JP5264598B2 - 燃料電池システム用炭化水素燃料組成物 - Google Patents
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Description
(1)無機硫黄の含有量が0.001〜0.05質量ppmであることを特徴とする燃料電池システム用炭化水素燃料組成物。
(2)硫黄分が0.001〜10質量ppm、15℃における密度が0.785〜0.800g/cm3、および95容量%留出温度が240〜265℃である上記(1)項に記載の燃料電池システム用炭化水素燃料組成物。
本発明における無機硫黄は、例えば、S8型硫黄などの遊離硫黄を含む。ジベンゾチオフェン類として検出される範囲のうち、無機硫黄として同定されたピークとして検出・定量される。該無機硫黄は、沈殿せず液中に分散しており一般的にろ過による分離は困難である。一般的な脱硫器では除去が困難であり、硫黄分による改質触媒や燃料電池の電極の被毒を防ぐ観点から、本発明の炭化水素燃料組成物は、該無機硫黄の含有量が0.05質量ppm以下であり、好ましくは0.03質量ppm以下、より好ましくは0.01質量ppm以下である。一方、製造コストの観点から無機硫黄の含有量は0.001質量ppm以上であり、0.005質量ppm以上であることが好ましい。
なお、上記の無機硫黄、および後述のベンゾチオフェン類並びにジベンゾチオフェン類は、チオフェン類などの種々の硫黄化合物のタイプ分析として同時に測定され、当該硫黄化合物の定性及び定量分析には、ガスクロマトグラフ(Gas Chromatograph:GC)−炎光光度検出器(Flame Photometric Detector:FPD)、GC−原子発光検出器(Atomic Emission Detector:AED)、GC−硫黄化学発光検出器(Sulfur Chemiluminescence Detector:SCD)、GC−誘導結合プラズマ質量分析装置(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer:ICP−MS)などを用いることができるが、質量ppbレベルの分析にはGC−ICP−MSが最も好ましい(特開2006−145219号公報参照)。特に、GC−ICP−MSは、極めて高感度である上に、硫黄と同じ保持時間に炭素が検出されるか否かを比べることにより、有機硫黄化合物か無機硫黄化合物か判別することが可能である。
本発明の炭化水素燃料組成物の硫黄分、すなわち該炭化水素燃料組成物に含まれる全ての硫黄の合計は、0.001〜10質量ppmが好ましく、0.001〜8質量ppmがより好ましい。脱硫剤の寿命及び硫黄分による改質触媒や燃料電池の電極の被毒を防ぐ観点から、硫黄分は低い方が好ましいが、精製コストの観点では硫黄分は低過ぎないことが好ましい。
なお、上記炭化水素燃料組成物中に含まれる硫黄化合物は、主に単体硫黄(無機硫黄)とベンゾチオフェン類及びジベンゾチオフェン類などの有機硫黄化合物であり、チオフェン類、メルカプタン類(チオール類)、スルフィド類、ジスルフィド類、二硫化炭素などが含まれる場合もある。特に無機硫黄およびジベンゾチオフェン類が燃料電池システムの脱硫器の触媒、燃料電池電極に悪影響を及ぼす。
本発明の炭化水素燃料組成物における軽質硫黄化合物に由来する硫黄分とは、チオフェンよりも軽質の硫黄化合物に由来する硫黄の含有量である。
本発明におけるチオフェン類及びベンゾチオフェン類に由来する硫黄分とは、チオフェンとアルキル基の側鎖を持つチオフェン類、及び、ベンゾチオフェンとアルキル基の側鎖を持つベンゾチオフェン類に由来する硫黄の合計含有量であり、本発明においては、便宜上、チオフェンと同じか、それよりも重質であり、4−メチルジベンゾチオフェンよりも軽質な硫黄化合物の合計含有量とする。
