以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。まず、本発明にかかる光学フィルターの構成及び製造方法について説明する。
(光学フィルターの構成)
図1は本発明にかかる光学フィルターの一例の概略斜視図である。なお、以下説明する図において、特段の記載のない場合、図1等に示しているように、紙面左右方向をX方向、紙面奥行き方向をY方向、紙面上下方向をZ方向とする。
図1に示すように、光学フィルター1は、入射光のうち、特定波長域の光が透過する(特定波長域の光を吸収する)フィルターである。光学フィルター1は、偏光板2、方向調整部3(方向調整手段)及びフィルター部4を備えており、光入射側(光源側)から、偏光板2、方向調整部3、フィルター部4の順番に配置されている。
偏光板2は、入射光から特定の直線偏光のみを取り出すものであり、従来よく知られた、偏光板と同じ構成を有している。なお、入射光が直線偏光のみの場合は、偏光板2を省略してもかまわないが、光学フィルター1では、偏光板2を用いているものとする。入射光は偏光板2を通過することで同じ偏光方向の直線偏光になり、方向調整部3に入射する。なお、図1に示す光学フィルター1において、偏光板2は偏光方向がX方向(X偏光)の光を取り出すものとする。
方向調整部3は、偏光板2を透過した直線偏光の光の偏光方向を相対的に変化させるものである。方向調整部3は、液晶を備えた光学素子であり、所定の間隔をあけて平行に配置された一対の平板電極基板の間に液晶が充填されている。方向調整部3は、偏光板2とフィルター部4との間に配置されている。方向調整部3は、外部から駆動用の電気信号が送られる(液晶に電圧を印加される)ことにより、入射された直線偏光を回転させることができる。なお、方向調整部3の液晶を挟む電極は、できれば透明が好ましく、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)またはインジウム亜鉛酸化物(IZO)等を用いた透明電極を挙げることができる。
また、方向調整部3は、液晶を用いたものに限定されるものではなく、例えば、ファラデー素子や1/2波長板を用いたものであってもよい。ファラデー素子とは磁界によって透過する光の偏光方向を調整する素子であり、液晶同様、電極に外部から動作の電気信号を入力することで、入射された直線偏光を回転させることができる。また、1/2波長板であれば、ユーザが手動で回転又は外部信号により自動で回転させることで、入射された直線偏光を回転させることができる。
フィルター部4は、透明誘電体41と、金属微粒子42とを備えている。透明誘電体41は、金属微粒子42を分散させるための基板であり、一定の光(ここでは、可視光領域の光)に対して透明な基板である。透明誘電体41は、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の有機フィルムを用いることができる。
なお、方向調整部3として液晶を用いる場合、フィルター部4の透明誘電体41を方向調整部3の一方の電極基板と兼用とすることも可能である。この構成の場合、例えば、次の方法で作製される。透明誘電体41であるガラスの一面に金属微粒子42を分散させ、もう一面に透明電極としてITO膜を高周波スパッタ法により形成した後、フォトリソグラフィー法により電極パターンを形成する。その後、配向膜を塗布し、ラビングした後、他方の電極基板を透明誘電体41に平行に配置し、他方の電極基板と透明誘電体41の間に液晶を充填し、封入する。以上の方法で、方向調整部3とフィルター部4とを一体的に作製することが可能である。
金属微粒子42は、表面プラズモン共鳴を起こす金属であり、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、白金、パラジウム等がよく用いられている。図1に示すように、金属微粒子42はY方向の長さがX方向の長さよりも長い楕円球形状を有している。このX方向、Y方向、Z方向の長さは、数nmから100nm程度である。詳細は後述するが、この金属微粒子42の長さとその相対的な比率(以下、アスペクト比と称する)及び入射光の偏光方向によって、フィルター部4を透過する光のうち吸収(散乱)される波長が決定される。なお、図1に示す金属微粒子42は、楕円球形状のような角部が丸いものであるが、これに限定されるものではなく、例えば直方体や円柱、楕円柱のように角部が丸くないものでもよい。金属微粒子は、少なくとも異なる2方向で長さが異なるように形成されていればよい。
図1に示すように、金属微粒子42は、透明誘電体41の表面に分散されている。金属微粒子42は、全て同じ形状及び大きさを有するとともに、配向を同じくして、等間隔に並んで配置されている。なお、金属微粒子42は透明誘電体41の内部に分散されていてもよく、配向方向が同じであれば、等間隔でなくてもよい。金属微粒子42を透明誘電体41に配列する方法は、例えば、流動法、ラングミュアーブロジェット法、バブルインフレート法、電界による配列及びロールツーロール方式等がある。
また、図1に示すフィルター部4では、金属微粒子42が2次元(X方向及びY方向)配列されているが、3次元配列されていてもよい。また、金属微粒子42の量(単位面積或いは単位体積当たりの量)は多いほうがよいが、金属微粒子42同士が接触したり、接近しすぎたりすると、単体のときとは異なる光学特性となる場合がある。光学特性の変化を抑制するために、金属微粒子42間の距離は、5nm以上であることが好ましいことが知られている。
