JP5256978B2 - 翼の振動計測方法及び振動計測装置 - Google Patents
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しかし、例えばタービンの翼に振動計測器を設置して回転中の翼の振動を計測すると、振動計測器に働く遠心力が翼に影響し回転中の翼の振動を変化させることから、回転中の翼の固有振動数を正しく計測できないという問題があった。
本発明は、回転時の翼の振動特性を翼の振動に伴って生じる気体振動により計測する第1工程と、計測した振動特性に基づいて翼の固有振動数を求める第2工程と、を備えるという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、回転時の翼の振動に伴って生じる気体振動により翼の振動特性を計測するため、翼の周辺に振動計測器を配置して回転時の翼の振動特性を計測することができる。また、本発明では、計測した振動特性に基づいて回転時の翼の固有振動数を求めることができる。
このような方法を採用する本発明では、計測対象である翼が回転していることから、ドップラー効果により振動計測器が本来の翼の振動とは異なった周波数の振動特性を計測するのであるが、ドップラー効果の原理を用いて数値演算することにより回転時の翼の正確な固有振動数を求めることができる。
このような方法を採用する本発明では、上流側及び下流側の流体の流動圧の違いにより各々の箇所における翼の固有振動数が異なる場合にも、各々の箇所の固有振動数を計測することができる。
このような方法を採用する本発明では、回転時の翼の振動に伴って生じる気体振動を集音装置を用いて計測することから、翼の周辺に振動計測器を配置して回転時の翼の振動特性を計測することができる。また、本発明では、集音装置における集音利得の大きな部分を翼の振動測定箇所に向けることで翼の振動特性のみを重点的に計測することができ、不要なノイズ等の影響を減少させることができる。
このような構成を採用する本発明では、まず、回転時の翼の振動に伴って生じる気体振動により翼の振動特性を計測するため、翼の周辺に振動計測器を配置して回転時の翼の振動特性を計測することができる。次に、本発明では、計測した振動特性に基づいて回転時の翼の固有振動数を求めることができる。
このような構成を採用する本発明では、計測対象である翼が回転していることから、ドップラー効果により振動計測器が本来の翼の振動とは異なった周波数の振動特性を計測するのであるが、ドップラー効果の原理を用いて数値演算することにより回転時の翼の正確な固有振動数を求めることができる。
このような構成を採用する本発明では、上流側及び下流側の流体の流動圧の違いにより各々の箇所における翼の固有振動数が異なる場合にも、各々の箇所の固有振動数を計測することができる。
このような構成を採用する本発明では、回転時の翼の振動に伴って生じる気体振動を集音装置を用いて計測することから、翼の周辺に振動計測器を配置して回転時の翼の振動特性を計測することができる。また、本発明では、集音装置における集音利得の大きな部分を翼の振動測定箇所に向けることで翼の振動特性のみを重点的に計測することができ、不要なノイズ等の影響を減少させることができる。
本発明によれば、従来の技術では計測することが困難であった回転時の翼の固有振動数を計測することができるという効果がある。
図1は、本実施形態における振動計測装置Mの全体構成を示す概略図、図2は、本実施形態におけるターボチャージャXの全体構成を示す概略図、図3は、図2における可変ノズルユニット8周辺の拡大図である。なお、上記図面中の矢印Fは前方向を示す。
図1に示すように、本実施形態における振動計測装置Mは、ターボチャージャXに設けられた回転体であるタービンインペラ53(図2参照)の翼部(翼)54(図2参照)の固有振動数を計測するためのものである。振動計測装置Mは、複数の計測器からなる計測装置1と、複数の演算処理部を有する演算装置2と、演算装置2の演算結果を表示する表示部3とを備えている。
なお、ターボチャージャXは、不図示のエンジンから導かれる排気ガスのエネルギーを利用してエンジンに供給される空気を過給する可変容量型のターボチャージャである。
第1集音装置11及び第2集音装置12は、いわゆるマイクロフォンであり、ターボチャージャX内の温度下で使用できるものが選択される。回転計測器15は、凡そ200000min−1までの回転速度を計測することができる計測器である。
ノイズ除去部23は、FFT処理部21の変換処理により得られる周波数領域での振動特性から、翼部54の振動に伴って生じる音以外の音を不要なノイズとして除去する処理部である。
