JP5260715B2 - ストリップおよび空気入りタイヤの製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は空気入りタイヤの内側に配置されるインナーライナー用のストリップ、該ストリップの製造方法、さらに該ストリップを備えた空気入りタイヤの製造方法に関する。前記インナーライナーは、円筒ドラム上で、両端に耳部を有するリボン状のストリップを螺旋状に巻回させることによって製造される。ここでリボン状のストリップは、仕上げの断面形状に近い状態で押出成形する。
図4において(a)〜(d)にストリップ10の実施形態の断面図を示す。ストリップ10は、ストリップ本体10Aの厚さ(T1)が0.05mm〜1.0mmである。前記ストリップ本体10Aの厚さ(T1)が、0.05mm未満では、押出成形が困難となり、所定厚さのインナーライナーを形成するために回数を不必要に増加し、また1.0mmを超えるとインナーライナーの屈曲耐久性の低下、軽量化が望めないことになる。前記ストリップの厚さ(T1)は、好ましくは、0.1mm〜0.6mmの範囲である。そしてストリップ全体の幅(W0)は、5mm〜40mmの範囲で調整され、好ましくは10〜40mmの範囲である。
本発明のストリップは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(以下、SIBSともいう)を5質量%以上40質量%以下ならびに天然ゴム、イソプレンゴムおよびブチルゴムよりなる群から選択される少なくとも1種のゴム成分を60質量%以上95質量%以下含むポリマー成分100質量部に対して、硫黄を0.1質量部以上5質量部以下含むポリマー組成物よりなる。
SIBSのイソブチレンブロックにより、SIBSを含むポリマーシートは優れた耐空気透過性を有する。したがって、SIBSを含むポリマーシートをインナーライナーに用いた場合、耐空気透過性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
インナーライナー用ポリマーシートを構成するポリマー組成物はゴム成分を含む。ゴム成分はポリマー組成物にゴム成分を含む隣接部材との加硫前粘着性を与えることができる。さらに硫黄と加硫反応することにより、ポリマー組成物にカーカスやインスレーションなどの隣接部材との加硫接着性を与えることができる。ゴム成分は天然ゴム、イソプレンゴムおよびブチルゴムよりなる群から選択される少なくとも1種を含み、なかでも破壊強度および接着性の観点から、天然ゴムを含むことが好ましい。
ポリマー組成物は、汎用されている硫黄を用いることができるが、不溶性硫黄を用いることが好ましい。ここで不溶性硫黄とは、天然硫黄S8を加熱、急冷し、Sx(x=10万〜30万)となるように高分子量化したものである。不溶性硫黄を用いることで、通常、硫黄をゴム加硫剤として用いた場合に生じるブルーミングを防止することができる。
ストリップを構成するポリマー組成物はステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、加硫促進剤などの添加剤を含むことができる。ステアリン酸はゴム成分の加硫助剤として機能する。ステアリン酸の含有量は、ポリマー成分100質量部に対して、1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。ステアリン酸の含有量が1質量部未満であると、加硫助剤としての効果を得ることができない。一方、ステアリン酸の含有量が5質量部を超えると、ポリマー組成物の粘度が低下し、破壊強度が低下するおそれがあるため好ましくない。ステアリン酸の含有量は、さらに1質量部以上4質量部以下が好ましい。
本発明においてストリップは第1層と第2層の積層体が用いられる。ここで第1層は、前記ポリマーシートと実質的に同じポリマー組成物を用いることができ、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)を主体とするポリマー組成物である。
積層体において第2層は熱可塑性エラストマーおよび硫黄を含む熱可塑性エラストマー組成物からなる。かかる第2層は熱可塑性エラストマーに、天然ゴム、イソプレンゴムおよびブチルゴムよりなる群から選択される少なくとも1種のゴム成分を混合することもできる。熱可塑性エラストマーに硫黄を添加することにより、第1層との加硫前粘着力および加硫接着力が向上する。さらに、カーカスやインスレーションなどの隣接部材との加硫前粘着力および加硫接着力も向上する。
