JP5267810B2 - 炭酸ガスの地中貯留方法 - Google Patents

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Description

本発明は、地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの一つである炭酸ガスの削減に資するため、炭酸ガスの大規模な排出源等から分離・回収した炭酸ガスを、海水及び/又は水からなる溶媒に溶解させて地中に圧入する際に、炭酸ガスを溶媒に飽和濃度付近で溶解させた炭酸ガス溶解水に対して、未溶解炭酸ガスを所定の割合で混入することにより、炭酸ガスの安定的貯留を図るとともに、溶媒の使用量を低減した炭酸ガスの地中貯留方法に関する。
従来より、排出ガスから分離・回収した炭酸ガスを、地中の枯渇した油田やガス田あるいは帯水層に貯留する際、下記非特許文献1,2に記載されるように、前記炭酸ガスを液体又は超臨界状態に圧縮し、注入井より地中に圧入することが試みられている。一般に、この炭酸ガスは深度800m以上の貯留層に圧入することにより、炭酸ガスの超臨界状態(二酸化炭素の場合、温度31℃以上、圧力7.4MPa以上)を維持し、炭酸ガスの密度を大きくして効率的な貯留を図っている。
しかしながら、超臨界状態の炭酸ガスは周辺地下水より比重が軽く、浮力で上方へ移動するため、炭酸ガスを貯留する帯水層として、形状がドーム状とされ、上方中央部に浮上した炭酸ガスがトラップされるようなシール層(キャップロック)が形成されていることが必要であった。ところが、一般的に油田やガス田では、貯留層が前記シール層とドーム形状との組合せによるトラップ構造を有することが確認されているが、自然界において係る条件に適合した帯水層を見つけることが課題となっている。このため適用できる条件を拡げ、炭酸ガスが浮上せず長期的かつ安定的に地中に貯留・隔離させる方法が望まれていた。
一方、炭酸ガスの地中への圧入方法としては、地表面上から地中に貫通したパイプの上部から、CO2昇圧装置で昇圧された二酸化炭素と、ポンプで昇圧された水とをパイプ内で合流混合しつつ圧入する下記特許文献1記載の方法、ガス田又は油田の地下層内に二酸化炭素をミキサーによって水に溶解させた状態で貯蔵する下記特許文献2記載の方法、炭酸ガスを含む気体をマイクロバブル化して水または海水中に分散させ、マイクロバブル化した炭酸ガスを地底に隔離する下記特許文献3記載の方法などがある。これらいずれの方法も、帯水層に海水又は水の溶媒と炭酸ガスとを圧入し、溶媒に炭酸ガスを溶解させて帯水層に貯留させるようにしている。
しかしながら、上記特許文献1〜3記載の方法では、溶媒に炭酸ガスを飽和濃度レベルの高い濃度で溶解させることにより、周辺地下水より比重を重くした状態とし、帯水層に炭酸ガスを長期的かつ安定的に貯留・隔離させるというものであるが、溶媒が水だけであったり、溶解手段が「合流」、「ミキサー」、「マイクロバブル発生装置」では、溶解条件によっては、炭酸ガスの溶解濃度レベルが不十分であると考えられ、周辺地下水より比重を重くすることができないおそれがあった。
そこで本出願人は、下記特許文献4において、炭酸ガスを液体又は超臨界状態まで圧縮する炭酸ガス圧縮装置と、海水及び/又は水からなる溶媒を圧縮・搬送する溶媒圧送ポンプと、前記圧縮された炭酸ガス及び溶媒が注入され、前記溶媒に前記炭酸ガスを溶解させて炭酸ガス溶解水とする1又は複数の溶解槽と、生成された炭酸ガス溶解水を地中の帯水層に圧入する地表面から前記帯水層まで貫通した注入井とから構成される炭酸ガスの地中貯留システムを提案するとともに、第2構成パターンとして、地下水に対する炭酸ガスの溶解を期待して、最大で溶媒重量の5%の未溶解の炭酸ガスを含んだ状態で地中の帯水層に圧入する炭酸ガスの地中貯留システムを提案した。
さらに本出願人は、下記特許文献5において、溶媒を所定の高流速で流した主流管路の内部に炭酸ガスの供給管路を配設するなどし、溶媒と炭酸ガスとを仕切る管路壁面に細孔を形成し、主流管路を流れる溶媒のせん断力によって炭酸ガスを細泡化しながら混入させる高圧用炭酸ガス細泡化装置を提案した。かかる細泡化装置によれば、高圧状態下において炭酸ガスを溶媒に効率的かつ高い処理能力で細泡化し混入することが可能となった。
また近年では、下記特許文献6に開示されるように、液化炭酸ガスを注入水の中に微細液滴化して混合し二液混合流体を地中に注入する液化炭酸ガスの地中送り込み方法が提案されている。このとき、微細液滴状の二酸化炭素は、岩石鉱物の表面に吸着される場合や、毛細管効果により岩石中の残留液滴としてトラップされるが、圧力と温度の条件変化により微細気泡になった二酸化炭素は、周囲の地下水に溶解しやすくなる旨が記載されている。
特開平6−170215号公報 特開平3−258340号公報 特開2004−50167号公報 特開2008−238054号公報 特開2009−112995号公報 特開2009−11964号公報
IPCC、"IPCC Special Report on Carbon Dioxide Capture and Storage"、Chapter 5、2005年、Cambridge University Press 大関真一、嘉納康二、"「二酸化炭素地中貯留」事業の実現にむけて〜石油・天然ガス上流技術への期待〜"、「石油・天然ガスレビュー」、独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構、2006.7、vol.40 No.4、p57-70
上記特許文献4〜6に開示されるように、炭酸ガスを溶媒に溶解させず未溶解の炭酸ガスの状態で地中の帯水層に圧入した場合でも、地下水に溶解したり、岩石鉱物の表面への吸着や毛細管効果による岩石中の残留液滴として帯水層にトラップされ、安定的に貯留・隔離されるようになることが明らかとなっている。
この知見に基づいて、さらに本発明者等が鋭意研究を重ねた結果、炭酸ガス溶解水に未溶解炭酸ガスを混入して圧入する際、地盤条件や帯水層内の圧力・温度条件、帯水層内に形成される炭酸ガス溶解水及び未溶解炭酸ガスの貯留領域等に応じて、炭酸ガス溶解水に対する未溶解炭酸ガスの質量割合を適正に制御しなければ、帯水層への圧入が不可能となったり、無駄なエネルギーを消費したりする場合があることが予測された。
また、炭酸ガス溶解水に混入する未溶解炭酸ガスの質量割合を溶媒重量の5%より増やすことで、溶媒の使用量を削減することも期待できる。
そこで本発明の主たる課題は、帯水層の地盤条件等に応じて炭酸ガス溶解水に混入する適正な未溶解炭酸ガスの質量割合を決定することにより、未溶解炭酸ガスを帯水層に安定的かつ長期的に貯留・隔離するとともに、溶媒の使用量を大幅に削減した炭酸ガスの地中貯留方法を提供することにある。
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、炭酸ガスを海水及び/又は水からなる溶媒に飽和濃度付近で溶解させた炭酸ガス溶解水に対して、未溶解炭酸ガスを所定の割合で混入して地中の帯水層に圧入し、前記炭酸ガス溶解水及び未溶解炭酸ガスを地中に貯留・隔離するための炭酸ガスの地中貯留方法であって、
前記帯水層内において、注入井の周囲に前記炭酸ガス溶解水とともに、前記未溶解炭酸ガスを貯留・隔離する第1貯留領域と、この第1貯留領域を取り囲むように同心円状に前記炭酸ガス溶解水のみによる第2貯留領域とを夫々形成するように前記炭酸ガス溶解水と未溶解炭酸ガスとを貯留・隔離する条件の下で、前記炭酸ガス溶解水に混入する未溶解炭酸ガスの質量割合を下記(1)〜(3)の手順によって決定することを特徴とする炭酸ガスの地中貯留方法が提供される。