演算処理部25は、ノイズ除去部23によりノイズの除去された周波数領域での振動特性並びに第1温度計測器13、第2温度計測器14及び回転計測器15が計測した結果からドップラー効果の原理を用いて翼部54の固有振動数を算出する処理部である。なお、算出方法の詳細は後述する。
図2に示すように、ターボチャージャXは、軸受けハウジング5と、軸受けハウジング5の前側周縁部に締結ボルト5aにより接続されるタービンハウジング6と、軸受けハウジング5の後側周縁部に締結ボルト5bにより接続されるコンプレッサハウジング7とを備えている。
タービンインペラ53は、略円錐状部材の斜面から径方向外側に向かって複数の翼部(翼)54が立設した形状を呈しており、タービンハウジング6内に設置されている。コンプレッサインペラ55は、タービンインペラ53と同様の形状を呈しており、コンプレッサハウジング7内に設置されている。
また、タービンインペラ53の前側にはタービンインペラ53の回転速度を計測するための回転計測器15が設置されている。
タービンスクロール流路61は、タービンインペラ53を囲んで略環状に形成され、不図示のエンジンにおける排気口に連結されている。また、タービンスクロール流路61は、可変ノズルユニット8内のノズル流路8Aと連通している。
タービンハウジング出口62は、タービンハウジング6の前側に向けて開口しており、タービンインペラ53の設置箇所を介してノズル流路8Aと連通している。
さらに、コンプレッサハウジング7は、コンプレッサインペラ55の径方向外側で略環状を呈するコンプレッサスクロール流路73を有しており、コンプレッサスクロール流路73は、ディフューザ流路72と連通している。なお、コンプレッサスクロール流路73は、不図示のエンジンにおける吸気口と連結されている。
図3に示すように、可変ノズルユニット8は、タービンハウジング6側に設置されるシュラウドリング81と、シュラウドリング81に対向して軸受けハウジング5側に設置されるノズルリング82と、シュラウドリング81とノズルリング82との間に保持される複数のノズルベーン83とを有している。なお、ノズル流路8Aは、シュラウドリング81とノズルリング82との間に形成されている。
なお、第1集音装置11及び第2集音装置12は、何れも指向性を有しており、集音利得の高い部分を計測対象に向けることで、計測対象以外の部分からの音を相対的に低減させることができる。
ノズルリング82の後側には、取付リング85が連結ピン84を介して一体的に設けられており、取付リング85の外周縁部は軸受けハウジング5とタービンハウジング6とにより挟持されて支持されている。すなわち、ノズルリング82は、取付リング85を介して軸受けハウジング5及びタービンハウジング6に支持されている。
また、各ノズルベーン83は、略矩形状を呈する板状部材であり、ノズルベーン83の一辺から前側に突出する第1ベーン軸83Aと上記一辺の対辺から後側に突出する第2ベーン軸83Bとを有している。第1ベーン軸83Aは、シュラウドリング81に回転自在に貫入しており、第2ベーン軸83Bは、ノズルリング82に回転自在に貫通しノズルリング82の後側に突出している。
同期機構9は環状を呈しており、各ノズルベーン83の第2ベーン軸83Bと各々連結されている。また、同期機構9は、同期機構9を作動させるための不図示のシリンダ等のアクチュエータに駆動軸91及び駆動レバー92を介して連結されている。
まず、ターボチャージャXへ導入された排気ガスがタービンインペラ53を回転させることで、エンジンに供給される空気が過給される動作について説明する。
この時、ターボチャージャXに導入される排気ガスの流量はエンジンの回転数に比例するため、同期機構9及び不図示のアクチュエータが作動することでエンジンの回転数に応じて各ノズルベーン83を回転させ、ノズル流路8Aの開口面積を変化させる。この開口面積の変化によりノズル流路8Aを通る排気ガスの流量は調節され、結果として低回転域から高回転域までの広い範囲に亘りエンジンの性能向上を図ることができる。
コンプレッサインペラ55の回転により、吸気口71から空気が吸引され、吸引された空気はディフューザ流路72に供給される。また、上記空気は、ディフューザ流路72を通ることで圧縮され昇圧される。昇圧された空気はコンプレッサスクロール流路73を通ってエンジンの吸気口に供給される。結果としてエンジンに空気を過給し、エンジンの出力を向上させることができる。
以上でターボチャージャXの過給動作は終了する。
図4は、第1集音装置11とタービンインペラ53との位置関係を示す正面図であり、図5は、第1集音装置11が計測した回転時の翼部54における上流側端部54Aの周波数領域での振動特性を示す概略図である。
