(A)第1の実施形態
以下、本発明による無線タグ読取装置、無線タグ状態推定装置、無線タグ状態推定システム、及び、無線タグ状態推定プログラムの第1の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、この実施形態の無線タグ状態推定システムの機能的構成を示すブロック図である。無線タグ状態推定システム10は、上記図13に記載の従来の視覚障害者用歩行支援システム1300に、無線タグ状態推定装置30を付加したものとほぼ同様の構成を有している。
無線タグ101は、他の通信装置と無線通信により情報の授受が可能なタグであり、例えば、RFID(Radio Frequency Identification)によるICタグなどが該当する。無線タグ101は、それぞれ固有のID番号を有しており、無線タグ通信装置(無線タグ読取装置)20の要求に基づいて、そのID番号を無線タグ通信装置20に与える。図1においては、無線タグ101は一つしか記載していないが、複数配置しても良い。
無線タグ通信装置20は、無線タグ101と通信して、無線タグ101のID番号を取得し、無線タグ状態推定装置30に与えるものである。無線タグ通信装置20は、無線タグ通信部21、タグ利用履歴作成部22、送信ID番号決定部23、読み出し指定部24、送信部25を有している。図1においては、無線タグ通信装置20は一つしか記載していないが、複数配置しても良い。無線タグ通信装置20は、例えば、視覚障害者が利用する電子白杖や、RFIDリーダ付の携帯可能な情報処理端末に内蔵しても良い。又、利用者が自動車のドライバーの場合には、無線タグ通信装置20は、自動車のシャーシの下に設置するようにしても良い。
無線タグ通信部21は、無線タグ101と通信をするインタフェース機能を担っている。無線タグ通信部21は、通信可能な無線タグ101を検知すると、無線タグ101と通信して、無線タグ101のID番号を取得し、取得したID番号を、タグ利用履歴記憶部112に与える。
タグ利用履歴作成部22は、無線タグ通信部21から与えられたID番号を記憶して、記憶した情報について、送信ID番号決定部23に与えるものである。タグ利用履歴作成部22は、タグ利用履歴記憶部22aを有している。
タグ利用履歴作成部22は、無線タグ通信装置20の使用者の、無線タグ101周辺における歩行開始、及び、歩行終了(無線タグ101の周辺から離れた場合や、情報案内等のサービスの利用終了の場合を含む)について検出する。歩行開始の検出は、例えば、無線タグ通信装置20からID番号が最初に与えられた場合としても良い。歩行終了は、例えば、無線タグ通信部21から一定時間ID番号が与えられない場合としても良い。
図2は、タグ利用履歴記憶部22aに記憶される情報の構造を示す説明図である。タグ利用履歴記憶部22aは記憶手段であり、無線タグ通信部21から与えられるID番号を一時的に記憶するものである。タグ利用履歴記憶部22aは、歩行順序番号201、ID番号202の情報を有している。歩行順序番号201は、無線タグ通信装置20から与えられた順序を示すものであり、1、2、3、……とカウントアップして記憶される。ID番号202は、歩行順序番号201に対応する順番において、無線タグ通信部21から与えられたID番号を記憶するものである。タグ利用履歴作成部22は、無線タグ通信部21からID番号が与えられる度に、タグ利用履歴記憶部22aに新たな情報を追加して記憶する。
タグ利用履歴作成部22は、所定の順番で、送信ID番号記憶部23aに記憶されたID番号202の情報を、送信ID番号決定部23に与える。上記の所定の順番は、後述する読み出し指定部24に問い合わせることにより決定される。又、タグ利用履歴作成部22は、所定の順番について問い合わせる際に、タグ利用履歴抽選結果記憶部22aにおいて歩行順序番号201の最後の情報、すなわち歩行順序番号201の最大値を、読み出し指定部24に与える。
読み出し指定部24は、タグ利用履歴作成部22の要求に応じて、送信ID番号記憶部23aに記憶されたID番号202の、送信順序を決定するための情報を与えるものである。又、読み出し指定部24は、例えば、擬似乱数発生器などの乱数を生成する乱数発生手段を有している。読み出し指定部24は、タグ利用履歴作成部22から、送信順序の割り当ての問い合わせと共に、歩行順序番号201の最大値が与えられると、その最大値以下で、上記乱数発生手段によりランダムに抽選された値を抽選番号として、1つずつタグ利用履歴作成部22に与える。読み出し指定部24は、同様の動作を1〜最大値までの全ての値について、タグ利用履歴記憶部22aに与えるまで繰り返し行う。尚、読み出し指定部24が、1度タグ利用履歴作成部22に与えた番号は2度と与えないものとする。これにより、タグ利用履歴作成部22は、送信ID番号記憶部23aに記憶されたID番号202の情報を、ランダムな順番で送信ID番号決定部23に与える。
図3は、タグ利用履歴作成部22から、送信ID番号決定部23に与えられる情報の順序の例を示す説明図である。例えば、タグ利用履歴記憶部22aに記憶されている情報が、(歩行順序番号201:「1」、ID番号202:「111」)、(歩行順序番号201:「2」、ID番号202:「105」)、(歩行順序番号201:「3」、ID番号202:「107」)、(歩行順序番号201:「4」、ID番号202:「108」)、(歩行順序番号201:「5」、ID番号202:「107」)、(歩行順序番号201:「6」、ID番号202:「109」)、(歩行順序番号201:「7」、ID番号202:「110」)となっていた場合を想定する。この場合、読み出し指定部24において抽選された抽選番号が、例えば、「3」、「6」、「5」、「1」、「2」、「4」、「7」であったとするとタグ利用履歴作成部22が最初に送信ID番号決定部23に与えるのは、歩行順序番号201が「3」のID番号202、すなわち「107」となる。以後同様に、タグ利用履歴作成部22は、ID番号202の情報の値を、「109」、「107」、「111」、「105」、「108」、「110」という順番で、送信ID番号決定部23に与える。
又、読み出し指定部24は、送信ID番号決定部23の要求に基づいて、タグ利用履歴記憶部22aに与えるべき抽選番号が残っているか否かを応答する。
