JP5262280B2 - 加工部表面平滑性に優れた鋼板及びその製造方法 - Google Patents

加工部表面平滑性に優れた鋼板及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、深絞り成形性に優れるとともに、加工部表面平滑性に優れた鋼板及びその製造方法に関するものである。
自動車の車体や部品用、家電用、建材用等に使用される鋼板は、板厚を薄くして軽量化しても十分な強度が確保できるように高強度鋼板が要求されている。一方、これらの用途では、鋼板をプレス成形、深絞り成形などによって目的とする形状に加工するため、プレス成形時の加工が割れやしわを発生することなく実施できる優れた深絞り成形性が要求されている。また、ほとんどの場合、鋼板表面を塗装するため、即ち、良好な塗装性を得るために、成形しても鋼板の表面が肌荒れしない、耐肌荒れ性も要求される。
特許文献1には、NbとCの含有量を調整し、特定の(222)集積度を有し、引張強さ440MPa以上の高強度と平均r値(ランクフォード値)1.2以上を有する、深絞り性に優れた高強度鋼板が記載されている。引用文献2には、板厚が1.2mm以上で、r値2.9以上が得られる、厚物の冷延鋼板が記載されている。引用文献3には、成形時に生じる深絞り高さの変動を低減し、部品の加工プロセスの簡略化を可能にする高炭素冷延鋼板が記載されている。引用文献4には、耐肌荒れ性と深絞り成形性の両立を図った極低炭素冷延鋼板が記載されている。
鋼板の深絞り成形性はαFe相やγFe相の集合組織に依存し、特に鋼板面に結晶の{222}面集積度を増加させることによって向上できるとされている。
特許文献5は、高強度冷延鋼板及び溶融亜鉛めっき鋼板に関するものであり、鋼板に含有されるSi、Mn、Pの各量を、板面に平行な{222}面と{200}面によるX線回折強度の比との間の一定式に基づいて制御することによって、鋼板の深絞り性が確保できることが示されている。しかしながら、表面に付与されるめっきが集合組織に与える影響については示されていない。
特許文献6は、ほうろう用高強度冷延鋼板およびその製造方法に関するものである。ここでは、含有するC量でNb添加量を規定し、さらに、熱間圧延と冷間圧延の条件を規定することによって(111)集合組織を制御している。
特許文献7は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関するものである。X線回折強度のうち、{200}面強度と{222}面強度の比、I(200)/I(222)が、0.17未満となると、めっき表面に筋模様欠陥の発生がなくなること、および熱間圧延の仕上圧延温度をAr3+30℃(冷却時のフェライト変態が始まる温度+30℃)以上とすることによりX線回折強度比、I(200)/I(222)が0.17未満となるという知見が示されている。しかしながら、めっきを付与することによって、鋼板の集合組織が制御されたことは示されていない。
特許文献8には、極低C鋼による深絞り用冷延鋼板において、スラブの高温加熱による熱延板結晶粒粗大化に伴う肌荒れの問題を解決するため、スラブ加熱温度及び仕上げ温度を従来より低温で、かつ特定の温度範囲にする発明が記載されている。
特許文献9は、深絞り成形性および耐肌荒れ性に優れた極低炭素冷延鋼板に関するものである。重量%で鋼中のC含有量が0.01%以下の極低炭素冷延鋼板であって、鋼板の表面より全板厚の1/10を占める表層部のフェライト粒度No.をa、板厚中心を中心として全板厚の1/2を占める内層部のフェライト粒度No.をbとするとき、a−b≧0.5、a≧7.0、b≦7.5を満足し、さらに{222}面と{200}面からの回折X線強度の比I(222)/I(200)を鋼板の表面より全板厚の1/15の部分で5.0以上、かつ鋼板の板厚中心部で12以上に制御することによって、プレス成形時の鋼板の肌荒れが軽減できるものであった。
以上に示したように、従来から鋼板の深絞り成形性を向上させるためにαFe相やγFe相の{222}面集積度を向上させる手法が考案され、鋼板成分、圧延条件や温度条件が最適化されてきた。
さらに特許文献10では、Al含有量が6.5質量%以上10質量%以下の高Al含有鋼板で、αFe結晶の{222}面集積度が60%以上95%以下、又は{200}面集積度が0.01%以上15%以下の一方又は両方を満たすことで、高いAl含有量でも加工性を高くできることが開示されている。また高Al含有鋼板で、前記の特定面の面集積度を向上させる方法として、Al含有量が3.5質量%以上6.5質量%未満の母材の表面に溶融Alめっき法でAl合金を付着させ、冷間圧延し、更にAlを拡散熱処理することが開示されている。
特開2005−120467号公報 特開平11−50211号公報 特開2000−328172号公報 特開平11−350072号公報 特開平6−2069号公報 特開平8−13081号公報 特開平10−18011号公報 特開平2−267232号公報 特開平11−350072号公報 特開2006−144116号公報
