する酢酸・硝酸抽出工程と、前記抽出工程で出た抽出残液から前記リン酸を回収する工程と、前記酢酸・硝酸抽出工程で得られた酢酸・硝酸含有抽剤液と、塩を含有した剥離用水とを接触させることによって、前記酢酸及び硝酸をこの剥離用水に溶解移動せしめる酢酸・硝酸剥離工程とを備え、前記酢酸・硝酸剥離工程で出た油相の抽剤液を前記酢酸・硝酸抽出工程に供給することによって抽剤液を循環使用することを特徴とする酢酸−硝酸−リン酸系混酸廃液からのリン酸の分離回収方法を開発し、特許出願した(特許文献2参照)。
上記特許文献2の分離回収方法を採用すれば、抽剤液を循環使用する手法において商業運転レベルまでスケールアップした場合においても、高純度のリン酸水溶液を回収することができるものとなった。
特開2004−160292号公報 特開2006−160534号公報
しかしながら、特許文献2の分離回収方法(特許文献2の実施例1の系)で運転を継続すると、運転開始から約600時間程度まではリン酸を高い濃度でかつ高純度で分離回収できていたものの、運転開始から約600時間経過した頃から剥離工程において油相と水相の分離不良が発生し始め、程なく分離不良状態に陥って運転の継続が困難になり、リン酸を分離回収することができなくなることがわかった。
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、小スケールのみならずスケールアップした実機レベルにおいても剥離工程での静置状態における油相と水相の良好な分離性を長期間にわたって維持することができて抽剤液の長期循環使用を十分に可能ならしめて、酢酸−硝酸−リン酸系混酸廃液からリン酸を長期間にわたって高効率でかつ選択性良く分離回収できると共に、資源の有効利用を図り得て環境保護の要請にも十分に応えることができる、酢酸−硝酸−リン酸系混酸廃液からのリン酸の分離回収方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究した結果、抽剤液の希釈溶剤として用いたケロシン等の芳香族系有機溶剤は、硝酸存在下では時間の経過と共に変質、劣化しやすく、このために運転開始から時間が経過すると剥離工程において油相と水相の分離不良が発生することがわかった。このような知見に基づいてさらに鋭意研究した結果、本発明を完成するに至ったものである。即ち、本発明は以下の手段を提供する。
[1]酢酸、硝酸及びリン酸を含む廃液と、トリアルキルホスフェート及び炭素数が6〜13の脂肪族直鎖飽和炭化水素を含有してなる抽剤液と、を混合することによって、該抽剤液中に前記酢酸及び硝酸を選択的に溶解させて抽出する酢酸・硝酸抽出工程と、
前記抽出工程で出た抽出残液から前記リン酸を回収する工程と、
前記酢酸・硝酸抽出工程で得られた酢酸・硝酸含有抽剤液と、剥離用水とを接触させることによって、前記酢酸及び硝酸をこの剥離用水に溶解移動せしめる酢酸・硝酸剥離工程とを備え、
前記酢酸・硝酸剥離工程で出た油相の抽剤液を前記酢酸・硝酸抽出工程に供給することによって抽剤液を循環使用することを特徴とする酢酸−硝酸−リン酸系混酸廃液からのリン酸の分離回収方法。
[2]前記抽剤液として、トリアルキルホスフェート/炭素数が6〜13の脂肪族直鎖飽和炭化水素=10/90〜90/10(体積比)の組成からなる抽剤液を用いる前項1に記載の酢酸−硝酸−リン酸系混酸廃液からのリン酸の分離回収方法。
[3]前記脂肪族直鎖飽和炭化水素として、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン及びn−トリデカンからなる群より選ばれる1種または2種以上の脂肪族直鎖飽和炭化水素を用いる前項1または2に記載の酢酸−硝酸−リン酸系混酸廃液からのリン酸の分離回収方法。
[4]前記脂肪族直鎖飽和炭化水素としてn−ドデカンを用いる前項1または2に記載の酢酸−硝酸−リン酸系混酸廃液からのリン酸の分離回収方法。
[5]前項1〜4のいずれか1項に記載の分離回収方法によって回収されたリン酸。
[1]の発明では、トリアルキルホスフェートを抽剤として用いているので、上記混酸廃液から酢酸と硝酸を同時に選択性良く抽出することができ、これにより抽出残液からリン酸を高効率で回収することが可能となる。また、酢酸と硝酸を同時に抽出できるので、抽出分離操作の工程数が少なくて済み、生産性が非常に良い。