熱可塑性エラストマー組成物はステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、加硫促進剤などの添加剤を含むことができる。これらの添加剤は第1層の配合を採用することができる。
図2においてストリップ10を製造する製造方法を説明する。ストリップの製造装置11は、横長矩形断面の熱可塑性エラストマーのシート12を押出形成する押出装置13と、その押出口16の近傍に配される一対の型ローラ14とから構成される。
<ストリップの製造方法>
(ポリマーシートまたは積層体の作製)
本発明のインナーライナー用ストリップは以下の方法で製造することができる。2軸押出機に各配合剤を投入して約150〜280℃、50〜300rpmの条件下で混練し、SIBS、ゴム成分、硫黄および必要に応じて各種添加剤が動的架橋されたポリマー組成物のペレットを得る。得られたペレットをTダイ押出機に投入してポリマー組成物よりなるシート状のポリマーシート(または第1層)、および熱可塑性エラストマー組成物よりなるシート状の第2層を得る。
図5(a)に示すように、ストリップ10を円筒ドラムD上で螺旋状に順次巻き付け、隣接するストリップ10は相互に3mm〜38mmの範囲で重複部を形成しながらインナーライナーを形成する。ここでストリップ10は、巻回に際し、図5(b)に端部を拡大して示すように、隣接するストリップ間で段差を形成するが、その耳部によって凹凸段差dは緩和されることになる。一方、図7に示すように、従来の断面が長方形のストリップで耳部を有しないものを用いた場合の凹凸段差d0は、耳部を有するストリップの場合の凹凸に比べ約2倍となっている。
本発明の空気入りタイヤは、一般的な製造方法を用いることができる。積層体を用いてストリップを製造し、前述の方法でインナンーライナーを製造する。前述の如くインナーライナーを成形した生タイヤを加硫成形することによって製造することができる。積層体を生タイヤに配置する際は、積層体の第2層が、カーカスプライに隣接するようにタイヤ半径方向外側に向けて配置する。このように配置すると、タイヤ加硫工程において第2層とカーカスプライとの接着強度を高めることができる。得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライのゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
本発明の加硫タイヤにおいて、積層体によって形成されるインナーライナーの配置状態を図6に示す。図6において、積層体PLは、第1層としてのSIBS層PL1および第2層としてのSIS層またはSIB層PL2から構成される。該積層体PLを空気入りタイヤのインナーライナーに適用する場合、第2層PL2がカーカスプライCに接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、第2層PL2とカーカスプライCとの接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライCのゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有する。
表1、2に示す配合処方にしたがって、各種配合剤を2軸押出機(スクリュ径:φ50mm、L/D:30、シリンダ温度:220℃)に投入してペレット化した。これを図2及び図3に示す押出機(スクリュ径:φ80mm、L/D:50、ダイギャップ幅:40mm、シリンダ温度:220℃)を用いて、スクリュ回転数80RPM、押出速度は約9m/分で、リボン状のシートを押出した。そして型ロール14A、14Bに通して、両端に所定の形状の耳部を形成したストリップ12Aを製造した。
上記ストリップを、図5に示すドラム上でストリップを巻き回し、隣接するストリップの耳部が、隣接するストリップが相互に5mm重複するように、相互に接合部を形成して幅広のシート状に成形しインナーライナー用のシートを製造した。
(注2)NR:天然ゴム TSR20
(注3)SIBS:カネカ(株)社製の「シブスターSIBSTAR 102T」(スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体、重量平均分子量100,000、スチレン単位含有量25質量%、ショアA硬度25)
(注4)カーボンブラック:東海カーボン(株)社製の「シーストV」(N660、窒素吸着比表面積:27m2/g)