本発明におけるジベンゾチオフェン類に由来する硫黄分とは、アルキル基の側鎖を持つジベンゾチオフェン類に由来する硫黄の合計含有量と無機硫黄の含有量との合計であり、本発明においては、便宜上、4−メチルジベンゾチオフェンとそれよりも大きい分子量を有する硫黄化合物の硫黄の合計含有量とする。このようなジベンゾチオフェン類を含む炭化水素油の脱硫は、一般的な脱硫器では除去が困難である。そこで、脱硫剤寿命の長期化及び硫黄による改質触媒や燃料電池の電極の被毒を防ぐ観点から、本発明の炭化水素燃料組成物はジベンゾチオフェン類に由来する硫黄分は、0.05質量ppm以下が好ましく、0.03質量ppm以下がより好ましい。一方、製造コストの観点からジベンゾチオフェン類に由来する硫黄分は、0.005質量ppm以上が好ましく、0.01質量ppm以上がより好ましい。
本発明の炭化水素燃料組成物の15℃における密度は、0.785〜0.800g/cm3であり、好ましくは0.792〜0.794g/cm3である。密度が高いほど、燃料電池システムにおける発電の出力や効率の点で好ましいが、脱硫器の脱硫剤並びに改質に供する触媒の劣化防止の点では高過ぎない方が好ましい。
本発明の炭化水素燃料組成物の95容量%留出温度は、240〜265℃が好ましく、より好ましくは241〜253℃である。95容量%留出温度は、重量当りの発電量の点では高い方が望ましいが、改質触媒の劣化を抑える点では低い方が望ましい。
本発明の炭化水素燃料組成物のノルマルパラフィン分は、改質反応の効率、燃料電池システムの燃費並びにエネルギー効率の観点で10.0容量%以上が好ましく、16.0容量%以上がより好ましい。一方で、低温流動性の確保と取り扱い性の観点から、22容量%以下が好ましく、21容量%以下がより好ましい。
本発明の炭化水素燃料組成物の動粘度は特に制限されないが、配管や脱硫器など装置内の流動性や気化器での気化状態を良好にする観点から、30℃における動粘度は1.35〜1.45mm2/sであることが好ましく、さらに好ましくは1.43〜1.45mm2/sである。
本発明の炭化水素燃料組成物の煙点は特に制限されないが、脱硫器の脱硫剤並びに改質に供する触媒の劣化防止の点で、日本工業規格(JIS)1号灯油の寒候用のものの規格である21mm以上であることが好ましく、23mm以上がより好ましい。
本発明の炭化水素燃料組成物の銅板腐食は特に制限されないが、燃料電池システムに使用される金属部材の腐食を防止する観点から、銅板腐食が1を越えないことが好ましい。本発明の炭化水素燃料組成物の銅板腐食は50℃で3hの試験で日本工業規格(JIS)1号灯油の規格である1以下であることが好ましく、1aであることがより好ましい。
本発明の炭化水素燃料組成物の臭素指数は特に制限されないが、好ましくは10〜95mg/100gであり、さらに好ましくは10〜30mg/100gである。臭素指数は、燃料電池システムの原燃料タンク内などにおける炭化水素燃料組成物の貯蔵安定性に関与し、脱硫器の脱硫剤並びに改質に供する触媒の劣化防止の点で低い方が好ましいが、低過ぎると精製コストが急激に高くなることが予想されるため、好ましくは10〜95mg/100gであり、さらに好ましくは10〜30mg/100gである。
本発明の炭化水素燃料組成物の引火点は特に制限されないが、操作性や安全上の取り扱い易さの点で日本工業規格(JIS)1号灯油の規格である40℃以上が好ましく、さらに好ましくは43.5℃以上である。
本発明の炭化水素燃料組成物の芳香族分(含有量)は特に制限されないが、14.0〜20.0容量%が好ましく、より好ましくは15.0〜16.0容量%である。芳香族分が高いほど、燃料電池システムにおける発電の出力や効率の点で好ましいが、脱硫器の脱硫剤並びに改質に供する触媒の劣化防止の点では高過ぎない方が好ましいので、14.0〜20.0容量%が好ましく、より好ましくは15.0〜16.0容量%である。
あるいは、貯蔵タンク等に貯蔵された前記炭化水素燃料組成物中に硫化水素が残存している場合は、前記と同様に窒素ガスなどを吹き込んでストリッピングし、液中に溶解した硫化水素ガスを十分に分離することでも、本発明の炭化水素燃料組成物を得ることができる。さらに、貯蔵タンク等の雰囲気を窒素ガス等で置換し、雰囲気中の酸素濃度を1容量%未満とすることにより、液中に溶解した硫化水素ガスが酸化されて無機硫黄に転化することを抑制する方法も好適に用いられる。
