JP5264853B2 - 甲板昇降式作業台船及び洋上風力発電施設の施工方法 - Google Patents
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Description
風力発電の発電施設の設置場所としては、陸上と洋上のいずれも可能であるが、つぎのような点で洋上は陸上よりも風力発電に有利な条件を備えている。
(1)洋上では、一般的に陸上と比べて風速が強く、又、良好で安定した風が吹く。
(2)洋上には障害物が少なく、騒音、電波障害も少ない。
(3)大型化しつつある風車の機材を運搬設置する施工コストの低減が図れる。
(4)大規模な電力消費地帯は沿岸区域に集中しており、その他の電力系設備も沿岸部の方が整備されている傾向があるため、洋上の方が送電コスト等が安くなる。
このように、洋上は陸上よりも風力発電に有利な条件を備えている。洋上風力発電施設は、多くの国に於いて採用されており、一般的に沿岸から数百m〜数kmの距離に設置されている。
特許文献1には、陸上にて、箱型の浮体上に、筒状の風車基礎部を立設して海上に仮係留し、風車基礎部に風車本体を搭載して洋上風力発電装置を形成し、洋上風力発電装置を引船で設置海域に曳航し、洋上風力発電装置をクレーン船で支持しながら浮体内にバラストを注入し、洋上風力発電装置をクレーン船で吊り下げて基礎本体を海底地盤に据え付ける、浅水深向け着底式洋上風力発電装置の設置方法が記載されている。
この発明は、台船本体と、台船本体甲板上に敷設された走行レール上を走行自在の走行桁と、走行桁上に敷設された移動レール上を移動自在の移動作業台車と、移動作業台車上に旋回自在に架装されるブーム旋回台と、ブーム旋回台上に取り付けられるツインブームとを備えた甲板昇降式作業台船により、洋上風力発電施設の作業効率、安定性及び安全性に優れた施工を可能にするものである。
(1)施工条件の厳しい外洋海域への進出と施設大型化に伴い、工事設備費が増大する。そのためのコストダウンを図ることが望まれている。
(2)モノパイル基礎は、大口径化(φ5.0m以上)、重量化(500Ton以上)、長尺化(60m以上)する傾向がある。そのための構造物施工の安定、安全性の確保、ならびに、洋上運搬の安全化、スピーディな建て込みが望まれている。
(3)作業可能日数内(3月〜10月)での設置目標機数の施工の確保が望まれている。
(4)洋上での建て込みに於いて、垂直精度の確保が望まれている。
(5)超大型杭打機械の吊り込み(210Ton)打設のための中型SEP(Self Elevating Platform:甲板昇降式作業台船)に搭載(1100Ton以内)可能なクローラクレーン選定が必要である。
(6)SEP搭載荷重(1100Ton)以内の作業装置の開発が望まれている。
(7)風車組立時の風速による作業限界を引き上げ(10m/sec以下から15m/sec以下に引き上げ)、組立日数の短縮化を図ることが望まれている。
請求項1に係る発明は、台船本体(2)と、
前記台船本体(2)の隅部に遊挿自在に垂直方向に延びて設けられ、油圧ジャッキアップシステムにより前記台船本体を昇降自在に移動させる複数のレグ(3)とを備えた甲板昇降式作業台船(1)に於いて、
モノパイル又はタワー一体式風車(51,4)を倒伏状態又は斜め倒伏状態から、吊り込みを行わずに建て起こし自在の建て起こし装置(5)を前記台船本体(2)の甲板上に設置しており、
前記建て起こし装置(5)は、
前記台船本体(2)の甲板上に配置されたベースフレーム(12)と、
前記ベースフレーム(12)の一端にてブラケット(13)を介して建て起こし自在に支承され、前記モノパイル又はタワー一体式風車(51,4)の長手方向に沿って延在して前記モノパイル又はタワー一体式風車(51,4)を着脱自在に保持する支持リーダーフレーム(14)と、
前記ベースフレーム(12)と前記支持リーダーフレーム(14)との間に架設された油圧シリンダ(15)と、を備え、
