JP5260915B2 - 毒性試験方法 - Google Patents

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本発明は、被検対象物の急性毒性を評価する毒性試験方法に関する。より詳しくは、特定の幼虫を用いて算定されたLD50(50%半数致死量)値を用いて評価する、また、特定の幼虫を用いて被検対象物の哺乳類体内における代謝状況から評価する毒性試験方法に関する。
新たに開発された化学物質や組成物、食品素材等の有用性を評価する際には、それらの人に対する毒性の有無の確認等の安全性の確認が必須の試験項目となっている。従来、それらの確認は、マウスやラット等のげっ歯類を試験動物として、その生体への影響の状況をヒトへの影響に代替する形で行われており、急性毒性の評価値としては、一般的にげっ歯類で求めたLD50値が用いられている。LD50値は被検対象物の生体への急性毒性を最も直接的、実際的に反映した値であると考えられるからである。また、マウス等による試験は被検対象物の体内での代謝状況も同時に確認することができるという利点を有している。
しかしながら、被検対象物のLD50値やその生体内における代謝状況をより正確に把握するためには多くのげっ歯類個体の犠牲が必要であり、動物の飼育、データ取得のための処置等に膨大なコストや手間が必要となるばかりでなく、倫理的な観点から観ても、げっ歯類を用いてLD50値等を求めることは社会的な問題となってきている。そのため、げっ歯類による急性毒性試験を、その試験の意義を減ずることなく代替できる方法が求められており、既に多くの取り組みが行われている。
その一つが、動物個体を用いることなく、動物細胞を体外に取り出して培養し、その細胞機能に対する被検対象物の影響を見る方法である(例えば、特許文献1)。この方法は倫理的な問題がないこと、評価系を単純化できること、一度に多くの被検対象物を処理することが可能であること等のメリットを有している。その反面、培養細胞の機能を一定に維持することが難しいこと、被検対象物の体内における消化・吸収・代謝・排泄等に伴って生じる毒性や、逆に生体内では代謝等によって無毒化される場合を評価すること等が難しいという問題点を有している。従って、培養細胞を用いる方法は、げっ歯類による試験を代替できる方法とはなっていない。
また、げっ歯類より倫理的な問題が少ない動物を用いて被検対象物の毒性を評価する方法として、特許文献2には、遺伝子操作によって改変した線虫を、被検試料を含有する培地中で培養し、誘導された酵素活性を測定することによって毒性を試験する方法が記載されている。しかしながら、この方法は、水道水等の自然環境中に存在する重金属等の毒性検出に用いられるものであった。
実験動物としては、キイロショウジョウバエが知られているが、それは約10日というライフサイクルの短さを利用して、主に被検対象物の変異原性や催奇形性の有無を確認するために用いられているのであって(例えば、非特許文献1)、また、その対象は成虫又はその生活環全体であって、幼虫のみを取り出して急性毒性試験に用いられたことはない。
幼虫を実験動物に使用することについては、例えば、昆虫病原菌の一種であるBacillus thuringinesisの産生するタンパク毒素を有効成分とするBT農薬は、通常、毒性はないが、昆虫の消化管内で消化分解されてはじめて殺虫活性を有するトキシンとなるため、カイコやヤマトシジミの幼虫等に食餌的に与えて、その性能(力価)が評価されている(例えば、非特許文献2)。しかしながら、これまでカイコ等の完全変態型昆虫の幼虫を、代替試験動物として検討し、そのLD50値を代替値として用いることができるかどうかという試みは行われていない。カイコは、一般的に農薬等の飼育環境に存在する各種の薬物に非常に敏感に反応してしまう動物として知られており、飼育に当たっても餌である桑葉のわずかの農薬の残留にも気を配っている等の現状から、被検対象物の急性毒性をげっ歯類と同様の投与経路で評価した場合に、げっ歯類とは異なったLD50値を示すだろうとの予測がその根底にあるためと思われる。
また、げっ歯類を急性毒性試験に用いる利点は、前記したようにLD50値算出と同時に、試験動物から取り出した臓器等の分析によって、被検対象物の体内での代謝状況を確認することが可能であるという点である。しかしながら、このような観点から見て、カイコ等を被検対象物の哺乳類体内における代謝状況を推定するための試験動物として用いることが可能であるかどうかという検討は行われていない。これも、哺乳類と昆虫類との血管系の違い等により、代謝機構が大きく異なるだろうとの予測があるためと考えられる。
一方、本発明者は、従来、カイコの実験動物としての優れた特性に着目して検討を行っており、カイコ等が自然免疫機構のみを有する生物であるにもかかわらず、「マウス等の獲得免疫機構を有する生物に感染する病原微生物」に対して抗菌活性を有する化合物を評価し、スクリーニングする方法に用いることができることを報告している(例えば、特許文献3、4)。しかしながら、これらはあくまでも、病原微生物に対する有用な治療薬のスクリーニングが目的であって、被検対象物の急性毒性を評価する動物として、カイコ等がげっ歯類のLD50値を代替できるか否か等について検討したものでもなければ、被検対象物の代謝状況を検討したものでもなかった。
