以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
(液晶表示装置100)
図1は、液晶表示装置100の概略的な構成を示した機能ブロック図である。液晶表示装置100は、液晶パネル120と、バックライト122と、映像取得部124と、逆ガンマ補正部126と、最大階調取得部128と、調整導出部130と、特性保持部132と、ゲインフィルタ部134と、フィルタ調整部136と、ガンマ補正部138と、フレームメモリ140と、乗算部142と、タイミング制御部144と、データ信号線駆動部146と、ゲート信号線駆動部148と、発光量導出部152と、ホワイトバランス調整部154と、PWM(Pulse-Width Modulation )タイミング発生部156と、バックライト駆動部160と、電源部162と、乗算階調取得部170と、超過画素取得部172と、補正値導出部174と、選択部176と、を含んで構成される。
液晶パネル120は、2枚のガラス基板を張り合わせてその間に液晶材料を封入し、ガラス基板の外側に偏光板を張り付けたものである。液晶パネル120に電圧が印加されるとその電圧に応じて液晶パネル120の液晶材料の分子の向きが変更され、入射光が一部遮光される。すなわち、液晶パネル120に印加する電圧を調整することでその液晶パネル120を透過する光の透過率を変更することができる。液晶パネル120は、このような透過率の変更によって後述する映像取得部124で取得された映像データを表示する。
液晶パネル120には、透過したバックライトの光を用いて画像の表示を行う透過型液晶パネル(transmissive liquid crystal panel)、外光の反射とバックライトの両方を使い分ける半透過型液晶パネル(semi-transmissive liquid crystal panel)等があり、本実施形態では、説明の便宜上、透過型液晶パネルを用いている。
バックライト122は、映像データを区画(分割)した1または複数のブロックそれぞれに対応した複数の光源(本実施形態においてはLED(Light Emitting Diode))で構成され、液晶パネル120の背面側に配置されている。そして、バックライト122は、後述する発光量導出部152で調整されたブロック毎の発光量に応じて、各ブロックに対応した光源を発光し、液晶パネル120を照射する。
図2は、映像データを区画した複数のブロック202を説明するための説明図である。液晶パネル120の表示領域の画素数が、水平画素数1920×垂直画素数1080の場合、映像データも液晶パネル120の表示領域に合わせ水平画素数1920×垂直画素数1080で形成される。ここで、映像データ(表示領域)は、例えば、水平方向に16分割、垂直方向に8分割した128個のブロックに区画される。したがって、映像データの各ブロックは、16200画素(水平画素数120×垂直画素数135)で構成される。
本実施形態では、理解を容易にするため、図2(a)に示すように、液晶パネル120の表示領域200を水平画素数40×垂直画素数40とし、表示領域200に合わせて形成される映像データを水平方向に4分割、垂直方向に4分割した16個のブロック202に区画する例を挙げて説明する。したがって、ブロック202は、それぞれ100画素(水平画素数10×垂直画素数10)で構成される。
そして、図2(a)に示す例では、バックライト122は、ブロック202それぞれに対応した16の光源を含んで構成されることになる。
映像取得部124は、DVDプレーヤ等のAV(Audio and Visual)機器、放送チューナ、パーソナルコンピュータ等の外部機器220から既にガンマ補正が施されている映像データを取得する。
逆ガンマ補正部126は、映像取得部124が取得した既にガンマ補正が施されている映像データに対して、ガンマ補正前の階調となるように逆ガンマ補正を施す。
最大階調取得部128は、逆ガンマ補正部126が逆ガンマ補正を施した映像データの複数のブロック202(映像データをブロック202で区画したもの(部分映像データ))それぞれにおける最大階調を取得する。最大階調は、各ブロック202に対応する部分映像データにおける、画素毎の階調(輝度値)のうち、最大値となるものをいい、図2(b)に例示したように、複数のブロック202それぞれにおいて1つの値が取得される。
本実施形態において、最大階調取得部128は、映像データの各ブロック202の最大階調を毎フレーム検出しているが、かかる場合に限られず、その検出タイミングを所定数のフレーム毎や所定時間毎としてもよい。
