本発明を実施するための最良の形態を説明するのに先立って、本発明の作用効果について説明する。本発明者らは、起動時における部分酸化改質反応の実行時に、燃焼部の燃焼状態が不安定になってしまう原因について様々な角度から検討を行った。そこで、燃料電池セルの形状は、そもそも燃料電池モジュールの運転が進行した温度において水蒸気改質反応で供給される燃料ガスと酸化剤ガスとが安定的に燃焼するように構成されるものであるから、燃料電池モジュールの運転が初期の段階における温度において部分酸化改質反応によって供給される燃料ガスの燃焼特性が燃料電池セルの形状に適合していないのではないかと考えた。もっとも、実際には燃料電池セルの形状を、燃料電池モジュールの運転過程に合わせて変えていくことは極めて困難であるため、部分酸化改質反応において供給される燃料ガスを調整することで、燃焼部の燃焼状態を安定化できないか検討した。この一連の検討の結果、本発明を成しえたものである。
本発明に係る燃料電池モジュールは、燃料ガス流路を内部に有すると共に前記燃料ガス流路の出口より残余の燃料ガスを放出し、燃料電池セル集合体を構成する複数の燃料電池セルと、前記燃料電池セル集合体の上部に配置され、被改質ガスを改質して燃料ガスとする改質触媒を含む少なくとも一つの改質器と、前記改質器から供給される燃料ガスを、前記複数の燃料電池セルそれぞれに供給するガスタンクと、前記燃焼部における燃焼を誘起する着火部と、を備える燃料電池システムであって、前記複数の燃料電池セルの上部に、発電反応に寄与しなかった残余の燃料ガスと残余の酸化剤ガスとが混合して燃焼する燃焼部が形成され、前記燃焼部の温度を直接的若しくは間接的に取得する温度取得部と、前記改質器に被改質ガスの改質に用いられる酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給部と、前記温度取得部が取得した前記燃焼部の温度に基づいて、前記酸化剤ガス供給部を制御する制御部と、を備え、前記着火部の作動によって前記燃焼部における燃焼が開始された後であって前記改質器において部分酸化改質反応が行われている場合において、前記制御部は、前記温度取得部が取得した前記燃焼部の温度が基準温度を下回っている場合に前記改質器に供給する酸化剤ガスの供給量が、前記温度取得部が取得した前記燃焼部の温度が基準温度以上となった場合に前記改質器に供給する酸化剤ガスの供給量よりも少なくなるように前記酸化剤ガス供給部を制御することを特徴とする。
本発明では、運転開始初期に改質器において部分酸化反応が行われており、燃焼部の温度が基準温度を下回っている場合には、改質器に供給する酸化剤ガスの供給量を減らしているので、被改質ガスとして供給されるメタンを過度に改質して水素が増えすぎてしまうことを抑制できる。燃焼部の温度が基準温度を下回っている場合には、水素の燃焼速度が水素の拡散速度よりも遅いため、水素が不完全燃焼となり易くなるけれども、このように水素の総量を抑制することで、水素の不完全燃焼を抑制することができる。
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1は、本発明に係る燃料電池モジュールの一実施形態である燃料電池モジュールFCを示す斜視図であって、カバー部材を取り外した状態を示す図である。図2は、燃料電池モジュールFCの断面図であって、図1の矢印A方向において、燃料電池モジュールFCの中央近傍における断面図である。図3は、燃料電池モジュールFCの断面図であって、図1の矢印B方向において、燃料電池モジュールFCの中央近傍における断面図である。尚、図2及び図3においては、断面のハッチングを省略している。
カバー部材(図1,3に明示しない。図2にその外形を二点鎖線で示す)は、正面側の側壁と、長手方向の一対の側壁と、背面側の側壁と、天井とによって直方体状に形成される。各側壁の下端部には、フランジ部が形成され、そのフランジ部をベース部材2に当接させることで、カバー部材とベース部材2とによって密閉される空間が形成されている。カバー部材とベース部材2とはボルト(図示しない)によって固定され、そのボルトがカバー部材に設けられた取り付け穴を貫通し、ベース部材2に設けられた取り付け穴2aを貫通することで固定されている。
