JP5272245B2 - 絞りプレス型のビード加工方法 - Google Patents

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本発明は、絞りプレス型における材料流入をコントロールするビードの耐摩耗性及び耐かじり性を得るための絞りプレス型のビード加工方法に関する。
従来から、自動車の車体パネル等を所定の三次元形状に絞り成形する絞りプレス型は例えば図3に示すように、ダイ21が設けられた上型2と、ポンチ31及びクッションリング32が設けられた下型3とから構成され、クッションリング32はポンチ31の外周部を取り囲むように配置されるクッションピン4によって支持されている。このクッションリング32は、上型2のダイ21とで被プレス材5の周縁部5aを押圧して、下型3のポンチ31により被プレス材5をダイ21側に押し込んで成形する際に材料の動きを拘束制御するものである。
このクッションリング32及びダイ21の被プレス材5の周縁部5aを押圧する部位であるしわ押え面32a、21aには、プレス加工の際、被プレス材の流入を制御してしわ、面歪みを防止するビード6が形成されている。ビード6は、図3の絞りプレス型1においては、ダイ21のしわ押え面21aに形成された凸ビード61と、クッションリング32のしわ押え面32aに形成された凹ビード62とから形成されている。このビード6はプレス加工の際、被プレス材と接する凸形状部が摩耗し易いので、その箇所に硬質化処理を施している(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
このようなビード6を形成するには図2に示すように、凸ビード61、凹ビード62は型彫り加工前の鋳造段階において予めダイ21及びクッションリング32に形成しておく(加工ステップ201)。このダイ21及びクッションリング32の凸ビード部、凹ビード部を型彫り加工において粗加工し(加工ステップ202)、さらに、凸ビード部、凹ビード部は被プレス材と接する凸形状部を溶接により肉盛りするために、開先加工により欠肉部61a、62aを形成する(加工ステップ203)。そして、欠肉部61a、62aを塞ぐようにして、溶接により肉盛り61b、62bを施す(加工ステップ204)。この肉盛り61b、62bされた箇所を所定の凸ビード61、凹ビード62の大きさ、寸法に仕上げ加工する(加工ステップ205)。最後に、プレス機械(ダイスポッティングプレス)に、この加工処理が施された絞りプレス型1をセットして、金型の最終調整を行って製作が終了する(加工ステップ206)。
なお、加工ステップ201〜205においては、凸ビード61は型製作状態を示しているので上方向に向いているが、加工ステップ206においては、凸ビード61はプレス加工状態を示しているので、下方向に向いている。したがって、加工ステップ206に示された下方向の矢印は、プレス方向を示している。
このように加工処理すると図2(B)に示すように、上型2のダイ21の凸ビード61は肉盛り61bの箇所が溶接により硬質化され、下型3のクッションリング32の凹ビード62は肉盛り62bの箇所が溶接により硬質化されるので、被プレス材と接する凸形状部の耐摩耗性及び耐かじり性を得ることができる。
特開平8−57559号公報 特開平10−291070号公報
しかしながら、上述した背景技術では、硬質化処理が溶接による肉盛りなので、薄く肉盛りすることができず、肉盛り後の仕上げ加工の工数がかかる難点があった。例えば、溶接棒によるアーク溶接の場合、欠肉部61a、62aを隙間無く埋めるためには2〜3層盛りしなければならず、その結果、肉盛りの厚みが4mm位になってしまうので、仕上げ代が1〜3mmとなる。したがって、肉盛り後の仕上げ加工の工数がかかってしまうことになる。また、溶接による肉盛りの場合、溶接割れや剥離等を防ぐために予熱処理を施さなければならないこともあり、加工工数が増えてしまう難点もあった。
本発明は、このような従来の難点を解消するためになされたもので、ビードの耐摩耗性及び耐かじり性を得ると共に、ビードを硬質化処理する加工工数を減らすことができる絞りプレス型のビード加工方法を提供することを目的とする。