調整導出部130は、映像データのブロック202毎に、後述する選択部176によって選択された、最大階調取得部128が取得した最大階調または補正値のいずれか一方と、上限階調とに基づいて、映像データに乗じるゲイン値と光源の上限発光量(定格発光量)を除する除算値とを導出する。ここで、上限階調は、映像データのフォーマットによって特定される階調が取りうる範囲の上限値であり、上限発光量は光源の最も高い発光量である。ただし、最大階調は、計算上一時的に上限階調を上回る値をとる場合がある。そして、調整導出部130は、導出したゲイン値をゲインフィルタ部134に出力する。選択部176および補正値については、後に詳述する。
ところで、液晶パネル120に映像データを表示するとき、大きく分けて2つの手段が用いられる。一方は、バックライト122の光源の発光量を上限発光量で固定する手段であり、他方は、映像データにゲイン値を乗算して階調を高く補正し、その分バックライト122の光源の発光量を下げる手段である。両手段とも液晶パネル120の前面から発せられる光量は等しくなるが、前者の手段では、光源が上限発光量で発光し続けるので消費電力が比較的高くなる。そこで、本実施形態では後者の手段を用いて消費電力の低減を図る。
そこで、例えば、上限階調の設定が255である場合に、最大階調が51である映像データのブロック202を取得したとする。調整導出部130は、上限階調/最大階調(ここでは5)をゲイン値および除算値として導出する。そして、乗算部142は、調整導出部130が導出したゲイン値を、映像データのブロック202中の全画素の階調に乗算して(例えば映像データのブロック202のうち最大階調(ここでは51)を有する画素の階調を255とする)、発光量導出部152は、そのブロック202に対応する光源の上限発光量を除算値で除した発光量を導出する。そして、液晶パネル120は、ゲイン値が乗算された映像データの階調に基づいて液晶パネル120の透過率を調整し、バックライト122は、除算値で除算された発光量で光源を発光する。この処理はブロック202毎に行われる。ただし、ここでは理解を容易にするため、逆ガンマ補正およびガンマ補正の影響がないゲイン値および除算値を例に挙げているが、具体的には、調整導出部130は、逆ガンマ補正が施された映像データに基づいてゲイン値および除算値を導出し、ゲイン値は、後述するようにガンマ補正が施された後、映像データに乗算される。
このように、映像データの階調を高く補正すれば、バックライト122の光源の発光量を上限発光量より低くしたとしても、視聴者は、映像データに予め設定された階調に対応した光量で映像データを視認することができる。したがって、映像データの本来の階調を維持したまま、バックライト122の消費電力を低減することが可能となる。
また、調整導出部130は、ブロック202における最大階調に基づいてゲイン値を導出し、そのブロック202のゲイン値を基準値とした上で、ブロック202内の画素毎に個別のゲイン値を導出する。
図3は、ブロック202a内におけるバックライト122による光量の分布を説明するための説明図である。図3(b)では、図3(a)で示されたブロック202aの中心部204を通る直線206上の画素の位置を横軸に、その画素の位置で実際に得られる光量を縦軸にとっている。図3(c)では、上述した直線206上の画素の位置を横軸に、その画素に表示される映像データに乗算するゲイン値を縦軸にとっている。ここでは、説明の便宜上、1つのブロック202aに配置される光源は1つであり、映像データのブロック202a内のすべての画素の階調は等しいとする。
上述したように、調整導出部130は、ブロック毎に除算値を導出する、すなわち光源毎に1つの除算値を導出する。しかし、図3(b)に示すように、1つのブロック202a内において、そのブロック202aの各画素で実際に得ることができる光量は均等ではなく、光源に対応する位置(ここでは中心部204)で光量が最も高くなり、ブロック202aの端部に推移するに連れて光量が減少する。上述したように、ブロック202aの中心部204におけるゲイン値は除算値と同じ値となる。したがって、液晶パネル120の前面から発せられる光量を均等にするためには、図3(c)に示すように、中心部204から端部に推移するに連れて、光量が減少する分だけゲイン値を高く設定しなければならない。そのため、調整導出部130は、図3(c)のゲイン値の分布に基づいて、ブロック202aの端部の画素のゲイン値を中心部204の画素のゲイン値よりも大きく設定する。
また、本実施形態の液晶表示装置100は、任意のブロック202の光源から発せられた光が他のブロック202に漏れ出ることを許容する構造を有する。こうすることで、それぞれのブロック202間の明るさや色味のばらつきを抑えることができる。ただし、他のブロック202に漏れ出ることを許容しているので、各画素のゲイン値は、ブロック202a自体に対応した光源のみならず他の光源から漏れ出た光量も考慮して設定しなければならない。そこで、調整導出部130は、特性保持部132を利用して、以下のようにゲイン値を設定する。