前記支持リーダーフレーム(14)が前記モノパイル又はタワー一体式風車(51,4)を倒伏状態又は斜め倒伏状態で保持した状態から、前記油圧シリンダ(15)を伸張させて前記支持リーダーフレーム(14)を建て起こすことにより、前記モノパイル又はタワー一体式風車(51,4)を建て起こすように構成されていることを特徴とする
甲板昇降式作業台船を提供するものである。
前記台船本体(2)上にて前記建て起こし装置(5)により倒伏状態又は斜め倒伏状態で保持された前記モノパイル又はタワー一体式風車(51,4)を、前記油圧シリンダ(15)を伸張させることにより倒伏状態又は斜め倒伏状態から鉛直状態に建て起こすことを特徴とする洋上風力発電施設の施工方法を提供するものである。
又、本発明の甲板昇降式作業台船は、風車組立時の風速による作業限界を引き上げることができ、組立日数の短縮化を図ることができる。
さらに、ベースフレームにより、モノパイル又はタワー一体式風車を移動させることができ、支持リーダーフレームにより、モノパイル又はタワー一体式風車を保持し、且つ、建て起こすことが可能になる。建て起こし油圧シリンダにより、支持リーダーフレームを建て起こすことができる。
又、本発明の洋上風力発電施設の施工方法によれば、風車組立時の風速による作業限界を引き上げることができ、組立日数の短縮化を図ることができる。
図1に於いて、1は、本発明の甲板昇降式作業台船であり、甲板昇降式作業台船1は、平面視略方形の台船本体2と、台船本体2の各隅部に遊挿自在に垂直方向に延びて設けられ、油圧ジャッキアップシステム(図示せず)により台船本体2を昇降自在に移動させる複数のレグ3,3…とを備え、モノパイル(図示せず)又はタワー一体式風車{タワー(トップタワー、ミドルタワー及びボトムタワー)にナセル、ハブ及びブレードを取り付けたもの}4を倒伏状態又は斜め倒伏状態で、台船本体2の甲板上を移動自在に保持すると共に、モノパイル又はタワー一体式風車4を倒伏状態又は斜め倒伏状態から建て起こし自在の建て起こし装置5を台船本体2の甲板上に設置したものである。
そして、前記ベースフレーム12と、支持リーダーフレーム14とに支持リーダーフレーム14を建て起こし自在の建て起こし油圧シリンダ15が架設されている。
又、前記甲板昇降式作業台船1は、台船本体2の甲板上にタワー一体式風車4を斜め倒伏状態で保持する時、タワー一体式風車4のトップタワー16部分を受け止める移動自在の風車移動式受台17を備えている。
前記風車移動式受台17は、受台用油圧シリンダ18によって押し出し或いは引き出されて、ガイドレール11上を走行自在に構成される。
又、台船本体2の甲板の前端部{図1(b)に於いて右端部)}には、建て起こし装置5の両側方にモノパイルの下端部を吊り下げ自在のジャッキ装置19を備えている。
倒伏状態又は斜め倒伏状態のモノパイル又はタワー一体式風車は、左右下部保持アーム35,35と、左右上部保持アーム37,37とにより、下部側と、上部側とを保持され、下部保持アーム締め付けシリンダ36と、上部保持アーム締め付けシリンダ38とにより、所定の力で締付けられる。
先ず、洋上風力発電施設の基礎となるモノパイルの施工方法について図6に従って説明する。
図6(a)は、モノパイル曳航時の荷姿を示している。
具体的には、陸上の岸壁に搬送されたモノパイル51を、陸上に配置したクレーン等(図示せず)を用いて吊下し、レグ3,3…を介して上昇させた台船本体2上の建て起こし装置5上に吊り降ろし、モノパイル51を建て起こし装置5に保持させた後、レグ3,3…を介して台船本体2を降下させて海上に浮かべた状態を図6(a)に示している。
モノパイル51を建て起こし装置5に保持させる時、建て起こし装置5は、ベースフレーム12が押し引き出し油圧シリンダ21によって、後方側{図6(a)に於いて左方側}に引き寄せられた位置にあり、支持リーダーフレーム14は、略水平状態の姿勢にあり、開いた状態の下部保持装置31と、開いた状態の上部倒れ防止装置32と、支持台33上に、モノパイル51が倒伏状態に載置されると、モノパイル51は、下部保持装置31によって締め付けられ、上部倒れ防止装置32によって倒れないように保持され、モノパイル51全体が、建て起こし装置5に保持される。
