JP5268298B2 - アルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体 - Google Patents

アルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体 Download PDF

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Description

本発明は、新規なフラーレン類の誘導体に関し、具体的には、アルカリ金属内包フラーレンをはじめとするアルカリ金属を内包するフラーレン類について、工業的に使用が好まれる溶媒に対する溶解度を向上させた誘導体に関する。
フラーレンケージの中に新たな原子を閉じ込めた原子内包フラーレン合成は、1985年にC60の合成に成功した直後よりライス大学のSmalleyらによって試みられた。その結果、1991年に彼らは世界で初めてLa@C82の合成・分離抽出に成功した。
この特異な構造を持った分子は医薬、増感剤、有機半導体、光電子デバイス、二次電池、燃料電池、超伝導材料など多方面への適用が期待されているものの、その量産レベルでの合成方法が確立しているとはいえない。このため、現在市場で入手可能な原子内包フラーレンは10万円/10mg以上であり、少量のサンプルで基本物性の評価が行なわれているのが現状である。
原子内包フラーレンのうち、特に合成が困難なのがアルカリ金属内包フラーレンであり、ランタノイド内包フラーレンのようなアーク法によっては合成することはきわめて困難であり、フラーレン内にアルカリ原子を挿入する物理的な手法によってのみ合成可能とされている(たとえば非特許文献1)。
非特許文献2には、ドラム状の基板を回転させ、フラーレンの照射とアルカリ金属(リチウム)イオンの照射とを交互に独立に行なってアルカリ原子内包フラーレンを形成する技術が開示されている。得られた生成物のうち二硫化炭素に溶解する成分の質量スペクトルはリチウム原子内包フラーレンに相当する質量数727のピークを有することが開示されている。
特許文献1には、フラーレンが堆積された基板にリチウムイオンを含むプラズマを連続的に照射するプロセスが開示されている。また、プラズマ照射と同時にフラーレン上記を基板に導入することで、リチウム原子内包フラーレンを合成する技術も開示されている。
WO2005/066385号公報 「フラーレンの化学と物理」 篠原久典、斎藤弥八 名古屋大学出版会 A.Gromov et al., J.Phys.Chem. B2003, 107, 11290−11301
この特許文献1にかかるプロセスで得られた生成物のうち、二硫化炭素に溶解せず1−クロロナフタレンに溶解する成分についてもその質量スペクトルはリチウム原子内包フラーレンに相当する質量数727のピークを有する。この成分は、質量スペクトルや動的光散乱式粒径分布測定の結果、アルカリ金属内包フラーレンを含むフラーレン類から構成されるフラーレンクラスター(以降「内包フラーレンクラスター」と称する。)を含むことが示唆されている。この内包フラーレンクラスターはアルカリ原子内包フラーレンと同様の特性を有していると期待されるものの、二硫化炭素など沸点の低い溶媒に対する溶解度が低いため、医療中間体への適用や、電気・電子関連用途への適用にあたって取り扱いにくい材料となっている。
本発明は、特許文献1に開示されるプロセスで得られる生成物のうち、内包フラーレンクラスターを含む組成物の各種溶媒への溶解度を改善すべく、この組成物を誘導体化する技術を提供することを目的としている。
上記課題を解決すべく提供される本願発明は以下のとおりである。
(1)下記式(I)で表されるアルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体。
Figure 0005268298
(上記式(I)中、AFは、アルカリ金属原子内包フラーレン類を一個以上含むフラーレン類のクラスターを表す。Rはアルキリデン基を表し、AFの構成要素であるフラーレン類の骨格炭素にメタノフラーレン型および/またはフレロイド型の架橋結合をなす。nはフラーレンクラスターを構成するフラーレン類一個当たりのRの結合数であって、1〜8の整数を表す。上記式(I)のRは架橋環構造を有し、該Rにおいて上記式(I)のAFと結合する炭素に隣接する炭素は架橋環構造の橋頭をなす。
(2)上記式(I)のRがアダマンチリデン基、ノルボルニリデン基、クアドリシクラニリデン基、ビシクロオクタンイリデン基の中から選択された基であることを特徴とする(1)記載のアルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体。
(3)上記式(I)のAFが、アルカリ金属原子内包フラーレン類を一個以上含むフラーレン類のクラスターである内包フラーレンクラスターを表し、前記フラーレン類がC 60 及び/又はC 70 であることを特徴とする(2)記載のアルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体
(4)上記式(I)のAFは、常温における溶解度が、二硫化炭素に対して1mg/mL未満、かつ1−クロロナフタレンに対して1mg/mL以上である(1)乃至(3)記載のアルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体。
(5)常温での溶解度が、ヘキサンに対して0.1mg/mL未満、かつ二硫化炭素に対して2mg/mL以上である(1)乃至(4)記載のアルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体。
(6)上記式(I)のAFは、アルカリ金属イオンを含むプラズマをフラーレン類に照射して得られる生成物を水洗したのち、クロロナフタレン類を溶媒とする抽出液から再沈法によって未反応フラーレン類を除去して得られる組成物である(1)乃至(5)記載のアルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体。
(7)アルカリ金属イオンを含むプラズマをフラーレン類に照射して得られる生成物(A0)に基づくアルカリ金属内包フラーレン類を含む組成物(A)がアルキリデン基と結合してなり、前記アルキリデン基が架橋環構造を有し、前記アルキリデン基において前記(A)と結合する炭素に隣接する炭素は架橋環構造の橋頭をなすアルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体であって、
前記(A)は、前記(A0)を水洗したのちクロロナフタレン類を溶媒として抽出し、その抽出液から再沈法によって未反応フラーレン類を除去することで得られ、常温での溶解度が、ヘキサンに対して0.1mg/mL未満であって、かつ二硫化炭素に対して2mg/mL以上であることを特徴とするアルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体。
(8)前記アルキリデン基が、アダマンチリデン基、ノルボルニリデン基、クアドリシクラニリデン基、ビシクロオクタンイリデン基の中から選択された基であることを特徴とする(7)記載のアルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体。
(9)前記(A)と結合するアルキリデン基数は8以下である(7)又は(8)記載のアルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体。
(10)前記フラーレン類が、C 60 及び/又はC 70 であることを特徴とする(7)又は(9)記載のアルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体。
前述の二硫化炭素には難溶で1−クロロナフタレンに可溶なフラーレンベース材料は内包フラーレンクラスターを主成分として含み、他のフラーレンベース材料、とくに反応物質であるフラーレン類とは大きく異なる溶解特性を有している。このため、分離精製工程において再沈法を用いることで未反応のフラーレン類を比較的容易に除去することができる。したがって、フラーレンに近い溶解特性を有するアルカリ金属内包フラーレン単体に比べて効率的に製造することができる。
本発明にかかるフラーレンベース材料誘導体は、この内包フラーレンクラスターを主成分とするフラーレンベース材料にアルキリデン基を付加することで二硫化炭素への溶解度を高めることが実現されている。このため、スピンコートなどによる既存の薄膜形成技術を適用することが可能となり、電子デバイスなどへの適用を容易に行なうことができる。すなわち、本発明にかかるフラーレンベース材料誘導体を用いることで、アルカリ原子内包フラーレンに基づく特異な機能を有するデバイスを効率的に製造することが可能となる。
以下に、本発明にかかる代表的な実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨に反しない限りいかなる変形例をもその技術的範囲に含む。
まず、本明細書で用いられる用語の意義について明らかにする。
(フラーレン、フラーレンベース材料、フラーレン類、フラーレンクラスター)
「フラーレン」とは、C(n=60, 70, 76, 78・・・)で示される中空の炭素クラスター物質であり、例えば、C60やC70を挙げることができる。また、「内包フラーレン」とは、篭状のフラーレン分子の中空部に炭素以外の原子又は分子を閉じ込めた炭素クラスター物質のことである。フラーレン分子(ケージ)の中に閉じ込める原子又は分子を、内包対象原子(分子)と呼び、閉じ込められた原子(分子)を内包原子(分子)と呼ぶ。
「フラーレンベース材料」とは、フラーレンをベースにして製造した材料のことであり、内包フラーレン、ヘテロフラーレン(フラーレン骨格を構成する一部の炭素が他の原子(たとえば窒素)に置換されたもの)、化学修飾フラーレン、フラーレン重合体を包括する概念である。このうち、フラーレン骨格が一つのみの物質を特に「フラーレン類」と称する。したがって、「内包フラーレン類」とは、フラーレンやヘテロフラーレンなどが原子又は分子を内包したものをいう。
ここで、内包フラーレン類の原料となるフラーレンとして、1種類のフラーレンだけでなく、混合フラーレンを用いることも可能である。「混合フラーレン」とは、種類の異なる複数のフラーレンが混合した炭素クラスター物質のことである。抵抗加熱法やアーク放電法でフラーレンを製造する場合、生成されたフラーレンの中で、重量比にして、70〜85%がC60、10〜15%がC70、残りがC76、C78、C84などの高次フラーレンとなる。燃焼法によるフラーレンの製造においても、C60、C70の重量比は高次フラーレンよりも大きい。従って、C60、C70は、他の高次フラーレンと比較して入手が容易でかつ安価である。また、C60およびC70からなる混合フラーレンも、フロンティアカーボンなどから市販されており、容易に入手可能である。