特性保持部132は、各ブロック202の輝度分布特性を示す輝度ビットマップを保持する。例えば、任意のブロック202の任意の画素において、光量は、ブロック202自体に対応した光源で発せられた光量と、その周囲のブロック202の光源から漏れ出た光量との和となる。輝度分布特性は、このような光量の分布特性(輝度分布特性)を示す。調整導出部130は、特性保持部132に保持された輝度ビットマップに基づいて、ブロック202毎の映像データに乗じるゲイン値を、画素毎に設定する。
ゲインフィルタ部134は、ローパスフィルタであり、調整導出部130が導出したゲイン値および光源の上限発光量を除する除算値の変化を平滑化する。そのため、ゲインフィルタ部134は、ゲイン値を乗じた映像データの階調や光源の発光量の急激な変化を抑え、フリッカーを抑制することができる。
フィルタ調整部136は、最大階調取得部128から出力された最大階調の変化に応じて、ゲインフィルタ部134の特性を調整する。具体的に、例えば、ゲインフィルタ部134が積分回路で構成されている場合、フィルタ調整部136は、その積分回路の時定数τ(または積分定数a)を変更し、映像のシーンチェンジ等による最大階調の変化に、ゲインフィルタ部134を通過したゲイン値が適切に追従するように調整する。
また、本実施形態のフィルタ調整部136は、乗算階調取得部170が取得した乗算後最大階調または超過画素取得部172が取得した超過画素数に応じて、ゲインフィルタ部134のフィルタ特性を調整する。乗算階調取得部170、超過画素取得部172、および乗算後最大階調または超過画素数に基づくゲインフィルタ部134のフィルタ特性の調整については、後に詳述する。
ガンマ補正部138は、実際の表示輝度と映像データの階調とが比例するように、ゲインフィルタ部134を通過したゲイン値に対してガンマ補正を行う。
図4は、映像データの階調と実際の表示輝度との関係を説明するための説明図である。図4に示すように、液晶パネル120に表示される映像の表示輝度は、映像データの階調に対して比例関係ではなく、液晶パネル120によって異なる特性を示し、例えば、ガンマ値2.2〜2.4のガンマ曲線で示される関係となる。そのため、映像データの階調が128であっても、実際の表示輝度は128より小さい値となり暗くなってしまう。ガンマ補正は、このように実際の表示輝度が映像データの階調よりも暗くなってしまう事態を回避するため、映像データの階調を高く補正する処理である。
例えば、ガンマ値が2.2であり、最大階調取得部128が取得した最大階調が128(上限階調は255)である場合、仮に最大階調である128をガンマ補正するとガンマ補正後の最大階調は186となる。
このように最大階調取得部128が取得した最大階調を直接、補正できれば理解が容易であるが、本実施形態においては、調整導出部130が出力した(正確にはゲインフィルタ部134が出力した)ゲイン値がガンマ補正の対象となる。
ガンマ補正部138は、液晶パネル120の特性(ガンマ曲線)に基づいて、最大階調取得部128が取得した最大階調と、その最大階調に対応する画素の最終的な表示輝度が比例するように(リニアに変化するように)ゲイン値を補正する。したがって、ガンマ補正部138によるゲイン値の補正は、最大階調のガンマ補正に相当する。そして、ガンマ補正部138は、そのように計算されたゲイン値を乗算部142に出力する。
例えば、上述したガンマ値が2.2、上限階調が255である場合、ガンマ補正前の最大階調である128に基づくゲイン値は2であり、ガンマ補正後の最大階調である186に基づくゲイン値は1.37である。調整導出部130は、ガンマ補正前の最大階調128に基づくゲイン値である2をガンマ補正部138に出力する。そして、ガンマ補正部138は、調整導出部130から出力されたゲイン値(ここでは2)を、ガンマ補正後の最大階調(ここでは186)に基づくゲイン値(ここでは1.37)に補正する。本実施形態において、かかるガンマ補正部138によるゲイン値の補正処理もガンマ補正に相当する。
フレームメモリ140は、RAM、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成され、映像取得部124が取得した映像データをフレーム毎に一時的に保持する。
乗算部142は、フレームメモリ140から出力された映像データのブロック単位で、ブロック中の全画素の階調にガンマ補正部138から出力されたゲイン値を乗じ、乗算された映像データをタイミング調整部144に出力する。