カバー部材とベース部材2とによって形成される内部空間は、仕切り板15によって二つの空間に分離されている。仕切り板15によって分離されている空間の内、燃料電池セルスタック400が配置されている空間が発電室16である。仕切り板15によって分離されている空間の内、他方の空間が排出ガス室17(排出ガス室)である。尚、カバー部材の内壁面と仕切り板15とは、直接若しくは何らかの密着用部材(例えば、可撓性のある薄板部材)を介して間接的に密着している。
仕切り板15は、ベース部材2に設けられた支持部材15aに戴置され、ベース部材2と所定距離を保って保持されている。支持部材15aは、仕切り板15を長手方向の両端において支持するように一対設けられている。従って、一対の支持部材15a,15a間には隙間15b(流入口)が形成されている。カバー部材の壁面に設けられた排気ガス通路(図示しない)を通った排出ガスは、この隙間15bから排出ガス室17へと導入される。排出ガス室17へと導入された排出ガスは、排気口11(流出口)から外部へと排出される。
仕切り板15にはガスタンク3が載置されている。ガスタンク3には、燃料電池セルスタック400が10個並べて配置されており、ガスタンク3から燃料ガスが、それぞれの燃料電池セルスタック400を構成する燃料電池セル4に供給される。
より具体的には、ガスタンク3の上面には、燃料電池セルスタック400の下支持板400bとほぼ同じ形状の開口部(図示しない)が設けられており、その開口部に下支持板400bを密接させてガスタンク3と各燃料電池セルスタック400とが接続されている。従って、燃料電池セルスタック400を構成する燃料電池セル4は、その先端部分を上部側に向けてガスタンク3に立設されている。
各燃料電池セル4は、管状であり、燃料電池セル4の管内を燃料電池セル4の一方の端部から他方の端部へと流れるガスと、その管外を一方の端部から他方の端部へと流れるガスの作用により作動する。本実施形態では、燃料電池セル4の管内を流れるガスは、水素又は炭化水素燃料等を改質した改質ガス等の燃料ガスであり、燃料電池セル4の管外を流れるガスは、酸素を含む空気等の酸化剤ガスである。
ここで、燃料電池セル4を含む燃料電池セルユニット30について、図4を参照しながら説明する。図4に示すように、燃料電池セルユニット30は、燃料電池セル4によって形成され且つ上下方向に延びる管状構造体であり、円筒形の燃料電池セル4と、燃料電池セル4の一方の端部4aに取付けられた内側電極端子40と、他方の端部4bに取付けられた外側電極端子42と、を有している。
燃料電池セル4は、円筒形の内側の電極層44と、円筒形の外側の電極層48と、これらの電極層44、48の間に配置された円筒形の電解質層46と、内側の電極層44の内側に構成される貫通流路50とを有している。また、燃料電池セル4の一方の端部4aに、内側の電極層44が電解質層46及び外側の電極層48に対して露出した内側電極露出周面44aと、電解質層46が外側の電極層48に対して露出した電解質露出周面46aとが設けられている。燃料電池セル4の他方の端部4bは、外側の電極層48が露出した外側電極露出周面48aによって構成されている。貫通流路50は、燃料ガス流路として機能する。内側電極露出周面44aは、内側の電極層44と電気的に通じる内側電極外周面でもある。外側電極露出周面48aは、外側の電極層48と電気的に通じる外側電極外周面でもある。