従来から鋼板成分、圧延条件や温度条件を最適化してαFe相やγFe相の{222}面集積度を向上させる手法が考案され、鋼板の深絞り成形性向上のニーズに応えてきた。しかし自動車用鋼板、家電用鋼板では、深絞り成形性の向上のみならず、成形しても鋼板の表面が肌荒れしない耐肌荒れ性を同時に具備する鋼板が要求されている。ところが、{222}集合組織を形成しようとすると結晶粒が粗大化しやすく、この結晶粒粗大化によって、成形時の表面肌荒れが問題となっていた。結晶粒の粗大化を阻止しようとすると、それにともなって{222}面集積度が低下してしまい、深絞り成形性が損なわれることとなった。
特許文献8、9においては、結晶粒の粗大化を防止して成形時の肌荒れを低減する発明が記載されているが、これら文献に記載のものは、深絞り成形性において十分な品質を得るにはいたっていない。
本発明は、従来にない高い深絞り成形性を実現するとともに、成形時の耐肌荒れ性の向上を合わせて実現することのできる鋼板とその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)αFe相の鋼板面に対する{222}面集積度が65〜99%であり、鋼板の板厚方向の平均結晶粒径をdt[μm]、圧延方向の平均結晶粒径をdR[μm]としたときに、
t/dR≧1.2
であることを特徴とする鋼板
(2)鋼板の板厚をt[μm]としたときに、t/dt≦10であることを特徴とする上記(1)に記載の鋼板
(3)母材鋼板の少なくとも片面に、Al、Ni、Si、Sn、V、Znのうち1つ以上の元素と残部不可避的不純物からなる金属の第二層を付着させ、該鋼板に1回当たり圧下率30%未満の低圧下スキンパス冷間圧延を少なくとも2回以上行い、その後熱処理を行うことを特徴とする鋼板の製造方法。
(4)母材鋼板の少なくとも片面に、Al、Ni、Si、Sn、V、Znのうち1つ以上の元素と残部不可避的不純物からなる金属の第二層を付着させ、該鋼板にショットブラスト処理及び冷間圧延を行い、その後熱処理を行うことを特徴とする鋼板の製造方法。
(5)前記第二層は、質量%で(以下同じ)、さらに、Si:0.01〜40%、Zn:60〜99%、Sn:60〜99%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記(3)又は(4)に記載の鋼板の製造方法。
(6)前記熱処理として、700〜1200℃の温度で30秒以上の時間の熱処理を行うことを特徴とする上記(3)乃至(5)のいずれかに記載の鋼板の製造方法。
(7)前記熱処理として、500℃以上600℃未満の温度で30秒以上1時間以内の第1段熱処理と、その後に700〜1200℃の温度で30秒以上の時間の第2段熱処理を行うことを特徴とする上記(3)乃至(5)のいずれかに記載の鋼板の製造方法。
本発明の鋼板は、αFe相の鋼板面に対する{222}面集積度が65〜99%であり、dt/dR≧1.2を満足するので、深絞り成形性に優れるとともに、加工部表面平滑性に優れている。また、母材鋼板の少なくとも片面に、Al、Ni、Si、Sn、V、Znのうち1つ以上の元素と残部不可避的不純物からなる金属の第二層を付着させ、該鋼板に1回当たり圧下率30%未満の低圧下スキンパス冷間圧延を少なくとも2回以上行い、その後熱処理を行うことにより、当該深絞り成形性と加工部表面平滑性に優れる鋼板を製造することができる。
本発明者らは、特許文献10に開示されている、Alを6.5質量%以上10質量%以下含有し、αFe相の{222}面集積度が60%以上95%以下、または{200}面集積度が0.01%以上15%以下の一方または両方を満たす鋼板より、{222}面集積度をさらに向上させる技術開発に取り組み、各種実験を行ってきた。その結果、鋼板に付着させる金属はAlに限定されず、Fe以外の金属として、Al、Ni、Si、Sn、V、Znのうち1つ以上の元素と残部不可避的不純物からなる第二層を鋼板に付着させたまま冷間圧延(冷延)を施し、その後に熱処理で鋼板組織の結晶を再結晶させることによって{222}面集積度が向上できること、この現象が冷延の際に鋼中に形成される特別な転位組織によって発現できることを発見した。熱処理により該転位組織から{222}面集合組織を発達させるような再結晶核が発生するようになるのである。さらに、再結晶後の鋼板のAl含有量が6.5質量%未満となるような成分系であると上記再結晶核の発生頻度が高くなる傾向にあり、結果としてより高い{222}面集積度を有する鋼板が得られるようになった。第二層を付着させる鋼板のAl含有量を3.5質量%以下とすることにより、再結晶後の鋼板のAl含有量が6.5質量%未満である鋼板製造を可能とした。
一方、{222}集合組織を形成しようとすると結晶粒が粗大化しやすく、単に上記のFe以外の金属からなる第二層を鋼板に付着させたまま冷間圧延を施し、その後に熱処理で鋼板を再結晶させたのでは、{222}面集積度は向上して深絞り成形性は改善されるものの、このようにして製造した鋼板を用いて深絞り成形を行うと、成形時に鋼板表面に肌荒れが発生することが判明した。そして、{222}集合組織を形成させるための処理によって結晶粒が粗大化し、それが原因で成形時の肌荒れが発生することがわかった。
本発明の鋼板は、αFe相の鋼板面に対する{222}面集積度が65〜99%であるとともに、鋼板の板厚方向の平均結晶粒径をdt[μm]、圧延方向の平均結晶粒径をdR[μm]としたときに、
t/dR≧1.2 (1)