タイミング制御部144は、データ信号線駆動部146とゲート信号線駆動部148とを制御して、乗算部142から出力された映像データを液晶パネル120に書き込む。液晶パネル120の各画素の垂直方向のラインに対応して配置されたデータ信号線にはデータ信号線駆動部146が接続され、水平方向のラインに対応して配置されたゲート信号線にはゲート信号線駆動部148が接続されている。そして、データ信号線駆動部146とゲート信号線駆動部148とによって特定される画素毎に、映像データの階調に合わせて透過率が調整されることで、映像データが書き込まれる。こうして、液晶パネル120に映像データが表示される。
発光量導出部152は、発光量の上限値である発光上限値を、ゲインフィルタ部134を通過した除算値で除した発光量を光源毎に導出する。後述するバックライト駆動部160は、発光量導出部152が導出した発光量に基づき、電源部162から取得した電力を用いてバックライト122の光源を発光させる。
例えば、最大階調取得部128が取得した最大階調が128(上限階調は255)である場合、発光量導出部152は、最大階調である128を上限階調の255で除算した値0.5を発光量としてホワイトバランス調整部154に出力する。
この発光に伴いバックライト122の光源が発熱し温度変化が生じる。バックライト122の温度が変化すると光源から発せられる光の輝度が変化することがある。そこで、ホワイトバランス調整部154は、バックライト122の温度と調整量との関係を示す温度データを用い、温度センサを通じて取得したバックライト122の温度に基づいて、発光量を調整する。また、ホワイトバランス調整部154は、カラーセンサが検出した光の色温度を示す色温度データも参照し、最適なホワイトバランスとなるよう発光量を調整する。
PWMタイミング発生部156は、ホワイトバランス調整部154より出力された、ブロック202毎のバックライト122の光源の発光量に基づいて、パルス幅変調信号を発生させるタイミングと、発光量(発光時間)を調整するためのパルス幅とを含むPWMタイミングデータを生成し、バックライト駆動部160に出力する。バックライト駆動部160はPWMタイミングデータに基づいてパルス幅変調信号である駆動信号を生成し、その駆動信号によってバックライト122の光源を発光させる。
本実施形態において、PWMタイミング発生部156がパルス幅変調信号によって光源の発光量を制御することとしたが、かかる場合に限定されず、光源に流す電流を調整することで発光量を制御してもよい。
上述したように、液晶表示装置100は、映像データの最大階調および上限階調に基づいてゲイン値や除算値を導出して、映像データの階調や光源の発光量を調整して映像データを映像化する。
しかし、ゲイン値の導出処理に費やす時間やフリッカー低減のためのゲインフィルタ部134の影響でゲイン値が映像データに対して遅延する場合、現在の高い階調と、過去の階調に基づいて導出された高いゲイン値が乗算されて、その乗算された映像データの階調がオーバーフローしてしまうことがある。
図5は、ゲイン値の導出に伴う遅延と映像データの遅延との相違を説明するための説明図である。特に、図5(a)は、ゲイン値の導出に伴う遅延を、図5(b)は、映像データの遅延を表している。
ここでは、図1における映像取得部124、最大階調取得部128、選択部176、調整導出部130、ゲインフィルタ部134およびガンマ補正部138を経由して乗算部142に入力されるゲイン値と、映像取得部124とフレームメモリ140を経由して乗算部142に入力される映像データとの入力タイミングについて説明する。ただし、理解を容易にするため、ゲインフィルタ部134によるゲイン値の遅延はないものとする。
図5(a)に示すように、映像データからゲイン値を導出する場合、最大階調取得部128は、映像データの1フレーム分のうち、有効映像領域の部分Wから、最大階調を取得する。そして、調整導出部130は、その最大階調に基づいてゲイン値を導出する。ゲイン値が導出されるまでの時間が、本来であれば、フレームAの有効映像領域WからフレームBの有効映像領域Wまでのブランキング期間(例えば2msec)内であればよいが、実際にはブランキング期間を超える時間分、例えば10msecかかってしまうため、検出時間を含めゲイン値の導出において約2フレーム分の遅れが生じてしまう。
一方、映像データは、図5(b)に示すように、フレームメモリ140によって1フレーム分遅延することとなる。これでは、ゲイン値を導出する際に参照した映像データと、実際に乗算部142でそのゲイン値と乗算する映像データとが異なることとなる。
