JP5274278B2 - ターボファン及びターボファンを備えた空気調和装置 - Google Patents
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そして、従来より騒音の低減と消費電力の低減とが求められている。そのため、ターボファンの羽根車を複雑な三次元形状に改良することによってこの課題を解決する取り組みが過去に行われている(例えば、特許文献1)。
そして、回転するシュラウドに空気を導くための朝顔状のベルマウス(回転しない)が設置されている。このとき、シュラウドの端縁とベルマウスの端縁との間には、所定の間隔の隙間(ギャップ)が形成されている。
翼は、回転中心に近い方(内周側)を前縁部とし、回転中心から遠い方(外周側)を後縁部とし、回転中心と前縁部とを結ぶ半径方向の直線に対し、後縁部は回転方向の後方(遅れる方向)に位置している。そして、主板に平行な断面形状が、主板に近い範囲では直線状であるのに対し、シュラウドに近い範囲では略へ字状に曲がっている。
(あ)シュラウドとベルマウスとの間の隙間(ギャップ)を流れる「ギャップ流れ」が翼の負圧面側及に合流し、翼表面上の流れを乱していることについては十分考慮されていない。
(い)また、翼の前縁部における入口角(これについては別途詳細に説明する)は、前縁部において流れに適合しない場合、負圧面側に剥離を生じることについても十分考慮されていない。
(う)また、シュラウドは朝顔状に徐々に縮径する通風路を形成するにもかかわらず、通風路が縮流し通風抵抗(壁面と風の摩擦によるエネルギー損失)が増大することについても十分考慮されていない。
該主板に対向配置された円環状のシュラウドと、
前記主板と前記シュラウド間に配置され、前記主板の外周と前記シュラウドの外周とが形成する仮想円筒上にある後縁と、該後縁よりも回転方向の進む方向に進むと共に回転中心寄りにある前縁とを具備する複数枚の翼と、
を有し、
前記翼の前記主板に近い所定の第1領域において、前記主板から遠ざかるほど、前記翼の前縁の入口角が徐々に大きくなり、
前記翼の前記シュラウドに近い所定の第3領域において、前記シュラウドに近づくほど、前記翼の前縁が後縁に徐々に近づくと共に、前記翼の厚みが徐々に薄くなり、且つ、前記翼の負圧面に滑らかに凹む凹状部が形成され、
前記第1領域の前記シュラウドに最も近い位置における回転中心に対して垂直な断面の形状が、前記第3領域の前記主板に最も近い位置における回転中心に対して垂直な断面の形状に同じであって、前記第1領域と前記第3領域に挟まれた第2領域において、前記翼の前縁が回転中心に平行であることを特徴とする。
(2)また、本発明に係る空気調和装置は、空気を吸い込む吸込口および空気を吹き出す吹出口を具備する筐体と、
該筐体内に配置された(1)記載のターボファンと、
該ターボファンの前記主板に連結されたモーターと、
前記ターボファンの前記シュラウドに空気を案内するベルマウスと、
前記ターボファンの周囲に配置された熱交換器と、
を有することを特徴とする。
図1は本発明の実施の形態1に係る空気調和装置を模式的に示す側面視の断面図である。なお、図1は模式的に描かれたものであるから、各部材の相対的な大小関係(含むアスペクト比)等は限定するものではない。
図1において、空気調和装置100は、天井900に形成された凹部901に埋め込まれ、凹部901の底(図1において上面)である取り付け壁902に、ボルト903およびナット904によって、吊り下げられている。
空気調和装置100は一面(図1において下面)が開口した直方体の筐体1と、筐体の底(図1において上面)11に固定されたモーター取り付け用部材6と、モーター取り付け用部材6に取り付けられたモーター5と、モーター5の回転軸に取り付けられたターボファン200とを有している。
さらに、ターボファン200の周囲(水平面内で回転中心から離れる側)に、熱交換器4が設置されている。
ターボファン200は、中央に主板膨らみ部20aを有する円盤状の主板20と、回転中心に対して等角配置された複数の翼22と、主板20と所定の間隔を設けて配置された円環状のシュラウド21と、を有している。すなわち、翼22の一方の端部は主板20に接合(一体成形)され、翼22の他方の端部はシュラウド21に接合(一体成形)されている。