なお、内包フラーレン類の原料としてフラーレンの代わりに他のフラーレン類、たとえば窒素へテロフラーレンや酸化フラーレンを用いることが可能であることは前述のとおりであるが、これらの物質は、フラーレンをプラズマ処理し、内包フラーレンを製造するときに大量に合成される副生成物であり、これらを再利用して、内包フラーレンを製造することが可能である。
「フラーレンクラスター」とは、複数のフラーレン類からなるクラスターであり、構成クラスター類は同一であってもよいし異なっていてもよい。フラーレンクラスターのうち、内包フラーレン類を少なくとも一つ含むものを特に「内包フラーレンクラスター」と称する。
(分離精製)
内包フラーレンクラスターを合成した分離精製前の材料を「合成物」又は「生成物」と呼ぶ。これに対し、分離精製を行って純度を上げた材料を「分離精製物」又は、単に「精製物」と呼ぶ。
「溶媒抽出」とは、対象物質を含む混合物質を対象物質の良溶媒に溶解して、対象物質を溶媒側に取り出す分離方法のことである。ここで、「良溶媒」とは、溶質に対し溶解度の大きい溶媒のことである。それに対し、「貧溶媒」とは、溶質に対し溶解度の小さい溶媒のことである。
「溶媒洗浄」とは、対象物質を含む混合物質を対象物質の貧溶媒に溶解して、対象物質を残渣物側に取り出す分離方法のことである。
「再沈法」とは、対象物質を溶解した良溶媒を貧溶媒中に滴下などの方法で混合することにより、対象物質を析出させる精製方法のことである。本発明の分離精製方法では、一度、良溶媒中に溶解して純度を上げた対象物質をさらに高純度にする目的で行う処理である。
「水又は酸による処理」とは、内包フラーレンクラスターの生成物に含まれるアルカリ金属などの内包されなかった内包対象原子を除去するために行う処理である。また、「未反応の内包対象原子」は、「内包されなかった内包対象原子」と同じ意味で用いるものとする。水としては、純水又は精製水など不純物の少ない水を使用し、酸としては、内包対象原子を溶解(反応して溶解する場合も含む)する酸を用いるのが好ましい。量産工程で使用する場合は、安全性の高い酸を使用するのが好ましい。例えば、希塩酸などを使用することが可能である。ここにいう「処理」とは、生成物を粉末状にした後、水又は酸に混合攪拌し、又は、水又は酸により洗浄し、フィルターで濾過して、残渣物を回収する工程のことである。また、本明細書においては、水又は酸による処理を省略して「水処理」と呼ぶ場合もあるが、この場合の処理には酸による処理も含まれるものとする。
1.内包フラーレンクラスターの合成
内包フラーレンクラスターは、例えば、プラズマ照射法により合成することが可能である。プラズマ照射法は、真空容器中で内包対象原子からなるイオンを含むプラズマ流を発生させ、発生したプラズマ流とフラーレンオーブンにより発生するフラーレン蒸気を反応させ、堆積基板上に内包フラーレンを生成する方法である。
(プラズマ照射法の具体例)
図20は、プラズマ照射法により内包フラーレンを含む材料を生成する製造装置の具体例の断面図である。製造装置は、管状の真空容器301、真空容器301を排気する真空ポンプ302、プラズマを閉じ込めるための電磁コイル303により構成される。
最初に、内包対象原子、例えば、Liをオーブン304で加熱し昇華させる。発生したLi蒸気をホットプレート306上に導入管305を通して導入し、熱電離によりLiをイオン化して、Liの正イオンと電子からなるプラズマを発生させる。真空容器301の真空度は10−4Torr以下にするのが好ましい。また、ホットプレート306は2000℃以上に加熱することが好ましい。
発生したプラズマは、電磁コイル303により形成した均一磁場(0.1〜2kG)により閉じ込められる。従って、プラズマは管軸方向に流れるプラズマ流307になり、堆積基板310に向かって照射される。同時に、オーブン308により加熱昇華させたフラーレン蒸気を堆積基板310に対し噴射する。オーブン308は400〜650℃に加熱するのが好ましい。
堆積基板310には負のバイアス電圧が印加される。形成された電界により、堆積基板310の近傍で、プラズマ流307中のLiイオンが加速される。Liイオンはフラーレン分子に衝突し、内包フラーレンが形成され、内包フラーレンを含む堆積膜311が堆積基板310上に堆積する。堆積基板310に印加するバイアス電圧は、Li内包フラーレンの合成の場合は、−90〜−10Vにするのが好ましい。
図1は、堆積膜のLDTOF−MS(レーザー脱離飛行時間型質量分析器)による質量分析データ(以降「LDTOF質量分析データ」とも称する。)である。空のフラーレンC60の存在を示す質量数720のピークの他に、Li@C60の存在を示す質量数727のピークがあり、堆積膜中に内包フラーレンが生成されていることが確認できる。
2.内包フラーレンクラスターの分離精製
以下に、内包フラーレンクラスターの分離精製について説明する。
(内包フラーレンクラスターの分離精製)
図2は、溶媒抽出による分離精製方法の工程フロー図である。本分離精製方法は、大きく分けて、4つの工程からなる。第一の工程は、プラズマ照射法の合成物から未反応の内包対象原子を除去する工程である。第二の工程は、第一の工程の生成物を溶媒で洗浄し、残渣物中に内包フラーレンクラスターを濃縮する工程である。第三の工程は、第二の工程の生成物を溶液に溶かし、内包フラーレンクラスターを溶媒抽出する工程である。第四の工程は、第三の工程の生成物である溶液を内包フラーレンクラスターの貧溶媒中に滴下し、内包フラーレンクラスターを析出濃縮する工程である。
第一の工程2では、合成工程により生成された内包フラーレンを含む材料の未精製物1、すなわち、堆積基板や電極などから剥離して採取した煤状物質を、水系溶媒(水、酸、又は酸性溶媒)により処理して、フラーレンに内包されなかった原子や、該原子を含む化合物を溶媒中に溶かして除去し、残渣物を回収する。内包対象原子がLiである場合は、Li、Liを含む塩、炭酸リチウムなどの不純物が第一の工程で除去される。
第二の工程3では、第一の工程で回収した残渣物を内包フラーレンクラスターの貧溶媒に溶解し、残渣物中に内包フラーレンクラスターを濃縮する。第二の工程で用いる溶媒としては、不純物である空のフラーレン類(未反応物)の溶解度の大きい溶媒を用いることが好ましい。最終工程である第四の工程においても空のフラーレン類が除去されるので、第二の工程は省略が可能である。第二の工程で用いる溶媒としては、トルエン、トルエンとヘキサンの混合溶液、キシレン、アニソール、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メシチレン、又は、シクロヘキサンなど空のフラーレン類に対しては良溶媒で、内包フラーレンクラスターに対しては貧溶媒である溶媒を用いるのが好ましい。
第三の工程4では、第一の工程で回収した残渣物、又は、第二の工程で回収した残渣物を内包フラーレンクラスターの良溶媒に溶解し、溶液中に内包フラーレンクラスターを抽出し、溶液を回収する。第三の工程で用いる溶媒としては、内包フラーレンクラスターの溶解度の大きい溶媒を用いることが好ましい。第三の工程で用いる溶媒としては、1−クロロナフタレン(以降、「Cl−naph」とも称する。)などのハロナフタレン、テトラリン、オルトジクロロベンゼン(以降、「ODCB」とも称する。)など、内包フラーレンの溶解度が高い溶媒を用いるのが好ましい。
理想的な内包フラーレンクラスターの抽出溶媒は、内包フラーレンクラスターに対する溶解度が高く、同時に、空のフラーレン類などの不純物に対する溶解度が小さい溶媒である。しかし、他の工程でこうした不純物としての空のフラーレン類は除去可能である。従って、本発明に係る分離精製方法の溶媒抽出工程において用いる溶媒は、空のフラーレン類への溶解度が高くても、内包フラーレンクラスターの溶解度が十分高ければ、使用し得るものとする。空のフラーレン類との分離は、溶媒抽出工程(第三の工程)の前の工程である溶媒洗浄工程及び/又は次の工程である再沈工程により実施する。
また、第三の溶媒抽出工程で溶媒に溶けない残渣物にも内包フラーレンクラスターが多量に含まれる。この残渣物に対し、第二の工程のところで説明した溶媒洗浄を行うことにより空のフラーレン類などの不純物を取り除き、残渣物中に高純度の内包フラーレンクラスターを取り出すことも可能である。
図3は、Li@C60(リチウム原子内包C60フラーレン)を含む内包フラーレンクラスターの溶媒抽出実験データである。空のフラーレン類など不純物を含むプラズマ照射法での合成結果物を、トルエン、エチルベンゼン、メシチレン、テトラリン、ODCB、Cl−naphに溶解し、抽出液の色の評価とLDTOF−MSによる質量分析を行った。一般的に、有機溶媒に溶解したC60の量が多いと溶液の色は紫色になり、Li@C60の量が多いとこげ茶色になる。このことから、トルエン、エチルベンゼン、メシチレンはLi@C60を含む内包フラーレンクラスターは溶解しにくいがC60はよく溶解することがわかる。一方、テトラリン、ODCB、Cl−naphはLi@C60を含む内包フラーレンクラスターを溶解することがわかる。LDTOF−MSのデータで720はC60の、727はLi@C60のそれぞれの存在を示すものであり、◎、○、△、×はピーク強度の大きいものから小さいものを順に示すものである。これらの結果から、トルエン、エチルベンゼン、メシチレンは、内包フラーレンクラスターは溶解しにくいが空のフラーレン類はよく溶解し溶媒洗浄向きの溶媒であることがわかる。一方、テトラリン、ODCB、Cl−naphは、空のフラーレン類を溶解するが内包フラーレンクラスターも溶解するので、溶媒抽出向きの溶媒であることがわかる。なお、テトラリンなど溶媒抽出向きの溶媒の場合にも、残渣物に内包フラーレンクラスターが残っていることがわかる。
第四の工程5は、一般的に再沈法と呼ばれる方法である。第三の工程で回収した溶液を内包フラーレンクラスターの貧溶媒に溶解し、内包フラーレンクラスターを析出させ濃縮する。第四の工程で用いる溶媒としては、例えば、トルエン、トルエンとヘキサンの混合溶液、キシレン、アニソール、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メシチレン、又は、シクロヘキサンなど空のフラーレン類に対しては良溶媒で、内包フラーレンクラスターに対しては貧溶媒である溶媒を用いるのが好ましい。
(分離精製の具体例)
[第一の工程]水(純水、精製水など)や希塩酸などの酸性溶液を処理液として用意する。処理液に未精製物1を混合し、超音波などで攪拌する。次に、遠心分離、及び/又は、メンブランフィルターによるろ過を行なう。遠心分離は、1分当たりの回転数が2,000回以上で行なうことが好ましい。遠心分離後に沈殿している不溶物を取り出して、残渣物として回収する。ろ過を行なう場合は、フィルターに残った不溶物も、残渣物として回収する。内包対象原子は水系溶媒と化学反応を起こし、水酸化物などの水溶性の物質になる。一方、内包フラーレンをはじめとするフラーレンベース材料は水に対し溶解しにくいので、残渣物を取り出すことにより、未反応の内包対象原子を分離することができる。