(1)前記帯水層から採取した原地盤材料を用いた室内試験によって、帯水層の間隙体積に占める貯留可能な未溶解炭酸ガスの体積割合として定義付けられる炭酸ガスの体積飽和率を測定するか、蓄積された実績データに基づいて前記炭酸ガスの体積飽和率を推定する第1手順。
(2)前記第1貯留領域の体積と、前記第2貯留領域の体積とを設定する第2手順。
(3)前記炭酸ガスの体積飽和率と前記第1貯留領域及び第2貯留領域の体積とに基づいて、炭酸ガス溶解水に混入する未溶解炭酸ガスの質量割合を決定する第3手順。
上記請求項1記載の発明では、炭酸ガス溶解水に混入する未溶解炭酸ガスの質量割合を決定するに当たって、前記炭酸ガスの体積飽和率を測定又は推定する第1手順、第1貯留領域の体積と第2貯留領域の体積とを設定する第2手順、前記炭酸ガスの体積飽和率と前記第1貯留領域及び第2貯留領域の体積とに基づいて、炭酸ガス溶解水に混入する未溶解炭酸ガスの質量割合を決定する第3手順を構成要素としている。
具体的に、前記第1手順では、帯水層の間隙率、地下水圧、温度等を考慮して、地盤材料の特性を測定又は推定している。
前記第2手順では、帯水層の分布(面積、層厚)、間隙率、地下水圧、温度、炭酸ガスの飽和率、炭酸ガス溶解水の炭酸ガスの質量割合等を考慮して、帯水層における各貯留領域の体積を設定している。
前記第3手順では、帯水層の分布(面積、層厚)、間隙率、地下水圧、温度、浸透率、炭酸ガス溶解水及び炭酸ガスの相対浸透率、毛管圧特性、地下水塩濃度等の帯水層における各種特性や、炭酸ガス溶解水及び未溶解炭酸ガスの圧入量等を考慮して、圧入浸透流解析による帯水層における未溶解炭酸ガスと炭酸ガス溶解水の貯留状況を確認して注入可能か否かの判断をしたり、設備建設コスト、使用エネルギー、溶媒(海水等)の使用量等の主に経済性の面から、未溶解炭酸ガスの混入効果を評価し、最適な貯留条件であるか否かの判断をしたりして最終的な炭酸ガス溶解水に混入する未溶解炭酸ガスの質量割合を決定している。
このように最適な質量割合で未溶解炭酸ガスを混入した炭酸ガス溶解水を圧入することにより、未溶解炭酸ガスは、地下水への溶解以外にも、帯水層の間隙内に一定割合で捕捉(トラップ)され、安定的かつ長期的に貯留・隔離できるようになる。
また、後段で詳述するように、炭酸ガス溶解水に混入する未溶解炭酸ガスの質量割合は、帯水層における炭酸ガスの貯留量、炭酸ガス飽和率、帯水層の間隙率・地下水圧・温度等の条件に応じて、最大25%程度まで上げることが可能であり、これまでの溶媒重量の5%より増やすことができ、溶媒の使用量の削減による消費エネルギーの低減を図ることができるようになる。
請求項2に係る本発明として、炭酸ガスを液体又は超臨界状態まで圧縮する炭酸ガス圧縮装置と、海水及び/又は水からなる溶媒を圧縮・搬送する溶媒圧送ポンプと、前記圧縮された炭酸ガス及び溶媒が注入され、前記溶媒に前記炭酸ガスを溶解させて炭酸ガス溶解水とする1又は複数の溶解槽と、前記炭酸ガス溶解水及び未溶解炭酸ガスを地中の帯水層に圧入するために地表面から前記帯水層まで貫通した注入井とから構成され、
前記溶解槽は、密閉された容器の下部に、前記炭酸ガス圧縮装置から送られた炭酸ガスが注入される炭酸ガス注入口と、前記溶媒圧送ポンプから送られた溶媒が注入される溶媒注入口とが形成されるとともに、前記容器の上部に前記炭酸ガス溶解水が吐出される吐出口が形成され、前記容器内に粒状の充填材が充填されて構成された炭酸ガスの地中貯留システムを用いて、
前記溶解槽から注入井に至る流路の途中に、送給された炭酸ガス溶解水の全量に対して、未溶解炭酸ガスと、炭酸ガスが飽和濃度で溶解した炭酸ガス溶解水とを分離する分離槽と、該分離槽で分離された未溶解炭酸ガスを圧送する未溶解炭酸ガス圧送装置と、該未溶解炭酸ガス圧送装置から圧送された未溶解炭酸ガスを分岐する分岐装置と、前記分離槽で分離された炭酸ガス溶解水に前記分岐装置にて分岐された未溶解炭酸ガスを混入する合流点とを設け、前記分岐装置にて前記未溶解炭酸ガスのうち前記炭酸ガス溶解水に混入する所定量を分岐して前記合流点に圧送することによって、前記炭酸ガス溶解水に対して、未溶解炭酸ガスを所定の割合で混入して地中の帯水層に圧入する請求項1記載の炭酸ガスの地中貯留方法が提供される。
上記請求項2記載の発明は、請求項1記載の地中貯留方法に用いる地中貯留システムの第1形態例について規定したものであり、溶解槽から注入井に至る流路の途中に、送給された炭酸ガス溶解水の全量に対して、未溶解炭酸ガスと、炭酸ガスが飽和濃度で溶解した炭酸ガス溶解水とを分離する分離槽と、該分離槽で分離された未溶解炭酸ガスを圧送する未溶解炭酸ガス圧送装置と、該未溶解炭酸ガス圧送装置から圧送された未溶解炭酸ガスを分岐する分岐装置と、前記分離槽で分離された炭酸ガス溶解水に前記分岐装置にて分岐された未溶解炭酸ガスを混入する合流点とを設けた地中貯留システムを用いるものである。この地中貯留システムを用いた場合、前記分岐装置にて前記未溶解炭酸ガスのうち前記炭酸ガス溶解水に混入する所定量を分岐して前記合流点に圧送することによって、前記炭酸ガス溶解水に対して、未溶解炭酸ガスを所定の割合で混入して地中の帯水層に圧入するようにする。
このように溶解槽から注入井に至る流路の途中に前記分離槽を設けることにより、帯水層に圧入する炭酸ガス溶解水として分離槽で分離された炭酸ガス溶解水を用いることができ、確実に飽和濃度に近い状態で炭酸ガスが溶解した炭酸ガス溶解水を地中に圧入できるとともに、この炭酸ガス溶解水に対して、分離槽で分離された未溶解炭酸ガスを所定の割合で精度よく混入させることができるようになる。
請求項3に係る本発明として、炭酸ガスを液体又は超臨界状態まで圧縮する炭酸ガス圧縮装置と、海水及び/又は水からなる溶媒を圧縮・搬送する溶媒圧送ポンプと、前記圧縮された炭酸ガス及び溶媒が注入され、前記溶媒に前記炭酸ガスを溶解させて炭酸ガス溶解水とする1又は複数の溶解槽と、前記炭酸ガス溶解水及び未溶解炭酸ガスを地中の帯水層に圧入するために地表面から前記帯水層まで貫通した注入井とから構成され、
前記溶解槽は、密閉された容器の下部に、前記炭酸ガス圧縮装置から送られた炭酸ガスが注入される炭酸ガス注入口と、前記溶媒圧送ポンプから送られた溶媒が注入される溶媒注入口とが形成されるとともに、前記容器の上部に前記炭酸ガス溶解水が吐出される吐出口が形成され、前記容器内に粒状の充填材が充填されて構成され、
前記溶解槽から吐出された炭酸ガス溶解水を未溶解炭酸ガスを含んだそのままの状態で、地中の帯水層に圧入するようにしてある炭酸ガスの地中貯留システムを用いて、
前記炭酸ガス圧縮装置によって圧送する炭酸ガスの質量と前記溶媒圧送ポンプによって圧送する溶媒の質量とをそれぞれ制御することによって、前記炭酸ガス溶解水に対して、未溶解炭酸ガスを所定の割合で混入して地中の帯水層に圧入する請求項1記載の炭酸ガスの地中貯留方法が提供される。
上記請求項3記載の発明は、請求項1記載の地中貯留方法に用いる地中貯留システムの第2形態例について規定したものであり、前記溶解槽から吐出された炭酸ガス溶解水を未溶解炭酸ガスを含んだそのままの状態で、地中の帯水層に圧入するようにした地中貯留システムを用いたものである。この地中貯留システムを用いた場合、炭酸ガス圧縮装置によって圧送する炭酸ガスの質量と前記溶媒圧送ポンプによって圧送する溶媒の質量とをそれぞれ制御することによって、前記炭酸ガス溶解水に対して、未溶解炭酸ガスを所定の割合で混入して地中の帯水層に圧入することができる。したがって、地中貯留システムに供給する炭酸ガスの量を一元的に管理することができるようになる。