を満足する(上記(1)に係る発明)。
{222}面集積度が65〜99%であることによって深絞り成形性を向上すると同時に、dt/dR≧1.2とすることで成形時の肌荒れの発生を防止することが可能になった。
上記のように、本発明の鋼板は第1に、αFe相の鋼板面に対する{222}面集積度が65%以上99%以下であることを特徴としている。{222}面集積度が低いと、プレス加工、深絞り加工の際に破断、割れが生じやすくなるが、{222}面集積度が65%以上であれば良好な深絞り成形性を実現することができる。一方、{222}面集積度が99%超となると加工性の効果は飽和する。そのため、{222}面集積度が65%以上99%以下とした。{222}面集積度が本発明の範囲であると、絞り加工の評価値である平均r値が2.0以上となり、優れた深絞り成形性が得られるようになる。本発明の鋼板はαFe相を有する結晶組織である。αFe相は構造が体心立方のFe結晶相であり、他原子がFeを一部置換したり、Fe原子間に侵入したりしたものを含んでいる。
ここで面集積度の測定は、MoKα線によるX線回折法で行うことができる。αFe相の{222}面集積度は以下のように求める。試料表面に対して平行なFeのα結晶11面{110}、{200}、{211}、{310}、{222}、{321}、{411}、{420}、{332}、{521}、{442}の積分強度を測定し、その測定値それぞれをランダム方位である試料の理論積分強度で除した後、{222}強度の比率を百分率で求めた。これは以下の式(2)で表される。
{222}面集積度
=[{i(222)/I(222)}/{Σi(hkl)/I(hkl)}]×100 … (2)
ただし、記号は以下の通りである。
i(hkl):測定した試料における{hkl}面の実測積分強度
I(hkl):ランダム方位をもつ試料における{hkl}面の理論積分強度
Σ :α−Fe結晶11面についての和
ここで、αFe結晶粒に関しては、別途EBSP(後方散乱電子回折像(Electron Backscattering Diffraction Pattern)法によっても{222}面集積度を求められる。EBSP法で測定できる結晶面の総面積に対する{222}の面積率が、{222}集積度となる。したがって、前記方法によっても、本発明の鋼板は、{222}面集積度が65〜99%以下である。本発明では、前記すべての分析手法で得られる値が本発明の規定範囲を満足する必要はなく、一つの分析手法で得られる値が本発明の規定範囲を満足すればその効果が得られるものである。
また、EBSP法では、鋼板面に対して{222}面のずれが生じるが、前記ずれが30°以内であることが好ましい。{222}面のずれをL断面で観察し、L断面における{222}面のずれが30°以下の結晶粒の面積割合が80〜99.9%である方がより好ましい。更に好ましくは、L断面における{222}面のずれが0〜10°の結晶粒の面積割合が40〜98%である。
また、平均r値はJIS Z 2254で求められる平均塑性ひずみ比を意味し、以下の式で算出される値である。
平均r値=(r0+2r45+r90)/4 … (3)
なお、r0、r45、r90は、試験片を板面の圧延方向に対し、それぞれ0°、45°、90°方向に採取し測定した塑性ひずみ比である。
ここで、ランダム方位を持つ試料の積分強度は、試料を用意して実測して求めてもよい。
本発明の鋼板は、上記(1)式に示したとおり、dt/dR≧1.2とする。
通常、耐肌荒れ性は鋼板の結晶粒径が小さい方がより優れるが、結晶粒径が小さくなると深絞り性が劣化してしまう。本発明においては、結晶粒径を小さくするのではなく、dt/dR≧1.2とすることにより、深絞り成形性を悪化させずに成形時の肌荒れを防止することに成功した。dt/dR≧1.2になると結晶回転が分散されて、個々の結晶回転によって生じる滑り変形帯の段差が低下し、加工後の表面平滑性に優れるとともに、深絞り加工性にも優れた鋼板が得られるのである。
t/dR≧1.4とするとより好ましい。これにより、dt/dRが1.2〜1.4の範囲である場合に比較してさらに耐肌荒れ性が改善されるとともに、{222}面集積度を上昇させることができ、深絞り成形性が向上する。なお、dt/dRが3を超えると効果が飽和するので、上限を3とすることが好ましい。
本発明はさらに、鋼板の幅方向の平均結晶粒径をdwとしたときに、dR/dwの範囲を0.8〜1.2とすると好ましい。これにより、板面内で等方的となって、どの方向に曲げた場合でも優れた深絞り成形性と耐肌荒れ性の両立が達成できる。
本発明においては、上記(1)に係る発明において、鋼板の板厚をt[μm]としたときに、t/dt≦10とすることにより、{222}面集積度をより向上することができる(上記(2)に係る発明)。
即ち、dt/dR≧1.2と組み合わせたときに{222}面集積度を70%以上とすることができる。これにより、深絞り成形性がより一層向上するとともに、耐肌荒れ性をより一層改善することができる。なお、t/dtの下限は、上記の効果を得るために2以上とすると好ましい。本発明においては、第二層を母材鋼板の両側に付与し、母材鋼板の両側から再結晶させて結晶粒を成長させるために、板厚方向で少なくとも2個の結晶粒があることが好ましいからである。