(注5)ステアリン酸:花王(株)社製の「ステアリン酸ルナックS30」
(注6)酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)社製の「亜鉛華1号」
(注7)老化防止剤:大内新興化学(株)社製の「ノクラック6C」(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
(注8)加硫促進剤:大内新興化学(株)社製の「ノクセラーDM」(ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド)
(注9)硫黄:鶴見化学工業(株)社製の「粉末硫黄」
(注10)SIS:クレイトンポリマー社製の「D1161JP」(スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体、重量平均分子量150,000、スチレン単位含有量15質量%)
(注11)SIB:上記の(SIBの製造)で得られたSIB(スチレン−イソブチレンジブロック共重合体、重量平均分子量70,000、スチレン単位含有量15質量%)
(注12)エポキシ化SBS:ダイセル化学工業(株)社製の「エポフレンドA1020」(エポキシ変性スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、重量平均分子量100,000、エポキシ当量500)
(注13)天然ゴム:TSR20
(注14)ブチルゴム:エクソンモービル(株)製の「エクソンクロロブチル1066」
JISK−6300「未加硫ゴムの試験方法」に準じて、(株)島津製作所製のムーニー粘度試験機「ムーニービスコメーターSMV−202」を用い、1分間の予熱によって熱せられた130℃の温度条件にて、小ローターを回転させ、4分間経過した時点でのポリマー組成物のムーニー粘度(ML1+4、130℃)を測定した。ムーニー粘度が小さいほど加工性に優れることを示す。
カーカス層(配合:スチレンブタジエンゴム100質量部、カーボンブラック50質量部、硫黄2質量部、厚さ:2.0mm)のシートを準備した。前記ポリマーシートとカーカス層のシートとを貼り合わせて、100gfで30秒間保持した後、剥離させた力を加硫前の粘着力として測定した。下記計算式により、第1層は配合B1を基準(100)として、第2層は、配合No1(100)を基準として、各配合の加硫前の粘着力を指数で表示した。加硫前の粘着力指数が大きいほど、加硫前の粘着力が強く、好ましいことを示す。
(加硫前の粘着力指数)=(各配合の加硫前の粘着力)÷(比較例1の加硫前の粘着力)×100。
第1層と第2層のポリマーシートを貼り合わせて、100gf30秒間保持した後、剥離させた力を加硫前の粘着力として測定した。下記計算式により、比較例1を基準(100)として、各配合の加硫前の粘着力を指数で表示した。加硫前の粘着力指数が大きいほど、加硫前の粘着力が強く、好ましいことを示す。
(加硫前の粘着力指数)=(各配合の加硫前の粘着力)÷(比較例1の加硫前の粘着力)×100。
前記ポリマーシートとカーカス層のシートとを貼り合わせて、170℃で20分間加熱し、加硫接着力測定用のサンプルを作製する。引張剥離試験により剥離力を測定することで加硫接着力とした。下記計算式により、第1層は比較例S1を基準(100)として、第2層は、配合No1(100)を基準として、各配合の加硫接着力を指数で表示した。加硫接着力指数が大きいほど、加硫接着力が強く、好ましいことを示す。
(加硫接着力指数)=(各配合の加硫接着力)÷(比較例1の加硫接着力)×100。
第1層と第2層のポリマーシートを貼り合わせて、170℃で20分間加熱し、加硫接着力測定用のサンプルを作製する。引張剥離試験により剥離力を測定することで加硫接着力とした。下記計算式により、比較例1を基準(100)として、各配合の加硫接着力を指数で表示した。加硫接着力指数が大きいほど、加硫接着力が強く、好ましいことを示す。
(加硫接着力指数)=(各配合の加硫接着力)÷(比較例1の加硫接着力)×100。
(d)軽量化効果指数
下記計算式により、比較例1を基準(100)として、各配合を用いた空気入りタイヤの重量を指数で表示した。軽量化効果指数が大きいほど、タイヤ重量が軽く、好ましいことを示す。
(軽量化効果指数)=(比較例1のタイヤ重量)÷(各配合のタイヤ重量)×100。