さらに、フレームレート変換を行う場合、フレームレート変換に伴う遅延が生じる。例えば、2倍のフレームレートに変換する場合、変換前のフレームで換算するところの1フレーム分の遅延が生じたり、4倍のフレームレートに変換する場合、変換前のフレームで換算するところの1.75フレーム分の遅延が生じたりしてしまう。このように、映像データとゲイン値とを同期させるのは困難である。
また、フレームレート変換で生成された補間フレーム(例えば、2倍のフレームレートにおいて、図5(b)に示すように、フレームAとフレームBの補間フレームであるフレームAB、4倍のフレームレートにおいて、フレームA1とフレームB1の補間フレームであるフレームA2〜A4)の映像データと、補間元のフレーム(例えば、2倍のフレームレートにおけるフレームA、4倍のフレームレートにおけるフレームA1)に基づいて導出されたゲイン値とが乗算されると、オーバーフローが生じることがある。また、実際には、ゲイン値を生成するためにゲインフィルタ部134を経由するので、ゲイン値の遅延はさらに大きくなり、オーバーフローする可能性が高まる。
図6は、ゲインフィルタ部134におけるゲイン値の遅延によるオーバーフローを説明するための説明図である。図6(a)は、ゲインフィルタ部134による影響がない場合の乗算処理を表し、図6(b)は、ゲインフィルタ部134による影響がある従来の乗算処理を表している。図6(a)、(b)において、最大階調、ゲイン値、乗算後最大階調(ゲイン値を乗算した後の最大階調)は、フレームA〜Fそれぞれにおける、任意の1つのブロック202の値を示している。ここでは、理解を容易にするため、図5を用いて説明した、ゲイン値の導出に伴う遅延と映像データの遅延との時間の相違は無く完全に同期されているものとする。また、乗算後最大階調は、小数点以下を切り捨てて示す。
ゲインフィルタ部134による遅延がないと仮定すると、図6(a)に示すように、映像データのフレームA〜Fにそれぞれ対応する最大階調が、128、120、110、200、220、255であった場合、調整導出部130は、上限階調と最大階調とから、図6(a)に示すようにゲイン値を導出する。導出されたゲイン値を対応する映像データの最大階調に乗算すると、乗算後の映像データの乗算後最大階調はほとんど上限階調(ここでは255)と等しくなる。
一方、ゲインフィルタ部134による遅れがある場合、フレームA〜Fの映像データのゲイン値には、最大階調の影響が遅延して生じる。例えば、フレームCからフレームDへの変化において、最大階調は110から200に急増し、図6(a)においては、ゲイン値も2.31から1.27に急減するが、図6(b)においては、ゲインフィルタ部134による遅延の影響から、ゲイン値は2.02から1.97に僅かにしか減少しない。その後、フレームE、Fのように最大階調が大きな値となっても、ゲインフィルタ部134による遅延から、ゲイン値は1.92、1.86といった具合に緩慢にしか減少しない。
したがって、図6(b)に示すように、ゲイン値を乗算した後の映像データの乗算後最大階調は、フレームD〜Fにかけて394、422、474と、上限階調を超え(オーバーフローし)、その状態が継続する。上限階調を超えた階調は、上限階調に制限されるので、例えば、上限階調を超えた隣接する画素同士で階調が同一となり、本来であれば差異があるべき画像の影や輪郭等が曖昧となってしまう。また、本来であれば時系列で変化すべき、任意の画素の階調が継続的に上限階調となり、変化のない映像となってしまう。
本実施形態の液晶表示装置100は、乗算階調取得部170、超過画素取得部172、補正値導出部174、選択部176が有効に機能し、このようなオーバーフローの発生を抑制することができる。以下、乗算階調取得部170を用いる場合、超過画素取得部172を用いる場合、乗算階調取得部170と超過画素取得部172とを併せて用いる場合について、順に説明する。
(乗算階調取得部170を用いる場合)
乗算階調取得部170は、乗算部142が乗算した映像データの複数のブロック202それぞれにおける乗算後最大階調を取得する。
補正値導出部174は、乗算階調取得部170が取得した乗算後の最大階調に基づいて、最大階調を補正した補正値を導出する。
選択部176は、乗算階調取得部170が取得した最大階調が所定値を超過するか否かに応じて、調整導出部130が参照する値を、最大階調取得部128が取得した最大階調と、補正値導出部174が導出した補正値とで切り替える。選択部176は、乗算階調取得部170が取得した乗算後最大階調が、所定値を超過している間、補正値導出部174が導出した補正値を調整導出部130に参照させ、それ以外では最大階調取得部128が取得した最大階調を調整導出部130に参照させる。