t/dR≧1.4かつt/dt≦10とすると、{222}面集積度はさらに向上し、80%以上とすることができる。
本発明において、熱処理後の鋼板について、dt、dR、dwは公知の方法で求めることができる。例えば、鋼板の断面を研磨、エッチング後の金属組織を光学顕微鏡で観察し、dtは板厚方向の結晶粒径、dRは圧延方向の結晶粒径、dwは鋼板の幅方向の結晶粒径として求めれば良い。
本発明の鋼板の板厚は20μm以上2mm以下とすると好ましい。板厚が20μm未満であると、dt/dR≧1.2とするためのプロセス制御が難しくなり、鋼板が反りやすくなるので、鋼板製造歩留まりが低下することがある。また、板厚が2mmを超えると、dt/dR≧1.2を維持した状態でt/dt≦10とするためのプロセス制御が難しくなり、鋼板製造歩留まりが低下し、プレス成形性も低下することがある。
板厚方向の圧延直角方向断面の平均結晶粒径dtは2μm以上400μm以下が好ましい。dtが2μm未満であれば、t/dt≦10にすることができなくなる。dtが400μmを超えると本発明を以っても表面平滑性が劣化してくる。
圧延方向断面の平均結晶粒径dRは1μm以上が好ましい。dRが1μm以上であれば、dt/dR≧1.2に制御しやすくなる。一方、dRが330μmを超えるとdt/dRが1.2以上とならない場合が生じるため、dRは330μm以下であることが好ましい。
次に、本発明の鋼板の製造方法について説明する。
板厚が10μm以上10mm以下の鋼板(以下「母材鋼板」ともいう。)を準備し、該鋼板の少なくとも片面に第二層を付着させる。第二層は、Al、Ni、Si、Sn、V、Znのうち1つ以上の元素と残部不可避的不純物からなるFe以外を主成分とする金属である。不可避的不純物として、質量%で、S、P、N、O(酸素)を合計で0.3%以下含有しても良い。また、後述する冷延、熱処理後の第二層には、上記の不可避的不純物に加え、Feを10%以下含有しても良い。
母材鋼板の厚みが10μm未満であると冷延以降の製造歩留まりが低下するため、実用に適さないことがある。一方、10mm超であると、{222}面集積度が本発明の範囲に入らなくなる可能性が高まる。従って、母材鋼板の厚みは10μm以上10mm以下が好ましく、50μm以上5mm以下とすると、より好ましい。
本発明において第二層はFe以外を主成分とする金属である。「Fe以外を主成分とする金属」とは、第二層を構成する金属元素のうち、Fe以外の元素の合計含有量が90質量%以上であることを意味する。第二層を構成する金属元素として、Fe、Al、Co、Cu、Cr、Ga、Hf、Hg、In、Mn、Mo、Nb、Ni、Pb、Pd、Pt、Sb、Si、Sn、Ta、Ti、V、W、Zn、Zrのうち1つ以上の元素及びその他不可避不純物を含有していてもよい。第二層は、Al、Ni、Si、Sn、V、Znのうち1つ以上の元素を主成分とすると好ましい。これは、Al、Ni、Si、Sn、V、Znのうち1つ以上の元素の合計含有量が90質量%以上であることを意味する。
本発明では冷延前に母材に付着させる第二層の厚みの望ましい範囲は0.05μm以上1000μm以下である。冷延及び熱処理後に鋼板と第二層が合金化している場合には、合金化している厚みは第二層の厚みに含める。また、両面に第二層が付着している場合には両面の厚みの合計を第二層の厚みとする。第二層の厚みが0.05μm未満であると、{222}面集積度が低くなり、本発明の範囲に入らなくなる可能性が高まるため0.05μm以上が好ましい。1000μm超の場合にも、{222}面集積度が低くなり、本発明の範囲に入らなくなる可能性が高まるため1000μm以下が好ましい。第二層の厚みは0.3μm以上500μm以下とするとより好ましい。
この鋼板を圧延し、その後熱処理によって再結晶させる。Fe以外の金属からなる第二層を鋼板に付着させたまま冷間圧延を施し、その後に熱処理で鋼板を再結晶させることによって{222}面集積度を65%以上とすることができる。また、dt/dR≧1.2を実現するためには、再結晶熱処理の前の冷間圧延において、鋼板の表層部位により多くの歪を付与するとよい。具体的には、1回当たりの圧下率が30%以下の低圧下スキンパス冷間圧延を少なくとも2回以上繰り返すことにより、鋼板表層部に多くの歪が付与され、その後の再結晶熱処理によってdt/dR≧1.2を実現することができる(上記(3)に係る発明)。
鋼板の板厚が10μm未満では本鋼板製造時のハンドリングが煩雑になり、鋼板が反りやすくなるので、歩留が低下してしまう場合がある。一方、板厚が10mmを超えると、鋼板の{222}面集積度が低下してしまい、プレス成形性が低下する場合がある。
母材鋼板は、極低炭素鋼、低炭素鋼であれば、本発明の効果を得ることができる。Cが0.01%以下の極低炭素鋼であればプレス成形性が向上し、Cが0.01%超0.30%以下の低炭素鋼であれば低コストで高強度化できるので、好適である。
高い{222}面集積度を得るためには、母材鋼板の少なくとも片面に、第二層を付着した状態で冷間圧延を施すことが必須である。ここで、第二層はFe以外を主成分とする、Al、Ni、Si、Sn、V、Znのうち1つ以上の元素と残部不可避的不純物からなる金属である。Feを主成分としたのでは、本発明の高い{222}面集積度を実現することができない。