内側の電極層44は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレートとの混合体、の少なくとも一種から形成される。電解質層46は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。外側の電極層48は、例えば、Sr、Caから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたサマリウムコバルト、銀、などの少なくとも一種から形成される。この場合、内側の電極層44が燃料極になり、外側の電極層48が空気極になる。内側の電極層44の厚さは、例えば、1mmであり、電解質層46の厚さは、例えば、30μmであり、外側の電極層48の厚さは、例えば、30μmであり、その外径は、例えば、1〜10mmである。
内側電極端子40は、内側電極露出周面44aを全周にわたって外側から覆うように配置され且つそれと電気的に接続された本体部分40aと、本体部分40aから燃料電池セル4の長手方向に延びる管状部分40bとを有している。本体部分40a及び管状部分40bは、円筒形であり且つ同心に配置され、管状部分40bの管径は、本体部分40aの管径よりも細くなっている。管状部分40bは、貫通流路50と連通し且つ外部と通じる接続流路40cを有している。本体部分40aと管状部分40bとの間の段部40dは、内側の電極層44の端面44bと当接している。
外側電極端子42は、外側電極露出周面48aを全周にわたって外側から覆うように配置され且つそれと電気的に接続された本体部分42aと、本体部分42aから燃料電池セル4の長手方向に延びる管状部分42bとを有している。本体部分42a及び管状部分42bは、円筒形であり且つ同心であり、管状部分42bの管径は、本体部分42aの管径よりも細くなっている。管状部分42bは、貫通流路50と連通し且つ外部と通じる接続流路42cを有している。本体部分42aと管状部分42bとの間の段部42dは、環状の絶縁部材52を介して外側の電極層48、電解質層46及び内側の電極層44の端面44cと当接している。
内側電極端子40の全体形状と外側電極端子42の全体形状とは同一である。また、内側電極端子40と燃料電池セル4、及び、外側電極端子42と燃料電池セル4とは、その全周にわたって導電性のシール材54によってシールされ且つ固定されている。シール材54は、例えば、銀、銀とガラスの混合物、金、ニッケル、銅、チタンなどを含む各種ロウ材である。
内側電極端子40の接続流路40c、燃料電池セル4の貫通流路50、及び外側電極端子42の接続流路42cは、燃料電池セルユニット30の管内流路30cを構成する。
続いて、燃料電池セルユニット30を含む燃料電池セルスタック400について、図5を参照しながら説明する。燃料電池セルスタック400は、16本の燃料電池セルユニット30と、上支持板400aと、下支持板400bと、接続部材400cと、外部端子400dとを備えている。
上支持板400a及び下支持板400bは矩形であり、それぞれ、燃料電池セルユニット30を2列×8行で支持するように燃料電池セルユニット30の管状部分40b、42bに嵌合する貫通孔(図に明示しない)を有している。上支持板400a及び下支持板400bは、電気絶縁性材料で形成されており、例えば、耐熱性のセラミックスで形成されている。具体的には、アルミナ、ジルコニア、スピネル、フォルステライト、マグネシア、チタニアなどを用いることが好ましい。
16本の燃料電池セルユニット30は、それらが電気的に直列に接続されるように配列されている。詳細には、燃料電池セルユニット30は、隣接した燃料電池セルユニット30の内側電極端子40が交互に上側及び下側に配置されるように配列されている。更に、16本の燃料電池セルユニット30を電気的に直列に接続するための接続部材400cが設けられている。接続部材400cは、隣接した1つの内側電極端子40と1つの外側電極端子42とを電気的に接続する。直列に接続された16本の燃料電池セルユニット30の両端部の内側電極端子40及び外側電極端子42にはそれぞれ、外部と電気的な接続を行うための外部端子400dが設けられている。接続部材400c、外部端子400dは、例えば、ステンレス鋼、ニッケル基合金、クロム基合金などの耐熱金属や、ランタンクロマイトなどのセラミック材料で形成される。各燃料電池セルスタック400の外部端子400dは電気的に直列に接続されていて、その両端には電極棒13,14に接続されている。