従って、げっ歯類による被検対象物の急性毒性を評価するLD50値算定を代替する方法や被検対象物の体内代謝状況を推定する方法が強く望まれ、その要望が年々強くなっているにもかかわらず、そのような方法が事実上ないのが現状であった。
特開平8−163996号公報 特開平8−116991号公報 WO2001/086287号公報 WO2005/116269号公報 衛生化学 vol.39 No.4 第332〜335頁(1993) 日本応用動物昆虫学会誌48(1) 第13〜21頁(2004)
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、げっ歯類により算出されている新規薬剤等の急性毒性の指標であるLD50値と同様の意義を持つLD50値を算出することが可能であり、コスト的・手間的に遥かに有利であり、倫理的な問題が少ない、LD50値算出が可能な毒性試験方法を提供することにある。また、げっ歯類を代替するLD50値算出が可能となると共に、被検対象物の哺乳類における体内代謝状況を推定することができる毒性試験方法を提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに、カイコで得られたLD50値は、げっ歯類で報告されている値とほぼ同じの値を示すものが多く認められるという結果が得られ、更に、カイコの場合、哺乳動物の体内動態モデル薬物である7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン等を用いて、薬物の体内動態について検討したところ、カイコが哺乳類に類似する薬物代謝機構をもつことが明らかとなった。
そこで、完全変態型昆虫の幼虫を試験動物として用いれば、げっ歯類の示すLD50値の代替値を得ることが可能で、また、被検対象物の代謝物を分析することによって、哺乳類の体内における代謝状況を推定でき、毒性試験方法に使用できることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、哺乳類に対して細胞毒性を示す被検対象物の、哺乳類に対する急性毒性を評価する方法であって、完全変態型昆虫の幼虫に披検対象物を投与してそのLD50値を算定することによって行うことを特徴とする毒性試験方法を提供するものである。
また本発明は、哺乳類に対して細胞毒性を示す被検対象物の、哺乳類に対する急性毒性を評価する方法であって、該被検対象物を投与した完全変態型昆虫の幼虫における該被検対象物の代謝状況を測定することによって行うことを特徴とする毒性試験方法を提供するものである。
また本発明は、被検対象物の哺乳動物中における代謝状況を推定する方法であって、完全変態型昆虫の幼虫を、哺乳動物を代替する実験動物として用いることを特徴とする薬物代謝推定方法を提供するものである。
本発明によれば、従来、げっ歯類を試験動物とすることで得られている安全性や有用性の評価に欠かせない急性毒性試験の評価値であるLD50値を、コスト的に遥かに有利で、倫理的な問題点が少ない方法で得ることができ、また、げっ歯類を用いた毒性試験の利点である被検対象物の生体内での代謝予測を行うことも可能な、有用性の高い毒性試験方法と薬物代謝推定方法を提供することができる。
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の具体的形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲内で任意に変形できる。
本発明に用いられる完全変態型昆虫とは、卵、幼虫、蛹、成虫の成長過程を経る昆虫をいう。完全変態型昆虫としては、例えば、鱗翅目(チョウ、ガ等)、双翅目(ハエ等)、膜翅目(ハチ、アリ等)、甲虫目(カブトムシ等)等に属する昆虫が挙げられる。本発明においては、これらの完全変態型昆虫の幼虫が試験動物として用いられる。
かかる幼虫の種類としては特に制限はなく、試験目的に応じて適宜選択することができるが、いもむし形態をしており、注射等による正確な薬物投与、臓器の取り出し、糞の分析を容易とする大きさを有するものが好ましい。ガ、チョウ、カブトムシ等の幼虫はそのような要請に適した大きさを有するものが多い点で好ましい。
更に、かかる幼虫としては、以下の点から、カイコが特に好ましい。
(1)入手が容易である。
(2)飼育する方法が既に確立されており、更に飼育に利便性がある。
(3)ヒト等の哺乳類の内臓・器官と類似する性質が、これまでの研究である程度分かっている。
(4)遺伝系統が確立されており、遺伝的均一性の維持ができている。
(5)比較的大型で、動きが緩慢であり、実質上無毛なので、定量的に注射できる等、薬物の投与が容易であり、血液等の採取も容易である。
(6)脂肪体を有しており、脂肪体を取り出して、含有する物質の定量が可能である。
(7)マウス、ラット等に比べると安価で、狭いスペースで多数の個体を飼育でき、倫理的な問題も少ない。