[第二の工程]第一の工程で回収した粉末状の残渣物を、例えばトルエン溶液に混合し、超音波などで攪拌する。次に、遠心分離、及び/又は、メンブランフィルターによるろ過を行なう。遠心分離は、1分当たりの回転数が2,000回以上で行なうことが好ましい。遠心分離後に沈殿している不溶物を取り出して、残渣物として回収する。ろ過を行なう場合は、フィルターに残った不溶物も、残渣物として回収する。空のフラーレン類は溶媒に溶解し、内包フラーレンクラスターは残渣物中に濃縮される。
[第三の工程]第二の工程で回収した粉末状の残渣物を、例えば1−クロロナフタレン溶液に混合し、超音波などで攪拌する。次に、メンブランフィルターによるろ過を行ない溶液と残渣物を回収する。残渣物中にも、内包フラーレンを含む物質が含まれているので、廃棄せずに保存するのが好ましい。
[第四の工程]第三の工程で回収した溶液を、例えばトルエン溶液に滴下する。一定時間静止した後、メンブランフィルターによるろ過を行なって析出物を回収する。溶液中には、空のフラーレン類が含まれているので、廃棄せずに回収し再利用するのが好ましい。
(内包率の評価)
図4は、上述の分離精製方法を検討する際に用いた内包率の評価方法の工程フロー図である。内包率は、合成物又は精製物などの評価対象物(以下サンプルと呼ぶ)中における内包フラーレンの重量比として定義される。図4に示す評価方法の、基本的な考え方は次のとおりである。最初にサンプルの重量を測定し、サンプルに含まれる未反応の内包対象原子を除去した後に、内包フラーレンのフラーレンケージを湿式灰化法により分解して内包対象原子を外に出す。次に、ICPなどの元素分析により、内包原子の重量を測定し、サンプル重量との比を計算する。
図4に示す具体例は、代表的な測定例を示すもので、サンプルや溶液の重量等の数値が入っている。しかし、本発明に係る内包率の評価方法は、これらの数値に限定されるものではない。最初に、サンプルを水処理して、未反応の内包対象原子、例えばLiを除去し、10mg秤量する(ステップ211)。次に、硫酸5mlを加え、硝酸5mlを加え(ステップ212)、硫酸沸点で加熱し、フラーレンケージを分解する(ステップ213)。次に、硝酸1mlを追加し、再加熱して(ステップ214)、サンプルを完全に分解する(ステップ215)。次に、残留硝酸を除去するために、過酸化水素水を加える(ステップ216)。次に、超純水でメスフラスコ50mlに定容する(ステップ217)。次に、ICPによりLiの重量を測定する(ステップ218)。次に、Liの重量をサンプル重量で割って、Li含有率を算出する。最後に、内包率をLi含有率×727/7により計算する。
(Li@C60以外の内包フラーレンクラスターの分離精製)
以上、Li@C60を例にとり説明したが、本分離精製方法は、Li@C60以外にも、アルカリ金属Na、K、Rb、Cs、Frを内包するC(n=60〜82)を含む内包フラーレンクラスターの分離精製に用いることが可能であり、内包率、及び収率の向上に高い効果が得られる。特に、C60およびC70は高次のフラーレンと比較して大量に合成可能な材料であり、原料コストの安いフラーレンである。従来知られていなかったC60およびC70をベース材料とする内包フラーレンクラスターの高効率の分離精製が可能であるという点で、本分離精製方法は工業的価値が極めて高い。また、高次フラーレン(C:n≧72)においても、本分離精製方法を用いることにより、従来知られていた分離精製方法と比較してより高純度の内包フラーレンクラスターを生成することが可能になる。
3.内包フラーレンクラスターの特性
以下に上記の合成法および分離精製プロセスを経て得られる内包フラーレンクラスターを含むフラーレンベース材料の特性について、Li@C60を含む精製物(以降、「本精製物」と称する。)を例として説明する。
(UV)
本発明の分離精製方法による精製物の中に、仮に、内包フラーレンに結合していない除
去不可能な遊離の空のフラーレンが存在する場合でも、内包率は上限を持つ。
図5は、本精製物の1−クロロナフタレン溶液とC60だけを溶解した1−クロロナフタレン溶液の紫外線吸光分析スペクトルの比較データである。C60の場合は短波長(400nm以下)からの吸収帯は470nmで終了し、波長500−600nm付近に特徴的な光吸収領域が観測される。これに対し、本精製物の場合は同様の光吸収領域は観測されず、短波長から長波長にかけて吸収率がなだらかに減衰する吸収特性を示す。このことから、本精製物にはUVで検出されるほどはC60が含まれていないことが確認された。
(IR)
次に、本精製物をKBr粉末に混入して作成したペレットについて赤外吸収スペクトルを測定し、C60についてのデータと比較した。その結果、図6(a)に示されるように、C60に特徴的な4本のピークセット(526,574,1180,1247cm−1)が顕著には測定されず(図6(b)参照)、本精製物にはIRで検出されるほどはC60が含まれていないことが確認された。その一方で、1000cm−1以下の低波数領域に明確な構造が確認され、本精製物が特定構造を失ったポリマー状態にあるのではなく、特定の振動モードを有するような所定の大きさの分子状態にあることが示唆された。
(NMR)
続いて、本精製物の1−クロロナフタレン溶液とC60の1−クロロナフタレン溶液についてNMR測定を行なった。図7はそれらの比較データである。C60の場合は、C60の存在を示す141.9ppmにおける電磁波の吸収ピークが観測されるのに対し、本精製物の場合はC60の存在を示す吸収ピークは観測されない。このことから、本精製物にはNMRで検出されるほどはC60が含まれていないことが確認された。
(内包率の原料供給依存性)
図8は、内包率の原料供給比依存性を示すグラフである。プラズマ照射法により内包フ
ラーレンを含む物質を合成する場合は、Liイオンの供給量を堆積基板に流れるイオン電流を検出して測定し、フラーレンの供給量をフラーレンオーブンのフラーレン充填量の変化を検出して測定することができる。それぞれの供給量は、例えば、各材料の昇華オーブンの温度を制御して制御することができる。図8は、LiイオンとC60の供給比を0.1から1まで変化させて合成した堆積物を、一定の溶媒抽出条件で抽出した精製物の内包率をプロットしたものである。図から、フラーレンに対するLiの供給比を増やすと、供給比が0.8以下の場合は内包率が増えていくが、供給比が0.8を超えると内包率が8〜11%で飽和することがわかる。
(さまざまな精製条件での内包率)
次に、合成条件を一定とし、精製方法を変更して、内包率を測定した。結果を表1に示
す。
Figure 0005268298
表1から、溶媒抽出による精製物の内包率は、8%程度を上限とすることが示された。
また、発明者らは、HPLCによるLi内包フラーレンの精製実験も行った。その結果、HPLCを何度繰り返しても、内包率は上記一定値を大幅に越えることはなかった。
(質量分析による高次ピーク)
図9は、本精製物の高質量領域(質量数>1000)におけるLDTOF質量分析データである。Li@C60(C60)に対応する質量ピーク31から、Li@C60(C60)(n=2〜9)に対応する質量ピーク32〜39が検出された。このような高次ピークは本精製物について特徴的であり、C60のみのサンプルでは検出されない。
(粒径測定)
動的光散乱法により溶液中の本精製物の粒径測定を行った。比較のためC60の粒径の測定も行った。図10は、C60の粒径分布であり、直径が約0.7nmにピークを持つ分布を示す。それに対し、本精製物は直径が4〜6nmにピークを持つ粒径分布を示すことがわかった。さらに、試料を変えて測定を繰り返したところ、本精製物は直径が4〜10nmにピークを持つ粒径分布を示すことが確認された。
(TEM観察)
図11(a)乃至(d)は、本精製物のTEMによる観察写真である。図11(c)に示すように、本精製物は直径が約9nmの粒子として観察された。
(XRD)
図12は、C60および本精製物の結晶構造のX線分析データを示す図である。C60が結晶構造になっていることを示す複数の強いピークを示すのに対し、本精製物では顕著なピークは計測されない。
(内包フラーレンクラスター)
以上のUV、IR、NMRの結果は本精製物中にC60が遊離状態ではほとんど存在しないことを示している。また、IRのデータから本精製物はポリマー状態にあるのではなく、何らかの特定の構造を有する分子として存在していることも示唆された。さらに、LDTOF質量分析データは、Li@C60が一個以上のC60とクラスターを形成したと推定されるフラグメントのピークが検出されたことを示している。
これらのスペクトルデータから、Li@C60が複数のC60とクラスターを形成していると推測され、動的光散乱法による粒径分布やTEM観察の結果もクラスター形成を支持している。
(内包フラーレンクラスターの構造)
この内包フラーレンクラスターの構造は、X線分析結果からは詳細な情報を得ることができなかったが、C60の結晶構造に基づくと、図13(b)や(c)のようにLi@C60を中心として複数のC60が結合する構造が一例として推測される。
図13(b)は、1個の内包フラーレンに対し1層の空のフラーレンが取り巻いて結合した内包フラーレンクラスター13の分子構造を示す図である。また、図13(c)は、1個の内包フラーレンに対し2層の空のフラーレンが取り巻いて結合した内包フラーレンクラスター14の分子構造を示す図である。非特許文献1によると、空のフラーレンのみで炭素クラスターを最密充填していくと、分子構造は正二十面体構造で最も安定になる。1個の分子の周りを1層の分子が取り巻く時は、中心の分子も含めて13個の分子で安定構造をつくり、2層の分子が取り巻く時は、中心の分子も含めて55個の分子で安定構造をつくると記載されている。内包フラーレンと空のフラーレンでは、分子の大きさがほぼ等しいことから、クラスター13の構造(1層構造)の場合は、1個の内包フラーレンの周りに12個の空のフラーレンが結合して安定になると考えられる。また、クラスター14の構造(2層構造)の場合は、1個の内包フラーレンの周りに54個の空のフラーレンが結合して安定になると考えられる。1層構造の場合は、内包率は1/13から計算して、7.7%になり、2層構造の場合は、内包率は1/55から計算して、1.8%になる。この計算結果は、合成条件や精製条件を変化させても内包率が最大でも8〜11%であるというデータと矛盾せず、クラスター構造の仮説を支持するものである。
(内包フラーレンクラスターの溶解度)
本精製物として得られた内包フラーレンクラスターの溶解特性を表2に示す。内包フラーレンクラスターはフラーレンの良溶媒として知られている二硫化炭素に対する溶解度が低く、1−クロロナフタレンに対して2mg/mLよりやや低い程度の溶解度を有する。