このとき、主板膨らみ部20aの翼22が接合されない側(モーター5側)は空洞になっていて、該空洞にモーター5が収納されている。
なお、シュラウド21の最もシュラウド外周21bの直径は、主板20の主板外周20bの直径に同じである。
次に、空気調和装置100の動作について説明する。図1において、ターボファン200が回転すると、吸い込まれた空気は吸込流れW1となって、フィルター7を通過して除塵される。そして、ベルマウス8によってターボファン200に導かれ、ターボファンの内部流れW2となった後、周囲に吹き出される。さらに、熱交換器4において所定の温度に冷却または加熱されて、調和空気流れW4になる。そして、フラップ9によって所定の方向に向けられ、吹出口13から室内に吹き出す吹出流れW5になる。
また、ギャップ流れW3は内部流れW2に途中から合流しているが、翼22の表面上の乱れの発生が最少に抑えられている。
すなわち、空気調和装置100は、低騒音化(静寂運転化)および省エネ化が図られている。
なお、以上は、空気調和装置100として、天井埋め込み型の業務用パッケージエアコンとして記載したが、本発明はこれに限るものではなく、家庭用であっても実施の形態2に説明するターボファンを用いた空気調和装置であればその型式を限定するものではない。また、熱交換器4に替えて、その他の空気調和手段、たとえば、除加湿手段、塵埃や細菌等の除去手段、オゾンや香気の添加手段、を設置してもよい。
図2〜図10は本発明の実施の形態2に係るターボファンを説明するものであって、図2は斜視図、図3および図4は一部を透過した平面図、図5は一部を透過した側面図、図6〜図11は一部を拡大して示す平面視の断面図、図12は内部流れを示す側面図、図13および図14は作用を模式的に説明するための平面視の断面図、図15は効果を示す性能曲線図である。
図2において、ターボファン200は空気調和装置100(実施の形態1)に搭載されるものであって、円盤状の主板20と、主板20と所定の間隔を設けて配置された朝顔状(ラッパ状)のシュラウド21と、一方の端部を主板20に、他方の端部をシュラウド21に接続(一体成形)された複数の翼22と、を有している。
翼22は7枚が円周方向で等角配置されているが、本発明はその枚数を限定するものではない。翼22は回転中心O(オー)に近い縁部である翼前縁23が、回転中心O(オー)から遠い縁部である翼後縁24よりも、回転方向(矢印にて示す)の進み方向に位置している。すなわち、翼後縁24は翼前縁23に対して、回転方向の遅れ側に位置している。
なお、シュラウド21は朝顔状(ラッパ状)の小径側から空気が流入し、大径側から空気が流出するものであるが、大径側が主板20に対向しているため、空気が流れる通風路は徐々に回転中心Oと平行な距離が狭められ、断面積が狭くなるように構成されている。
翼22の詳細形状を説明する前に、入口角と流入角の定義について予め触れておく。なお、以下の説明の便宜上、回転中心Oにおいて主板20側を「−Z方向または下方向」と、回転中心Oにおいてシュラウド21側を「+Z方向または上方向」とする。また、回転中心Oからの放射方向を「r軸」とし、回転中心Oから遠ざかる放射方向を「+r方向または外方向」と、回転中心Oに向かう放射方向を「−r方向または内方向」とする。さらに、r軸に垂直な軸を「θ軸」とする。また、回転中心Oに垂直な面を「水平面または水平方向」と称す。
そして、翼弦中心線31をQ点において延長した直線32と、Q点におけるθ軸とのなす角度を「入口角β1」と定義する。
すなわち、入口角β1が0°のとき、Q点における翼弦中心線31の方向はθ軸に一致し、入口角β1が90°のとき、Q点における翼弦中心線31の方向はr軸に一致する。したがって、入口角β1が大きくなるほど、Q点における翼弦中心線31の方向は放射方向に近づくから、入口角β1は「翼が立っている程度」を示す目安になる。
次に、流入角について説明する。図4は翼22をZ方向の所定位置において切断した断面図であって、翼22の翼前縁23の近傍で上流側(回転中心O側)に点Pを設定するものとする。点Pにおける空気流れを速度Vとし、速度Vがθ軸となす角を「流入角α1」と定義する。また、速度Vを点Pにおけるr軸方向とθ軸方向とに分解した成分をそれぞれVrとVθと定義する。
