JP5270470B2 - パイプラインの電磁誘導電圧低減装置 - Google Patents
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また、誘導起電力発生用導体の両端の接地極の接地抵抗が十分に小さくないと、誘導起電力発生用導体に流れる電流が小さくなり、十分な誘導起電力をパイプランに発生させることができず、管対地交流電位を十分に低減することができない。したがって、特許文献1に記載の技術では、この接地抵抗が大きい場合、管対地交流電位を十分に低減させるには、発信器で高い電圧を印加して十分な電流を誘導起電力発生用導体に流す必要がある。そのために、発信器の容量が大きくなり、発信器のサイズが大きくなったり、設置費用が高くなったり等の問題点があった。
また、誘導起電力発生用導体の両端の接地極をパイプラインの遠方に設置することができずパイプラインの近傍に設置した場合、接地極から大地に電流が流れることにより、接地極の周辺の大地電位が上昇してしまう。したがって、特許文献1に記載の技術では、誘導起電力発生用導体の両端の接地極をパイプラインの近傍に設置した場合、接地極の周辺におけるパイプラインの管対地交流電位を増加させてしまうという問題点があった。
また、本発明の他の特徴では、電磁誘導低減導体と接地極との間に絶縁体を設けるようにしたので、接地極をパイプラインの近傍に配置しなければならなかったり、接地極の表面積を大きくすることができなかったりする場合でも、パイプラインに発生する電磁誘導電圧を従来よりも低減することができる。
まず、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、パイプラインの電磁誘導電圧低減装置の構成の一例を示す図である。尚、図1では、パイプラインの電磁誘導電圧低減装置を横方向から見た図を示している。
図1において、送電鉄塔1a、1bには、送電線2が張られている。この送電線2には交流電流が流れている。パイプライン3は、大地4中に埋設して敷設されている(大地4中に埋設して敷設されているパイプライン3を埋設パイプラインと称する)。図1では、地点P1から地点P2の間において、パイプライン3と送電線2とが並行(パイプライン3の延長方向と送電線2の延長方向とが略平行)となっている。
送電線2を流れる交流電流に起因する電磁誘導の作用により、パイプライン3には、(式1)で表される電磁誘導電圧Eが、パイプライン3の軸方向(延長方向)に沿って発生する。
E=jωMILc ・・・(式1)
ここで、jは、虚数単位、ωは、送電線2を流れる交流電流の角周波数[rad/sec]、Mは、送電線2とパイプライン3との相互インダクタンス[H]、Iは、送電線2を流れる交流電流[A]、Lcは、パイプライン3と送電線2とが並行している距離(地点P1と地点P2との間の距離)[m]である。
パイプラインの電磁誘導電圧低減装置(以下の説明では、必要に応じて「電磁誘導電圧低減装置」と略称する)100は、このようなパイプライン3に生じる電磁誘導電圧を低減する装置であり、電磁誘導低減導体101と、接地極102a、102bとを有している。
電磁誘導低減導体101は、導体と、その導体の表面に形成された絶縁体とを有する。具体的に電磁誘導低減導体101は、銅線等のケーブルと、当該ケーブルの表面に形成された絶縁体(塩化ビニル、ポリエチレン等)とを有し、ケーブルの表面が絶縁体で被覆された構成となっている。尚、導体と、その導体の表面に形成された絶縁体とを有していれば、電磁誘導低減導体101の構成は、このようなものに限定されない。例えば、銅線等のケーブルの代わりに、鉄板等の構造物等を用いてもよい。
このような電磁誘導低減導体101は、パイプライン3と送電線2とが並行している区間(地点P1から地点P2の間の距離Lcの区間)全体に亘ってパイプライン3に沿って大地4中に埋設している。
尚、電磁誘導低減導体101は、パイプライン3と送電線2とが並行している区間全体に亘ってパイプライン3に沿って大地4中に埋設させるのが最も効果的であるが、パイプライン3と送電線2とが並行している区間の一部に埋設させた場合でも、パイプライン3に発生している電磁誘導電圧を低減・相殺する効果がある。
