JP5268303B2 - 加熱炉の降温方法及び加熱炉 - Google Patents
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Description
かかる加熱炉においては、鋼材を圧延に適した温度まで昇温するが、加熱炉からの抽出時の温度は広範囲に亘り、高温(例えば1150℃)に加熱した鋼材を抽出した直後に、低温(950℃)の鋼材を抽出する必要がある等の状況が、実際の現場では多々発生している。
特許文献1の技術は、循環ファンを用いて炉内ガスを吸引し、炉内ガスを循環ファンの吐出口から冷却帯内の風箱に送風する送風ダクトに設けられたダンパを操作して、循環ファンによって吸引された炉内ガスを炉外へ排出することによって、外気を横形連続焼鈍炉の開口部から炉内に導入して加熱炉(横形連続焼鈍炉)の炉内温度を低下させるものである。
また、特許文献1の技術を用いた場合には、比較的短時間に炉内温度の降下は可能であるものの、外気を高温の加熱炉内に導入するために、窒素酸化物(NOx)濃度を上昇させる一因となっていた。窒素酸化物濃度の上昇は、昨今の公害問題の観点から非常に問題となる。
すなわち、本発明に係る加熱炉の降温方法は、鋼材を連続的に搬送しつつ加熱する加熱炉の降温方法であって、加熱対象となる鋼材(降温後の雰囲気温度で加熱される鋼材)が加熱炉内に達した時に、当該加熱炉内に水蒸気を吹き込むことで炉内の雰囲気温度を降下させることを特徴とする。
この方法によれば、窒素酸化物(NOx)などを発生することなく短時間に加熱炉の炉内温度を降下させることができるようになる。
これにより、加熱対象となる鋼材が均熱ゾーンに達した時を水蒸気噴射のタイミングとすることができ、簡便な制御で温度降下を実現できる。また、水蒸気噴射による加熱炉の降温は短時間で行われるため、加熱対象となる鋼材が均熱ゾーンに達する以前から降温を行う必要が無く均熱ゾーンに達した時点からで十分間に合う。ゆえに、むだ時間や遅れ時間を考慮せず簡便な炉内温度制御が可能となる。
これにより、加熱対象以外の「他の鋼材」に関しても、その表面温度を目標温度の範囲内とすることができる。
なお、加熱炉内に水蒸気を導入するという点に関しては、例えば、特開平7−42921号公報に「燃料ガス供給管の中に燃焼制御用媒体としての蒸気を供給する蒸気供給管を設け、この蒸気供給管より低燃焼負荷時に蒸気を吹き込む」というものがある。この技術は、低負荷燃焼時であっても火炎の直進性及び安定性を図り、燃料ガスと空気との混合を促進し安定した燃焼状況を維持するための技術であって、降温後の雰囲気温度で加熱される鋼材が当該加熱炉内に達した時に、加熱炉内の温度を下げるための技術とは全く異なっている。
一方、本発明に係る加熱炉は、炉体と該炉体内の雰囲気を加熱する燃焼バーナとを備えた加熱炉において、加熱対象となる鋼材が加熱炉内に達した時に、当該加熱炉内に水蒸気を吹き込むことで炉内の雰囲気温度を降下すべく、前記燃焼バーナ又は炉体自体に炉体内
に水蒸気を噴射可能な水蒸気導入管を備えていることを特徴とする。
前記炉体は、上流側から予熱ゾーン、加熱ゾーン、均熱ゾーンを有しており、前記水蒸気導入管は、前記均熱ゾーンに配備された燃焼バーナ又は均熱ゾーンを構成する炉体に備えられていると非常に好ましい。
なお、本発明に係る加熱炉の最も好ましい降温方法は、鋼材を連続的に搬送しつつ加熱する加熱炉の降温方法であって、加熱対象となる鋼材が加熱炉内に達した時に、当該加熱炉内に水蒸気を吹き込むことで炉内の雰囲気温度を降下させ、前記加熱炉は、上流側から予熱ゾーン、加熱ゾーン、均熱ゾーンを有しており、前記加熱対象となる鋼材が均熱ゾーンに達した時に、当該均熱ゾーンに対して水蒸気を吹き込むことを特徴とする。
また、本発明に係る加熱炉の最も好ましい構成は、炉体と該炉体内の雰囲気を加熱する燃焼バーナとを備えた加熱炉において、加熱対象となる鋼材が加熱炉内に達した時に、当該加熱炉内に水蒸気を吹き込むことで炉内の雰囲気温度を降下すべく、前記燃焼バーナ又は炉体自体に炉体内に水蒸気を噴射可能な水蒸気導入管を備えており、前記炉体は、上流側から予熱ゾーン、加熱ゾーン、均熱ゾーンを有しており、前記水蒸気導入管は、前記均熱ゾーンに配備された燃焼バーナ又は均熱ゾーンを構成する炉体に備えられていることを特徴とする。
熱間圧延装置は、上流側から、ブルームやビレットなどの鋼材を加熱する加熱炉、デスケーラ、粗圧延機、仕上げ圧延機、巻き取り装置が順番に配設されている。