一般的に、風を多く運ぶためには羽根を立てて(入口角β1を大きく、すなわち、放射方向に近づけて)、入口角β1が流入角α1よりも大きくなる(β1>α1)ようにしたい。しかしながら、入口角β1を大きくし過ぎると図3の(a)に示すように負圧面25側に剥離渦W9が発生するので、騒音が増大し送風量が低下してしまう。送風量が低下すると、回転数を上げて目標風量を達成する必要が生じ、モーター5の消費電力が増加してしまう。つまり、送風効率を上げれば、回転数を下げることができるので、消費電力が削減できる。
次に、ターボファン200の三次元翼形状について説明する。
図5において、説明の便宜上、簡易的に翼22を1枚しか記載していない。翼22は、高さ方向(−Z方向から+Z方向に向かって)に順次、領域A(第1領域に相当する)、領域B(第2領域に相当する)、領域C(第3領域に相当する)の3つの領域から構成されている。
領域Aと領域Cとは断面形状が高さ方向で変化しており、領域Bは断面形状が高さ方向で略一定である。すなわち、領域Aの最上部(領域Bの最下部に同じ)は領域Cの最下部(領域Bの最上部に同じ)に略同一である。
また、領域Cを高さ方向に水平に4分割し、最下部の断面をC1断面として、順次、C2断面、C3断面、C4断面とする。
なお、領域Bの最下部はA3断面に、最上部の断面はC1断面に同じであるから、A3断面とC1断面とは略同一である。
また、ベルマウス8のベルマウス端縁8aの外径D8は、シュラウド21のシュラウド端縁21aの内径D21よりも小さく(D8<D21)、ベルマウス端縁8aはシュラウド21内に侵入して両者間にギャップgが形成されている。
図6において、A1断面、A2断面およびA3断面を重ねて描き、ベルマウス端縁8aの外径D8とシュラウド端縁21aの内径D21との間に形成されるギャップg(隙間であって、部材が存在しない空間)を斜線にて示している。
断面の位置が高くなる(+Z方向になる)にしたがって、すなわち、A1断面よりもA2断面の方が、A2断面よりもA3断面の方が、入口角β1が徐々に大きくなるように構成されている(β1(A1)<β1(A2)<β1(A3))。つまり、主板20に近づくほど、入口角β1が小さくなっている。なお、A3断面は航空機等で広く使用されてきたNACA−65系翼列を採用している。
領域B(図示しない)は、断面の位置に係わらず一定形状であって、主板20に対して略直立した二次元翼として構成されている。すなわち、A3断面と同じ、断面形状は航空機等で広く使用されてきたNACA−65系翼列を採用している。
図7に、C1断面〜C4断面を重ねて描き、ベルマウス端縁8aの外径D8とシュラウド端縁21aの内径D21との間に形成されるギャップg(実際は隙間であって、部材が存在しない空間)を斜線にて示す。また、回転中心Oを中心にしたベルマウス端縁8aの外径D8よりギャップgの2倍だけ直径の小さい仮想円(以下、「凹状部開始円」と称す)91と、回転中心Oを中心にしたシュラウド端縁21aの内径D21よりギャップgの2倍だけ直径の大きい仮想円(以下、「凹状部終了円」と称す)92と、を二点鎖線にて示している。
なお、図7において、Cj断面について、前縁23(Cj)、後縁24(Cj)、翼内面25(Cj)および翼外面26(Cj)としている(j=1〜4)。
すなわち、翼前縁23(C1)、翼前縁23(C2)、翼前縁23(C3)、翼前縁23(C4)は、この順で外方向に近づき、回転方向に対して遅れる方向に位置している。一方、翼後縁24(C1)、翼後縁24(C2)、翼後縁24(C3)、翼後縁24(C4)は、この順で内方向に近づき、回転方向に対して進む方向に位置している。
以下、Cj断面について、詳細に説明する。
図8において、C1断面は、A3断面に略同一、すなわち、B領域の断面に略同一である。翼前縁23(C1)は、回転中心Oに対してA領域およびB領域と略同じ位置にあり、翼後縁24(C1)は、主板20の外周20bに一致している。
内面(負圧面)25(C1)は、内側(回転中心O側)が凹む滑らかな凹面を呈し、外面(正圧面に同じ)26(C1)は外側(回転中心Oから離れる方向)に膨らむ滑らかな凸面を呈している。そして、ギャップgに相当する範囲が厚みの厚い範囲になっている。
図9において、C2断面は、翼前縁23(C2)が翼前縁23(C1)よりも外側で回転方向に対して遅れる位置にあり、翼後縁24(C2)は翼後縁24(C1)と同じ位置にある。