Figure 0005268298
(フラーレンの種類、Li以外の内包物質)
内包フラーレンクラスターは、Li@C60に複数のC60が結合したクラスターだけでなく、プラズマ照射法により合成し、本分離精製方法で精製することにより、より一般的なフラーレンC(n=60〜82)にLi以外のアルカリ金属Na、K、Rb、Cs、Frを内包する内包フラーレンでも周囲に複数の空のフラーレンを結合したクラスター構造になると考えられる。その場合、Li@C60からなる内包フラーレンクラスターと同様に、溶媒抽出が可能であり、大気中でも安定に存在するなどの優れた性質を持つ。
4.フラーレンベース材料誘導体
(フラーレンベース材料誘導体の構造)
本発明にかかるフラーレンベース材料誘導体は、上記の内包フラーレンクラスターを構成するフラーレン類のそれぞれに1〜8個のアルキリデン基が結合したものであり、以下の一般式で示される。
Figure 0005268298
上記式(I)中、AFは、アルカリ金属原子内包フラーレン類を一個以上含むフラーレン類のクラスターである内包フラーレンクラスター(構成フラーレン類数は12〜55)を表し、Rはアルキリデン基を表し、AFのフラーレン類の骨格炭素にメタノフラーレン型またはフレロイド型の架橋結合をなす。nは内包フラーレンクラスターを構成するフラーレン類一個当たりのRの結合数であって、1〜8の整数を表す。
ここで、「メタノフラーレン」とはフラーレンベース材料誘導体の一種であり、フラーレン骨格上の隣接する炭素=炭素結合に対してメチレン基による架橋結合がなされてシクロプロパン構造が形成されたものであり、一般式は以下の式(II)で表される。
Figure 0005268298
式(II)において、Fはフラーレン類であり、二つのCはフラーレン類の隣接する骨格炭素であって二重結合で結合されているもの、すなわちフラーレン類の骨格上で隣接する二つの6員環の縮合部分(6−6)にある二つの炭素原子である。R、Rは水素または任意の置換基であり、それぞれ同一であっても良いし異なっていても良く、同一の環状構造の一部であってもよい。フラーレン類は一般には一部の芳香族炭化水素系溶媒(たとえばトルエン)に対して溶解度が高いのみで、脂肪族炭化水素系溶媒や極性溶媒への溶解度は必ずしも高くない。しかしながら、R、Rに、またはR、Rの一部に適当な官能基を導入することによってこれらの溶媒への溶解度を高めることが可能となる。
また、「フレロイド」とはメタノフラーレン同様フラーレンベース材料誘導体の一種であり、フラーレン骨格上の隣接する炭素−炭素結合に対してメチレン基が挿入されてアヌレン構造が形成されたものであり、一般式は以下の式(III)で表される。
Figure 0005268298
式(III)において、Fはフラーレン類であり、二つのCはフラーレン類の隣接する骨格炭素のうちで単結合で結合されているもの、すなわちフラーレン類の骨格上で隣接する6員環と5員環との縮合部分(5−6)にある二つの炭素原子である。R、Rは水素または任意の置換基であり、それぞれ同一であっても良いし異なっていても良く、同一の環状構造の一部であってもよい。フラーレン類は一般には一部の芳香族炭化水素系溶媒(たとえばトルエン)に対して溶解度が高いのみで、脂肪族炭化水素系溶媒や極性溶媒への溶解度は必ずしも高くない。しかしながら、R、Rに、またはR、Rの一部に適当な官能基を導入することによってこれらの溶媒への溶解度を高めることが可能となる。
(アルキリデン基)
本発明にかかるフラーレンベース材料誘導体は、アルキリデン基を有する。アルキリデン基は、一般式として以下の式(IV)で表されるように、アルカンの同一の炭素原子から二個の水素原子を除去することにより生成し、遊離原子価が二重結合の一部になる基である。
Figure 0005268298
ここで、RおよびRは水素原子又は任意の置換基であり、それぞれが同一であっても異なっていてもよい。また、RおよびRが結合して環状構造をなしていてもよい。
およびRが独立の場合には、以下のような置換基があげられる。
すなわち、アルキル基類、アルケニル基類、アルキニル基類、アミノ基類、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルファモイル基類、カルバモイル基類、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基類、スルフェニル基類、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、シリル基類、ボリル基類、ホスフィノ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、R−C(=O)−N(−R)−で表わされる基、R−N(−R)−C(=O)−で表わされる基などが挙げられる。ここで、R〜Rは水素原子又は任意の置換基(たとえばアルキル基、アラルキル基、芳香族炭化水素基など)を表す。また、R〜Rの炭素数は、通常1以上、また、通常10以下、好ましくは6以下である。
各置換基について具体例を示す。
アルキル基類:好ましくは炭素数1以上で20以下、更に好ましくは炭素数12以下の直鎖又は分岐のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n−オクチル基などが挙げられる。
アルケニル基類:好ましくは、炭素数2以上で20以下、更に好ましくは炭素数12以下のアルケニル基であり、例えばビニル、アリル、1-ブテニル基などが挙げられる。
アルキニル基類:好ましくは炭素数2以上20以下、更に好ましくは炭素数12以下のアルキニル基であり、例えばエチニル、プロパルギル基などが挙げられる。 アミノ基類:アミノ基類にはアミノ基にアルキル基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基が置換したものも含む。その炭素数は、通常0以上30以下、好ましくは20以下、より好ましくは12以下である。その具体例としては、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジベンジルアミノ基、チエニルアミノ基、ジチエニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ジピリジルアミノ基等が挙げられる。
アルコキシカルボニルアミノ基:好ましくは炭素数が通常2以上20以下、より好ましくは12以下である。その具体例としては、メトキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。 アリールオキシカルボニルアミノ基:その炭素数は通常7以上20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例としては、フェノキシカルボニル基等が挙げられる。
ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基:炭素数は、通常2以上21以下、好ましくは5以上15以下、より好ましくは11以下である。その具体例としては、チエニルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
スルホニルアミノ基:炭素数は、通常1以上20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例としては、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基、チオフェンスルホニルアミノ基等が挙げられる。
アルコキシ基:その炭素数は、通常1以上20以下、好ましくは12以下、より好ましくは8以下である。その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基:炭素数は、通常6以上10以下、好ましくは8以下、より好ましくは炭素数6である。その具体例としては、フェノキシ基等が挙げられる。
ヘテロ環オキシ基:炭素数は、通常1以上、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、また、通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは5以下である。その具体例としては、チエニルオキシ基、ピリジルオキシ基等が挙げられる。
アシル基:炭素数は、通常1以上20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例としては、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基、テノイル基、ニコチノイル基等が挙げられる。
アルコキシカルボニル基:炭素数は、通常2以上20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニル基:炭素数は、通常7以上20以下、好ましくは16以下、より好ましくは7である。その具体例としては、フェノキシカルボニル基などが挙げられる。
ヘテロ環オキシカルボニル基:炭素数は、通常2以上20以下、好ましくは5以上12以下、より好ましくは6以下である。その具体例としては、チエニルオキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
アシルオキシ基:炭素数は、通常2以上20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例は、アセトキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、テノイルオキシ基、ニコチノイルオキシ基等が挙げられる。
スルファモイル基類:スルファモイル基類にはスルファモイル基にアルキル基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基が置換したものも含む。その炭素数は、通常0以上20以下、好ましくは12以下である。その具体例は、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基、チエニルスルファモイル基等が挙げられる。
カルバモイル基類:カルバモイル基類にはカルバモイル基にアルキル基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基が置換したものも含む。その炭素数は、通常1以上20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例は、カルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基等が挙げられる。