請求項4に係る本発明として、前記溶解槽の前段に、前記溶媒を所定の高流速で流した主流管路の内部に前記炭酸ガスの供給管路を配設するか、前記主流管路を外嵌する前記炭酸ガスの供給管路を配設し、前記溶媒と炭酸ガスとを仕切る管路壁面に細孔を形成し、前記主流管路を流れる溶媒のせん断力によって前記炭酸ガスを細泡化しながら混入させる高圧用炭酸ガス細泡化装置が設置されている請求項3記載の炭酸ガスの地中貯留方法が提供される。
上記請求項4記載の発明では、溶解槽から吐出された炭酸ガス溶解水を未溶解炭酸ガスを含んだそのままの状態で地中の帯水層に圧入する第2形態例に係る地中貯留システムにおいて、溶解槽の前段に、前記高圧用炭酸ガス細泡化装置を設置するようにしたものである。前記高圧用炭酸ガス細泡化装置を設置することにより、飽和濃度レベル付近の高い濃度で炭酸ガスを溶媒(海水等)に溶解させた状態で、炭酸ガス溶解水を帯水層に圧入できるようになる。
また、前記高圧用炭酸ガス細泡化装置は、主流管路を流れる溶媒のせん断力によって炭酸ガスを細泡化しながら溶媒に混入させる構造であるため、圧力開放を伴うこと無く、高圧状態を維持した状態で炭酸ガスを溶媒に効率的かつ高い処理能力で混入することができるようになる。さらに、管路の組合せからなる構造であるため、パイプライン中に簡単に組み込むことが可能となる。
請求項5に係る本発明として、下式(5)によって求められるウェーバー数(We)が10以上となるように、前記溶媒の流速、前記細孔の孔径が設定されている請求項4記載の炭酸ガスの地中貯留方法が提供される。
Figure 0005267810
上記請求項5記載の発明は、後述の実施例2−3に従い、溶媒の流速、前記細孔の孔径の設定に際して、ウェーバー数(We)を10以上とすることにより、炭酸ガスを効率的かつ高い処理能力で細泡化し、高い溶解効率をもたらすことが可能となる。
請求項6に係る本発明として、前記溶解槽に充填される粒状の充填材として、砂、砕石、ラシヒリング、サドルの内のいずれか又は組合せとする請求項2〜5いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留方法が提供される。
上記請求項6記載の発明では、溶解槽に充填される粒状充填材として、例えば砂、砕石、ラシヒリング、サドルの内のいずれか又は組み合わせて用いるものである。
請求項7に係る本発明として、前記溶解槽に充填される粒状の充填材は、充填材の種類毎に、炭酸ガス及び溶媒の流量及び溶解槽の形状において、充填材の平均粒径に対する炭酸ガス溶解量の関係と充填材の平均粒径に対する溶解槽の圧力損失の関係とを得た上で、前記溶解槽において許容される圧力損失に対して、最も溶解量が多くなる平均粒径のものを選定してある請求項2〜6いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留方法が提供される。
上記請求項7記載の発明では、粒状の充填材は、充填材の種類毎に、炭酸ガス及び溶媒の流量及び溶解槽の形状において、充填材の平均粒径に対する炭酸ガス溶解量の関係と充填材の平均粒径に対する溶解槽の圧力損失の関係とを得た上で、前記溶解槽において許容される圧力損失に対して、最も溶解量が多くなる平均粒径のものを用いているため、溶解効率に優れるようになる。
請求項8に係る本発明として、前記溶解槽において、前記充填材の充填領域内に、流路を仕切るように多数の開孔が形成された整流板が1又は複数設けられている請求項2〜7いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留方法が提供される。
上記請求項8記載の発明では、整流板を設けることにより、溶解槽における炭酸ガスの溶解が促進されるようになる。
以上詳説のとおり本発明によれば、帯水層の地盤条件等に応じて炭酸ガス溶解水に混入する適正な未溶解炭酸ガスの質量割合を決定することにより、未溶解炭酸ガスを帯水層に安定的かつ長期的に貯留・隔離するとともに、溶媒の使用量を大幅に削減した炭酸ガスの地中貯留方法が提供できる。
地中貯留システム1A(第1形態例)の概念図である。 その溶解槽4の縦断面図である。 分離槽6の縦断面図である。 帯水層における貯留領域の平面概念図である。 帯水層における貯留領域の断面概念図である。 帯水層における炭酸ガスの貯留状態を示す模式図である。 炭酸ガス溶解水に混入する未溶解炭酸ガスの質量割合Rを決定するフロー図(第1形態例)である。 実験装置の概念図である。 充填材A、試験温度25℃における炭酸ガスの体積飽和率の経時変化を示すグラフである。 充填材A、試験温度33℃における炭酸ガスの体積飽和率の経時変化を示すグラフである。 充填材B、試験温度25℃における炭酸ガスの体積飽和率の経時変化を示すグラフである。 充填材B、試験温度33℃における炭酸ガスの体積飽和率の経時変化を示すグラフである。 充填材A、試験温度25℃における炭酸ガスの溶解量の経時変化を示すグラフである。 充填材A、試験温度33℃における炭酸ガスの溶解量の経時変化を示すグラフである。 充填材B、試験温度25℃における炭酸ガスの溶解量の経時変化を示すグラフである。 充填材B、試験温度33℃における炭酸ガスの溶解量の経時変化を示すグラフである。 炭酸ガス溶解水に混入する未溶解炭酸ガスの質量割合Rの算出例を示すグラフである。 地中貯留システム1B(第2形態例)の概念図である。 細泡化装置7Aの縦断面図である。 細泡化装置7Bの縦断面図である。 細泡化装置7Cの縦断面図である。 溶解槽4の縦断面図である。 炭酸ガス溶解水に混入する未溶解炭酸ガスの質量割合Rを決定するフロー図(第2形態例)である。 実施例1における温度29℃における粒度並びに塩水流量の条件を変えたときの炭酸ガス/塩水重量比と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。 実施例1における温度33℃における粒度並びに塩水流量の条件を変えたときの炭酸ガス/塩水重量比と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。 実施例1における温度25℃における圧力並びに塩水流量の条件を変えたときの炭酸ガス/塩水重量比と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。 実施例1における温度29℃における圧力並びに塩水流量の条件を変えたときの炭酸ガス/塩水重量比と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。 実施例1における温度33℃における圧力並びに塩水流量の条件を変えたときの炭酸ガス/塩水重量比と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。 実施例1における温度と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。 実施例1における充填材の平均粒径と炭酸ガス溶解量との関係との関係を示すグラフである。 実施例2−1における細泡化装置7での溶解効果及び溶解槽4での溶解効果の定量的に検証実験結果を示すグラフである。 実施例2−2における総括容量係数Kaと水の断面モル流速との関係を表すグラフ(その1)である。 実施例2−2における総括容量係数Kaと水の断面モル流速との関係を表すグラフ(その2)である。 実施例2−2における総括容量係数Kaと水の断面モル流速との関係を表すグラフ(その3)である。 実施例2−3における総括容量係数比Ka(B)/Ka(NB)とウェーバー数Weとの関係を表すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