フィルター部4は次のようにして作製される。ガラス、プラスチック、高分子などの固体の透明誘電体41の表面に、金属膜を成膜し、その後、金属微粒子42となる部分をマスクし、フォトリソグラフィープロセスなどにより、周囲の部分を除去する。また、透明誘電体41として光硬化樹脂を用いる場合、金属微粒子42を所望の向きに揃えた後、光硬化樹脂を硬化させ、金属微粒子42を固定してもよい。なお、作成方法はこれに限定されるものではない。
ここで、フィルター部4による特定波長を吸収(散乱)する機構の説明を、具体的なシミュレーション結果に基づいて説明する。フィルター部4は金属微粒子42に光が入射したときにおきる表面プラズモン共鳴を利用し、特定波長(表面プラズモン共鳴波長或いは単に共鳴波長と称する場合がある)を吸収(散乱)している。
フィルター部4の表面プラズモン共鳴波長を説明するため、まず、空気中に存在する金属微粒子に入射光が入射したときに表面プラズモン共鳴によって吸収される波長について図面を参照して説明する。図2A−図2Cは、金属微粒子として銀の微粒子に所定の偏光方向の光が入射したときの散乱断面積の近接場成分を示す図である。図2A−図2Cの結果は、異なる形状モデルの銀の微粒子に光を入射させたシミュレーションを行って得られたものである。
図2A−図2Cのシミュレーションに用いた銀の微粒子の形状モデル及び入射光との関係は次のとおりである。図2AはX方向のサイズが5nm、Y方向のサイズが20nm、Z方向のサイズが100nmである銀の金属微粒子が空気中に存在するときZ方向に進行する光の偏光方向をX方向及びY方向とした結果である。図2BはX方向のサイズが20nm、Y方向のサイズが100nm、Z方向のサイズが5nmである銀の金属微粒子が空気中に存在するときZ方向に進行する光の偏光方向をX方向及びY方向としたときの結果である。図2CはX方向のサイズが5nm、Y方向のサイズが100nm、Z方向のサイズが20nmである銀の金属微粒子が空気中に存在するときZ方向に進行する光の偏光方向をX方向及びY方向としたときの結果である。
すなわち、図2A−図2Cは同じ形状(アスペクト比)及びサイズの銀の微粒子と偏光方向とを相対的に回転させたときの結果である。なお、入射光は銀の微粒子によりレイリー散乱されるものとして計算している。散乱断面積の近接場成分とは、金属微粒子(銀の微粒子)に照射された光による近接場光の発生、すなわち、表面プラズモン共鳴の強度に対応するものである。遠視野で見ると、近接場光は吸収されたことになるので、この波長を除いた光、つまり、表面プラズモン共鳴による近接場光の波長(表面プラズモン共鳴波長)の補色の光が見える。このことから、図2A−図2Cは入射光に対する吸収スペクトルと捉えることが可能である。
図2A−図2Cは、銀の微粒子に対する入射光の入射方向及び偏光方向が変化したときの吸収波長の変化を示している。図2Aの構成では、X偏光の光が入射したとき、330nmの近辺の波長が吸収され、Y偏光の光が入射したとき、430nm近辺の波長が吸収されていることがわかる。同様に図2Bの構成では、X偏光の光が入射したとき、430nmの近辺の波長が吸収され、Y偏光の光が入射したとき、940nmの近辺の波長が吸収されていることがわかる。さらに、図2Cの構成ではX偏光の光が入射したとき、330nmの近辺の波長が吸収され、Y偏光の光が入射したとき、940nmの近辺の波長が吸収されていることがわかる。
以上のことから、金属微粒子(ここでは、銀の微粒子)に対する入射光の偏光方向が90度回転することで、吸収(散乱)される波長(波長域)が変化していることがわかる。また、光の偏光方向を固定し、金属微粒子を回転させても同様の結果となることはいうまでもない。
次に、二次元配列した銀の金属微粒子に偏光方向を変えた光を入射させたときの吸収スペクトルについて説明する。図3は平面上に配列した金属微粒子に入射光の偏光方向と金属微粒子直後の電場強度を示す図である。図3はFDTDシミュレーションを行った結果であり、そのモデルは次のとおりである。X方向のサイズが30nm、Y方向のサイズが60nm、Z方向のサイズが10nmである楕円柱形状の銀の金属微粒子を、100nmの周期でXY平面内に二次元配列したものに、偏光方向を変えた光を入射させた。なお、入射光はZ方向に伝播する平面波であり、偏光方向がX軸と平行なときを0度としている。そして、入射光の偏光方向を0度、30度、45度、60度及び90度に変化させて入射している。
この電場強度は、主に金属微粒子(銀の微粒子)で励起された表面プラズモン共鳴により増強された電場である。電場強度はほとんどが金属微粒子の近傍に存在する近接場光として現れ、一部が散乱光として遠視野に伝播する。遠視野で見ると、近接場光は吸収されたことになるため、この近接場光の波長を除く波長の光、つまり、表面プラズモン共鳴波長の補色が見えることになる。つまり、遠視野では表面プラズモン共鳴波長の補色の光が観察されることから、図3は吸収スペクトルと捉えることができる。