送信ID番号決定部23は、タグ利用履歴作成部22から、タグ利用履歴記憶部22aに記憶されたID番号202の情報が与えられると、後述する無線タグ状態推定装置30へ送信するための情報を作成し、送信部25に与えるものである。又、送信ID番号決定部23は、送信ID番号記憶部23aを有している。
図4は、送信ID番号記憶部23aに記憶される情報の構造を示す説明図である。送信ID番号記憶部23aは、送信ID番号決定部23が、送信部25に与えるための情報を一時的に記憶する記憶手段であり、送信順序番号401、ID番号402の情報を有している。送信順序番号401は、送信部25に情報を与える順番を示すものである。ID番号402は、ID番号202と同様のものであるので、その説明は省略する。
送信ID番号決定部23は、タグ利用履歴作成部22から、送信ID番号記憶部23aのID番号202の情報が与えられると、順番にID番号402に記憶していく。送信ID番号決定部23は、最初にタグ利用履歴作成部22から与えられたID番号201の値、すなわち、ID番号201において最初に抽選されたが値が、例えば、「107」であった場合、図4に示すように、送信順序番号401が「1」、ID番号402が「107」の情報を追加する。次に抽選されたID番号302の値が「109」であった場合には、送信順序番号401に「1」加算して、送信順序番号401が「2」、ID番号402が「109」の情報を追加する。
送信ID番号決定部23は、読み出し指定部24に、タグ利用履歴記憶部22aに与えるべき抽選番号が残っているか否かについて問い合わせを行い、残っていない旨の応答があるまで、上記の送信ID番号記憶部23aの情報の追加を繰り返す。情報の追加が完了すると、送信ID番号決定部23は、送信ID番号記憶部23aに記憶された情報を送信部25に与える。
又、送信ID番号決定部23が、送信ID番号記憶部23aに情報を記憶する際、ID番号402について、1度記憶したID番号は、2度と記憶しないこととしても良い。例えば、タグ利用履歴作成部22から送信ID番号決定部23に、「107」、「109」、「107」、「111」という順で、ID番号が与えられた場合には、最初の「107」、「109」により、送信ID番号記憶部23aに(送信順序番号401:「1」、ID番号402:「107」)、(送信順序番号401:「2」、ID番号402:「109」)という情報を記憶する。次に、送信ID番号決定部23は「107」という情報が読み込むが、既に、送信ID番号記憶部23aには、(送信順序番号401:「1」、ID番号402:「107」)を記憶しているため、同じID番号の情報は2つ記憶せずに、このとき与えられた情報は破棄し、次の情報である「111」が与えられると、送信ID番号記憶部23aに(送信順序番号401:「3」、ID番号402:「111」)という情報を記憶する。
送信部25は、送信ID番号決定部23から与えられた情報を、ネットワーク40を経由して無線タグ状態推定装置30に与えるものである。
ネットワーク40は、無線タグ通信装置20と無線タグ状態推定装置30の間を接続させるものであり、その方式等は問われないものである。又、ネットワーク40を介さずに無線タグ通信装置20と無線タグ状態推定装置30が直接接続される構成としても良い。
無線タグ状態推定装置30は、無線タグ通信装置20から情報を収集して、無線タグ101の状態を推定するものであり、受信部31、保守対象タグ情報記憶部32、タグ利用情報作成部33、タグ状態推定部34を有している。無線タグ状態推定装置30は、例えば、パソコンなどの情報処理装置(1台に限定されず、複数台を分散処理し得るようにしたものであっても良い。)に、この実施形態の無線タグ状態推定プログラム等をインストールすることで構築することができる
受信部31は、ネットワーク40を介して、無線タグ通信装置20から、上記の図4に示すような送信ID番号記憶部23aに記憶された情報が与えられると、その情報をタグ利用情報作成部33に与えるものである。
保守対象タグ情報記憶部32は、保守対象となっている無線タグ101のID番号や設置場所などの情報を記憶するものである。図5は、保守対象タグ情報記憶部32に記憶される情報の構造を示す説明図である。保守対象タグ情報記憶部32は、ID番号501、設置場所情報502の情報を有している。ID番号501は、保守対象となっている無線タグ101のID番号を示すものである。設置場所情報502は、ID番号501に該当する無線タグ101の設置場所の情報を示すものである。設置場所情報502に記憶する情報の格納形式としては、例えば、図5のように、経度・緯度の情報で表すようにしても良く、無線タグ状態推定装置30の使用者が、ID番号501に該当する無線タグ101の位置を認識することができるものであればその形式は問われないものである。
タグ利用情報作成部33は、受信部31から与えられた情報に基づいて、無線タグ101の利用状況に関する情報を作成し、その情報をタグ状態推定部34に与えるものであり、タグ利用情報記憶部33aを有している。
タグ利用情報記憶部33aは、タグ利用情報作成部33が、タグ状態推定部34に与えるための情報を一時的に記憶する記憶手段である。図6は、タグ利用情報記憶部33aに記憶されている情報の構造を示す説明図である。タグ利用情報記憶部33aは、ID番号601、読取回数602の情報を有している。ID番号601は、タグ利用情報記憶部33aにおけるID番号501と同様のものであるので説明を省略する。読取回数602は、無線タグ通信装置20から与えられる情報に基づいて、ID番号601に対応する無線タグ101が、無線タグ通信装置20によって、何回ID番号を読み取られたかを示すものである。尚、読取回数602の初期値としては、例えば、全て「0」を入力しても良い。
タグ利用情報作成部33は、保守対象タグ情報記憶部32の情報に基づいて、タグ利用情報記憶部33aに記憶されている情報を初期化する。タグ利用情報記憶部33aの初期化は、例えば、図6のように、ID番号601にID番号501の値を記憶し、ID番号601に対応する読取回数602には、それぞれ「0」を入力することにより行われる。