本発明に係る炭酸ガスの地中貯留方法は、炭酸ガスの大規模な排出源等から分離・回収した炭酸ガスを溶媒(海水及び/又は水)に飽和濃度レベル付近の高い濃度で溶解させた炭酸ガス溶解水に対して、未溶解炭酸ガスを所定の割合で混入して地中の帯水層に圧入し、前記炭酸ガス溶解水及び未溶解炭酸ガスを長期的かつ安定的に地中に貯留・隔離するためのものである。
〔第1形態例〕
先ずはじめに、第1形態例に係る炭酸ガスの地中貯留方法について説明する。本第1形態例では、後述の第2形態例と比較して、使用する地中貯留システムが相違する。具体的に本第1形態例では、溶解槽から注入井に至る流路の途中に、炭酸ガスが飽和濃度で溶解した炭酸ガス溶解水に対して、未溶解炭酸ガスを混入する合流点が設けられている。
以下、炭酸ガスの地中貯留システム1A、それを用いた地中貯留方法の順に説明する。
(炭酸ガスの地中貯留システム1A)
図1に示される炭酸ガスの地中貯留システム1Aは、炭酸ガスの大規模な排出源等から分離・回収した炭酸ガスを、飽和濃度レベル付近の高い濃度で溶媒(海水及び/又は水)に溶解させた状態で地中の帯水層に封じ込め、長期的かつ安定的に貯留・隔離するためのものである。
すなわち、溶媒に炭酸ガスを飽和濃度レベルの高い濃度で溶解させることにより、周辺地下水より比重を重くした状態とし、帯水層に炭酸ガスを長期的かつ安定的に貯留・隔離させるというものである。このため、炭酸ガスの溶解量は、溶媒1m当たり40〜50kg、好ましくは45〜50kgを目標とする。
また、系内の圧力は、炭酸ガスが液体又は超臨界状態を維持した状態で溶解が行われるようにするとともに、炭酸ガス溶解水を地下の帯水層に圧入するための帯水層内の注入圧力と配管系の圧力損失とを考慮して、8MPa以上の高圧状態を維持するようにすることが望ましい。なお、一般的に帯水層内においては5MPa以上の地下水圧を確保できれば効率的に貯留が可能である。
本地中貯留システム1Aは、図1に示されるように、炭酸ガスを液体又は超臨界状態まで圧縮する炭酸ガス圧縮装置2と、海水及び/又は水からなる溶媒を圧縮・搬送する溶媒圧送ポンプ3と、前記圧縮された炭酸ガス及び溶媒が注入され、前記溶媒に前記炭酸ガスを溶解させて炭酸ガス溶解水とする複数の溶解槽4、4…と、生成された炭酸ガス溶解水を地中の帯水層に圧入するために地表面から前記帯水層まで貫入させた注入井5とから主に構成されている。
さらに、前記溶解槽4,4…から注入井5に至る流路の途中に、送給された炭酸ガス溶解水の全量に対して、未溶解の炭酸ガスと、炭酸ガスが飽和濃度で溶解した状態の炭酸ガス溶解水とを分離する分離槽6と、該分離槽6で分離された未溶解炭酸ガスを圧送する未溶解炭酸ガス圧送装置8と、該未溶解炭酸ガス圧送装置から圧送された未溶解炭酸ガスを分岐する分岐装置32と、前記分離槽6で分離された炭酸ガス溶解水に前記分岐装置32にて分岐された未溶解炭酸ガスを混入する合流点9とを設け、前記分岐装置32にて前記未溶解炭酸ガスのうち前記炭酸ガス溶解水に混入する所定量を分岐して前記合流点9に圧送することによって、前記炭酸ガス溶解水に対して、未溶解炭酸ガスを所定の割合で混入して地中の帯水層に圧入するようにしたものである。
前記分離槽6にて分離した未溶解炭酸ガスのうち、前記分岐装置32にて、前記合流点9に分岐した残りの未溶解炭酸ガスは、前記溶解槽4に戻すようにしている。
なお、本形態例では、前記溶解槽4は、炭酸ガスの溶解を促進するため複数設置したが、処理能力に応じた数とすればよい。
また、前記溶解槽4の前段には、溶解槽4での炭酸ガスの溶媒への溶解を促進するため、後段の第2形態例で詳述する細泡化装置7を設けてもよい。
前記溶解槽4は、図2に示されるように、密閉された容器10の下部に、前記炭酸ガス圧縮装置2から送られた炭酸ガスが注入される炭酸ガス注入口11と、前記溶媒圧送ポンプ3から送られた溶媒が注入される溶媒注入口12とが形成されるとともに、前記容器10の上部に前記炭酸ガス溶解水が吐出される吐出口13が形成され、前記容器10内の下方及び上方に夫々、前記容器10内を上下方向に仕切る多孔板14、14がそれぞれ配設され、前記多孔板14、14間に粒状の充填材16が充填されて構成されている。
前記充填材16は、溶媒と炭酸ガスとの撹拌を促し、炭酸ガスの溶解を効率化するためのものであり、例えば、砂、砕石、ラシヒリング、サドルの内のいずれか又は組み合わせとすることができる。前記ラシヒリングとは、セラミック、プラスチック、メタル、カーボンなどからなる円筒形状をした、充填塔で使用される充填物で、一般に広く用いられているものを使用することができる。前記サドルとは、セラミックなどからなる馬鞍形状をした、充填塔で使用される充填物で、一般に前記ラシヒリングより圧力損失が小さくなるように形成されている。
また、前記充填材16は、充填材の種類ごとに、炭酸ガス及び溶媒の流量及び前記溶解槽の形状に基づいて定められる炭酸ガス溶解量と前記溶解槽における圧力損失とから決定する最適な平均粒径とすることが好ましい。具体的には、充填材の種類ごとに、充填材の平均粒径に対する、下記の2つの関係(1)(2)を実験的に得た上で、溶解槽において許容される圧力損失(溶解槽の注入口と吐出口の間の圧力差)に対して、最も溶解量が多くなる平均粒径のものを最適な平均粒径として選定する。
(1)所定の炭酸ガス及び溶媒の流量及び溶解槽の形状において、充填材の平均粒径に対する炭酸ガス溶解量の関係。
(2)充填材の平均粒径に対する溶解槽の圧力損失の関係。
一般に、前記充填材の平均粒径に対する特性は、(1)炭酸ガス及び溶媒の流量と溶解槽の形状とが与えられれば、充填材の平均粒径を細かくするほど、炭酸ガスの溶解量は増加する。(2)一方、充填材の平均粒径を細かくするほど、溶解槽内の炭酸ガス及び溶媒の流れによる圧力損失が大きくなり、一定の流量を確保するために使用するエネルギーが増加する、という傾向がある。したがって、上記炭酸ガス及び溶媒の流量と溶解槽の形状とを総合的に勘案した上で、充填材の平均粒径を選定する。上記の最適な平均粒径の充填材16を用いることにより、炭酸ガスの溶解効率に優れるようになる。
前記容器10は、図2に示されるように、密閉された縦長の管型とすることが好ましい。これにより、溶解槽4における炭酸ガスと溶媒の滞留時間を確保することが可能になる。また、系内の前記設定圧力に対して耐圧性を有する構造とすることができるとともに、短時間で連続的かつ安定的な炭酸ガス溶解水の生成が可能となる。
ここで、溶解槽4内の流れについて説明すると、前記炭酸ガス注入口11及び溶媒注入口12から容器10内に圧送された炭酸ガス及び溶媒は、下方ホッパー部17で混合されるとともに下方側多孔板14から均等に充填材16の充填領域に浸入する。前記充填材16の充填領域においては、充填材16間での流動と相まって溶媒と炭酸ガスとが充分に撹拌されて溶媒に炭酸ガスが溶解されるとともに、上方に流動していく。この作用により、上方側多孔板14に到達したときには、溶媒に炭酸ガスがほぼ溶解された炭酸ガス溶解水が生成され、溶媒の飽和溶解レベルにまで達するようになる。その後、上方側多孔板14から上方ホッパー部18に浸入した炭酸ガス溶解水は、吐出口13から吐出される。
前記溶解槽4においては、前記充填材16の充填領域内に、流路を仕切るように多数の開孔が形成された整流板19を1又は複数設けるようにするのが望ましい。前記整流板19を設けることにより、充填材16による炭酸ガスと溶媒との流れが均一に整えられ、両者の接触機会の増大により、前記溶解槽4における炭酸ガスの溶解が向上するようになる。前記溶解槽4における滞留時間と炭酸ガス溶解量とは、飽和濃度レベルまでは概ね比例的関係にあるため、所定の操業条件の下で、目標溶解量に応じた滞留時間となるように装置規模を設定するのが望ましい。