図3において、偏光方向が90度(Y偏光)のときに650nm近辺に吸収ピークを有している、すなわち、650nm近辺の波長を吸収している。一方、偏光方向が0度(X偏光)のときは455nm近辺に吸収ピークを有している、すなわち、455nm近辺の波長を吸収していることがわかる。そしてその中間の偏光方向の光では、金属微粒子の向きと偏光方向の相対角度により、これら2つの吸収ピークの相対強度が決まる。これによって、この2波長の間の波長域の光が透過するバンドパスフィルターを形成することができる。よって、金属微粒子の2つの形状異方軸に、それぞれに平行な偏光成分がどのくらいの比率で入射されるかにより、すなわち、金属微粒子の形状異方性と偏光方向とを調整することにより、各方向に対応した吸収ピークの吸収強度を変えることができる。
また、図3において、0°入射のときの短軸方向の吸収波長が455nm近辺であるのに対し、30°、45°、60°入射のときは470nm近辺に長波長シフトしている。これは、表面プラズモン共鳴が、完全な短軸方向で行われていないためである。よって、この現象を利用して、吸収波長を調整することもできる。
これらのことより、フィルター部の金属微粒子の形状及び配列と、フィルター部への入射光の偏光方向とを適切に調整することで、光学フィルターの吸収ピークの位置を所望の位置に設定することができる。すなわち、光学フィルターを所望の吸収スペクトルを持つ光学フィルターとすることができる。
上述したように、本発明の光学フィルター1では、フィルター部4は透明誘電体41に金属微粒子42を拡散させた構成であり、金属微粒子42が2次元配列されている。そして、光学フィルター1は偏光板2と方向調整部3とで、フィルター部4に入射する入射光の偏光方向を調整できる構成となっている。この構成の光学フィルター1の動作は以下のとおりとなる。
上述したとおり、図1の光学フィルター1において、偏光板2を透過した光の偏光方向がX方向(X偏光)である。方向調整部3が、偏光方向を回転させない場合、金属微粒子42にX偏光の入射光が入射する。このX偏光の入射光によって金属微粒子42のX方向のサイズに対応した表面プラズモン共鳴が発生し、X方向のサイズに起因した波長域の光が吸収される(図1において、金属微粒子42はX方向が短軸となっているので、図3のシミュレーションで用いた金属微粒子を用いた場合、吸収ピークの波長は短軸方向の455nmとなる)。
一方、方向調整部3が偏光方向を90度回転させると、金属微粒子42にY偏光の入射光が入射する。このY偏光の入射光によって、金属微粒子42のY方向サイズに対応した表面プラズモン共鳴が発生し、金属微粒子42のY方向のサイズに依存した波長域の光が吸収される(図1において、金属微粒子42はY方向が長軸となっているので、図3のシミュレーションで用いた金属微粒子を用いると、吸収ピークの波長は長軸方向の650nmとなる)。
さらに、方向調整部3が、偏光方向を0度から90度の間に回転させる場合、金属微粒子42にはX偏光成分とY偏光成分を備えた入射光が入射する。この入射光は金属微粒子42のX方向の表面プラズモン共鳴とY方向の表面プラズモン共鳴が、各成分の比率に対応して起こるため、これらの重ね合わせとなる。図3に示したように、吸収ピークの波長域がシフトする。
ここで、二次元配列した銀の金属微粒子に光を入射させ、遠視野で観察したときの吸収スペクトルについて説明する。図7Aは、二次元配列した銀の金属微粒子を光の照射方向に重ねて配置したときの層数と遠視野における電場強度との関係を示す図であり、図7Bは、二次元配列した銀の金属微粒子を光の照射方向に重ねて配置したときの層間間隔と遠視野における電場強度との関係を示す図である。
図7Aにおいて、破線は図3と同じ構成(すなわち1層)のときの吸収スペクトルであり、点線は図3と同じ形状の金属微粒子を間隔100nmで5層重ねた構成のときの吸収スペクトルであり、実線は図3と同じ形状の金属微粒子を間隔100nmで8層重ねた構成のときの吸収スペクトルを示している。なお、5層と8層の結果については、他のグラフと重ならないよう、縦軸をずらして表示している。
図7Aに示しているように、1層、5層及び8層いずれの場合でも、図3において偏光方向が0°のときの吸収のピークと同じ波長付近で電場強度が下がっている。すなわち、図3に示した金属微粒子直後の電場強度は、表面プラズモン共鳴により増強された電場であり、遠視野ではこの表面プラズモン共鳴波長の補色の光が観察されてということである。さらに、複数層重ねた場合でもその吸収スペクトルは、図3における偏光方向0°のときの吸収スペクトルと対応する。そして図7Aに示しているとおり、金属微粒子を重ねる層数が多くなると、表面プラズモン波長において吸収される光の量が増え、このことから、コントラストを高くすることが可能である。
図7Bにおいて、破線は図3と同じ構成(すなわち1層)のときの吸収スペクトルであり、点線は図3と同じ形状の金属微粒子を間隔30nmで8層に重ねた構成のときの吸収スペクトルであり、鎖線は図3と同じ形状の金属微粒子を間隔50nmで8層に重ねた構成のときの吸収スペクトルであり、一点鎖線は図3と同じ形状の金属微粒子を間隔60nmで8層に重ねた構成のときの吸収スペクトルであり、実線は図3と同じ形状の金属微粒子を間隔70nmで8層に重ねた構成のときの吸収スペクトルを示している。なお8層のときの結果は、他のグラフと重ならないよう、縦軸をずらして表示している。