図4及び図5を参照しながら説明したように、燃料電池セルスタック400において、燃料電池セルユニット30の内側電極端子40が設けられている端部4aと外側電極端子42が設けられている端部4bとは上下交互になるように配置されている。
ここで、図1〜3に戻り、燃料電池モジュールFCの説明を続ける。更に、引き続く説明においては、図6及び図7も参照する。図6は、図1から流路部材7を取り外した状態を示す斜視図である。図7は、図6の状態から更に、改質器5、燃料電池セルスタック400、ガスタンク3を取り外した状態を示す斜視図である。本実施形態では、燃料電池セルスタック400の上方に位置するように、改質器5が配置されている。改質器5には、配管6C(管路)と配管6Dとが繋がれていて、これらの配管6C及び配管6Dによって、改質器5は燃料電池セルスタック400と所定間隔をおいて上方に位置するように保持されている。配管6Cは、改質器5に被改質ガスとしての都市ガス、空気、及び水蒸気を供給するための配管であって、仕切り板15に対して立設されている。配管6Dは、改質器5において改質された燃料ガスをガスタンク3に供給するための配管であって、ガスタンク3に対して立設されている。
配管6Cを通して改質器5に供給される都市ガス及び空気は、被改質ガス供給管6Aを通って燃料電池モジュールFC内に導入される。また、配管6Cを通して改質器5に供給される水蒸気は、水蒸気供給管6B(管路)を通って燃料電池モジュールFC内に導入される。被改質ガス供給管6A及び水蒸気供給管6Bは、仕切り板15を挟んで配管6Cとは反対側に設けられている混合室15cに繋がっている。被改質ガス供給管6Aから供給される都市ガス及び空気と、水蒸気供給管6Bから供給される水蒸気とは、この混合室15cにおいて混合され、配管6Cへと供給される。
図1〜3には明示しないが本実施形態では、被改質ガス供給管6Aと水蒸気供給管6Bとのそれぞれに電磁弁が取り付けられていて、それぞれの電磁弁は制御部としてのCPUから出力される指示信号に応じて開閉し、改質器5に供給する被改質ガスと空気と水蒸気の比率を変更可能なように構成されている。
改質器5に導入された被改質ガスとしての都市ガス(水蒸気が混合されている場合もあり)及び空気(被改質ガスのみの場合もあり)は、改質器5内に収められている改質触媒によって改質される。改質された燃料ガスは、配管6Dを通ってガスタンク3へと供給される。改質器5に対して配管6Cが繋がっている部分と、改質器5に対して配管6Dが繋がっている部分とは、長手方向において一端近傍と他端近傍とに引き離されている。これによって、改質器5に供給された燃料ガス及び空気は改質触媒に十分に触れることが可能となる。
改質器5には、改質触媒が封入されている。改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したもの、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したもの、が適宜用いられる。これらの改質触媒は球体である。
本実施形態では、改質器5及び各燃料電池セルスタック400を覆うように、流路部材7が設けられている。流路部材7は、空気流路外壁71,72と、空気分配室73と、空気集約室74,75と、空気流路管76a,76b,77a,77bと、外壁78,79を有している。流路部材7は、長手方向に空気流路外壁71,72が、短手方向に外壁78,79が、それぞれ配置され、それらの部材によって箱状となるように形成されている。流路部材7は、改質器5及び各燃料電池セルスタック400を覆うように、仕切り板15に立設されている。続く説明では、流路部材7の仕切り板15に当接する側を下方とし、その下方と反対側を上方として説明する。