下記のようにして供試燃料(燃料電池用炭化水素燃料組成物)A1(実施例1)、B1(実施例2)、C1(比較例1)及びD1(比較例2)を調製した。
A1(実施例1):直留灯油留分(硫黄分0.19質量%、沸点範囲145〜268℃)をCo−Mo/アルミナ触媒存在下、水素分圧4.0MPaG、反応温度320℃、液空間速度(LHSV)4.4hr−1、水素/油比率90Nm3/kLの条件により水素化精製した後、気液分離時の液分についてスチーム(スチーム供給ラインの圧力0.3MPaG、200Nm3/h)にてストリッピングを行って、灯油留分である実施例1の供試燃料A1を得た。
B1(実施例2):直留灯油留分、接触分解油灯油留分、及び熱分解油灯油留分の混合油(硫黄分0.25質量%、沸点範囲139〜258℃)をCo−Mo/アルミナ触媒存在下、水素分圧2.9MPaG、反応温度305℃、液空間速度(LHSV)2.1hr−1、水素/油比率110Nm3/kLの条件により水素化精製した後、気液分離時の液分についてスチーム(スチーム供給ラインの圧力1.5MPaG、240Nm3/h)にてストリッピングを行って、灯油留分である実施例2の供試燃料B1を得た。
D1(比較例2):直留灯油留分と接触分解油灯油留分の混合油(硫黄分0.17質量%、沸点範囲149〜275℃)をCo−Mo/アルミナ触媒存在下、水素分圧2.9MPaG、反応温度300℃、液空間速度(LHSV)2.0hr−1、水素/油比率115Nm3/kLの条件により水素化精製した後、気液分離時の液分についてストリッピングを行わず、灯油留分である比較例2の供試燃料D1を得た。
供試燃料A1、B1、C1及びD1の物性を表1aに、組成を表1bに示す。
燃料電池システムの脱硫器の脱硫触媒として、東ソー社製H−USYゼオライトHSZ−330HUAを用いた。400℃で1時間乾燥処理したゼオライトを2.00gずつ秤り取り、前記の供試燃料A1、B1、C1及びD1(それぞれ16.00g)にそれぞれ液固比8で浸漬して撹拌した。浸漬したまま10℃で312時間保持して脱硫燃料A2、B2、C2及びD2を得た。得られた脱硫燃料A2、B2、C2及びD2の硫黄分を紫外蛍光法で、また硫黄化合物と無機硫黄をGC−ICP−MSでそれぞれ測定した。測定結果を表2に示す。
表1、2の物性測定及び組成分析については、既に説明したものを除き、次の方法で行った。
(1)密度:JIS K2249「原油及び石油製品密度試験方法」に規定された方法
(2)蒸留性状:JIS K2254「蒸留試験方法」に規定された方法
(3)動粘度:JIS K2283「動粘度試験方法」に規定された方法により、30℃で測定した。
(4)引火点:JIS K2265「原油及び石油製品引火点試験方法」に規定されたタグ密閉式引火点試験方法
(5)煙点:JIS K2537「煙点試験方法」に規定された方法
(6)硫黄分:JIS K2541−6「硫黄分試験方法(紫外蛍光法)」に規定された方法
(7)硫黄化合物および無機硫黄:GC−誘導結合プラズマ質量分析装置(GC−ICP−MS;Agilent社製6890N型GCとコリジョンセルを搭載する7500CS型ICP−MSとをトランスファーラインでつないだシステム)で測定した。
Claims (2)
- 無機硫黄の含有量が0.001〜0.05質量ppmであることを特徴とする脱硫器及び改質器を備える燃料電池システム用炭化水素燃料組成物。
- 硫黄分が0.001〜10質量ppm、15℃における密度が0.785〜0.800g/cm3、95容量%留出温度が240〜265℃である請求項1記載の脱硫器及び改質器を備える燃料電池システム用炭化水素燃料組成物。
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