第二層の鋼板への付着は溶融めっき法、電気めっき法、ドライプロセス法、クラッド法等によって実施でき、いずれの方法で付着を行っても本発明の効果を得ることができる。また、付着させる第二層に希望する合金元素を添加させ、同時に合金化させることも可能である。
さらに1回当たりの圧下率が30%以下の低圧下スキンパス冷間圧延を少なくとも2回以上繰り返す。低圧下であるため、鋼板表層部に多くの歪が付与され、その後の再結晶熱処理によってdt/dR≧1.2を実現することができる。この効果を得るために、1回当たりの圧下率は3%以上とすることが好ましい。
必要に応じて、低圧下スキンパスの後、30〜50%の圧下率で圧延を行い、板厚を所定のサイズとする。ただし、繰り返し行う圧延の合計圧延率が低すぎると、熱処理工程後に得られる鋼板の{222}面集積度が十分に得られない場合があるが、合計圧延率が10%以上であれば十分な{222}面集積度を得ることができるので好ましい。一方、合計圧延率が95%超では{222}面集積度の増加は飽和し、圧延コストが増加し、工業的メリットが低下するので、合計圧延率は95%以下とすることが好ましい。冷間圧延では歪エネルギーの蓄積が高くなるため、その後の熱処理工程における再結晶が効果的に進行する。
鋼板表層部に多くの歪を付与する手段として、上記低圧下のスキンパスに加え、ブラスト処理を行ってもよい(上記(4)に係る発明)。
この場合には、ブラスト処理を表面から板厚の約3%程度以下の距離の領域に歪が入る条件で実施することが好ましい。また、{222}面集積度を65%以上とするためにはブラスト処理のみでは足りず、ブラスト処理の後に冷間圧延を行う。また、ブラスト処理によって鋼板に反りが発生する場合には、ブラスト処理の後、形状を整える程度の矯正圧延を実施してもよい。
その後の工程において熱処理を施して再結晶させる必要がある。鋼板の表層にFe以外の金属を主成分とする第二層が付着し、その状態で圧延を行い、さらに熱処理によって再結晶させた結果として、鋼板が高い面集積度となる。その際には第二層に含まれているAl、Ni、Si、Sn、V、Znのうち1つ以上の元素を鋼中に拡散する効果も含んでいる。第二層に含まれている元素が鋼中に拡散することによって、より高い{222}面集積度が得られる傾向もある。そのために、本発明の鋼板を製造する際に、鋼板に付着させる金属(冷間圧延前の第二層)は、質量%で、さらに、Si:0.01〜40%、Zn:60〜99%、Sn:60〜99%の1種又は2種以上を含有することが好ましい(上記(5)に係る発明)。
第二層中のSi、Zn、Sn等の元素は、例えば、Al−SiなどのAl合金、Zn−AlなどのZn合金、Sn−NiなどのSn合金等により、第二層に含有させることができる。これらの元素は、母材鋼板を圧延する際に歪エネルギーを効果的に蓄積させる効果がある。
第二層に含有する成分がすべて鋼板に均一に拡散したと仮定したとき、第二層に含有する成分のうちFeを除く成分の合計が、鋼板中に0.5質量%以上含有する量とすることが好ましい。これにより、鋼板の{222}面集積度を十分に高めることができる。一方、第二層に含有する成分のうちFeを除く成分の合計が、鋼板中に6.5%超含有する量とすると、鋼板の破断伸びが低下してプレス成形性が劣化する場合がある。鋼板中に含有する濃度として、6.5質量%以下であればこのような問題の発生を防止することができるので好ましい。
ここで、第二層にAlが含有される場合には、母材鋼板の望ましいAl含有量は3.5質量%未満とすることが好ましい。母材鋼板のAl濃度が3.5質量%以上であり、第二層にAl合金を付着したまま熱処理すると、熱処理中に収縮を起こして寸法精度が著しく低下することがある。従って、本発明では第二層にAlが含有される場合には、母材鋼板のAl含有量は3.5質量%未満とすることが好ましい。
次に、第二層にAlが含有されない場合には、母材としてのAl含有量は6.5質量%未満を本発明の範囲とすることが好ましい。少なくとも片面に第二層としてFe、Co、Cu、Cr、Ga、Hf、Hg、In、Mn、Mo、Nb、Ni、Pb、Pd、Pt、Sb、Si、Sn、Ta、Ti、V、W、Zn、Zrのうち1つ以上の元素を付着させる工程が含まれる場合には、母材鋼板のAl含有量が6.5質量%以上になると、得られる鋼板の引張破断伸びが低下して、高い{222}面集積度を有しても十分な加工性が得られにくくなる。従って、この場合の母材鋼板のAl含有量は6.5質量%未満とすることが好ましい。
次に、熱処理の詳細について説明する。
本発明においては、熱処理前に低圧下スキンパス冷間圧延を少なくとも2回繰り返しているので、鋼板の表層部位に多くの歪が付与されており、結果として熱処理後にdt/dRを1.2以上とすることができる。
鋼板を再結晶させる目的を担う熱処理工程は、真空雰囲気、Ar雰囲気、H2雰囲気、ヘリウム雰囲気といった非酸化性雰囲気で行うことができる。熱処理を1段で行う場合、熱処理温度は700℃以上1200℃以下とすると好ましい(上記(6)に係る発明)。