施工現場に到着すると、図6(b)に示す如く、レグ3を降下させて、甲板昇降式作業台船1を所定高さに固定し、押し引き出し油圧シリンダ21によりベースフレーム12を前方に押し出した後、図6(c)に示す如く、建て起こし油圧シリンダ15により、支持リーダーフレーム14が建て起こされると、モノパイル51が図6(d)に示す如く建て起こされる。
モノパイル51を降下させる前に、図7(a)〜(b)に示すようにモノパイル51の下端部にジャッキ装置19のワイヤロープ52を掛け、下部保持装置31と上部倒れ防止装置32の締め付けを緩めてジャッキ装置19によりモノパイル51を降下させる。
モノパイル51は降下しながら、甲板昇降式作業台船1に搭載された図示しない位置決め保持装置により、位置決めされ、図示しない杭打ち込み装置により杭打ちされる。
尚、杭打ちされたモノパイル51の上端部には、タワー一体式風車4の下端部を接続するためのスリーブ53が予め配設されている。
図1は、タワー一体式風車曳航時の荷姿を示している。
具体的には、陸上の岸壁に搬送されたタワー一体式風車4を、陸上に配置したクレーン等(図示せず)を用いて吊下し、レグ3,3…を介して上昇させた台船本体2上の建て起こし装置5上に吊り降ろし、タワー一体式風車4を建て起こし装置5に保持させた後、レグ3,3…を介して台船本体2を降下させて海上に浮かべた状態を図1に示している。
タワー一体式風車4を建て起こし装置5に保持させる時、建て起こし装置5は、ベースフレーム12が押し引き出し油圧シリンダ21によって、前方側{図1(a)に於いて右方側}に所定寸法押し出された位置にあり、支持リーダーフレーム14は、建て起こし油圧シリンダ15によって、斜め水平状態の姿勢にあり、開いた状態の下部保持装置31と、開いた状態の上部倒れ防止装置32と、風車移動式受台17上に、タワー一体式風車4が斜め倒伏状態に載置されると、タワー一体式風車4は、下部を下部保持装置31によって締め付けられ、中間部を上部倒れ防止装置32によって保持されて、建て起こし装置5に保持され、上部を風車移動式受台17上に支持される。
施工現場に到着すると、レグ3を降下させて、甲板昇降式作業台船1を所定高さに固定し、図8に示す如く、曳航時の荷姿の姿勢の状態から、或いは、押し引き出し油圧シリンダ21によりベースフレーム12を適宜前方に押し出した後、図8の実線に示す如く、建て起こし油圧シリンダ15により、支持リーダーフレーム14を建て起こし、タワー一体式風車4を建て起こす。
次に、図9に示す如く、先に杭打ちされたモノパイル51の上端のスリーブ(図7に於いて53)にタワー一体式風車4の下端部を接合して洋上風力発電施設を完成する。
(1)建て起こし装置によって、クローラクレーンを必要としないモノパイルの建て込みが可能になる。
(2)パイル建て込み装置が前後にスライド移動方式であるので、打ち込み位置の精度を高めることができる。
(3)支持リーダーフレームに沿い取り付けられた上部倒れ防止装置及び下部保持装置により垂直精度を保つことができる。
(4)洋上風力発電施設部材を岸壁で建て起こし装置にセットアップし、固縛できるので、洋上風力発電施設部材を洋上を安定して安全に運搬できる。
(5)SEP搭載クローラクレーンの選定は、吊り込み最大荷重が杭打機械210Tonとなって800Tonクローラクレーンでよい。
(6)予め、SEPに設備した建て起こし装置にモノパイルがセットされているので、作業の流れが、SEP据付−パイル建て起こし−杭打ハンマーセット−パイル打設と極めてスムーズである。
(7)マスト(タワー)、ナセル、ハブ・ブレード等の風車パーツの一体化、組立、建て起こし装置への傾斜(斜め倒伏状態)セットアップ固縛、洋上運搬、設置場所での建て起こし、基礎パイルスリーブへの取り付け等、作業が連続的に行える。
(8)建て起こし装置の開発によってモノパイル(500Ton)吊り込みに超大型クレーンの必要性がなくなり、従って大型SEPを採用する必要がなく、大幅にコストダウンが可能である。