空気分配室73は、外壁79の外側上方に取り付けられている。すなわち、空気分配室73は、空気流路外壁71,72と外壁78,79とによって形成される箱状体の外側且つ短手側の上方に取り付けられている。空気分配室73には、空気供給管7Aが繋がれており、酸化剤ガスとしての空気が供給される。空気分配室73には、空気流路管76a,76b,77a,77bも繋がれている。
空気流路管76a,76bは、空気流路外壁71,72と外壁78,79とによって形成される箱状体の内側且つ長手側の上方に、空気流路外壁71に沿うように配置されている。空気流路管76aは、空気流路外壁71側に、空気流路管76bは、空気流路管76aよりも内側に、それぞれ配置されている。空気流路管76a,76bの一端は外壁79を貫通して空気分配室73に繋がれており、他端は空気集約室74に繋がれている。従って、空気分配室73に流入した空気は、空気流路管76a,76bを通り、空気集約室74へと流れ込んで再合流する。
空気流路管77a,77bは、空気流路外壁71,72と外壁78,79とによって形成される箱状体の内側且つ長手側の上方に、空気流路外壁72に沿うように配置されている。空気流路管77aは、空気流路外壁72側に、空気流路管77bは、空気流路管77aよりも内側に、それぞれ配置されている。空気流路管77a,77bの一端は外壁79を貫通して空気分配室73に繋がれており、他端は空気集約室75に繋がれている。従って、空気分配室73に流入した空気は、空気流路管77a,77bを通り、空気集約室75へと流れ込んで再合流する。
空気集約室74,75は、外壁78の内側上方に取り付けられている。すなわち、空気集約室74,75は、空気流路外壁71,72と外壁78,79とによって形成される箱状体の内側且つ短手側の上方に取り付けられている。空気集約室74は空気流路外壁71と密着するように配置されており、空気集約室74に流れ込んだ空気は空気流路外壁71へと流れ出すように構成されている。一方、空気集約室75は空気流路外壁72と密着するように配置されており、空気集約室75に流れ込んだ空気は空気流路外壁72へと流れ出すように構成されている。
空気流路外壁71,72は、それぞれが二重壁構造となっていて、それぞれの内部を空気が流れることができるように構成されている。より具体的には、空気流路外壁71は、上方から三室に分割された構造となっており、上方から順に、第一室711、第二室712、第三室713として形成されている。空気集約室74から流れ込んだ空気は、第一室711に流れ込んだ後、第二室712に流れ込み、その後第三室713に流れ込む。同様に、空気流路外壁72も、上方から三室に分割された構造となっており、上方から順に、第一室721、第二室722、第三室723として形成されている。空気集約室75から流れ込んだ空気は、第一室721に流れ込んだ後、第二室722に流れ込み、その後第三室723に流れ込む。
第三室713,723にはそれぞれ、所定間隔をおいて複数の空気流入孔713a,723aが形成されている。空気流入孔713a,723aは、燃料電池セルスタック400が連設されている方向に、各燃料電池セル4間の間隙に向かう位置であって、燃料電池セル4に対する上下方向の位置が略同一となるように、複数個形成されている。
空気流路外壁71,72に流れ込んだ空気は、空気流入孔713a,723aを通って発電室16内の燃料電池セル4近傍へと流れ込むように構成されている。空気流入孔713a,723aを通って流れ込んだ空気は、燃料電池セル4の外側を通って各燃料電池セル4の下方から上方へと流れる。各燃料電池セル4の上方に至った空気は、各燃料電池セル4の管内流路を通った燃料ガスと合わせて燃焼される。