そして、翼内面25(C2)は、凹状部開始円91と凹状部終了円92とに相当する間に、凹状部28(C2)が形成されている。すなわち、翼内面25(C2)の翼前縁23(C2)寄りの範囲と翼内面25(C2)の翼後縁24(C2)寄りの範囲とを、滑らかに結ぶ仮想面27(C2)に対し、実際の翼内面25(C2)は斜線で示す範囲を欠き、凹んでいる。
凹状部28(C2)はギャップgに相当する範囲(ベルマウス端縁8aとシュラウド端縁21aとの間の直下に相当する)が最も深く、これに向かって凹状部開始円91の位置から滑らかに深くなり、これから凹状部終了円92の位置に向かって滑らかに浅くなる。
図10において、C3断面は、翼前縁23(C3)が翼前縁23(C2)よりも外側、すなわち、凹状部開始円91よりも僅かに外側で回転方向に対して遅れる位置にある。
また、翼後縁24(C3)はシュラウド21の縮径範囲21cに接合しているから、主板20の主板外周20bよりも大きく内径寄りに位置している。
そして、翼内面25(C3)は、ベルマウス端縁8aと凹状部終了円92とに相当する間に、凹状部28(C3)が形成されている。すなわち、翼内面25(C3)の翼前縁23(C2)寄りの範囲と翼内面25(C2)の翼後縁24(C3)寄りの範囲とを、滑らかに結ぶ仮想面27(C3)に対し、実際の翼内面25(C3)は斜線で示す範囲を欠き、凹んでいる。
凹状部28(C2)はベルマウス端縁8aに略相当する位置が最も深く、これに向かってベルマウス端縁8aに相当する位置から滑らかに深くなり、これから凹状部終了円92の位置に向かって滑らかに浅くなる。
図11において、C4断面は、翼前縁23(C4)が翼前縁23(C3)よりも外側、すなわち、ベルマウス端縁8aに相当する位置よりも外側で回転方向に対して遅れる位置にある。
また、翼後縁24(C4)はシュラウド21の縮径範囲21dに接合しているから、主板20の主板外周20bよりも大きく内径寄りに位置している。
そして、翼内面25(C4)は、シュラウド端縁21aと凹状部終了円92とに相当する間に、凹状部28(C4)が形成されている。
すなわち、翼内面25(C4)の翼前縁23(C4)寄りの範囲と翼内面25(C4)の翼後縁24(C4)寄りの範囲とを、滑らかに結ぶ仮想面27(C4)に対し、実際の翼内面25(C4)は斜線で示す範囲を欠き、凹んでいる。凹状部28(C4)は断面略く字状であって、ベルマウス端縁8aに略相当する位置から除々に深くなり、凹状部終了円92に相当する位置に向かって滑らかに浅くなる。
なお、凹状部28(C2)、凹状部28(C3)および凹状部28(C4)(以下、これらをまとめて「凹状部28」と総称する場合がある)は、滑らかに繋がった曲面を形成するものである。
次に、ターボファン200の動作について説明する。
図12はターボファン200の内部流れを模式的に説明するための側面図である。
図12において、ベルマウス端縁8aからシュラウド21に流入した空気流れである内部流れW2は、主板20に近い領域Aを流れる空気流れW20と、シュラウド21の近い領域Cを流れる空気流れW22と、両者に挟まれた領域Bを流れる空気流れW21とに、分けて考えることができる。
領域Aにおける空気流れW20は、主板20の近傍では壁面の摩擦力が働くため、主板20(壁面に同じ)に近いほど流速が遅くなる。発明者等が数値流体解析を実施してターボファン200の内部流れW2(特に、空気流れW20)を詳細に調査し、翼前縁23(特に、翼前縁23(A1)、翼前縁23(A2)、翼前縁23(A3))における流入角α1を分析したところ、主板20に近づくほど流入角α1は小さくなっていることが判明した。
そして、ターボファン200は、領域Aにおける翼前縁23の入口角β1が、主板20に近づくほど小さくしているから、主板20の近傍における流入角α1と入口角β1とのズレが補正され、負圧面(外面)側における剥離渦W9を生じないようになっている。
また、領域Cでは、シュラウド21が拡径しながら主板20に近づいているため、空気流れW22の下流になるほど通風路の断面積が除々に縮小している。そして、ターボファン200は、領域Cにおける翼22が空気流れW22の下流になるほど、翼前縁23の位置が翼後縁24に向かって徐々に後退しつつ厚みが徐々に薄くなっている。このため、前記通風路の断面積縮小による空気流れW22の増速が緩和され、流速の増加によるエネルギー損失が抑制されている。