(8)被検物質が少量しかない場合でも評価を行うことができる。
(9)齢を揃える等、同じ状態の個体を揃えることが容易である。
以上のうち、(5)以降は完全変態型昆虫の幼虫全般にいえる特性となっており、完全変態型昆虫の幼虫が実験動物として優れた特徴を持っていることは明らかである。
完全変態型昆虫は、幼虫時にはイモムシに代表される栄養補給に特化した単純な形態をしており、何回かの脱皮による明確な区切りのある齢期を有している。そのため、齢期を揃えることで、試験に用いる個体の生育状態を正確に揃えることが可能であり、目的に応じて最も適切な齢期を選択することもできる。また動きも緩慢であるため育て易く、薬剤等の注射も容易という試験動物として多くの優れた特徴を持っている。これに対し、カマキリやバッタ等に代表される不完全変態型昆虫は、幼虫の時から注射には適していない成虫と同じ形態をしており、生育状態を揃えることが難しいことや、動きも活発で注射による定量的な投与が難しく、分析に供する血液も少ない等欠点が多く、本発明には使用することができない。
本発明の毒性試験方法や薬物代謝推定方法においては、上記幼虫の大きさや齢数は、幼虫の種類、幼虫の形態、投与方法、用いる器具、試験の目的、操作上の観点、一定したLD50値を算出可能か否か等の観点から選択されればよく特に限定はないが、被検対象物の投与がし易く、血液、臓器、糞等の採取のし易い大きさを有するものが好ましい。ただし、好ましい大きさは、被検対象物の投与方法や試験の目的等によって異なってくる。例えば、餌に混じて投与する場合には、カイコであれば1齢幼虫の大きさでも投与自体は可能であることから、卵から育てた場合、すぐに試験が開始できるという点で1齢幼虫は好ましい。しかしながら、一定したLD50値を算出するという観点からは、生育状態の安定していない若齢期の幼虫より、カイコの場合、3齢以上の幼虫を用いることが好ましい。また、注射器等を用いての被検対象物の投与、臓器の取り出し、血液の採取、糞等の分析等の場合にも、3齢以上の幼虫を用いることが好ましい。4齢〜5齢の幼虫がより好ましく、5齢の幼虫が特に好ましい。
試験動物として用いる完全変態型昆虫の幼虫の大きさは特に限定はないが、被検物質の投与、臓器の取り出し、血液の採取、糞等の分析等の容易さの観点から、体長が1cm以上である幼虫が好ましく、1.5cm以上15cm以下がより好ましく、2cm以上10cm以下が特に好ましい。
被検対象物の投与試料調製方法、投与方法、投与経路等の選択は、げっ歯類の場合と同様に行えばよいが、完全変態型昆虫の幼虫は開放血管系であるため、体液と血液の区別がないため、げっ歯類で静脈内、皮下、腹腔内への投与によりLD50値を算出している場合は、カイコでは特段の事情がない限り血液内投与で行えばよい。血液内投与は、例えば、第一腹脚部等への注射により行うことができる。また、げっ歯類で強制的な経口投与によりLD50値が算出されているような場合は、カイコでは腸管内投与によりLD50値が算出される。また、飼料に混じて投与することもできる。
血液内投与の場合でも腸管内投与の場合でも、被検対象物を溶解又は分散させる媒体としては、対象物が水溶性の場合は、純水、生理食塩水、緩衝液等を、油溶性の場合は、オリーブオイル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等を用いることができ、これらは同時に試験の対照としても用いられる。また、飼料に混じて投与することもできる。
被検対象物のLD50値は、注射器等の器具を用いて血液中や腸管内に投与する場合は、1条件当たり、2〜30匹を用いることが好ましく、3〜20匹を用いることがより好ましく、5〜10匹を用いることが特に好ましい。飼料に混じて投与する場合も、1条件当たり、2〜30匹を用いることが好ましく、3〜20匹を用いることがより好ましく、5〜10匹を用いることが特に好ましい。
注射器等の器具を用いて血液中や腸管内に投与する場合もそうであるが、特に、飼料に混じて投与する場合には、げっ歯類の場合を参考にして、投与用飼料での飼育日数とその後の処置等を設定していく必要がある。例えば、未知の抽出物等の急性毒性を確認する場合には、げっ歯類を試験動物に用いる場合であっても、過去に行った同様の試験結果等を参考にして、試験条件をその都度設定する必要があり、それは本発明の完全変態型昆虫の幼虫を用いた場合でも同様である。
このような場合、どのような検討を行う場合であっても、本発明においては、低コストで倫理的な問題が少ないので、げっ歯類を用いた場合に比べて多くの条件、個体数による検討を行うことができるので、最終的には、再現性に優れたLD50値の算定条件を設定することができる。
飼料に混じて投与する場合、被検対象物を投与後、通常飼料での飼育を、好ましくは1〜20日間行った後、より好ましくは1〜10日間行った後、特に好ましくは1〜3日間行った後、半数のカイコが死亡する濃度をLD50値とすることが好ましい。
LD50値を算定する場合に安定した結果を得るために、好ましくは25〜30℃の範囲に、好ましくは26〜28℃の範囲に飼育ケージの温度を管理する。完全変態型昆虫の幼虫の飼育ケージでは温度管理が容易であるため、一年を通じて、同じLD50値を算出することが可能となる。