前記分離槽6は、図3に示されるように、密閉された容器20の内部に下面から所定高さで立設し、前記溶解槽4を通過した炭酸ガス溶解水の流路と接続した流入管21が設けられ、概ね前記炭酸ガス溶解水で容器20内が満たされて、未溶解炭酸ガスが上方側に重力分離されるとともに、前記容器20の上部に、前記未溶解炭酸ガスを吐出する未溶解炭酸ガス吐出口22が形成され、前記容器20の下方に、前記未溶解炭酸ガスが分離された後の炭酸ガス溶解水を吐出する炭酸ガス溶解水吐出口23が形成されて構成されている。
溶解槽1基当たりの溶媒及び炭酸ガスの各流量は、溶解槽4の容積と炭酸ガス及び溶媒の溶解槽4内の滞留時間によって定めた全体流量に対して、注入する炭酸ガス及び溶媒の重量比(炭酸ガス重量/溶媒重量)から求めることができる。この際、炭酸ガス及び溶媒の重量比は、所望の炭酸ガスの溶解量に基づいて定められる。この炭酸ガス及び溶媒の重量比と炭酸ガスの溶解量との関係については、予め行われる通水試験によって求めておく。
後段の実施例で詳述するように、前記溶解槽4での溶解濃度は、注入される炭酸ガス及び溶媒の重量比(炭酸ガス重量/溶媒重量)に影響する。具体的には、注入される前記重量比が大きくなると、溶解槽4での溶解濃度が大きくなる傾向にあるため、炭酸ガスの溶解を促進させる目的で、炭酸ガス及び溶媒の注入重量比は、前記炭酸ガス溶解濃度の目標値より大きく設定することが好ましい。
(炭酸ガスの地中貯留方法)
次に、上記第1形態例に係る地中貯留システム1Aを用いて炭酸ガス溶解水及び未溶解炭酸ガスを地中に貯留・隔離する地中貯留方法について説明する。
先ずはじめに、地中貯留システム1Aによって注入された炭酸ガス溶解水及び未溶解炭酸ガスの帯水層内における貯留・隔離の原理について説明する。
前記未溶解炭酸ガスを所定の割合で混入した炭酸ガス溶解水を地中の帯水層に圧入すると、前記炭酸ガス溶解水及び未溶解炭酸ガスは、帯水層内において、2相流体の相対浸透率に従い、所定の貯留領域を形成して貯留・隔離される。具体的には、図4及び図5に示されるように、注入井5の周囲に前記炭酸ガス溶解水とともに前記未溶解炭酸ガスを貯留・隔離する第1貯留領域が形成されるとともに、この第1貯留領域を取り囲むように同心円状に前記炭酸ガス溶解水のみを貯留・隔離する第2貯留領域が形成される。なお、図5では模式的に各貯留領域が高さhに亘って同一の断面積A1、A2を形成し、均等に平面状に拡散するように図示されているが、実際には注入井5の帯水層における開口部を中心として前記第1貯留領域及び第2貯留領域が同心円状に拡散すると予測される。
さらに具体的に帯水層内における流動について詳述すると、前記炭酸ガス溶解水に混入して圧入された未溶解炭酸ガスは、図6に示されるように、注入井5付近から地盤材料(砂、砂岩など)の間隙に、地盤条件に応じた一定割合の炭酸ガス飽和率で捕捉(トラップ)される。ある区間に、地盤条件に応じた一定割合の炭酸ガス飽和率を超えて未溶解炭酸ガスが圧入されると、未溶解炭酸ガスが捕捉(トラップ)される範囲は、注入井5より順次遠方に拡大していく。
一方、炭酸ガス溶解水は、圧入により、注入井5付近から地盤材料の間隙内の地下水と置換されて、注入地点よりその注入範囲が順次遠方へ拡大していく。
すなわち、炭酸ガス溶解水と未溶解炭酸ガスとの質量割合を適切に決定して地中に圧入することにより、未溶解炭酸ガスを地盤材料の間隙内に一定割合で残留トラップさせることができるとともに、飽和濃度レベル付近の高い濃度で炭酸ガスが溶解され、周辺地下水より比重が大きくなった炭酸ガス溶解水を帯水層内に溶解トラップさせることができる。このように、圧入された炭酸ガス溶解水及び未溶解炭酸ガスは、それぞれ長期的かつ安定的に帯水層内に貯留・隔離させることができるようになる。
このような条件の下、本地中貯留方法において、炭酸ガス溶解水に混入する未溶解炭酸ガスの質量割合Rを決定する方法について詳説する。
前記質量割合Rを決定する手順は、図7に示されるように、大きく分けて次の3つの手順からなる。
(1)第1手順:帯水層の炭酸ガスの体積飽和率SCO2の設定
第1手順では、帯水層の間隙率、地下水圧、温度等を考慮して、前記帯水層から採取した原地盤材料を用いた室内試験によって、帯水層の間隙体積に占める貯留可能な未溶解炭酸ガスの体積割合として定義付けられる炭酸ガスの体積飽和率SCO2を測定するか、蓄積された実績データに基づいて前記炭酸ガスの体積飽和率SCO2を推定する。
前記室内試験による炭酸ガスの体積飽和率SCO2の設定方法について説明すると、実験では、図8に示されるように、炭酸ガスボンベ30の炭酸ガスを炭酸ガス圧縮装置33によって加圧して溶解槽35に注入するとともに、塩水タンク31の塩水を溶媒圧送ポンプ34によって加圧して溶解槽35に注入したとき、この溶解槽35に充填された充填材を帯水層内の地盤材料に見立てて、溶解槽35内に存在している未溶解炭酸ガスの量を推定することにより、炭酸ガスの体積飽和率の経時変化を求めた。ここで、溶解槽35の容積は410mlとし、地盤材料を模擬した充填材は、充填材Aとして材質がガラスビーズ、平均粒径が0.60mmのもの、充填材Bとして材質が粒状体砂、平均粒径が0.18mmのものの2種類について実験を行った。前記溶解槽35の後段には「炭酸ガス溶解水」と「未溶解炭酸ガス」とに分離する分離槽36が設置されている。試験圧力を10MPa、塩水流量を15ml/分一定とし、試験温度及び充填材16の種類をそれぞれ変化させたとき、炭酸ガスの体積飽和率及び分離槽36にて分離した炭酸ガス溶解水を大気圧に開放することにより炭酸ガス溶解量の経時変化を測定した。
前記炭酸ガスの体積飽和率SCO2は、〔溶解槽4内に存在している未溶解炭酸ガスの体積〕/〔多孔質体の間隙体積〕から求めた。ここで、〔溶解槽4内に存在している未溶解炭酸ガスの体積〕は、σ:溶解槽4に注入した炭酸ガス量、σ:溶解槽4から流出する未溶解炭酸ガス量、σ:溶解槽4から溶媒に溶解して流出する炭酸ガス量、σ:溶解槽4内で溶媒に溶解して存在している炭酸ガス量とすると、(σ−(σ+σ+σ))により推定可能である。
この結果、図9〜図12に示されるように、地盤材料(充填材)の間隙内に留まる未溶解炭酸ガスの体積(炭酸ガスの体積飽和率)は、経時的に増加した後、一定値に収束する。この収束した値を前記炭酸ガスの体積飽和率SCO2とすることができる。
一方、図9〜図12の結果からも明らかなように、多孔質体のような地盤では、未溶解炭酸ガスを混入して圧入することにより、前記未溶解炭酸ガスが地中の間隙内に残留トラップして、安定的に捕捉可能となることが確認された。
また、図13〜図16に示されるように、多孔質体の間隙内に留まる未溶解炭酸ガスの体積飽和率が一定になることにより、炭酸ガスの溶媒への溶解量も一定になる。
(2)第2手順:帯水層における第1貯留領域の体積Vと第2貯留領域の体積Vの設定
第2手順では、帯水層の分布(面積、層厚)、間隙率、地下水圧、温度、炭酸ガスの飽和率、炭酸ガス溶解水の炭酸ガスの質量割合等を考慮して、帯水層において、注入井5の周囲に炭酸ガス溶解水とともに未溶解炭酸ガスを貯留・隔離する第1貯留領域の体積Vと、この第1貯留領域を取り囲むように同心円状に炭酸ガス溶解水を貯留・隔離する第2貯留領域の体積Vとの体積比V/Vを設定する。ここで、帯水層に形成される第1貯留領域及び第2貯留領域が、図4及び図5に示されるように、所定高さhに亘って同一の断面積A、Aであるとすると、第1貯留領域の体積V=A×h、第2貯留領域の体積V=A×hであるから、前記体積比V/Vは面積比A/Aで表すことができる。
前記体積比V/V(面積比A/A)を設定することにより、下式(1)、(2)から各領域の炭酸ガスの貯留質量が求まり、必要な未溶解炭酸ガスの注入量を設定することができるようになる。
(3)第3手順:注入する炭酸ガス溶解水に混入する未溶解炭酸ガスの質量割合Rの決定