各燃料電池セルスタック400の上方は、空気と燃料ガスとが混合して燃焼する燃焼部18となっている。燃料ガスは、ガスタンク3から、燃料電池セルユニット30の管内流路30cを通り、燃焼部18に向けて上昇する。また、燃料電池セル4の外側を流れる空気も、燃焼部18に向けて上昇する。空気流路外壁72の燃焼部18に対応する部分には点火装置挿入穴724が設けられ、燃焼ガスと空気との燃焼を開始させるための点火装置(図示しない)が点火装置挿入穴724から燃焼部18に突出されている。この点火装置により燃料ガスと空気とが混合して燃焼する。燃料電池セルスタック400を構成する燃料電池セル4は、燃焼部18によって上方から加熱される。また、空気流入孔713a,723aを通って流れ込む空気も、上述したように空気流路管76a,76b,77a,77b、空気流路外壁71,72を通る間に、燃焼部18における燃焼によって加熱される。
上述したように、燃焼部18において、燃料ガスと空気とが混合して燃焼したことにより発生した排出ガスは、隙間15bから排出ガス室17へと流入する。この流入経路について、図2を模式的に示した図8を参照しながら説明する。図8に示すように、燃焼部18において、燃料ガスと空気とが混合して燃焼したことにより発生した排出ガスは、カバー1に形成された排出ガス流路1aを通って下方に向い、隙間15bから排出ガス室17へと流入する。排出ガス室17に流入した排出ガスは、排気口11から外部へ排出される。
続いて、図9を参照しながら、燃料電池モジュールFCを用いた燃料電池FCSの構成について説明する。図9は、燃料電池FCSの構成を示すブロック図である。図9に示すように、燃料電池FCSは、燃料電池モジュールFCと、燃料供給部FPと、第1空気供給部AP1と、第2空気供給部AP2(酸化剤ガス供給部)と、水供給部WPと、電力取出部EPと、温度取得部TD(温度取得部)と、制御部CS(制御部)とを備えている。燃料供給部FP、第1空気供給部AP1、第2空気供給部AP2、水供給部WP、及び電力取出部EPは、燃料電池FCSの補器ADを構成している。
燃料供給部FPは、燃料供給源としての都市ガス配管から都市ガスを被改質ガスとして燃料電池モジュールFCに供給する部分であって、燃料ポンプ、電磁弁を有している。燃料供給部FPから供給される被改質ガスは被改質ガス供給管6Aへと送り出される。
第1空気供給部AP1は、空気供給源としての大気中から空気を燃料電池モジュールFCに供給する部分であって、空気ブロア、電磁弁を有している。第1空気供給部AP1から供給される空気は空気供給管7Aへと送り出される。
第2空気供給部AP2は、空気供給源としての大気中から空気を燃料電池モジュールFCに供給する部分であって、空気ブロア、電磁弁を有している。第2空気供給部AP2から供給される空気は被改質ガス供給管6Aへと送り出され、燃料供給部FPから供給される被改質ガスと混合される。
水供給部WPは、水供給源としての水道管から水を燃料電池モジュールFCに供給する部分であって、水ポンプ、電磁弁を有している。水供給部WPから供給される水は、燃料電池モジュールFC内部で水蒸気となって水蒸気供給管6Bへと送り出される。
電力取出部EPは、燃料電池モジュールFCから電力を取り出す部分であって、インバータ等の電力変換装置を有している。電力取出部EPは、電極棒13,14と繋がっていて、変換した電力は電力供給先へと送り出すように構成されている。
温度取得部TDは、燃焼部18の温度を直接的若しくは間接的に取得する部分である。本実施形態の場合、温度取得部TDは燃焼部18の温度を間接的に取得するように構成されていて、改質器5の温度を検知し、改質器5の温度を示す信号を制御部CSに出力する。制御部CSでは、この信号に基づいて、燃焼部18の温度を推測する。この燃焼部18の温度を推測する根拠は、事前に計測された燃焼部温度と改質器温度との相関関係によるものである。尚、温度取得部TDが改質器5の温度を検知する態様としては、温度センサを改質器5の上面に当接させることが好ましい態様である。この場合、改質器5内の温度は、事前に計測された改質器内温度と改質器外温度との相関関係に基づいて算出される。また、温度取得部TDが燃焼部18の温度を直接的に取得する場合には、燃焼部18に温度センサを配置する。