また、完全変態型昆虫の幼虫でのLD50値が既に求められているモデル薬剤をコントロールとして、被検対象物のLD50値と同時にそれらのLD50値を求めることで、LD50値の信頼度を確認することができる。また、LD50値の算定に際し、諸条件の及ぼす影響に関し確認することができる。このような確認を、げっ歯類を用いて行う場合は、倫理上の問題を生じるが、本発明法ではそのような問題がないため、これまでは実質的に実施することができなかった「信頼度を確認するような検定試験」等を導入することも可能になる。
本発明の毒性試験方法にカイコを用いる場合には、その品種は特に限定されない。これらは試験の内容に応じて受精卵から育てて用いてもよいし、必要な齢の幼虫を入手して試験を実施してもよい。カイコガの卵やカイコガの幼虫(カイコ)の入手先としては、愛媛蚕種、上田蚕種等がある。
カイコを用いて被検対象物のカイコ体内における代謝状況を測定する場合には、先に述べたように体の大きな5齢幼虫を用いることが好ましい。しかしながら、卵から育てた場合等、より早く試験に供する幼虫を確保したい場合には3齢や4齢幼虫を用いることも可能である。
本発明における被検対象物には、単一化合物に限らず混合物も含まれる。かかる混合物としては特に限定はないが、土壌、食品、抽出物等が挙げられる。
本発明の毒性試験方法に供される被検対象物は、細胞毒性を有するものであることが必須である。細胞毒性を有する被検対象物の場合には、カイコに対してげっ歯類と同様の投与経路で被検対象物投与すると、表1に示すように、カイコで算定されたLD50値は、げっ歯類で得られたLD50値と等しい値となっていることが明らかになったからである。従って、カイコ等の完全変態型昆虫の幼虫の示すLD50値を、げっ歯類の示すLD50値の代替値とする毒性試験方法が可能である。
Figure 0005260915
細胞毒性の有無が明確でない被検対象物のLD50値を算定しようとする場合には、予め、先に記載した培養細胞を用いたin vitroの毒性試験によって細胞毒性の有無を確認することが好ましい。この場合は試験工程が増えることとなるが、哺乳類を代替して倫理上の問題を回避しつつLD50値を算出できるという本発明の効果・利点は、試験工程の増加という問題点をはるかに上回っている。
また本発明の毒性試験方法は、げっ歯類による試験を代替するものであるため、明らかに哺乳類と昆虫類間で異なった機構に作用することが判明している物質は、本発明の被検物質から除くことによって本発明の意義を高めることができる。
例えば、シアン化カリウムは、哺乳類ではシアン化物イオンがヘム鉄に配位してヘム鉄の酸素の運搬を助けるという働きを阻害するために強い毒性を示すが、カイコの場合はそのような機構を持たないためLD50値が異なることが予測できる。実際に得られたLD50値もげっ歯類の場合に比べて10倍以上高いものであった(表1)。
また、哺乳類の神経伝達物質受容体に作用する薬剤も、カイコには同様の受容体が存在しない場合が多いため、毒性が弱くなり、より高いLD50値を与える場合が多いと考えられる。本発明の検討結果においても、哺乳類に神経毒性を示す薬剤を毒性試験対象とした場合、げっ歯類の10倍以上の用量を投与しても、カイコに対して殺傷効果を示さなかったものが認められた(表2)。
Figure 0005260915
従って、本発明の「げっ歯類により算定されるLD50値の代替値を得る」という課題を達成するためには、哺乳類に神経毒性を示すと判断されるものは試験対象から除くことが好ましい。すなわち、哺乳類に対して神経毒性を有すると予想される構造をもつ被検対象物、経験的に神経毒性を有することが知られているもの、あらかじめ哺乳類の神経培養細胞等による予備検定等で神経毒性を有するもの、投与後のカイコの観察から神経毒による影響が推察されるもの等は、本発明の毒性試験方法における被検対象物から除くことが、げっ歯類の示すLD50値との乖離を小さくできる点で好ましい。すなわち、本発明の毒性試験方法は急性毒性を評価するが、それは神経毒性以外の毒性を反映したものであることが好ましい。
完全変態型昆虫の幼虫としてカイコを採用した場合、被検対象物の代謝状況の測定は、げっ歯類の場合とほぼ同様に行うことができるが、例えば以下のように行われる。まず、血液中の消長は、血液中に被検対象物を注射後、一定時間後に血液を回収して行うことができる。血液の回収は仮足の切断、又は、注射針により体表に傷をつけることにより行うことが好ましい。
図1はその結果を示したものである。図1は哺乳類における薬物の体内動態のモデル薬物として使用されている7−ヒドロキシ−4−メチルクマリンを、5齢幼虫の血液中に注射した場合である。その結果、血中半減期は7分であることが判明し、マウスに静脈注射した場合に報告されている9分とよく一致した結果が得られた。
被検対象物の代謝産物の測定は、先で得られた血液を除タンパク処理し、HPLC等を用いて分析することで行うことができる。図2はHPLCによる分析結果を示したものである。7−ヒドロキシ−4−メチルクマリンを投与したカイコの血液から、投与物質と異なる13分の溶出位置にUV吸収ピークが確認された。