計測動作は、まず、タービンインペラ53の回転時に翼部54の振動特性等を計測する工程(第1工程)を行い、次に、上記計測結果から固有振動数を求める工程(第2工程)を行う。以下、各工程について説明する。
排気ガスがターボチャージャXのタービンインペラ53の設置箇所に導入され、タービンインペラ53が回転する。
この時、タービンインペラ53の翼部54には回転に伴う振動が加わると共に、翼部54の上流側端部54A及び下流側端部54Bには排気ガスから異なる流動圧を受けているため、上流側端部54A及び下流側端部54Bは各々一定の振動周波数すなわち固有振動数で振動している。
そして、翼部54における上流側端部54A及び下流側端部54Bの振動が周囲の気体を振動させ、この気体振動を第1集音装置11及び第2集音装置12が各々計測する。また、第1温度計測器13が上流側端部54A周囲の気体温度を計測し、第2温度計測器14が下流側端部54B周囲の気体温度を計測する。さらに、回転計測器15がタービンインペラ53の回転速度を計測する。
まず、翼部54における上流側端部54Aの固有振動数f01を求める工程について説明する。
また、[数1]及び[数2]を変換すると、以下の2式が得られる。
まず、第1温度計測器13が計測した気体温度から、上記温度下での音速c1を算出する。また、回転計測器15が計測したタービンインペラ53の回転速度及び翼部54における上流側端部54Aの径より上流側端部54Aでの周速V1を算出する。
音速c1、周速V1及びfH1を[数3]に、又は、音速c1、周速V1及びfL1を式[数4]に代入することで翼部54における上流側端部54Aの固有振動数f01を算出することができる。すなわち、fH1又はfL1のいずれか一方を計測し、音速c1及び周速V1を算出すれば、[数3]又は[数4]のいずれか一方の数式を用いて固有振動数f01を算出することができる。
ここで、下流側端部54Bでの周速V2、下流側端部54B周囲の気体温度における音速をc2、下流側端部54Bの固有振動数をf02、ドープラー効果により固有振動数f02が高い振動数として計測されたものをfH2、低い振動数として計測されたものをfL2とすると以下の2式の関係が各々成立する。
音速c2、周速V2及びfH2を[数8]に、又は、音速c2、周速V2及びfL2を[数9]に代入することで翼部54における下流側端部54Bの固有振動数f02を算出することができる。すなわち、fH2又はfL2のいずれか一方を計測し、音速c2及び周速V2を算出すれば、[数8]又は[数9]のいずれか一方の数式を用いて固有振動数f02を算出することができる。
以上で、翼部54の上流側端部54A及び下流側端部54Bにおける各々の固有振動数の算出が完了する。
本実施形態では、従来の技術では計測することが困難であった回転時の翼部54の固有振動数を計測することができるという効果がある。
また、本実施形態はターボチャージャXの翼部に限定されるものではなく、例えば飛行機のプロペラや送風機の回転翼等の固有振動数を計測するために使用してもよい。
Claims (6)
- 回転時の翼の振動特性を前記翼の振動に伴って生じる気体振動により計測する第1工程と、計測した前記振動特性に基づいて前記翼の固有振動数を求める第2工程と、を備え、
前記第2工程では、計測した前記振動特性をドップラー効果の原理を用いて数値演算することにより前記翼の固有振動数を求めることを特徴とする翼の振動計測方法。 - 前記翼は流体の流動圧により回転する翼であって、前記第1工程では、前記翼における上流側の所定の箇所及び下流側の所定の箇所の振動に伴って生じる気体振動を各々計測することを特徴とする請求項1記載の翼の振動計測方法。
- 前記第1工程では、指向性を有する集音装置を用いて前記振動特性を計測することを特徴とする請求項1または2に記載の翼の振動計測方法。
- 回転時の翼の振動特性を前記翼の振動に伴って生じる気体振動により計測する計測装置と、計測した前記振動特性に基づいて前記翼の固有振動数を求める演算装置とを備え、
前記演算装置は、計測した前記振動特性をドップラー効果の原理を用いて数値演算することにより前記翼の固有振動数を求めることを特徴とする翼の振動計測装置。 - 前記翼は流体の流動圧により回転する翼であって、前記計測装置は、前記翼における上流側の所定の箇所及び下流側の所定の箇所の振動に伴って生じる気体振動を各々計測することを特徴とする請求項4記載の翼の振動計測装置。
- 前記計測装置は、指向性を有する集音装置を備えることを特徴とする請求項4または5に記載の翼の振動計測装置。
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