タグ利用情報作成部33は、無線タグ通信装置20から、上記の図4に示すような情報が与えられると、その情報に基づいて、タグ利用情報記憶部33aに記憶された情報を更新する。タグ利用情報作成部33は、タグ利用情報記憶部33aの情報の更新において、ID番号402と同じ値のID番号が、ID番号601に存在した場合、対応する読取回数602の値に「1」を加算することにより行う。例えば、タグ利用情報記憶部33aに記憶されている情報が、上記の図6に示す内容となっているときに、上記図4に示すような情報、すなわち、ID番号402が「107」、「109」、「111」、「105」、「108」、「110」という情報が、タグ利用情報作成部33に与えられた場合を想定する。このとき、タグ利用情報作成部33は、タグ利用情報記憶部33aの情報について、図7に示すように、ID番号601が、「107」、「109」、「111」、「105」、「108」、「110」に対応する読取回数602を、それぞれ「0」から「1」に更新する。
タグ状態推定部34は、タグ利用情報作成部33から、タグ利用情報記憶部33aに記憶された情報が与えられると、その情報に基づいて、無線タグ101の状態を推定する。
例えば、タグ状態推定部34は、タグ利用情報作成部33から、タグ利用情報記憶部33aの情報が与えられると、読取回数602が「0」となっている情報を検索し、それに対応するID番号601を有する無線タグ101は、動作が未確認であり、故障している可能性があるという推定をしても良い。
又、図示は省略しているが、タグ状態推定部34は、推定結果を、例えば、ディスプレイ等の表示装置に表示出力させたり、ディスク装置等の記憶装置に記憶させたり、プリンタ等の印刷装置に印刷出力させたりする構成としてもよく、その出力方法は問われないものである。又、タグ状態推定部34は、推定結果として、動作が未確認の無線タグ101について、保守対象タグ情報記憶部32に記憶されたID番号501、及び、設置場所情報502の情報などを出力させても良い。
又、タグ状態推定部34が、タグ利用情報作成部33から与えられた情報に基づいて、無線タグ101の状態を判定するのは、例えば、最初にタグ利用情報作成部33から情報が与えられてから一定の時間が経過するなど、所定の時間が経過した後としても良い。上記の所定の時間は、タグ利用情報作成部33から情報が与えられた回数が一定数に達した場合に所定の時間を経過したと判断してもよく、タグ利用情報作成部33から与えられた情報が、一定数以上収集できたと判断できれば、その判断方法は問われないものである。
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する第1の実施形態の無線タグ状態推定システム10における無線タグ101の状態推定の動作について説明する。
ここでは、図12に示すように、無線タグ通信装置20の使用者の歩行を誘導するために、無線タグ101は、無線タグ101〜111と11個配置されているものとし、無線タグ通信装置20の使用者が、歩行経路1201に沿って歩いたものとする。又、無線タグ通信装置20の使用者が、歩行経路1201に沿って移動すると、無線タグ111、105、104、107、108、107、109、110の順に、無線タグが配置されている場所を通過して、無線タグ通信装置20により、無線タグのID番号の読取が行われるものとする。又、無線タグ104、無線タグ106は故障等の理由により、無線タグ通信装置20では、そのID番号が読み取られなかったものとする。尚、無線タグ101〜111のID番号は、その符号をそのまま用いることとする。例えば、無線タグ111のID番号は「111」となる。
図10は、無線タグ通信装置20が、無線タグからID番号を読み込んで、無線タグ状態推定装置30に与える動作を示したフローチャートである。
まず、無線タグ通信装置20の使用者が、歩行経路1201に沿って歩くと(S1001)、周辺に存在する無線タグのID番号が、無線タグ通信装置20の無線タグ通信部21によって読み取られる。最初に、無線タグ111のID番号である「111」が、無線タグ通信部21により読み取られ、その値が、無線タグ通信部21からタグ利用履歴作成部22に与えられる(S1002)。
ID番号として「111」が、タグ利用履歴作成部22に与えられると、タグ利用履歴作成部22において、タグ利用履歴記憶部22aの値が更新される。最初に与えられたID番号であるので、歩行順序番号201が「1」に対応するID番号202に「111」の値が記憶される(S1003)。
ID番号が与えられる度に、歩行順序番号201は「1」ずつカウントアップされる。よって、次に与えられたID番号については、歩行順序番号201は「2」として記憶する(S1004)。
次に、タグ利用履歴作成部22において、無線タグ通信装置20の使用者が、歩行終了等したか否かが判断される(S1005)。ステップS1005の判断において、歩行が終了していないという結果である場合には、上記ステップS1001に戻って動作する。一方、S1005の判定の結果、歩行終了と判断した場合には、次のステップに進む。
以上の動作により、タグ利用履歴記憶部22aには、図2に示すように、(歩行順序番号201:「1」、ID番号202:「111」)、(歩行順序番号201:「2」、ID番号202:「105」)、(歩行順序番号201:「3」、ID番号202:「107」)、(歩行順序番号201:「4」、ID番号202:「108」)、(歩行順序番号201:「5」、ID番号202:「107」)、(歩行順序番号201:「6」、ID番号202:「109」)、(歩行順序番号201:「7」、ID番号202:「110」)という情報が記憶されることになる。
次に、タグ利用履歴作成部22から読み出し指定部24に、歩行順序番号201の最大値が与えられる。ここでは、7回無線タグのID番号の読み取りが行われたので、歩行順序番号201の最大値は「7」となる(S1006)。
次に、歩行順序番号201の最大値が与えられると、読み出し指定部24において、与えられた値を最大値として抽選が行われ、抽選された値がひとつずつ、読み出し指定部24からタグ利用情報作成部33に与えられる。抽選された値がタグ利用情報作成部33に与えられると、タグ利用履歴作成部22において、抽選された値と、歩行順序番号201が一致するID番号202の検索が行われ、該当するID番号202が、送信ID番号決定部23に与えられる。ID番号の情報が与えられると、送信ID番号決定部23において、与えられたID番号に基づいて、送信ID番号記憶部23aの情報が更新される(S1008)。