700℃未満であると{222}面集積度は低く、本発明の範囲には到達できないことがある。また、700〜1000℃の温度範囲であれば熱処理時間は30秒以上が望ましい。温度が1000℃以下であり熱処理時間が30秒未満であると、{222}面集積度は低くなることがあり、本発明の範囲には到達できない場合も発生する。熱処理温度が1000℃超であると、熱処理時間の制限はなく高い{222}面密度が得られる。特に1000℃超であると30秒以下の熱処理時間であっても{222}面集積度は容易に増加させられる。なお、熱処理温度が1200℃超であると熱処理設備費用が高くなり、工業的メリットが薄れるので、1200℃を上限とすることが好ましい。
次に、熱処理時の好ましい昇温速度は1℃/分以上1000℃/分以下である。昇温速度を1000℃/分以下にすると、より高い{222}面集積度が容易に得られるようになる。また1℃/分以上にすると生産性が格段に向上できる。従って、昇温速度の好ましい範囲は1℃/分以上1000℃/分以下である。
以上に述べた本発明の好ましい熱処理条件を採用することにより、鋼板のdR/dwの範囲を0.8〜1.2の好ましい範囲とすることができる。これに反し、再結晶が不十分で圧延組織が残っているとdR/dwが1.2を超えることがある。
t/dRをより好ましい条件である1.4以上とするためには、冷間圧延後の熱処理を1段熱処理ではなく2段熱処理とする。2段熱処理の1段目については、500℃以上600℃未満で30秒以上1時間以内の条件で等温熱処理を行う。1段目熱処理条件を500℃以上600℃未満、30秒以上1時間以内とすることによって、dt/dR≧1.2となる再結晶粒を効果的に発生させることができる。その後、700℃以上1200℃以下の2段目の熱処理によって、1段目の熱処理で生成させた再結晶粒を効果的に成長させることが可能となる(上記(7)に係る発明)。
このような2段熱処理を行うことにより、dt/dR≧1.4とすることができる。
t/dtを好ましい範囲である10以下とするためには、スキンパス圧延を実施し、1000℃以上の熱処理を行えばよい。
鋼板の板厚方向の平均結晶粒径dtを好ましい範囲である2μm以上400μm以下、
圧延方向の平均結晶粒径dRを好ましい範囲である1μm以上とするためには、1回あたりの圧延率を3〜30%未満の低圧下スキンパス冷間圧延を少なくとも2回以上行い、さらに、合計の圧下率を10%以上95%以下とした後、700〜1200℃で熱処理をすれば良い。
さらに優れた本発明の効果を発現させるためには、第二層を付着させる前の母材鋼板に予備熱処理を施すと良い。この予備熱処理は、母材鋼板の製造過程で蓄積された転位構造を再配列させるもので、再結晶を起こさせることが望ましいが、必ずしも再結晶を起こさせる必要はない。
ここで、望ましい予備熱処理温度は700℃以上1100℃以下である。700℃未満であると、より優れた本発明の効果を得るための転位組織の変化が起こりにくい。1100℃超にすると、鋼板表面に好ましくない酸化皮膜が形成され、その後の第二層の付着および、冷間圧延に悪影響を及ぼすため1100℃以下とした。この予備熱処理の雰囲気は、真空中、不活性ガス雰囲気中、水素雰囲気中、弱酸化性雰囲気中のどの条件においても、上述した効果を得ることができるが、予備熱処理後の第二層の付着および、その後の冷間圧延に悪影響を及ぼすような鋼板表面の酸化膜を形成しない条件が求められる。予備熱処理の時間は特別限定する必要はないが、鋼板の製造性等を考慮すると数秒から数時間以内が適当である。
母材鋼板の表面に第二層を付着させ、所定の冷間圧延とその後の所定の熱処理を行った。熱処理雰囲気は、10-3Paの真空中とした。
熱処理後の鋼板の金属組織を光学顕微鏡で観察し、線分法によってdt、dR、dwを評価した。
また、熱処理後の鋼板の表面と板厚中心位置における{222}面集積度を評価し、両者の平均値を求めた。面集積度の評価は、MoKα線によるX線回折により、前述のとおりの手順を用いて行った。いずれの場合も表面と板厚中心位置における{222}面集積度はほぼ同じ値であった。
ランクフォード値の評価を、前記(3)式で得られる平均r値によって行った。
加工後の平滑性の評価については、絞り比3.2にて直径35mmのカップを成形し、目視によって側面の肌荒れ(オレンジピール)の有無を評価した。その結果、平滑性に全く問題が無く良好な肌であれば「◎◎」と評価し、平滑性に問題が無いが、カップのコーナー部において、通常は無視できるレベルの肌荒れが生じれば「◎」と評価し、カップコーナー部に僅かながら肌荒れが生じれば「○」と評価し、コーナー部位のみならずカップ側面にも肌荒れが見られる場合には「△」と評価した。
(実施例1)
母材鋼板として板厚1.0mmのIF鋼を用いた。成分組成は質量%で、0.0019%C、0.010%Si、0.12%Mn、0.009%P、0.006%S、0.034%Al、0.016%Ni、0.012%Cu、0.064%Tiである。
第二層として、90%Al−10%Si合金を溶融めっき法により、めっき厚片側45μmで両側に付着した。熱処理で均一に拡散したときに母材鋼板のAl濃度が2.98%上昇する濃度である。Al−Si合金は、不可避的不純物として、質量%で、S、P、N、O(酸素)を合計で0.17%含有していた。