図7Bに示すように、間隔が30nmの構成では1層の構成に比べて吸収ピークがシフトしている。一方で、間隔が50nm以上の構成では吸収ピークが1層の構成とほぼ同じ位置に戻っている。これは、層間の間隔が狭いことで、近傍の粒子同士で相互作用が発生して吸収ピークの波長がシフトしているものと考えられる。そして、間隔を50nm以上に広げることにより、近傍の粒子同士で相互作用が起きなく(起きにくく)、吸収ピークの波長が1層のときとほぼ同じ波長に戻っていると考えられる。
この相互作用しなくなる十分な間隔は、金属微粒子の光照射方向の長さに依存する。すなわち、本シミュレーションにおいて、金属微粒子のZ方向の長さは10nmであり、上述のように近傍の粒子同士で相互作用が発生しにくい十分な間隔である50nmは、金属微粒子のZ方向の長さの約5倍にあたる。よって、金属微粒子を並べたときの光の照射方向の間隔は、金属微粒子の照射方向の長さの5倍以上とするのが好ましい。このように、近傍の金属微粒子同士の間隔を相互作用が起きない間隔にしておくことで、金属微粒子の相互作用によるピークシフトを防ぐことができるため、金属微粒子単体の吸収ピークのみを考えて、金属微粒子の形状を設計することができる。
以上のことから、本発明の光学フィルター1は、金属微粒子42の長軸と短軸(図1ではY方向とX方向)それぞれに対応した2つの表面プラズモン共鳴波長に吸収ピークを有する構成とすることが可能である。これにより、本発明の光学フィルターは金属微粒子42を適切に選択することで、赤色及び青色を発現する光学フィルターと緑色(及び赤色)を発現する光学フィルターとすることが可能であり、2枚の光学フィルターでフルカラー表示が可能である。吸収波長が固定された従来の光学フィルター(例えば、RGBに塗り分けられたカラーフィルター)に対して、光学フィルターの枚数を減らすことができ、光利用効率を高めることが可能である。
また、上述しているように、入射光の偏光方向の回転によって表面プラズモン共鳴のピークをシフトさせることができる。すなわち、金属微粒子42の長軸と短軸(図1ではY方向とX方向)それぞれに対応した2つの表面プラズモン共鳴波長及びシフトした表面プラズモン共鳴波長に吸収ピークを有する構成とすることができる。すなわち、本発明の光学フィルター1では、3つの表面プラズモン共鳴波長を有する。光学フィルター1では、金属微粒子42を適切に選択することで、赤色、緑色、青色を発現することが可能であり、1枚の光学フィルターでフルカラー表示を行うことが可能である。これにより、吸収波長が固定された従来の光学フィルター(例えば、RGBに塗り分けられたカラーフィルター)に対して、光学フィルターの枚数を減らすことができ、光利用率をさらに高めることが可能である。
以上、方向調整部3が入射光の偏光方向を回転させることで、金属微粒子42と入射光の偏光方向との相対関係を調整する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、方向調整部が、金属微粒子42を回転させる構成であってもよい。この場合、金属微粒子42が回転しやすいように透明誘電体41がジェル或いは液体であることが好ましい。金属微粒子42を回転させ、入射光の偏光方向との相対関係を調整しても同様の光学フィルターを得ることができる。
金属微粒子42に電圧を印加することで、金属微粒子42の長軸が電圧間の方向になるように配列することが知られている。そこで、金属微粒子42を回転させる方法としては、方向調整部3がフィルター部4に電界を発生させることができる構成(例えば、電極)とし、金属微粒子42に電界を作用させることで、金属微粒子42を配列させるものを挙げることができる。
この特徴を利用し、電極を2対設け、電極間にかける電圧を調整することにより、金属微粒子42を3次元的に回転させることも可能である。金属微粒子42を3次元的に回転させることで、1枚の光学フィルターで3つの表面プラズモン共鳴波長を持つことになるため、1枚の光学フィルターでフルカラー表示が可能な光学フィルターとすることが可能であり、光利用率をさらに高めることが可能である。
(第1の実施形態)
次に本発明にかかる表示装置について図面を参照して説明する。図4は本発明にかかる表示装置の一例の概略配置図である。図4に示す表示装置100は、説明の便宜上、1つの表示セル10で構成されているものとしているが、実際には複数個の表示セル10が縦横にマトリクス状(例えば、縦1080個×横1920個)に配列されるものである。なお、以下の説明では表示セル10について主に説明する。表示装置100は透過型の表示装置であり、観察者によって、光学フィルター1a、1b側(フィルター部4a、4b側)から観察される。
図4に示すように、表示装置100は、表示セル10と、演算部91と、表示データ入力部92と、方向調整部駆動回路93と、光強度調整部駆動回路94とを備えている。
表示セル10は、X方向に並んだ2つのサブセル10a、10bに分けられており、光学フィルター1a、1bと、光源5とを備えている。光学フィルター1a、1bはX方向に並んで配置されている。そして、サブセル10aとサブセル10bとはそれぞれ異なる表示(異なる色の表示)が可能となっている。
光源5は、可視光を放射するものであればよい。なお、フルカラー表示を行う場合、光源5は白色光を放射するものが好ましい。光源5として、例えば、蛍光灯、白熱電球、LED、レーザ光源などが上げられる。なお、光源5の光を全面に照射する拡散板、導光板等を設けてもよい。光源が、例えば、レーザ光源のように、直線偏光の光を出射するものであれば、偏光板2を省略することができる。