接地極102a、102bは、導体を用いて構成されており、それぞれ、電磁誘導低減導体101の一端、他端と(電気的に)接続された状態で大地4中に埋設されている。本実施形態では、このようにして接地極102a、102bを埋設するに際し、接地極102a、102bの延長方向に沿う面がパイプライン3と対向するようにしている。また、本実施形態では、前述したように、電磁誘導低減導体101は、パイプライン3と送電線2とが並行している区間(地点P1と地点P2との間の距離Lcの区間)全体に亘って埋設されるので、接地極102a、102bは、この区間外に埋設されることになる。しかしながら、接地極102a、102bを、必ずしもこの区間外に埋設する必要はない。例えば、パイプライン3と送電線2とが並行している区間の一部に電磁誘導低減導体101が埋設されている場合には、接地極102a、102bの少なくとも一部がこの区間内に埋設されることがある。
電磁誘導低減導体101に大きい誘導電流を流すためには、電磁誘導低減導体101の接地極102a、102bの接地抵抗を含めた抵抗値が小さいほど良い。しかしながら、電磁誘導低減導体101の抵抗を小さくしようとすると、接地極102a、102bの表面積を大きくしたり、電磁誘導低減導体101の断面積を大きくしたりする必要があり、施工費用が増大することになる。そのため、電磁誘導低減導体101の抵抗値については、費用対効果を考えた上で必要十分な値を設定することが求められる。電磁誘導低減導体101の抵抗値を決定する方法として、電磁誘導低減導体101に発生する電磁誘導電圧と必要な誘導電流から求める方法が挙げられる。電磁誘導低減導体101に誘導電流を流す起因となる送電線2から電磁誘導低減導体101への電磁誘導電圧の値は、電磁誘導低減導体101の周囲の磁束密度や電磁誘導低減導体101と送電線2との離隔距離に依存して様々に変化するが、この電磁誘導低減導体101への電磁誘導電圧の値がパイプライン3への電磁誘導電圧の低減値相当であると仮定すると、1km当たり1Aの誘導電流を流すのに必要な抵抗値Rは、R=0.4V〜0.9V÷1A=0.4Ω〜0.9Ωとなる。このことから、電磁誘導低減導体101の導体部分と接地極102a、102bのトータルの1km当たりの抵抗値(電磁誘導低減導体101の導体部分と接地極102a、102bの1km当たり合成抵抗の値)は、0.4Ω/km〜0.9Ω/km程度であることが望ましいと求めることができる。ただし、電磁誘導低減導体101の導体部分と接地極102a、102bのトータルの1km当たりの抵抗値を、必ずしもこの範囲の値とする必要はない。例えば、施工費用の増大を考慮しなければ、電磁誘導低減導体101の導体部分と接地極102a、102bのトータルの1km当たりの抵抗値が0.4Ω/kmを下回ってもよい。また、これとは逆に、電磁誘導低減導体101の導体部分と接地極102a、102bのトータルの1km当たりの抵抗値が0.9Ω/kmを上回ってもよい。
接地極102a、102bから大地4に電流が流れると、接地極102a、102bの周囲の大地電位(無限遠方点を0(ゼロ)としたときの接地極102a、102bの周囲の電位)が上昇する。そのため、接地極102a、102bの近くにパイプライン3があると、パイプライン3は、接地極102a、102bから大地4に流れる電流による大地電位の上昇の影響を受け、接地極102a、102bの周辺におけるパイプライン3の管対地交流電位が大きくなる。
図2は、パイプライン3と接地極102との位置関係の一例を示す図である。図2は、パイプライン3と接地極102とを横方向から見た図である。尚、ここでは、接地極102が棒状である場合を例に挙げて説明する。
棒状の接地極102をパイプライン3の下に設置した場合、接地極102に電流が流れたときに接地極102の直上に発生する大地電位(上昇電位)Vは、(式2)のように表される。ここで、ρは、土壌抵抗率(Ω・m)であり、Iは、接地極102を流れる電流(A)であり、Lgは、接地極102の延長方向(パイプライン3の延長方向に沿う方向)の長さ(m)であり、Dは、接地極102の上端とパイプライン3の下端との間の距離(m)であり、lnは自然対数を表している。尚、(式2)では、接地極102の太さ(高さ方向の長さ)は無視している。
V=(ρI/2πLg)ln(2Lg/D) ・・・(式2)