(株)神戸製鋼所製の転がり抵抗試験機を用い、製造した195/65R15サイズの空気入りタイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、荷重3.4kN、空気圧230kPa、速度80km/時間の条件下で、室温(38℃)にて走行させて、転がり抵抗を測定した。下記計算式により、比較例1を基準(100)として、各配合の転がり抵抗を指数で表示した。転がり抵抗指数が大きいほど、転がり抵抗が低減され、好ましいことを示す。
(転がり抵抗指数)=(比較例1の転がり抵抗)÷(各配合の転がり抵抗)×100。
製造した195/65R15サイズのタイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、初期空気圧300Kpaを封入し、90日間室温で放置し、空気圧の低下率(%/月間)を計算した。
JASO−C607:2000の「自動車タイヤのユニフォミティ試験方法」に準拠し、タイヤユニフォミティ試験機を用いてラジアルフォースバリエーション(RFV)を測定した。比較例1を100とする相対値を指数表示した。指数が大きいほどユニフォミティが優れている。測定条件は、リムは8.0×17、タイヤ回転速度は60rpm、空気圧は200kPa、縦荷重は4000kNとした。
総合判定の判定基準は表6の通り。
参考例S1〜S6は、比較例S1〜S7は、ストリップにポリマーシートの単一層を用
いた空気入りタイヤの例である。参考例S1〜S6は、いずれも比較例S1よりもストリップの未加硫粘着性指数、加硫接着力指数に劣るが、空気入りタイヤの性能において総合的に優れることが明らかである。
Claims (6)
- 円筒ドラム上で螺旋状に巻回させることにより仕上げ断面形状に近い形状のタイヤ用インナーライナーを形成するためのポリマー組成物のストリップであって、
前記ストリップは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体を5質量%以上40質量%以下と、天然ゴム、イソプレンゴムおよびブチルゴムよりなる群から選択される少なくとも1種のゴム成分を60質量%以上95質量%以下含むポリマー成分100質量部に対して、硫黄を0.1質量部以上5質量部以下含むポリマー組成物のポリマーシートの第1層と、熱可塑性エラストマー組成物からなる第2層の積層体で構成されており、
前記ストリップはストリップ本体とその両側に配置される耳部を有し、前記ストリップ本体の厚さ(T1)は0.05mm〜1.0mmであり、前記耳部の厚さ(T2)は前記ストリップ本体の厚さ(T1)より薄く、耳部の幅(W2)は0.5mm〜5.0mmであるインナーライナー形成用のストリップ。 - 前記第2層は、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体、スチレン−イソブチレンジブロック共重合体およびエポキシ化スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種を含む熱可塑性エラストマーと、天然ゴム、イソプレンゴムおよびブチルゴムよりなる群から選択される少なくとも1種のゴム成分を含み、かつ前記熱可塑性エラストマーおよび前記ゴム成分の合計に対し、前記ゴム成分を20質量%以上90質量%以下含む、請求項1に記載のストリップ。
- 前記ストリップの幅(W0)は、5mm〜40mmである請求項1に記載のストリップ。
- 前記ストリップの耳部の厚さ(T2)は、0.02mm〜0.5mmである請求項1に記載のストリップ。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のストリップを、円筒ドラム上で螺旋状に巻回させることにより仕上げ断面形状に近い形状のインナーライナーを生タイヤ内面に配置するように成形し、該生タイヤを加硫することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
- 前記ストリップは、
(a)押出機本体と押出ヘッドを備えた押出装置により、熱可塑性エラストマー組成物を押し出して横長矩形断面形状のシートを形成する押出工程と、
(b)該シートを、一対の型ローラに通して、前記シートに型ローラの形状を転写してストリップ端部に耳部を備えたストリップ形成工程と、
(c)前記ストリップを型ローラから剥離する剥離工程と、
を含む工程で製造される請求項5記載の空気入りタイヤの製造方法。
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