また、抽剤(トリアルキルホスフェート)の希釈溶剤として炭素数が6〜13の脂肪族直鎖飽和炭化水素を用いているので、剥離工程での抽剤と剥離用水との剥離性が向上し、スケールアップした実機レベル(大スケール)においても、静置状態において油相と水相のエマルジョン化を抑制することができ、これにより油相と水相の分離性を格段に向上させることができて、この剥離工程を経て得られた油相の抽剤液は、酢酸・硝酸を含有しない純度の高い抽剤液となっているから、この抽剤液を酢酸・硝酸抽出工程に供給して循環使用することが十分に可能となる。即ち、酢酸・硝酸抽出工程において、この循環供給された抽剤液によって酢酸・硝酸を十分に抽出することができる。
更に、抽剤液は、トリアルキルホスフェートに加えて希釈溶剤として炭素数が6〜13の脂肪族直鎖飽和炭化水素を含有してなる構成であり、この炭素数6〜13の脂肪族直鎖飽和炭化水素は、硝酸存在下においても長期間にわたって変質することがないから、抽出工程及び剥離工程における油相と水相の良好な分離性を長期間にわたって維持することができる。
従って、本方法によれば、このように抽剤液を長期間循環使用できて安定した良好な運転状態を長期間にわたって維持することができてリン酸を連続的に分離できるので、より低コストでのリン酸の分離回収が可能となる。
[2]の発明では、抽剤液として、トリアルキルホスフェート/炭素数が6〜13の脂肪族直鎖飽和炭化水素=10/90〜90/10(体積比)の組成からなる抽剤液を用いるから、酢酸に対する抽出選択性が向上すると共に硝酸に対する抽出選択性も向上する利点がある。
[3]の発明では、脂肪族直鎖飽和炭化水素(溶剤)として、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン及びn−トリデカンからなる群より選ばれる1種または2種以上の脂肪族直鎖飽和炭化水素を用いるから、剥離工程における油相と水相の良好な分離性をより長期間にわたって維持することができる。
[4]の発明では、脂肪族直鎖飽和炭化水素(溶剤)としてn−ドデカンを用いるから、剥離工程における油相と水相の良好な分離性をより一層長期間にわたって維持することができる。
[5]の発明に係るリン酸は、上記いずれかの分離回収方法によって回収されたものであり、このリン酸は、例えば、化学工業原材料、製紙業原材料、高級肥料の原料等として再利用できる。
この発明に係る酢酸−硝酸−リン酸系混酸廃液からのリン酸の分離回収方法の一実施形態について図1のフロー図を参照しつつ説明する。本実施形態は、酢酸、硝酸及びリン酸を含む混酸廃水から、酢酸と硝酸を同時に抽出することによって抽出残液からリン酸を回収するものである。
まず、酢酸・硝酸抽出工程においては、ミキサー槽内に抽剤液(トリアルキルホスフェート/炭素数6〜13の脂肪族直鎖飽和炭化水素の混合液)を供給すると共に、酢酸、硝酸及びリン酸を含む混酸廃水も供給して、撹拌を行ってこれらを混合せしめた後、セトラー槽に移して静置することによって、油相である抽出液相と水相である抽出残液相との2層に分離させる。この際、トリアルキルホスフェート/炭素数6〜13の脂肪族直鎖飽和炭化水素の混合液からなる抽剤液は、酢酸及び硝酸に対する抽出選択性に優れるのに対し、リン酸を殆ど抽出しないので、酢酸及び硝酸は混酸廃水中から前記抽剤液へ選択的に溶解して油相である抽出液相に抽出される。
一方、前記酢酸・硝酸抽出工程で出た水相の抽出残液にはリン酸が残存しているので、この抽出残液をそのままリン酸水溶液として回収して利用することもできるし、任意の濃度まで濃縮して濃縮リン酸水溶液の状態で回収しても良い。また、リン酸の純度をさらに高めるための高純度化操作を施した上で利用に供するようにしても良い。
次の酢酸・硝酸剥離工程においては、ミキサー槽内に前記抽出工程で得られた抽出液(抽出酢酸・硝酸を含有した抽剤液)を供給すると共に、剥離用の水も供給し、撹拌を行ってこれらを混合せしめた後、セトラー槽に移して静置する。混合によって酢酸及び硝酸が水相に移行するので、油相と、酢酸・硝酸水溶液からなる水相の2層に分離する。この時、抽剤(トリアルキルホスフェート)の希釈溶剤として炭素数が6〜13の脂肪族直鎖飽和炭化水素を用いているので、(塩化金属塩等の塩を添加しなくても)剥離工程での抽剤と剥離用水との剥離性が向上し、スケールアップした実機レベルにおいても、セトラー槽での静置状態において油相と水相のエマルジョン化を抑制することができ、これにより油相と水相の分離性を格段に向上させることができるので、この剥離工程を経て得られた油相の抽剤液は、酢酸・硝酸を含有しない純度の高い抽剤液となっており、従ってこの抽剤液を酢酸・硝酸抽出工程に供給して循環使用することが十分に可能となる。即ち、この抽剤液を酢酸・硝酸抽出工程で用いれば、酢酸・硝酸を十分に抽出することができる。本方法では、実機レベルの大スケールでもこのように抽剤液を何度も循環使用できるので、低コストでリン酸を分離回収することができる。