次に、ギャップgを通過したギャップ流れW3について説明する。
図13および図14は、ギャップ流れW3の影響を模式的に説明するものであって、図13は本発明における平面視の断面図、図14は比較のための平面視の断面図である。
図13において、ベルマウス端縁8a(固定側)とシュラウド端縁21a(回転側)との間にはギャップgが形成されている。そして、ターボファン200の回転によって、翼22の負圧面(内面)側に負圧が生じるため、該負圧に吸引されてギャップgを通過する略主板20方向(略−Z方向)のギャップ流れW3が形成される。
このとき、凹状部28が形成されているため、ギャップ流れW3の割り込む空間(風路)が確保されたことになり、空気流れW22を乱すことなく、ギャップ流れW3は空気流れW22に円滑に合流して、乱れや渦を発生することなく(乱れや渦の発生が抑えられて)翼後縁24に向かって流れている。したがって、ターボファン200の外周に位置する熱交換器4には、渦が衝突しないから、騒音の発生を抑えることができる。
このとき、前記のような凹状部28が形成されていないため、略主板20方向(略−Z方向)のギャップ流れW3は、割り込む空間が用意されていないため、除々に水平方向に方向を変える空気流れW22に衝突する。そうすると、空気流れW22は流れの方向が急激に変更された空気流れW7となって大きく乱れると共に、ギャップ流れW3との合流によって渦W8が発生する。そして、かかる渦W8がターボファン200の外周に位置する熱交換器4に衝突すると、騒音を発生する。
領域Bは、領域Aにおける流入角α1のズレや、領域Cにおけるギャップ流れW3及び縮流による速度増加の影響をほとんど受けないため、翼22に沿って安定した二次元流れが形成されており、効率良く送風が行われている。
このため、領域Aでは、主板20の近傍における流入角α1と翼前縁23における入口角β1とのズレによる内面(負圧面)側における剥離渦W9が抑制されている。
また、領域Bでは高効率で安定した送風が実現している。
さらに、領域Cでは、ギャップ流れW3が内面(負圧面)25を流れる空気流れW22に合流することによる乱れと、シュラウド21の形状に起因する速度増加によるエネルギー損失の増大を低減することができるので、空気調和装置の騒音と消費電力を削減することができる。
図15は本発明の実施の形態1に係る空気調和装置(本発明の実施の形態2に係るターボファンが搭載されている)の騒音低減効果を説明するものである。
図15において、縦軸は実測した騒音値、横軸は周波数であり、凹状部28が形成された翼22を有するターボファン200の場合の騒音の実測値を「開発品」と称して細い実線で示し、凹状部28が形成されない翼を有するターボファンの場合の騒音の実測値を「従来品」と称して太い実線で示している。
なお、騒音測定は、吸込口12から1mの位置にマイクを設置して行った。従来品の47.1[dBA]に対し、実施の形態1である開発品は45.9[dBA]であり、1.2[dBA]の騒音を低減することができた。
また、送風効率については、開発品では同一回転数における風量が1.06倍に増加した。これによって、同一な送風を送風するために必要な消費電力量を約6%削減することができた。
なお、ターボファンの内部流れW2については、数値流体解析(CFD:Computational Fluid Dynamics)を用いて詳細な調査を実施した。ソフトウェアはSTAR−CDを用い、解析モデルは三次元CADデータベースを元に解析モデルを作成した。解析格子数は約200万、1回転の時間ステップは336とし、時間的、空間的に十分な解像度で非定常計算を行った。数値解析の妥当性を検証するため、吹き出し口での風速値を実測結果と比較し、ほぼ一致していることを確認した。
なお、領域Bの翼形状はNACA−65系としたが、これに限るものではなく、他の高効率な翼形状を採用しても同様の効果を奏する。
また、領域Bは主板20に対して略直立な形状として記載したが、これは樹脂成型製造で若干の抜き勾配が必要な場合は、抜き勾配に相当する分、若干許容して僅かに傾斜しても良い。かかる抜き勾配は、翼22を形成する樹脂の材質によって差はあるものの、この場合、約1°程度であった。