上述の目的を達成する本発明の第1の態様である絞りプレス型のビード加工方法は、被プレス材の絞りプレス加工を行う上型及び下型と、上型及び下型の何れか一方の型に設けられたクッションリングと、クッションリング及び他方の型の各しわ押え面に形成され絞りプレス加工時における被プレス材の流入量を調節して皺、面歪みを防止するためのビードとを備えた鋳造によるプレス型のビード加工方法であって、型掘り加工前の鋳造段階において予めクッションリング及び他方の型に素材として形成したビード部を、型彫り加工においてビードの所定形状粗加工する第1の加工ステップと、粗加工されたビード部を硬質粒子によって成膜するために、第1の加工ステップで粗加工されたビード部を所定の深さまで掘り込み加工することで、掘り込み形状をほぼ当該ビードの大きさ、寸法に沿って形成させる第2の加工ステップと、第2の加工ステップで掘り込み加工されたビード部に、耐摩耗性及び耐かじり性を有する金属又は合金である硬質粒子をコールドスプレーにより成膜して仕上げ代を加味した膜厚で皮膜を形成する第3の加工ステップと、第3の加工ステップでビード部に成膜された皮膜を仕上げ加工する第4のステップとを有するものである。



このような第1の態様である絞りプレス型のビード加工方法によれば、硬質粒子をコールドスプレーにより成膜して皮膜を形成できるので、ビードの耐摩耗性及び耐かじり性を得ることができると共に、皮膜の膜厚は溶接の肉盛りのように厚くはならなので仕上げ加工の工数を減らすことができる。また、コールドスプレーは皮膜を薄膜に形成できることから、掘り込み加工を、ほぼビードの大きさ、寸法に沿って形成させることができる。また、硬質粒子は、耐摩耗性及び耐かじり性を有する金属又は合金であるので、従来の溶接による硬質化処理と同等以上のビードの耐摩耗性及び耐かじり性を得ることができる。
本発明の第2の態様は第1の態様である絞りプレス型のビード加工方法において、所定の深さは、ビードの耐摩耗性及び耐かじり性を得ることができる皮膜の膜厚を確保する寸法である。また、本発明の第3の態様は第2の態様である絞りプレス型のビード加工方法において、所定の深さは0.1〜0.2mmである。このような第2の態様及び第3の態様である絞りプレス型のビード加工方法によれば、コールドスプレーにより成膜した皮膜は薄膜でも耐摩耗性及び耐かじり性を得ることができることから、彫り込み形状をほぼビードの大きさ、寸法に沿って形成させることができるので、皮膜を形成後の仕上げ加工の工数を減らすことができる。
本発明の第4の態様は第1の態様乃至第3の態様のうち何れか1つの態様である絞りプレス型のビード加工方法において、皮膜を形成するビードの部分は、プレス加工時に被プレス材が当接する箇所である。このような第4の態様である絞りプレス型のビード加工方法によれば、耐摩耗性及び耐かじり性をビード通過抵抗力が発生する適切な位置で得ることができる。
本発明の絞りプレス型のビード加工方法によれば、ビードの耐摩耗性、耐かじり性を得ると共にビードを硬質化処理する加工工数を減らすことができる。
以下、本発明の絞りプレス型のビード加工方法を実施するための最良の形態例について図面に基き説明する。なお、本発明の絞りプレス型のビード加工方法が適用される絞りプレス型は図3に示す絞りプレス型1なので、同一要素には同一参照番号を付して説明を省略する。
本発明の絞りプレス型のビード加工方法は図1に示すように、凸ビード61、凹ビード62は、型彫り加工前の鋳造段階において予めダイ21及びクッションリング32に素材(凸ビード部、凹ビード部)として形成しておく(加工ステップ101)。これは、型彫り加工の工数を減らすためである。このダイ21及びクッションリング32の凸ビード部、凹ビード部を型彫り加工において粗加工する(加工ステップ102)。