更に、抽剤液は、トリアルキルホスフェートに加えて希釈溶剤として炭素数が6〜13の脂肪族直鎖飽和炭化水素を含有してなる構成であり、この炭素数6〜13の脂肪族直鎖飽和炭化水素は、硝酸存在下においても長期間にわたって変質することがなく安定であるから、前記酢酸・硝酸抽出工程及び前記酢酸・硝酸剥離工程における油相と水相の良好な分離性を長期間にわたって維持することができる。従って、本方法によれば、このように抽剤液を長期間循環使用できて安定した良好な運転状態を長期間にわたって維持することができてリン酸を連続的に分離できるので、より低コストでのリン酸の分離回収が可能となる。
本実施形態では、酢酸・硝酸抽出工程、酢酸・硝酸剥離工程のいずれにおいても、向流多段抽出法を採用している。この向流多段抽出法は、酢酸・硝酸抽出工程を例に挙げて説明すると、図2に示すように、複数個の抽出槽(A)を用いて、混酸廃水と抽剤液(トリアルキルホスフェート/炭素数6〜13の脂肪族直鎖飽和炭化水素の混合液)を向流させながら各抽出槽で抽出を行う方法であり、酢酸・硝酸剥離工程においても同様の手法を採用している。このような向流多段抽出法を採用することにより、酢酸と硝酸の抽出を十分に行うことができるので、より純度の高いリン酸を回収できる。
この発明において用いる抽剤液について説明する。抽剤液としては、トリアルキルホスフェート及び炭素数6〜13の脂肪族直鎖飽和炭化水素を含有してなる抽剤液を用いる。トリアルキルホスフェートを用いることで、酢酸−硝酸−リン酸系混酸廃液から酢酸と硝酸を同時に選択性良く抽出することが可能となる。中でも、トリアルキルホスフェート/炭素数6〜13の脂肪族直鎖飽和炭化水素=10/90〜90/10(体積比)の組成からなる抽剤液を用いるのが好ましく、この場合には酢酸に対する抽出選択性と硝酸に対する抽出選択性の両方を向上できる利点がある。より好適な比率範囲は、トリアルキルホスフェート/炭素数6〜13の脂肪族直鎖飽和炭化水素=15/85〜50/50(体積比)であり、特に好適な範囲はトリアルキルホスフェート/炭素数6〜13の脂肪族直鎖飽和炭化水素=20/80〜40/60(体積比)である。
前記トリアルキルホスフェートとしては、例えばトリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。これらの中でも、トリオクチルホスフェートを用いるのが好ましく、この場合には酢酸・硝酸に対する抽出選択性を一層向上させることができる。前記トリオクチルホスフェートとしては、特に限定されるものではないが、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェートを用いるのが好適であり、この場合には酢酸・硝酸に対する抽出選択性をより一層向上させることができる利点がある。
前記炭素数6〜13の脂肪族直鎖飽和炭化水素(溶剤)としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカン等が挙げられ、これらの1種を単独で用いても良いし、或いは2種以上を用いても良い。溶剤として芳香族系有機溶剤(ケロシン等)を用いた従来系では、この芳香族系有機溶剤が硝酸存在下において変質、劣化しやすいために、剥離工程における油相と水相の良好な分離性を長期間にわたって維持することができなかったのであるが、これに対し、炭素数6〜13の脂肪族直鎖飽和炭化水素は、硝酸存在下においても長期間にわたって変質することがないことから、剥離工程における油相と水相の良好な分離性を長期間にわたって維持することができる。なお、炭素数5以下の脂肪族直鎖飽和炭化水素は、沸点が低いので溶剤としては適さないし、炭素数14以上の脂肪族直鎖飽和炭化水素は、常温で固体であるのでこれも溶剤としては適さない。
中でも、前記脂肪族直鎖飽和炭化水素としては、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン及びn−トリデカンからなる群より選ばれる1種または2種以上の脂肪族直鎖飽和炭化水素を用いるのが好ましく、この場合には前記酢酸・硝酸剥離工程における油相と水相の良好な分離性をより長期間にわたって維持することができる。