図16〜図22は本発明の実施の形態3に係るターボファンを説明するものであって、図16は一部を透過した側面図、図17は一部(こぶ)の断面を拡大して示す模式断面図、図18は一部(こぶ)の作用を模式的に説明するための模式斜視図、図19は一部(こぶ)の作用を模式的に説明する一部を透過した平面図、図20は一部(こぶ)の作用を模式的に説明する側面視の断面図、図21は迎角と揚力の関係を示す特性曲線図、図22はバリエーションを示す一部を透過した側面図である。なお、実施の形態2と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図16において、ターボファン300は空気調和装置100(実施の形態1)に搭載されるものであって、翼322を有している。翼322は、ターボファン200(実施の形態2)の翼22の領域Cの翼前縁23に、空気流れW2の上流に向かって突出する「こぶ50」が複数形成されている。
こぶ50の先端は略球体の一部または弾頭状の隆起であって、裾野になるにしたがって傾斜が緩やかになり、翼前縁23に沿って隣接するこぶ50同士が裾野の終点において滑らかに繋がっている。
図17は、こぶ50を模式的に説明するものであって、こぶ50の頂点(隆起部の頂上)である位置「イ」から翼後縁24に向かう平面(位置イ、位置ロ、位置ハを含む)で切断した面と、こぶ50の裾野同士が接合する位置「ニ」から翼後縁24に向かう平面(位置ニ、位置ホ、位置ヘを含む)で切断した面とを並べている。
図18および図19は、内面(負圧面に同じ)25における空気流れを模式的に説明するものであって、図18の(a)は斜視図、図18の(b)は前縁から後縁に向かって見た正面図、図19の(a)は平面視の断面図、図19の(b)は比較のための平面視の断面図である。
図18において、空気流れW22は、翼前縁23に設置されたこぶ50によって、複数の小さな(狭い範囲の)螺旋状の空気流れである縦渦W61および縦渦W62が形成されている。
すなわち、翼前縁23にこぶ50が設置されない場合には、空気流れW22は内面(負圧面)25と外面(正圧面)26とに、内外(略二次面的)に分けられるものの、翼前縁23にこぶ50が設置された場合には、こぶ50によって、空気流れW22は内外および翼前縁23の方向(三次面的)に分けられる。
一方、位置イ、位置ロ、位置トおよび位置チによって囲まれた曲面(図18の(b)において、頂点に対して左側の斜面に同じ)に沿った縦渦W61は、「負正回転(反時計回りの回転)の縦渦」になる。
一方、図19の(b)において、こぶ50がない場合には、剥離が抑制されないため、乱流W63が発生しているから、これを搭載した空気調和装置では騒音が発生するおそれがある。
次に、こぶ50が有る場合の翼内面25に作用する揚力について説明する。
図20の(a)は、翼前縁23にこぶ50が設置されていない場合(二次元翼)であって、空気流れW22の主流の流れ方向56と、翼22の厚さ翼弦中心線31の翼前縁23における延長方向57とがなす角度を「迎角η」とし、内面(負圧面)25に働く揚力を「揚力L」としている。
図21は、迎角と揚力との関係を示すものであって、縦軸は揚力Lを無次元化した揚力係数、横軸は迎角ηである。迎角ηを上げると揚力は上昇していくが、負圧面側に剥離を生じて揚力は低下し始める。揚力係数のピークは通常15度〜20度となることが知られており、この場合は約16度であった。
このため、翼22の前縁23にこぶ50を付けることで、迎角ηを上げた場合においても翼22の失速を防ぐことができ、揚力Lを増加させることができる。なお、ターボファン300の場合の迎角ηは、流入角α1と入口角β1との差(η=α1−β1)に相当している。
図22は本発明の実施の形態3に係るターボファンのバリエーションを説明する一部を透過した側面図である。図22において、ターボファン310は、翼前縁23の全体に、こぶ50が設置された翼322bを有する。このとき、翼22の全域(領域A、領域Bおよび領域C)において、ターボファン300と同様の作用効果が得られる。
なお、本発明は、ターボファンの形態を図示するものに限定するものではなく、たとえば、こぶ50を翼22の領域Aおよび領域Cに設置してもよい。