次に送信ID番号記憶部23aに追加される情報の送信順序番号401は、「1」加算されたものとなる(S1009)。
次に、送信ID番号決定部23から読み出し指定部24に、タグ利用履歴記憶部22aに与えるべき抽選番号が残っているか否かについて問い合わせが行われる(S1010)。読み出し指定部24から、残っているという応答があった場合には、上記のステップS1007に戻って動作し、残っていないという応答があった場合には、次のステップに進む。以上の動作により、送信ID番号記憶部23aには、図4に示すように(送信順序番号401:「1」、ID番号402:「107」)、(送信順序番号401:「2」、ID番号402:「109」)、(送信順序番号401:「3」、ID番号402:「111」)、(送信順序番号401:「4」、ID番号402:「105)、(送信順序番号401:「5」、ID番号402:「108」)、(送信順序番号401:「6」、ID番号402:「110」)という情報が記憶される。
次に、送信ID番号記憶部23aに記憶された情報が、読み出し指定部24か送信部25に与えられると、与えられた情報が送信部25からネットワーク40を介して無線タグ状態推定装置30に与えられる(S1011)。
図11は、無線タグ状態推定装置30が、無線タグ通信装置20から与えられた情報に基づいて無線タグの状態を推定する動作を示したフローチャートである。
無線タグ状態推定装置30の保守対象タグ情報記憶部32においては、予め、図5の通りに、ID番号501として、「101」、「102」、「103」、「104」、「105」、「106」、「107」、「108」、「109」、「110」、「111」の情報が記憶されているものとする。又、タグ利用情報作成部33において、タグ利用情報記憶部33aに記憶された情報は、予め図6に示すように、保守対象タグ情報記憶部32の情報に基づいて、(ID番号601:「101」、読取回数602:「0」)、(ID番号601:「102」、読取回数602:「0」)、(ID番号601:「103」、読取回数602:「0」)・・・・・・と初期化されているものとする(S1101)。
無線タグ通信装置20の送信部25から、図4に示すような送信ID番号記憶部23aに記憶された無線タグの利用記録の情報が、無線タグ状態推定装置30の受信部31に与えられると、受信部31は、その情報をタグ利用情報作成部33に与える(S1102)。
図4に示すような無線タグの利用記録の情報が与えられると、タグ利用情報作成部33は、その情報に基づいて、タグ利用情報記憶部33aの情報について、該当するID番号601の読取回数602の値を「1」ずつ加算して更新する(S1103)。更新の結果、タグ利用情報記憶部33aに記憶された情報の、ID番号601が、「107」、「109」、「107」、「111」、「105」、「108」、「110」に対応する読取回数602について、「0」から「1」に更新される。尚、その他のID番号601に対応する読取回数602は、「0」のままである。
次に、タグ利用情報作成部33において、タグ利用情報記憶部33aの情報の記録を開始してから一定期間経過したか否かが判断される(S1104)。ステップS1104の判断において、まだ一定期間経過していないという結果の場合には、タグ利用情報作成部33は、ステップS1102に戻って動作し、他の無線タグ通信装置20から無線タグの利用状況について情報が与えられた場合には、その情報に基づいて動作する。一方、ステップS1104の判断において、一定期間経過したという結果の場合は、次のステップに進む。
次に、タグ利用情報記憶部33aに記憶された情報が、タグ利用情報作成部33からタグ状態推定部34に与えられ、タグ状態推定部34において、無線タグ101〜111の状態について判断される。ここでは、タグ利用情報記憶部33aに記憶された情報について、図8に示すように、ID番号601が「104」、「106」に対応する読取回数602の値のみが「0」で、それ以外のID番号601に対応する読取回数602は「1」以上に値であったものとする。このとき、タグ状態推定部34は、読取回数602が「0」のID番号601に該当する無線タグ、すなわち、無線タグ104、106については、動作が未確認であり、故障している可能性があると推定する。そして、図9に示すような、無線タグ104、106のID番号の情報に、保守対象タグ情報記憶部32に記憶された設置場所情報502の情報が加えられ、タグ状態推定部34から出力装置等に与えられる。(S1105)。
(A−3)第1の実施形態の効果
この実施形態によれば、以下のような効果を奏することが可能となる。
以上のように、無線タグ通信装置20の使用者が、無線タグ101の情報を無線タグ通信装置20に読み取らせ、その情報に基づいて、案内情報センタ等から情報を得るかたわらで、無線タグ状態推定装置30は、無線タグ101の利用状況に関する情報を、タグ利用情報記憶部33aに蓄積し、タグ状態推定部34により、動作が未確認の無線タグ101について情報抽出をして、無線タグ101の状態を推定することができる。このとき、動作が未確認の無線タグ101は、故障している可能性があると考えられる。但し、無線タグ通信装置20が、無線タグ101と通信できない理由としては、例えば、無線タグ通信部21と無線タグ101の間で、通信をするのに十分な離隔距離及び十分な読み出し時間が、確保できない場合などが考えられ、無線タグ101の動作が未確認だからといって、必ずしも故障であるとは断定できない。一方、動作が確認できた無線タグ101については、正常という推定をすることができる。これにより、多数の無線タグ101が配置されている場合であっても、作業者は、動作が未確認の無線タグ101のみについて検査をすれば良いので、無線タグ101の保守作業時間を大幅に短縮することが可能となる。