第3手順では、帯水層の分布(面積、層厚)、間隙率、地下水圧、温度、浸透率、炭酸ガス溶解水及び炭酸ガスの相対浸透率、毛管圧特性、地下水塩濃度等の帯水層における各種特性や、炭酸ガス溶解水及び未溶解炭酸ガスの圧入量等を考慮して、注入する炭酸ガス溶解水に混入する未溶解炭酸ガスの質量割合Rを決定する。
前記質量割合Rは、以下の計算方法による。
CO2:未溶解炭酸ガスの体積飽和率(帯水層間隙に占める未溶解炭酸ガスの体積割合)
:炭酸ガス溶解水の体積飽和率(帯水層間隙に占める炭酸ガス溶解水の体積割合)
ρCO2:未溶解炭酸ガスの密度
ρ:炭酸ガス溶解水の密度
CO2 :炭酸ガス溶解水に溶解している炭酸ガスの質量割合(炭酸ガスの質量分率)
×h:第1貯留領域の体積
×h:第2貯留領域の体積
φ:帯水層の間隙率
この場合、第1貯留領域における炭酸ガス(未溶解炭酸ガス及び炭酸ガス溶解水に溶解している炭酸ガス)の貯留質量Wは、次式(1)により計算できる。なお、添字Iは、第1貯留領域における各値であることを示す。
Figure 0005267810
上式(1)において、第1項の(A 1 ×h×φ×S CO2I ×ρ CO2I )(以下、a式)は、第1貯留領域における未溶解炭酸ガスの質量であり、第2項中の(A1×h×φ×S SI ×ρ SI )(以下、b式)は、第1貯留領域における炭酸ガス溶解水の質量である。
また、第2貯留領域における炭酸ガス(炭酸ガス溶解水に溶解している炭酸ガス)の貯留質量Wは、次式(2)により計算できる。なお、添字IIは、第2貯留領域における各値であることを示す。
Figure 0005267810
上式(2)中、(A 2 ×h×φ×S SII ×ρ SII )(以下、c式)は、第2貯留領域における炭酸ガス溶解水の質量である。
上式(1)、(2)から、注入する炭酸ガス溶解水に混入する未溶解炭酸ガスの質量割合Rは、(第1貯留領域における未溶解炭酸ガスの質量)(a式)/((第1貯留領域における炭酸ガス溶解水の質量)(b式)+(第2貯留領域における炭酸ガス溶解水の質量)(c式))となるから、前記質量割合Rは次式(3)により算定できる。
Figure 0005267810
ここで、前記質量割合Rの変化を見るために、
SI=1−SCO2I SII=1ρSI=ρSII すると、前記質量割合Rは、次式(4)のように変形できる。
Figure 0005267810
以上の通り、帯水層の炭酸ガスの体積飽和率SCO2を設定するとともに、帯水層における第1貯留領域と第2貯留領域の体積比V/V(面積比A/A)を設定することにより、上式(3)又は(4)から、注入する炭酸ガス溶解水に混入する未溶解炭酸ガスの質量割合Rが算定できるようになる。
このとき、第2貯留領域と第1貯留領域の面積比A/Aと炭酸ガスの体積飽和率SCO2をパラメータとして、帯水層の水圧を10MPa、温度を40℃とした場合について、炭酸ガス溶解水に混入する未溶解炭酸ガスの質量割合Rの変化を計算した結果を図17に示す。
同図17に示されるように、前記第2手順において目標とする第1貯留領域と第2貯留領域の体積を設定することにより、地盤条件に応じた炭酸ガス溶解水に混入する未溶解炭酸ガスの質量割合Rが算定できる。この図17の結果、同時に圧入する未溶解の炭酸ガスと溶媒質量の割合は、帯水層における炭酸ガスの貯留量、炭酸ガス飽和率、帯水層の間隙率・地下水圧・温度等の条件に応じて、最大25%程度まで上げることが可能と判断される。
このように、飽和濃度付近で溶解した炭酸ガス溶解水と併せて未溶解炭酸ガスを帯水層に圧入できるため、溶媒の使用量を減らすことが可能となり、溶媒を確保するために必要なコスト及び溶媒を圧送するコストを削減することが可能となる。例えば、帯水層へ圧入する未溶解炭酸ガスの質量を溶媒質量の5%とすると、溶媒に溶解する炭酸ガスの質量比率が4〜5%、未溶解で貯留される炭酸ガスの質量比率が5%となる。この場合、炭酸ガスを全量溶解する場合に比べて、貯留に必要な溶媒の質量比率は、約44〜50%に抑えることができる。
また、帯水層の地質状況が複雑な場合(場所によって地盤条件が異なる場合など)には、地質状況に応じて区分して、各区分における炭酸ガスの貯留状況を計算し、集約することで同様に求めることができる。
上式(3)又は(4)によって算定した質量割合Rについて、次に述べるように種々の判断要素を考慮して、帯水層に注入する炭酸ガス溶解水に混入する未溶解炭酸ガスの質量割合Rを最終的に決定する。
第1の判断要素として、図7に示されるように、圧入浸透流解析による帯水層内における炭酸ガス溶解水と未溶解炭酸ガスの貯留状況を確認した上で注入可能か判断する。すなわち、帯水層の地盤条件について、水飽和率に対する炭酸ガス溶解水の相対浸透率及び未溶解炭酸ガスの相対浸透率を表す線図を得ておき、任意の水飽和率における炭酸ガス溶解水及び未溶解炭酸ガスの浸透率から帯水層内の流動をシミュレーションし、注入可能か否かを判別する。例えば、注入圧力が実現可能な圧力を超えた等の場合、未溶解炭酸ガスの混入割合及び/又は注入範囲を変更して再度前記質量割合Rを算定する。
第2の判断要素として、同図7に示されるように、注入可能な注入条件を得た場合に、未溶解炭酸ガスを混入する効果について、主に経済性などの面から評価する。例えば、未溶解炭酸ガスを混入するための設備建設コストや使用エネルギー、さらには混入させる溶媒(海水及び/又は水)の使用量などを考慮して、これらのコスト及びエネルギーが過大とならないか、最適な貯留条件であるかを判断する。最適な貯留条件でない場合には、未溶解炭酸ガスの混入割合を変更して再度前記質量割合Rを算定する。最適な貯留条件である場合には、その質量割合Rを、注入する炭酸ガス溶解水に混入する未溶解炭酸ガスの質量割合Rとして決定する。
〔第2形態例〕
次に、第2形態例に係る炭酸ガスの地中貯留方法について説明する。本第2形態例では、前述の第1形態例と比較して、使用する地中貯留システムが相違している。具体的には、本第2形態例では、溶解槽から吐出された炭酸ガス溶解水を未溶解炭酸ガスを含んだそのままの状態で、地中の帯水層に圧入している。
(炭酸ガスの地中貯留システム1B)
炭酸ガスの地中貯留システム1Bは、図18に示されるように、炭酸ガスを液体又は超臨界状態まで圧縮する炭酸ガス圧縮装置2と、海水及び/又は水からなる溶媒を圧縮・搬送する溶媒圧送ポンプ3と、前記圧縮された炭酸ガス及び溶媒が注入され、前記溶媒に前記炭酸ガスを溶解させて炭酸ガス溶解水とする複数の溶解槽4、4…と、生成された炭酸ガス溶解水を地中の帯水層に圧入するために地表面から前記帯水層まで貫入させた注入井5とから主に構成され、前記溶解槽4から吐出された炭酸ガス溶解水を未溶解炭酸ガスを含んだそのままの状態で、地中の帯水層に圧入するようにしたものである。また、前記溶解槽4の前段には、液体又は超臨界状態まで圧縮された炭酸ガスを細泡化して溶媒中に混入させる細泡化装置7、7…が設けられている。
前記細泡化装置7は、液体又は超臨界状態まで圧縮した炭酸ガスを細泡化して溶媒中に混入させ、炭酸ガスと溶媒との接触面積の増大化により炭酸ガスの溶解を促進させるためのものである。この細泡化装置7は、単独で使用されるか、好ましくは後述のように、溶解槽4と組み合わせて使用される。
前記細泡化装置7としては、図19に示されるように、海水及び/又は水を溶媒として、これらの溶媒を所定の高流速で流した主流管路30に対して、これを外嵌する炭酸ガス供給管路31を配設し、前記溶媒と炭酸ガスとを仕切る管路壁面、図示例の場合は主流管路30の管路壁面に細孔30a、30a…を形成し、前記主流管路30を流れる溶媒のせん断力によって、液体又は超臨界状態まで圧縮した炭酸ガスを細泡化しながら混入させる細泡化装置7Aとすることができる。