図7は、補正値導出部174、選択部176およびフィルタ調整部136の処理を説明するための説明図である。図7(a)は、補正値導出部174と選択部176の処理を、図7(b)は、フィルタ調整部136の処理を表している。フィルタ調整部136の処理については、図7(b)を用いて後に詳述する。
補正値導出部174は、乗算階調取得部170が取得した乗算後最大階調に比例して補正値を導出する。例えば、図7(a)に示すように、補正値導出部174は、乗算階調取得部170が取得した乗算後最大階調Gが所定値G0を超過している場合、所定の一次関数である第1関数に、乗算後最大階調Gを代入して補正値Yを導出する。所定値G0における補正値Yを制御開始補正値Y0、上限階調Ymaxにおける乗算後最大階調Gを切換値Gmaxとすると、第1関数は以下の数式で表される。
Y=(G−G0)×(Ymax−Y0)/(Gmax−G0)+Y0 …(式1)
(ただし、所定値G0から切換値Gmaxまでの区間に限る)
また、例えば、所定値Gとして上限階調Ymaxを設定することで、選択部176は、オーバーフローが少しでも生じていれば、液晶表示装置100は、即座にゲイン値の補正を行うこともできる。
このように、補正値導出部174が、乗算後最大階調Gが所定値G0を超過した量(G−G0)に応じて補正値Yを導出し、調整導出部130が、補正値Yに基づくゲイン値を設定することで、オーバーフローの発生量を抑制し、画質の向上を図ることができる。
また、式1に示すように、所定値G0から切換値Gmaxまでの区間における補正値を一次関数(比例式)で導出する構成により、乗算後最大階調Gの変化に対して補正値Yを滑らかに推移させることができ、ゲイン値を適切に補正することが可能となる。
さらに、補正値導出部174は、ブロック202において各画素が上限階調を超過しない方向に補正する補正値を導出する。ここで、上限階調を超過しない方向は、補正値が大きくなり、ゲイン値が小さくなる方向である。
常に上限階調を超過しない方向に補正を制限する構成により、オーバーフローの発生頻度を抑制し、画質の向上を図ることができる。
(超過画素取得部172を用いる場合)
超過画素取得部172は、乗算部142が乗算した映像データの複数のブロック202それぞれにおける上限階調を超過した画素数を取得する。
図8は、乗算部142がゲイン値を乗じた後の映像データの任意のブロック202bにおける画素毎の上限階調の超過を説明するための説明図である。図8に示すように、映像データのブロック202bでは、画素によって階調が上限階調を超えているもの(ハッチングで示す)と上限階調以下のものがある。この場合、超過画素取得部172は、ブロック202bにおける超過画素数(上限階調を超過した画素の数)を計数し、例えば図8の例では16を取得する。
超過画素取得部172が超過画素数を取得することで、補正値導出部174は、例えば、超過画素数が1であれば、オーバーフローしている画素は僅かであるため、映像全体の品質に大きな影響はないとして、補正値なしとしたり、超過画素数が多ければ多い程、オーバーフローが多発しているとして、大きな補正値を設定したりすることができる。
具体的に、補正値導出部174は、超過画素取得部172が取得した上限階調を超過した画素数に基づいて補正値を導出する。この場合、補正値導出部174は、所定の一次関数である第2関数に、超過画素取得部172が取得した上限階調を超過した画素数を代入して補正値を導出する。また、選択部176は、超過画素取得部172が取得した画素数が閾値を超過したか否かに応じて、調整導出部130が参照する値を、最大階調取得部128が取得した最大階調と、補正値導出部174が導出した補正値とで切り替える。選択部176は、超過画素取得部172が取得した画素数が閾値を超過している間、補正値導出部174が導出した補正値を調整導出部130に参照させ、それ以外では最大階調取得部128が取得した最大階調を調整導出部130に参照させる。
図9は、補正値導出部174、選択部176およびフィルタ調整部136の他の処理を説明するための説明図である。図7と同様、図9(a)は、補正値導出部174と選択部176の処理を、図9(b)は、フィルタ調整部136の処理を表している。フィルタ調整部136の処理については、図9(b)を用いて後に詳述する。
補正値導出部174は、超過画素取得部172が取得した上限階調を超過した画素数に比例して補正値を導出する。例えば、図9(a)に示すように、補正値導出部174は、超過画素取得部172が取得した超過画素数Pが閾値P0を超過している場合、所定の一次関数である第2関数に、超過画素数Pを代入して補正値Yを導出する。閾値P0における補正値Yを制御開始補正値Y0、上限階調Ymaxにおける超過画素数Pを切換数Pmaxとすると、第2関数は以下の数式で表される。
