JP5255311B2 - 微粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
このような微粒子の作製方法には、古くから粉砕法が知られているが、一般に機械的粉砕には長時間を要するものが多く、物質によっては機械的な粉砕手法では平均粒径1μm以下に微粉化することが困難なものがある。また、機械的粉砕により粒子内部の微細構造が変化し、目的とする機能が損なわれるという問題もある。
化学法は、目的とする微粒子の構成元素を含む溶液を沈殿、ゲル化などの化学反応を利用して微粒子を作製する方法で、大量の微粒子を作製することができるが、溶媒から不純物元素が混入しやすいという問題点がある。また、化学反応によっては、目的とする相以外の相が残存し、その分離が困難となる場合もある。
その加熱方法としては、従来より、レーザー光を用いる加熱方法や高周波加熱法などがあるが、原材料を気体状態に短時間で加熱するためには大型の装置を必要とし、また、電気エネルギーをレーザー光や高周波に変化する際のエネルギー効率は必ずしも高くない。さらに、加熱時に投入されるエネルギーの多くが原材料の加熱以外の熱伝導によって失われるため、エネルギー変換効率が低かった。すなわち、これらの方法では、電気エネルギーを一度レーザー光や高周波のエネルギーに変換し、さらにこれらのエネルギーを原材料の内部に蓄積される熱エネルギーに変換するという二段階のエネルギー変換が必要なため、全体のエネルギー変換効率は低い。
この方法では、原材料として細線状の部材を用いることにより、加えられた電気エネルギーが材料自身の電気抵抗によって熱エネルギーに直接変換される。すなわち、電気エネルギーを光エネルギーや高周波電磁エネルギーに変換することなく、材料自身の熱エネルギーに極短時間で変換されるため、レーザー光を用いる加熱方法や高周波加熱法と比較してエネルギー変換効率の高い加熱が可能である。
これに対し、細線でなく固体粉末を加熱することにより微粒子を作製する方法は知られていたが(特許文献3、4参照)、固体粉末を超音波、ヒーター加熱や高電圧でいったん溶融状態にした後、導入放出、或いは上方から落下させることが必要であった。
すなわち、本発明は次の1〜3の構成を採用するものである。
1.可燃性のチューブに固体物質粉末を充填し、線状の導電性部材をチューブの両端部に封入する、又は線状の導電性部材をチューブを貫通するように封入することで、前記固体物質粉末への導電性を確保し、前記固体物質粉末に、1kV〜20kVのパルス電流を1サイクルの通電時間を0.1μ秒〜1秒として、通電して加熱することにより該固体物質粉末を溶解・気化し、気化した物質を冷却・凝固して粒径1nm〜100μmの微粒子を得ることを特徴とする微粒子の製造方法。
2.前記固体物質粉末を気化状態の前記固体物質成分と反応性を有する成分を含む雰囲気中で通電加熱して、前記固体物質成分と前記反応性成分の化合物微粒子を得ることを特徴とする1に記載の微粒子の製造方法。
3.前記固体物質粉末として2種以上の固体物質粉末の混合物を使用して、微粒子の混合物及び/又は複合体微粒子を得ることを特徴とする1又は2に記載の微粒子の製造方法。
すなわち、原料物質となる固体粉末を可燃性のチューブに充填し、これに線状の導電性部材の存在下に瞬間的に大電流を通電して加熱する。この加熱によって、固体粉末は溶解、気化し、場合によってはプラズマ化する。続いて、この気化又はプラズマ化した原料成分は膨張・拡散するとともに、急速に冷却される。このとき、空間的に均一に冷却されることによって、凝固し、多数の固体微粒子が形成される。
原料物質の固体粉末が、例えば酸素のような雰囲気中の気体成分と反応を生じるものである場合には、雰囲気中で加熱し、気化又はプラズマ化した状態となった原料物質は、雰囲気中の気体成分と反応して、冷却段階で原料物質と気体成分の化合物の微粒子を生成する。
原料の固体粉末の導電性が不十分な場合には、固体粉末と共に例えば導電性の線材のような導電性部材を存在させて固体粉末に通電することにより、固体粉末の気化が可能となる。また、固体粉末と共に例えば導電性の線材のような導電性部材を存在させて固体粉末に通電することにより、固体粉末の成分と導電性部材の成分が反応して、複合体微粒子を得ることもできる。原料の固体粉末の粒径は1nm〜3mm程度のものを使用するが、特に1nm〜1mm程度のものを使用することが好ましい。3mmを超える粒径の粉末では、通電による気化が不十分となる可能性がある。一方、粒径1nm未満の固体粉末を原料として使用することは、不経済である。
本発明に用いる原料の固体粉末として、2種以上の固体物質粉末の混合物を使用することもできる。2種以上の固体物質粉末の混合物に通電することにより、それぞれの固体物質成分からなる微粒子の混合物を作製できる。あるいは、固体物質粉末の混合物の種類によっては、2種以上の該原料成分が反応して、複合体微粒子を作製することができる。ここで、複合体微粒子とは、原料の固体粉末の成分及び雰囲気ガスの成分の全て又は一部からなる2種以上の元素からなる微粒子である。その微細構造としては、複相、固溶体、化合物などの種類を問わない。