粗加工が終了したダイ21及びクッションリング32の凸ビード部、凹ビード部は、硬質粒子によって成膜するために所定の深さまで掘り込み加工する(加工ステップ103)。この所定の深さは0.1〜0.2mmが好ましい。アーク溶接による肉盛りの場合には、隙間無く盛るためには3〜5mm程度の深さで欠肉部を掘り込まなければならないが、後述する硬質粒子によって成膜するためのコールドスプレー法では皮膜の厚さを数μmの薄膜から数十mm程度の厚膜までの作製が可能なので、ビードの耐摩耗性を得ることができる膜厚を確保するためには掘り込み深さは0.1〜0.2mmでよい。したがって、コールドスプレーにより成膜した皮膜7は薄膜でも耐摩耗性及び耐かじり性を得ることができることから、この掘り込み形状をほぼビードの大きさ、寸法に沿って形成させることができるので、皮膜7を形成後の仕上げ加工の工数を減らすことができる。
皮膜用の掘り込み加工が終了したダイ21及びクッションリング32の凸ビード部、凹ビード部は、予熱処理や溶接処理を施すことなく硬質粒子をコールドスプレーにより成膜して仕上げ代を加味した膜厚で皮膜7を形成する(加工ステップ104)。このコールドスプレー法は、硬質粒子の融点又は軟化温度よりも低い温度のガスを先細末広がり形状のラバルノズルにより超音速流にして、その超音速流のガス中に硬質粒子を投入して加速させ、固相状態のまま基材に高速で衝突させて皮膜を形成する技術である。
このようなコールドスプレー法は、硬質粒子を溶融させることなく基材に衝突させるために、硬質粒子供給部、ガス供給部、ガス加熱部、ラバルノズルを具備したスプレーガン部から構成されたコールドスプレー装置(図示せず。)によって行われる。
このコールドスプレー装置は、ヘリウム、アルゴン、窒素などの不活性ガスを作動ガスとしてガス供給部から高圧で硬質粒子供給部及びガス加熱部に供給し、硬質粒子供給部では作動ガスと共に硬質粒子をスプレーガン部に供給し、ガス加熱部では作動ガスを硬質粒子の融点又は軟化温度よりも低い温度に加熱してスプレーガン部に供給する。この際、ガス加熱部による加熱温度は硬質粒子の材質に応じて300〜500℃とする。この硬質粒子としては、耐摩耗性及び耐かじり性を有する粒径が5〜50μmの金属又は合金が好ましく、例えば、ニッケルやステンレス等、付着効率が高く皮膜の機械的強度が高い材料が使用できる。このような金属又は合金を硬質粒子として採用すれば、従来の溶接による硬質化処理と同等以上のビードの耐摩耗性及び耐かじり性を得ることができる。なお、スプレーガン部から超音速流で噴出された時に5μmより小さいと、基材付近に生じる衝撃波によって粒子の慣性力が小さくなり付着率が低下し、また原料粉末の安定供給が困難なため、ビードの耐摩耗性及び耐かじり性が必要な皮膜としては好ましくないので、コールドスプレー用粉末としては適切ではない。また、ガス加熱部による硬質粒子の加熱温度は、硬質粒子の材質、粒径及び衝突速度に応じて設定される。
加熱された作動ガス及び硬質粒子が供給されたスプレーガン部は、作動ガスを超音速流で噴き出させることにより硬質粒子を作動ガス流で基材に高速で衝突させ、そのエネルギにより基材と硬質粒子に塑性変形を生じさせて硬質化された皮膜を成膜する。したがって、皮膜は、緻密で密度が高く酸化皮膜を生成しない接合強度の高い皮膜を形成することができる。
なお、皮膜を成膜する技術として、プラズマ溶射法、フレーム溶射法、高速フレーム溶射法等が実施されているが、何れも高温プロセスのため、成膜時における原料粉末の酸化や分解を引き起こす可能性が高く、また溶融凝固に伴う体積収縮に起因し、皮膜内に気孔が発生し、緻密な皮膜を形成することが困難なことから、ビード6には適さない。
そして加工ステップ104で皮膜7が成膜されたダイ21及びクッションリング32の凸ビード部、凹ビード部を、仕上げ加工する(ステップ105)。仕上げ加工は、皮膜7が溶接による硬質化処理に比べて薄膜にできるので、従来の硬質化処理方法より仕上げ工数を減らすことができる。この仕上げ加工法は、皮膜7の硬度により研削や切削等が適宜選択される。
最後にプレス機械(ダイスポッティングプレス)に、加工ステップ102〜105による加工処理が施された絞りプレス型1をセットして、金型の最終調整を行って製作が終了する(加工ステップ106)。