本発明例として、第二層を付着した母材鋼板を、スキンパス圧延によって板厚:1.09→1.04→0.98→0.93→0.89→0.70mmに順次圧延した。全体の圧下量は35.8%となる。各パスの圧下率は、5%、5%、5%、5%、21.3%である。その後、表1の本発明例1〜3に示す熱処理条件で熱処理を行った。
比較材として、同じ第二層を付着した母材鋼板を1回圧延で1.09→0.7mmに圧延した。圧下率は35.8%である。その後、表1の比較例4、5に示す熱処理条件で熱処理を行った。
Figure 0005262280
発明例1〜3はいずれも、圧下率30%未満のスキンパス冷間圧延を2回以上行い、その後熱処理を行っている。
発明例3は熱処理として本発明範囲の1段熱処理を行った結果、dt/dRが1.2以上となり、{222}面集積度が65%以上となり、r値、平滑性ともに良好な結果を得ることができた。
発明例2はさらに製造方法として、熱処理温度を900℃から1000℃に上げることにより、t/dRが1.2以上であるともにt/dtが10以下となり、{222}面集積度、r値、平滑性はさらに改善された。
発明例1はさらに熱処理を本発明範囲の2段熱処理とした結果、dt/dRが1.4以上となり、{222}面集積度、r値、平滑性はさらに改善された。
それに対し比較例4、5は、冷間圧延が1回圧延であったため、dt/dRが本発明範囲外となり、{222}面集積度とr値は良好であったものの、平滑性が△という評価であった。
(実施例2)
母材鋼板として、板厚1.2mmの炭素鋼を用いた。成分組成は質量%で、0.12%C、0.11%Si、0.30%Mn、0.024%P、0.009%S、0.017%Al、0.015%Ni、0.013%Cu、0.013%Tiである。
第二層として、純Al(99.9%)をイオンプレ−ティングにより、Al厚片側50μmで両側に付着した。熱処理で均一に拡散したときに母材鋼板のAl濃度が2.77%上昇する濃度である。純Alは、不可避的不純物として、質量%で、S、P、N、O(酸素)を合計で0.1%含有していた。
本発明例として、第二層を付着した母材鋼板を、スキンパス圧延によって板厚:1.3→1.17→1.05→0.95→0.85→0.77→0.50mmに順次圧延した。全体の圧下量は61.5%となる。各パスの圧下率は、10%、10%、10%、10%、10%、34.9%である。その後、表2の本発明例11〜13に示す熱処理条件で熱処理を行った。
比較材として、同じ第二層を付着した母材鋼板を1回圧延で1.3→0.5mmに圧延した。圧下率は61.5%である。その後、表2の比較例14、15に示す熱処理条件で熱処理を行った。
Figure 0005262280
発明例11〜13はいずれも、圧下率30%未満のスキンパス冷間圧延を2回以上行い、その後熱処理を行っている。
発明例13は熱処理として本発明範囲の1段熱処理を行った結果、dt/dRが1.2以上となり、{222}面集積度が65%以上となり、r値、平滑性ともに良好な結果を得ることができた。
発明例12はさらに製造方法として、熱処理温度を900℃から1000℃に上げることにより、t/dRが1.2以上であるともにt/dtが10以下となり、{222}面集積度、r値、平滑性はさらに改善された。
発明例11はさらに熱処理を本発明範囲の2段熱処理とした結果、dt/dRが1.4以上となり、{222}面集積度、r値、平滑性はさらに改善された。
それに対し比較例14、15は、冷間圧延が1回圧延であったため、dt/dRが本発明範囲外となり、{222}面集積度とr値は良好であったものの、平滑性が△という評価であった。
(実施例3)
母材鋼板として、上記実施例1と同じ鋼板を用いた。第二層も実施例1と同じものを用いている。
本発明例として、第二層を付着した母材鋼板を、スキンパス圧延によって板厚:1.09→1.04→0.93→0.79→0.63mmに順次圧延した。全体の圧下量は42.2%となる。各パスの圧下率は、5%、10%、15%、20%である。その後、表3の本発明例21〜26に示す熱処理条件でいずれも2段熱処理を行った。
Figure 0005262280
発明例21は、1段目の熱処理温度が好適範囲の上限を外れており、dt/dRが1.2以上ではあるものの1.4以上には達しなかった。発明例22〜26は1段目、2段目いずれも本発明の好適範囲の熱処理を行っており、dt/dRが1.4以上で、発明例22から26にかけて順次高い値となっている。t/dtはいずれも10以下である。その結果、{222}面集積度も発明例22から26にかけて順次高い値となっている。一方、dt/dRが3を超えても効果は飽和傾向を示す。r値、平滑性ともに優れた結果となった。
(実施例4)
母材鋼板として、上記実施例2と同じ鋼板を用いた。第二層も実施例2と同じものを用いている。
本発明例として、第二層を付着した母材鋼板を、スキンパス圧延によって板厚:1.3→1.21→1.05→0.93→0.72→0.52mmに順次圧延した。全体の圧下量は全体60%となる。各パスの圧下率は、7%、13%、18%、22%、28%である。その後、表4の本発明例31〜36に示す熱処理条件で熱処理を行った。
比較材として、同じ第二層を付着した母材鋼板を1回圧延で1.3→0.5mmに圧延した。圧下率は61.5%である。その後、表4の比較例37に示す熱処理条件で熱処理を行った。
Figure 0005262280