光学フィルター1aは偏光板2、方向調整部3a、フィルター部4aに加えて、偏光板2と方向調整部3aとの間に光強度調整部6aを備えている。同様に、光学フィルター1bは、偏光板2、方向調整部3b、フィルター部4bに加えて、偏光板2と方向調整部3aとの間に光強度調整部6bを備えている。なお、偏光板2は、光学フィルター1a、1bで共通の部材となっている。また、以下、方向調整部3a、3bは、液晶素子であり、入射光の偏光方向を調整するものとして説明するが、入射光の偏光方向と金属微粒子42a、42bの異方性の向きを相対的に変化できるものであればよく、これに限定されるものではない。
光学フィルター1a及び1bにおいて、偏光板2、方向調整手段3a、3b、フィルター部4a、4b(透明誘電体41a、41b及び金属微粒子42a、42b)については、上述の光学フィルター1の通りであるが、光学フィルター1aと光学フィルター1bとで、金属微粒子42a、42bの形状が異なっている。例えば、サブセル10aで赤色から青色までの色を表示し、サブセル10bで緑色を表示すれば、表示セル10で3原色を表現することができる。
なお、人間の目は赤色の感度が低いため、赤色をサブセル10aだけで表示する場合、入射光の強度を強くする必要がある。サブセル10aとサブセル10bの両方で赤色を表示できるようにすれば、赤色表示時の開口率が上がるため、入射光強度を強くする必要がなくなる。以上のことから、表示セル10では、サブセル10aで赤色及び青色を表示し、サブセル10bで赤色及び緑色を表示する。光学フィルター1aは赤色及び青色を発現し、光学フィルター1bは赤色及び緑色を発現する。
図4に示す表示セル10において、サブセル10aは赤色及び青色を表示するので、フィルター部4aは490〜500nmと580〜595nmの2つの波長領域に吸収ピークを持つような金属微粒子42aを備えている。サブセル10bは緑色及び赤色を表示するので、フィルター部4bは、750〜800nmと490〜500nmに吸収ピークを持つような金属微粒子42bを備えている。
光強度調整部6a、6bは、金属微粒子42a、42bに入射する光の強度(換言すると、光の透過度合)を調整するものである。光強度調整部6a及び6bは光学フィルター1aと1bを総合して所望の色に見えるようにするものであり、偏光板と液晶素子を組み合わせたものである。すなわち、偏光板2を透過した光を光強度調整部6a、6bの液晶で偏光方向を回転させ、光強度調整部6a及び6bの偏光板に照射すればよい。このとき、光強度調整部6a、6bを透過した光は、一定の偏光方向を持っており、方向調整部3a、3bは、上述した光学フィルター1に示した動作を行うことができる。
また、光強度調整部6a、6bとして、電荷を与えることで、色が変わるエレクトロクロミック材料を用いてもよい。エレクトロクロミック材料を用いた光強度調整部6a、6bに電圧をかけることで透過する光の強度(透過度合)を変化させることができる。なお、本実施形態では、光強度調整部6a、6bを偏光板2と方向調整部3a、3bとの間に設置しているが、偏光板2と光源5との間、又はフィルター部4a、4bの上(観察者側)に設置してもよい。
方向調整部駆動回路93は、演算部91から与えられたデータに基づいて、方向調整部3a、3bに電気信号を送り、入射された直線偏光を所望の偏光方向に回転させるためのものである。光強度調整部駆動回路94は、演算部91から与えられたデータに基づいて、光強度調整部6a、6bに電気信号を送り、光強度調整層6a、6bを透過する光強度を制御するものである。なお、光源5がサブセル10a、10bごとにそれぞれに独立している構成の場合、光強度調整部駆動回路94が、光源5に電気信号を送り、発光強度の調整を行う構成であってもよい。このとき、光強度調整部6a、6bを省略することができ、光の透過率を高めることが可能である。
方向調整部3a、3bは液晶素子であることから、対向に配置された電極が設置されている。また、光強度調整部6a、6bも液晶素子を挟んで電極が設置される。これらの電極はできれば透明であることが好ましく、例えばインジウム錫酸化物(ITO)またはインジウム亜鉛酸化物(IZO)等の透明電極を用いることができる。また、方向調整部3aと光強度調整部6a、方向調整部3bと光強度調整部6bは中央に共通の電極(例えば、接地電極)を備えるようにしてもよい。
表示データ入力部92は、例えば、DVD装置、BD装置等のディスク装置やPC等から送られ、表示装置100で表示する画像、映像のデータが入力される部分である。なお、入力される画像、映像データは、表示セル10ごとの色データ、輝度データを備えたデータを挙げることができる。演算部91は、表示データ入力部92から与えられた画像、映像データを、本表示セル10で表示するために、各セルに対する入射光の強度及び偏光方向を演算し、その結果を各セル10へ出力する処理回路を含む。
次に表示装置100の動作について説明する。まず、表示データ入力部92に画像・映像データが入力される。演算部91は、画像・映像データに基づいて各表示セル10での色及び強度を決定し、色の情報よりフィルター部4a、4bに入射する入射光の偏光方向と、その入射光の強度を算出する。そして、演算部91は、入射光の偏光方向の情報を含む信号を方向調整部駆動回路93に、強度の情報を含む信号を光強度調整部駆動回路94にそれぞれ送信する。