条鋼線材の元となる鋼材は、加熱炉内に導入され所定の温度に昇温され加熱炉から抽出される。その後、デスケーラで鋼材の表面についたスケールを剥離させ、粗圧延機及び仕上げ圧延機で圧延されて条鋼線材となる。製造された条鋼線材は巻き取り装置でリング状に巻線される。
加熱炉1は、鋼材4を炉内に搬入するための搬入口5と、所定温度に加熱された鋼材4を炉外へ搬出する搬出口6を有する。また、加熱炉1の内部には、鋼材4を搬入口5から搬出口6へ一定時間(1〜2時間)かけて少しずつ搬送するウォーキングビーム7が設けられている。搬入口5から連続して搬入された鋼材4は、ウォーキングビーム7により炉内を図1の矢印方向に搬送されつつ加熱・昇温され、搬出口6から搬出(抽出)される。
詳しくは、本発明の加熱炉1は、上流側から炉体8A,8B,8Cが順に配設され、これら炉体8A,8B,8Cを縦断するようにウォーキングビーム7は配備されている。
加熱炉1には複数の燃焼バーナ9A,9B,9Cが設けられ、炉体8A,8B,8Cのそれぞれで鋼材4を上下方向から挟むように一対ずつ合計6つの燃焼バーナ9A,9B,9Cが設けられている。具体的には、炉体8Aには燃焼バーナ8A、炉体8Bには燃焼バーナ8B、炉体8Cには燃焼バーナ8Cが設けられている。燃焼バーナ9A,9B,9Cは重油やLNGガス、都市ガスを燃料とし、炉内の雰囲気温度を上昇させる。
上流側の炉体8Aは炉内温度が700℃程度であって、常温で搬入された鋼材4を予熱する予熱ゾーン10Aを形成している。炉体8Aに続く炉体8Bは、炉内温度が1100℃程度であって、鋼材4を800℃程度まで加熱する加熱ゾーン10Bを形成している。炉体8Bに続く炉体8Cは炉内温度が1200℃程度であって、鋼材4を圧延温度までムラ無く加熱する均熱ゾーン10Cを形成している。
図3,図4に示す如く、本実施形態においては、水蒸気導入管12が均熱ゾーン10Cにおける燃焼バーナ9C内に挿通されている。
燃焼バーナ9Cは、燃焼用の空気を導入するためのエア導入管13と、燃料ガスを導入するためのガス導入管14と、上述の水蒸気導入管12とを有する。水蒸気導入管12はガス導入管14内に挿通され、ガス導入管14はエア導入管13内に挿通されている。
エア導入管13により導入された空気は、エア導入管13を通りエア噴出部15から噴出する。また、ガス導入管14により導入された燃料ガスは、ガス導入管14を通りガス噴出部16から噴出する。噴出した空気とガスとが混合し燃焼することで火炎が発生する。
水蒸気導入管12を燃焼バーナ9C内に設けて、この燃焼バーナ9Cにより水蒸気が供給される構成とすれば、新たに水供給用の配管や吹き出し口等を設ける必要がなく設計上好ましい。しかしながら、均熱ゾーン10Cを構成する炉体8Cの側壁に直接、水蒸気導入管12を配備するようにしても何ら問題はない。
本発明にかかる加熱炉1を用いた際の加熱炉の降温方法を述べると共に、加熱温度が異なる鋼材4を加熱する方法について述べる。
図2に示すように、例えば、変形抵抗が高いために高温加熱が必要な合金鋼(鋼材4X)を加熱圧延した後に、表層脱炭防止の観点より低温加熱が求められるバネ鋼(鋼材4Y)を圧延し、その後、通常の鋼材4Zを圧延する場合を考える。多品種少量生産に対応する必要性から、このような加熱・圧延を行うことは実際の現場ではよくあることである。
ウォーキングビーム7上に複数個並べられた鋼材4Xの最後端から、所定の距離を空けて、鋼材4Y(加熱対象となる鋼材であって、降温後の雰囲気温度で加熱される鋼材)が複数個並べられており、鋼材4Xに続いて加熱炉1の搬入口5から搬入される。
これにより、均熱ゾーン10Cの雰囲気温度は、数分間のうちに例えば、1200℃から1050℃へと降温するようになる。したがって、鋼材4Yは低温加熱されて、低温の状態で加熱炉1から抽出される。均熱ゾーン10Cの雰囲気温度が1050℃になった後は、その温度を維持すべく、燃焼バーナ9Cの燃焼状態を所定のものとするとよい。
なお、加熱ゾーン10Bは鋼材4を700℃から900℃まで緩やかに加熱する領域であり、かかる加熱ゾーン10Bにおいて、急激な加熱温度勾配を付与すると、鋼材4における炭素析出を招き好ましくない。したがって、加熱炉1の降温のために加熱ゾーン10Bではなく、均熱ゾーン10Cに対して水蒸気の付与を行う。