発明例31は、1段目の熱処理温度が好適範囲の上限を外れているが、2段目熱処理温度を1100℃と高くし、時間を1.5時間としたため、dt/dRが最も大きくなった。発明例32〜36は1段目、2段目いずれも本発明の好適範囲の熱処理を行っており、dt/dRが1.2以上であるが、発明例32から36にかけて1段目、2段目の熱処理温度を低くしていったため、順次低い値となっている。t/dtは発明例32から36にかけて1段目、2段目の熱処理温度を低くしたため、順次高い値が大きくなっている。その結果、{222}面集積度も発明例32から36にかけて順次低い値となっている。発明例36は、t/dtが10を超えており、この場合dt/dRを1.2以上に維持しようとした結果{222}面集積度が75%未満となってしまった。また比較例37においては、t/dtを10超としてかつ{222}面集積度を75%以上としたとき、dt/dRが1.2未満となってしまった例である。本発明例においては、r値、平滑性はともに優れた結果となった。
(実施例5)
実施例1の第二層に変えて、質量%で、80%Zn−20%Al合金(発明例41)、90%Sn−10%Ni合金(発明例42)、30%Si−70%V合金(発明例43)を、それぞれ溶融めっき法、クラッド圧延法、イオンプレ−ティング法で母材鋼板に付着させた。その他の条件は、発明例2と同様とした。合金中の不可避的不純物として、質量%で、S、P、N、O(酸素)を合計でそれぞれ0.1〜0.2%含有していた。
試験結果を表5に示す。
Figure 0005262280
発明例41〜43の何れも、t/dRが1.2以上であるともにt/dtが10以下となり、{222}面集積度、r値、平滑性はさらに改善された。
(実施例6)
実施例2の発明例11〜13のスキンパスについて、板厚:1.3→1.17→1.05mmに順次圧延した。全体の圧下量は19.2%となる。各パスの圧下率は、10%、10%である。その他の条件は、発明例11と同様とした。
試験結果を表6に示す。
Figure 0005262280
発明例51〜53の何れも、熱処理を本発明範囲の2段熱処理とした結果、dt/dRが1.4以上となり、{222}面集積度、r値、平滑性はさらに改善された。
(実施例7)
実施例3の発明例21〜26について、スキンパス圧延の前に、第二層の上からサンドブラスト処理を両面に均一に施した。ブラスト処理後の鋼板の表面残留歪をX線法によって求めた結果、歪は母材鋼板の表面から約50μm深さまで達していた。その他の条件は、それぞれ発明例21〜26と同一とした。熱処理後の第二層のFe含有量は、発明例21〜26とそれぞれ同一であった。
試験結果を表7に示す。
Figure 0005262280
発明例61は、1段目の熱処理温度が好適範囲の上限を外れており、dt/dRが1.2以上ではあるものの1.4以上には達しなかった。発明例62〜66は1段目、2段目いずれも本発明の好適範囲の熱処理を行っており、dt/dRが1.4以上で、発明例62から66にかけて順次高い値となっている。t/dtはいずれも10以下である。その結果、{222}面集積度も発明例62から66にかけて順次高い値となっている。一方、dt/dRが3を超えても効果は飽和傾向を示す。r値、平滑性ともに優れた結果となった。

Claims (7)

  1. αFe相の鋼板面に対する{222}面集積度が65〜99%であり、鋼板の板厚方向の平均結晶粒径をdt[μm]、圧延方向の平均結晶粒径をdR[μm]としたときに、
    t/dR≧1.2
    であることを特徴とする鋼板
  2. 鋼板の板厚をt[μm]としたときに、t/dt≦10であることを特徴とする請求項1に記載の鋼板
  3. 母材鋼板の少なくとも片面に、Al、Ni、Si、Sn、V、Znのうち1つ以上の元素と残部不可避的不純物からなる金属の第二層を付着させ、該鋼板に1回当たり圧下率30%未満の低圧下スキンパス冷間圧延を少なくとも2回以上行い、その後熱処理を行うことを特徴とする鋼板の製造方法。
  4. 母材鋼板の少なくとも片面に、Al、Ni、Si、Sn、V、Znのうち1つ以上の元素と残部不可避的不純物からなる金属の第二層を付着させ、該鋼板にショットブラスト処理及び冷間圧延を行い、その後熱処理を行うことを特徴とする鋼板の製造方法。
  5. 前記第二層は、質量%で、さらに
    Si:0.01〜40%、
    Zn:60〜99%、
    Sn:60〜99%、
    の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項3又は4に記載の鋼板の製造方法。
  6. 前記熱処理として、700〜1200℃の温度で熱処理を行うことを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の鋼板の製造方法。
  7. 前記熱処理として、500℃以上600℃未満の温度で30秒以上1時間以内の第1段熱処理と、その後に700〜1200℃の温度で第2段熱処理を行うことを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の鋼板の製造方法。
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