この溶出物を更に質量分析にかけて解析した結果、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリンと考えられる分子量177と、それとは異なる分子量339のピークが観察された。両者の分子量の差から後者は前者のグルコース抱合体であると考えられる。これらの化合物は、薬物を投与していないカイコの血液由来のサンプルでは検出されなかった。
そこで更に、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリンを投与したカイコの血液のメタノール抽出液をβ−グルコシダーゼで処理したところ、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリンの蛍光強度の上昇が認められ、カイコの血中でのグルコース抱合体の存在が検証された。
また、7−ヒドロキシクマリンを投与した場合も、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリンと同様にグルコース抱合体の存在が確認された。
このように、完全変態型昆虫の幼虫を用いて、被検対象物の代謝状況を測定することによって、該被検対象物の哺乳類での代謝状況を推定でき、それによって毒性試験が可能である。
従って、本発明の毒性試験方法の他の態様は、哺乳類に対して細胞毒性を示す被検対象物の、哺乳類に対する急性毒性を評価する方法であって、該被検対象物を投与した完全変態型昆虫の幼虫における該被検対象物の代謝状況を測定することによって行うことを特徴とする毒性試験方法である。また、被検対象物の哺乳動物中における代謝状況を推定する方法であって、完全変態型昆虫の幼虫を、哺乳動物を代替する実験動物として用いることを特徴とする薬物代謝推定方法である。
更に好ましくは、該被検対象物の代謝状況の測定を、完全変態型昆虫の幼虫の血液中又は糞中から被検対象物の代謝物を分析することによって行う上記毒性試験方法及び薬物代謝推定方法である。そして、上記「被検対象物の代謝物」としては特に限定はないが、具体的には、上記したように実際にその存在が確認された「被検対象物のグルコース抱合体」が挙げられる。
被検対象物のグルコース抱合反応がカイコ中のどの臓器で行われているかの検証はin vitroでの組織培養において7−ヒドロキシクマリンを用いた抱合反応の有無の確認により行った。その結果、哺乳類の肝臓に相当する脂肪体の組織培養において抱合反応が検出された(図3)。更に脂肪体における抱合酵素の存在部位を検討した結果、そのミクロソーム画分に抱合活性が存在していることが分かった(表4)。
次に、糞等の排泄物中の代謝物についての測定方法について記載する。鱗翅目昆虫等の完全変態型昆虫の幼虫において、代謝された物質はマルピーギ管を介して糞中に排泄されることが知られている。
そこで、7−エトキシクマリン、その脱エチル化体である7−ヒドロキシクマリンを血液中に投与後に糞を集め、メタノール抽出後にβ−グルコシダーゼ処理を行ったものと行わなかったもの両者の蛍光強度を測定した。その結果、投与された7ヒドロキシクマリンの13%は蛍光を発する未変化体として、80%が蛍光を示さないグルコース抱合体として糞中に排泄されることが分かった(表3)。
Figure 0005260915
Figure 0005260915
また、投与3時間後にはグルコース抱合された化合物の大部分が糞中に排泄されており、7−ヒドロキシクマリンは速やかにグルコース抱合されて排泄されることが分かった(図4)。
また7−エトキシクマリンについて、糞中への7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシクマリングルコシドとして排泄された割合を、前者はそれ自体の示す蛍光により、後者はグルコシダーゼ処理により初めて示すようになった蛍光を測定することにより定量した。その結果、投与した薬剤の11%が7−ヒドロキシクマリンとして、45%が7−ヒドロキシクマリングルコシドとして糞中に排泄されていることが分かった(表3)。更に、7−エトキシクマリンの排泄は24時間後にも排泄が認められ(図5)。7−エトキシクマリンの血中半減期は6時間であった(図6)。
哺乳類においては、上記7−ヒドロキシクマリンや4−メチル7ヒドロキシクマリンは、グルクロン酸抱合される。カイコの場合、これらは主にグルコース抱合されることが分かった。哺乳類とカイコの抱合反応に用いられる親水性基質の違いがカルボン酸基かアルデヒド基であるかの違いは、薬物動態における性質については、相互が類似していると判断することができる。また、抱合反応は今回初めて哺乳類同様速やかに起こることも明らかとなった。
このような両者の類似性のために、完全変態型昆虫の幼虫を用いても、哺乳類に対する急性毒性を評価することが可能になり、また、哺乳類における薬物代謝状況を推定することが可能になったと考えている。
