JP5273811B2 - 抗アレルギー活性を有するコーヒー豆抽出物およびその製造方法 - Google Patents
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このため、アレルギーの予防または治療方法の1つとして、ケミカルメディエーターとして代表的な神経伝達物質のヒスタミンやセロトニン、ロイコトリエンを抑制する方法が提案されている。
一方、このフェニルプロパノイドには抗アレルギー活性があることが知られている(例えば、特許文献1〜3を参照。)。
かかるコーヒー生豆抽出物は、β−ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用に関して、超臨界流体処理を施さない従来法による抽出により得られるコーヒー生豆抽出物中のカフェイン量に対応する含有量のカフェイン単独水溶液の1.5倍以上の抗アレルギー活性を有する。
なお、抗アレルギー活性は、特に、I型アレルギー症状のβ−ヘキソサミニダーゼ遊離に対し特に有用な抗アレルギー活性を示す。
超臨界流体の二酸化炭素を用いて、コーヒー生豆抽出物中のカフェインを溶出するときは、一般的に、超臨界流体の二酸化炭素の温度、圧力がそれぞれ高ければ高いほど溶出される。二酸化炭素は、約7.3MPa・31℃で、気体とも液体ともつかない状態になり(臨界点)、この臨界点を超える状態を超臨界流体の状態という。本発明の超臨界処理の条件としては、圧力10MPa以上、更に好ましくは45MPa以上であり、温度は65〜80℃である。温度が65℃以下であるとカフェインは除去しにくく、80℃以上にするとクロロゲン酸がコーヒー生豆から抽出・分解され始めるからである。仮に、80℃で処理した場合には10%程度ロスが発生してしまう。
本発明では、コーヒー生豆の抽出成分が商品(抗アレルギー剤)になるため、抽出効率の向上を目的として豆を粉砕する方が好ましいのである。コーヒー生豆の粉砕径が3〜5mmとされるのは、3mm未満とあまり細かくしすぎるとアルコール抽出工程、濾過工程で目詰りを起こすため好ましくなく、また5mmより大きいと抽出効率の向上の観点から好ましくない。特に、好ましくは、コーヒー生豆の粉砕径は4mmである。
本発明の抗アレルギー剤は、上記の超臨界流体処理工程を経て得られた抽出物をそのまま直接使用することもできるし、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、副素材、増量剤、安定剤等の添加剤を用いて周知の方法で製造し、使用することもできる。
また、医薬品として用いる場合、投与形態としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、散剤、乳剤、懸濁液剤、シロップ剤などによる経口投与、粉末飲料、液体飲料(ドリンク剤など)などの食品の形態、注射剤、軟膏剤、坐剤、エアゾール剤などによる非経口投与を挙げることができる。
1)コーヒー生豆を粉砕する工程と、
2)コーヒー生豆を浸水(調湿)する工程と、
3)超臨界流体の二酸化炭素を用いて、圧力10MPa以上の高圧、65〜80℃の高温で、コーヒー生豆を処理する工程と、
4)含水アルコールにて抽出する工程と、
5)濃縮・乾燥する工程と、
6)上記工程を経て得られたカフェイン未含有のコーヒー豆抽出物を有効成分として含有させる工程と、
を備えるものであり、
β−ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用の抗アレルギー剤を製造するものである。
図1に、超臨界流体処理工程の処理フローを示す。
(1)コーヒー生豆を粉砕する工程(ステップS01)
コーヒー生豆を平均粒子径が略4.0mmになるよう粉砕する。粉砕は、通常の機械的粉砕や凍結粉砕処理などで行うが、この粉砕する手段は特に限定されるものではない。
(2)コーヒー生豆を浸水(調湿)する工程(ステップS02)
コーヒー生豆を粉砕したものに対し、水を添加し調湿を行う。カフェインを除くための条件としてコーヒー生豆の水分量を43%(増減2%)にしている。カフェインをあえて除く必要がなければ、浸水(調湿)工程は省略することができる。
コーヒー生豆を70℃以上、45MPa以上の状態にある超臨界流体二酸化炭素を用いて、S/F50の条件の超臨界流体処理を施すことにより、所定時間、接触処理を行い、コーヒー生豆からカフェインやその他の物質を除去する。ここで、S/Fとは原料(コーヒー生豆)に対して流す二酸化炭素の重量比のことで、例えば、S/F=50であれば、コーヒー量が1(重量)に対して、二酸化炭素重量は、50(重量)となる。
上記の超臨界流体処理する工程により、コーヒー生豆からカフェインやその他の物質を除去した後、除去後のコーヒー生豆から、更に含水アルコールにて抽出、濃縮、乾燥して抽出物を得る。