Y=(P−P0)×(Ymax−Y0)/(Pmax−P0)+Y0 …(式2)
(ただし、所定値P0から切換数Pmaxまでの区間に限る)
このように、補正値導出部174が、超過画素数Pが閾値Pを超過した量(P−P0)に応じて補正値Yを導出し、調整導出部130が、補正値Yに基づくゲイン値を設定することで、オーバーフローの発生頻度を抑制し、画質の向上を図ることができる。
また、上述した閾値P0を、1からブロックに含まれる全画素数までの範囲で調整して、補正値導出部174の補正量を適切な量に調整することもできる。
乗算階調取得部170を用いる場合と同様、式2に示すように、所定値P0から切換数Pmaxまでの区間における補正値を一次関数(比例式)で導出する構成により、乗算後最大階調Gの変化に対して補正値Yを滑らかに推移させることができ、ゲイン値を適切に補正することが可能となる。
(乗算階調取得部170と超過画素取得部172とを併せて用いる場合)
補正値導出部174は、乗算階調取得部170が取得した乗算後最大階調に加え、超過画素取得部172が取得した上限階調を超過した画素数に基づいて補正値を導出する。
図10は、上限階調を超過した画素数と映像データの乗算後最大階調それぞれに基づく補正値の導出を説明するための説明図である。
図10に示すように、上限階調を超過した超過画素数Pが閾値P0を超え、かつ、乗算後最大階調Gが所定値G0を超えると、補正値導出部174は、映像データが補正の制御範囲にあると判断し、上限階調を超過した超過画素数Pおよび乗算後最大階調Gそれぞれに基づいて、補正値を導出する。
例えば、ブロック202における、ごく一部の画素の階調だけが極端に上限階調を超えてオーバーフローとなっている場合に、その一部の画素に基づいてブロック202全体を補正してしまうと却って適切なゲイン値を損ねてしまうおそれがある。そこで、本実施形態の液晶表示装置100は、乗算後最大階調Gに加え上限階調を超過した超過画素数Pにも基づいて補正値を導出する。この場合、選択部176は、乗算階調取得部170が取得した乗算後最大階調Gが所定値G0を超過し、かつ、超過画素取得部172が取得した超過画素数Pが閾値P0を超過しているという両方の条件を同時に満たしているか否かに応じて、調整導出部130が参照する値を、最大階調取得部128が取得した最大階調と補正値とで切り替える。
調整導出部130が参照する値の切り替えを行う際、そのトリガとして、乗算階調取得部170が取得した乗算後最大階調Gと、超過画素取得部172が取得した超過画素数Pの両方を用いることで、例えば、ブロック202における一部の画素の乗算後最大階調のみが極端に大きかったり、複数の画素が上限階調を上回ったがその超過量が微量であったりする場合に、液晶表示装置100が過敏に反応することもなく、映像データの本来の階調に即した適切な補正を行うことが可能となる。
続いて、フィルタ調整部136が、乗算後最大階調または超過画素数に応じて、ゲインフィルタ部134のフィルタ特性を調整する処理について説明する。
図11は、ゲインフィルタ部134の概略的な構成を示した機能ブロック図である。ゲインフィルタ部134は、ローパスフィルタであり、第1乗算部250と、レジスタ252と、第2乗算部254と、加算部256と、を含んで構成される。
積分定数をa、調整導出部130から入力されたゲイン値の入力値をX、当該ゲインフィルタ部134が出力するゲイン値の出力値をU、レジスタ252に保持された1フレーム前の出力値をU−1とする。ゲインフィルタ部134は、一般的なローパスフィルタであり、ローパスフィルタの処理を示す一般的な式(3)を変形した、式(4)で表現できる。
U=U−1+a(X−U−1) …(式3)
U=aX+(1−a)U−1 …(式4)
かかる式(4)を実現したゲインフィルタ部134では、まず、第1乗算部250が入力値Xに積分定数aを乗算し、第2乗算部254は、レジスタ252に保持された1フレーム前の出力値V−1と係数(1−a)を乗算し、加算部256は、第1乗算部250の出力と第2乗算部254の出力を加算する。
ゲイン値を平滑化するゲインフィルタ部134を備えることで、ゲイン値の変化が激しい場合にもその変化を吸収することができ、フリッカーが生じてしまったり、ゲイン値が過渡に低くなったりする事態を回避することが可能となる。
フィルタ調整部136は、このゲインフィルタ部134の積分定数aを調整する。図7および図9に戻って説明すると、例えば、乗算階調取得部170を用いる場合、乗算階調取得部170が取得した乗算後最大階調に応じて、図7(b)に示すように、積分定数を1/16から1/2まで段階的(1/16→1/8→1/4→1/2)に変更する。また、例えば、超過画素取得部172を用いる場合、超過画素取得部172が取得した画素数に応じて、図9(b)に示すように、積分定数を1/16から1/2まで段階的(1/16→1/8→1/4→1/2)に変更する。