前記は数種のモデル化合物によって得られた結果であるが、他の被検対象物においても、同様の手法によってその体内動態を解析することができ、哺乳類に対するその毒性に係る体内動態の状況を推定することが可能である。そして、完全変態型昆虫の幼虫における該被検対象物の代謝状況を測定することによって、哺乳類に対する急性毒性を評価すること及び哺乳類における薬物代謝状況を推定することが可能である。
以上の結果から、カイコにおいても、被検対象物のカイコ体内における薬物動態の解析が十分に可能であること、その代謝機構が哺乳類の場合と類似していることが本発明により明らかとなった。従って、カイコにおける薬物動態の解析から、被検対象物の哺乳類における代謝状況を推定することができるものと考えられる。また、カイコ以外の他の完全変態型昆虫の幼虫もカイコと同じ開放血管系と脂肪体を有していること等の共通性から、カイコと同じ薬物代謝機構を有するものと判断することができ、カイコ以外の完全変態型昆虫の幼虫で得られた結果からもカイコ同様に哺乳類における薬物代謝状況を推定することができ、それを用いて哺乳類に対する急性毒性を評価することが可能である。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
<カイコの種類、飼育条件>
カイコの受精卵(交雑種Hu・Yo x Tukuba・Ne)は、愛媛蚕種株式会社から購入した。孵化した幼虫は室温で人工飼料シルクメイト2S(日本農産工業株式会社製)を与えて5齢幼虫まで育てた。飼育容器は卵から2齢幼虫までを角型2号シャーレ(栄研器材製)、それ以降をディスポーザブルのプラスチック製フードパック(フードパックFD 大深、中央化学株式会社製)を用いた。飼育温度は27℃とした。
<被検対象物の投与用試料の調製と投与>
(1)血液内投与試料の例
塩化ナトリウム(Sodium chloride)を生理食塩水にて、500mg/mLから5mg/mLまでの濃度水準で2倍希釈系列の濃度調製し、1濃度10頭のカイコに0.05mLずつ腹部から注射により投与した。
(2)腸管内投与試料の例
硫酸第一鉄(ferrous sulfate)を生理食塩水にて、600mg/mLから6mg/mLまでの濃度水準で2倍希釈系列の濃度調製し、1濃度10頭のカイコに0.05mLずつ注射筒を用いて腸管内に投与した。
実施例1
<カイコによる被検対象物のLD50値の算出とげっ歯類で得られた値との比較>
5齢1日目のカイコに、上記の投与方法に従って各被検対象物を投与した後、各カイコを1日間飼育し、1日後に半数が死亡する体重1gあたりの投与量(μg)をLD50値とした。値の確定のため、必要に応じて投与濃度を更に変動させて同様の操作を繰り返した。
なお、げっ歯類であるマウス又はラットで、既にLD50値が算定されている化合物(例えば、Klassen CD, Casarette and Doulls’toxicology: The basic science of poisons., 5th ed., McGraw-Hill, New York(1996)、The Merck Index, An Encyclopedia of Chemicals Drugs, and Biologicals, (1989)等)に対して試験を実施し、投与経路はげっ歯類で静脈内投与(i.v.)、皮下投与(s.c.)、体腔内投与(i.p.)を行っている場合は、カイコでは血液内投与(i.h.)を行い、げっ歯類で経口投与(p.o.)を行っている場合は腸管内投与(i.m.)を行った。
カイコで得られたLD50値を、マウスやラットで得られているLD50値と共に、表1と表2に示す。表1に示す細胞毒性を有する化合物のカイコで得られたLD50値は、シアン化カリウムの例を除いて、マウス又はラットでのLD50値の、数分の1から10倍以内の値となっていた。LD50値は、同じげっ歯類同士でも、例えばm−クレゾールの場合、マウスで600mg/kg、ラットで242mg/kg(ただし、表1とは異なる文献に記載の値)というように数倍程度の違いが認められる値である。そのことからすると、今回得られたカイコでのLD50値とげっ歯類でのLD50値はほぼ一致していると評価することができる。つまり、細胞毒性を示す被検対象物の場合、カイコ等で求めたLD50値はげっ歯類のLD50値を代替し得る値である。
一方、表2に示す哺乳類に対して神経毒性を有する化合物のカイコで得られたLD50値は、8例中6例でげっ歯類での値の10倍以上の値を示した。
表1、表2におけるカイコとげっ歯類とでLD50値に大きな違いを認めた化合物は、前述した通り、哺乳類とカイコ間でその生体機構に明確な相違が存在する部分に対して影響を与える化合物であった。すなわち、シアン化カリウムは、哺乳類の血中にのみ存在するヘムタンパク質の酸素運搬機能を阻害することで毒性を現すので、ヘムタンパク質を持たないカイコでは毒性が弱い。また、ストリキニーネやd−ツボクラニンは哺乳類の神経系に作用して神経毒性を示す化合物であるが、カイコではこれらの薬剤のレセプターが存在しない等の理由により毒性が弱くなったと考えられる。