方向調整部駆動回路93は演算部91からの信号に基づいて方向調整部3a、3bに駆動信号を送る。また、光強度調整部駆動回路94は演算部91からの信号に基づいて光強度調整部6a、6bに駆動信号を送る。なお、方向調整部3a、3bに送られる駆動信号は独立した信号であり、液晶を駆動するための電圧を電極基板に印加するものである。同様に、光強度調整部6a、6bに送られる駆動信号も独立した信号であり、液晶を駆動するための電圧を電極基板に印加するものである。
光強度調整部駆動回路94から駆動信号を受けることで光強度調整部6aおよび6bは、光源5からの光の透過率を調整し、方向調整部3a、3bに入射する入射光の強度を調整する。一方で、方向調整部駆動回路からの駆動信号を受けることで方向調整部3a、3bは、入射光の偏光方向を回転調整する。光強度調整部6a、6b及び方向調整部3a、3bによって偏光方向及び強度が調整された入射光がフィルター部4a、4bに入射する。フィルター部4a、4bから出射した光は、金属微粒子42a、42bの形状異方性と偏光方向によって決められた波長が吸収される。このようにして、サブセル10a、10bすなわち表示セル10で所望の色表示がなされる。
以下に、本発明にかかる表示セル10で赤色、緑色、青色、これらの中間色、白色、黒色のそれぞれを表示する場合について説明する。
赤色を表示する場合は以下のとおりである。方向調整部駆動回路93が、方向調整部3a、3bをフィルター部4a、4bへ入射する光の偏光方向を赤色が表示されるように制御する。そして、光強度調整部駆動回路94が光強度調整部6a、6bを制御し、方向調整部3a、3bへの入射光の強度を最適な強度にする。表示セル10の各部をこのように制御することで、サブセル10a、10bの両方で赤色が表示される。これにより、表示セル10は、赤色表示となる(遠視野において赤色表示となる)。
緑色を表示する場合は以下のとおりである。方向調整部駆動回路93が、方向調整部3bをフィルター部4bへ入射する光の偏光方向を緑色が表示されるように制御する。そして、光強度調整部駆動回路94が光強度調整部6bを制御し、方向調整部3bへの入射光の強度を最適な強度にする。また、光強度調整部駆動回路94が光強度調整部6aを制御し、方向調整部3aへの入射光を遮断(入射光の強度をゼロに)する。表示セル10の各部をこのように制御することで、サブセル10aでは表示がされず(黒表示)、サブセル10bでは緑色が表示される。これにより、表示セル10は、緑色表示となる(遠視野において緑色表示になる)。
青色を表示する場合は以下のとおりである。方向調整部駆動回路93が、方向調整部3aをフィルター部4aへ入射する光の偏光方向を青色が表示されるように制御する。そして、光強度調整部駆動回路94が光強度調整部6aを制御し、方向調整部3aへの入射光の強度を最適な強度にする。また、光強度調整部駆動回路94が光強度調整部6bを制御し、方向調整部3bへの入射光を遮断(入射光の強度をゼロに)する。表示セル10の各部をこのように制御することで、サブセル10aでは青色が表示され、サブセル10bでは表示がされない(黒表示)。これにより、表示セル10は、青色表示となる(遠視野において青色表示となる)。
赤色、青色及び緑色の相対的な強度を適切に調整することで、中間色の表示が可能である。さらに、サブセル10aで赤色及び青色を、サブセル10bで緑色又は赤色及び緑色を表示するようにすることで、表示セル10は白色表示となる。
なお、サブセル10bで緑色及び黄色を表示するようにしておけば、サブセル10aで青色を、サブセル10bで黄色を表示するようにすることで、表示セル10は擬似的に白色表示となる。これは、サブセル10a、10bで表示できる色が、互いに補色になる組み合わせを含むようにしておけば、他の色の組み合わせでも可能である。また、サブセル10aで青色と赤色を、サブセル10bで緑色と黄色を表示するようにすることで、より明るい白色を表現することができる。
さらに、黒色表示を行う場合は、フィルター部4a、4bに光を入射させないよう、光強度調整部駆動回路94で光強度調整部6a、6bを調整すればよい。
以上より、表示装置100が、本発明の光学フィルター1a、1bを利用しており、金属微粒子42a、42bの形状異方性と光源の偏光方向の相対角度を調整することで、1つのサブセルで2色およびその混色を表現できる。このことから、フルカラー表示するために必要なフィルターの枚数を2枚以下とすることが可能である。
従来のRGB塗りわけ形カラーフィルターを用いる場合、表示セルは赤色(R)表示サブセル、緑色(G)表示サブセル及び青色(B)表示サブセルを備えている。例えば、赤色(R)表示を行うときは、緑色(G)表示サブセル及び青色(B)表示サブセルが暗表示となり2つの画素が点灯しなくなる。すなわち、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)表示を行う場合、従来の表示セルでは、66%の無点灯領域が発生する。
上述のように、本発明にかかる表示セル10では、偏光方向制御することで、カラーチューナブルなことから、赤色表示のときは、サブセル10a、10bが点灯するので、無点等領域が発生しない。また、緑色表示のときはサブセル10aが、青色表示のときサブセル10bが無点灯となるので、無点灯領域が66%から50%に縮小し、光の利用効率が高く、明るい表示が可能或いは同じ表示を行う場合の消費エネルギーを低減することが可能である。