アルキルチオ基:炭素数は、通常1以上20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例は、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ブチルチオ基等が挙げられる。
アリールチオ基:炭素数は、通常6以上26以下、好ましくは20以下、より好ましくは12以下である。その具体例は、フェニルチオ等が挙げられる。
ヘテロ環チオ基:炭素数は、通常1以上25以下、好ましくは2以上19以下、より好ましくは5以上12以下である。その具体例は、チエニルチオ基、ピリジルチオ基等が挙げられる。
スルホニル基類:スルホニル基類にはスルホニル基にアルキル基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基が置換したものも含む。その炭素数は、通常1以上20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例としては、トシル基、メシル基などが挙げられる。
スルフィニル基類:スルフィニル基類にはスルフィニル基にアルキル基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基が置換したものも含む。その炭素数は、通常1以上20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例としては、メチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基等が挙げられる。
ウレイド基類:ウレイド基類にはウレイド基にアルキル基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基が置換したものも含む。その炭素数は、通常1以上20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例としては、ウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基等が挙げられる。
リン酸アミド基類:リン酸アミド基類にはリン酸アミド基にアルキル基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基が置換したものも含む。その炭素数は、通常1以上20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。その具体例としては、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基等が挙げられる。
シリル基類:シリル基類にはシリル基にアルキル基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基が置換したものも含む。その炭素数は、通常1以上10以下、好ましくは6以下である。その具体例としては、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。
ボリル基類:ボリル基類にはボリル基にアルキル基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基が置換したものも含む。その炭素数は、通常1以上10以下、好ましくは6以下である。その具体例としては、ジメシチルボリル基等が挙げられる。
ホスフィノ基類:ホスフィノ基類にはホスフィノ基にアルキル基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基が置換したものも含む。その炭素数は、通常1以上10以下、好ましくは6以下である。その具体例としては、ジフェニルホスフィノ基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基:炭素数は、通常6以上20以下、好ましくは14以下である。その具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環等由来の6員環の単環或いは2〜5縮合環由来の基などが挙げられる。
芳香族複素環基:そのヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。また、このとき、炭素数は、通常1以上19以下、好ましくは3以上13以下である。その具体例を挙げると、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環、テトラゾール環、イミダゾピリジン環等の5員環又は6員環の単環或いは2〜4縮合環由来の基が挙げられる。
(環状構造、架橋環構造)
本発明にかかるアルキリデン基は、RおよびRが結合して環状構造を有していることが望ましい。アルキリデン基におけるフラーレン類との結合を担う炭素の分子内運動が規制され、外側に突出した構造となりやすいためである。
環状構造をなすアルキリデン基としては、シクロプロパン−1−イリデン、シクロブタン−1−イリデン、シクロペンタン−1−イリデン、シクロヘキサン−1−イリデンなどの飽和単環式の脂肪族炭化水素系アルキリデン基や、シクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン、シクロヘキサ−3−エン−1−イリデン、シクロヘプタ−2,4,6−トリエン−1−イリデンなどの不飽和単環式の脂肪族炭化水素系アルキリデン基、インデン−1−イリデン、フルオレン−9−イリデン、コラントレン−1−イリデンなどの縮合環系アルキリデン基を例示することができる。もちろん、これらの環状アルキリデン基の任意の位置の炭素がアルキル基、アラルキル基、芳香族炭化水素基などの任意の置換基で修飾されていてもよい。置換基の具体例はRやRについて例示したものと同じであるから、ここでは省略する。
これらの環状構造をなすアルキリデン基のうちでも、架橋環構造を有するアルキリデン基が望ましい。架橋環系アルキリデン基としては、2−アダマンチリデン、7−ノルボルニリデン、7−クアドリシクラニリデン、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2−イリデン基などが例示される。これらの架橋環構造を有するアルキリデン基の中では、フラーレン類と結合する炭素に隣接する原子が架橋環構造における橋頭である、すなわち、水素を除く3個以上の骨格原子と結合していることが特に望ましい。この構造の場合には、フラーレン類と結合する炭素は両隣の橋頭原子によって相対位置が固定され、アルキリデン基におけるカルベン構造部分が分子の外側に露出しやすいからである。これらの架橋環系アルキリデン基についても、任意の位置の炭素がアルキル基、アラルキル基、芳香族炭化水素基などの任意の置換基で修飾されていてもよい。置換基の具体例はRやRについて例示したものと同じであるから、やはり省略する。
(アルキリデン基を生成する化合物)
本願にかかるフラーレンベース材料誘導体はアルキリデン基を有し、このアルキリデン基を生成する化合物としては、窒素分子(N)や一酸化炭素(CO)などの安定な小分子を熱励起や光励起でα脱離しうる化合物や、アルケン、ケトンなどの安定物質をα脱離しうる化合物のように、カルベンを発生させうる物質を用いる。
具体的には、窒素をα脱離するものとして、ジアゾ化合物およびジアジリン化合物があげられる。一酸化炭素をα脱離するものとしてはケテン類があげられる。アルケンをα脱離させるものとしてシクロプロパン構造を有する化合物が、ケトンを発生させるものとしてオキシラン(オキサシクロプロパン)構造を有する化合物があげられる。
または、ホスホニウムイリドやサルファニウムイリド、あるいはアゾメチンイリドなどの窒素塩基イリドを用いて、ヘテロ化合物を脱離させてもよい。
α脱離によらないものとして、シクロブタノンやシリルケトンの1,2転位によってオキサカルベンを発生させるものや、共役エンインカルボニル化合物のように環化の過程でカルベンを発生させるものを挙げることができる。
これらのアルキリデン基生成化合物のうちで、取り扱いのしやすさから、ジアゾ化合物またはジアジリン化合物が好ましく、特に好ましいのはジアジリン化合物である。上記のアルキリデン基の好ましい態様と組み合わせると、特に好ましいアルキリデン基生成化合物は、たとえば2−アダマンタノンジアジリン、7−ノルボルネンジアジリンおよび7−クワドロシクランジアジリンならびにこれらの誘導体が例示される。
5.フラーレンベース材料誘導体の合成
(反応)
上記の内包フラーレンクラスターのアルキリデン基付加体であるフラーレンベース材料誘導体の合成は、熱反応または光反応にて行う。内包フラーレンクラスターとアルキリデン基生成化合物との当量比は、付加するアルキリデン基数に応じて調整する。たとえば、付加数を少なくする場合には、当量比(内包フラーレンクラスターを構成するフラーレン類のモル数/アルキリデン生成化合物のモル数)を1以下にすればよく、付加数を多くする場合には5以上にすればよい。付加数が多いほど溶解特性は改善されるので、好ましい当量比は10以上、特に好ましくは30以上である。ただし、未反応のアルキリデン基生成化合物が多すぎると経済的損失が多くなり、またアルキリデン基生成物同士の反応生成物量が増えてしまうことから、当量比は100以下とすることが望ましい。なお、いずれの場合であっても、反応生成物には複数種類の付加数の誘導体が得られる。
反応における溶媒(分散媒)は内包フラーレンクラスターおよびアルキリデン基生成化合物の双方を溶解するものであることが望ましい。具体的には、1−クロロナフタレンをはじめとするハロナフタレン、テトラリンおよびそのハロ誘導体、オルトジクロロベンゼンをはじめとするジハロベンゼン、1.3.5−トリクロロベンゼンをはじめとするトリハロベンゼンがあげられる。
溶媒または分散媒の使用量は、反応させる内包フラーレンクラスターおよびアルキリデン基生成化合物を均一に溶解または分散することができるのであれば特に制限はない。上記の溶媒の沸点は比較的高く、必ずしも留去しやすくないので、内包フラーレンクラスターの溶解度は多くても2mg/mL程度であることを考慮しつつ、最小限の使用量とすることが望ましい。
また、内包フラーレンクラスター、アルキリデン基生成化合物、および溶媒の混合の順序については特に制限はなく、いずれの順番で混合してもよい。ただし、溶媒中に酸素が残留していると、内包フラーレンクラスターの酸化物が形成される傾向があるため、溶媒は事前に窒素置換を行ったものとしたり、反応容器中に窒素を導入しながら上記反応物を混合して溶解・分散させたりすることが望ましい。
さらに、本アルキリデン基付加反応においては、原料となる内包フラーレンクラスターにアルキリデン基が付加するのであれば、特に反応条件の制限はない。