制御部CSは、燃料供給部FP、第1空気供給部AP1、第2空気供給部AP2、水供給部WP、及び電力取出部EPのそれぞれを制御するための部分であって、CPUやROMを有している。上述したような燃料電池モジュールFCの動作は、制御部CSからの指示信号に基づいて実行される。制御部CSは、少なくとも温度取得部TDにより改質器5が水蒸気改質可能な温度であると検知された際に、改質器5に被改質ガスと水蒸気だけを供給するよう制御する。これにより、改質器5では、後述するオートサーマル改質反応が進行することとなる。ここでは改質器5の温度により間接的に燃焼部18の温度を取得したが、燃料電池セル集合体の温度を測定することで間接的に燃焼部温度測定を行っても良い。
続いて、図10を参照しながら、本実施形態に係る燃料電池モジュールFCを含む燃料電池システムFCSの動作及びその運転方法について説明する。尚、以下の説明においては便宜上、燃料電池モジュールFCの動作を説明することでその燃料電池モジュールFCを含む燃料電池システムFCSの説明としている。
本実施形態に係る燃料電池モジュールFCの運転方法は、着火工程と、改質工程と、ガス供給工程と、セル作動工程と、燃焼工程と、を備えている。これらの工程は、後述するように必ずしも順次実行される工程ではなく、並行して実行されたり、順番を変えて実行されたりする工程である。
先ず、燃料電池モジュールFCを温めるために、燃料電池モジュールFCを含む回路に負荷をかけない状態、即ち、燃料電池モジュールFCを含む回路を開いた状態で、燃料電池モジュールFCに燃料ガスと空気を供給する。この段階では、燃料ガスと空気が存在しても、回路に電流が流れないので、燃料電池モジュールFCは、発電を行わない。
詳細には、燃料ガスを供給する。具体的には、燃料供給部FPから被改質ガスを被改質ガス供給管6Aに供給する。このとき、制御部CSは、都市ガス及び空気を含む燃料ガスを供給するように、燃料ポンプ及び燃料供給部FPの空気ブロア等に信号を出力する。図10には、燃料ポンプの制御電圧及び燃料供給部FPの空気ブロアの制御電圧を示している。被改質ガス供給管6Aから供給された被改質ガスは改質器5を通過して燃料ガスとして、ガスタンク3内に貯まる。それにより、各燃料電池セルユニット30への均一且つ一様な燃料ガスの供給を確保する。ガスタンク3内に溜まった燃料ガスが、燃料電池セルユニット30の管内流路30cを通って流れ、内側の電極層44に作用する。作用しなかった燃料ガスが、各燃料電池セルユニット30の上部空間に達する。
また、大気中の空気を供給する。具体的には、空気供給部APによって空気供給管7Aに供給し、上述したような経路を通って、空気流入孔713a,723aから発電室16内へと導く。発電室16内へと導かれた空気は、外側の電極層48と作用する。作用しなかった空気は、各燃料電池セルユニット30(燃料電池セル4)の上方に達する。
次いで、点火装置(図示しない)を用いて、燃料ガスと空気とを燃焼させる(着火工程、燃焼工程)。それにより生じた排出ガスは、高温になる。排出ガスは、カバー1(図8参照)を通って、排出ガス室17へと流入する。排出ガス室17へと流入した排出ガスは、排気口11から排出される。
燃料ガスと空気とが燃焼する際に、発電室16内が昇温される。外部から導入される空気は、上述した経路を流れる間に、発電室16内と熱交換を行って暖められる。高温の排出ガスは、排出ガス室17へと流入し、排出ガス室17内を昇温する。
続いて、炭化水素系の都市ガスと空気とを予め混合したガスを改質器5に供給する(改質工程)。改質器5においては、式(1)の部分酸化改質反応POXが進行する。この部分酸化改質反応は発熱反応であるので、起動性が良好である。部分酸化改質反応POXが進行しても燃焼部18では継続して燃焼反応が持続する。
CmHn+m/2O2 → mCO+n/2H2 (1)