なお、この発明の効果を阻害しない範囲であれば、前記抽剤液(トリアルキルホスフェート及び炭素数6〜13の脂肪族直鎖飽和炭化水素を含有する抽剤液)中に、他の公知の抽出剤(中性抽出剤、酸性抽出剤、塩基性抽出剤)を混合せしめても良い。
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
まず、予備実施として、各脂肪族直鎖飽和炭化水素(炭素数6〜13の範囲)を抽剤液の希釈溶剤として用いた場合における酢酸・硝酸存在下における油相と水相の分離性の時間経過による変化を調べた。
<予備実施例1>
トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)/n−ヘキサン=30/70(体積比)の組成からなる抽剤液と、表2に示すような組成からなる混酸廃水とを相比1:1で混合し、この混合液を100mLのガラス容器に入れて恒温槽(常時35℃)にセットした。午前10時にセットした後(開始した後)、毎日午前10時に前記混合液含有ガラス容器を振とう機で1分間振とうし、その後の油相と水相の分離性(2層分離性)を下記評価基準に基づいて評価した。
(油相と水相の分離性の評価基準)
「○」…油相と水相に分離するまでの時間が1分未満であり分離性良い
「△」…油相と水相に分離するまでの時間が1分以上5分未満
「×」…油相と水相に分離するまでの時間が5分以上。
<予備実施例2>
抽剤液として、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)/n−オクタン=30/70(体積比)の組成からなる抽剤液を用いた以外は、実施例1と同様にして油相と水相の分離性を評価した。
<予備実施例3>
抽剤液として、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)/n−デカン=30/70(体積比)の組成からなる抽剤液を用いた以外は、実施例1と同様にして油相と水相の分離性を評価した。
<予備実施例4>
抽剤液として、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)/n−ウンデカン=30/70(体積比)の組成からなる抽剤液を用いた以外は、実施例1と同様にして油相と水相の分離性を評価した。
<予備実施例5>
抽剤液として、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)/NSクリーン(商品名、三和油化工業株式会社製;n−ウンデカンとn−ドデカンの混合品)=30/70(体積比)の組成からなる抽剤液を用いた以外は、実施例1と同様にして油相と水相の分離性を評価した。
<予備実施例6>
抽剤液として、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)/n−ドデカン=30/70(体積比)の組成からなる抽剤液を用いた以外は、実施例1と同様にして油相と水相の分離性を評価した。
<予備実施例7>
抽剤液として、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)/n−トリデカン=30/70(体積比)の組成からなる抽剤液を用いた以外は、実施例1と同様にして油相と水相の分離性を評価した。
<予備比較例1>
抽剤液として、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)/ケロシン=30/70(体積比)の組成からなる抽剤液を用いた以外は、実施例1と同様にして油相と水相の分離性を評価した。なお、前記ケロシンとしては、昭和シェル石油製「Solvesso150」(商品名)を用いた。
表1から、炭素数6〜13の脂肪族直鎖飽和炭化水素(予備実施例1〜7)は、芳香族系有機溶剤であるケロシン(予備比較例1)と比較して、油相と水相の良好な分離性をより長期間にわたって維持できることがわかる(硝酸存在下においても長期間にわたって変質することがないことがわかる)。
Figure 0005275727
このような予備実施試験結果が得られたことから次のような実機テストを実施した。
<実施例1>