図3に示すように、接地極102の延長方向の長さが長いほど、接地極102の直上に発生する電位は小さくなる。これは、接地極102の延長方向の長さが長いほど、接地極102から大地4に流れる電流が広い範囲に分散され、流れる電流の接地極102の単位面積あたりの電流密度が小さくなるためである。図3に示した例では、例えば、パイプライン3の近傍に発生する大地電位を5V以下に低減したい場合は、接地極102の延長方向の長さ(接地極長)Lgを95m以上にすることが必要となることが分かる。
以上の知見と、パイプライン3の延長方向に沿って接地極102a、102bを設置する施工方法とを踏まえ、例えば、接地極102の延長方向(パイプライン3の長手(延長)方向に沿う方向)の長さを、接地極102におけるパイプライン3と対向する面に沿う方向のうち、接地極102の延長方向に垂直な方向(図1、図2に示す例では、横方向(接地極102の延長方向に垂直且つ水平な方向、すなわち横方向))における接地極102の長さよりも長くすることで、接地極102による大地電位の上昇を抑えることができる。ただし、接地極102の各方向の長さは、土壌抵抗率ρ等の環境条件や、送電線2に流れる交流電流の大きさ等、現地の状況に応じて定まるものであるので、必ずしもこのような関係になっている必要はない。
また、本実施形態では、パイプライン3の延長方向に沿う方向に長い接地極102を埋設し、電磁誘導低減導体101の導体部分と接地極102a、102bのトータルの1km当たりの抵抗値を0.4Ω/km以上0.9Ω/km以下の範囲にすることで、電磁誘導低減導体101及び接地極102の施工費用が増大することを可及的に抑制しつつ、管対地交流電位をより効果的に低減することができる。
また、本実施形態では、パイプライン3が送電線2の近傍に埋設されている場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのような場合に限定されない。例えば、パイプライン3が交流式電気鉄道のき電線等、交流電流が流れる電線の近傍に埋設されている場合についても、前述したのと同様にしてパイプライン3に発生する電磁誘導電圧を低減することができる。
また、本実施形態では、電磁誘導低減導体101と、接地極102a、102bとが、パイプライン3よりも下側にある場合を例に挙げて説明した。しかしながら、パイプライン3の延長方向に沿って電磁誘導低減導体101が大地4中に埋設され、電磁誘導低減導体101の両端に接地極102a、102bが電気的に接続されていれば、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、電磁誘導低減導体101と、接地極102a、102bとが、パイプライン3よりも上側或いは横側にあってもよい。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、パイプライン3の延長方向に沿う方向に長い形状の接地極102を埋設することができない場合やパイプライン3から十分な離隔を確保して接地極102を埋設することができない場合を想定し、接地極102とパイプライン3との間に絶縁体を設けるようにしている。このように本実施形態は、第1の実施形態に対し、接地極102とパイプライン3との間に絶縁体を設けることが主として異なる。したがって、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図3に付した符号と同一の符号を付すこと等により、詳細な説明を省略する。
図4は、パイプラインの電磁誘導電圧低減装置の構成の一例を示す図である。図4(a)は、延長方向(軸方向)から見た断面図を示し、図4(b)は、横方向から見た図を示す。
接地極102の設置に当たり、パイプライン3の延長方向に沿う方向に十分な長さを有する接地極102を大地4中に埋設することができず、接地極102の周辺の電位の上昇を抑えることができない場合がある。この場合、図4に示すように、パイプライン3と接地極102との間に絶縁体401を設置することで、接地極102から発生する上昇電位Vを遮蔽することができる。このようにすることで、接地極102の延長方向(パイプライン3の延長方向に沿う方向)の長さLgが長くない場合や、接地極102がパイプライン3の近傍に配置されている場合(接地極102の上端とパイプライン3の下端との間の距離Dが短い場合)でも、パイプライン3の周辺における上昇電位Vを抑制し、パイプライン3の対地交流電位を抑制することができる。絶縁体401は、その抵抗率が大きく施工性のよい材料で形成するのが好ましい。具体的に、例えば、ゴムや塩化ビニル等を用いて絶縁体401を構成することができる。