又、タグ利用履歴作成部22、及び、送信ID番号決定部23により、無線タグ通信装置20が読み込んだ無線タグ101のID番号を、読み込んだ順番そのままで無線タグ状態推定装置30に与えるのではなく、読み取った順番とは無関係な順番で与えている。これにより、無線タグ状態推定装置30の使用者は、無線タグ通信装置20の使用者が、どのような経路で移動したのかという情報を知ることができないので、無線タグ通信装置20の使用者は、自らの移動経路等の個人情報を知られることなく、安心して無線タグ状態推定装置30に情報を提供することが可能となる。又、無線タグ通信装置20は、同一の無線タグ101のID番号を複数回読み取った場合は、そのID番号は一度しか無線タグ状態推定装置30に与えない。これにより、無線タグ通信装置20の使用者が、何度同じ場所を通過したかという情報も、無線タグ状態推定装置30の使用者に知られることが無いため、無線タグ通信装置20の使用者は、より安心して無線タグ状態推定装置30に情報を提供することが可能となる。
以上のように、この実施形態では、一般歩行者の移動による無線タグからの読取情報に基づいて、保守センタにおいて無線タグの状態を得るようにしたので、保守作業者は、無線タグの設置場所に赴かなくても、無線タグの推定状態を知得することができる。
また、一般歩行者の移動による無線タグからの読取情報も、そのまま保守センタに送信するのではなく、秘匿化処理を施して送信するようにしているので、個人的な情報を秘匿させることができる。
(B)第2の実施形態
以下、本発明による無線タグ読取装置、無線タグ状態推定装置、無線タグ状態推定システム、及び、無線タグ状態推定プログラムの第2の施形態を、図面を参照しながら詳述する。
(B−1)第2の実施形態の構成
第1の実施形態の無線タグ状態推定システム10のタグ状態推定部34では、タグ利用情報記憶部33aの情報を参照し、一度も読み取られなかった無線タグを検出することにより、動作未確認な無線タグを故障の可能性がある無線タグであるとみなして点検確認の対象とするものである。
第2の実施形態の無線タグ状態推定システムは、タグ状態推定部34において、動作未確認な無線タグのうち、故障の確からしさ(以下「推定故障確率」と表す)について高低差をつける点で第1の実施形態と異なるが、その他の構成は第1の実施形態とほぼ同様である。
例えば、ある無線タグの近傍の範囲に複数の無線タグが配置されていた場合、当該無線タグの近傍範囲(近傍の範囲の設定方法については後述する)の無線タグの中で読取回数(上述の図6における読取回数602)の最大値が「3」であった場合を想定する。このとき、例えば、無線タグ通信装置20が、視覚障害者が所持する白杖であった場合には、当該無線タグの近傍範囲を視覚障害者が通過した回数はせいぜい3回と推定できる(但し、視覚障害者の歩行字の白杖の振り方によっては2回以上読み出すこともあるので、正確な通貨回数は読取回数だけでは断定できない)。一方、当該無線タグの近傍範囲の無線タグの中で読取回数(上述の図6における読取回数602)の最大値が「6」であった場合には、視覚障害者が通貨した回数はせいぜい6回と推定できる。したがって、当該無線タグの近傍範囲の無線タグの中で、読取回数(上述の図6における読取回数602)の最大値が多いほど、当該無線タグの利用頻度も高いと推定される。これにより、当該無線タグが動作未確認で読取回数(上述の図6における読取回数602)が、たとえ「0」であったとしても、近傍範囲の無線タグの読取回数(上述の図6における読取回数602)を確認することにより、当該無線タグの利用頻度の高低を推定することができる。
第2の実施形態では、動作未確認の無線タグを含む同一の近傍範囲内の無線タグの利用頻度が高いほど、当該無線タグの推定故障確率を上げるというものである。なぜならば、利用頻度が高いほど無線タグを読み出す機会が多かったはずであり、そのような状況であってもなお、一度も読み出されなかったということは、その無線タグが故障しているのではないかとの可能性が高いと推察できるからである。従って、近傍範囲内の無線タグの読取回数(上述の図6における読取回数602)の最大値が高いほど、動作未確認の無線タグの推定故障確率も高いと推定することができる。
以下、第2の実施形態について第1の実施形態との差異を説明する。
第2の実施形態の無線タグ状態推定装置30における、タグ状態推定部34では、上述の通り動作未確認な無線タグのそれぞれについて、推定故障確率について高低を付与する点で第1の実施形態と異なっている。
以下、タグ状態推定部34において、無線タグごとに推定故障確率について高低を付与する構成の例について説明する。
まず、第1の実施形態の無線タグ状態推定システム10において、動作未確認な無線タグの平均的な推定故障確率をTと定義し、これを以下、「基本推定故障確率T」と表す。
なお、基本推定故障確率Tは、実際に第1の実施形態の無線タグ状態推定システム10を構築して測定しても良いし、無線タグの仕様に基づいて計算して求めても良く、求める方法や値は限定されないものである。そして、動作未確認な無線タグの推定故障確率を、当該無線タグの近傍範囲内の無線タグの読取回数(上述の図6における読取回数602)の最大値(以下、「最大値M」と表す)に比例する値と定義すると、以下の(1)式のように表すことができる。
推定故障確率 = M・T …(1)
なお、推定故障確率を求める例として、上述の(1)式を挙げているが、例えば、最大値Mを、動作未確認の無線タグの近傍範囲内の無線タグのうち、当該動作未確認の無線タグを除く全ての無線タグの平均の読取回数(上述の図6における読取回数602)に置き換えてもよく、推定故障確率を求める方法は、近傍範囲内の無線タグの読取回数(上述の図6における読取回数602)を考慮したものであれば、上述の(1)式に限られるものではない。
なお、ここでいう無線タグの近傍範囲としては、読取回数(上述の図6における読取回数602)がほぼ同じであると期待できる範囲に設定する。例えば、上述の図12の無線タグの配置の例において、無線タグ101〜111が、それぞれ複数の無線タグにより構成されているとした場合、それぞれの地点における無線タグを近傍範囲としても良い。例えば、上述の図12において無線タグ106が、複数の無線タグにより構成されており、図14に示すように、無線タグ106a〜106fの計6枚の無線タグが配置されているものとした場合には、無線タグ106a〜106fを、1つの近傍範囲内の無線タグとしても良い。又、例えば、同様に、無線タグ108が、複数の無線タグにより構成されており、図18に示すように、無線タグ108a〜108dの計4枚の無線タグが配置されているものとした場合には、無線タグ108a〜108dを、1つの近傍範囲内の無線タグとしても良い。