また、本発明の製造方法では、通電加熱される原料粉末自体が電気回路の一部となっており、粉末の通電加熱による粉末の気化及び所定の反応の後は通電が不要である。したがって、1サイクルの通電時間が短かすぎると粉末の気化が不十分となる可能性があり、通電時間が長すぎても不経済であるため、1サイクルの通電時間が0.1μ秒〜1秒のパルス電流を用いる。
図1及び図2は、本発明の微粒子の製造方法に使用する製造装置全体の構成を説明するための参考図(模式図)であり、図1は装置の基本構成を示す図、そして図2は該装置の粉末充填容器部分の拡大図である。
この装置101は、ガス導入口10及びガス導出口11を設けた雰囲気制御チャンバー6内に、粉末充填容器5及び2本の電極8、9を配設したもので、電極8、9はパルス電流発生器7に接続されている。パルス電流発生器7は、直流高電圧電源、コンデンサー、及び、これらを制御する系統からなり、コンデンサーに直流高電圧を印加して充電した後、両電極8、9間に放電することができる。
粉末充填容器5は、ポリアミド系樹脂(例えば、日本ポリペンコ社製「MCナイロン(登録商標)」)、ポリイミド樹脂やフッ素樹脂のような絶縁性を有するエンジニアリングプラスチック製素材を図のように加工した容器本体1に、横から2本のタングステン棒2、3を差し込み、原料粉末4への通電を可能にした。タングステン棒2、3に代えて他の導電性金属棒を使用できることは、言うまでもない。
図2の粉末充填容器5の中央の凹部に原料固体粉末として、市販の粒径50μm以下の21.9mgのTiN粉末4を充填し、上から丸棒で加圧して圧粉した。
TiN粉末4を充填した粉末充填容器5の各タングステン棒2、3を、雰囲気制御チャンバー6内の電極8、9にそれぞれ接続し、チャンバー6内を窒素雰囲気に置換した。パルス電流発生器7の20μFのコンデンサーに6kVの電圧を印加して充電した後、電極8、9の端子に放電した。この放電により、粉末充填容器内のTiN粉末4は気化した。
雰囲気制御チャンバー6内に生成した粒子をメンブレンフィルター12に吸引して回収したところ、4.0mgの黒色粉末が回収できた。回収した粉末を透過電子顕微鏡で観察した結果を図3に示す。図3にみられるように、ほとんどの粒子は概ね立方体形状であり、粒径が数nm程度から100nm程度であった。
また、回収した粉末をX線回折により評価した結果を原料粉末と比較して図4に示す。回収した粉末のX線回折結果(図4下)は、原料粉末(図4上)と同様の回折角において回折ピークを示している。すなわち、作製された粉末も、原料粉末と同様に立方晶のTiN相からなることが示された。この結果は、金属細線ではなく固体物質粉末であっても、通電により微粒子が作製できることを示している。
この装置102では、図1の粉末充填容器5に代えて、可燃性の熱可塑性樹脂からなる熱収縮性チューブ13を使用し、チューブ13内に原料粉末を充填したものである。装置102の他の構成は図1の装置101と同様である。
(実施例1)
原料固体粉末として、市販の粒径150μm以下の純Al粉末を用い、内径1.6mmのポリオレフィン系樹脂製の熱収縮チューブを長さ3cm程度に切断し、16.5mgの純Al粉末を充填後、熱収縮チューブ全体を加熱して収縮させた。さらに、熱収縮チューブ両端を加熱、圧迫して密封した。その際、内部の粉末と電極の間の導電性を確保するために、熱収縮チューブ13の両端部に径0.2mmの純Alのワイヤー片を挟み込んで封じた。
図5の製造装置102の雰囲気制御チャンバー6内の両電極8、9間に粉末を封入した熱収縮チューブ13を固定し、大気雰囲気において、パルス電流発生器7の20μFのコンデンサーに6kVの電圧を印加して充電した後、電極8、9の端子に放電した。この放電により、両電極8、9間の熱収縮チューブ13とともにAl粉末は気化した。なお、電極端子に接続された熱収縮チューブの両端部及びチューブ内に挟み込んだAlのワイヤー片は、残存していた。
雰囲気制御チャンバー6内に生成した粒子をメンブレンフィルター12に吸引して回収したところ、21.0mgの白色粉末が回収できた。これは、Alの酸化によるAl2O3の生成における重量増加の理論値に対し、67.4%の回収率となる。回収した粉末を透過電子顕微鏡で観察した結果を図6に示す。図6にみられるように、ほとんどの粒子はほぼ球状であり、それらの粒径は数nm程度から100nm程度であった。また、回収した粉末をX線回折により評価した結果を原料粉末と比較して図7に示す。回収した粉末のX線回折結果(図7下)は、原料粉末(図7上)と異なり、γ−Al2O3相及びδ−Al2O3相からなることが示された。この結果は、Al粉末が通電により気化した際に、雰囲気中の酸素と反応し、酸化物微粒子を形成したことを示している。