また、こぶ50の形状(大きさ、突出量や頂点の尖りの程度等)や間隔は限定するものではなく、内面(負圧面)25側に縦渦W61、W62を発生させて剥離を抑制できるものであれば、山の高さ、幅は問わない。また、等間隔で配置して記載したが、間隔をランダムにしても同等の効果を奏する。
図23〜図26は本発明の実施の形態4に係るターボファンを説明するものであって、図23は斜視図、図24〜図26は一部を拡大して示す平面視の断面図である。なお、実施の形態2と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、図23において、シュラウド外周21bと主板外周20bとの間隔(回転中心Oと平行な間隔)を「h」としている。
ターボファン400は、翼422を有している。翼422は主板20寄りの「0.5h」の範囲が、ターボファン400(実施の形態2)の翼22と同じ形状である。また、翼422は翼前縁423に近い範囲は、主板20からシュラウド21の範囲(全高さ)において、翼22は翼前縁23に近い範囲の形状に同じである。
すなわち、翼22の後縁24は回転中心Oに平行であって、図23において、「位置あ」と「位置え」とを結ぶ線上に位置していた。一方、翼422の後縁423は、主板20から高さ「0.5h」の「位置い」よりも高い範囲で、シュラウド21に近づくほど回転方向に対して遅れ、「位置え」においてシュラウド21に接続している。ここで、平面視において、回転中心Oから「位置う」を通過する放射線72と「位置え」を通過する放射線71とがなす角度φは、約8.5°であった(図24参照)。
たとえば、図24に示すC2断面では、翼422の翼後縁424(C2)の位置が、平面視で「位置お」にあるのに対し、翼22の翼後縁24(C2)は平面視で、「位置い(位置あ、位置う)」にあるから、角度φに近い角度だけ、回転方向に対して遅れている。
次に動作について説明する。翼422の内面(負圧面側)425と外面(圧力面側)426に沿って流れた空気流れは後縁423において合流して、放射方向(正確には、放射方向よりも回転方向に対して遅れ方向)に送風される。その際、速度差によって新たな乱れが発生する。
しかしながら、ターボファン400の翼422では、後縁424がシュラウド21に近づくにほど回転方向に対して遅れているから、翼422の内面(負圧面側)425に沿った空気流れと外面(圧力面側)426に沿った空気流れとが徐々に混合され、混合による乱れが抑制される。よって、ターボファン400を搭載した空気調和装置では、騒音および消費電力を削減することができる。
なお、翼422の翼後縁424が翼22の後縁24よりも回転方向に対して遅れる範囲(第4領域)は、前記「0.5h」よりもシュラウド21よりに限定するものではなく、これより広くしても、あるいは狭くしてもよい。
図27〜図29は本発明の実施の形態5に係るターボファンを説明するものであって、図27は部分を拡大して模式的に示す斜視図、図28は作用効果を説明する模式図、図29はバリエーションを示す斜視図である。なお、実施の形態2と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図27において、ターボファン500は翼522を有している。翼522は翼後縁24の主板20寄りの範囲に、所定の間隔で5段に渡って水平方向のスリット80a・・・80e(以下まとめて「スリット80」と称する場合がある)が形成されている。
なお、スリット80aとスリット80bとに挟まれた帯状後縁部81aと、スリット80cとスリット80dとに挟まれた帯状後縁部81bと、スリット80eよりシュラウド21に近い帯状後縁部81cと(以下まとめて「帯状後縁部81」と称する場合がある)は、翼22の翼後縁24に同じ形状である。
また、スリット80は、回転中心Oに平行で「位置さ」、「位置し」および「位置す」を通過する直線の位置まで切れ込まれている。すなわち、平面視において、回転中心Oから「位置す」を通過する放射線83は、「位置え」を通過する放射線71よりも回転方向に角度φ3だけ進んでいる。
そして、延長後縁部82の最後端は、シュラウド外周21bと主板外周20bとが形成する仮想円筒上に位置し、回転中心Oに平行する「位置か」、「位置き」および「位置く」を通過する直線上に位置している。すなわち、平面視において、回転中心Oから「位置く」を通過する放射線84は、「位置え」を通過する放射線71よりも回転方向に対して角度φ4だけ遅れている。