熱反応にてアルキリデン基を付加させる場合には、窒素などの不活性気体を導入しつつ溶媒の沸点以下の温度で反応させることが望ましい。たとえば、1−クロロナフタレンを溶媒とする場合にはその沸点が259℃であるから100〜200℃程度とし、テトラリンを溶媒とする場合にはその沸点が207℃であるから70〜150℃程度とすることが望ましい。また、光反応が同時に進行することで反応性に変化が現れたり副反応が増加したりして収率に影響を及ぼす場合には、遮光下で反応させることが好ましい。
一方、光反応にてアルキリデン基を付加させる場合にも、窒素など不活性気体を導入しながら反応させることが副反応抑制の観点から好ましい。また、収率向上の観点から熱反応の影響を遮断する必要がある場合には、適宜冷却手段を用いて溶液を冷却する。ただし、内包フラーレンクラスターの溶媒への溶解度は必ずしも高くないので、冷却しすぎて内包フラーレンクラスターが析出しないように留意する必要がある。
反応時間は所望の内包フラーレンクラスターのアルキリデン基誘導体の収率が最大になるように反応温度なども考慮して設定される。反応時間が短すぎると未反応の内包フラーレンクラスターが残り収率が低下し、反応時間が長すぎるとアダマンタノンジアジリン由来の副生成物が大量に発生し、誘導体としての収率がむしろ低下する。予備実験において薄層クロマトグラフィー(TLC)、核磁気共鳴(NMR)、ガスクロマトグラフィー(GC)、液体クロマトグラフィー(LC)などの手法を用いて反応の進行状況を確認し、適切な反応時間を設定することが望ましい。
(分離精製)
得られた反応生成物から、未反応のアルキリデン基生成化合物および内包フラーレンクラスターを除去するために、以下のプロセスを行う。
まず、未反応のアルキリデン基生成化合物を除去するために、アルキリデン基生成化合物に対する良溶媒であってフラーレン系化合物に対する貧溶媒となる液状有機物によって洗浄を行う。
たとえばアルキリデン基生成化合物が脂肪族炭化水素系のジアゾ化合物やジアジリン化合物の場合には、これらの化合物はヘキサンなど脂肪族炭化水素系溶媒に容易に溶解する。ヘキサンはフラーレン系化合物に対する貧溶媒であるから、効率的に未反応のアルキリデン基生成化合物だけが除去されることとなる。このように、この目的で使用する洗浄溶媒としては脂肪族炭化水素系溶媒のほうが好ましく、アルキリデン基生成化合物はこの脂肪族炭化水素系溶媒への溶解度が高くなるように、芳香族系の基を有さず脂肪族炭化水素系の基を有することが好ましい。同様の理由で、アルキリデン基生成化合物を水酸基やアミノ基などの極性官能基を有するものとした場合には、洗浄溶媒にはアルコールなどの極性溶媒を用いることが好ましい。
洗浄回数は3回程度として、最終回の洗浄溶液についてTLCやNMRを用いて未反応のアルキリデン基生成化合物が存在しないことを確認すれば、この目的で使用する洗浄溶媒の量は特に制限されない。ただし、洗浄溶媒は必要に応じて減圧下にしたり加熱したりして留去するので使用量が少ないほうが好ましい。なお、上記の要請に応えるように複数の溶媒を混合したものを洗浄溶媒として用いてもよい。
次に、未反応の内包フラーレンクラスターを除去するために、内包フラーレンクラスターへの貧溶媒で、かつ反応生成物である内包フラーレンクラスターのアルキリデン基誘導体に対する良溶媒である液状有機物を用いて溶媒抽出を行う。
この目的では二硫化炭素やオルトジクロロベンゼン(ODCB)またはこれらを主体とする混合溶媒が好ましい。脂肪族炭化水素系溶媒では反応生成物の溶解度が低く、1−クロロナフタレンやテトラリンでは未反応の内包フラーレンクラスターの溶解量が多くなるため、好ましくない。
この抽出溶媒としては、留去のしやすさから沸点が低い二硫化炭素が特に好ましい(沸点46℃、ODCBの沸点は179−180℃)。また、溶媒の使用量や抽出回数に特に制限はないが、やはり最終的に溶媒留去することを考慮すると使用量は少ないほうが望ましい。
こうして未反応物が除去された抽出溶液から溶媒を除去することで、反応生成物としての内包フラーレンクラスターのアルキリデン基誘導体が得られる。
なお、この溶媒を留去した反応生成物に対して、LCやHPLCを用いたさらなる分離精製を行って未反応物の含有率をさらに低下させてもよい。
6.フラーレンベース材料誘導体の性質
以降、反応生成物を精製して得られるフラーレンベース材料誘導体の性質について説明する。
(フラーレンベース材料誘導体の溶解特性)
本発明にかかるフラーレンベース材料誘導体は、内包フラーレンクラスターに比べて溶解特性が向上している。
内包フラーレンクラスターは前述のようにフラーレンの代表的な溶媒であるトルエンおよび二硫化炭素への溶解度は低く、また、ヘキサンのような脂肪族炭化水素系溶媒には実質的に不溶であり、ジクロロメタンのようなハロアルカンや一般的に良溶媒として知られるテトラヒドロフラン(THF)にも実質的に不溶である。
これに対し、本発明にかかるフラーレンベース材料誘導体は二硫化炭素を良溶媒としており(5mg/mL以上)、典型的な2−アダマンタノンジアジリンとの反応による誘導体は、表3に示されるように、15mg/mL程度の溶解度を有する。また、トルエンやTHFに対してもスピンコートによる薄膜形成のために一般的に必要とされる2mg/mL以上の溶解度を有する。その一方でヘキサンなどのパラフィン系溶媒にはほとんど溶解しない。2−アダマンタノンジアジリンとの反応による誘導体はヘキサンに対して実質的に不溶であった。
Figure 0005268298
(光吸収特性)
フラーレン(例としてC60)の液中の紫外−可視光吸収特性は、図5に示されるように、500−600nmに吸収領域を有する一方で、650nmより長波長では吸収が少なくなり、700nm以降はほとんど吸収しない。これに対し、内包フラーレンクラスターは前述のように450−500nmにおける吸収率の落ち込みがなく、700−800nmにも吸収を有し、吸収帯域の広い太陽電池などへの応用が期待される。しかしながら、沸点が高い溶媒にしか溶解しないため、工業的な利用範囲に制限があった。
本発明にかかるフラーレンベース材料誘導体は、原料である内包フラーレンクラスターと同様の吸収特性を有し、さらに二硫化炭素など取り扱いのしやすい溶媒に可溶であるから、太陽電池をはじめとするさまざまなデバイスの構成材料として容易に適用することが実現される。図14は1−クロロナフタレンを溶媒とした場合の本発明にかかるフラーレンベース材料誘導体の吸収特性を内包フラーレンクラスターの吸収特性との比較で示したものである。
以下、実施例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)内包フラーレンクラスターの合成
Liを内包した内包フラーレンクラスターの製造に、円筒形状のステンレス製容器の周囲に電磁コイルを配置した構造の、図20に示す構成の製造装置を用いた。使用原料であるLiは、アルドリッチ製の同位体に関し未精製のLiを用い、また、使用原料であるC60は、フロンティアカーボン製のC60を用いた。
真空容器301を真空度4.2×10−5Paに排気し、電磁コイル303により、磁場強度0.2Tの磁界を発生させた。内包原子昇華オーブン304に固体状のLiを充填し、480℃の温度に加熱してLiを昇華させ、Liガスを発生させた。発生したLiガスを500℃に加熱したガス導入管305を通して導入し、2500℃に加熱した熱電離プレート306に噴射した。Li蒸気が熱電離プレート306表面で電離し、Liの正イオンと電子からなるプラズマ流が発生した。さらに、発生したプラズマ流に、チムニー型のフラーレンオーブン308で610℃に加熱、昇華させたC60蒸気を導入した。
プラズマ流と接触するカップ状の堆積基板310に−30Vのバイアス電圧を印加し、堆積基板310表面に内包フラーレンクラスターを含む薄膜を堆積した。原料供給比(Liイオン/C60)を0.6として約1時間の堆積を複数回行い、厚さ0.8〜1.4μmの薄膜を得た。
(実施例2)1−クロロナフタレンを用いた溶媒抽出
図15は、1−クロロナフタレン(図中では「CN」と略記する。)を用いた内包フラーレンクラスターの溶媒抽出の実施例のフロー図である。Li内包フラーレンクラスターをプラズマ照射法で合成し、水処理を行った成膜物221を準備した。成膜物には、内包フラーレンクラスターのみならず、未反応の空のフラーレンが含まれているが、未反応のLiは水洗処理によって除去されている。
この水洗後の成膜物221をまず秤量した。実施例では、約1.5gの成膜物を用いた。秤量した成膜物に30mlの1−クロロナフタレン溶液を加え、超音波攪拌を行った後、遠心分離をかけ、メンブランフィルターで濾過した(ステップ222)。溶液に溶けなかった残渣物にフィルターに残った残渣物を加えたものは、乾燥して(ステップ224)、保存した。
濾過された1−クロロナフタレン溶液226を、溶液226の5倍量のトルエンに混合し、1時間放置してから濾過した(ステップ227)。トルエンに溶けなかった残渣物とフィルターに残った残渣物を加えて乾燥し(ステップ229)、溶媒抽出物230として用いた。
なお、トルエン溶液231中には、多量の空のフラーレンが含まれているので、ヘキサンなどの空のフラーレンに対する貧溶媒を加えて、空のフラーレンを沈殿させて回収し、再利用した。
<UV>
1−クロロナフタレンを溶媒として内包フラーレンクラスターのUV測定(島津製作所株式会社製 multispec1500)を行なったところ、図5に示されるように、フラーレンC60に特徴的な500〜600nmの吸収は認められず、400nmから長波長側にかけてなだらかに減衰する吸収スペクトルが得られた。
<IR>
溶媒抽出物230の粉末を混合させたKBrペレットについて赤外吸収スペクトル(株式会社堀場製作所製 FT−730)を測定したところ、図6(a)に示されるように、空のフラーレンC60に特徴的な526、574、1180、1427cm−1の4本のピークのセットは顕著には観測されなかった。このデータより、溶媒抽出物230には空のフラーレンが有意な量では存在しないことが確認された。したがって、以降の説明では溶媒抽出物230を「内包フラーレンクラスター」と称する。
<元素分析>
上記のプロセスで得た内包フラーレンクラスターについて、ICP発光分光分析装置(サーモエレクトロン社(旧ジャーレルアッシュ社)製 IRIS−AP)を用いてリチウムの定量分析を行なった。その結果、リチウムの比率は0.052質量%であった。
このリチウムの比率から内包率を計算すると5.4%(=0.052%*727/7)となる。内包フラーレンクラスターが図13(b)や(c)に示されるような内包フラーレンを一つだけ含むものであると仮定すると、この内包率から算出されるクラスター構成フラーレン数は平均値として18.5個(=100/5.4)となる。したがって、内包フラーレンクラスターの分子量は13339(=720*18.5+7)と算出される。
(実施例3)2−アダマンタノンジアジリンの合成
2−アダマンタノンジアジリンは下記の論文記載の方法より合成した。
Qing Ye et al. J. Org. Chem. 2002, 67, 9288−9294.