カイコにもグルタミン酸レセプター等、哺乳類と同じ神経伝達物質に対するレセプターが存在するため、哺乳類に対して神経毒性を示す薬剤が全てカイコでは毒性を示さないということにはならないが、哺乳類に対して神経毒性を示す薬剤の多くは、カイコでは急性毒性が弱いことが確認された(表2)。従って、本発明の毒性試験方法においては、評価される急性毒性は、少なくとも哺乳類に対して神経毒性以外の毒性を有しているものである場合には、LD50の相関が強く、哺乳類でのLD50値の代替値として好ましく使用できる。
すなわち、哺乳類に対して神経毒性を示す可能性のある化合物は、本発明の被検対象物から除いた方が好ましいことが分かったが、ここで、神経毒性の有無の確認は、事前に培養細胞に対する影響を確認すること等で行うことができ、例えば、Motor Neuron-Like Hybrid Cell Line NSC-34や、Human Glial Hybrid Cell Line M03.13(共にコスモ・バイオ株式会社)を用いて行うことができる。
実施例2
被検対象物の毒性試験においては、LD50値の算定と共に、被検対象物の体内動態を予測するために、その代謝物の分析を行う必要がある。従って、カイコにおいて行った代謝物の分析結果が哺乳類での結果を代替できるものであるならば、カイコを用いて行う毒性試験方法の有用性が更に増す結果となる。そこで、以下にカイコを用いた被検対象物の代謝物分析の具体例を示すと共に、代謝機構の哺乳類との類似性について検討した。
<カイコを用いた被検対象物の代謝物分析>
(1)7−ヒドロキシ−4−メチルクマリンの血中半減期の確認
表1に示す多くの化合物のLD50値が哺乳動物と一致しているという結果は、カイコにおける薬物の体内動態が哺乳動物と共通した機構によっていることを示唆している。哺乳動物における薬物の体内動態のモデル薬物として使用されている、蛍光物質である7−ヒドロキシ−4−メチルクマリンについて、カイコにおける体内動態を検討した。
まず、5齢カイコに対し、生理食塩水に8mg/mLの濃度に溶解させた7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン溶液0.05mLを、腹部から血液内注射後、仮足部を切断し、血液をサンプリングして、その蛍光強度を測定することで血中半減期を求めた。その結果、カイコ血液中での7−ヒドロキシ−4−メチルクマリンの半減期は7分であった(図1)。一方、マウスに静脈注射した場合は、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリンの血中半減期は9分であった(data not shown)。従って、カイコ血液中の7−ヒドロキシ−4−メチルクマリンの半減期は、マウスにおける結果とよく一致していることが分かった。
(2)7−ヒドロキシ−4−メチルクマリンの代謝における抱合化反応の有無の確認
7−ヒドロキシ−4−メチルクマリンは、哺乳類ではグルクロン酸抱合及び硫酸抱合を受ける。そこでカイコにおいても抱合反応を受けるか否かについて検討した。
まず、5齢カイコに対し、生理食塩水に8mg/mLの濃度に溶解させた7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン溶液0.05mLを、腹部から血液内注射後、注射直後と20分後に、血液を回収した。回収した血液を除タンパク処理後、HPLCにて解析した。同時に薬剤を投与していないカイコから得た血液にも同様の処置を行いコントロールとした。
図2にその結果を示す。Aはコントロール、Bは薬剤投与直後のもの、Cは薬剤投与後20分のサンプルをロードした場合のチャートである。7−ヒドロキシ−4−メチルクマリンとは異なる13分の溶出位置にピークが確認された。このピークを質量分析法で解析した結果、投与薬剤と同じ分子量117のピークと分子量339のピークが検出された。分子量339は投与薬剤のグルコース抱合体に相当する分子量である。そこで、薬剤投与後に回収した血液のメタノール抽出サンプルをグルコース脱抱合酵素であるβ−グルコシダーゼ(シグマ社製)処理したところ、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリンによる蛍光強度(Ex:368nm,Em:456nm)の上昇が認められた。これらの結果から、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリンはカイコの体内でグルコース抱合されることが分かった。同様に7−ヒドロキシクマリンもグルコース抱合されることを確認した。
(3)カイコ体内でグルコース抱合反応を担っている臓器の確認
カイコのどの臓器がグルコース抱合反応を担うかについて、以下のin vitroでの組織培養によって検討した。カイコから分離した脂肪体、腸管、絹糸腺及びその他の臓器をTC100培地(日本農産社製)に加えた後、0.16μmoLの7−ヒドロキシクマリンを加えて30℃でインキュベートした。各時間において培養液上清をサンプリングし、β−グルコシダーゼで処理後に蛍光強度(Ex:368nm,Em:456nm)を測定した。
得られた結果を図3に示す。脂肪体の組織培養において抱合反応が検出された。また、脂肪体における抱合酵素の存在部位を検討した結果、抱合活性は可溶性画分ではなくミクロソーム画分に存在することが分かった(表4)。哺乳類ではグルクロン酸抱合反応はミクロソーム画分に存在することが知られており、カイコでも同様の結果が得られた。