一方、近傍範囲をあまり広く設定すると、設定した近傍範囲内での無線タグの読取回数(上述の図6における読取回数602)にばらつきが生じ、読取回数の最大値Mを、設定した範囲内の全ての無線タグに適用するのが相応しくない場合がある。そこで、例えば、無線タグ通信装置20が、視覚障害者が所持する白杖であった場合に、白杖の一振りで、無線タグと通信できる程度の広さに近傍範囲を限定することが考えられる。例えば、図19に示すように、横断歩道の手前の誘導ブロックに無線タグが配置されている場合には、グループを幾つかに分割して、それぞれを独立の近傍範囲としても良い。なお、近傍範囲は、当該無線タグ状態推定システム10における、無線タグ通信装置20の性能(例えば、無線タグと通信できる範囲など)に応じて設定しても良い。
タグ状態推定部34において、近傍範囲の無線タグを抽出する方法としては、例えば、タグ状態推定部34において、保守対象タグ情報記憶部32に記憶された、無線タグごとの設置場所情報502の情報に基づいて、動作未確認の無線タグから、所定の範囲内に位置する無線タグは近傍に配置された無線タグと判別しても良い。例えば、動作未確認の無線タグと、緯度、経度が秒単位で合致する無線タグ同士を近傍範囲の無線タグとして抽出しても良いし、緯度・経度が5秒のずれの範囲内にある無線タグ同士を近傍範囲としても良い。又、例えば、無線タグ状態推定装置30が、無線タグごとに近傍範囲の無線タグを識別する情報(例えば、ID番号)を記憶する手段を別途有して管理してもよく、近傍範囲の無線タグを抽出する方法は、上述の例に限定されないものである。
又、無線タグ状態推定装置30では、無線タグごとの推定故障確率の情報や、推定故障確率の高い順に動作未確認の無線タグを順序付けした情報を出力するようにしても良い。
なお、図示は省略しているが、タグ状態推定部34は、無線タグごとの推定故障確率を、例えば、ディスプレイ等の表示装置に表示出力させたり、ディスク装置等の記憶装置に記憶させたり、プリンタ等の印刷装置に印刷出力させたりする構成としてもよく、その出力方法は限定されないものである。
(B−2)第2の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する第2の実施形態の無線タグ状態推定システムにおける、動作未確認の無線タグについて推定故障確率を求める動作について説明する。
ここでは、例えば、上述の図12の無線タグの配置の例において、無線タグ106が、複数の無線タグにより構成されており、図14に示すように、無線タグ106a〜106fの計6枚の無線タグが配置されているものとする。又、このとき、タグ利用情報記憶部33aには図15に示すように、(ID番号601:「106a」、読取回数602:「1」)、(ID番号601:「106b」、読取回数602:「3」)、(ID番号601:「106c」、読取回数602:「1」)、(ID番号601:「106d」、読取回数602:「0」)、(ID番号601:「106e」、読取回数602:「2」)、(ID番号601:「106f」、読取回数602:「2」)という情報が記憶されているものとする。このとき、無線タグ106dの読取回数602が「0」となっているため、タグ状態推定部34において、無線タグ106dが動作未確認な無線タグと判断される。そして、タグ状態推定部34において、動作未確認の無線タグである無線タグ106dの近傍範囲の無線タグとして、無線タグ106a、106b、106c、106e、106fが抽出されたものとする。そして、近傍範囲の無線タグの中で読取回数602が最大なのは、無線タグ106bの「3」であるため、上述の(1)式における最大値Mは「3」となる。よって、上述の(1)式にあてはめると、無線タグ106dの推定故障確率=M・T=3・Tとなる。
又、上述の図12の無線タグの配置の例において、無線タグ109についても同様に、複数の無線タグにより構成されており、図16に示すように、無線タグ109a〜109fの計6枚の無線タグが配置されているものとする。又、このとき、タグ利用情報記憶部33aには図17に示すように、(ID番号601:「109a」、読取回数602:「2」)、(ID番号601:「109b」、読取回数602:「6」)、(ID番号601:「109c」、読取回数602:「3」)、(ID番号601:「109d」、読取回数602:「0」)、(ID番号601:「109e」、読取回数602:「6」)、(ID番号601:「109f」、読取回数602:「5」)という情報が記憶されているものとする。このとき、無線タグ109dの読取回数602が「0」となっているため、タグ状態推定部34において、無線タグ109dが動作未確認な無線タグと判断される。そして、タグ状態推定部34において、動作未確認の無線タグである無線タグ109dの近傍の無線タグとして、無線タグ109a、109b、109c、109e、109fが抽出されたものとする。そして、近傍範囲の無線タグの中で読取回数602が最大なのは、無線タグ109b、109eの「6」であるため、上述の(1)式における最大値Mは「6」となる。よって、上述の(1)式にあてはめると、無線タグ109dの推定故障確率=M・T=6・Tとなる。
以上の例のように、タグ状態推定部34において、無線タグ106dの推定故障確率は3・Tで、無線タグ109dの推定故障確率は6・T算出とされ、無線タグ106dよりも無線タグ109dの方が、推定故障確率が高いと判定される。
(B−3)第2の実施形態の効果
第2の実施形態によれば、第1の実施形態に加えて、以下のような効果を奏することが可能となる。
第2の実施形態においては、動作未確認の無線タグの近傍範囲内の無線タグの読取回数(例えば、上述の最大値M)に応じて推定故障確率を変動させるようにしたので、動作未確認の無線タグの故障の確からしさを利用頻度と連動した数値で表現することができる。