以上をまとめるならば、本発明にかかる加熱炉の降温方法は、降温後の雰囲気温度で加熱される鋼材4が加熱炉1の均熱ゾーン10Cに達した時に、均熱ゾーン10Cに対して燃焼バーナ9Cの水蒸気導入管12から水蒸気を吹き込むことで、均熱ゾーン10Cの雰囲気温度を降下させるものである。特に、炉内温度を急速に下げたい場合は、燃焼バーナ9Cへの燃料供給を遮断(燃焼をストップ)した上で水蒸気噴射することで、炉内の急速冷却が可能となる。
鋼材4(加熱対象の鋼材)が均熱ゾーン10Cに入った際に、燃焼バーナ9C内に挿通された水蒸気導入管12により炉内に水蒸気を供給した。なお、図5,図6で、均熱ゾーン10Cの温度表記に、「右上」、「左上」とあるが、これは実験を行った加熱炉1において、炉抽出後の鋼材が次の工程に向けて「進行する側の上部」、「反進行側の上部」の意味である。「右下」、「左下」も同様である。
図5(a)から判るように、水蒸気導入前の均熱ゾーン10Cの炉内温度は、ウォーキングビーム7の上部側で、1195℃〜1200℃であり、ウォーキングビーム7の下側で1177℃〜1252℃であって、いずれも設定温度を満たすものとなっている。
図5(b)に示すように、その状態の均熱ゾーン10Cに水蒸気導入管12から水蒸気を300kg/hrで噴射すると、約6分後には、設定温度とほぼ一致する1050℃〜1065℃(ウォーキングビーム7上部側)、1059℃〜1075℃(ウォーキングビーム7下部側)となり、約150℃の降温を短時間に実現できた。予熱ゾーン10A、加熱ゾーン10Bに関しては、設定温度を満たすと共に、水蒸気噴射前後で大きな炉内温度の変化は生じていない。窒素酸化物の濃度に関しては、降温前は48.2ppmであったが、降温後は34.9ppmで、窒素酸化物の上昇は起こっていない。
図6(a)から判るように、水蒸気導入前の均熱ゾーン10Cの炉内温度は、ウォーキングビーム7の上部側で、1203℃であり、ウォーキングビーム7の下側で1194℃〜1242℃であって、いずれも設定温度を満たすものとなっている。
図6(b)に示す如く、その状態の均熱ゾーン10Cに水蒸気を200kg/hrで噴射すると、設定温度とほぼ一致する1050℃〜1059℃(ウォーキングビーム7上部側)、1042℃〜1059℃(ウォーキングビーム7下部側)となり、降温にかかった時間は約10分であって、実施例1と同様に約150℃の降温を短時間に実現できた。
実施例2においても、予熱ゾーン10A、加熱ゾーン10Bに関しては、設定温度を満たすと共に、水蒸気噴射前後で大きな炉内温度の変化は生じていない。窒素酸化物の濃度に関しては、降温前は40.8ppmであったが、降温後は40.8ppmで、窒素酸化物濃度の上昇は起こっていない。
2 デスケーラ
3 粗圧延機
4 鋼材
5 搬入口
6 搬出口
7 ウォーキングビーム
8A 炉体(予熱ゾーン)
8B 炉体(加熱ゾーン)
8C 炉体(均熱ゾーン)
9A 燃焼バーナ(予熱ゾーン)
9B 燃焼バーナ(加熱ゾーン)
9C 燃焼バーナ(均熱ゾーン)
10A 予熱ゾーン
10B 加熱ゾーン
10C 均熱ゾーン
12 水蒸気導入管
13 エア導入管
14 ガス導入管
15 エア噴出部
16 ガス噴出部
17 先端部(水蒸気導入管)
18 ガス噴出口
Claims (3)
- 鋼材を連続的に搬送しつつ加熱する加熱炉の降温方法であって、
加熱対象となる鋼材が加熱炉内に達した時に、当該加熱炉内に水蒸気を吹き込むことで炉内の雰囲気温度を降下させ、
前記加熱炉は、上流側から予熱ゾーン、加熱ゾーン、均熱ゾーンを有しており、
前記加熱対象となる鋼材が均熱ゾーンに達した時に、当該均熱ゾーンに対して水蒸気を吹き込むことを特徴とする加熱炉の降温方法。 - 前記均熱ゾーン内に存在する前記加熱対象となる鋼材以外の鋼材に関し、該鋼材が目標温度の範囲内となるように、均熱ゾーンに対して水蒸気を吹き込むことを特徴とする請求項1に記載の加熱炉の降温方法。
- 炉体と該炉体内の雰囲気を加熱する燃焼バーナとを備えた加熱炉において、
加熱対象となる鋼材が加熱炉内に達した時に、当該加熱炉内に水蒸気を吹き込むことで炉内の雰囲気温度を降下すべく、前記燃焼バーナ又は炉体自体に炉体内に水蒸気を噴射可能な水蒸気導入管を備えており、
前記炉体は、上流側から予熱ゾーン、加熱ゾーン、均熱ゾーンを有しており、
前記水蒸気導入管は、前記均熱ゾーンに配備された燃焼バーナ又は均熱ゾーンを構成する炉体に備えられていることを特徴とする加熱炉。
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