本実施形態では、この式(1)による部分酸化改質反応POXの前に、式(1−1)による部分酸化改質反応POXを行うことで、部分酸化改質反応POXを2段階で行っている。改質器5の温度が所定温度(例えば、450度程度)を下回っている場合には、式(1−1)のように、改質器5へ供給する空気の量を減らして、メタンが水素に転換しすぎることを抑制する。
CmHn+m/8O2 → m/4CO+n/8H2+3m/4CmHn (1−1)
この式(1−1)による部分酸化改質反応POXを行って、改質器5の温度が所定温度(例えば、450度程度)以上となった場合には、上述した式(1)のように、改質器5へ供給する空気の量を増やして、水素の量を増やすように制御する。この制御で用いる所定温度は、燃焼部18の温度が基準温度となる場合の改質器5の温度として事前に設定されている温度である。基準温度とは、水素の拡散速度よりも水素の燃焼速度が大きくなる場合の温度に対応するものであって、実験等で事前に設定されている温度である。
部分酸化改質反応POXの実行開始から所定時間経過後、都市ガスと空気と水蒸気とを予め混合したガスを改質器5に供給する(改質工程)。このとき、制御部CSは、都市ガス及び空気を含む燃料ガスに加えて水蒸気を供給するように、燃料ポンプ、燃料供給部FPの空気ブロア、及び水ポンプ等に信号を出力する。図10には、水ポンプの制御電圧を示している。改質器5においては、上述の部分酸化改質反応POXと後述する水蒸気改質反応SRとが併用されたオートサーマル改質反応ATRが進行する。このオートサーマル改質反応ATRは、熱的に内部バランスが取れるので、改質器5内では熱自立しながら反応が進行する。すなわち、酸素が多い場合は部分酸化改質反応POXによる発熱が支配的となり、水蒸気が多い場合は水蒸気改質反応SRによる吸熱が支配的となる。この段階では、既に起動の初期段階を過ぎており、発電室16内がある程度の温度に昇温されているので、吸熱反応が支配的であっても大幅な温度低下を招くことはない。また、オートサーマル改質反応ATRが進行しても燃焼部18では継続して燃焼反応が持続する。
オートサーマル改質反応の実行開始から所定時間経過後、温度取得部TDにより改質器5が水蒸気改質可能な温度であると検知されると、都市ガスと水蒸気とを予め混合したガスを改質器5に供給する(改質工程)。このとき、制御部CSは、都市ガスだけを含む燃料ガスに加えて水蒸気を供給するように、燃料ポンプ及び水ポンプ等に信号を出力すると共に第2空気供給部AP2の空気ブロアを停止させるよう信号を出力する。
改質器5においては、式(2)の水蒸気改質反応SRが進行する。この水蒸気改質反応SRは吸熱反応であるので、燃焼部18からの燃焼熱による熱バランスをとりながら反応が進行する。この段階では、既に起動の最終段階であるため、発電室16内が十分高温に昇温されているので、吸熱反応を主体としても大幅な温度低下を招くことはない。また水蒸気改質反応SRが進行しても燃焼部18では継続して燃焼反応が持続する。
CmHn+mH2O → mCO+(n/2+m)H2 (2)
上述したように着火工程から燃焼工程の進行に合わせて改質工程を切り替えていくことで、発電室16内の温度が徐々に上昇する。発電室16内及び燃料電池セル4の温度が、燃料電池モジュールFCを安定的に作動させる定格温度よりも低い所定の発電温度に達したら、燃料電池モジュールFCを含む回路を閉じる。それにより、燃料電池モジュールFCは発電を開始し、回路に電流が流れる(セル作動工程)。燃料電池の発電により、燃料電池セル4自体も発熱し、更に、燃料電池セル4の温度が上昇する。その結果、燃料電池モジュールFCを作動させる定格温度、例えば、600〜800℃になる。
その後、定格温度を維持するために、燃料電池セル4で消費される燃料ガス及び空気の
量よりも多い量の燃料ガス及び空気を供給し、発電室16での燃焼を継続させる(燃焼工程)。なお、発電中は、改質効率の高い水蒸気改質反応SRで発電が進行せしめられる。水蒸気改質反応SR自体は(厳密に言えば)400℃〜800℃程度で行われるが、燃料電池との組み合わせにおいては500℃〜700℃程度で運転される。