さらに、本発明の光学フィルターは、長軸と短軸に対応した2つの共鳴波長に加え、長軸および短軸の中間の偏光方向を入射し表面プラズモン共鳴のピークをシフトさせ、第3の共鳴波長を加えることができる。このような光学フィルターを用いることで、1個の光学フィルターでフルカラーに必要なRGB全ての色(RGBに対応した波長の光)を発現させることができ、表示セルは1個の光学フィルター、すなわち、1個のサブセルでフルカラー表示が可能となる。この場合、無点灯領域がなくなるため、光の利用効率をさらに高めることが可能である。また、方向調整部駆動回路93、光強度調整部駆動回路94も簡略化することが可能である。
なお、フィルター部4a、4bとして上述に限定されるものではなく、フィルター部4aが490〜500nmと580〜595nmの2つの波長領域に吸収ピークを持つ構成とした場合、フィルター部4bでは、少なくとも緑色を表示すればよく、フィルター部4bは750〜800nmに吸収ピークを持つようにすればよい。このように構成することで、サブセル10aは青色から赤色までの色を表示し、サブセル10bは緑色を表示でき、表示セル10でフルカラー表示が可能となる。さらに、フィルター部4bのもう1つの吸収ピークを435〜480nmとすることで、サブセル10bは補色として黄色を表示できる。サブセル10aで赤色及び青色、サブセル10bで緑色及び黄色を表示できることで、表示セル10で、RGBYの4原色による高精細な色の表現が可能である。このとき、サブセル10aで青色、サブセル10bで黄色を表示すれば、擬似白色を表示することもできる。フィルター部4bを750〜800nmに吸収ピークを持つとともに、もう1つの吸収ピークとして、可視域以外(400nm未満、または800nm以上)とすることで、サブセル10bで白色を表示できる。
(第2の実施形態)
本発明にかかる表示装置の他の例について図面を参照して説明する。図5は本発明にかかる表示装置の他の例を示す概略図である。図5に示す表示装置200の表示装置100と実質上同じ部分には同じ符号を付すとともに、実質上同じ部分の詳細な説明は省略する。図4に示す表示装置100が透過型表示装置であったのに対し、本実施形態の表示装置2000は反射型表示装置である。なお、図5には図4と同様に、1個の表示セル20で構成された表示装置200を示しているが、実際の表示装置は複数の表示セル20がマトリクス状に配列されている。
図5に示すように、表示セル20は、反射型の表示セルであり、偏光板2側から入射され、フィルター部4a、4bを透過した後、散乱され、再度フィルター部4a、4bを透過し、偏光板2側から出射される。そのため、表示セル20は光源を備えておらず、その代わりに、フィルター部4a、4bの背面側(方向調整部3a、3bと反対側)に散乱層7を備えている。
散乱層7は、フィルター部4a、4bで吸収されなかった透過光を散乱し、フィルター部4a、4bを再度通過させることで、フィルター部4a、4bによる吸収をより完全にするとともに、フィルター部4a、4bによる吸収波長以外の光を偏光板2へ戻すものである。散乱層7は、可視域の全波長に対してなるべく散乱効率が高いものが好ましく、表面に細かい凹凸を形成した基板などでもよいし、拡散板などを用いてもよい。
光は、偏光板2側から入射し、第1の実施形態で説明した動作により、フィルター部4a、4bの金属微粒子42a、42bで表面プラズモン共鳴を起こし、特定の波長が吸収される。しかし、フィルター部4a、4bにおいて、複数の金属微粒子42a、42bが間隔をおいて存在しているので、吸収波長の光を100%吸収できない。すなわち、入射光の一部は、金属微粒子42a、42bの隙間を通り、表面プラズモン共鳴による吸収が行われない。
そこで、吸収されず散乱層7に到達した光は、戻り光となる。このとき、戻り光は散乱層7で散乱されるので、入射の光路とは異なる光路になることが多い。戻り光が異なる光路を通ることで、戻り光が金属微粒子42a、42bで表面プラズモン共鳴が発生しやすくなる。これにより、戻り光が再度光学フィルター1a、1bを通過するとき、特定の波長がさらに吸収され、より明確に色を発現することが可能となる。
なお、表示セル20で、黒色を表現するには、光強度調整部6a、6bで光を吸収させてもよい。また、この両者を用いてもよい。また、表示セル20で、白色を表現する場合には、フィルター部4a、4bで可視域の光を吸収しないように、金属微粒子42a、42bの表面プラズモン共鳴波長の1つを可視域以外の波長(400nm未満、または800nm以上)とすればよい。あるいは、光学フィルター1において金属微粒子42を3次元的に回転させ、光学フィルター1で白色以外を表示し、白色のみを表示させる光学フィルターを別途設けてもよい。
また、フィルター部4aで赤色および青色を、フィルター部4bで緑色を表現する設定とすると、光の半分は金属微粒子で吸収されるが、半分は反射され、白色を表示させることができる。なお、本実施形態では、光強度調整部6a、6bを偏光板2と方向調整部3a、3bとの間に設置しているが、偏光板2の入射側(観察者側)や、又はフィルター部4a、4bと散乱層7との間に設置してもよい。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様、2枚の光学フィルター1a、1bでフルカラー表示が可能であり、従来のカラーフィルターを用いたものに比べて、無点灯領域が66%から50%に縮小し、開口率を上げられるため、光の利用効率を高くすることができる。