前項で例示した実施形態の分離回収方法(図1参照)に従い、酢酸、硝酸及びリン酸を含む混酸廃水からリン酸を分離回収した。この実施例1で用いた混酸廃水は、液晶製造工場から出た混酸廃水であり、表2に示すような組成であった(勿論、液晶製造工場から出る混酸廃水が全てこのような組成比にあるわけではなく、各工場等において様々に異なる)。各箇所での流量、各工程での段数、相比などの詳細な条件は図1中に示した。なお、抽剤液としては、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)/n−ドデカン=30/70(体積比)の組成からなる抽剤液を用いた。n−ドデカンとしては、ジャパンエナジー株式会社製「N12D」(商品名)を用いた。また、剥離用水としては、水道水(塩化金属塩等の塩を含有しない水)を用いた。なお、前記相比とは、油相流量に対する水相流量の比率(水相流量/油相流量)である。
この実施例1では、抽出工程でのミキサー槽の容量は50L、抽出工程でのセトラー槽の容量は150Lとし、このようなミキサーセトラー(200L)を12槽(12段)連結して抽出工程部を構成する一方、剥離工程でのミキサー槽の容量は50L、剥離工程でのセトラー槽の容量は150Lとし、このようなミキサーセトラー(200L)を10槽(10段)連結して剥離工程部を構成した。また、ミキサー槽の攪拌翼(パドル翼)の回転数は320rpmに設定した。
<比較例1>
抽剤液として、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)/ケロシン=30/70(体積比)の組成からなる抽剤液を用いた以外は、実施例1と同様にして、酢酸、硝酸及びリン酸を含む混酸廃水からリン酸の分離回収を試みた。なお、前記ケロシンとしては、昭和シェル石油製「Solvesso150」(商品名)を用いた。
Figure 0005275727
表2から明らかなように、実施例1の本発明の分離回収方法によれば、長期間にわたって抽出工程及び剥離工程共に分離性は良好状態が維持されており、酢酸、硝酸及びリン酸を含む混酸廃水から、リン酸を長期間にわたって高い濃度でかつ高純度で分離回収することができた。即ち、このように安定した良好な運転状態を長期間にわたって維持しつつリン酸を連続的に分離回収することができた。リン酸の回収率も95%以上を長期間にわたり維持できていた。
これに対し、抽剤液の希釈溶剤として芳香族系有機溶剤であるケロシンを用いた比較例1では、運転開始後しばらくの間は、リン酸を高い濃度でかつ高純度で分離回収できていたものの、運転開始後比較的短時間(約200時間)で剥離工程において分離不良状態に陥り、これ以降リン酸を分離回収することができなくなった。
混酸廃水からのリン酸の分離回収工程を示すフロー図である。 向流多段抽出法の説明図である。
符号の説明
A…抽出槽

Claims (4)

  1. 酢酸、硝酸及びリン酸を含む廃液と、トリアルキルホスフェート及び炭素数が6〜13の脂肪族直鎖飽和炭化水素を含有してなる抽剤液と、を混合することによって、該抽剤液中に前記酢酸及び硝酸を選択的に溶解させて抽出する酢酸・硝酸抽出工程と、
    前記抽出工程で出た抽出残液から前記リン酸を回収する工程と、
    前記酢酸・硝酸抽出工程で得られた酢酸・硝酸含有抽剤液と、剥離用水とを接触させることによって、前記酢酸及び硝酸をこの剥離用水に溶解移動せしめる酢酸・硝酸剥離工程とを備え、
    前記酢酸・硝酸剥離工程で出た油相の抽剤液を前記酢酸・硝酸抽出工程に供給することによって抽剤液を循環使用することを特徴とする酢酸−硝酸−リン酸系混酸廃液からのリン酸の分離回収方法。
  2. 前記抽剤液として、トリアルキルホスフェート/炭素数が6〜13の脂肪族直鎖飽和炭化水素=10/90〜90/10(体積比)の組成からなる抽剤液を用いる請求項1に記載の酢酸−硝酸−リン酸系混酸廃液からのリン酸の分離回収方法。
  3. 前記脂肪族直鎖飽和炭化水素として、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン及びn−トリデカンからなる群より選ばれる1種または2種以上の脂肪族直鎖飽和炭化水素を用いる請求項1または2に記載の酢酸−硝酸−リン酸系混酸廃液からのリン酸の分離回収方法。
  4. 前記脂肪族直鎖飽和炭化水素としてn−ドデカンを用いる請求項1または2に記載の酢酸−硝酸−リン酸系混酸廃液からのリン酸の分離回収方法。
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