材料として用いた2−アダマンタノンは15.8gであり、得られた2−アダマンタノンジアジリンは10.6gであった。したがって、収率は58%であった。
(実施例4)熱反応によるフラーレンベース材料誘導体の合成
温度計を設置し、内部に磁気攪拌子を備えたガラス製100mLのシュレンクフラスコの内部を窒素置換して、上記の内包フラーレンクラスター99.1mg(内包フラーレンクラスター換算で7.43μmol、フラーレン類分子換算で137μmol)および上記の製造方法で製造した2−アダマンタノンジアジリン998mg(6.16mmol、内包フラーレンクラスターに対する当量比は829、フラーレン類あたりでの当量比は44.8)を入れ、1−クロロナフタレン(東京化成工業株式会社製)45mL(330mmol)を加えて攪拌し、褐色溶液とした。
この褐色溶液が入ったシュレンクフラスコを、窒素気流下で、オイルバスを用いて150℃で三時間、遮光状態で加熱した。加熱後のフラスコ内の反応液は濃褐色であった。その後、脱気後窒素充填を三回繰り返して行って、酸素や水素を十分に除去した。
得られた反応溶液を真空下(真空度1mmHg)で100℃にて四時間加熱して揮発成分を留去したところ、除去しきれない1−クロロナフタレンを含んだ状態で黒褐色の油状物が得られた。この油状物をヘキサンにて洗浄した。この洗浄用ヘキサンとしては、購入品(和光純薬工業株式会社製)をナトリウム−ベンソフェノンにて脱水したものを使用直前に蒸留して用いた。
まず、フラスコ内にヘキサン30mLを注入して懸濁液として、この懸濁液を空気中でろ過して残渣を得た。この残渣を二度ヘキサンにて洗浄した(一度目は30mL、二度目は20mL)。このとき、二度目の洗浄液が目視レベルで無色透明であることを確認した。続いて、洗浄後の残渣を真空下(真空度5mmHg)常温で2時間乾燥し、130mgの褐色粉末を得た。
得られた褐色粉末を二硫化炭素で3回(一回目は40mL、二回目は40mL、三回目は30mL)抽出し、空気中でろ過して不溶物をろ別した。ろ液は褐色透明であり、不溶物は黒褐色であった。褐色透明のろ液を真空下(真空度5mmHg)で常温で揮発成分を留去したところ、100.7mgの褐色粉末が得られた。なお、ろ紙上の残渣についても同様に揮発成分留去を行なった結果、16.1mgの黒褐色粉末が得られた。
<質量分析>
得られた褐色粉末について、レーザーTOFMS(飛行時間型質量分析器、島津製作所株式会社製 LDI−TOF−MS axima CFR plus)による測定を行なったところ、リチウム原子内包フラーレンC60−アダマンチリデン基付加体の1、2、3、4、5、6、7、8付加体にそれぞれ相当するピーク(m/Z=861、995、1129、1263、1397、1531、1665、1799)が観測された(図16参照)。ピーク強度としては、1付加体から4付加体にかけて順次ピーク強度が増加し、4付加体によるピークが最も強く、5付加体のピーク強度は4付加体の70−90%であった。その後、6付加体以降は急激に強度が低くなり、8付加体になるとノイズとの差異が少なくなり、9付加体以降はピークとして認識することができなかった。上記の製造方法で合成を複数回行い熱反応生成物としての褐色粉末を得たが、この傾向はいずれのロットでもほぼ同様であった。
なお、原料の内包フラーレンクラスターがレーザーによって乖離することで発生する、空のフラーレンC60、およびリチウム金属内包フラーレン(Li@C60)のピークも得られたが、アダマンチリデン基付加体に由来するピーク強度に対するこれらのピーク強度比はロットによって変動した。
ここで、1付加体から7付加体までのピーク強度が存在数に比例するとの前提で平均付加数を求めると4.5となった。なお、8付加体は痕跡程度であったのでこの計算にあたっては慮外した。イオン化効率の関係でC60への付加体は質量分析では観測されなかったが、Li内包C60への付加体と同様の傾向でアダマンチリデン基が付加していると仮定すると、クラスターあたりのアダマンチリデン基付加数は約84と算出された。
<IR>
また、赤外吸収スペクトルを測定したところ、図17に示されるように、2846および2904cm−1にアダマンチリデン基に特徴的なC−H結合の吸収が認められた。原料の2−アダマンタノンジアジリンはヘキサン洗浄によって除去されているため、この吸収の存在によってアダマンチリデン基がフラーレンクラスターに付加していることが確認された。
一方、空のフラーレンC60に特徴的な526、574、1180、1427cm−1の4本のピークのセットは顕著には観測されなかった。ヘキサン洗浄後、フラーレンも可溶な二硫化炭素で抽出してもこのピークが得られなかったことから、アダマンチリデン基の付加反応で内包フラーレンクラスターから空のフラーレンが顕著には脱離しないことが確認された。
<NMR>
二硫化炭素を溶媒としてH−NMR測定(Burker社製 AVANCE−600 H NMR 600MHz、外部標準:DO)を行なったところ、2−アダマンタノンジアジリンに由来するピークは観測されず、図18に示されるように、1.08,1.45,1.92,2.06,2.14,2.69,3.64ppmに鋭いピークが、1.3−3.0ppmにブロードなピークが観察された。また、2−アダマンタノンジアジリンに由来するピーク(0.77,1.98,2.02,2.22,2.25ppm)は検出されず、未反応物がほとんど残留していないことが確認された。
<UV>
二硫化炭素を溶媒としてUV測定を行なったところ、図19に示されるように、フラーレンC60に特徴的な400〜500nmの吸収曲線パターンは認められず、400nmから長波長側にかけてなだらかに減衰する吸収波形が得られた。
<元素分析>
ICP発光分光分析装置を用いてリチウムを含む元素分析を行なった。その結果、リチウムの比率は0.027〜0.030%(平均値は0.028%)であった。
内包フラーレンクラスターは図13(b)や(c)に示されるようにクラスター内にリチウム金属を一つ含むというという前提で、元素分析を行ったサンプルの純度が100%であると仮定すると、リチウム以外はすべて内包フラーレンクラスターを構成する炭素および水素ということになる。そこで、リチウムの比率から内包フラーレンクラスターの分子量は25000(=7/0.00028)となる。前述の計算に基づいて内包フラーレンクラスターの分子量を13339とすると、内包フラーレンクラスターに付加する2-アダマンチリデン基の数は87((250000−13339)/134)。となる。また内包フラーレンクラスターを構成するフラーレン分子数は平均18.5個と算出されているので、この数値に基づくと、フラーレン一分子あたりの平均付加数は4.7個(=87/18.5)となる。この数値は、LDTOF質量分析データに基づく平均付加数4.5とほぼ等しい。
<収率>
上記の分子量を用いると、収率は65.4%(100.7mg/25000g・mol−1/6.16μmol)であった。
(比較例)フラーレンC60アダマンチリデン基修飾体の合成
温度計を設置し、内部に磁気攪拌子を備えたガラス製100mLのシュレンクフラスコ内に、内部を窒素置換した状態で、フラーレンC60(分子量720、フロンティアカーボン株式会社製)99.8mg(138μmol)および前述の製造方法で製造した2−アダマンタノンジアジリン998mg(6.16mmol、フラーレンC60に対する当量比は44.4)を入れ、1−クロロナフタレン(東京化成工業株式会社製)45mLを加えて攪拌し、褐色溶液とした。
この褐色溶液が入ったシュレンクフラスコを、シュレンクフラスコを、窒素気流下で、オイルバスを用いて150℃で三時間、遮光状態で加熱した。加熱後のフラスコ内の反応液は濃褐色であった。
得られた反応溶液を真空下(真空度5mmHg)で100℃にて四時間加熱して揮発成分を留去したところ、除去しきれない1−クロロナフタレンを含んだ状態で黒褐色の油状物が得られた。実施例と同様の処理を行ったヘキサンにてこの黒褐色固体を洗浄した。
まず、フラスコ内にヘキサン30mLを注入して懸濁液として、この懸濁液を空気中でろ過して残渣を得た。この残渣を二度ヘキサンにて洗浄した(一度目は30mL、二度目は20mL)。このとき、二度目の洗浄液が目視レベルで無色透明であることを確認した。続いて、洗浄後の残渣を真空下(真空度5mmHg)常温で2時間乾燥して褐色粉末を得た。
得られた褐色粉末を二硫化炭素で3回(一回目は40mL、二回目は40mL、三回目は30mL)抽出し、空気中でろ過して不溶物をろ別した。ろ液は褐色透明であり、不溶残渣は存在しなかった。褐色透明のろ液を真空下(真空度5mmHg)で常温にて揮発成分を留去したところ、128.3mgの褐色粉末が得られた。
<質量分析>
得られた褐色粉末について、レーザーTOFMSによる測定を行なったところ、フラーレンC60−アダマンチリデン基付加体の1、2、3、4、5、6、7、8付加体にそれぞれ相当するピーク(m/Z=854、988、1122、1256、1390、1524、1658、1792)が観測された。ピーク強度としては、リチウム原子内包フラーレンC60による実施例と同様、1付加体から5付加体にかけて順次ピーク強度が増加し、6付加体のピーク強度が5付加体よりもやや低く、7付加体以降は急激に強度が低くなる傾向を示した。