前記細孔30aは、複数配置する場合は、図示されるように、主流管路30の管路壁面に、周方向に均等配置としかつ軸方向に間隔を空けて多段配置で複数設けるのが望ましい。
前記溶媒の流速、前記細孔30aの孔径は、後述の実施例2−3に従って、下式(5)によって求められるウェーバー数(We)が10以上となるように設定するのが望ましい。但し、細孔からの炭酸ガスの流速は、8×10−2m/s以上であることを条件とする。
Figure 0005267810
なお、前記細泡化された炭酸ガスの径は、概ね0.05〜0.2mm程度で十分であり、特にマイクロレベル(10〜数十μm)までは細泡化する必要はない。
また、細泡化装置7B、7Cとして、図20及び図21に示されるように、溶媒を所定の高流速で流した主流管路30の内部に、炭酸ガス供給管路31を配設し、前記溶媒と炭酸ガスとを仕切る管路壁面、図示例の場合は炭酸ガス供給管路31の管路壁面に細孔31a、31a…を形成し、前記主流管路30を流れる溶媒のせん断力によって液体又は超臨界状態まで圧縮した炭酸ガスを細泡化しながら混入させるものであってもよい。
この細泡化装置7を地中貯留システム1Bに組み込む場合、図22に示されるように、各溶解槽4の下部に設置され、溶媒を所定の高流速で流した主流管路30の内部に、炭酸ガス供給管路31を配設し、前記溶媒と炭酸ガスとを仕切る炭酸ガス供給管路31の管路壁面に細孔31a、31a…を形成し、前記主流管路30を流れる溶媒のせん断力によって液体又は超臨界状態まで圧縮した炭酸ガスを細泡化しながら混入させる細泡化装置7とすることができる。
前記溶解槽4は、同図22に示されるように、密閉された容器10の下部に、前記細泡化装置7によって細泡化された炭酸ガスが混入された溶媒が注入される注入口9とが形成されるとともに、前記容器10の上部に前記炭酸ガス溶解水が吐出される吐出口13が形成され、前記容器10内の下方及び上方に夫々、前記容器10内を上下方向に仕切る多孔板14、14がそれぞれ配設され、前記多孔板14、14間に粒状の充填材16が充填されて構成されている。また、前記注入口9にはメッシュ板15が設置されている。
(炭酸ガスの地中貯留方法)
次に、上記第2形態例に係る地中貯留システム1Bを用いた炭酸ガスの地中貯留方法について、上記第1形態例に係る地中貯留方法と異なる点を説明する。
図23に示されるように、第2形態例に係る地中貯留方法は、上記第1形態例に係る地中貯留方法に対して、未溶解炭酸ガスの質量割合Rを決定する手順において、第1手順と第2手順との間に第1’手順を有する点で相違する。
前記第1’手順では、本第2形態例に係る地中貯留システム1Bが溶解槽4から吐出された炭酸ガス溶解水を未溶解炭酸ガスを含んだそのままの状態で地中の帯水層に圧入するため、溶解槽4にて炭酸ガス溶解水に溶解する炭酸ガスの質量割合XCO2 を設定するものである。これにより、炭酸ガス溶解水に混入することになる未溶解炭酸ガスの質量割合が算定可能となる。
炭酸ガス溶解水に溶解している質量割合XCO2 は、溶解槽4にて溶媒に溶解させる炭酸ガスの質量分率であり、圧入後においては帯水層での水圧・温度・希釈等を考慮して設定される。
前記炭酸ガス溶解水に溶解している炭酸ガスの質量割合XCO2 を設定することにより、溶媒に溶解する炭酸ガスの量と混入する未溶解炭酸ガスの量とを合計した量の炭酸ガスを炭酸ガス圧縮装置2で圧送すればよく、地中貯留システム1Bに供給する炭酸ガスの量を一元的に管理できるようになる。
本地中貯留システム1による炭酸ガスの溶解状態を実証するため、図8に示される実験装置を用いて炭酸ガスの溶解実験を行った。なお、細泡化装置7は後述の実施例2の細泡化装置有りのケースにおいて設置した。
実験装置は、炭酸ガスボンベ30の炭酸ガスを炭酸ガス圧縮装置33によって加圧して溶解槽35に注入するとともに、塩水タンク31の塩水を溶媒圧送ポンプ34によって加圧して溶解槽35に注入し、溶解槽35で炭酸ガスの溶解処理を行い、この炭酸ガス溶解水を分離槽36で未溶解炭酸ガスを分離した後の炭酸ガス溶解水をサンプリングする。ここで、溶解槽35の容積は850mlとし、充填材16は、平均粒径が0.18mm(粒度1)、0.63mm(粒度2)、1.32mm(粒度3)の砂状のものを使用した。実験では、温度、圧力、塩水流量、充填材16の粒度及び炭酸ガスと塩水の重量比(炭酸ガス重量/塩水重量)をそれぞれ変化させたとき、サンプリングした炭酸ガス溶解水の炭酸ガス溶解量を測定した。
図24、図25は、各温度における塩水流量及び充填材16の粒度をそれぞれ変化させたときの溶解槽35に注入する炭酸ガス及び塩水の重量比(炭酸ガス重量/塩水重量)と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。この結果、温度29℃、33℃のいずれの試験温度においても、炭酸ガスと塩水の重量比を増大させるほど、また充填材16の粒度を小さくするほど炭酸ガス溶解量が大きくなる傾向にある。
図26〜図28は、各温度における塩水流量及び圧力をそれぞれ変化させたときの前記重量比と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。この結果、前述と同様に、炭酸ガスと塩水の重量比を増大させるほど、炭酸ガス溶解量が増大する傾向にあるが、ある重量比以上では炭酸ガス溶解量がほぼ一定の飽和濃度レベルとなり、本地中貯留システムの有効性が確認された。
図29は、各圧力における温度と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。この結果、25℃〜40℃の範囲の一般的な温度条件においては、炭酸ガス溶解量に大きく影響を及ぼさないことが確認された。また、15℃〜20℃の相対的低温条件では、炭酸ガスの溶解が促進されることが確認された。
図30は、各塩水流量における充填材の平均粒径と炭酸ガス溶解量との関係を示すグラフである。この結果、本実施例では、充填材の平均粒径は、平均粒径1.0mm以下とすることにより、炭酸ガスの溶解効率に優れるようになる。
(実施例2−1)
本実施例2−1では、本地中貯留システム1による前記細泡化装置7での溶解効果、前記溶解槽35での溶解効果を定量的に検証するための実験を行った。
実験は、ケース1:溶解槽35の充填材無し及び細泡化装置7無し、ケース2:溶解槽35の充填材無し及び細泡化装置7有り、ケース3:溶解槽35の充填材有り及び細泡化装置7有りの3ケースとし、(1)試験圧力:15MPa、試験温度:29℃、(炭酸ガス/塩水)重量比:約8%、(2)試験圧力:15MPa、試験温度:33℃、(炭酸ガス/塩水)重量比:約8%の2種類について溶解試験を行った。
その結果を図31に示す。同図31より、細泡化装置7単独によってもかなり炭酸ガスの溶解が促進されている事、更に細泡化装置7と溶解槽35とを組合せることによって、更に溶解が促進されることが実証できた。
(実施例2−2)
本実施例2−2では、前記細泡化装置7による溶解促進効果の検証実験を行った。
一般に、炭酸ガス溶解量と溶解槽の容器高さZとの間には、下式(6)の関係が成り立つことが判明している。
Figure 0005267810
溶解に要する容器の高さZは、総括容量係数Kaに依存しており、この総括容量係数Kaを溶解効率を表す指標とした。実験は、細泡化装置無しと細泡化装置有りの各ケースについて、(1)試験圧力:15MPa、試験温度:29℃、(炭酸ガス/塩水)重量比:約8%、(2)試験圧力:15MPa、試験温度:29℃、(炭酸ガス/塩水)重量比:約10%、(3)試験圧力:15MPa、試験温度:33℃、(炭酸ガス/塩水)重量比:約8%の3種類について試験を行い、図32〜図34に示されるように、縦軸を総括容量係数Ka(mol/m3・s)とし、横軸を水の断面モル流速(mol/(m2・s))とするグラフを得た。同図32〜図34のグラフによれば、水の断面モル流速(mol/(m2・s))の高い領域においては、細泡化装置有りのケースが細泡化装置無しのケースに比べて、総括容量係数Kaが1.5倍以上になることが判明した。