(第3の実施形態)
本発明にかかる表示装置のさらに他の例について図面を参照して説明する。図6は本発明にかかる表示装置のさらに他の例の概略配置図である。図6に示す表示装置300の表示装置200と実質上同じ部分には同じ符号を付すとともに、実質上同じ部分の詳細な説明は省略する。図5に示す表示装置200が反射型表示装置であったのに対し、本実施形態の表示装置300は散乱型表示装置である。なお、図6には図4及び図5と同様に、1個の表示セル30で構成された表示装置300を示しているが、実際の表示装置は複数の表示セル30がマトリクス状に配列されている。
図6に示すように、表示装置300における表示セル30は、サブセル30a、30bを備えている。また、サブセル30a、30bは光学フィルター1a、1bを有しており、光学フィルター1a、1bの後側(フィルター部4a、4bの方向調整部3a、3bと反対側)に反射防止層8を備えている。
反射防止層8は、フィルター部4a、4bで吸収されなかった透過光が反射するのを防止するためのものである。可視域の全波長に対して、なるべく反射率を低くすればよく、反射防止コーティングとして一般に用いられる多層膜やモスアイ構造、フォトニック結晶を利用してもよい。材料は、可視域の広い範囲で吸収係数が高いものが好ましく、例えばSiなどの無機材料でもよいし、一般に用いられる黒色樹脂でよい。
光は、偏光板2側から入射し、第1の実施形態で説明した動作により、フィルター部4a、4bの金属微粒子42a、42bで表面プラズモン共鳴を起こす。表面プラズモン共鳴は、吸収とともに散乱が起こる。よって、透過型表示装置の場合、共鳴波長以外の波長が主となるが、本実施形態のように、共鳴波長以外の波長を反射しないよう、反射防止層8で吸収させれば、観察者は、共鳴波長における(後方)散乱光のみを見ることになる。
以下に具体例を示して説明する。例えば、表示セル30において、光学フィルター1aが図3に示す表面プラズモン共鳴スペクトルの特性を持つ金属微粒子42aを備えたフィルター部4aを備えているとすると、455nmのピークが青色、650nmのピークが赤色に対応する。すなわち、サブセル30aでは、赤色から青色までの色を表示できる。
一方、光学フィルター1bは、500〜560nmに1つの表面プラズモン共鳴ピークを持つフィルター部4bを備えており、サブセル30bでは緑色が表示される。フィルター部4bの1つの表面プラズモン共鳴ピークを580〜595nmとすれば、サブセル30bは黄色を表現でき、4原色による高精細な色の表現が可能となる。
人間の目は、赤色の感度が低いため、赤色の表示をサブセル30aだけで行うと、入射光強度を強くする必要がある。そこで、サブセル30bでも赤色表示ができるようにすれば開口率が上がるため、入射光強度を強くする必要がなくなる。そのため、光学フィルター1bの1つの表面プラズモン共鳴ピークを500〜560nmとし、もうひとつを610〜750nmとすることで、サブセル30bで緑色と赤色を表示することができる。
なお、黒色を表現するには、光強度調整部6a、6bで光を吸収させればよい。白色を表現する場合には、金属微粒子42a、42bで赤色、緑色、青色の三色を散乱させるようにすればよい。なお、本実施形態では、光強度調整部6a、6bを偏光板2と方向調整部3a、3bとの間に設置しているが、偏光板2の入射側(観察者側)に設置してもよい。
本実施形態においても、第1、第2の実施形態と同様、2枚の光学フィルター1a、1bでフルカラー表示が可能であり、従来のカラーフィルターを用いたものに比べて、無点灯領域が66%から50%に縮小し、開口率を上げられるため、光の利用効率を高くすることができる。
以上示した各実施形態では、光学フィルターとして、入射光の偏光方向を調整することで、金属微粒子42a、42bの形状異方性に対する方向を調整するものを利用しているが、金属微粒子42a、42bを回転させても同様の光学フィルターを作製できる。また、金属微粒子42a、42bを3次元的に回転させることができる場合、1枚の光学フィルターで3つの表面プラズモン共鳴波長を持つことができるので、1つの光学フィルターでフルカラー表示が可能であり、光の利用効率が非常に高くなる。
上述の各実施形態に示したとおり、本発明の表示装置は、本発明の光学フィルターを利用することにより、金属微粒子の形状異方性と光源の偏光方向の相対角度を調整すること、2色およびその混色を表現できる。よって、フルカラー表示するために必要な光学フィルターの枚数を2枚以下とすることが可能であるため、無点灯領域を削減され、開口率が高く、光の利用効率の低下を抑制することが可能である。
さらに、長軸と短軸に対応した2色に加え、長軸および短軸の中間の偏光方向を入射すると、表面プラズモン共鳴波長がシフトすることから、3つの共鳴波長を用いてフルカラーを表示させることも可能であるため、1つの光学フィルターでフルカラー表示を行うことができる。これにより、無点灯領域をなくすことができるので、光の利用効率をさらに高めることが可能である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。