なお、抽出溶媒としては、極性溶媒を使用できる。極性溶媒としては、水、または、アルコール類(例えば、エタノール、メタノールの低級アルコール、あるいは、プロピレングリコールなどの多価アルコール)などの極性有機溶媒が挙げられる。これらを単独あるいは2種以上を任意に組み合わせて使用することが可能である。好ましくは、水単独または水と極性有機溶媒の混合溶媒である。水と極性有機溶媒との混合溶媒の場合、水と極性有機溶媒の混合比は特に制限されないが、極性有機溶媒の容量比が50%以上であるのが好ましい。水と混合する極性有機溶媒としては、低級アルコールが好ましく、メタノールまたはエタノールがより好ましい。また、抽出時間は特に制限されない。
(5)濃縮・乾燥する工程(ステップS05)
抽出した液は、減圧下で加熱することなどにより溶媒を除去して濃縮した後、スプレードライ、フリーズドライなどの手法を用いて乾燥することでコーヒー生豆粉末を得る方法等が挙げられる。あるいは、抽出液に賦形剤等を添加して乾燥してもよい。
上述したように、β−ヘキソサミニダーゼは、化学伝達物質(ケミカルメディエーター)の一つであり、アレルギーの原因物質であるヒスタミンとほぼ同時に放出されることが知られている。また、ラット好塩基球性白血病細胞(RBL−2H3)は、人の好塩基球や肥満細胞における即時型アレルギー反応の場合と同様に、抗原の刺激によりβ−ヘキソサミニダーゼ、ヒスタミン、セロトニン等を遊離することが知られている。
そのため、RBL−2H3からのβ−ヘキソサミニダーゼ遊離抑制を測定することにより、抗炎症効果を評価することが可能である。
なお、β−ヘキソサミニダーゼ遊離抑制効果を評価することは、in
vivoの評価との相関性が高いとされている。
本発明の抗アレルギー剤の有効成分であるコーヒー生豆抽出物(超臨界流体二酸化炭素処理工程を経て得られるもの)の作製方法について、以下の(a)〜(f)に説明する。
(a)コーヒー生豆(Indonesia AP−1/カフェイン含有量1.94%)を平均粒子径4.0mmになるよう粉砕した。
(b)コーヒー生豆を粉砕したもの87.3kgに対し、水43.2kgを添加し調湿を行った。
(c)その後、このコーヒー生豆を80℃、45MPaの状態にある超臨界流体二酸化炭素を用いて、S/F50の条件にて200分間接触処理を行った。
(d)次に、超臨界二酸化炭素処理後のコーヒー生豆160.0kgに対し、56%(w/v)エタノール1600Lを添加し、バブリングを行いつつ、50℃で1時間抽出を行った。
(e)抽出物に対して固液分離を行なった後、56%(w/v)エタノール800Lを添加し、バブリングを行いつつ、再度50℃で1時間抽出を行った。
(f)上記の2回の抽出で得られた抽出液を濾過、125℃、1分間殺菌した後、50℃で減圧濃縮し、180℃でスプレードライを行ない、27.8kgのコーヒー生豆抽出物が得た。
クロロゲン酸およびカフェイン濃度は下記の方法で測定した。コーヒー生豆抽出物のカフェイン及び総クロロゲン酸類含有量は、それぞれ0.0%、39.5%であった。
一方で、食品添加物として市販されているコーヒー生豆抽出液A(カフェイン含有)、コーヒー生豆抽出液B(カフェイン非含有)について同様に測定したところ、コーヒー生豆抽出液A(カフェイン含有)のカフェイン及びクロロゲン酸含有量は、それぞれ8.0%、41.9%であった。コーヒー生豆抽出液B(カフェイン非含有)のカフェイン及びクロロゲン酸含有量は、それぞれ0.0%、40.0%であった。
カフェイン含量(%)の測定は、試料0.4gを秤量し、純水100mLに溶解・定容してHPLC(High Performance Liquid Chromatography)分析することにより行った。内部標準液は、4000ppm β-フェネチルアルコール/メタノールを用いた。測定に用いたHPLC条件を下記に示す。
・検出器:紫外線分光光度計
・カラム:COSMOSIL 5C18−AR−II 4.6×150mm/温度:40℃
・ガードカラム:COSMOSIL 5C18−AR−II 4.6×10mm
・移動相:0.2M 過塩素酸-メタノール(8:2)
・検出波長:270nm
・流速:1.0mL/min
クロロゲン酸含量(%)の測定は、試料0.4gを秤量し、純水100mLに溶解・定容してHPLC分析することにより行った。測定に用いたHPLC条件を下記に示す。
・検出器:紫外線分光光度計
・カラム:Inertsil ODS−3 4.6×150mm 温度:40℃
・移動相:A液;0.2%酢酸/MeOH=80/20,B液;MeOH
・検出波長:UV 325nm
・流速:1.0mL/min
ヒューマンサイエンス研究資源バンクから購入したRBL−2H3細胞を10%ウシ胎児血清(FCS)、100unit/mLペニシリン、100mg/mLストレプトマイシン含有
Minimun Essential Medium Eagle培地(MEM、Sigma社)で培養 (5%CO2、37℃) した。