<IR>
また、赤外吸収スペクトルを測定したところ、2846および2904cm−1にアダマンチリデン基に特徴的なC−H結合の吸収があり、アダマンチリデン基の存在が認められた。一方、一方、空のフラーレンC60に特徴的な526、574、1180、1427cm−1の4本のピークのセットは顕著には観測されなかった。
<NMR>
二硫化炭素を溶媒としてH−NMR測定を行なったところ、1.88,2.02,2.11,2.67,3.52ppmに鋭いピークが、1.3−3.0ppmにはブロードなピークが観測された。
<UV>
二硫化炭素を溶媒としてUV測定を行なったところ、図19に示されるようにフラーレンC60に特徴的な450〜550nmの吸収特性に関連すると認められる吸収が認められた。また、700nm以降の吸収は極めて少なく、この点も内包フラーレンクラスターを出発物質とした誘導体と異なる結果となった。
<収率>
質量分析結果では5付加体がもっとも強いピークを示したことから、5付加体が100%であると仮定すると、収率は66.6%(128.3mg/1390g・mol−1/138μmol)であった。
図20にかかる製造装置により製造された堆積膜のLDTOF−MSによる質量分析データを示す図である。 内包フラーレンクラスターの溶媒抽出による分離精製方法の工程フロー図である。 内包フラーレンクラスターの溶媒抽出実験データを示す図である。 内包フラーレンクラスターの分離精製方法を検討する際に用いた内包率の評価方法の工程フロー図である。 図4にかかる分離精製法で得られた精製物の1−クロロナフタレン溶液とC60だけを溶解した1−クロロナフタレン溶液の紫外線吸光分析スペクトルの比較データを示す図である。 図4にかかる分離精製法で得られた精製物をKBr粉末に混入して作成したペレット(a)とC60を混入させたペレット(b)とについて測定した赤外吸収スペクトルの比較データを示す図である。 図4にかかる分離精製法で得られた精製物の1−クロロナフタレン溶液とC60だけを溶解した1−クロロナフタレン溶液のNMRスペクトルの比較データを示す図である。 図4にかかる分離精製法で得られた精製物の内包率の原料供給比依存性を示す図である。 図4にかかる分離精製法で得られた精製物の高質量領域(質量数>1000)におけるLDTOF質量分析データを示す図である。 図4にかかる分離精製法で得られた精製物の粒径測定を動的光散乱法により行った結果を示す図である。 図4にかかる分離精製法で得られた精製物のTEMによる観察写真である。 図4にかかる分離精製法で得られた本精製物およびC60の結晶構造のX線分析データを示す図である。 (a)は、内包フラーレン、空のフラーレンの分子構造を示す図であり、(b)、(c)、および(d)は、図4にかかる分離精製法で得られた本精製物が有する内包フラーレンクラスターの構造の推測図である。 1−クロロナフタレンを溶媒とした場合の本発明にかかるフラーレンベース材料誘導体の吸収特性を内包フラーレンクラスターの吸収特性との比較で示した図である。 1−クロロナフタレン(図中では「CN」と略記。)を用いた内包フラーレンクラスターの溶媒抽出の実施例のフロー図である。 本発明にかかるフラーレンベース材料誘導体のLDTOF−MSによる質量分析データを示す図である。 本発明にかかるフラーレンベース材料誘導体をKBr粉末に混入して作成したペレットについて測定した赤外吸収スペクトルデータを示す図である。 本発明にかかるフラーレンベース材料誘導体の二硫化炭素溶液のNMRスペクトルを示す図である。 本発明にかかるフラーレンベース材料誘導体の二硫化炭素溶液とC60のアダマンチリデン付加体の二硫化炭素溶液の紫外線吸光分析スペクトルの比較データを示す図である。 プラズマ照射法により内包フラーレンを含む材料を生成する製造装置の具体例の断面図である。
符号の説明
11 内包フラーレン
12 空のフラーレン
13、14、21 内包フラーレンクラスター
31、32、33、34、35、36、37、38、39 クラスターの質量ピーク
301 真空容器
302 真空ポンプ
303 電磁コイル
304 アルカリ金属オーブン
305 アルカリ金属蒸気導入管
306 ホットプレート
307 プラズマ流
308 フラーレンオーブン
309 フラーレン蒸気導入管
310 堆積基板
311 堆積膜
312 基板バイアス電源

Claims (10)

  1. 下記式(I)で表されるアルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体。
    Figure 0005268298
    (上記式(I)中、AFは、アルカリ金属原子内包フラーレン類を一個以上含むフラーレン類のクラスターを表す。Rはアルキリデン基を表し、AFの構成要素であるフラーレン類の骨格炭素にメタノフラーレン型および/またはフレロイド型の架橋結合をなす。nはフラーレンクラスターを構成するフラーレン類一個当たりのRの結合数であって、1〜8の整数を表す。上記式(I)のRは架橋環構造を有し、該Rにおいて上記式(I)のAFと結合する炭素に隣接する炭素は架橋環構造の橋頭をなす。
  2. 上記式(I)のRがアダマンチリデン基、ノルボルニリデン基、クアドリシクラニリデン基、ビシクロオクタンイリデン基の中から選択された基であることを特徴とする請求項1記載のアルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体。
  3. 上記式(I)のAFが、アルカリ金属原子内包フラーレン類を一個以上含むフラーレン類のクラスターである内包フラーレンクラスターを表し、前記フラーレン類がC 60 及び/又はC 70 であることを特徴とする請求項2記載のアルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体。
  4. 上記式(I)のAFは、常温における溶解度が、二硫化炭素に対して1mg/mL未満、かつ1−クロロナフタレンに対して1mg/mL以上である請求項1乃至3のいずれか1項記載のアルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体。
  5. 常温での溶解度が、ヘキサンに対して0.1mg/mL未満、かつ二硫化炭素に対して2mg/mL以上である請求項1乃至4のいずれか1項記載のアルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体。
  6. 上記式(I)のAFは、アルカリ金属イオンを含むプラズマをフラーレン類に照射して得られる生成物を水洗したのち、クロロナフタレン類を溶媒とする抽出液から再沈法によって未反応フラーレン類を除去して得られる組成物である請求項1乃至5のいずれか1項記載のアルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体。
  7. アルカリ金属イオンを含むプラズマをフラーレン類に照射して得られる生成物(A0)に基づくアルカリ金属内包フラーレン類を含む組成物(A)がアルキリデン基と結合してなり、前記アルキリデン基が架橋環構造を有し、前記アルキリデン基において前記(A)と結合する炭素に隣接する炭素は架橋環構造の橋頭をなすアルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体であって、
    前記(A)は、前記(A0)を水洗したのちクロロナフタレン類を溶媒として抽出し、その抽出液から再沈法によって未反応フラーレン類を除去することで得られ、常温での溶解度が、ヘキサンに対して0.1mg/mL未満であって、かつ二硫化炭素に対して2mg/mL以上であることを特徴とするアルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体。
  8. 前記アルキリデン基が、アダマンチリデン基、ノルボルニリデン基、クアドリシクラニリデン基、ビシクロオクタンイリデン基の中から選択された基であることを特徴とする請求項7記載のアルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体。
  9. 前記(A)と結合するアルキリデン基数は8以下である請求項7または8のいずれか1項記載のアルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体。
  10. 前記フラーレン類が、C 60 及び/又はC 70 であることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項記載のアルカリ金属を内包するフラーレンベース材料誘導体。
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