又、推定故障確率の高い順に動作未確認の無線タグを順序付けすることにより、保守作業者は推定故障確率の高い順に保守点検を行うことができ、限られた時間であっても、無線タグの設置されている現場での保守作業を効率的に行うことができる。
(C)第3の実施形態
以下、本発明による無線タグ読取装置、無線タグ状態推定装置、無線タグ状態推定システム、及び、無線タグ状態推定プログラムの第3の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
(C−1)第3の実施形態の構成
第2の実施形態の無線タグ状態推定システムのタグ状態推定部34では、動作未確認の無線タグの近傍範囲の無線タグを抽出する例を示したが、タグ状態推定部34において、近傍範囲の無線タグを特定する方法としては、例えば、無線タグを設置するときに、設置場所情報を登録しておいても良い。この場合、設置した無線タグの設置場所を管理するのに都合がいいように、保守対象タグ情報記憶部32において、設置場所を階層化した番号体系で表示しても良い。
第3の実施形態においては、保守対象タグ情報記憶部32に、予め無線タグの設置場所を、階層化した番号体系で表示した情報として登録しておき、その情報に基づいてタグ状態推定部34において、動作未確認の無線タグの近傍範囲内の無線タグを抽出するものである。
以下、第3の実施形態について第2の実施形態との差異について説明する。
図21は、保守対象タグ情報記憶部32に記憶される情報の例について示した説明図である。
ここでは、設置場所情報を階層化した番号体系で表示する例として、設置場所502を「エリア」、「サブエリア」、「無線タグ位置」、「サブ番号」の一組の情報として表すものとする。
「エリア」は、無線タグが設置される施設や場所を表すものとする。
「サブエリア」は、「エリア」を細分化したものであり、例えば、図20に示すように、近くにトイレなどのランドマークがあればその周辺一体を示すものであり、エリアが広い場合には副次的に使用する番号である。例えば、エリアが「Y駅」であった場合には、範囲が広いため、サブエリアとして「トイレ周辺」、「エレベータ周辺」、「改札周辺」のようにエリア(Y駅)を細分化した表示をする。
「無線タグ位置」は、1以上の無線タグで構成される同じ案内機能を果たす目的で設置された無線タグ群(例えば、上述の14に示すような、複数の無線タグから構成される道の分岐点など)に対して与えられる番号である。または、同じ案内機能を果たす目的で設置された無線タグ群の規模や枚数が多い場合(例えば、図19に示すように長手方向に長い形状の誘導ブロックのそれぞれに無線タグが設置されている場合)は、適度のサイズに細分化したそれぞれのグループに対して与える番号であっても良い。又、「無線タグ位置」が一致する無線タグを全て近傍範囲に属するものとしても良い。
「サブ番号」は「無線タグ位置」の示す位置に設置された複数の無線タグのそれぞれを特定する番号である。
なお、ここでは、無線タグの設置場所を、例として「エリア」、「サブエリア」、「無線タグ位置」、「サブ番号」の情報で表現したが、一部の情報の削除、情報の追加(例えば、「無線タグ位置」よりも更に細分化した位置の情報を追加する)、別の情報への置換えなどしてもよく、上述の情報で表現することに限定されるものではない。又、ここでは、同一の近傍範囲を示す情報として「無線タグ位置」の情報を用いているが、他の情報を用いても良く、近傍範囲の無線タグを特定する方法は「無線タグ位置」に限定されるものではない。
(C−2)第3の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する第3の実施形態の無線タグ状態推定システムにおける、動作未確認の無線タグについて近傍範囲の無線タグを抽出する動作の例について説明する。
ここでは、例として、同じ案内機能を果たす目的で設置された無線タグであることを示す番号である「無線タグ位置」が一致する無線タグを全て同一の近傍範囲に属するものとする。
図21は上述の図14に示す無線タグ106a〜106fについて、保守対象タグ情報記憶部32に記憶された情報の例について示した説明図である。ここでは、例えば無線タグ106aの設置場所情報502は、「エリア」=「Y駅」、「サブエリア」=「エレベータ周辺」、「無線タグ位置」=「1」、「サブ番号」=「1」となっている。又、無線タグ106a〜106fは、同じ案内機能である三股の分岐に配置されているので、同一の近傍範囲に属する無線タグとして定義され、「無線タグ位置」は、全て「1」に設定されているものとする。
よって、上述の図21において、無線タグ106aと「無線タグ位置」が一致する無線タグ、すなわち「無線タグ位置」=「1」となっている無線タグは、無線タグ106a〜106fであるので、タグ状態推定部34では、無線タグ106aの近傍範囲の無線タグの抽出が行われた場合、無線タグ106b〜106fの無線タグが抽出される。
図22は、上述の図16に示す無線タグ109a〜109fについて、保守対象タグ情報記憶部32に記憶された情報の例について示した説明図である。ここでも、各無線タグの設置場所情報502において、「無線タグ位置」は全て「1」と同一に設定されているため、タグ状態推定部34では、例えば、無線タグ109aの近傍範囲の無線タグの抽出が行われた場合、無線タグ109b〜109fの無線タグが抽出される。
図23は、上述の図19に示す無線タグ112a〜112n、無線タグ113a〜113nについて、保守対象タグ情報記憶部32に記憶された情報の例について示した説明図である。ID番号501が「112a−d」(無線タグ112a、112b、112c、112dのID番号を包括して表記したものである)、「113a−d」(無線タグ113a、113b、113c、113dのID番号を包括して表記したものである)の「無線タグ位置」は全て「1」に設定されている。よって、タグ状態推定部34では、例えば、無線タグ112aの近傍範囲の無線タグの抽出が行われた場合、無線タグ112a、112b、112c、112d、113a、113b、113c、113dの無線タグが抽出される。
(C−3)第3の実施形態の効果
第3の実施形態によれば、第2の実施形態に加えて、以下のような効果を奏することが可能となる。