buffered saline(10mM、pH7.4)で2回洗浄し、ウェルあたり被験物質溶液を930μL加え、37℃、10分培養後に 10μg/mLの抗原(DNP−BSA)を70μL加えて37℃、60分間インキュベートして細胞を刺激した。
p−nitrophenyl−N−acetyl−β―D−Glucosaminide(Sigma社)40μL
を加えて、混和後は37℃で30分反応させた。そして、反応溶液に、170μLの100mM炭酸緩衝液(NaHCO3/Na2CO3、pH10.0)を加えて混和し酵素反応を止めた。
被験物質のβ−ヘキソサミニダーゼ遊離阻害率(%)は、下記式2により求めた。
上述の超臨界流体二酸化炭素処理工程を経て作製したコーヒー生豆抽出物のβ−ヘキソサミニダーゼ阻害活性の測定結果を図2〜図4に示す。
ここで、評価については、RBL−2H3細胞の状態や、β−ヘキソサミニダーゼ遊離の程度によって実験毎にコンディションが異なるため、既知のβ−ヘキソサミニダーゼ遊離抑制効果を示すカフェインを指標として比較評価を行なっている。
図2および下記表1は、カフェインとカフェイン含有/非含有コーヒー生豆抽出物のβ−ヘキソサミニダーゼ阻害活性の比較についての測定結果を示す。
図2および下記表1で示すように、カフェインは高いβ−ヘキソサミニダーゼ遊離阻害効果を示した。一方で、図2および下記表1から、カフェインを8.0重量%含んでいる市販コーヒー生豆抽出物Aにも高いβ−ヘキソサミニダーゼ遊離抑制効果を有していることが示された。また、一方で、カフェインを含まない市販コーヒー生豆抽出物Bについては、β−ヘキソサミニダーゼ遊離抑制効果は低く、カフェインのβ−ヘキソサミニダーゼ遊離抑制効果と比較して1/4以下の効果となっていた。
次に、図3および下記表2は、カフェインのβ−ヘキソサミニダーゼ阻害効果と、カフェイン及びクロロゲン酸(5−CQA)との相乗効果について示したものである。
図3および下記表2に示すように、カフェインは高いβ−ヘキソサミニダーゼ遊離阻害効果を示す。また一方で、カフェインを8.0重量%含んでいる市販コーヒー生豆抽出物Aにもほぼ同程度のβ−ヘキソサミニダーゼ遊離抑制効果を有することがわかった(有意差なし)。
また、実験で得られたデータについて、カフェイン試験区、市販コーヒー生豆抽出物A試験区、およびカフェインと5−CQA混合試験区間で一元配置分散分析(one−factor ANOVA)を行なったが、いずれの試験区でも有意な差は見られなかった。
以上のことから、カフェインを含む市販コーヒー生豆抽出物Aのβ−ヘキソサミニダーゼ遊離抑制効果は、カフェインが主体となって効果を示していることが確認できた。
次に、図4および下記表3は、カフェインと上記の超臨界流体二酸化炭素処理工程を経て作製したコーヒー生豆抽出物(以下、本発明抽出物)のβ−ヘキソサミニダーゼ阻害活性の比較を示す。
図4および下記表3に示すように、本発明抽出物はカフェインを含まないが高いβ−ヘキソサミニダーゼ遊離抑制効果をすることが確認できる。図4および下記表3から、カフェインを含んでいない市販コーヒー生豆抽出物Bのβ−ヘキソサミニダーゼ阻害活性効果は、カフェインの1/4程度であるのに対して、本発明抽出物の場合は、カフェインの2倍近いβ−ヘキソサミニダーゼ遊離抑制効果を有していることがわかる。
このことから、本発明抽出物は、既に上市されているカフェインを含まないコーヒー生豆抽出物と比較して、顕著なβ−ヘキソサミニダーゼ遊離抑制効果を有していることが理解できるであろう。
Claims (3)
- 超臨界流体の二酸化炭素を用いて、圧力10MPa以上の高圧、65〜80℃の高温で処理される超臨界流体処理工程を経て得られたカフェイン未含有のコーヒー生豆抽出物を有効成分として含有し、
β−ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用の抗アレルギー活性を備えた抗アレルギー剤。 - 前記超臨界流体処理工程において、原料となるコーヒー生豆は、粉砕径3〜5mmとしたことを特徴とする請求項1の抗アレルギー剤。
- コーヒー生豆を粉砕する工程と、
コーヒー生豆を浸水(調湿)する工程と、
超臨界流体の二酸化炭素を用いて、圧力10MPa以上の高圧、65〜80℃の高温で、コーヒー生豆を処理(超臨界流体処理)する工程と、
含水アルコールにて抽出する工程と、
濃縮・乾燥する工程と、
上記工程を経て得られたカフェイン未含有のコーヒー豆抽出物を有効成分として含有させる工程と、
を備えた、
β−ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用の抗アレルギー剤の製造方法。
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