かかる構成により、フィルタ調整部136は、乗算階調取得部170が取得した乗算後最大階調や超過画素取得部172が取得した画素数が極端に大きい場合、積分定数aを例えば1/2と大きく設定し、フリッカー等を多少許容することになるが、ゲインフィルタ部134の遅延を抑制することで、ゲイン値を迅速に適切な値に推移させる。また、フィルタ調整部136は、乗算階調取得部170が取得した乗算後最大階調や超過画素取得部172が取得した画素数が大きくない場合、積分定数aを例えば1/16と小さく設定し、フリッカー等を抑制する。
また、上述した実施形態では、映像データのブロックとバックライト122における光源とは1対1に対応した例を挙げたが、かかる場合に限定されず、光源は、ブロックそれぞれに複数で対応させることもできる。
このように1つのブロックを複数の光源に対応させることで、補正値を導出する対象のブロックの数が少なくなり、乗算後最大階調や上限階調超過画素数の取得にかかる処理負荷を低減し、安価な回路を用いることができ製造コストを削減することが可能となる。さらに、例えば、映像データ全体を1つのブロックとし、所定値G0や閾値P0を適切に設定することで、オーバーフローを回避しつつ、大幅に製造コストを削減することが可能となる。
上述したように、本実施形態の液晶表示装置100は、ゲイン値を乗じた後の映像データの乗算後最大階調や超過画素数に基づいて補正を行うことで、オーバーフローの発生頻度を抑制し、画質の向上を図ることができる。
(映像表示方法)
さらに、上述した液晶表示装置100を用いた映像表示方法も提供される。図12は、映像表示方法の処理の流れを示すフローチャートである。
図12において、映像取得部124が映像データを1フレーム分取得すると(S300のYES)、最大階調取得部128は、取得した映像データの複数のブロック202のうちの1つを選択し(S302)、そのブロック202における最大階調を取得する(S304)。そして、乗算部142は、そのブロック202に、前回のフレームの同じブロック202において導出されたゲイン値を乗算し(S306)、データ信号線駆動部146とゲート信号線駆動部148とは、ゲイン値が乗算された後の画素毎の階調に応じて、液晶パネル120の透過率を画素毎に調整する(S308)。バックライト駆動部160は、前回のフレームの同じブロック202において導出された発光量でバックライト122の光源を発光させる(S310)。
そして、乗算階調取得部170は、そのブロック202における乗算後最大階調を取得する(S312)。超過画素取得部172は、そのブロック202における超過画素数を取得する(S314)。補正値導出部174は、乗算階調取得部170が取得した乗算後最大階調と、超過画素取得部172が取得した上限階調を超過した超過画素数に基づいて補正値を導出する(S316)。
選択部176は、乗算後最大階調が所定値を超過しているか否かを判断する(S318)。乗算後最大階調が所定値を超過している場合(S318のYES)、選択部176は、超過画素数が閾値を超過しているか否かを判断する(S320)。
超過画素数が閾値を超過している場合(S320のYES)、調整導出部130は、補正値導出部174が導出した補正値と、上限階調とに基づいてゲイン値および除算値を導出する(S322)。乗算後最大階調が所定値を超過していない場合(S318のNO)、および超過画素数が閾値を超過していない場合(S320のNO)、調整導出部130は、最大階調取得ステップ(S304)において最大階調取得部128が取得した、そのブロック202における最大階調と、上限階調とに基づいてゲイン値および除算値を導出する(S324)。
続いて、発光量導出部152は、調整導出部130が導出した除算値に基づいて発光量を導出する(S326)。そして、映像データ取得ステップ(S300)において取得したフレームについて、すべてのブロックの処理が終わっていない場合(S328のNO)、ブロック選択ステップ(S302)に戻る。すべてのブロックの処理が終わっている場合(S328のYES)、映像データ取得ステップ(S300)に戻り、次のフレームの映像データの待機状態となる。
上述したように、液晶表示装置100を用いた映像表示方法によれば、映像データの階調のオーバーフローを防止し、画質の向上を図ることができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
なお、本明細書の映像表示方法における各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。