(9)風速による作業制限が15m/sec以下になって作業効率が向上する。
(10)風車組立時の作業員の省力化が図れる(例えば10人から6人にすることができる。)。
2 台船本体
3 レグ
4 タワー一体式風車
5 建て起こし装置
11 ガイドレール
12 ベースフレーム
13 ブラケット
14 支持リーダーフレーム
15 建て起こし油圧シリンダ
16 トップタワー
17 風車移動式受台
19 ジャッキ装置
21 押し引き出し油圧シリンダ
22 浮き上がり防止装置
23 チルタンク
31 下部保持装置
32 上部倒れ防止装置
51 モノパイル
Claims (7)
- 台船本体(2)と、
前記台船本体(2)の隅部に遊挿自在に垂直方向に延びて設けられ、油圧ジャッキアップシステムにより前記台船本体を昇降自在に移動させる複数のレグ(3)とを備えた甲板昇降式作業台船(1)に於いて、
モノパイル又はタワー一体式風車(51,4)を倒伏状態又は斜め倒伏状態から、吊り込みを行わずに建て起こし自在の建て起こし装置(5)を前記台船本体(2)の甲板上に設置しており、
前記建て起こし装置(5)は、
前記台船本体(2)の甲板上に配置されたベースフレーム(12)と、
前記ベースフレーム(12)の一端にてブラケット(13)を介して建て起こし自在に支承され、前記モノパイル又はタワー一体式風車(51,4)の長手方向に沿って延在して前記モノパイル又はタワー一体式風車(51,4)を着脱自在に保持する支持リーダーフレーム(14)と、
前記ベースフレーム(12)と前記支持リーダーフレーム(14)との間に架設された油圧シリンダ(15)と、を備え、
前記支持リーダーフレーム(14)が前記モノパイル又はタワー一体式風車(51,4)を倒伏状態又は斜め倒伏状態で保持した状態から、前記油圧シリンダ(15)を伸張させて前記支持リーダーフレーム(14)を建て起こすことにより、前記モノパイル又はタワー一体式風車(51,4)を建て起こすように構成されていることを特徴とする
甲板昇降式作業台船。 - 前記台船本体の甲板上に前記タワー一体式風車のトップタワーを受け止める移動自在の風車移動式受台を備えたことを特徴とする請求項1に記載の甲板昇降式作業台船。
- 前記ベースフレーム(12)が、前記台船本体(2)の甲板上に敷設されたガイドレール(11)上を走行自在であることを特徴とする
請求項1又は2に記載の甲板昇降式作業台船。 - 前記ベースフレームの後部に、前記ベースフレームを押し出し、引き出し自在の押し引き出し油圧シリンダが配設され、前記ベースフレームの後部下部に、前記ベースフレームの前記ガイドレールからの浮き上がりを防止する浮き上がり防止装置が配設され、前記ベースフレームの下部に、前記ベースフレームを移動自在に支えるためのチルタンクが配設されていることを特徴とする請求項3に記載の甲板昇降式作業台船。
- 前記支持リーダーフレームに、前記モノパイル又はタワー一体式風車の下部を保持自在の下部保持装置と、前記モノパイル又はタワー一体式風車の上部が所定姿勢を超えて倒れないように支持する上部倒れ防止装置とを備えたことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一に記載の甲板昇降式作業台船。
- 前記台船本体の甲板の前端部に、前記モノパイルの下端部を吊り下げ自在のジャッキ装置を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一に記載の甲板昇降式作業台船。
- 請求項1〜6のいずれか一に記載の甲板昇降式作業台船(1)を用いた洋上風力発電施設の施工方法であって、
前記台船本体(2)上にて前記建て起こし装置(5)により倒伏状態又は斜め倒伏状態で保持された前記モノパイル又はタワー一体式風車(51,4)を、前記油圧シリンダ(15)を伸張させることにより倒伏状態又は斜め倒伏状態から鉛直状態に建て起こすことを特徴とする
洋上風力発電施設の施工方法。
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