(実施例2−3)
上記実施例2−2の実験結果を上式(5)に示すウェーバー数Weを用いて整理し直して、図35に示されるように、縦軸を総括容量係数比Ka(B)/Ka(NB)[ここに、Ka(B):細泡化装置有りの総括容量係数、Ka(NB):細泡化装置無しの総括容量係数]、横軸をウェーバー係数Weとするグラフを得た。
同図35より、ウェーバー数Weが10以上の領域で細泡化による溶解効率が高いことが判明した。従って、前記細泡化装置7においては、溶媒の流速、細孔30a(31a)の孔径は、ウェーバー数(We)が10以上となるように設定するのが望ましい。但し、細孔からの炭酸ガスの流速は、同実験によれば、8×10−2m/s以上であることを条件とする。
1・1A・1B…地中貯留システム、2…炭酸ガス圧縮装置、3…溶媒圧送ポンプ、4…溶解槽、5…注入井、6…分離槽、7…細泡化装置、8…未溶解炭酸ガス圧送装置、9…合流点、10…容器、11…炭酸ガス注入口、12…溶媒注入口、13…吐出口、14…多孔板、15…メッシュ板、16…充填材、19…整流板、20…容器、21…流入管、22…未溶解炭酸ガス吐出口、23…炭酸ガス吐出口、30…主流管路、31…炭酸ガス供給管路、30a・31a…細孔、32…分岐装置

Claims (8)

  1. 炭酸ガスを海水及び/又は水からなる溶媒に飽和濃度付近で溶解させた炭酸ガス溶解水に対して、未溶解炭酸ガスを所定の割合で混入して地中の帯水層に圧入し、前記炭酸ガス溶解水及び未溶解炭酸ガスを地中に貯留・隔離するための炭酸ガスの地中貯留方法であって、
    前記帯水層内において、注入井の周囲に前記炭酸ガス溶解水とともに、前記未溶解炭酸ガスを貯留・隔離する第1貯留領域と、この第1貯留領域を取り囲むように同心円状に前記炭酸ガス溶解水のみによる第2貯留領域とを夫々形成するように前記炭酸ガス溶解水と未溶解炭酸ガスとを貯留・隔離する条件の下で、前記炭酸ガス溶解水に混入する未溶解炭酸ガスの質量割合を下記(1)〜(3)の手順によって決定することを特徴とする炭酸ガスの地中貯留方法。
    (1)前記帯水層から採取した原地盤材料を用いた室内試験によって、帯水層の間隙体積に占める貯留可能な未溶解炭酸ガスの体積割合として定義付けられる炭酸ガスの体積飽和率を測定するか、蓄積された実績データに基づいて前記炭酸ガスの体積飽和率を推定する第1手順。
    (2)前記第1貯留領域の体積と、前記第2貯留領域の体積とを設定する第2手順。
    (3)前記炭酸ガスの体積飽和率と前記第1貯留領域及び第2貯留領域の体積とに基づいて、炭酸ガス溶解水に混入する未溶解炭酸ガスの質量割合を決定する第3手順。
  2. 炭酸ガスを液体又は超臨界状態まで圧縮する炭酸ガス圧縮装置と、海水及び/又は水からなる溶媒を圧縮・搬送する溶媒圧送ポンプと、前記圧縮された炭酸ガス及び溶媒が注入され、前記溶媒に前記炭酸ガスを溶解させて炭酸ガス溶解水とする1又は複数の溶解槽と、前記炭酸ガス溶解水及び未溶解炭酸ガスを地中の帯水層に圧入するために地表面から前記帯水層まで貫通した注入井とから構成され、
    前記溶解槽は、密閉された容器の下部に、前記炭酸ガス圧縮装置から送られた炭酸ガスが注入される炭酸ガス注入口と、前記溶媒圧送ポンプから送られた溶媒が注入される溶媒注入口とが形成されるとともに、前記容器の上部に前記炭酸ガス溶解水が吐出される吐出口が形成され、前記容器内に粒状の充填材が充填されて構成された炭酸ガスの地中貯留システムを用いて、
    前記溶解槽から注入井に至る流路の途中に、送給された炭酸ガス溶解水の全量に対して、未溶解炭酸ガスと、炭酸ガスが飽和濃度で溶解した炭酸ガス溶解水とを分離する分離槽と、該分離槽で分離された未溶解炭酸ガスを圧送する未溶解炭酸ガス圧送装置と、該未溶解炭酸ガス圧送装置から圧送された未溶解炭酸ガスを分岐する分岐装置と、前記分離槽で分離された炭酸ガス溶解水に前記分岐装置にて分岐された未溶解炭酸ガスを混入する合流点とを設け、前記分岐装置にて前記未溶解炭酸ガスのうち前記炭酸ガス溶解水に混入する所定量を分岐して前記合流点に圧送することによって、前記炭酸ガス溶解水に対して、未溶解炭酸ガスを所定の割合で混入して地中の帯水層に圧入する請求項1記載の炭酸ガスの地中貯留方法。
  3. 炭酸ガスを液体又は超臨界状態まで圧縮する炭酸ガス圧縮装置と、海水及び/又は水からなる溶媒を圧縮・搬送する溶媒圧送ポンプと、前記圧縮された炭酸ガス及び溶媒が注入され、前記溶媒に前記炭酸ガスを溶解させて炭酸ガス溶解水とする1又は複数の溶解槽と、前記炭酸ガス溶解水及び未溶解炭酸ガスを地中の帯水層に圧入するために地表面から前記帯水層まで貫通した注入井とから構成され、
    前記溶解槽は、密閉された容器の下部に、前記炭酸ガス圧縮装置から送られた炭酸ガスが注入される炭酸ガス注入口と、前記溶媒圧送ポンプから送られた溶媒が注入される溶媒注入口とが形成されるとともに、前記容器の上部に前記炭酸ガス溶解水が吐出される吐出口が形成され、前記容器内に粒状の充填材が充填されて構成され、
    前記溶解槽から吐出された炭酸ガス溶解水を未溶解炭酸ガスを含んだそのままの状態で、地中の帯水層に圧入するようにしてある炭酸ガスの地中貯留システムを用いて、
    前記炭酸ガス圧縮装置によって圧送する炭酸ガスの質量と前記溶媒圧送ポンプによって圧送する溶媒の質量とをそれぞれ制御することによって、前記炭酸ガス溶解水に対して、未溶解炭酸ガスを所定の割合で混入して地中の帯水層に圧入する請求項1記載の炭酸ガスの地中貯留方法。
  4. 前記溶解槽の前段に、前記溶媒を所定の高流速で流した主流管路の内部に前記炭酸ガスの供給管路を配設するか、前記主流管路を外嵌する前記炭酸ガスの供給管路を配設し、前記溶媒と炭酸ガスとを仕切る管路壁面に細孔を形成し、前記主流管路を流れる溶媒のせん断力によって前記炭酸ガスを細泡化しながら混入させる高圧用炭酸ガス細泡化装置が設置されている請求項3記載の炭酸ガスの地中貯留方法。
  5. 下式(5)によって求められるウェーバー数(We)が10以上となるように、前記溶媒の流速、前記細孔の孔径が設定されている請求項4記載の炭酸ガスの地中貯留方法。
    Figure 0005267810
  6. 前記溶解槽に充填される粒状の充填材として、砂、砕石、ラシヒリング、サドルの内のいずれか又は組合せとする請求項2〜5いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留方法。
  7. 前記溶解槽に充填される粒状の充填材は、充填材の種類毎に、炭酸ガス及び溶媒の流量及び溶解槽の形状において、充填材の平均粒径に対する炭酸ガス溶解量の関係と充填材の平均粒径に対する溶解槽の圧力損失の関係とを得た上で、前記溶解槽において許容される圧力損失に対して、最も溶解量が多くなる平均粒径のものを選定してある請求項2〜6いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留方法。
  8. 前記溶解槽において、前記充填材の充填領域内に、流路を仕切るように多数の開孔が形成された整流板が1又は複数設けられている請求項2〜7いずれかに記載の炭酸ガスの地中貯留方法。
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