また、絶縁体401の大きさ及び位置は、接地極102とパイプライン3との離隔距離や土壌抵抗率ρ等の環境条件等に基づいて決定する必要があるが、絶縁体401におけるパイプライン3と対向する面に沿う方向のうち、パイプライン3の延長方向に垂直な方向における絶縁体401の長さ(図4に示す例では、横方向(パイプライン3の延長方向に垂直且つ水平な方向)の長さ)Wを、概ね、パイプライン3の直径Φよりも大きくするのが望ましい(図4(a)を参照)。また、絶縁体401の延長方向の長さLiを、概ね、接地極102の延長方向の長さ(接地極長)Lgよりも大きくするのが望ましい(図4(b)を参照)。このようにすれば、パイプライン3が、接地極102のパイプライン3側の領域の全体と絶縁体401を介して対向するように絶縁体401を大地4中に埋設することができ、絶縁体401により、接地極102から発生する上昇電位Vをより確実に遮蔽することができるからである。
尚、本実施形態においても、第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
2 交流架空送電線
3 パイプライン
100 パイプラインの電磁誘導電圧低減装置
101 電磁誘導低減導体
102 接地極
401 絶縁体
Claims (8)
- 電線に流れる交流電流に起因した電磁誘導の作用によってパイプラインに発生する電磁誘導電圧を低減する、パイプラインの電磁誘導電圧低減装置であって、
前記電線と前記パイプラインとが並行している区間において前記パイプラインの延長方向に沿うように地中に埋設された電磁誘導低減導体と、
前記電磁誘導低減導体の前記延長方向における一端において、前記電磁誘導低減導体と電気的に相互に接続された接地極と、
前記電磁誘導低減導体の前記延長方向における他端において、前記電磁誘導低減導体と電気的に相互に接続された接地極と、を有し、
前記電磁誘導低減導体は、絶縁物で被覆されており、
前記接地極の接地抵抗の大きさは、10Ω以下であり、
前記電磁誘導低減導体は、前記電線に流れる交流電流に起因した電磁誘導の作用によって、前記パイプラインに発生する電磁誘導電圧を低減する交流磁界を発生することを特徴とする、パイプラインの電磁誘導電圧低減装置。 - 前記接地極の延長方向が前記パイプラインの延長方向に沿うように、前記接地極が地中に埋設されていることを特徴とする請求項1に記載の、パイプラインの電磁誘導電圧低減装置。
- 前記接地極の延長方向の長さは、前記接地極における前記パイプラインと対向する面に沿う方向のうち、前記接地極の延長方向に垂直な方向における前記接地極の長さよりも長いことを特徴とする請求項2に記載の、パイプラインの電磁誘導電圧低減装置。
- 前記接地極は、前記区間外で地中に埋設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の、パイプラインの電磁誘導電圧低減装置。
- 前記電磁誘導低減導体の導体部分と前記接地極との1km当たり合成抵抗の大きさが0.4Ω/km以上、0.9Ω/km以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の、パイプラインの電磁誘導電圧低減装置。
- 前記電磁誘導低減導体と前記接地極との間で地中に埋設された絶縁体を更に有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の、パイプラインの電磁誘導電圧低減装置。
- 前記パイプラインと、前記接地極のパイプライン側の領域の全体とが、前記絶縁体を介して対向するように、前記パイプライン、前記接地極、及び前記絶縁体が、地中に埋設されていることを特徴とする請求項6に記載の、パイプラインの電磁誘導電圧低減装置。
- 前記絶縁体における前記パイプラインと対向する面に沿う方向のうち、前記パイプラインの延長方向に垂直な方向における前記絶縁体の長さは、前記パイプラインの直径よりも長いことを特徴とする請求項7に記載の、パイプラインの電磁誘導電圧低減装置。
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