(4)カイコ糞中の7−ヒドロキシクマリンと7−エトキシクマリン代謝産物の確認
次に、カイコの糞中へ排泄される投与薬剤の代謝産物について検討した。先に記したように鱗翅目昆虫の幼虫では、代謝された物質は昆虫の排泄器官であるマルピーギ管を介して糞中に排泄されることが知られている。そこで、投与した7−エトキシクマリンとその脱エチル化体である7−ヒドロキシクマリンの糞中の代謝産物につき検討を行った。
(4−a)7−ヒドロキシクマリン投与時の糞中のグルコース抱合体と未抱合体の確認
カイコの血液中に0.275μmoLの7−ヒドロキシクマリンを注射後、経時的に糞を回収し、メタノール抽出後、β−グルコシダーゼ処理を行ったサンプルと行わなかったサンプルの両者の蛍光強度(Ex:368nm,Em:456nm)を測定した。未抱合体の量はβ−グルコシダーゼ処理を行わなかったサンプルの蛍光強度より求めた。
その結果、糞中には投与された7−ヒドロキシクマリンの13%が未抱合体として、80%がグルコース抱合体として排泄されることが分かった(表3)。また、投与後3時間でグルコース抱合された化合物の大部分が糞中に排泄されていた(図4)。従って、7−ヒドロキシクマリンは速やかにグルコース抱合されて排泄されることが分かった。
(4−b)7−エトキシクマリン投与時の糞中の7−ヒドロキシクマリンとその7−ヒドロキシクマリングルコース抱合体の確認
操作は(4−a)と同様に行い、投与された7−エトキシクマリンの11%が未抱合体の7−ヒドロキシクマリンとして、45%がそのグルコース抱合体として排泄されていることが分かった(表3)。従って、7−エトキシクマリンはシトクロームP450によって脱エトキシ化されて7−ヒドロキシクマリンに変換された後、更に抱合反応によりグルコース抱合体へと代謝されると考えられる。また、7−エトキシクマリンの排泄は7−ヒドロキシクマリンに比べると速度が遅く、24時間後にも排泄が認められた(図5)。7−エトキシクマリンの血中半減期は6時間であることから(図6)、カイコにおける7−エトキシクマリンの代謝の場合、初段階であるP450による脱エチル反応が律速段階であり、脱エチル化された後は反応物である7−ヒドロキシクマリンは速やかにグルコース抱合されて排泄されると考えられる(図7)。
以上の実施例により、本発明がげっ歯類を用いて行われている細胞毒性を示す被検対象物の急性毒性試験におけるLD50値の算定を代替することができ(実施例1)、また、「げっ歯類等を用いる試験のもう一つのメリットである被検対象物の生体内での代謝状況の測定」においても、カイコはげっ歯類を代替し得ることが分かった(実施例2)。
本発明の完全変態型昆虫を用いた毒性試験方法や薬物代謝測定は、コスト上、倫理上等の問題点がないため、細胞毒性を示す被検対象物において、げっ歯類によって行われている急性毒性試験や薬物代謝測定を代替し得るため、単一物質の安全性試験、混合物の安全性試験、薬剤の探索等に広く利用されるものである。
カイコ血液中における7−ヒドロキシ−4−メチルクマリンの半減期を示すグラフである。 カイコ血液中における7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン代謝産物のHPLCによる分析結果を示すチャートである。 A:未投与コントロール B:7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン投与直後 C:7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン投与20分後 カイコの各臓器における7−ヒドロキシクマリンのグルコース抱合活性を示すグラフである。 カイコ糞中における7−ヒドロキシクマリン投与時のグルコース抱合体と未抱合体の排泄状況を示すグラフである。 カイコ糞中における7−エトキシクマリン投与時のグルコース抱合体と未抱合体の排泄状況を示すグラフである。 カイコ血液中における7−エトキシクマリンの半減期を示すグラフである。 7−エトキシクマリンのカイコ体内での代謝機構を示す化学反応式である。

Claims (4)

  1. 哺乳類に対して細胞毒性を示す被検対象物の、哺乳類に対する細胞毒性の急性毒性を評価する方法であって、哺乳類に対して神経毒性を示す化合物を除いた被検対象物をカイコに投与して、そのLD50値を算定し、該カイコの示すLD50値を、げっ歯類の示すLD50値の代替値とすることを特徴とする細胞毒性の毒性試験方法。
  2. 1条件当たり5匹以上のカイコを用いる請求項1に記載の細胞毒性の毒性試験方法。
  3. 上記被検対象物をカイコに血液内投与する請求項1又は請求項2に記載の細胞毒性の毒性試験方法。
  4. 上記カイコが5齢のカイコである請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の細胞毒性の毒性試験方法。
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