図28は、ターボファン500の作用効果を説明する模式図であって、(a)は延長後縁部の作用を示す斜視図、(b)は延長後縁部がない場合を示す平面図である。
図28の(b)において、ターボファン200が回転すると、翼22からは、放射方向よりも回転方向に対して遅れる方向に傾向いた方向に空気が吹き出される。このとき、ターボファン200の外周には所定の間隔を設けて熱交換器4が配置されている。
このため、熱交換器4のターボファン200側の熱交換器表面41と、ターボファン200との間において、円筒状に旋回する空気流れW24が形成される。空気流れW24は、あたかも筒体が熱交換器表面41に当接して転がるように、熱交換器表面41に沿って、回転方向に移動する。そうすると、熱交換器4に侵入する空気の流れが阻害され、熱交換が不充分になったり、調和空気流れW4の風量が減少するおそれがある。また、熱交換器表面41の回転方向の下流位置において、空気流れW24が消滅する際の振動で、騒音発生の一因になっている。
しかしながら、空気流れW81と空気流れW82とは発生位置が相違するため、互いに干渉して、消滅または弱くなる。そうすると、熱交換器4に侵入する空気の流れは円滑になり、熱交換や調和空気流れW4の風量が保証され、さらに、騒音の発生が抑えられる。
Claims (6)
- 中央に膨らみ部を具備し、中心を回転中心とする円盤状の主板と、
該主板に対向配置された円環状のシュラウドと、
前記主板と前記シュラウド間に配置され、前記主板の外周と前記シュラウドの外周とが形成する仮想円筒上にある後縁と、該後縁よりも回転方向の進む方向に進むと共に回転中心寄りにある前縁とを具備する複数枚の翼と、
を有し、
前記翼の前記主板に近い所定の第1領域において、前記主板から遠ざかるほど、前記翼の前縁の入口角が除々に大きくなり、
前記翼の前記シュラウドに近い所定の第3領域において、前記シュラウドに近づくほど、前記翼の前縁が後縁に除々に近づくと共に、前記翼の厚みが徐々に薄くなり、且つ、前記翼の回転中心側の面に滑らかに凹む凹状部が形成され、
前記第1領域の前記シュラウドに最も近い位置における回転中心に対して垂直な断面の形状が、前記第3領域の前記主板に最も近い位置における回転中心に対して垂直な断面の形状に同じであって、前記第1領域と前記第3領域に挟まれた第2領域において、前記翼の前縁が回転中心に平行であることを特徴とするターボファン。 - 前記シュラウドには、所定の間隙を設けて配置されたベルマウスから回転中心に略平行に空気が流入し、
前記主板の外周、前記シュラウドの外周および前記翼の後縁によって形成された空間から、回転中心に対して略垂直に空気が流出入するものであって、
前記凹状部が、前記シュラウドの外周と前記ベルマウスの内周との間の間隙に相当する位置に形成されることを特徴とする請求項1記載のターボファン。 - 前記翼の前縁の所定範囲に複数のこぶが設置されていることを特徴とする請求項1または2記載のターボファン。
- 前記翼の後縁が、少なくとも前記シュラウドに近い所定の第4領域において、前記シュラウドに近づくほど、除々に回転方向とは反対の方向に後退していることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のターボファン。
- 前記翼の後縁が、少なくとも前記主板に近い所定の第5領域において、回転中心に略垂直に形成された複数のスリットによって分断された前記後縁の一方の位置と、前記スリットによって分割された前記後縁の他方の位置とが相違していることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のターボファン。
- 空気を吸引する吸い込む吸込口および空気を吹き出す吹出口を具備する筐体と、
該筐体内に配置された請求項1乃至5の何れかに記載のターボファンと、
該ターボファンの前記主板に連結されたモーターと、
前記ターボファンの前記シュラウドに空気を案内するベルマウスと、
前記ターボファンの周囲に配置された熱交換器と、
を有することを特徴とする空気調和装置。
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