第3の実施形態では、保守対象タグ情報記憶部32において、設置場所情報502を階層化した番号体系で表示(例えば、「エリア」、「サブエリア」、「無線タグ位置」、「サブ番号」と一組の情報で表示)しているため、例えば、新しい無線タグの追加や、無線タグの撤去、無線タグの移動など、無線タグの設置の状況に変化があった場合でも、設置の状況の変化のあった無線タグに関する情報(設置場所情報502)のみを操作するだけで、無線タグごとの近傍範囲を、管理することができる。これにより、保守対象タグ情報記憶部32の情報の管理が容易にできるという効果を奏する。
(D)他の実施形態
本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
(D−1)上記の各実施形態においては、無線タグ通信装置20の使用者の移動経路を推察可能な情報を消去するために、読み出し指定部24による抽選の処理等により、無線タグ通信装置20が無線タグ101と通信した順番とは無関係な順番に並び替えて、無線タグ状態推定装置30にID番号を与えているが、ID番号について昇順又は降順に並び替えてから、無線タグ状態推定装置30にその情報を与えても良い。又、上記の各実施形態においては、送信ID番号決定部23により、同じ無線タグ101のID番号は、一度しか無線タグ状態推定装置30に与えないようにしていたが、無線タグ101と無線タグ通信装置20が何回通信したかについて、無線タグ状態推定装置30の使用者が判らなくなる方法であれば、その方法は問われないものである。
例えば、無線タグ101から読み取った全てのID番号を、同じ回数だけ無線タグ状態推定装置30に与える方法でも良い。又、ID番号の属性に応じて与える回数を予め決めておいても良い。ID番号の末尾が2進数で「0」であれば1回、「1」であれば2回とするなどの方法が挙げられる。そのとき、無線タグ状態推定装置30は、同じID番号について複数回与えられても、一回しか与えられないときと同様に、ID番号の読取回数は1回とみなして処理を行ってもよい。
(D−2)上記の各実施形態においては、タグ利用履歴作成部22、送信ID番号決定部23等の、無線タグ通信装置20の使用者の移動経路を推察する情報を消すための手段を、無線タグ通信装置20に配置したが、これに限るものではなく、無線タグ通信装置20と無線タグ状態推定装置30の中間に別装置として配置しても良い。その場合、上記の中間の別装置において、複数の無線タグ通信装置20から与えられて蓄積した無線タグ101のID番号について、まとめて所定の方法で並べ替えてから、その情報をタグ利用情報作成部33に与えても良い。
(D−3)上記の各実施形態において、無線タグ状態推定装置30は、タグ状態推定部34により、無線タグ101の利用の有無に基づいて、無線タグ101の状態を推定しているが、タグ利用情報記憶部33aに記憶された情報を、その他のデータマイニング法を適用し、無線タグ101がどのような状態であるか推定することに適用しても良い。例えば、無線タグ状態推定装置30の使用者は、無線タグ状態推定装置30に記憶された情報により、無線タグ101の利用頻度を把握することができるので、その情報に基づいて、無線タグ通信装置20の使用者に対する案内効果が、より高くなるように、無線タグ101の設置場所を変更するなど、無線タグ101の設置計画を立案に利用することが可能となる。この場合、読取回数602が多い無線タグ101は、頻繁に踏みつけられる等の理由により、故障する可能性の高い状態であると推定することが可能となるため、将来の保守作業の効率化を図ることが可能となる。一方、読取回数602が少ない無線タグ101は、情報案内をするための設置場所としては不適切な状態であるとも推定でき、以後無線タグ101の設置場所や案内経路の設計上の参考データとして活用することが可能となる。
(D−4)上記の各実施形態においては、タグ状態推定部34は、タグ利用情報記憶部33aに記憶された情報において、読取回数602が「0」の場合、該当する無線タグ101は故障している可能性があると推定しているが、「1」以上の値であっても、所定の値以下であった場合には、同様の推定をしても良い。
(D−5)上記の各実施形態においては、無線タグ通信装置20は、無線タグ101と通信して、そのID番号のみを読み込んで、その情報を無線タグ状態推定装置30に与えているが、ID番号以外の情報について読み込んで無線タグ状態推定装置30に与えても良い。
例えば、無線タグ101が、内蔵する電池を電源として動作するアクティブ型のものである場合、その電池の残量等、無線タグ101の保守上必要な情報も併せて、無線タグ通信装置20が読み込み、無線タグ状態推定装置30に与えることが挙げられる。これにより、無線タグ状態推定装置30は、無線タグ101に搭載された電池の残量等についても推定することができ、電池が切れる前に電池の残量の少ない無線タグ101を予め把握して計画的に作業することが可能となり、無線タグ101の保守作業をより効率的に実施することが可能になる。
(D−6)上記の各実施形態においては、送信部25は、送信ID番号決定部23から情報が与えられたとき、速やかに、無線タグ状態推定装置30に与える構成となっているが、所定の時間待機した後に与えてもよくそのタイミングは問われないものである。例えば、上記の待機時間が、ランダムに定められる場合、無線タグ通信装置20が、無線タグ101から情報を読み取った時間について、無線タグ状態推定装置30の使用者に知られないため、無線タグ通信装置20の使用者は、より安心して無線タグ状態推定装置30に情報を提供することが可能となる。
(D−7)上記の各実施形態においては、上記の図13に示すような、視覚障害者用歩行支援システムが有する無線タグの点検について、本発明の無線タグ状態推定システムを適用した例について説明したが、本発明は、視覚障害者用歩行支援システムに限らず、他の目的(及び他のシステム)で使用される無線タグの状態推定にも適用することができるのは当然である。
10…無線タグ状態推定システム、101…無線タグ、20…無線タグ通信装置、21…無線タグ通信部、22…タグ利用履歴作成部、23…送信ID番号決定部、24…読み出し指定部、25…送信部、30…無線タグ状態推定装置、31…受信部、33…タグ利用情報作成部、34…タグ状態推定部。