実施例1において、原料として市販の粒径10μm以下の純Si粉末18.5mgを用いた。実施例1と同様の熱収縮チューブに径0.2mmの純Alのワイヤーを1本、貫通するように挿入し、ついで18.5mgの純Si粉末を充填し、熱収縮チューブ全体を加熱して収縮させ、さらにチューブ両端を加熱、圧迫して密封した。
実施例1で使用した製造装置102の両電極8、9間に粉末を封入した熱収縮チューブ13を固定し、窒素雰囲気に置換した。パルス電流発生器の20μFのコンデンサーに6kVの電圧を印加して充電した後、電極端子に放電した。この放電により、両電極8、9間の熱収縮チューブ13及びその内部の純AlワイヤーとともにSi粉末は気化した。なお、電極端子に接続されていた熱収縮チューブ13の両端部は残存していた。
雰囲気制御チャンバー6内に生成した粒子をメンブレンフィルター12に吸引して回収したところ、9.1mgの黒色粉末が回収できた。回収した粉末を透過電子顕微鏡で観察した結果を図8に示す。図8にみられるように、観察されたほとんどの粒子はほぼ球状であり、それらの粒径が数nm程度から100nm程度であった。また、回収した粉末をX線回折により評価した結果を原料粉末と比較して図9に示す。回収した粉末のX線回折結果(図9下)は、原料粉末(図9上)と同様の回折角において回折ピークを示している。すなわち、作製された粉末も、原料粉末と同様にSi相からなることが示された。この結果は、導電性が低いSi粉末を原料としても、他の金属細線とともに熱収縮チューブに充填することにより、通電が可能となり、微粒子が作製できることを示している。
原料固体物質粉末として、実施例1と同様の純Al粉末および純Ni(ニッケル)粉末(粒径10μm以下:市販品)を用いた。AlとNiのモル比が1:1となるように秤量して混合した。実施例1と同様の熱収縮チューブに、35.7mgのAl−Ni混合粉末を充填し、熱収縮チューブ両端を加熱、圧迫して封じた。その際、内部の混合粉末と電極の間の導電性を確保するために、純Alのワイヤー片を挟み込んで密封した。
実施例1で使用した製造装置102の両電極8、9間に粉末を封入した熱収縮チューブ13を固定し、窒素雰囲気に置換した。パルス電流発生器の20μFのコンデンサーに6kVの電圧を印加して充電した後、電極端子に放電した。この放電により、両電極間の熱収縮チューブとともにAl−Ni混合粉末は気化した。なお、電極端子に接続されていた熱収縮チューブの両端部及び挟み込んだAlのワイヤー片は残存していた。
雰囲気制御チャンバー6内に生成した粒子をメンブレンフィルター12に吸引して回収したところ、17.5mgの黒色粉末が回収できた。回収した粉末を透過電子顕微鏡で観察した結果を図10に示す。図10にみられるように、多くの粒子はほぼ球状または幾分偏平した球状であり、それらの粒径は数nm程度から100nm程度であった。回収した粉末をX線回折により評価した結果を原料粉末と比較して図11に示す。回収された粉末のX線回折結果(図11下)は、原料として用いたAl粉末(図11上)及びNi粉末(図11中)と異なり、AlNi化合物相からなることが示された。すなわち、Al粉末及びNi粉末が通電により気化した際に、互いに反応し、AlNi化合物微粒子を形成したことを示している。この結果は、2種以上の固体物質粉末の混合物を熱収縮チューブに充填して通電することにより、原料成分が反応して化合物微粒子が作製できることを示している。
2、3 タングステン棒
4 原料粉末
5 粉末充填容器
6 雰囲気制御チャンバー
7 パルス電流発生器
8、9 電極
10 ガス導入口
11 ガス導出口
12 フィルター
13 熱収縮性チューブ
101,102 粉末製造装置
Claims (3)
- 可燃性のチューブに固体物質粉末を充填し、線状の導電性部材をチューブの両端部に封入する、又は線状の導電性部材をチューブを貫通するように封入することで、前記固体物質粉末への導電性を確保し、前記固体物質粉末に、1kV〜20kVのパルス電流を1サイクルの通電時間を0.1μ秒〜1秒として、通電して加熱することにより該固体物質粉末を溶解・気化し、気化した物質を冷却・凝固して粒径1nm〜100μmの微粒子を得ることを特徴とする微粒子の製造方法。
- 前記固体物質粉末を気化状態の前記固体物質成分と反応性を有する成分を含む雰囲気中で通電加熱して、前記固体物質成分と前記反応性成分の化合物微粒子を得ることを特徴とする請求項1に記載の微粒子の製造方法。
- 前記固体物質粉末として2種以上の固体物質粉末の混合物を使用して、微粒子の混合物及び/又は複合体微粒子を得ることを特徴とする請求項1又は2に記載の微粒子の製造方法。
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