このように、本発明の絞りプレス型のビード加工方法によれば、硬質粒子をコールドスプレーにより成膜して上型2のダイ21の凸ビード61及び下型3のクッションリング32の凹ビード62に皮膜7を形成して硬質化できるので、耐摩耗性及び耐かじり性を得ることができると共に、皮膜7の膜厚は溶接の肉盛りのように厚くはならないので仕上げ加工の工数を減らすことができる。
なお、加工ステップ101〜105においては、凸ビード61は型製作状態を示しているので上方向に向いているが、加工ステップ106においては、凸ビード61はプレス加工状態を示しているので、下方向に向いている。したがって、加工ステップ106に示された下方向の矢印は、プレス方向を示している。
また、皮膜7を形成するビード6の部分は、プレス加工時に被プレス材5が当接する箇所にすることで、耐摩耗性及び耐かじり性を被プレス材5との接触力が発生する適切な位置で得ることができる。
さらに、ビード6(図3参照。)を補正する場合においても、加工ステップ102〜106を実行することにより、凸ビード61、凹ビード62の耐摩耗性及び耐かじり性を得ることができると共に、皮膜7の膜厚は溶接の肉盛りのように厚くはならなので仕上げ加工の工数を減らすことができる。
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
本発明の絞りプレス型のビード加工方法の好ましい実施の形態例を示す説明図である。 従来の絞りプレス型のビード加工方法を示す説明図である。 本発明の絞りプレス型のビード加工方法及び従来の絞りプレス型のビード加工方法に適用される絞りプレス型を示す全体断面図である。
1……絞りプレス型
2……上型
21a……しわ押え面
61……凸ビード
3……下型
32……クッションリング
32a……しわ押え面
62……凹ビード
5……被プレス材
6……ビード
7……皮膜

102……加工ステップ(第1の加工ステップ)
103……加工ステップ(第2の加工ステップ)
104……加工ステップ(第3の加工ステップ)
105……加工ステップ(第4の加工ステップ)

Claims (4)

  1. 被プレス材の絞りプレス加工を行う上型及び下型と、前記上型及び前記下型の何れか一方の型に設けられたクッションリングと、前記クッションリング及び他方の型の各しわ押え面に形成され前記絞りプレス加工時における前記被プレス材の流入量を調節して皺、面歪みを防止するためのビードとを備えた鋳造によるプレス型のビード加工方法であって、
    型掘り加工前の鋳造段階において予め前記クッションリング及び前記他方の型に素材として形成したビード部を、前記型彫り加工において前記ビードの所定形状粗加工する第1の加工ステップと、
    前記粗加工された前記ビード部を硬質粒子によって成膜するために、前記第1の加工ステップで前記粗加工された前記ビード部を所定の深さまで掘り込み加工することで、掘り込み形状をほぼ当該ビードの大きさ、寸法に沿って形成させる第2の加工ステップと、
    前記第2の加工ステップで前記掘り込み加工された前記ビード部に、耐摩耗性及び耐かじり性を有する金属又は合金である前記硬質粒子をコールドスプレーにより成膜して仕上げ代を加味した膜厚で皮膜を形成する第3の加工ステップと、
    前記第3の加工ステップで前記ビード部に成膜された前記皮膜を仕上げ加工する第4のステップとを有することを特徴とする絞りプレス型のビード加工方法。
  2. 前記所定の深さは、前記ビードの耐摩耗性及び耐かじり性を得ることができる前記皮膜の前記膜厚を確保する寸法であることを特徴とする請求項1記載の絞りプレス型のビード加工方法。
  3. 前記所定の深さは、0.1〜0.2mmであることを特徴とする請求項2記載の絞りプレス型のビード加工方法。
  4. 前記皮膜を形成する前記ビードの部分は、プレス加工時に前記被プレス材が当接する箇所であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記載の絞りプレス型のビード加工方法。
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